他と変わらぬ来客宿泊用の小さな個室だったはずだ。
それが今では壁に遮音材が追加で貼られ、窓に格子が嵌まっている。
トドメとばかりに室内の要所の錠には罠まで仕掛けてあった。
他にも何かあるのかもしれないが……。

ベッド・机・電子端末・本棚以外といったもの以外には、
応接用の一人がけソファ二つとコーヒーテーブルがある。

部屋の主の特性上、生き物が住んでいる匂いに酷く欠けていた。
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（※悪い人向け：
目標値100＜1d100＋テクニック×10で鍵をこじ開けられます。
貴方がとても器用な場合、判定無しで十分でしょう。
中身は大抵銃器や弾薬の類ですが、たまにガラクタもあります。
失敗した場合、生身であれば指がかなり深く切れる程度のダメージが発生します）

（お湯を沸かす間に昨日放置したものを片付け、湧いたお湯でドリップコーヒーを入れる。出来たコーヒーを保温用のタンブラーに注いで、後片付けをして部屋を出た。）

（頭と顔を撫でられている夢をみた。自分のそれにも似た硬質で思惑の見通せぬ笑顔である。それでもその目はあくまで穏やかで、指先は滑らかに髪や頬を撫でる。）
（実際にあったことだ。それでも何人か分の印象が重なって移り変わっていた。彼女と、その前に出会った彼女の祖母と、それと――）
君は――
（己の声で目が覚める。最後に見た顔にありったけの残弾をご馳走したのは数ヶ月も前になる。それで終わりだ。なのに随分執拗につきまとうじゃないか。）
……
（歯噛みする。好きか嫌いかでいえば一目で好きだとおもったが、あんなもの……）

（くさくさしたので枕を頭に乗っけて二度寝した。出来れば前二人の顔だけ見れたらいいなと思いながら。）

（お湯を沸かしたりしている。「そう言えば待ち合わせは何処だったかな」みたいな能天気なことを考えていた。）

（魔法瓶にお湯を注いでから部屋を出た）

（花束の花を活けて、寒さをなんとかするためにカップに湯を注いで啜っている。）（テーブルの上の花を目を細めて眺めているとなんとなしに嬉しくて口元がほころぶ。）

さぁて……。
（何はなくともお湯を沸かす。）

カッコつけた手前とはいえどうやって被害を減らしたものかなー。
わたしとて死にたくて生きてるわけじゃなし。
（油断すれば最悪死ぬ、というところから案を練る。そりゃそうだ、敵対者の手先なんぞ基本信用しない。自分だって信用しない。）

というかわたしが死ぬと今度こそ本当に手がつけられなくなるよねぇ。
わたしというより誰かが死ぬことでここが神経過敏になる。
そこまで行くともう収拾がつかない。やだなー、めんどくさいなー……。
（とうなりながらコーヒーの粉をフィルターに放り込んでお湯を注ぐ）

（朝長という男の導火線の長さを信用できればもう少し都合がいい。）

……商人さんを程度ダシにしていこう。
その辺の義理とかでとまってくれりゃいいし、わたしが死ぬと彼の仕事が厄介になるってあたりはお分かりいただけるとお互い幸せになるな。
まあその辺が妥当か……これで止まってくれることを天に祈って駄目なら死ぬ気で抵抗しようそうしよう。
（フィルターを捨て、漏斗を濯ぎながらカップに口をつける）

恋人さんとかその辺に圧かけるのはわたしの本意でもないし、後始末も面倒だし、そんなので止まらなかった時がおっかない。
（腕一本飛ぼうと、途上で何人身内を傷つけようと、仲間が路上の塵となろうと、殺すと決めたら殺すのだ。吐くほど後悔することが分かっていても止まらない。最悪でそういうものであると考慮に入れた。高く見積もりすぎかもしれないが、そもそも自分の見てきた一流というのはそういうものなのだから、そのような常識で判断するしかなかった。）

まあ「貸したもんを返して頂く」というシンプルな形でやっていこう、うん。
それが一番わかりやすい。わかりやすいのはいいことだよね。

あとは正直に歌っていただけるといいんだけどなあ。
尋問は、得意じゃないんだよなあ……。
（どっちかと言えば喋るほうが好きな自覚はあるし、人を疑うのもあまり得意ではない。尋問するにも後ろで立ってライフルで掌叩いてる仕事のほうが多かった。コーヒーを啜りつつ端末を立ち上げて、何ぞ低水準な言語を思考の片手間で打ち込む）

わたしも大概剃刀少年以外は向いてないし、バックアップあっての仕掛け屋なんだけど、人材不足は仕方ないね。
配られたカードで勝負するしかない。

友よ、君が居てくれたらどれだけ心強いことか……。
（決して来るはずもない人間にぼやいて、ひとしきり入力したあたりでうつらうつらしてきた。カフェイン如きでどうにかなる体じゃあないのだ、しかたない。椅子にもたれて仮眠をとった。多分そのうち本当に寝るんだろう。）

（目を覚まして手紙を書いて、それを投函しに出ていく。寒いし、コートの中に大事な物もしまいっぱなしだがどうしたものだろう。まあちょっとくらいなくたってこまんないさと高をくくった。）

……おっと
（一度出たが戻ってきて、花瓶の花を何度か愛でて、今度こそ出ていく）

（眠れはしないが、ぼんやりしながら端末を叩いて何か打ち込んでいる。寝る間が惜しい。）
（寝るのが怖い、が近いのかもしれないぞと口元を歪めた。）

（チップに何やらデータを書き込んで、花瓶の花を一瞥してから部屋を出た）

（眠かったのだが波をすぎてしまったのか気分が高ぶってイマイチ眠れない。雑にコーヒーを入れて啜りながら端末を叩いていた。）
（まだまだ修行が足りないなあ、と自嘲できる余裕はある。）

（寝なさいねと言う人も居ないので淡々と文字列を見て書いては消し書いては消し、だ。疲弊のせいか瞳の色が何処か赤っぽさを帯びている。ゆるい溜息。）

（暫くそうしていたが、ようやく眠気が訪れたのを感じてベッドに横になる。）
（やがて薄く空いたままの目の虹彩が灰色に色を失い、マネキンのように完全に動作を止める。）
（相変わらずどう見ても不安になる寝方で寝た。）

（目が覚めた。床を整え直しもせずフラフラとどこかに行った。）

（勝手に入るのはマナー違反かと思ったものの、この事務所は放っておけばすぐに台所の悪魔Ｇが出現するので、心の中でアリスターに謝りながら部屋に入る）

…………

（私物には一切触らず棚の上の埃や床の汚れを掃除をし、ベッドメイキングしてから外に出ようとした）
（…………が、その前にテーブルの上の花瓶が目に入る）
（花瓶の花はちょっと元気がないようだ）
（なので、水を替えたり枯れた部分を取ったりして手入れしておいた）
（これでしばらくは持つだろう）
（今度こそ部屋を出た）

（疲れ切っているのかベッドにたどり着けずに真横にぶっ倒れて行き倒れていた。息も寝返りもしないし目もグレーとか黒の部類なので不穏にも程がある。）

（泥水に沈み込むように悪夢を見ていた。）
（静止するもの、歯向かうもの、悲しみに沈むもの、せせら笑うもの、何も知らぬもの、微笑むもの、一切合切……。）
（壁紙の印象が嘗て住んだ都市なのか、今の住居なのか曖昧に移り変わるし、何を殺しているのかさえ明確にわからない。）
（とても大事なのに、心苦しくも、不本意にも、誰も望まぬにも関わらず。）

（場面が移る）
（髪が引き毟られる。身を鎧う強化CRPのプレートを強引に剥がされる。軟質の素材が刃物で強引に切り開かれ、人ならざる腹の中身を暴かれる。執拗に、亀裂が入るまで何度も何度もチタン骨格を鉄の車輪で殴打されれば、そこに張り付くようなアクチュエーター複雑系が先に根を上げてちぎれ飛ぶ。）
（馬鹿馬鹿しい。この身はこのような前時代な処刑に値しない。するはずもない。路傍で果てるのが似合いだ。）

（誰かの視線を感じたところで夢が切り替わる）

（何か温かく柔らかいものに体中掴まれている。）
（夢の中で微睡むというのも妙な話だが、まどろんでいる。）
（自分が自分を見下ろしていて、膝の上で頬を包んでいる。）
（それがなんだかよく知っている。この、数ヶ月前に殺した代物は非常にしつこく夢に出る。手足が蜘蛛の糸に絡められたように身動き取れないし、思考も鈍いし……。）

（悪夢から覚めたいが、体の疲労も心労も釘で床に縫いとめたみたいにそれを挫いていた。時折バタッと腕が動くだけである。）

（殺さなくてはならないのに手足が動かないジレンマの只中、漸く情景が切り替わる）

（『彼』らしきものに、先程の自分と同じように膝枕をしている。可愛いものである。）
（まってくれ、わたしはどっちだ。困る。もう一回やり直させてくれ。焦燥感で悲鳴を上げたいのにわたしは何をこんな、快いようなことをしているのか。）

（これだけの悪夢を見ても相変わらず打ち捨てられたマネキンのような姿である。）

（そのうち深い睡眠に移行して、見た夢をその間で忘れていく。）

（うっかり中に入りそびれてしまった。ノックしようと扉をもふもふ叩き）
……お、音が鳴らない……（躍起になってもふもふもふもふ！と叩きまくる）

（確かに居るはずなのだが行き倒れたままである。どうも鍵は締まってないようだった。）

（ぽめぽめぽめ、と本人が必死になればなるほど間抜けなノック音が響くばかり。暫くしてからようやく）
って人間の姿になれば一発だったじゃないか！
（と気付いたのだった。人型になってそっと扉から顔を覗かせると、倒れているアルの姿。慌てて近づくと、抱き上げようと手を伸ばし）
アル！？寝てるのかな？それとも……。
（バルドゥインに呪殺されかけた記憶が蘇り、さっと青ざめながら呼吸を確かめはじめ）

（呼吸はしてないし、開いたままの目の虹彩は暗転したままだし、休眠状態の体温などたかが知れる。血の通わぬ機械には当然脈もない。死体というよりか、重たい人形だ。）

（抱き上げられた振動を感知して僅かに視線が動いた。）

……大変だ。
（脈があるのが当然と思っていただけに、状態を知って真っ青になる。相手をベッドに寝かせたら、
パニックになって辺りに視線を彷徨わせる）
どっ、ど、どうしよう。僕はもう一人の僕みたいに治癒魔法は使えないし、死返しの玉はもう使えない……。
（ベッドの前に膝をつき、相手の片手を両手でぎゅうっと握って）い、嫌だ……。君を失いたくないよ……！

（ベッドに運ばれる振動や、手を握られる刺激、人の声で漸く意識が浮き上がってきた。ぼうっとした視線を相手に向けながら手を握り返し）

まだねむいんだけど何かシリアスなこと言ったほうがいいかな。
（シリアスの欠片もないことを言い出した。）

…………！
（握り返されると、涙目になりながら相手の顔を見る。頰を赤らめながら）
煩いな、僕がこうしてたいだけなんだから、無理しないで寝てなよ。……凄く、疲れてそうだし。
なにか僕にできる事はあるかい。

泣くようなことなんてないだろう？確かに寝方が心底不穏な自覚はあるけどね。
…だから人前で寝ないようにしてたんだけど、説明する前に寝てしまうとは失敗失敗。
（少々ゆらゆらしているがだんだん目が覚めてきたのか、おおよそ人っぽい擬態が身につきだす。へらへらと笑い。）

寝疲れて体がギシギシ言ってる以外はだいたい大丈夫かなぁ。
君こそ用事とか、この建物に住むにあたって必要なものもあるだろう？

寝起きドッキリをしかけようとしたら、仕掛け人が驚くパターンだよね、絶対。
（そういえば前の体でも、アルの寝顔は見ていなかった気がする。いつものへらへら笑いが戻るとホッとするが、
両手はしっかと相手の手を握ったままだった）

確かにアルの部屋にケージ置いて暮らすのもなぁ。部屋を都合できないか聞いて見るよ。
……べっ、別に用事はないけど、こんな風にいきなり死体みたいな倒れ方されてたらビックリするし。一晩くらい、添い寝してやらなくもないかなー、なんて！

旧い友人も「不穏だから俺に見えるとこで寝るのやめろ」って言ってたからね。
でも寝てる時まで生きてるように擬態するのは、どうも休んだ気がしないし。
（体を起こして、空いている手で首の後を掻き、それから首を回した。）

君のご褒美のこととかも聞かなきゃだし、君に魔力の補充もしなきゃだし、報告もしなきゃだし、破れた服も直さなきゃだし、意外とやることはあるなあ……。
（握られた手を何度か柔く握り返し）

……わたしと寝たいの？
（聞き方によっちゃ不健全なことを言う。他意はない。）

自分の部屋でくらい、好きなように休むのが一番だ。
次からはビックリしないようにするけど、床で寝てたら流石にベッドに運ぶよ。案の定、身体が痛いみたいだし……。

お腹はちょっと空き気味だけど、君が万全になるまでは我慢しとくよ。トドメになったら嫌だからね。
服はサイズ合うか分からないけど、ランベールのとこから都合できるし、報告なんか後回しでいい。
（握る手が安堵感からか、少しずつ温かくなる。ようやく気を緩めて肩の力を抜き）

んなっ！そん、ストレートなっ……(汗をだくだくと流し）……添い寝だよ、添い寝っ！ぬいぐるみの姿でいいし。それがご褒美って事で……。だっ、駄目かい？

たまには床で寝るくらい疲れる日もあるさ。
余計な仕事を増やした罪悪感かどうかはしらないけど、貧血持ちの乙女みたいに心配されるのは心外だなあ……。
（うーんと唸る。実際、一度寝て起きれば大体のことは問題ない。ちょっと手を離してね、と促してからコートを脱ぎ、レザースーツの留め具を緩める。伸びをすると傷口を塞いでいる硬化剤が二の腕で引き攣れて鬱陶しいので、それを剥がすようにおもむろに上半身を脱ぐ。白いシリコン人形めいた胸板の胸椎の上に青く光る亀裂が走っている他、首筋や腕等の黒い素材が明確に人工物を主張する。）

まあ、ご褒美は君がそうしたいというならそれでいいんだけど……。
イザーク。君、初対面の時よりランベール君に似てきてない？
（ヘタレ具合が。）
もっと堂々としててもいいんだよ？

うぐっ。アルの生態が分かればちょっとは慣れるかもしれないけどね。何事も理解だ。そうして弱みを見つけて付け入るのが一番楽しいよね。
（くくく、と手を離しながら邪な笑みを浮かべる。
だがその弱みに付け込む勧誘方法でアルクに三回フラれたのだった。やはりヘタレである）

まっ、僕ほどの龍となると洗脳も出来たから、そっちの方が効率はいいんだけどね。……もう力が奪われて出来ないけ、どっ！？
（目の前でいきなり相手が脱ぎ始めれば、目を丸くして凝視してしまう）
凄いな。こんな褒め方可笑しいかもしれないけど、身体も……傷口も不思議で、綺麗だ。

らっ……！？（ランベールに似ている。そう言われると無駄に対抗心が湧いて立ち上がる）仕方ないだろ、大人になる前に延々と殺されてたんだから。
でも、まぁ……アルがそんなにハードなご褒美を求めてるなら、僕としても応えなきゃだね？

最適解とか制御できる状況が好きな、ただの事なかれ主義の愉快犯だよ。
どこにでも居る、物見高い仕掛け屋（ランナー）の、尖兵さ。
（裏を返せば非効率や暴走した状況や愁嘆場が嫌いなのだ。苦手、ではなく。表向きの性格の概要ではあるが、深層など自分ですら覗き込む気はしない。無駄な割に考えると厄介事しかないし、しまっといても暴発しないなら手を付けないに限る。）

まあ効率がいいなら使うんだろうけど、洗脳って退屈だよねきっと。
……ドールフェチかな？
いや、まあ、それはいいか。
この光がなくなってるか胴体と頭が大破してたら大体死んでるか、死にかけてると思う。
（ただ邪魔だから脱いだというような恥じらいのなさ。亀裂から漏れ出る光は指向性のない魔力の光だ。目的を与えられる以前の、漠然と存在するような。）

出来る限りはそれなりの好意で応じるけど、気に入らなかったらベッドから蹴落とすだけさ。
自由と平等ってそういうものだ。

どうだかね。『最適解』なんて言うけど、厄介者の僕を生かしてる。いつ裏切るかも分からない、闇から生まれたような存在をさ。

面倒ごとも、頼まれたら断らずにキッチリこなすし、君が思ってる以上に君自身は泥臭い努力も惜しまない『いい奴』さ。
（だから飼われてるんだけどね、と内心で呟く。内側の美しいさに惹かれるのは水神の性分だ。澄んだ水の中が心地いいように、側に居るのはなんだか落ち着く）

そうだね。記憶も偽りだし、自分が望む答えしか言わないからつまらない。そんな孤独を分かってくれるならさ、アルもいつか僕の闇に堕ちてきてよ。（どんなに邪悪な笑みを浮かべても、ふわふわの耳が滑稽に見えてしまう。長い尻尾がふわっと揺れた）

お互いにLV.1でなければ蹂躙出来たのに。嗚呼、でも……（魔力の光に舌舐めずりをする。相手に近づき、亀裂の入った部分をなぞろうとして）
凄くそそるね。アル、動力源は魔力だったのかい？

日々心地よく過ごせるのが一番の答え。身の安寧は敗北の許容限界。
負けないように立ち回って、勝てる時には勝てるだけ勝っておく。
そのためなら手は打つし、相乗りしたいなら喜んで、なのさ。
（暴力と謀略を使い分け、自分を形作るものを愛し、明日を妥協しない。たまたまそれがここで善良という形で発露しているに過ぎない）

……面白そうで、しっかりした計画なら考慮はするよ。でも正直ここでこうしているより楽しいことでもなさそうだからね。
（世界の滅亡にも憎しみもどうだっていいことだと笑う。）

基本的には電気駆動だよ。
感情とか、何故か細かい傷が直ってるとか、そういう説明の付かない部分以外は。
（亀裂をなぞられるとこそばゆさを感じて、きゃらきゃら笑いながら子供っぽく身を捩った）

むしろ使わないようにしていてね。制御できるかどうかもわからないものに全面的に頼るほど無謀になれないから。

うぅん、やはりフラれてしまったな。もっと別のアプローチを考えなきゃ。アルにピッタリそうな闇堕ち……スローライフな世界征服？
いやいや単純に単語を合わせただけじゃ何のイメージもつかないな。
（眉間に人差し指をあてて考え込む。うむむと唸った）

へぇ、電気。たしかこの事務所には発電スフィアが幾つかあったけど、ああいうのにプラグでもぶっさしてエネルギーを得るのかい？電気に美味い不味いはある？
（矢継ぎ早に質問してから、話題がそれまくっている事に気付いた。
傷をなぞった指先を軽く舐めて）

じゃあ、魔力不足に陥った事はあまりないんだね。……ふぅん。
（それでも一口味わってみたい。欲望が促すままに相手の顎下へ指先を滑らせ、掴んだならそのまま魔力を奪おうと口づけようとする）

理解されない孤独も、許されざる生まれであることも、もう苦しみでもないからね。
むしろ君がわたしのところまで昇ってくるべきだとおもわないか。
（いたずらっぽく、或いは皮肉げに、もしくは挑むように笑う）

さあ、適切な電圧ならなんだって同じだろうし……
（動力炉もあるし、と言おうとして口づけされる）

ちょっと……
（口をふさがれて尚、少し咎める声をさせた。その魔力は刃の上に降りた朝露のような口当たりかもしれない。流量を制限しているのだから足りるとも思わない。
『……ひとつだけ開いてあげようか』と、自分の心中の戒めに思考の指をかけ、セラミックの歯列を開いた）

（強いて言えばその先は雨だ。懐かしいような、どこにでもあるような。奪うまでもなく終わることもなく注ぐ雨のようなものだ。雨音のように思考を和らげ、指向性のはっきりしない、淡くダウナーな。しょうがない子だなと相手の髪を撫でた。）

昇った先でアルが何を見せてくれるのかは興味があるね。
（チェシャ猫のように口元が弧に描く。口づけが成功すれば、機嫌よさげな声が「ふふっ」と小さく漏れた）

（折角食らいつけたチャンスだ。いつも上手な相手をへろへろにさせてやろうと悪巧みをしつつ、まずはひと吸い。

その瞬間、目の冴えるような口当たりに目を見開いた）
………っ？！……、……ん……。

（味わった事のない感覚に、もう一口、もう一口と雛が餌を啄むように求め始めた。
味わううちに、思考が緩やかになっていく。頭に触れられると気持ち良さそうに目を閉じ、
唇を離す時も余韻に浸るように静かだった）

……ふは、……。
……アル……。君……いったい何者なんだい？

（このまま腕の中でダメにしてしまいたいような、心温まるような、そんな気分でしたいようにさせていた。）

（妙な存在感というか、「物」と「者」との境目が曖昧に霞むものが溜息みたいな声で笑って、片目を閉じた。）

わたしはわたしだよ。わたし以外の何者でもない。
（曖昧で、答えとして望まれるようなものではないだろう。奇妙な雰囲気も直ぐに失せ、機械で出来た構造体に近い日頃の姿に戻る。）

なにせ、自分が何者であるかなんてうまく言葉にできないものを言葉にしようとするのは徒労だからね。
だから、ただのアリスターでいいのさ。今はね。

今まで味わったどの魔力より、なんていうか、すごく『静か』だ。
（搾取してみなぎる力をそのまま奮う。持て余した魔力を周りに叩きつける。そんな事が当たり前だっただけに、普段とは違って心穏やかに居れた事が不思議で、目をまんまるくしていた）

ただの、なんて……こんなに凄い魔力を持ってると知ったら、僕みたいな魔力が主食の奴らに付け狙われてしまうんじゃあないかい？

機械の体にこんな凄いものが眠ってるなんて、誰も想像はつかないだろうけど……。

（真っ黒い手で胸元の亀裂を摩ると、しばらく思案するように虚空に目をやった）

さあ、どうだろうね。
こんなもの、別段大したものじゃないとおもうよ。最後には街を覆いつくしていたし。
わたしの中にあるものなんて、わたしという構造体に引っかかった一かけらに過ぎない。
（最後に殺害したものに比べれば、この身など……日頃より笑みが固い。）

……それに正直、付け狙われてもただで済ませる気はないしね。
大丈夫さ、なんとかなるよお。
（きゃらきゃらと、先ほどの固い笑みを覆すように笑った）

君の世界ではそうかもしれないけど、この世界じゃ話が別だ。大体、アルが他の奴と魔力供給なんて冗談じゃない！
（むっすりと頰を膨らませて怒る。尻尾でぺしぺしと相手の腿を叩き）

君は僕のものなんだからね。……まぁ、手を出すような輩がいたら黙っちゃいないけどさ。

君がわたしのもの、だろう？
（笑って、膨れた頬をつつこうとする）

わたしのどこがいいのかはやっぱりちょっとわからないけど、君が執着するんならそこのところは否定はしないでおくことにしよう。
ただ、わたしはきっと君が思う以上に人ではないから、きっと君の期待を裏切るだろうなとは伝えておくよ。