PandoraPartyProject
開かれし『扉』
――大鴉盗賊団が起こした一斉蜂起『Raven Battlecry』は収束に向かいつつあった。
色宝の奪取を幾度と妨害され、また商会の掃討作戦により窮地に立たされていた大烏盗賊団の起こした行動……その大部分はラサ商会とローレットのイレギュラーズによる共同作戦により粉砕された。
だが乾坤一擲の秘策である宝石竜『ライノファイザ』による攪乱は壮絶なものであったと言えよう。
厳密には純粋な竜ではなく『弄られた』存在であったとはいえ、あと一歩間違えればあわやの事態にまで追い込まれた。結果としてはルカ・ガンビーノ(p3p007268)の死力を尽くした『奇跡』により難を逃れ、宝石竜はどこかへと飛び立ったものの――もしそれがなければどうなっていた事か――
尤も。宝石竜はともあれ、同時に現れていた水晶亜竜の戦いでは勝利を収めていた。
傭兵団『凶』の長、ハウザーと共にタイム(p3p007854)達が尽力し。
傭兵団『レナヴィスカ』のイルナスと共に錫蘭 ルフナ(p3p004350) 達が全霊を賭した結果である。
また――大鴉盗賊団の中でも屈指の実力を持つ『蛇瞳』ジブリール・アドワも撤退に追い込んだ。快楽殺人鬼にして、巨大な鉤爪にて敵を追いこむ彼はマルク・シリング(p3p001309)らの防衛を遂に崩せなかったのである。
ネフェルストの防衛はこれで完遂した。
そしてファルベリスト遺跡群での戦い――首領たるコルボが出撃しているかの地での戦いも終わった。
パサジール・ルメスが一員レーヴェンを拉致し、その知識をもって遺跡の深奥へと往こうとしたが、奪還と妨害に向かったイレギュラーズとの戦いにより退く形となる。
真っ先にソア(p3p007025)がレーヴェンの奪回に動いたが故か、レーヴェンに大きな傷も無く大事無いようだ。彼らは強欲であり、いざとなれば人質の身など『喋れさえすれば』気にはしない連中。
軽傷で済んだのはイレギュラーズ達の奮闘あっての事だろう。
そして――コルボに並んで遺跡の奥へと進んだ地では――
「……はぁ、全く。まさかあんなに『頭の可笑しい死者蘇生ごっこ』があるなんてね」
遺跡の一角より顔を出したのは――少年だった。
彼の名はリュシアン。
魔種の一人にして、しかし『遺跡の奥で見たモノ』が認めがたいモノであったが故に――イレギュラーズの撤退に力を貸した者だった。イレギュラーズと魔種は不倶戴天の敵同士ではあるが、しかし。
「博士(せんせい)――全く。痛い目を見ればいいんだよ」
吐き捨てるかのように呟き、彼は外の空気を喉奥へと運ぶ。
ああ――地下の空気は陰鬱だった。ただ単純に淀んでいるとかそういう事ではない。
あんな土塊共が。生命の成り損ない共が『あんなに』いれば――良い気分ではないから。
同時。リュシアンとは別の方面からは、一人の少女が遺跡の外界へと到達する。
彼女は、自らを『イヴ』と名乗った。
不思議な雰囲気を携えていた少女であり、イレギュラーズと意志の疎通も出来る様だが。
「でも、今は駄目」
彼女は言う。『今』は語れないと。
あの遺跡の奥に『何』があるのか。あの『土塊』は一体なんだったのか――
それはあと数日待って欲しい、と。
「今は――?」
「ええ。『今』は聖女の祈りが強すぎるから」
イヴと名乗った少女は天を仰ぐ。
聖女の――祈り――?
もしやシャイネンナハトの御伽噺の事だろうか? 世界から争いがない日という……
「聖女の祈りが過ぎ去った後なら、話せる。
ただ……そう。あの土塊の事は……私達は『ホルスの子供達』と呼んでいた」
「ホルスの子供達……?」
聞き慣れない単語だが……これ以上は話せないというのなら、詳細はまた後日、か。
……どうせあと数日の話だ。そう遠い話ではない。
無理に聞き出すなどレーヴェンを攫った大鴉盗賊団と同じになってしまう。
ならば、数日ぐらい待とう。
それに直近に迫った聖夜の輝きは――皆楽しみにしているのだから。
*Raven Battlecryが収束しました――