PandoraPartyProject

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勇者の台頭

 ――次代の勇者を称える流れが各地で活発になっている。
 ブレイブメダリオン。かつての勇者王とも縁あるとされる一品は伝統と貴族の国家である幻想では大きな意味を持ち……更に昨日は、神翼庭園に現れた魔物の撃滅に功を成した者達に多くのメダルが配られたという――
「これはミーミルンド卿、ご機嫌よう」
「あらこれは遊楽伯爵様――ええご機嫌よう」
 そんな折。『遊楽伯爵』ガブリエル・ロウ・バルツァーレク(p3n000077)は幻想首都メフ・メフィートの王宮である人物と挨拶を交わしていた。
 それはベルナール・フォン・ミーミルンド男爵。
 王家の相談役として爵位を賜ったとされるミーミルンド家の現当主であり『月の男爵』とも謳われた美貌の持ち主――であるのだが、昨今では女性の様に化粧をし、衣装もまたまるで令嬢が如き様相を。
 その姿は彼の妹であり故人、マルガレータを思い出させると噂で……
「まさか伯爵様とお会いできるとは思ってもいませんでしたわ――
 ええ。なんでもあちこちに出没している魔物達の事件を任されているとか」
「はは。誰かがやらねばならぬ事ですからね……しかしそれもはたして必要だったかどうか。イレギュラーズの方々のご活躍により、私など出る幕もなさそうですよ」
 少なくとも今の所はとガブリエルは紡ぐ。
 魔物。先述した神翼庭園の件もそうだが、今は幻想各地に妙な魔物が出没している。
 空を舞う鳥や、或いは巨人の様な姿を持つ魔物が――特に多いのだとか。
「……そういえば、ミーミルンド卿は先日イレギュラーズに依頼をだしたそうですね。
 奴隷のオークション絡みで」
「あら、伯爵さまの麗しいお耳に入るとは……ええ、しかしそれが?」
「その場には巨人もいたと聞きましたが――何かご存知な事は?」
 ミーミルンド家は奴隷を仕入れどもその扱いは家族の様に接すると聞く。
 が、先日紆余曲折があった末にミーミルンド家の奴隷が一人、不当にオークションに掛けられる事になったそうなのだ――それ故に精鋭の力を求めたベルナールはイレギュラーズに依頼を打診。オークション会場に彼らを向かわせ……

 そしてその場には『巨人』も売られていたそうなのだ。

 しかもただ体の大きい存在がいたという訳ではない。
 情報によれば――その姿はベルナール――いや失われた彼の妹のマルガレータに瓜二つだそうで――
「あはははは。まさか、私が巨人と知古の間柄とでも――? 一切存じませんわ」
「……そうですか。ええ、そうでしょうね」
「それよりも懸念されるべき事の方があるのでは?
 『とても大切なもの』はまだ見つかっていないのでしょう?」
 話を打ち切るかのように。或いは逸らすかのように――ベルナールが言うのは『レガリア』の一件だ。
 王家、いや王権の象徴とされる物品はレガリアと呼ばれ、それの一つが安置されていたスラン・ロウなる場所が何者かに荒らされたという……この件は極秘であり世間一般には情報は出回っていないが――しかし貴族社会の中には既に噂として、或いは既に確定事項として。
 『沈黙の真実』として出回っているのだ。
 たかが一男爵の事情に構うよりもそちらを先に……と。
「まぁ焦ってどうこうなる様なモノではないでしょうが、しかし陛下は『約束の日』も定められたとか。なんでもそちらの方でも準備があると伺いましたけれど?」
「貴方も耳の早い方ですね……しかし口が軽い事は無いように祈っておりますよ」
 ええ勿論! 言うはフォルデルマン三世が定めた『約束の日』――
 つまり現在行われている勇者総選挙の決着日の事である。

 5月1日に最もメダルを集めている者が称えられる。

 この宣言が出てからにわかに巷でも勇者ブームが起こっているのだとか。我こそは勇者であると……もしくは現在活躍している勇者たるイレギュラーズ達に続けと……多くの声も出ていて。
「世は正にメダリオンの争奪戦に熾烈を極める頃……
 貴族の中には勇者を擁立する者もでているのだとか。
 さてさて勇者を自称し『偽』のメダルを持つ者など――出て来なければ宜しいですけれどね」
 では失礼と、ベルナールは王宮の通路に歩を進めていく。
 王の宣言以降各地で増える勇者たち……一部ではメダリオンの偽造も行われているという話もあり、それもガブリエルの頭を悩ませる事態の一つだ。正確なメダルの把握が必要たる身としてはメダルの偽造など冗談ではない。
 勇者を志す熱のある者が増えて、魔物への打倒が進むだけなら良いのだが。
「……さて。なんとも、事態が上手く進むよう――祈るしかありませんね」
 ガブリエルは吐息を零す。
 窓の外、果てまで広がる青空は美しく。
 幻想を渦巻く動乱もこのように清らかになってくれればと――願わざるをえなかった。

これまでのリーグルの唄 / 再現性東京

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