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シナリオ詳細

<リーグルの唄>演目は奴隷オークション

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●劇場の中では
 幻想北方の城塞都市ロシーニ・クブッケ。周囲に比して大規模であるこの都市には歓楽街があり、その中には劇場もあった。
 劇場の前には馬車が次々と到着し、如何にも貴族だったり裕福な商人と言った風の男達が馬車から降りて、劇場の中に入っていく。
「今夜の『公演』は如何だろうなあ?」
「いい『役者』がいるといいのだが……」
 劇場の中では、マスクで顔を隠した男達があちこちでひそひそと会話を交わし合っている。何故劇場の客がマスクで顔を隠すのか。それは、『公演』とは奴隷オークションの隠語であり、社会的地位の高い男達としてはこのような場に参加していることを他の者に知られないよう、自分の正体を隠す必要があったからだ。

 そもそも、この劇場は煽情的な演目を行うことこそ多かったのだが、このように奴隷オークションを行うことは今までになかった。それが変わったのは、ファルベライズの動乱によって傭兵のブラックマーケットでは奴隷売買が難しくなったからである。
 傭兵のブラックマーケットで奴隷が売れないとなれば、奴隷を商品とする商人達は商売あがったりである。彼ら奴隷商は『在庫』を売りさばく場として幻想の裏市場を選んだ。そして奴隷を購入する側も何処から聞きつけたのかそれを知り、幻想の裏市場は『大奴隷市』とも言える様相を呈していた。
 腐敗している貴族の多い幻想では良識派の貴族に注意すれば奴隷売買など難しくないどころか、貴族自身が奴隷を購入しようとしたり、あまつさえ自らの領地で奴隷市場を開かせて利を得ようとするものさえ存在した。そして、ロシーニ・クブッケの領主は後者であり、領主の圧力によって劇場は奴隷オークションの会場とされてしまったのである。

●バシータ領主の激昂
「下衆が……っ! 腐っているとは思っていたが、まさかここまでとは……!」
 隣領ロシーニ・クブッケで奴隷オークションが開催されている。しかも領主自身がそれに自ら携わり、利を得ている。
 『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)のリークによってその事実を知った『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)の憤怒は、極めて激しいものであった。左目のまなじりはクワッと上がり、右目の眼窩に埋め込まれているエメラルドはウィルヘルミナの激情を表わすかのようにギラリと緑色の光を放っている。
 ウィルヘルミナとロシーニ・クブッケ領主の間は、はっきりと言ってしまえば極めて険悪であった。ロシーニ・クブッケ領主はウィルヘルミナを成り上がり者と見下しており、ウィルヘルミナの方も血筋に胡座をかいたロシーニ・クブッケ領主の腐敗ぶりを嫌悪していた。そして互いに本心を隠そうともしないのだから、関係が良好であるはずがなかった。
 あまつさえ二人の間には、初夜権を嫌ってバシータに脱出した、ロシーニ・クブッケの新婚夫婦を巡るトラブルも発生している。この際、ロシーニ・クブッケ領主はウィルヘルミナが保護した新婚夫婦の返還を求めて軍事侵攻を盾にほぼ恫喝と言える交渉を仕掛けてきていた。結果、ウィルヘルミナは表向きは折れて新婚夫婦を返還したが、裏ではイレギュラーズに依頼を出し新婚夫婦を連れ帰る一行を襲撃させて奪還したという顛末がある。
 その件を差し置いても、隣領で奴隷売買が行われているとなれば放っておくことは出来ない。人道的な理由ももちろんではあるが、それ以上に奴隷商人がロシーニ・クブッケに集まっているとなれば、隣領であるバシータで『商品』の仕入れをしていく危険性があるからだ。とは言え、隣領との戦力差と鉄帝に備えねばならない地理条件から、ウィルヘルミナが自ら表だって動く事は出来ない。
 かくして、情報をリークした勘蔵の予測どおり、奴隷オークションを潰して奴隷達を保護する依頼がウィルヘルミナからローレットに出されることになった。

●競売直前の少女
 狭い部屋の中に、十人ほどの少女がうずくまって座り込んでいる。人間種を中心に何人か他の種族が混ざっているが、どの少女もその瞳には絶望と恐怖しか浮かべていなかった。
「さあて、お客様がお待ちかねだ。貴様ら、精々高く売れてくるんだぞ?」
 奴隷商人の部下が、一人の少女の首輪に付けられている鎖を引っ張った。引きずられるように立ち上がった少女は、ガタガタとまだ見ぬ運命への恐怖に脚を震わせながら舞台へと連れて行かれる。
「皆さん、お待たせ致しました。これより、『公演』を開始致します! まず最初の『役者』は――」
 舞台でなされた奴隷商人によるオークションの開始宣言は、少女の耳にも届いた。それを受けてか、少女が舞台袖に到る頃には、脚だけでなく全身が震えていた……。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は、ロシーニ・クブッケの劇場で開かれている奴隷オークションを潰し、『商品』である奴隷の少女達の保護をお願い致します。

●成功条件
 以下の両方の達成
 奴隷商人、及びその部下の殲滅(生死不問)
 『商品』とされた少女達の半数以上の保護

●失敗条件
 『商品』とされた少女達の半数以上の死亡

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ロケーション
 劇場の中です。ホールがオークション会場となっており、客席には固定式の椅子がずらずらと並べられています。
 劇場内の構造、人員配置などは不明です。

●奴隷商人
 今回のオークションを主催している奴隷商人です。戦闘能力はありません。

●奴隷商人の部下 ✕?
 人数は不明。実力自体は高くないと見られています。
 いざとなれば、自分可愛さに『商品』を人質に取る可能性があります。

●客 ✕?
 総数は不明ですが、それなりの人数が集まっているようです。
 基本的に戦闘能力はありませんが、連れている護衛が何らかの状況によって(主人の命令とか、主人の危機と判断したとかで)参戦してくる可能性はあります。

●奴隷の少女 ✕約10
 今回の『商品』となっている少女達です。一人は舞台の上、残りは別室にいます。
 絶望と恐怖で心を閉ざしているため、自発的に動いてもらうには何とかして安心してもらう必要があるでしょう。
 万一誰かに攻撃された場合、容易く戦闘不能に陥り、高い確率で死亡します。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <リーグルの唄>演目は奴隷オークション完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月28日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●許し難きは奴隷売買
 ロシーニ・クブッケの劇場で奴隷オークションが開かれていると聞かされたイレギュラーズ達は、程度の差はあれ一名を除いてその存在を許せないものとしていた。
「売る方も、買う方も……人を自分より下のモノだと扱って優越感に浸ってるのは……反吐が出る。
 ステージの役者は、もっと違う形で輝くべきだ。彼女たちに自由と希望を……!」
 人をモノ扱いして売買する――そのことに激しい憤怒を抱いてギリッ、と歯を軋らせたのは、『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)だ。ましてや、囚われの少女達を役者として舞台に上げると言う行為が、なおさらイズマの憤りを誘う。
「オラクルの事件のときにも似たようなことがあったけれど……本当に悪趣味だね。
 どうして他人をそんなふうにモノみたいに扱えるのかわからないよ……。
 これ以上怖い思いをする前に、助け出してあげないと」
 怒りを抱くイズマとは違って『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の反応は哀しげだ。だが、その根底はイズマと同じである。人をモノとすることへの、そして劇場の舞台で見世物のようにすることへの嫌悪と、囚われの少女達を救出したいという願いだ。
「人の命を使って舞台ごっこですか……どこまでも腐ってやがるわね。
 腐れ野郎どもに、絶望を見せましょう、そしてその魂快楽で啜ってやりましょう」
 それは、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)も同様だ。もっとも、利香の反応はイズマやアレクシアとは違って、吐き捨てるような侮蔑であるのだが。そして、悪徳貴族狩りを趣味としてきた利香としては、腐った連中がいるなら狩るまでのことであった。
「劇場ってのは、お客さんも役者も楽しむ為にあるんだろ! 女の子達が可哀想だ、早く助けてあげたい!」
(――これは愉快。人間共はいつから神を気取るようになったんだ?)
 一人の身体に二人分の精神が宿っている『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)だが、そのうち快活であり情に篤い虚は元々役者だったこともあり、劇場が人身売買の場として使われていること自体に激昂した。もちろん、囚われの少女達にも大いに同情している。
 一方、本来の身体の持ち主であり今は虚の裏に回っている稔は、天使として人間の傲慢、愚行に冷笑を浴びせている。
「見世物みたいになんて……ふざけてるよね。許せないよ……!」
 『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)は、過去に奴隷商に売られかけたことのあるだけに、囚われの少女達に同情するところは大きかった。ただ奴隷として売られることでさえ辛いのは想像に難くないのに、劇場で見世物のように扱われるなど、どれほど少女達の心が傷つくだろうか。
 そんな現実が存在するという事実に、声を震わせながら、コゼットは微かに呟いた。
「――奴隷市、ねぇ。Familyの一員としては見過ごせませんので、しっかり潰しますか」
 『影』バルガル・ミフィスト(p3p007978)が奴隷売買の事実に同情やあるいは義憤を感じているかどうかは、少なくともその言動からはわからない。ただ、バルガルの属する自警団『Vialatte Family』の流儀からすれば看過し得ないものであることだけは確かなようだ。
「う~ん。無くならないねぇ、この手の話……」
 『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は、困ったように頭をかきながら、ふぅ、と溜息をついた。元々夏子にとって奴隷の存在は当然だったのだが、ローレットに所属して様々な相手に触れ、依頼に従事する内に、いつしかそれが当然ではなくなっていった。ならば――。
(人としての当たり前を、当たり前に過ごせるよう、今日も当たり前の事をするよ)
 普段の軽い調子とは一変した真剣な面持ちで、夏子はそう意を決した。
(俺個人としては奴隷に対し思うことはないが……まぁ、依頼とあらばしっかり完遂させてみせるさ)
 残る一名である『聖断刃』ハロルド(p3p004465)は、自身が考えているように奴隷売買について特に感じるところはない。ただ、奴隷オークションを潰し、『役者』とされた少女達を救うと言う依頼を受けた以上は、全力でそれを果たすまでのことだった。

●貴族として、『観客』となり
 イレギュラーズ達は、奴隷オークションの会場となっている劇場に潜入するにあたり、二手に分かれることにした。方や『観客』を装い、会場に潜り込む側。方や、『役者』やその商人を装い、舞台裏に潜り込む側。

「『公演』を楽しみに来たよ。ご苦労さん」
 夏子は仮面を着け、成金貴族の風体で劇場に入る。その際、夏子は受付の男に白紙の小切手を握らせた。
「しっかりと『役者』を見定めたいからね。これで、前の方のいい席に案内してもらえるかな?」
「へ、へい! そりゃあもう!」
 小声で囁く夏子に、男はこくこくと頷いて夏子を最前列とまではいかないものの、それに近い席へと案内した。
(夏子さんは上手く入ったみたいですね……)
 その様子を隠れて見ていた利香は、少し間を置いてから夏子に続いて仮面を付けた貴族として劇場に入った。
 ホールに通された夏子と利香は、怪しまれない程度にホール内の状況を観察していく。出入口とそこに至る動線、奴隷商人の部下の数と動き、『観客』の様子など――。
(こいつら……マジ、売ろうとした子が許すまで許さんからな)
(全く……見るに堪えないものですね。でも、そうしてられるのも今のうちです)
 夏子は憤りを、利香は侮蔑を交えた視線を、仮面の奥からスタッフや『観客』に向けた。
「皆さん、お待たせ致しました。これより、『公演』を開始致します!」
 そうしているうちに、やがて奴隷商人が舞台に現れ、奴隷オークションの開始を宣言する。部下達とは明らかに違う、悪趣味に着飾った風体に、夏子も利香もこの男が最も逃がしてはならない相手だと認識した。
 
 最初の『役者』が連れてこられると、『公演』は序盤から大いに盛り上がった。
 夏子と利香が、互いに競り合って『役者』の値段をどんどん釣り上げていったからだ。これには、舞台裏に潜入する側が『出演』を待つ他の『役者』を見つけて保護する時間を稼ぐと言う目的もあった。

●『楽屋』に到るべく
「貴様ら、一体……!?」
 裏口から舞台裏に潜入したイレギュラーズ達は、奴隷商人の部下と遭遇した。部下は当然ながら。誰何の声をあげる。だが。
「……鍵が開いていましたよ。不用心ですね」
「俺達は、領主様の命でこの方達を案内してきたのだ。通してもらおうか」
 稔はそれには応えずに穏やかな口調ながらも部下を叱り、イズマがロシーニ・クブッケ領主の使いとしてバルガルとハロルドを連れてきたと偽った。ちなみに、鍵が開いていたというのは嘘である。ハロルドが壁を通り抜けて、内側から鍵を開けたのだ。
「今回の『公演』に合わせ、追加の『役者』を連れてきました。『楽屋』まで、ご案内できませんか?」
「……ひっく、ひっく」
「…………」
 仮面を着けたバルガルが、部下に丁寧に『楽屋』への案内を求める。その手には二本の鎖が握られており、それはコゼットとアレクシアの首枷に繋がっていた。コゼットとアレクシアは地面を転がって身体を汚した上に髪をボサボサにして、ボロ布を纏っており如何にも奴隷と言った装いとなっている。その上、コゼットは目薬を指して怯えながら嘘泣きしている演技を、アレクシアは絶望して無言で俯きただ力無く地面を見つめるだけと言う演技をしていた。
「追加の『役者』? そんな話は聞いていないが……」
 部下はバルガルとコゼット、アレクシアを確かに奴隷商人と奴隷だとは判断したが、突然の話に困惑する様子を見せた。
「領主様は今回の催しを大変心待ちにしておいででした。今後も彼らと良い関係を築いていきたいと仰っていましたよ。
 今ここで彼らの邪魔をするような愚行は得策ではないと思いますが……?」
 稔は穏やかながらも威圧感のある笑みを浮かべながら、領主の機嫌を損ねるつもりかと問い、重ねて『楽屋』への案内を促す。
「いや、もちろんそんなつもりはない。だが……」
「『察しが悪い』な……『首を切らねばならん』か? 俺は武器商人、彼は流民の職業斡旋業者『ということになっている』。我々は、『気が利く』者には『チップを惜しまない』のだがな」
「まあまあ、そう脅すものではありませんよ。これは、お近づきの印です」
 なおも首を盾に振らない部下を、ハロルドは苛ついた様子を演じながら脅す。バルガルはニヤッとした笑顔を浮かべながらハロルドを窘めて、部下の手に『チップ』を握らせた。ハロルドの鞭とバルガルの飴は見事に効いて、掌の『チップ』を確認した部下は愛想笑いを浮かべると一行を『楽屋』へと案内した。

●イレギュラーズ、動く!
 『楽屋』に通されて囚われの少女達を確認したイレギュラーズ達だったが、すぐに保護とはいかなかった。当然ながら、『楽屋』にも奴隷商人の部下が何人かいたからだ。『チップ』を受け取った部下が上手く『楽屋』にいる部下達を言いくるめたため、『楽屋』に入ったイレギュラーズ達が怪しまれることはなかったが、すぐに仕掛けるべきかホール側の動きを待つべきか、イレギュラーズ達は逡巡した。
 だが、それもほんのわずかな間だけだった。競りを見守る観客のどよめきがワアアア! と言う歓声に変わり、それを聞いた『楽屋』の部下の一人が次の『役者』を舞台に連れて行こうとしたからだ。
「ここを出よう、一緒に帰ろう! 怖い人たちは全員俺達がやっつけるから!」
 稔と入れ替わった虚が、囚われの少女達に訴えかけるように叫びながら、『役者』を舞台に連れて行こうとした部下を中心に邪悪を灼く神聖なる光を放つ。その光は、部下達の目を眩ませた。
「みんな、助けに来たよ! そしてあなたたち! これ以上好き勝手にはさせないんだから!」
「だいじょうぶ、助けに来たよ……帰れるよ」
 バルガルが手にしていた鎖を離すと、アレクシアは『楽屋』の出入り口側、コゼットは『楽屋』の奥へと分かれて、少女達を安心させるべく叫びながら、手下達の注意を引いた。
「本当に……本当に、助けに来てくれたの?」
「……私達……お父さんとお母さんのところに帰れるの?」
「売られたり……しなくてすむの?」
「……ひっく、ひっく……うっ、うええええええっ!」
 虚の、アレクシアの、コゼットの訴えに、絶望と恐怖しか映していなかった瞳に希望の光が宿る。少女達の双眸は潤み、つう、とこぼれ落ちた涙が頬を伝っていった。嬉しさに感極まって嗚咽をもらす者さえいる。
「おじさん達を、信じて下さい。皆、守ってあげますからね」
 バルガルは、少女達を背にして部下達から守りに入った。成年男性の中でも大柄な体躯を持つバルガルの背中は、少女達には非常に頼もしく感じられた。

「火事だぞー!! 逃げろぉー!!」
 虚が動いた瞬間、ハロルドとイズマはホールへと向かっていた。さらにハロルドはホールに向けて発煙筒を投げ込み、火事だと騒ぎ立てる。
「くそっ、お前ら……!」
「そこを、退けえっ!」
「奴隷落札公演など……二度と、開催させない!」
 ホールへの通路にも奴隷商人の部下がいたが、ハロルドが咆哮しながら闘気を叩き付けて敵意を煽る。それに乗せられて部下達がハロルドに襲いかかるが、ハロルドの雷を宿した斬撃や、イズマの憤怒を宿した邪剣に次々と斬り伏せられ、返り討ちに遭っていった。

「か、火事だって!?」
「それに何だ、この騒ぎは!?」
 相場をはるかに超える高値で最初の『役者』が落札された興奮冷めやらず、次の『役者』の『出演』を期待する空気は、ハロルドの叫びと流入してくる煙、その後すぐに起こった戦闘の喧噪は、ホール中を混乱に陥れた。
 舞台裏に潜入した仲間が動いたのだと察した夏子と利香は、すぐさま行動を開始する。
「驚かせた? 遅くなってゴメン、君達を自由にしに来た」
 落札者として『役者』の側まで近寄っていた夏子は、少女を庇うように背にすると、安心させるように微笑みかけて優しく言葉をかける。少女は、目の前の事態に理解が追いついていない様子で、ポカンと呆けたように夏子を見上げた。
「幻想貴族なら、この顔知ってるわよねえ? 幻想の大悪魔、リカ・サキュバス……逃げない奴は皆殺しよ、いひひ♪」
「ひいっ! り、リカ・サキュバスだってえ!?」
「に、逃げろっ!? 狩られてしまうぞ!」
 利香は夢魔の姿になると、周囲の『観客』を脅しつける。リカの言うとおり、『観客』のほとんどはリカを知っていた。『観客』はさらなる混乱に陥り、その大部分が劇場からの脱出を図る。その間に、リカは舞台袖から逃げようとする奴隷商人を追った。

●それぞれの、その後
 奴隷商人とその部下は、所詮イレギュラーズ達の敵ではなかった。リカの存在にもはやこれまでと逆上した『観客』とその護衛も含めて、瞬く間に制圧され死亡するか囚われの身となった。『公演』の主催者である奴隷商人は、リカ、ハロルド、イズマに挟撃されて呆気なく生け捕られている。
 『観客』の大部分は劇場から這々の体で逃れ出たが、その素性はバルガルが入手した『観客』のリストでことごとく割れた。

 囚われた奴隷商人や部下、『観客』や護衛は、皆依頼人である『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)の預かりとなった。また、『観客』のリストもウィルヘルミナに渡された。もちろん、イレギュラーズ達は控えを取るのを忘れていない。
 少女達はある者は笑顔を向け、ある者は嬉し泣きしながら、口々に礼を述べつつ、イレギュラーズ達と別れてウィルヘルミナに保護された。ウィルヘルミナは少女達について、帰る所がある者はそこに帰し、そうでない者はバシータ領内で確りと保護することをイレギュラーズに約束した。

 ロシーニ・クブッケ領主は奴隷オークションが潰されたことを激昂しながら悔しがったが、表向きは関わっていない立場であるためどうすることも出来なかった。
 かくして、イレギュラーズ達の活躍により、囚われの少女達は皆救われ、新たに幻想に巣食わんとした腐敗の一つは除かれたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によって、ロシーニ・クブッケでの奴隷オークションは潰され、囚われの少女達は全員が無事に保護されました。
 お疲れ様でした!

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