PandoraPartyProject

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双炎の雫

双炎の雫

 それは紅い、紅い色をしていた。
 双子の炎妖精が流した涙と云われた鮮やかな蒼と紅が混ざり合った希少な宝石を使用したペンダントトップは二つに別たれた。
 蒼き色はへ。紅き色は、妹へ。
 一つで二つ。その命を分け合ったただの一人の片割れ。愛しい貴女。
「エルメリア」
 そう、呼ぶ声が私は大好きだった。

 体が弱く、満足に冒険へと行けぬ私を『姉』は気に掛けてくれた。
 何時も傍で歌を聴かせてくれる。微笑んで手を握って、一番に分かってくれる。
 双子だから、何となく思って居ることが分かるの、と。
 揶揄う貴女の声が心地よくて――何時しか、姉妹愛は恋心へと変化した。
 秘めたその心は甘い蜜のよう。
 どろりと蕩けて、口にすれば溺れてしまうから。ずっと、ずっと秘めていた。

 ――秘めて、居たのに。


 恋心は狂ってしまった。変質する。変貌する。愛憎する。嫌悪する。
 綺麗な儘の片割れが、その眸に他の誰を映すことも許せやしない。
 許さない許さない許さない――私だけのアルテミア。私だけの愛しい人。たった一人の『私の片割れ』


「―――様。――姫様。巫女姫様」
 呼ぶ、声がする。アルテミアのものではない。最早聞き慣れてしまった男の声だ。
 天香と返せば「はい」と笑みに包んだ柔和な声音が返ってくる。この男はそうだ。
 この国のため、自身の家のためとなれば誰の靴だって舐められる。
 時の権力者である、私の前だからこそ、この男は義弟を打ったのだ
 彼とて愛する国と家族のためならば腹芸でもしてみせるとでも云う事か。今は所詮、只の眷属である癖に。

「ねえ、天香。前から言ってるけど、あの子……本当に必要?」
 問いかけたその言葉に天香は眉を下げて「どういう意味でしょうか」と猫撫で声でそう言った。
 破顔し、甘ったるく褒美を求める下品な男の顔。世界で一番嫌いな生物の顔をして、彼はそう言うのだ。
「そもそも、あの子。男でしょう? それも拾い子。ならば、必要ないではないの」
「男か女か、其れで二分なさりますな。『愛し子』殿を引き付けるのにアレもよく動いてくれました。
 ただ……巫女姫様よりも先に『愛し子』の周囲に近づいたことは罰さねばなりませぬ。主君の命を無碍にするなど天香家として恥ずべき事」
 諂う彼。苛立つばかりの私。
 まるで対照的な生き物だ。『あの子』であれば――私の思いを一番に理解してくれるのに。嗚呼、なんて。

 ――何て汚らわしいのかしら。

「巫女姫様。して、先刻仰っておられた事は……」
「勿論、やるわ。お前は帝を見張っていなさい。目覚めぬからと放置していれば攫われてしまうでしょう? ……嘗ての私のように」
「承知」と天香は頭を下げた。此れが神威神楽の重鎮、天香家の当主であるというのだから気分が良い。

 私は御簾から乱雑に飛び出した。
 もうすぐ。もうすぐ会いに行くわ。貴女に会うことをどれ程楽しみにしていたのか!
 嗚呼、嗚呼、大好き。好きよ。もう二度と離しはしない。

 貴女の眸に映り込んだ全てが憎らしい――私だけを見ていて欲しい。
 貴女の囀る声を聞いた全てが憎らしい――私だけに聞かせていて。
 貴女の身体に触れた全てが憎らしい――私だけに触らせていて。
 ……私は巫女姫。ああ、そうだわ。全てを罰しましょう。罪の烙印を落としましょう。
 この国に踏み入れた『貴女を知る』者全て、地獄へと落としてしまえば良いではないの!

 ――貴女だって、それを望んでいるでしょう?


 *カムイグラで不穏な動きがあるようです……?


※シナリオ『静寂の青、外洋の空』の結果から、クエスト『アクエリア・フェデリア開拓 総督府からの知らせ』が発生しました。
※一度だけ名声を獲得出来るクエスト三年目の祝祭が発生しました。
※一度だけ悪名を獲得出来るクエスト三年目の誘いが発生しました。
※サミットの結果、各国に領土が獲得出来るようになりました!
 キャラクターページの右端の『領地』ボタンより、領地ページに移動出来ます!
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※――KBH臨時放送のお時間です。

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