PandoraPartyProject
帝都星読キネマ譚:しんのみはしら
――翡翠のフラグメントが使用不可となり、違和をも感じるイベントが開始されている同刻。
常通り、諦星の平穏は流れゆく。ソレも全ては豊底比女の威光を頂き神霊と共に築き上げた発展と和平である。
然し、天香 遮那と高天京特務高等警察:月将七課の一員となった神使は叛逆した。
神霊の齎す力の強さに、飲まれ『侵食』される神光を救うが為に――
「ああ、お労しや……母上の涙も止らぬではないか。これも奴等の所為か」
そう呻いた神光(ヒイズル)が神霊の一柱、黄龍の言葉を咎めるように黄泉津瑞神は「これ」と厳しい一声を発した。
「あまり母の前でその様に憤るものではありません。
子らが無作法にも母に反抗することもありましょう。……ええ、御心を痛めないで下さいませ。
母神(ははうえ)よ」
穏やかに目を細めた瑞神がそうと手を差し伸べたのは巨大な娘を思わす神霊であった。
清らかな気配を身に纏ったそれははらはらと澄んだ涙を流し続ける。
言葉を発することなくとも女神が酷く悲しんでいる事は感じられた。
はらはらと落ちる涙を一掬いし、瑞神はうっとりと笑みを浮かべる。清きその気配は、涙の一つさえ心地よいのだ。
「……母神よ。我らが愛し子、ヒトの世を統治する賀澄はお庭番衆を悪戯な子へと差し向けたようで御座います。
ですが、それも小手調べ。ヒト達が月(よる)の力に身を委ねておったことが判明しただけでも良きことでありましょう」
「瑞よ。奴等は昏き力に手を出したと……?
人で在りながら悪しきを肯定するとは……この国の発展に力を貸したこと、此度ほど間違いであったと感ずる事になろうとは!」
悔しげに歯噛みする黄龍は憤っていた。酷い苛立ちを浮かべながらも、見上げた先――天蓋に昇る月の色を確認しては胸撫で下ろす。
瑞神もその仕草に倣った。
昇る月は何時かの日より輝きを増している。
それは母神の――『豊底比女』と呼ばれた此の地の主神の力が増していることと同義である。
邪魔立てされなければ後幾許もなく、光明を差すことが出来たであろうに。
あの天香 遮那と、神使の所為である。
彼等は瑞神や黄龍の知らぬ内に中務省より離反し新たな立場を得ていたのだ。高天京特務高等警察:月将七課と。
特異的な立場となり行動を開始した彼等を『ヒトの世に存在する法』で縛ることは出来まい。
独立的な存在で有る以上、霞帝も手を拱いている。どの様に動くべきか、それが『ヒト』の世で難しいならば――
「黄龍、宜しいですか。『四神』へと伝えるのです。
母は酷く心を痛めていらっしゃる。……不届きにも月(よる)に魅入られた者共にこの国の『礼儀』を教えて差し上げなさい、と」
――ふと、瑞神は息を吐く。体がやや怠い。神霊という身ならばその様な疲労も空腹も感じることはない筈だというのに。
まるで己の体が何ものかに勝手な行いで使用されているかのような違和感。
夢で出会った彼女等が現実に侵食すると言っていた言葉の意味さえ理解は遠く。
ヒイズルに生きる彼女等にとって、愛すべきは母なる神――豊底比女である、と。
それだけが確かなのであった。
――神霊とて、道を違える。ならば、正さねばなりません。分かりましたね瑞兆の獣、第一の娘。瑞よ。
……そう言っていたのは、誰だっただろう……?
※ヒイズルでもイベントが進行しているようです。
現在の侵食度:????
これまでの再現性東京 / R.O.O
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