他と変わらぬ来客宿泊用の小さな個室だったはずだ。
それが今では壁に遮音材が追加で貼られ、窓に格子が嵌まっている。
トドメとばかりに室内の要所の錠には罠まで仕掛けてあった。
他にも何かあるのかもしれないが……。

ベッド・机・電子端末・本棚以外といったもの以外には、
応接用の一人がけソファ二つとコーヒーテーブルがある。

部屋の主の特性上、生き物が住んでいる匂いに酷く欠けていた。
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（※悪い人向け：
目標値100＜1d100＋テクニック×10で鍵をこじ開けられます。
貴方がとても器用な場合、判定無しで十分でしょう。
中身は大抵銃器や弾薬の類ですが、たまにガラクタもあります。
失敗した場合、生身であれば指がかなり深く切れる程度のダメージが発生します）

ああ、いらないの？じゃあわたしだけか。なら横着しておこう。
（カップにインスタントの粉末を放り込んでお湯を注いでから持ってきて、向かいにゆったりと座る。）

ところで一応情報のすり合わせをしておこうっていう気はわたしにもあるんだけど、何かある？わたしの視点についてはあの場で話した。

…ああ、アンタがあの二人の関係を知らなかったのは分かってる。

……あのローブの…ログハウスの店の店主も同じようなものだろ？

まあ、そうだろうね。
誰かに聞かれて正直に答える部類の話でも、なかったろうしさ。
面白半分で泳がせたらとんだ流血沙汰だよ。
分かってたらもうちょっと考えたよね。誰が自分の住処が血で汚れるのを喜ぶって話だよ。
（コーヒーカップに口をつけながら、使っていない灰皿を引き出しから出してテーブルに置いた。要るならどうぞってことだろう。）

…なら、今後朝長をランベールに会わせる時は目の前で流血沙汰になる方が確率が高いって覚えとくといい。

……アイツは最初からランベールを殺すつもりだったみたいだからな。それと、人の因縁とかを面白そうだと引っ掻き回すのはやめろ。相手を殺す気で探してる奴だって居るんだ。

…それと、あの時は申し訳なかったな。目の前でランベールの首の骨が折れた音がして…周りが見えなくなっていた。駄猫と言われても文句は言えん
(出された灰皿には何時も吸ってるわけではないので要らないと首を横に振った)

失った過去を知って何をするのかに興味はあったけど、まあ考えとくよ。
器用な立ち回りに期待するのもナシだ。

それにしても刺客がくる上司だったなんて。転職先でも探しておこうかなぁ。
（たちの悪い軽口の部類である。本当にその気ならとっくにそうしている。）

まあ、彼の無駄な強度と緊張感のなさは知れたし、次から気をつけよう。
首折れたらわたしだってもうちょっと焦るんだけどな。

…ハインツが言っていたが今度、話をするって事になってるだろ？その時に立ち会うのなら覚悟はしとけよ。俺も場合に寄っちゃ朝長を攻撃するつもりだ。俺はランベールをどうにかされるのは嫌なんだ

…本気で考えて置いた方がいいかもしれんぞ。多分、もっと荒れる気がしてる(杞憂なら良いんだけどな。そう付け足して)

…あの身体が死体だからだろう。

覚悟も何も、この期に及んで何かするなら撃つのは当たり前だろう？
あちらの商人さんの面子も潰れるけどそれ以上のことをしたらそうなるさ。
（テーブルが汚れたら拭くのが当たり前だと言っているようなノリで、笑顔で）

まあ転職先ったってアテもないし、ランベール君のことは嫌いじゃないからねー
彼がくたばるかどうしようもなく利害が一致しなくなってから考えるー。
（緊張感のないへらへらした態度である。）

まあ死体なのは聞いてたけどね？
遠隔で義体操るようなのと似たようなもんだろうさ。

………そうか。まあ、その時の状況でどうなるかだな(「笑顔ってのの感覚が俺とは違うんだろうな…」)
(相手の表情を見てコイツは楽しいから笑うのではないのだろう。そう判断する)

…あの時、敵として見てすまなかったな。今の言葉聞いてほっとしたしアンタをまた仲間として考えられる。(自分の最近できた友人にも一人笑顔を絶やさないやつが居たし相手がそう言う生き方をして来たのだろうと言う憶測でへらへらした態度には何も言わない。)

…中身が、……(『何度も死を繰り返していたせいもあるかもしれん』。そう言いかけたがこれは自分からは言わない方が良いだろうと口を噤んだ)

俺から話したかったのはこれくらいだ。時間とってくれてありがとな

そもそも何も感じないものを覚悟しろって言われるたびに複雑なものはあるよね。
狩猟機だぜ？元々その手の機能なんてないよ。木石と生き物なんて何も変わらない。
覚悟が要るとするなら殺すよりかその後の話。
（わずかに視線が他所に泳いだ。面倒臭いか、或いは憂いにも似ている。）

まあそれはいいさ。行き違いはよくあることだし解決できたら問題ナシさ。
当座は信じてもらっていいよ。何しろ裏切る理由と利益がないからね。
故あればいずれ裏切るかもしれないけどそれはお互い様だし、そうだとしても通すべき筋ってものもある。

君がここを出るっていうならわたしはさようならって言うんだけど、
わたしについての情報が知りたいなら幾つか聞いてもいいよ。
君の信用とかに返せるものはそれくらいしかない。
（一応歩み寄る気はあるらしいが、ビジネスに慣れきった物言いではある。）

…心が無い機械って事か。……無いではなく、まだ備わっていないだけにも見えるけどな、アンタの場合。
(視線が泳いだことに気が付いたが自分自身地雷が多いので相手の何処まで踏み込んでいい物かと迷った)

ああ、信用させてもらう。アンタの物言いはビジネスの類に聞こえるがそういう言葉は信用できる。…それこそ利益が無いと見切りをつけるまではな

時間が遅いし、明日とかじゃダメだろうか？(歩み寄ろうとしてくれているであろう相手に自分も歩み寄りたいがまだ本調子ではない。できるだけ身体を休めて早く調子を戻したいのもあるし、話しをきちんと聞けない可能性もある。なので後日ではダメだろうかと聞いてみる)

それが大事な人だったなら、悲しむ。非合理的にも床叩いて悲しんだこともある。
大事じゃないなら、何も感じない。心より前。本能の問題なんだ。
（こめかみを軽く叩いて言う。負い目はない。長所であり短所なのだから。）

うーん……まあ確かにちょっと遅いね。では改めてまた今度、だ。
何かほしいものがあれば用意していいし、或いは君がわたしを呼んだっていい。
（ソファを立ち、扉まで送る。別に広い部屋じゃないが礼儀上そうしていた。）

…すまん、機械って言ったのは訂正させてくれ。アンタにはそういう感情があるってのを考えて居なかった…。
…非合理的、か。俺からしたら普通だと思うがな。


ああ、今度また。
すまんな、病み上がりで無理したくないのもあるんだ。…明日の夕方以降にアンタに時間在ればその時にでも。(立ち上がると部屋を出て別れ際に尻尾を軽く振ってじゃあな、と挨拶をして自室へと戻って行った)

色々思ってるけど表に出すかは全くの別問題なのさ。
じゃあ明日の、まあ七時以降にでも。待ってるよお。
（緊張感のない笑顔で笑って、その背を見送って扉を閉じた。）

……何しろ、わたしが何を思おうと他人にとっては何の価値もないものだからね。
（扉の向こうで聞こえもしない言葉を口にした。これほど孤独なことはない。）

同時に、自分にとって赤の他人の心に価値をつけるのは自分の思うままでいいんだ。
（これほど自由なこともない。）

（カップや灰皿を片付け、そのまま床につく。）
（毎度のように打ち捨てられたマネキンのように寝た。）

（ソファに肘ついてダラダラしている。眠い……というか寒くてやる気が出ない。そろそろ暖房器具と温かい服が要るなあと思った。）

(コンコンとノックの音)…すまん、時間７時を少し過ぎた

はーい（ソファを立ってドアを開け）
まあ15分も待ってないし、一時間までなら気にもしない。
ところで何か飲む？
（座ってていいよ、とソファを示し。）

…なら良かった。ビジネス的な言い方が多いと思ったんで時間に厳しい方かと
(部屋に入るとソファに座る。庭で食べた後のゴミは既にごみ箱へと捨てて来た様子)

…あるのはコーヒーとジュースと湯だったか。……水でいい。猫舌だから熱過ぎたらどの道飲めんしな

世の中そういう賢く動いてくれる人ばかりでもないからね。
一時間待って連絡入れたら「今起きました」もザラな話だよ。それを続けて二回やられたら「こいつは駄目だな」で切り捨てるかもしれない。
（肩をすくめて笑う）

……すぐ飲めなくても、冷めるまで持ってたら手が暖かくなるよ？どう？
（薬缶に水を入れてお湯を沸かしつつ。自分は少なくとも飲むのだろう。）

…まあ、時間守れない奴は信用は出来んよな

…あー。まあ、そうだな。んじゃ湯で。(雪豹故にその辺りは平気ではあるのだが相手の好意を受け取ることにした)

遅れますって一本入れてくれるだけで許すけどね？
（水を差してやや温めにしたお湯と、インスタントコーヒーをテーブルに置いて）

さて、何から話そうか。
駆け引きをする場ではないから、嘘はつかないと約束していい。
ただし主観でしか話せない以上私は時に思い違いをしている可能性もあるし、
話すことで不利益がある場合は逸らかすこともあるかもしれない。
（ソファに身を沈めながら先に自分が話すに当たっての条件を口にした。）

ああそれともう一つ、極力人に流さないでね。はずかしいから。
（口元に指でバッテンを作って、お茶目に）

(湯の入ったカップに触れると温度がそこまで高くない事に気が付き)…ありがとな

…わかった。不用意には流さない。嘘をつかないというのも信用する
そうだな…。…アンタの元居た世界ってどんなだったんだ？そこではどういう風に過ごしていたのかも聞きたい

これでも意外と長い人生送ってきたから、どこから話したものだろ。
生きてる間で状況も大きく変わったし。
（かいつまんで説明しようとすると思いの外難しいのか、少し考え）

サイバーパンク、っていうのが一番ラクな説明なんだけど、わかるかな。
未曾有の災害の後、巨大企業やあらゆる組織がネオンの不夜城と情報の陣取りをしていたようなところさ。

それで済んでりゃもうちょっとシンプルだったんだけどね、なんでかあちこちの都市に、果てのみえないようなぶっとい杭が突っ立つし、これまたなんでか鵺だの吸血鬼だの人狼だのがそこかしこに湧いてでた。

わたしはそんな世界で、そんなわけのわからんものを始末したり生け捕りにするための『群体』として製造されたんだ。
（どう説明すれば簡潔かつ理解が及ぶかを考えたが、とても難しいと口元を歪めた。）

……すまん、俺の方が大まかに聞きすぎたな。
アンタの口振りだと「殺し」が日常的な物に聞こえてるんだ。
製造って言うのと今までので人工的に造られたってのはわかる。
んで、狩猟機って事はそのモンスターを狩る個体って事か？

だいたいはそう。でも、個体っていうか群体だ。
高度に連携し情報を共有する無数のわたしの集まり。
民生用じゃないから「人を傷つけてはいけません」ってリミッターがない。
ヒト型相手にするに、邪魔なだけだからね。

ま、自我を得る前のわたしがそれ。
孤独と自我と感情を得てからも結局、こんなん同期できないから要らない子だ。
たまたま破壊されずに済むように意図した人間が居たって、戸籍も企業の登録もない殺戮機械とかいうたちの悪いもののやれることなんて多くはなかったからね。
大体ずっと非合法な仕事してきたよ。
（大した事ない人生だろ、と笑う。暖かな幼年期などは存在しないのだ。）

なるほど…じゃあ、もう一個。

アンタにとって笑顔ってなんだ？笑ってる時が多いが笑ってないことが多いだろ。
最初は心が無い、もしくは備わっていないが業務的に笑みを見せていた…そう思って居たんだがしっくりこなかった。

……真意を隠してるようにしか見えないんだよ、アンタの笑顔って

人に曰く「笑うという行為は本来攻撃的なものであり 獣が牙をむく行為が原点である」そうだよ？
（くすくすと笑って）

まあ、ほら、『たとえわたしが何を決意しようと、何を怒ろうと、何に悲しもうと、何に喜ぼうと、何に絶望しようと、何を渇望しようと、何を信じようと、赤の他人にとっては塵芥ほどの価値もない』んだ。
或いはそこに漬け込んで利用さえしようとするだろう。
だから心ってものは簡単に表に出しちゃいけない。それが一つ。
『泣きながら生まれてきたんだから、笑って死んだほうがいい』と思うのも一つ。
（瞑目して笑い、目を開いた）
それから、さ、
『笑っていたほうが素敵ね』ってわたしに言った人がいたんだ。それも一つ。

泣かない理由はあっても、笑わないで過ごす理由はあまりないんだよ。

……獣が牙を剥く時は唸る行為も入るんだがな…。まあ、歯を見せるって行為としては似ては居るか…。

……それは『赤の他人』に対してだろ？
…アンタの事を仲間として見てる奴にも威嚇をしてるって言うことになると思うんだが。
俺は利用する気も無いし、ランベール…いや、銀影と言ったほうがいいか。此処の所長だってその気は無いだろう。

…笑っている人間は綺麗だとは思うが、それは心が笑ってないと気味が悪いに変換される。あとは何考えてるかわからん奴、だな…。

……まあ、一線置いてるって事は把握した。俺みたく特定の事ではなく、最初からすべてに。其の儘で居る気ならそこに踏み込むのは早々にできんしな…。

激情するときは時と場合くらいはわきまえるのが大人ってものだろう？
わたしは感情的になることが美徳だなんて思わないし、感情を覚えた上で感情的にならないようにできるからそうする。
かと言って無表情で居るのも感じ悪いじゃない。機械丸出しだし。
もう、習性だよねえ、愛想笑い。
（泥のようなぬるいコーヒーに口をつけて、へらへらしている）
あーぬるくなるとあまりおいしくなーい。

まあそれに、さ、ここに居るのは割りと楽しいから、これでいいんだ。
君たちにとって取るに足らないことがわたしにとっては何もかも新鮮なんだよ。
前の世界でもそれはそれで楽しくおもって生きてきたけどね。
友達も結構いたし、いろんなバカもやったし。

それともきみ、わたしが泣いているところを見たら、安堵する？
いきものなのだなあとおもって。
（菫色の目が無機質に相手を見た）

……愛想笑いされても良い気もしないがな。

まあ、アンタが今それでいいなら俺は何も言う気も無い。
…ただ、友人として楽しんだり馬鹿やったりも出来ないだろうな。その新鮮な事も、アンタだけその範囲外で傍観してるに過ぎないだろうし

激情に関しては俺は上手くできていないのを自覚してるから尊敬はする。
その事だけにはな。…相手の気持ちを汲めないならそいつの言葉は入ってきやしないのも事実だ。「どうせ外側からしか見ていないし此方の気持ちを分かって言うわけでもない。なら、言ってればいいさ」くらいにしか思えない。

……安著ってのが意味わからんが心配にはなるかもしれんな。

（深呼吸に近い溜息）
こんな時どういう顔をしていいかわからないな。
（僅かな薄笑いとともに途方に暮れた顔をする。背もたれに深く背を預けた。）

きみは面倒なやつだなって今ちょっと思っているよ。
わたしは楽しい。悲しいことはないし、腹立っても寝れば収まる程度。
それを勝手に深読みして自滅してるのは君じゃあないか。
真意なんてもの、自分のものですら測りかねるものだろうに、解るようにしているのが当然なんていうのはちょっと贅沢が過ぎるってものじゃないか？

これでも大概君には感情を振り回されていると、おもっているんだけどね？
（ソファにふんぞり返って足を組んだ。）

…素直に困った顔すりゃいいじゃねえか。

俺自身もそう思う。…感情を何処か遠くに追いやってしまえばえらく簡単だし、怒る事もしなくて済む、何も感じなくていい。…でもそれじゃ生きてるとは言い難い…それは殺すときだけで十分だ。

……まあ、誰に彼にとやってるなら贅沢だろうな。それを受け付けない奴からしたら迷惑にしかならんだろうし、八方美人の類になる。

…それは迷惑だと言ってるんならこれ以上踏み込みはしない。線引きを確かめたいってのがこれを聞いた理由だしな

わたしが怒るのは、わたしがやっていることを邪魔されたとか、裏切られたり面子を潰されたと思った時とか、大事なものを傷つけられるとか、不始末や他人の感情の巻き添え食らって振り回されるとか、わりとそんなものだよ。程度の差はあるけどね。

まあ正直先日はね、とても怒ってた。とてもね。
彼が死んでたらきみたちはもう要らないと思った。
生きてたから寝て起きたらまあいいかとも思ったけど。
（穏やかな範囲の表情ではあるが、眉間に僅かに皺を寄せた）

迷惑、迷惑……か。
……別段迷惑ではない、かな。こういうのは必要なことだよ。
気分的にそう悪くもないと思うし、こういう話から得られるものもある。
わたしにはできることとできないことがある。きみもそうだ。
一応仲間なんだし、そこのところのすり合わせは要るよ。

……先日のは、俺に非があるのは認める。…だが、此処の所長がもしも朝長に殺されてたならあの二人を引き合わせたアンタにも非はあるだろ。…終わった事持ち出すのは無意味だが、持ち出されたなら反論くらいさせてもらう

…俺はアンタと今こうして話してて、正直表面上での付き合いしか出来ないと判断してる。
反りが合わないというか、根本的な感覚が違うならどっちかが折れなきゃ無理だし、そっちが折れる気が無いなら合わせるしか無いだろ。

怒りの琴線の話がでたから、どういう時に怒るのかの説明をしたんだよ？
（それで終わり、と。）

まあ、わたしも「何この人かんじわるい」が第一印象だし、今でも「いい年してガキかよ」みたいには思ってるけどね。
でも、いいじゃない。同調するだけ、理解できる範囲だけが仲間のありかたじゃないしね。

君はストレートに感情を扱える人で、わたしは逆境だろうと笑って凌げる。
長所であり短所だよ、お互いのね。可能性を潰し合う必要なんて全くないんだ。

……そこんとこは、リスペクトくらいはしてもいいとおもってるよ？
他にももっと面白いこともあるかもしれない。時間はかかるけどきっとね。

…笑って凌げる奴からしたら面白いに変換出来るんだろうがそれが出来ない俺からしたら上手く避けるしかできん。

……(頭をガシガシと掻いて)アンタと話してると苛立ちが募り始める。…いい年って言われたら反論できないしな。

まあ、適度に付き合っていくつもりだ。(冷めきった湯だった物を喉に流し入れると静かに置いてから立ち上がり)
話聞かせてくれてありがとな。

まあそりゃ割りと煽ってるっていうか喧嘩売ってるフシはあるね？
おこってもいいのよ？いたいですむ範囲でなら！
（いたずらごころに満ち溢れた子供みたいな笑い方。実に楽しそうだ。）

おしゃべりってきらいじゃないからね、きょうはこちらこそありがとう。
そのうち日を改めてこっちからも君に何か質問しに行くかもー。
（カップをおいて立ち上がり、扉まで先に立って見送る姿勢。）

……やっぱりか。
怒ったら思うつぼだろ…ったく…。(ため息をつき、廊下へと出て)

俺は苦手分野だ。言葉選ぶなら喋らんほうがよっぽど楽だと思ったな…。
…答えられる範囲なら答える。そっちも答えてくれたしな。
じゃ、おやすみさん(尻尾をゆらりと揺らして自分なりの挨拶をすると自室へと戻って行った)

アルクくんのいけずー。

えらばなくてもいいのに。わたしは今日は選んでない。ほとんどね。
まあ、いいや、おやすみなさい。またこんど。
（たたーって子供っぽく手を振って見送り、扉を閉めた。）

（再びお湯を沸かしつつ考える。）
（徹底的に相容れないというか、お花畑柄の鉄筋コンクリートと棘のある華奢な野の花くらい性格が違う。不穏な人生送ってきたのは同じなのにどこでこんな差がついたのか不思議に思うが、寧ろ元の世界でも自分は比較的少数派なのは理解もしていた。）

いやー、どう攻めたものかなあ。間にランベール君でも挟んだほうがいいんだろうか。

人生には悔いはないけど、叶うなら掃除機に生まれたかったなあ……
かわいい掃除機ならもう少し人と簡単に分かり合えたかもしれない。
（何の責任もない、民生用の、愛嬌たっぷりなボディのロボット掃除機であったならば。そうすれば激情にかられて腕を振り回しただけで簡単に誰かを殺す可能性などなく、誰かと化かし合いをすることにもならず、心を制御する必要性などは何処にもなかったのだろう。どこかの倉庫やご家庭など掃除して、それなりに可愛がられて人生を終わらせられたかもしれない。実際魅力的ではあった。）

（暫く思考に没頭していたが、薬缶がしゅんしゅん鳴る音で正気を取り戻す）
おっとあぶない。

（先程自分が使ったままのカップをすすぎもせずにインスタントコーヒーの粉を放り込み、煮え煮えのお湯を注ぐ。）

旧い友よ……ひょっとしてわたし、君らに気とか使わせたりしてた？
（返事が帰って来るはずもない質問をふと口にした。その場に彼が居たら恐らくこう答えただろう。『身内でロボット心理学の論文纏めたら博士号取れそうなくらいには』と。）

（ソファに座り、香りも飛びきったようなコーヒーのカップに触れて手を温め、少しずつ飲んではぼんやりしている。自覚はないが、ちょっと疲れているのかもしれない。うつらうつらと意識が遠のく。）

（カップが指先から滑り落ちそうになってはっと正気に戻り、コーヒー飲んで片付けもせずに屍みたいに寝た。）

（寝すぎた。体が軋む。暖機のためにベッドの上で黙々と柔軟体操をしている。）

（程々に体を動かして、のろのろとお湯を沸かす。寒い、寒い。）