PandoraPartyProject

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世界イデア論

 広い広い牧場のまんなかに、そよぐ草たち。
 ずっと遠くを見つめていたセフィーロ(p3x007625)はきびすを返して、無言の邸宅へむけて歩き出した。
 ここはレジェンダリア伝承王国、メーヴィン領。広大な牧場と僅かな領民で構成された土地である。

 突如ROO内にて発生したイベント『■■■■■■■-CCC-■■■■■DEA』。通称『イデア崩壊』
 マニエラ・マギサ・メーヴィンの治める領地を舞台に起きた三つの初期クエストからなるイベントで、このクリア状態に応じて新たなクエスト群が発生するというイベントである。
 こう聞くと「あまりにゲーム的だ」と考えてしまうが、実際これはゲームだ。練達国が国をあげて行う混沌法則解明計画ProjectIDEAの主幹にして仮想世界Rapid Origin Onlineが突如原因不明のバグに侵され混沌と似て非なる世界ネクストを生成した。と同時に世界はMMORPGめいたシステムに支配され、ログインした者たちは無数に存在するクエストを攻略していくという形でバグの究明やそれによって生じた被害の解決を可能としていた。
 『イデア崩壊』もまた、そんなクエスト群のひとつだと思われるが……。

 屋敷へとやってきたのは、今回の初期クエストに参加した24人のイレギュラーズアバターたちである。
 大広間に入ってセフィーロが見回すと、ファン・ドルド(p3x005073)玲(p3x006862)の姿もある。彼らは思い思いの形で過ごし、一部の者は今回の結果について議論しているようだった。
 全員がそうだというわけでないのは、ローレットらしい自由さと言ったところだろう。
 厚く手触りのいい絨毯に座りくつろいでいるのは勇(p3x000687)だ。
 向かいに座るリアナル(p3x002906)が頭を抑えて唸っている。
 いりす(p3x009869)が飲み物のはいったコップを両手にもってやってきて、リアナルへと片方を差し出した。
「大丈夫? 落ち込んでる……みたいに見えたけど」
「いや、そういうわけじゃないんだが……なんて言ったらいいか。複雑だな」
 ここメーヴィン領地は過去幾度にもわたって『リセット』現象が起きていた。
 その土地が致命的な崩壊を受けた場合におきるバグの一種だ。
 最近だと、領主であるマニエラ・マギサ・メーヴィンが死亡した際におき、広い牧場とぽつんとたつ屋敷だけというあまりにもこじんまりとしたフィールドががらりと姿を変え、立派な街と沢山の領民と潤沢な領地経営というおよそ対照的な状態に変化していた。
「あのときは、領主様の記憶は無くなっていたんだよね……?」
 いりすの問いかけにイエスの頷きを返すリアナル。
 崎守ナイト(p3x008218)はその話を聞きながら、じっと黙っている。いつもはテンション高くへんなポーズをとりはじめそうなものだが、彼の表情は奇妙なほど真剣で、そして重々しい。
「ま、個別に話してても仕方ないっスから。まずは今回おきたことをまとめませんか?」
 ミミサキ(p3x009818)がもっともな事を言い、それまで黙っていた蛍(p3x003861)珠緒(p3x004426)も頷いた。
 会話の内容を要約するとこうだ。

 <イデア崩壊>アストラルレイヤー――失敗
 <イデア崩壊>Empアイテールの証明――成功
 <イデア崩壊>ぼくとあなたのハッピー・エンド・ロール――成功


 そして細かい点を上げていくならこうなる

 メーヴィン領地:立派な街→リセットされ牧場に変化(夫もできた)
 領主マニエラの記憶:今回はリセット前の状態を覚えている
 ピクセル:全領民がピクセル→ピクセル領民はゼロ
 八田の系譜:主格5名が消滅。代わりに八田 罪(sin)が発生。その後の行方は不明。
 八田の系譜の狙い:一連の現象を利用して『ひとつになること』を目論んでいたと思われる。
 アンロットセブン:撃退に失敗し、街を破壊された。
 ザムエルの狙い:不明。『アストラルレイヤー』という気になる単語があった。
 六■高校:消滅。崩壊の際に[エイス][イデア][その他の生徒]を生存させた形。
 六■高校の秘密:この高校は生徒含めある日突然『発生』し、それから毎年同じ年度をループしていた。
 エイスの秘密:八界巡りに発生したエイスとは別個体、ないしは新規作成された存在であると思われる。

「ふむ、なるほど……」
 プロメッサ(p3x000614)は一連の話を聞いたあとで腕組みをし……。
「全くわからん」
「ええ、まったく……というより、専門用語が多すぎて初見の人には少々厳しいまとめ方をしましたね」
 ファンは一旦メタな言い方をしてから、『気になる言葉はありましたがまだパズルのピースが足りないように思います』と続けた。
 その横顔を見やる玲。
「たかくらさんのことはどうするのじゃ? なんかコンソールに台詞が出てくるくらい存在が浮いてたんじゃが……」
「あれはもはや、現段階で何かがわかる存在ではないでしょう。すべて終わったあとに分かるタイプです」
 ちなみに、コンソールに表示されたたかくらひんとの答えはなんとなく分かっている。
 アンロットセブンという七人の戦士が玲(厳密には秋奈)の世界にいたが、ROOではそのうち二つが空席であり弐番が繰り上がっていた。ROOでは別の場所に同じ名前のそっくりさんがいるケースはいくつも確認されているのでダブり回避という線はない。であるならば、『混沌に召喚された二人』を意図的に除外してこの存在が作られたということである。
 ROOにおけるアンロットセブンやザムエルたちが混沌側の存在を認知しある程度理解しているという側面的な事実が、ここで明らかになったのだ。ちなみにそれは、最初からちょっと分かっていたことでもある。
「ともかく」
 蛍はパチンと手を合わせ、皆の注目を集めた。
「この世界に対して『意図的に』バグを発生させて干渉する存在がいることは明らかになったわ。
 いま鋼鉄国を支配してる存在と同列の存在かもしれないわね」
「そして、いま注視すべきは……」
 珠緒がウィンドウを開く。
 そこには■■■■■■■-CCC-■■■■■DEAイベントの項目が残っており、『第二部クエスト待機中』と表示されていた。

 ※イベント『イデア崩壊』が次の段階に進もうとしています

これまでの再現性東京 / R.O.O

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