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シナリオ詳細

<Raven Battlecry>スフェーンの光

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大鴉の足跡
「センパイ! センパイ!!」
 そう叫びながらパタパタと駆けてくる『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)。彼女はイレギュラーズたちの前まで走り寄ると、肩で息をしながら「見つかったっす!」と叫んだ。ラダ・ジグリ(p3p000271)はリヴィエールに水の入ったグラスを出しながら口を開く。
「落ち着け。何がだ?」
「レーヴェンも、コルボも、どっちもっす!」
 叫んでグラスから水を一気に煽るリヴィエール。そこへ笹木 花丸(p3p008689)が目をまん丸に見開いて詰め寄る。
「レーヴェンさんとコルボが一緒にいたのっ?」
「そうっす! レーヴェンが……レーヴェンが捕まっちゃってたっす! 助けてくださいっす!!」
「もちろんだよ!!」
 がっしと両手を取り合うリヴィエールと花丸。だがその勢いをラダは「待て」と諌めた。
 レーヴェンがコルボに捕まっている。だとすればそこには目的があるはずだ。例えば、何かの交換材料。彼らが求むるのであれば、おそらく今ローレットを騒がせている――。
「色宝じゃないみたいっす」
「え?」
「む、」
 きよとんとする花丸とラダ。リヴィエールは繰り返し「違うっす」と告げた。
 今、ローレットにはフィオナ・イル・パレストより大鴉盗賊団がネフェルストの倉庫――色宝の集まっている場所だ――を襲うという情報が寄せられている。そこを強襲すれば一気に大量な色宝が手に入るということらしい。
 故にローレットは今、強襲される場所へ先回りすべく数々の依頼をイレギュラーズたちへ提示しているところである。
「あまりに情報漏洩が激しい、というか」
「それは、うん。こんなバレバレでいいの? って感じ」
 だからこその人質で、大々的に取引させるつもりなのかとも考えられた。だが。
「皆思ってるっす。これは陽動作戦みたいっすね」
 陽動とはいえ、コルボが自ら物資強奪に出陣し裏でレーヴェンを攫った時と同様に『それぞれが独立した作戦』ではあるのだろう。前回は物資とレーヴェン。今回は色宝と、その他に。
「2人が見つかったのはこちらへ向かう一軍ではなくファルベライズっす。遺跡の中核、その奥へ進むつもりみたいっすよ」
「そのための人質ってこと?」
 恐らくは、とリヴィエールは頷く。パサジール・ルメスは色宝と関わりがあると言う。故にその血を引く彼女を連れて行くのだろうと。
「コルボをファルベライズの奥へ行かせるわけにも、レーヴェンを見捨てるわけにもいかないっす! だからセンパイたち、手を貸して欲しいっすよ!」


●酒場『燃える石』
 カラン、と崩れる氷を眺め、キドー(p3p000244)はリヴィエールが話していたことを考えていた。そこへ不意に影が指す。
「よお。大鴉盗賊団のところへ行くんだろ」
「ザイードか」
 片手をあげる民族的な衣装を纏う男は、キドーの隣へどかりと腰を下ろす。そしていつものように酒を頼むとキドーを横目で見た。
「なあ、俺も混ぜてくれよ」
「アンタはローレットに所属ねぇだろうが」
 だからだよ、とザイードは目を細めて小さく笑う。彼はイレギュラーズでありながらローレットに籍を置いていない。裏のコミュニティで日銭を稼いでいた。故に――口利きをしてくれ、ということである。
「こんな機会はまたとないぜ。それによ、俺はもしコルボがのし上がってくってんなら確認したいこともある」
 ザイードは特に誰と組むわけでもなく、1人で戦い、盗み――時には暗殺も――行動している。コルボが幅を効かせるようになればそれがやりやすくなるかも知れないし、逆にやり難くなるかも知れない。どちらかといえば危惧するのは後者だ。
「お前ら(イレギュラーズ)には別の目的もあるんだろ。人手はあった方が良いと思わないか?」
 ふむ、とキドーは考え込んだ。聞き及ぶだけでもコルボは強敵だ。なればこそ、彼のその言葉は正しい――どこでそこまでの情報を掴んだか、は置いておいて。
「通るかわからねぇが掛け合ってもいい」
「頼むぜ」
「それと今回は奢りな」
「……」
 間髪入れず付け足したキドーにザイードは黙り込む。それを肯定ととったキドーは店主へ一番旨い――そして高い――酒の名を嬉しそうに告げた。


●いざ、地底湖へ
 静かに、しかし早足で進む影がある。すでに空は見えず、薄暗い道が続いていた。

 ギィェエエアアア!!!

 鋭い鳴き声をあげてそれらに飛び込んだ影は刃に、或いは拳に、また或いは魔術でその命を刈り取られる。転がった魔物の残骸にコルボはふんと小さく鼻を鳴らした。
「手応えもねェ」
「それはお頭の場合だけですがね?」
 そう告げるコラットもまた、一撃で急所を裂いていたのだが。飛んだ体液を1滴も付着させていない彼は涼しい顔で武器をしまい、部下たちを促した。
「気ぃ抜くなよ、もう少しだ」
 その視線は縛られてパカダクラへ荷物のように乗せられたレーヴェンへと注がれるが、逃げる様子がないと見るや前を向いた。
(ま、逃げられないだろうが)
 彼女には『彼女の友人のために』随分と念押しをした。ここで逃げようとすればパカダクラから落っこちて川を渡ることになるぞ、とも。そもそも誰だって死にたくないだろう。
 ファルベライズの奥をだいぶ進んだように思う。暗がりに慣れているとはいえ、ここまで奥まった場所までくれば逆に警戒も高まるものだ。深くまで入れば入るほど、出る時も時間はかかるのだから。
 ここで『陽動部隊はうまくやっているだろうか』なんて口にする者はいない。うまくやって当然、そしてここでの心配には何の意味もない。自分たちのすべきことは無事にこの奥へ到達することである。
 その耳に、ふと。小さく音が聞こえた。
(なんだ?)
(石の転がった音だ)
(追手かもしれん。注意しろ)
 視線と小声のやり取りの後、また早足で進み始める一同。視界に地底湖と、淡く虹色に輝く扉を認めた頃――後方よりその姿を見つけた者たちがいる。
 そう、君たちだ!!

GMコメント

●成功条件
 大鴉盗賊団の撤退
 レーヴェン・ルメスの生存

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。不測の事態に気を付けてください。

●『大鴉盗賊団頭領』コルボ
 大鴉盗賊団を取りまとめる頭です。色宝を我が物にせんとしており、その先には何らかの願いがあるのでしょう。今回もおそらくその一環として地底湖へ向かったとされています。
 戦闘時は格闘で迫る強力な至近ファイターとしてイレギュラーズの前へ立ちはだかります。元より名のある男ではありましたが、近頃は盗賊団のことを抜きにしても噂が広がっているようです。
 今回は邪魔をされない限り、イレギュラーズを部下に任せてレーヴェンを連れて地底湖中央へ向かうつもりのようです。思い通りにならなければ多少傷つけても良い考えです。

剛腕:自らの筋肉を活性化させ、より攻撃的になります。
見切り:眼力を強め、視界をよりクリアにします。他者の動きも良く見えるでしょう。

●『俊足の』コラット
 コルボの部下であり大鴉盗賊団幹部です。見かけはよく酒場に居そうなおっちゃんですが、砂場をものともしない俊敏さと機動力を見せます。空を舞い、獲物を狩る双剣使いのスカイウェザーです。
 大鴉盗賊団が有名でない頃から所属しており、コルボとは長い付き合いのようです。そのためか2人での会話は気安いところもあります。
 今回は襲撃をある程度予想してか、武器に何か仕込まれているようです。コルボの邪魔をしようとする者を優先して攻撃します。

乱舞:砂の竜巻は無数の鋭利な刃となって。【流血】【混乱】
俊足:目にも留まらないとはまさにこのこと。【移】【体勢不利】

●パカダクラ×1頭
 盗賊団の引きつれるパカダクラです。戦闘開始時はまだ人質のレーヴェンを積んでいます。とても気性が激しく、盗賊団以外の者が近づくとひどく攻撃的です。

地鳴らし:ダカァーッ!!【乱れ】【崩れ】
噛みつき:ダカァーッ!!!【出血】

●部下×8人
 盗賊団の一員ですが、ここまで連れて来られるとあって精鋭揃いです。剣、槍のほか魔術を扱う者もいます。
 彼らは揃ってコルボとレーヴェンへ向かう者を邪魔してきます。それなりに連携した動きを見せてきます。

屈強なる盾:2人までブロックし、ブロックする数が少ないほど防御力が上昇します。
投擲:槍に込めた力を遠くへと放ちます。
魔術紋:一時的に威力をあげる紋を付与します。

●フィールド
 ファルベライズ遺跡群の更に奥まった場所に存在する地底湖です。中央の小島には淡く虹色に輝く扉が見えています。
 空は見えず、しかしそれなりの広さがあるようです。暗いですが盗賊たちは影響を受けていないように見えます。

●レーヴェン・ルメス
 パサジール・ルメスの民でありリヴィエール(p3n000038)の友人です。大鴉盗賊団に攫われ、人質として連れてこられています。
 戦闘能力はなく、手足を縛られています。シナリオ開始時点では軽傷で、パカダクラに乗せられています。あまりにパカダクラが暴れると受け身をとれずに落ちます。

●友軍
・ザイード
 キドーさんの関係者です。酒場『燃える石』の常連であり盗賊でもありイレギュラーズです。
 今回は同業者(盗賊)としてコルボがどのようなスタンスなのか確かめるため――それが自分と相容れないものであれば放っておくことはできないと立ち上がりました。
 槍の扱いに秀でており、右目には治癒能力を持っています。

●ご挨拶
 愁と申します。
 彼らに先行させてはなりません。必ずや止めましょう!
 それではどうぞ、よろしくお願い致します。

  • <Raven Battlecry>スフェーンの光Lv:25以上完了
  • GM名
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年12月22日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ラダ・ジグリ(p3p000271)
天穿つ
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
矜持の星
マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使
アト・サイン(p3p001394)
観光客
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ソア(p3p007025)
雷虎
エルス・ティーネ(p3p007325)
デザート・プリンセス
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
航空指揮
笹木 花丸(p3p008689)
なじみさんの友達

リプレイ


 首都は今頃戦闘の剣戟や怒号が響いているからだろうか。こちらもあと少しすればそうなるのだろうが、今はまだ静か。そこへぽつりと1人が声を上げる。
「ザイード」
 呼ばれた男は小柄な影――『ザ・ゴブリン』キドー(p3p000244)へと視線を向ける。彼は前方へと気を払いながらザイードへと再び口を開いた。
「お前のスタンス云々は知らねえが、戦う前に警告しておくぜ。
 今、妙な真似をすれば俺らの報酬と名声の足しになるだけだ」
「そうだな。ローレットと、大鴉。どちらを敵に回すのが、マシか。良く考えろ」
 『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も念のためと釘を差すと、ザイードが小さく肩を竦めた。
「わかっているさ。軽率に決めたりはしねぇよ」
 それはつまり――考えた上で利があると考えるのならあちらへつく、ということだろう。キドーはふん、と小さく鼻を鳴らして先に進んだ。
(このような所で、何を狙っているのやら)
 エクスマリアは『ザイードはキドーが注意してくれるだろう』と心の片隅で考えながら先へ進む。この先に大鴉盗賊団の幹部及び頭領、そして人質となったレーヴェンがいるのだと言う。だがこのような場所で何を為すと言うのか、ラサの情報通ですら掴めない何かを彼らは知っていると言うのだろうか。
「待て」
 エクスマリアはふいに小さく告げ、一同が足を止める。何だという声が上がりかけたが、微かな他の気配に誰もがすぐさま息を殺した。
 誰だ。敵か、味方か。それとも全く関係のない第三者か。それは何らかの声を上げながら――イレギュラーズたちから遠ざかって行ったらしい。恐らくは住み着いた魔物の類だろうが、引き続き警戒しながら奥へ向かった方が良さそうだ。
(気になる事はある。……だが、それを調べる時は今じゃない。そうだろう?)
 レーヴェン、と『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)の唇が形取る。色宝、ファルベライズの遺跡、そして大鴉盗賊団。全てが動き始めるきっかけとなった女性。彼女とはラサへ護衛する依頼からの縁だ、もうそう浅くはない。故に――当然、情も湧く。
 どうか、無事に救い出せるように。そのために彼女が大人しくしていてくれますように。ラダはそう願いながら、いよいよ暗くなってきた先を見てサイバーゴーグルを装着した。
(もう少しの辛抱よ、レーヴェンさん……!)
 『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)も心の中で祈りながら奥へと向かう。そう遠くない――そんな予感がした。
 ランプや暗視能力で暗さを補い、足元に気をつけながら静かに進んでいく一同。ふと小さな風が頬を撫でた。
「どこかに、通じているの……?」
 風へ導かれるように進み始めた一同――とうとう盗賊たちと接敵した。
「敵襲!」
「来たか、イレギュラーズ!」
 コルボが好戦的にニィと笑みを浮かべる。この奇襲自体は決して好ましいものではなかっただろうが――彼個人として言うのならば、イレギュラーズと戦うことに一種の楽しさを覚えているのかもしれない。
「いやあ追いついた追いついた。救出は頼んだよ」
 角灯で敵の位置を確認した『観光客』アト・サイン(p3p001394)はそう告げると敵陣へ躍り出る。一見ただの冒険者、されどもここまでくるならばそれ相応の力を持ったイレギュラーズなのだと敵が襲いかかる。
「ほら、その程度じゃあ僕はすり抜けちゃうよ」
「チッこの!!」
 ひょいひょいと攻撃を躱すアトに盗賊たちが自らの肉体で壁を作り阻む。アトは内心でほくそ笑んだ。
(それで良い)
 めいいっぱい守ると良い。それだけ相手は弱くなるのだから。
「それじゃあ、珍しく観光客の正面戦闘をお見せしようか」
 そう告げてアトは――角灯をぶん回した。
「初めましてだ、コルボ。噂はかねがね聞いてるぜ」
 その中を走り抜け、コルボの前へ立ちはだかるは小躯なキドー。巨躯のコルボと並び立てばその差は明確なものとなる。けれども体の大きさ程度でビビるような器ではない。
「盗られたモンは必ず盗り返す。それが俺のやり方よ」
「へえ、てめェも盗賊か。頭ン中の鬱陶しいヤツもてめェの仕業か?」
 とんとん、とこめかみのあたりを指で叩くコルボ。彼の頭の中には今頃霧がかっていることだろう。
「俺を見ろよコルボ、相手してやるぜ!」
 立ちはだかるその姿はどうしてか、より強大にも見える。コルボの片割れであるコラットはそれなりの人員がこちらへやってきているとすぐ理解したらしい。
「ま、流石に陽動にひっかかるほどバカじゃないか」
「――当たり前だ。レーヴェンさんと、この先にあるものは頂くぞ」
 コラットの呟きに何者かが返す。はっとコラットが双剣を構えると同時、リリカルスターが彼の元へと飛来した。落ちる其れの間を縫うように回避して――けれどもその不意打ちには全てを避けることはできず――コラットはそれが飛んできた方向を見やる。
「同業?」
「下賤な盗賊と一緒にするな。俺は怪盗だ」
 飛んでいても素早く間を詰めた『怪盗ぱんちゅ』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は仕込み杖を構える。強奪に略奪、果てには人質を取るような者たちと一緒にされては困るのだ。
 そこへ雷が飛来する――否、黄金の髪が帯びた電気の弾が飛んでくる。それを受け流したコラットにエクスマリアは小さく目を細めるも、「次」と短く言って近づくべく走り出した。
 1発で当てる必要はない。当てられるなら幸運だが、当たらないのなら執拗に当てに行くまでである。
 後方にいたマルク・シリング(p3p001309)はその視界に囚われたレーヴェン・ルメスを収める。顔は見えないが縄で縛られ運ばれている姿にマルクは歯軋りした。
 旅から旅への商いの話。今運んでいる商品の話。ほんの少し前の出来事だけれど、彼女は目を輝かせながら話していたことを覚えている。
 そんな彼女が欲望を満たすための手段に――犠牲になってたまるものか!!
「レーヴェンさんには、絵のモデルの先約がありましてね。いつまでもそちらでお預かりされると困るのですよ」
 そう告げる『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)はいつのまにか敵陣に立っていた。そう、立っている『だけ』だった。サイバーゴーグルをつけたスーツの男に盗賊たちが一瞬ギョッとするも、動揺をすぐさま収める様は流石精鋭といったところだろう。
「おい、やっちまえ!」
 無防備な佇まいなれど、この場でその姿は明らかに異様だ。『よくわからないけれどヤバそうな奴』を早々に潰してしまおうと複数人で一斉に襲いかかる。攻撃を避け、ステッキ傘て受け流し、受け止めて。寛治はコラットの方を一瞥した。あちらはアルヴァとの追いかけっこに興じているらしく、ひとまずこちらへ向かってくる――他を邪魔立てするような動きは見られないか。
(ならばこの状態を継続ですね)
 マルクの力が傷つく寛治を瞬く間に治癒していく。紋付きの敵が放つ攻撃はなかなかに重いが、この序盤に倒されるなどあってはならない。
 闇に溶けるような大鎌が手下たちへ肉薄し、氷の旋風を起こす。エルスはその中心に立ち、キッと敵陣を睨みつけた。その先にいたパカダクラ――その上に荷物のような乗せ方をさせられたレーヴェンとも目が合う。どうやら意識はあるらしい。早いうちに助け出さなければ。
(そのためには……こちらへ全力で引きつける!)
 寛治が、仲間たちが敵の気を引いて足止めをしている。自身も仲間がいざという時に動けるようにせねば。
「今こそ勝負の分水嶺。そう簡単に倒れはしませんよ」
 パンドラの奇跡を見に纏い、寛治はステッキ傘を構える。寛治へマルクの放つ大天使の祝福が癒しを捧げ、彼を支えた。
 強力なアタッカーであるコルボや俊敏なコラット、彼らの連れてきた精鋭たる手下を直接相手取ればマルクはたちまち負けてしまうかもしれない。けれどマルクの磨いてきたものは『そこ』ではないから。
(後ろから支える力なら)
 負けない。負けてなるものか。攻勢を見せる敵と迎え撃つようにマルクは全体を俯瞰して態勢を整える。より効率的に回復が届くよう、初動の順さえも逆手に取りながらマルクはソア達の様子を見た。
「邪魔しないでっ!」
 『虎風迅雷』ソア(p3p007025)のかまいたちがあっという間に盗賊たちへ飛んでいく。寛治の範囲に入りきらなかった面々を押し込むのだ。
(まだ、もう少し)
 ソアは機を待っている。それはもう――間もなく。
「花丸ちゃんっ!」
 飛び出したソアはそう叫ぶと同時、制御不能なブリンクスターを起動させる。瞬間加速装置は容赦なくソアの動きを爆速にあげ、残像を残してソアの姿が消えた。
「おい、」
「一体どこに」
 狼狽える敵陣へ『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)が突っ込んでいく。それに気づいた手下たちは揃って武器を向け、けれど花丸はそれによって速度を落とすことはない。
「いいよ、花丸ちゃんが相手になってあげる!」
 花丸の言葉に反応して数人が彼女の元へ集まる。こちらへ向かってくる者がいないか、花丸は素早く視線を走らせた。大丈夫、今のところはノーマークのパカダクラがいるくらいだろう。
(ソアちゃん、よろしくね……!)
 花丸もレーヴェンを助けたい想いは同じ。助けてと言われて、助けたいと思ったから――だから、彼女を助けるために全力で支援する!
 後方に位置するラダのプラチナムインベルタが手下たちへと的確に注がれた。広範囲に撒かれたそれは、しかしてレーヴェンの救出に向かう花丸や――速さのあまり姿を見失いそうな――ソア、そして射程内にいる仲間たちを傷つけぬよう計算されている。だからこそ誰もが安心して突き進むのだ。

「――ボクがどうして虎風迅雷って呼ばれてるのか教えてあげる!」

 その声が発されたのはパカダクラの上。急直下したソアは残る一手で拘束されたレーヴェンへと手を伸ばす。
「ダカァーッッ!!!」
 狂暴たるパカダクラは盗賊団以外の姿に蹄を鳴らし、威嚇しながらドタンバタンと暴れだした。その表紙に背へ載せられたレーヴェンの体が跳ね――落ちる。
「危ないっ……っと、と、」
 それをあわや受け止めたソアだが、近距離での地鳴らしにはほんの少し態勢を崩した。さすがパカダクラとはいえ盗賊団の一員――それもここまで連れてこられる精鋭――と言った所だろう。
「ソアちゃん、こっちへ!」
 花丸がソアを後方へと呼び、同時に彼女らをサポートすべく駆けてくる。ソアもまた駆けだそうとした矢先、背後からの憤怒を感じて振り返った。
「てめェら、みすみす奪われてんじゃねェぞ!!」
 キドーの相手するコルボである。キドーが注意を逸らさんとしているが、コルボからしてみれば人質のほうがずっと気になる材料というわけだ。
 だが手下たちは皆いずれかのイレギュラーズと交戦しており、すぐには動けない。唯一パカダクラが暴れまわっているくらいか。舌打ちしたコルボは腕の筋肉をより活性化させ――キドーを跳ねのけるほどの威力で突進してきた。
「地獄へ落ちてもらうぜ!!」
「いやだね!」
 コルボへそう言い放ち、ソアはレーヴェンを抱えて全力で後方へと駆ける。レーヴェンが何か言いたそうにしているが、猿轡でよく分からない。
(ごめんね、少し待っていて……!)
 背中へ感じる威圧。それはやがて接近し、明確な衝撃となってソアを吹き飛ばす。しかしごろごろと転がりながら受け身を取ったソアは想定よりよほどぴんぴんした様子でラダの後方まで逃げ切った。
 ソアを追いかけてくるパカダクラを射撃で威嚇するラダ。ソアはその間にラダの背後へ隠れ、レーヴェンを縛る縄と猿轡を取った。
「私を置いていけば逃げ切れただろうに、そんな怪我して……ん、あれ? そんなにひどくない?」
「置いていく訳ないよ! それにこれくらいかすり傷だからへーきっ」
 レーヴェンの拘束を解いてあげ、ソアはニッと笑って戦いの場を振り返る。花丸を始めとした仲間たちがすぐさま全力で抑えてくれたおかげで、ソアはコルボ以降追撃を受けることなくここまで逃げ切れたようだ。
「それじゃあ行ってくるね! レーヴェンさんはここにいて」
 ソアは小さく手を振ると、身軽な動きで戦場へと舞い戻った。レーヴェンへ触れるときには傷つけんとしていた爪を出し、ソアは部下たちへと突っ込んでいく。
「ほらほら、花丸ちゃんはまだまだ元気だよっ!」
 ソアとレーヴェンが後方へ向かったのを認め、一足早く戦闘へ混ざった花丸が声を上げる。先ほど引きつけられた手下に加え、荒ぶるパカダクラも花丸の方へと乗り込んできた。これで約半数か、と花丸は寛治の方を見て判断する。
(大丈夫、まだいける!)
 体力の残量を測り、花丸は力一杯拳を握りしめた。
「レーヴェン、生きてるな?」
「うん、平気」
 後ろへと促せばレーヴェンは自力でラダの背後に身を隠す。頬が少し腫れているような気もするので殴られたのかもしれないが、自分で動けるならまだ軽度だろう。
「こういう再会になるとは思いもしなかったが、怪我も軽いなら上々だ」
「来てくれた皆のおかげだよ。もちろん、ラダもね」
 そうか、と返す唇は僅かに弧を描いて。けれどもすぐ真剣な顔つきになったラダは味方を支援するようにプラチナムインベルタを撒く。どんな敵が来ようが、膝さえつかせてしまえばそれまでだ。
 レーヴェンの救出を受けて各々の戦い方に変化が生じる。寛治は遥か後方へ下がると、ラダに続いてプラチナムインベルタで銃弾をばら撒いた。
「さあ、パイバックタイムだ。釣りはいりませんよ」
 近づいてくる敵を近づけさせないように放たれる圧倒的威力。その手前ではエルスもまた先ほどより苛烈な猛撃を繰り広げている。
「レーヴェンさんをこんなところまで連れてきたこと、そしてラサで大いに暴れたこと……存分に後悔させてあげるわ!」
 全魔全力のこもった一撃。そこにはラサを愛する1人としての怒りも存分に込められている。
 ラサにはファルベライズだけでなく、さまざまな御伽噺が残されている。それを利己的に、卑劣に扱ったことを許せるはずもない。
「さて、今回の弾はただの弾じゃないぞ?」
 自らの肉体能力を上げたアトはにっと笑みを浮かべ、次の瞬間強烈な火花がアトの前方で起こる。指に火傷を負いながらも放ったそれは敵陣を阿鼻叫喚に陥らせた。
(支援要員を潰すのは戦術の初歩中の初歩ってね)
 彼らに教える義理もないがそのうちに気づくかもしれない。その頃にはすっかり敗戦濃厚かもしれないが。
 ザイードの槍が舞い、徹底的にキドーが移動の邪魔をする。その一挙一動にノイズのような動きを混じらせることでコルボには少しばかりの隙が見えていた。そこへザイードが槍をねじ込み、また右目の力を使いながらもコルボへ問うた。
「コルボ。大鴉盗賊団の勢力を拡大させているらしいが……ソロの盗賊はどういう扱いをするつもりだ?」
 ザイードやキドーは誰かと組んで盗賊『団』をしているわけではない。その時々によって利害の一致により組む誰かがいれば、単独で乗り込むことだってある。そのやり方が果たして彼らの勢力拡大によって続けられるのか――ということだろう。
(それがお前のスタンスってやつか?)
 ここでどのような答えが返ってきたら彼は寝返るつもりなのか。キドーは2人の動向を注意深く観察した。
「おいおい、俺の傘下に入らないなら決まってんだろ?」
 コルボは唇に弧を描き、その拳を顔の前で力強く握りしめる。
「行儀のなっちゃいねェネズミなんざ、捻り潰されるのがオチさ」
「成程。――残念だ」
 ザイードはコルボの答えに槍の切っ先を向けた。どうやら寝返りはなし、らしい。しかし安心する間もなくコルボの回し蹴りが2人を襲った。
「チッ……花丸!」
「任せて!」
 キドーの声に応え、花丸が滑り込んでくる。コラボの前へと立った花丸は肩越しにキドーを見た。
「部下たちの方、お願いっ!」
「おうよ。さあ、今度はこっちだぜ」
 花丸についてきた――追いかけてきたとも言う――手下たちを妖精の霧で引き剥がすキドー。寛治の方へ引っ張って一網打尽にしてもらおうではないか。
「この前は直接戦わなかったけれど、二度目ましてってやつだね!」
「あ? ……ああ、てめェはこの前の飛び込んできた小娘か」
 ほんの暫しコルボが考えて、それから花丸の姿を見下ろす。よく覚えているものだと頭の片隅で考えながら花丸は拳を握った。
「そう。ならわかると思うけど、そう簡単に倒れてなんてあげないから!」
「じゃあぶっ倒れるまでボコってやるよ。そのあとあの女は返してもらうぜ!」
 コルボもまた拳を握る。至近距離での打ち合いに双方の傷は増えていくが、花丸はパンを口の中へ放り込んで体力を持たせる。
「よしっ」
 ほんの僅かな補給。けれどたしかに力が戻ってくるのを感じ、紅蓮に燃ゆる想いと共に花丸は拳を振り抜いた。

「レーヴェン、ここにいて大丈夫そうかい?」
 仲間たちを支えていたマルクはラダの背後に隠れるレーヴェンへ声をかける。頼もしい狙撃手である彼女もいるし、前衛だけでなく後衛も力あるものばかり。遅れをとるつもりはないが、先ほどまで囚われていた彼女の心境を考えれば早く離脱させたほうが良いかもしれない。
 けれどレーヴェンは小さく頭を振った。大丈夫だと唇にほのかな笑みを乗せて。
「皆がいるからね。それに……1人で戻る道中に何があるかわからない」
「そこはフォローするつもりでいたけれど……そうだね。それなら皆から離れないようにだけ、気をつけて」
 レーヴェンは頷き、ラダの影にしっかり隠れるよう身を小さくした。
「ダカァーッ!!!」
 敵のパカダクラが暴れ回り、コルボを相手する花丸へ噛み付く。ただのパカダクラとて過酷な砂漠を生きるのだ、盗賊の所持するパカダクラならばそれ以上に戦闘能力があってもおかしくはないが。
(邪魔ですね)
 寛治がステッキ傘を向ける。さあ、砂漠ではない永遠の旅に出てもらおうか。
 乾いた音とともにパカダクラがぐらりとその体を傾かせた。

「早いね」
 そう告げるコラットこそ追いついてくるのだから十分早い。そう思いながらアルヴァはひたすら回避と防御に徹し、仲間の射線へと連れて行く。このコラットという男は時にアルヴァへの注意が逸れているようにも感じるが、対等な速度の出せる者との『追いかけっこ』が楽しいのか――今のところ、他へと流れるような様子はない。
 時折地上からエクスマリアが放つ光の刃がコラットの足元を掠めるが、多少の赤を彼は気にしない――気にするつもりもない、だろうか。
「アルヴァ、回復、だ」
 エクスマリアの起こした祝福が敵との追いかけっこ(空中戦)を繰り広げるアルヴァの傷を癒す。アルヴァは傷がいくらか癒えたことでより早く、速くと速度を上げた。
(元々、2人で仕留めきれるほど容易い相手でも、ない)
 再びの追いかけっこから攻撃の隙を見出しつつ、エクスマリアは思う。この男が2人きりで対処できるのなら、そもそも幹部になどのしあがっていないだろう。何より彼はコルボに近い人間だ。ならば能力はかなり高いものと見て良いだろう。
(あの2人……戦いを楽しんでいるみたい)
 エルスは戦いながらコルボとコラットを注意深く観察する。ここにきた理由が色宝ではないのならば――地底湖の中央で光っているアレ、だろうか。
(アレは一体……風はあそこから吹いていたのね。何があるの……?)
 ファルベライズの普段より奥まった場所に存在するモノ。ならばこの遺跡群に深く関わることなのだろうか。新たなラサの未知にエルスも興味がそそられるが――あそこを調べるためには、まず彼らを退けなくては。
「下賤な盗賊に空を舞う翼は似合わない。――無様に地へ墜ちろ」
 アルヴァの言葉と共にエクスマリアの攻撃が放たれる。直撃をくらったコラットはアルヴァの言葉通り、地面へ向かって墜落していった。土煙があがり、しかしそれが晴れる頃には受け身を取ったコラットが2人を睨み据えているのが見える。
「やれやれ……んじゃ、そろそろお遊びは終わりかな」
 埃を払うように体をはたき、コラットは双剣を構える。アルヴァはそれに危険なものを感じて咄嗟に彼の前へと立ちはだかった。
「おっと、空中戦は終わりか?」
「俺は怪盗であり騎士でもある。食い止めさせてもらうぞ」
 とっくに自らの肉体能力を引き上げるほどの力は残されていない。いいや、攻撃の手段さえも限られてしまうほどに。
(だが、それがどうした)
 自衛手段がないから引くのか? ――否。
 攻撃手段がないから逃げるのか? ――否。
 自分がどうであろうと、仲間の邪魔だけはさせてなるものか!

 3mの棒で殴りつけられた手下が頭をぐわんと揺らす。
「おや、頭の上をひよこが飛んだかな?」
 などとアトが言っている間にラダの狙撃が相手を撃ち抜いた。さあお次は――コラットである。仲間たちも自然と標的をそちらへ変え、地に落ちたスカイウェザーへの猛攻撃が始まった。
 持ち前の回避力でしのぐコラットだが、彼へ銀の弾が命中する。もう一度、もう一度。それは籤の結果が気に入らなかったからと引き直すように連続して飛んでくる。
「どこから……」
 目元に険を浮かべたコラットが視線を巡らせ、やがて行き着くのはラダだ。そちらは視線をやれば必然と背後にいるレーヴェンも見える。
「全くもって、ままならない」
 そう独り言ちたコラットは――再び飛びあがった。
「待て……っ!」
 アルヴァの静止もリリカルスターもものともせず、その姿は真っ直ぐラダとレーヴェンの元へ。彼女、あるいは彼女らを盾にでも取るつもりか。けれど。
「2度もやらせるかよ」
 ラダがそれを許すはずもなく、コラットはレーヴェンへ到達する前に阻まれた。そこへ追いつかんとしたアトが速度を緩めずさらに踏み込んでいく。
「なかなか君ほどではないけれど、ね!」
 アトの放つ音速の殺術がコラットを攻め立てる。それでもコラットよりは遅く、一撃の重さとねかの命を脅かすほどではない。それでもアトの攻撃に皆が続くのであれば、それはいつしか強大な一撃となるのだ。それを仲間たちもわかっているからか、アトに攻撃が続いていく。コラットは徐々に劣勢を感じながら、頭領たるコルボの方へ一瞬視線をくれた。
「っ……」
 ヴァルハラ・スタディオンの切れたタイミングを狙われた花丸は、しかし奇跡を纏って力強く地を蹴る。宙を軽やかに舞った花丸は「キドーさん!」と後方へ呼びかけた。同時、暖かな力が花丸を包む。
「皆、もう少しだ……!」
 マルクの治癒が仲間たちの士気を押し上げる。治癒と共に彼の意思が、一同の積み上げた行動を無駄にしないと言う決意が伝わってくるから。とはいえマルクの限界も少しずつ、しかし確実に迫ってきている。仲間たちが分散して対応する以上、複数人を同時に治癒するには膨大な力が必要になるのだから。
(それでも、まだ。支援ができなくなるのは、倒れる時なんだ)
 花丸の声にキドーが再び躍り出る。コルボは「またてめェか」と鼻で笑った。
「正直な所、お前が羨ましいぜコルボ」
「あン?」
 コルボが怪訝そうにキドーを見下ろす。キドーも同じようにコルボを見上げた。
「お前は見たことがあるか? 眩暈がするような数の人死にを。俺はあの絶望の青で見たぜ」
 凄惨な光景だった。あれこそ世界の終わりだったかもしれない。簡単に消えていく人の命にキドーは怖気付き、今や気儘な盗みが出来なくなってしまった。
「俺は自分が求める者も分からねえ。なのにお前は目の前で好き勝手しやがって、何かデカイことをやらかそうとしてる! 妬ましくて憎くて堪らねえ!!」
「つまりなんだ? てめェの逆恨みってことかよ」
 キドーの言葉をそう吐き捨てたコルボは力強くキドーへ向かって蹴り落とす。それを両腕で受け止めたキドーはコルボを睨みつけた。
「目的はなんだ? 色宝? 砂漠の王? その程度のモンじゃねえだろ!」
「ハッ。ビビって尻尾巻いたやつに教えるつもりもねェ、な!!」
 飛び退きざまに鋭い右ストレート。素早く避けたキドーは負けじとコルボへ食らいついた。
「鴉は光り物好きだ、な」
 射程ギリギリに立ったエクスマリアから放電する雷が飛んでいく。ヴォルフヴベーカリーのパンのおかげで少しばかりの余裕を取り戻した彼女は雷をコルボへ飛ばすとすぐさまその射程から外れるように後退した。
 不意に横合いから迫った弾丸をコルボは体を傾けて避ける。いや、完全回避はできていないようだが致命傷は避けられてしまった、と言うべきか。
「お見事です」
 それを向けた寛治は淡々と告げた。まるで心の籠らないそれにコルボは小さく鼻を鳴らす。しかし確実に集中は削がれており――次いで放たれたエルスの黒顎魔王にコルボの姿が飲み込まれる。すぐさまそれを打ち破ってきたが、無傷とはいかないだろう。案の定傷を負ったコルボは、しかしまだまだ力有り余る様子で笑みを浮かべる。

 その一方で。コラットとの交戦にはピリオドが打たれようとしていた。
「僕ってば皆を支える役割ならそれなりに得意でさ――」
 そう告げるアトがコラットの攻撃に体勢を大きく崩す。けれどそれで良いと言わんばかりに笑ってみせて。
「――デカイの一発、やってしまえ!」
 アトへの攻撃に大きく踏み込んだコラットの眼前へ迫る黒顎魔王。アトがヒューと口笛を鳴らした。
「僕じゃあこんな威力出せないなあ」
「適材適所ですよ」
 さらに、1発。発砲音と共にコラットの体が地面へ落ちる。それを見たコルボは忌々しげに舌打ちした。ここには精鋭を連れてきたと言うのにイレギュラーズに人質は奪われ、手下は倒れ――コラットではないが『ままならない』のだろう。
「おい、てめェら! まさかここでくたばる程度の願望しか持たねェなんてこたァないだろうな!!」
「無駄だ、お前の部下に戦うほどの力はもう――」
「待って」
 言葉を止めたのはレーヴェンだ。その顔色が悪く見えるのは場所故か、いや。

「ねがい」
「そうだ、俺たちは」
「かなえたい」
「お頭ぁ、ついていくぜ」
「のぞみがあるんだ」
「こんなところで倒れるかよ」

 先ほど倒したはずの手下たちが、コラットがふらりと立ち上がる。そこに満ちる不気味なものにイレギュラーズは息を呑んだ。
「まさか」
「ええ、そのまさかでしょうね。誰かしらは感づいていたかもしれませんが」
 コルボへ視線を向ける寛治。あの男が誰よりも禍々しく、ともすれば引きずられそうな雰囲気を出している。
「逆境に、強欲な想いが、つのった、か?」
 先ほどまでは――尋常でない強さだったとはいえ――正常な様にも見えていた。エクスマリアの呟きにコルボがニィ、と笑う。次いで彼は手下たちの方へと向いた。
「てめェら、引き上げるぜ!」
 彼からの命令に盗賊たちは武器をとり、ジリジリと距離を空けるように後退してから身を翻す。追おうとしたイレギュラーズの元へ大きな影が差した。
「っ……!?」
「賊を舐めんじゃねェ、逃走の馬力は人一倍ってヤツだ。
 その先にあるモンは俺たちのもの、いずれは『返して』もらうぜ」
 そう捨て台詞を吐いたコルボは――その巨躯に見合わない俊敏な動きで姿を消した。

 ひとまずの危機は去った、と判断して良いものか。盗賊たちの去っていった地底湖でイレギュラーズたちは集まり、傷の応急処置を施した。
「……レーヴェン、遺跡について盗賊達は何か言っていたか?」
「いや、私は特に何も教えられなかった。多分『こうなる事』も想定の内だったんじゃないかな」
 ラダの問いに首を振るレーヴェン。彼らはおそらく、必要以上に情報が漏れることを避けているのだろう。故に、今回の陽動作戦もあからさまだったのだが。
「ここに生息するモンスターもいる。彼らの狙いも気になるところではありますが、今の我々が留まるのは危険でしょう」
 寛治が視線を地底湖へ向ける。あの先にあるものは非常に興味をそそられるが、まずは報告と態勢の立て直しが必要だ。大鴉盗賊団を退けたとはいえ、こちらも少なくないダメージを負ったのだから。
 地底湖を注意深く後にするイレギュラーズたち。その背後で変わらず、淡い光はそこに座していた。

成否

成功

MVP

ソア(p3p007025)
雷虎

状態異常

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)[重傷]
社長!
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
ソア(p3p007025)[重傷]
雷虎
笹木 花丸(p3p008689)[重傷]
なじみさんの友達

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 無事レーヴェン奪還となりましたが、この先は一体……?

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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