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約束の日
『約束の日』――
それはフォルデルマン三世が幻想王国へと発した『ブレイブメダリオン・ランキング』の終結の日である。
――いまこのとき幻想王国中で起きている奴隷問題をはじめ様々な事件を解決したローレット・イレギュラーズには、解決するごと、解決に携わったすべての者に、『ブレイブメダリオン』を授与するものとする。
――王の定められる『約束の日』までに最もメダルを持ったものを、次世代の『勇者』に任命する。
奴隷事件から始まり混迷を極める国内を統治する為に――果たしてそうで在るかは定かではない。伝説に則ったことは確かなのだろう――国王フォルデルマンが発した『次世代の勇者』選定へは多数の貴族達が自身らの兵を投入し大いに賑わいを見せた。
「正解であった、な。うむ。国内を荒らし回っていたモンスターは『次世代の勇者』となるべき者達が倒し、荒れた領にも平穏が戻ったと聞く。
モンスターを根絶やしにすることは叶わないが、実に良い案であった。うむ! 実によく賑わった! 愉快であった! 見ているだけで心が躍ったとも言う!」
ご存じの通り、フォルデルマン三世は『放蕩王』の呼び名を欲しい儘にする。彼の近衛騎士に言わせれば『アホ王』だ。
勇者の証(ブレイブメダリオン)を巡る事件の背景には様々な要素が絡み合っているようだが、彼はそんなことに興味は無い。今は唯、約束の日がやってきた事が嬉しくて嬉しくて堪らないのだ。
イレギュラーズ等の前に現われたフレイスネフィラと名乗る女の事も。
『自身の妃候補』であった令嬢の兄、ベルナール・フォン・ミーミルンドの事も。
ミーミルンドに心酔し、褐色肌の奴隷を集め続ける奴隷市の黒幕クローディス・ド・バランツの事さえも。
フォルデルマン王は興味は無かった。ちょっぴり興味があるとするならば太陽の神翼ハイペリオンの事だ。建国王――つまりはフォルデルマン三世の『祖先』である――の盟友であったという神翼獣の登場は其れだけでフォルデルマンの心を躍らせた。
「実は私はポジトリ・ウィツィロにまつわる『神の翼の物語』が大好きだったんだ。幼い頃には母上に良く演劇に連れて行ってもらったり、私も何時か建国王のように旅に出たいと願ったものだ!
いいや、私はこの国の王だ。そうはいくまい……さてさて、そろそろか。『約束の日』に鐘を鳴らすと決めていたのだ。その鐘が鳴ったとき、真なる勇者が決定されると!」
――因みに、鐘というのも『神の翼の物語』の演劇で出てくるものであった。ハイペリオンがその鐘を鳴らし、勇者王アイオンとの友情を誓ったのだとか。諸説有りけり。
故に、フォルデルマン三世は『記念すべきこの瞬間』に鐘を鳴らして欲しいとハイペリオンに願っていた。
ええ……ええ、はい。構いませんよ。鳴らせば良いのですね? ええと、どうやって……『ゴーーーン』?
些か困惑していたがハイペリオンは確りと『ゴーーーン』と鳴らしてくれるだろう。フォルデルマンは気分が良すぎてディープシーブラッドワインを飲み干して深緑より取り寄せたHermitをグラスに注ぎ入れたばかりである。
「ふむ……ソーシソンと言ったか……これも美味ではあるな。夕飯に用意させたトンテキ弁当とやらも良かったが……さて」
「そろそろか?」とフォルデルマンは振り返る。
彼の近衛騎士は揃って首を振った。
「そろそろだろう?」
また、近衛騎士は首を振る。
まるで幼い子供のように、その時が楽しみで仕方が無いのであろう。
「そろそ――」
ゴ―――――――――――――――ン
鐘の音が鳴り響いた。それがブレイブメダリオン・ランキング集結の合図である。
この時でメダルを多く持っていたモノが勇者となる。さて、結果はどうなったであろうか。
「結果は!? ふむ、ふむふむふむ……そうか、そうか! 成程!
ははあ、そうかそうか! 明日、結果を民へと知らせることとする! パレードだ! 盛大に『次世代の勇者』を祝おうではないか!」
堂々と宣言するフォルデルマン三世に近衛騎士達は頭を痛めながらも承諾するしか無かった。
――ブレイブメダリオン・ランキングでの『ブレイブメダリオン』の譲渡が一時的に不可能になりました。
これまでのリーグルの唄(幻想編) / 再現性東京 / R.O.O
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