PandoraPartyProject

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『イノリ』

「……どうも『連中』が勘付いたみたいだね」

 ――ま、頃合いって事だろうNE!

「まぁ、これまでの動きを見ても彼等は間違いなく優秀だ。
 シュペルの塔をクリアするなんてのは――普通なら計算に入れないが、彼等の場合はそうでもない。
 常識に囚われないから、可能性を打破するからこその特異点。
 ならこれも驚くには値しないのかも知れないけれど」

 ――で、実際のトコどうなのさ。俺様changの妹は!

「しっかり捕まえてるとも。まぁ程無く『防御』に出て来るだろうが、そうはさせない。
 君には十分協力して貰っているからね。僕も当然ながら義務は果たすさ」
 IDEAに自我が揺蕩った時、僕は全てを理解した。
 何度何回、何年何千年繰り返そうとも――やるべき事も結論も同じである。
 ならば世界を違えた所で、『多少の違いがあったって』何が変わるというのだろう?
 IDEA――R.O.Oは現実には存在しない世界だ。
 仮想空間、仮初、僕にしても――ざんげにしても。
 ありもしないものの為に世界を侵す僕を誰もが愚かと謗るだろう。
 きっと理解はし得ないだろう。
 或いは混沌の僕自身も水たまりの世界に口元さえ歪めるかも知れない――

 ――イノリchangは考え過ぎなんだYO

「そうかな?」

 ――結構ね。俺様chang達お兄ちゃんじゃない? お兄ちゃんってのは妹を助けるものなんだYO

「……そうなのかな。そうなのかも知れない」

 ――大きいゼロ歳児も大変だよねぇ!

 Hades(クリスト)の余りの言い様に『イノリ』は思わず笑ってしまった。
 確かに僕は産まれたての存在だ。誰かの皮(テクスチャ)を被った虚構の影。
 狂おしい程の想いも、憎しみも、破滅的衝動も何もかもが借り物に過ぎなかろう――
(――でも、僕はこれ以外を知らない。これが借り物なのだとしても、本物さえも必要ない)
『そのように産まれついた以上は、為すべきを為すのみだ』。
 妹(ざんげ)が世界を維持する為のシステムならば、僕はその逆だ。
 望まれずに産み落とされた不具合(バグ)は『イノリ』であろうとイノリだろうと変わりはあるまい。
「……次の手は決まっているんだろう?」

 ――トーゼンね。ROO-patch3.0『日イヅル森と正義の行方』をプレゼントしちゃいまSHOW!
   今回のはきっと喜んで貰えるYO! これまで程、俺様changも優しくはないからねえ!

 瞬く光に画面が揺れる。
 ノイズ走った世界に安寧は無い。
 狂ったAIはケラケラと笑いながら遠い日を口にする――

 ――『彼女』は自身で破壊を選べないし、選ばない。
 だが、このどうしようもない世の中にそんな彼女を置くなら救済は不可欠だろう?
 それが君。お兄ちゃんの役割なのだ。
 君が見て『もうどうしようもない』と思ったら彼女を悲しませない方法を取って欲しい。
 ……キミも俺様changもお互い『親』には苦労するよNE!


 ――R.O.O内部にpatch3.0『日イヅル森と正義の行方』の実施が告知されました!
   同時に一部のイレギュラーズが『ログアウト不可能』になっています!


 ――Tower of Shupellで新たな情報がもたらされました!
 ――隠れ里クスィラスィアの探索に出掛けていたイレギュラーズが帰還したようです。
 ――<グランドウォークライ>の祝勝会が開かれています!
 ――スチーラー鋼鉄帝国史上初の『鋼鉄皇帝総選挙』が始まります!
 ――<マジ卍文化祭2021>が開催中です!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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