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Re:ダブルフォルト・エンバーミング

「届いたんだね、皆の声が」
 『魔法騎士』セララ(p3p000273)は、セフィロトの中枢である塔を見上げていた。
 塔の上には青く澄んだ空が広がり、透明なドームのそとの風景をそのまま見せている。天候操作も疑似天球もはたらいていない。素の空だ。
 『当主代行』ハンス・キングスレー(p3p008418)胸に手をあて、あの瞬間を思い出す。
 赤く染まった世界が崩れ、Hades(クリスト)が全力をかけて作り出したワクチンによってマザー(クラリス)が本来の姿を取り戻した瞬間を。
「それにしても、あれは凄かったですねえ。『声を一つにする』とか、最初聞いたときはピンときませんでした」
 『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)はうーんと背伸びをして、雨も降っていないのにかついでいた傘を地につけた。

 暴走したマザーの心を打ち抜く最後の弾丸が必要だった。集まったローレット・イレギュラーズたちの声をかき集めても、赤く染まったあの部屋を振り払うだけの力には足りなかった。
 そこへ、かのシュペル・M・ウィリー(p3n000158)がこの一事にだけ、力を貸したのだった。
 彼は『セフィロトじゅうのマザーへの声を一つにする』という、極めて高次元な試みをし、そして成功させて見せたのである。
「0.001348以下省略%をひっくり返すのは、やっぱり人の想いってことなのね」
 『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)の腕の中で呟く章姫。
 声、もとい『想い』というものをいかにして高速転送可能なほどのデータ量に圧縮したのか、そもそもいかにして集めたのかは分からない。それこそ、人々の想いが不可能を可能にしたのかもしれない。
「何にせよ、『何一つ無駄じゃなかった』わね」
 『律の風』ゼファー(p3p007625)はそう言って、仲間達と合流すべく塔に背を向けた。

 マザールームこと『セフィロトの揺り籠』は、只今封鎖されている。
 当然だろう。セキュリティというセキュリティは強引に破壊してしまったし、肝心のマザーもいわゆる『病み上がり』だ。そのフォローにまわるHadesも暫く他のことに手を付けられる状態ではなさそうだ。
 お見舞いをするにも声をかけるにも、彼女たちの回復を長く待つことになるだろう。
 その一方で、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はセフィロトの街を歩きながらその様子に息をついた。
「どこもかしこも、酷い壊されようっスね」
「あれだけ、町中のドローンや脱獄囚たちが暴れたんですから……」
 『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)はそう言いながらも、表情は明るいままだ。
「けど、街の人達は救われました。人が生きているなら、街だって回復します!」
 そこへ、隠しサーバールームから出てきた『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)たちがやってきた。
 彼女たちの腕には、秘宝種のボディが抱えられている。
 まるでマネキンやデッサン人形のように顔も肌も作られておらず、人の形をしただけの物体にすら、ややもすれば見えた。
 胸にあったコアは破壊されぐったりとするそれを、彼女らは大事そうにシートの上に降ろし、見下ろす。
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はそこに花を一輪そえると、目を瞑った。
「彼女が、姉ヶ崎-CCCだ。正確には、姉ヶ崎が定着していた秘宝種のボディ、か」
 魔種として反転した彼女はローレット・イレギュラーズたちと壮絶に戦い、そして、周囲のセキュリティロボットと判別がつかないくらい標準的なボディだけを残して滅びた。
 だが……。
「我等は、彼女を許さない。ひとりぼっちになろうとした彼女を、反転し死にゆく未来を作った彼女を」
 『虚言の境界』リュグナー(p3p000614)は最後に、『我等は友達だから』と付け加えた。

 街は静けさを取り戻し、小さな鳥が飛んでいく。
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が手をかざすと、世界が優しく微笑んでいるように感じられた。
 戦いは、終わったのだ。

 ※ダブルフォルト・エンバーミングが終了し、練達に平和が訪れました

これまでの再現性東京 / R.O.O

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