PandoraPartyProject

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ヤルルの零落

ヤルルの零落

 幻想王国レガド・イルシオン。
 かつて勇者王により建国されたこの国は多くの貴族によって支えられている。
 ――例えその柱の大部分が腐っていようとも。
 それでもまだこの国は在り続けている。崩れてなどはいないのだ。
「……しかし、困りましたねこれは」
 吐息零すは『遊楽伯爵』ガブリエル・ロウ・バルツァーレク(p3n000077)
 王国の三大貴族が一角とされ、腐敗している幻想貴族が多い中『例外的』ともされる民政家の悩みの種は尽きない。現王国が――サーカス事件以降多少良くなってきているとは言え、だ。
 根本的にはこの国は未だ腐敗の中にある。
 特に……今しがた彼の下に届いた『報告』を受けては尚、そう思わざるを得なくて。
「困ったものだね。まさか……ラサの奴隷市場がこっちにまで流れてくるだなんて」
「ええ。ブラックマーケットが拡大しています――こうなってしまったのも、潜在的な要素があった故と思わざるを得ません。身から出た錆……と申しましょうか」
 そんなガブリエルと話しているのは彼の派閥の一人にして親しい人物でもあるホルン・G・トリチェリだ。ホルンがガブリエルの下に持ち込んだ話の内容は『奴隷市場』なるブラックマーケット。
 奴隷売買。それは、記憶に新しい事としてはかつてラサで起こったザントマン事件が思い起こされるか。
 幻想種が攫われ、ラサで不当な人身売買が行われたかの事件……アレ自体はイレギュラーズ達の活躍によって収束を迎えたがしかし。

 奴隷の流通に売買――それら全てが駆逐された訳ではないのだ。

 ザントマン事件は魔種も関わっていた大規模な事件でこそあったが、あそこで行われていた事だけが世界の全てではない。奴隷商人は各地に存在し続け、今なお闇の世界では人の売り買いがどこかで行われている事だろう。
 ――閑話休題。
 とにかくその奴隷売買の市場が幻想にて広がりを見せているのだ。ラサは現在ファルベライズ遺跡の騒動の真っただ中にあり、斯様な状況の中では商いを行う事が現状では難しいと判断されたのだろう。
 各地を拠点としていた商人達は幻想王国に集中する動きを見せていた。
 それには王国の腐敗も幾つか関わっているのかもしれない。なんでもホルンの調べた内容によると、幻想の貴族や資産家が奴隷の売り買いに直接関わっている動きも見られるのだとか……
「幻想北方の城塞都市ロシーニ・クブッケでは奴隷オークションが開催されているらしい。いやそれだけじゃあない……奴隷商人のアルトリートは国内の邸宅で傭兵に防備を固めさせているんだとか。
 それから――幻想種や旅人はおろか鬼人種が売りに出されている地もある」
「鬼人……確か東の方のカムイグラという地の種族の方々でしたか」
 相次ぐ報告はガブリエルの頭痛の種を瞬く間に増やしていく。
 メフ・メフィートのプリマヴェーラ通りでも奴隷商人の動きが確認されていると……首都の付近でもまかり通ってしまうとは、奴隷商人達の動きが機敏なのだと思うべきか……
 ――いずれにせよ放置してはおけない。
 このような流れを放っておけばそれこそ民の心に動揺が広がろう。
 ……ただ貴族の軍勢を大々的に動かす訳にもいかない。この件に各地の貴族も関わっているのだとすれば、迂闊に兵を動かせば思わぬ火種を生む可能性もある。派閥の抗争が激化すればどうなるか……

「やはりイレギュラーズの方々を頼りにせざるを得ませんね」

 難しい情勢下。それでもあらゆる事態に介入できるとすれば――イレギュラーズ達だ。
 ガブリエルは願う。どうかこの国に今暫くの平穏を、と。
 遍く人々に幸在りし未来を――と。


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 ※希望ヶ浜に不穏な動きがあるようです。
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