PandoraPartyProject

ギルドスレッド

もふもふハウス

【二階】ソフィーの部屋(解放中)

大きめのベッドに、畳めるテーブルと椅子。それが置いてある普通の部屋。
現在解放中。

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………
(それは、過去に耳にした言葉だ。
「なあ、何で血ィ吸わねェの?」
「別に怒ってないって」
…………重なって聞こえる。
――私は、
――私は、
――私は。

目の前に伸びてきた手が、まるで恐怖の象徴のように見えて。
手を、出し‥‥‥‥かけた)

………っ……
(重なっていた声が、ブレた。
あの時とは違う、落ち着いた声。
……そうだ。彼は、彼女は、ヒトじゃない。
ヒトじゃない。
そう思うと、頭が冷えた)

……………にぁ……
(声を出そうとして、掠れた鳴き声が漏れた。
我ながら情けない声だ。
口を紡ぐと、ふわりと頭を撫でられる。
ヒトの手じゃない、獣の手だ)

(暫くした後、そっと机の下から元の位置。ソファへとよじ登って腰かける)
……。(飯を喰うのが自然の摂理と思っている獣。でも相手は、ソフィーは。もしかして少し前の俺と同じで、日陰を自分から選んで生きてきてるのだろうか?……なら、其処から出れたら楽になるんだけどなぁ。そう考えるがいい言葉が浮かばない。)

(ソファーへと腰掛けたソフィーに目線を遣り)……なあ。過去、アンタは何があって、今こうしてそんなに怯えてるんだ?(声色は責めるとか、問い詰めるのではなく。とても心配する様な。そんな声色)
(落ち着かせようとクルルと喉を鳴らして低めの音を出す)

…何が怖い?この姿か?それとも…(自分以外の世界か、と小さく問いかけ、同じソファに離れて座る)
(そんな二人の姿を見て、幾分落ち着いたらしい。呼吸を整え)

………
(問いに答えるために口を開こうとして、閉じ。口を開こうとして閉じる。その瞳には、恐怖とか、怯えとか。そういった感情が多分に含まれている)
…悪ィ、急かしたな(尾で触れようと)

話したくないなら話さなくてイイし…急ぎもしなくてイイ
オマエが話すのを待つ時間くらい、充分にある
……あー。記憶、反復になるからあんまお勧めできねえけどさ…伝える事をする気なら、吐き出して楽になるなら…俺が受け止めようか?なんなら、後々バリガにも俺伝いに視せることも可能だし。

ただ、嫌なら拒否れ。嫌な記憶の反復は辛いし、吐き出すのすら嫌なら無理強いはしない。

俺とバリガは、この世界に元から居る。アンタの元の世界の事なんか知らないし、知らなくても構わない。それでも受け入れられる。だから、好きにすればいいから。
あと、バリガも言ってるけど急かす気もないからな。
………大丈夫、問題ない。
(幾分、掠れた声でそう口を開いた。声音を聞く限り、今のところ問題はなさそうで)

…………反復……視せる…?
(言っている意味が分からないのか、機械的な動作でかくりと首を傾げて。もしかして彼には、誰かの記憶を覗き込むような何かが備わっているのだろうか)
(そうは見えないな、と立ち上がって飲み物の方へ)
…なンか飲めるか?酒でもイイぞ?(軽口を交え、二人を見る)
…ん。俺のギフト。記憶の眼って呼んでる。
互いに見せる側が見せる、視る側が視るって意識して、視線を合わせ続けると、あー…追体験って言えば良いのかな?そう言うふうに伝わる。

但し、どちらかが軽くでも「見たくないor見せない」って思った瞬間にリンクは切れる。

まあ、こう言う特性だもんで説明も必須なんだ。
あー…、俺ミルク。てか、酒。(なんか言いたげ)>バリガ
…………(彼は、ヒトじゃない。仕草や姿がそれを裏付けている。彼女もそうだ)

……お酒…少しだけ。それから、考える。
(重く霞がかかったような頭をゆるりと振る。見ないことは、できる。見せないことは、できる。だか、見ずに済むか? 生きていけるか? それなら私は、向き合うべきなのだろうか。そう思うたびに、記憶が邪魔をする)
二人とも酒か…(覗き込み、あまり強くない酒を選択し、グラスと共に運ぶ)
…アルク、なンか言いたげだなオイ…まさか、ミルクいれんの?酒に?…マジで?(

(迷ってる様子には触れず…彼女には考える時間が必要だろう)

つまみ…は、煮干しと…(干し肉出し)これでイイか
いや、ミルク。牛乳。
酒って言ったのはアンタ、また酒かよってなっただけだ。まあ、良いけどな、別に。飯食ってるし>バリガ

まあ、もしも気が向いたら、そう言う手段があるってだけだから。無理に聞きたいわけじゃねえよ。

(言いつつ飴玉くらいしかねえな…ってポケットからいくつか取り出す)

……あと、腹減って、欲しかったら言えよ?俺は慣れてるし、構わないから。(何をとは言わないが)>ソフィー
………ありがと。
(運んでもらったお酒にお礼を言える程度には、落ち着いた)

………10分だけ、考える。
……(暗に「血はやる」というその言葉に出かけた言葉を暗い部分と共に飲み込むと、少し青い顔でふるふると首を横に振った)
あ?なンだよ違ったのか…(また牛乳をとりに行き)

ン、どーいたしまして、か
俺はアンタとは違って酒は趣味じゃねえんだよ。(適当な床に胡座をかくと牛乳待ち。持ってきてもらったら受け取って口に運ぼうか)>バリガ

ん、そっか。(ソフィーにはそれだけを返した。無理強いはする気はないのだ。)>ソフィー
うまいのに勿体ねェ…(持ってきて渡し、自分も座る)
(ちまちまと身の丈にあった分量でお酒を口にしている‥‥かと思えば、ちまちまが速い)

…………あなたは…。
(お酒をコトリと机に置いて)
……話せば、楽になると思う?
(その相手に、そんなことを聞く。だいぶやられているらしい)
……さあ?俺はアンタじゃねえからわからねえ。

…ただ、俺は過去の事を打ち明けたら、泣くことが出来たかな。何時も蓋してたのが外れて、涙流す事は出来た。

感情を消せないから蓋してやり過ごしてたけど、はち切れそうになる時はどうしてもあるから。俺は、最近それをできる相手を何人か見つけた。

アンタにも、そう言うのが出来るといいなとは思う。何も俺が対象じゃ無くても良い。安心できる相手が居たら良いなって思うよ。>ソフィー

美味いのは判ってるって。……一口くれるなら貰うけど?(アンタのグラスからって視線で言い)>バリガ
…ペース早いな…いつもそうなのか…?(首を傾げて)

仕方ねェなァ…(グラスに注ぎ、渡そうと)
……あ、うん。(いや、そうじゃねえんだけど…まあ、ハッキリ伝えてないし仕方ねえか)
(グラスを受取り)

……一口だけ貰いたかっただけなんだけど……てか、前に俺が部屋でグラス傾けて飲ませたみたいなのが良かった…(自然に甘えるつもりだった人、軽くガッカリ)
……そう、かも。<いつもそう

…………私には分からない。
(私には分からない。そう思える感情は、全て捨ててしまった。そうしなければ、生きていることができなかったから)

………”古い記憶は時に取り出して、風に当てて、埃を払う必要がある。例え、辛くても。自分が今、何者なのか。何をするべきなのかを、思い出す為に”
(おそらく誰かの台詞なのだろう。復唱するように。それを思い出したのは、お酒のせいかもしれない)
………蓋、どころじゃねえのな。

…んじゃ、それをする相手が居ないなら俺が受け皿になってやるよ。理由は俺が放って置けないから。

俺の我だから要らんなら叩き落とせ。(バリガから受け取った酒を一口だけ口にして、ありがとうと撫でられながら返した。)
かも?…分かってねェの?(呑ませたのは失敗だったか?と不安げに見て)

ン(グラス受け取り)…話しにくかったらオレは出てもイイし…オマエがやりたいようにやるのが一番だぞ?
………忘れた。たまにしか呑まないから。
(それでもちまちまと消費は続ける。特に酔った様子もなく、お酒には強いのかもしれない。吸血鬼だから、という理由もあるが)

………知ってほしいのか、そうでないのか。話したいのか、話したくないのか、私にはもう分からない。けど……。
(けれど。それならば、知っておいてもらった方がいいのではないか。自分の過去だ。いつまでも目を瞑っているわけにもいかないし、先のように誰かの手を煩わせるようなこともあってほしくはない)
………いいよ。視せよう。
(10分以上経過して出した答えが、それだった。誰かのためじゃない。そんな感情はもう、どこかへ行ってしまったけれど‥‥自分のためだ。前を向けるか分からない。全部を覚えている自信もない。ただ彼らにさっきの自分の様子を見られてしまった以上、目を背けたままでいることはおそらくできないだろう。そんな確信めいた何かがあったのだ)
…話す訳じゃねえし、視てる間は集中してるだろうから居てくれて平気だ。
つか、居てくれ。(理由はとりあえず黙っておこう。自分が少し疲れると言うのは今はどうでもいい情報だ)>バリガ

瞬きは無問題、視線を合わせてりゃ良い。俺に見せるって考えながら過去振り返る感じだ。(長考している間、ミルクで喉を潤す。相手が視せると言ったので、テーブルへとグラスを置きつつソフィーの座る近くのソファへと)>ソフィー
ン、分かった(ならイイか、と酒を口に運びつつ横目で二人を見ている)
……………見せていいと思っていれば、ほかに何かを考えていても大丈夫?(唐突に、そんなことを聞く)
ああ。(アンタの感情が乗るだけ。そういうのも含んだ肯定だった)
…………。
(ちらり、と少しだけバリガに視線を向けた。もし、私が何かを失敗してしまっても、今の私ならば彼女が止めてくれるだろう。誰かを傷つけることは無いはずだ、多分)

…………いつでも。(最後にこくり。何かを決めたように頷くと、一言。そう言って)
ん。(一度目を閉じ、視ようという意志をもって視線を合わせるために開く。)
(そこには既に視線が向けられていて)(思い出そうとしなかったそれを、取り出す。埃を払うと見えて来るのは、丸い思い出ではなく鋭い刃。ぐさりと頭の中を抉るそれを、少しずつ、少しずつ、動かしていく。最初に見えて来るのは、見たこともないような街並み‥‥)


様々な種族の住む町だった。
吸血鬼、小人、ゴブリン、オーガ、妖精、エルフ。
そして若干の人間。

彼らは種族で差別をすることもなく、ありのままに生きていた。
そんな街を見下ろしながら、屋根から屋根へ。散歩中だ。
民家、店、教会、ギルド、酒場。
よく聞こえる猫の耳は、やがて喧噪の中から会話を拾い上げた。

「おい、また人間が襲われたってさ」
「またか!? ついこの間あったばかりじゃねェか」
「ああ、何でも”また”吸血鬼の仕業らしい」
「あいつら、契約があるってェのに見境なく人間を襲いやがる」
「そう言ってやるな。ほとんどの吸血鬼は契約を守っている。お前たちも知っているだろう?」
「親方! だが俺ァ自分の女房が襲われたらと思うと心配で心配でしょうがねェ」
「あんたの言い分は分かるけどねぇ、あいつらにもあいつらなりの事情ってもんがあるんだよ。領主様だっておっしゃってたじゃないか」
「そらァそうだけどよォ」

また、か。
襲われた誰とも知らない人族に、心の中でそっと手を合わせた。

確かに、吸血鬼が生きていくために、血は欠かせないものだ。無ければ死んでしまう。
しかし、吸血鬼は人間と一つの契約を結んでいるのだ。

採血して集めた血を必要な分だけ、いくらでも提供する。その代わり、人間を襲わないで欲しい。

という契約を。
これは吸血鬼である領主がサインをし、正式に交わされた契約だ。
だが、それを破るものが後を絶たない。なぜか。
生身の人間の血は、美味しいからだ。
私などはその契約が成された後に生まれ落ちた存在だから、生身の血の味なんて知らない。採血されたもので十分だ。
ただ、その契約以前から生きている古い吸血鬼たちはそうもいかないらしい。
だから度々、契約違反とわかっていながらも人間を襲う者が出る。

勿論、領主の協力の元、捕縛されて死罪に処せられるのだけれど。

そんな事情を彼らは知っているようだ。
私はそっと、その場を立ち去った。

見つかればあまりいい顔をされないだろうから。
誰にも見つからない場所。
塔の上だ。ここが私の寝泊まりする場所。
そこへ帰ると、そっとベッドに丸くなる。

私は”忌み子”だ。
この世界に広く普及している宗教がある。周辺国の国教にもなっていて、かなりの勢力がある団体だ。
魔王を打倒し、勇者を支援し、神の教えを広める。
その教義の中に、こんな一節がある。

「ごく稀に、獣の特徴を持って生まれる子がいる。その子は人間の「悪」が宿った忌み子だ」と。

誰がそんなことを決めたのか分からないけれど、迷惑な話だ。
私が何かを言ってもまるで相手にされないし、ひたすら邪険に扱われる。
幸い、私は吸血鬼だから、何かをされることもないのだけど‥‥あまり良くは思われないようだ。

もういい加減に慣れた自身の境遇にため息を吐くと、ストックしてあった血液をちまちま啜る。
身体に広がる魔力に小さく身を震わせると

ひらり、と。

一通の手紙が、空から舞い落ちてきた。
梟だ。その手紙には、領主の封蝋が押されている。

あやつか。私は眠いのだ。あとで確認しよう‥‥と、いいたいところだけど。
流石に正式な領主からの手紙を無視はできないかな。
封蝋をペリリと剥ぎ取ると、両手を使わずに手紙を目の前に開く。

やあ、元気かな? 敬愛なる我が同胞よ。
此度は一つ、依頼したいことがある。無論、報酬も出る。
つい先日、また人間が同胞に襲われるなどということがあった。
嘆かわしい話だ。
ついては、まだ捕まえられていない主犯の捜索のため、手を貸して欲しい。
今日の午後、領主の館まで来てくれ。
これは正式な招集であり、命令だ。
それでは待っているよ。
領主


そういえば、さっきそんな話も聞いた。
吸血鬼が捜査に協力するのは常なのだし、きっと忙しくて手が空かないのだろう。
どうして私を選ぶのかは分からないけれど‥‥報酬が出るなら、それもいい。
暇はたっぷりあるのだし。

私は何とかベッドから這い出ることに成功すると、眠たい目を擦りながら指定された場所へと歩を進めた。
「では、襲ったのは‥‥」
うん、あなたの勘通りで間違いない。この印は彼のものだから
「本当に間違いないんだな?」
ないといったらない。まだ疑うの?
「い、いや、そういうわけじゃない。気に障ったのなら謝ろう」
それはよかった。じゃあ捜査はこれで終わり?
「ああ、終わりだ。呼び立てて悪かったな」
報酬のためだし悪く思う必要はないとおもうけど。うん、頑張ってね。

私は人間の捜査官にふわりと笑うと、その場を離れる。
報酬の受け渡しは、郊外の建物だ。
さて、あの領主は私にどんなものをくれるんだろう。

久々にいい気分に浸りながら、私はその場所へと向かう。


領主に通されたのは、ひとつの部屋。
入ると、両手足を拘束された一人の男がそこにいた。

これは誰?
「死刑囚だよ、人間のね。人殺しをしたらしい」
ため息が出た。
人間は人間を殺す。どうして仲間を減らすような真似をするのか、はなはだ疑問だ。
それで、報酬は?
「彼さ」
……は?
「いや、そんな顔をしないでくれ。彼は死刑囚で、報酬は彼。あとは‥‥分かるだろう?」
……それは契約で禁止されているはずだけど。
「人間の捜査に協力した報酬さ。君の大好きな勇者も怒ったりしないさ」
……そんな心配してない。それに彼は友人。彼は恋人もちゃんと人間にいる。冗談でもやめてあげて。
「ははは、そんな怖い顔をしないでくれ。分かってる」
本当にいいの?
「ああ、いいとも。初めてだろう? 存分に吸うといい」
…………。

そっと、男に近づく。死刑囚だという彼は動くこともなく、そこにいた。
首筋から、血の匂いがする。まだ暖かな、魔力の気配。

……いただきます。

がぶり、と。
私は彼の首筋に噛みついた。

牙が皮膚を破り、暖かな血へ触れる。
それを私はそっと、飲み込んだ。

――嗚呼。これが、生身の血の味‥‥。

気が付けば、夢中で血を飲み干す自分がいた。
甘く爽やかで濃厚な味か口に広がり、巡る魔力がぞわりと体中に広がっていく充足感。
確かにこれは、クセになりそうだ。

その時私は、気づいていなかったのだ。領主がいつの間にかいなくなっていることに。

ガチャリ。背後の扉が開く音。

既に男は私の腕の中で、冷たくなっている。
食事中に入ってくるのは誰だろう。
くるりと後ろを振り向くと、そこにいたのは。
私の友人の勇者。それに、数人の人間兵士と、吸血鬼の戦士。

やっほー、勇者。どうかしたの?

「……お前………」

なに?

「………俺は、信じてたんだ。お前を。………捕らえろ、連れていけ。」

私は何も言う間もなく、人間と吸血鬼の兵士たちに取り押さえられた。
手も足も動かせない。
いったい、どうして。

「……安らかに眠ってくれ」

勇者が、私が吸い尽くして干からびた遺体の目をそっと閉じる。
見回せば、領主の姿はどこにもない。

………まさか。

違う、私はそんなことはしてない。これは報酬で…!

「連行しろ、気をつけろよ。そいつ、強いから」

まって、勇者。私の話を!!
ゆうしゃ!!!


暴れながらそこまで言ったところで、首筋に思い衝撃。
意識が暗闇に沈んだ。


*****


裁判は、ただの形式的なものに過ぎなかった。
罪状は重大な契約違反。被害者の死。
私の声など、誰も聞いていなかった。

普通の吸血鬼であれば、申し開きもできたかもしれないけど。
私の耳と尻尾が、その邪魔をした。
忌み子は「悪」だ。

そんな一方的な裁判が終わって、私は牢に繋がれた。
死罪だ。おそらく私は、銀の杭を心臓に撃たれて処刑されるだろう。
早ければ、今にでも。

「出ろ」

牢の鍵が開けられ、近づいてきた吸血鬼に体の拘束を解かれる。
理不尽だ。あまりにも。
私は引きずられるようにして牢を出て‥‥連れてこられたのは、広場の中央。
窃盗などの軽い罪のものが、一定期間拘束され晒される「晒し場」だ。
その刑に処せられたものは顔を覚えられ、二度と店にも入れないという。

しかし、何故。私がここに連れてこられる意味が分からない。
それに、なぜ広場にここまでの人数が集まっているのか。

そんなことを考えている間に、私は晒し台‥…これは吸血鬼用に作ったものだろうか。
そこに繋がれた。両手を吊り下げる形で、つま先がギリギリ宙に浮いている。

向けられる視線。左右に立つ兵士たち。

集まった大勢の人垣が、にわかに開けた。その花道を進んでくるのは‥‥国王。
どうしてそんな大物が出てくるのか。
初老の彼は私の前、民衆に向けて立つと、話し始めた。
「国民たちよ、よくぞ集まってくれた。皆も知っての通り、また痛ましい事件が起きた。吸血鬼に人間が襲われ、吸われ、殺されたのだ」

彼は民衆に向けてとうとつと、扇動でもするかのように話を続けた。

「皆も辛かったであろう。契約を破り人間を襲う吸血鬼たちを、私たち人間の力ではどうすることもできぬ。しかし、我は吸血鬼を排斥することはできなかった。皆も知っての通り、そんなことをすれば、隣国に何をされるか分からぬのだ」

契約には、続きがある。
採血した血を提供する代わりに、人間を襲わないこと。そして、任意で「戦力」として戦争に参加してほしい、と。

無論、吸血鬼にも住む場所は必要だ。
そこが脅かされるとなれば、参加するのもやぶさかではない。

吸血鬼は1人で一軍に匹敵する。

排斥などしようものなら、周辺国との戦争になど勝てる見込みは無い。
確かに、彼のいうことは、正しい。
なら、私は何なのだ。どうしてこんなところに連れてこられたのだろう。

「しかし安心してほしい、愛する国民たちよ。我はついに、ついに! その元凶たる吸血鬼を捕縛することができた。それが、この”忌み子”なのだ!」

………勝手にもほどがある。
私は何も…!

抗議の声をあげようとすると、私の首に兵士の持つ槍が添えられた。銀製だ。

「我は決意した。こやつは易くは殺さぬ。したことを後悔させ、そのうえで死罪に処さねばならぬ」

民衆は湧き上がる。そうだそうだ、と。

「我は一年の間、この吸血鬼にあらゆる責め苦を課すことを許可した。それはこの場所で全てが行われる! 見たいものは見るがよい。処刑は一年後だ!」

好き勝手に演説した国王が退場し。
私の拘束が解けないことを確認した兵士たちも国王を護衛し帰っていく。
試しに吊られた手を捻ってみるけれど、びくともしない。
吸血鬼専用の枷だ。

広場に集まっていた民衆が詰め寄ってくる。

「よくも、よくも○○さんを」

人間の名前は、聞き取れなかった。
額に思い衝撃。痛い‥‥殴られたのだ。

その言葉と行動に続くように、次々と浴びせられる怨嗟の声。
頭、背中、腕、足。前後左右から拳や槌、棒で殴打される。
痛い。
吸血鬼は、回復力に特筆されるものがあるが、痛みは普通に感じるのだ。
殴られてできた痣が、次に殴られる前に回復し、消える。
痛い、痛い、痛い。
……(ああ、身勝手な人間ってのは…何処の世界にでもいるんだな…)(自分の脳裏に直に伝わる痛み。それと、信じていた、好きな者に嫌われ、蔑まれる記憶に催す眩暈のような吐き気に片手が自然と口を覆う。しかし、視線は逸らさず、ただ只管その記憶を脳裏に写し取っていた)
そして揺れる視界の隅に、見知った顔を捉えた。
群がる民衆の向こう側に立っているのは‥‥領主。
彼は笑うでもなくこちらを見ると、国教の独特な8の字を空中に描くと、去っていった。
傍から見れば、ただ死んだ故人に祈ったように見えたかもしれない。
だが‥‥その時、やっと分かった。嵌められたのだ。
この民衆の怒りの刷け口として、忌み子の私を差し出した。

『私は‥‥』

痛みに耐えつつも、何とか声を絞る。

『やってない…!』
「あの人を殺しておいて、その口が……よくも、そんなことが」

私の声に反応するように、女性が口を開いた。
殴る手が止み、彼女が私の前へ進み出る。

手には、包丁。
きっと、私が吸った彼の、妻か何かなのだろう。

『私は、やって、ない』
「あの人を返して!」

っ……。
ドスッ、と。暖かいものが、お腹に広がった。そしてひやりとした感覚も。
腹に突き立った包丁。
一瞬後に襲う、強烈な痛み。

声にならない悲鳴を上げた私の腹から、刃物が引き抜かれる。
その瞬間に修復され、元に戻る傷口。

「化け物だ‥‥刺せ! みんなやっちまえ! 恨みを晴らせ!!」

次々に刃物を持ち出す民衆たち。
殴られるより遥かに耐えがたい痛みが、全身を襲った。
突き刺される。引き抜かれる。しかし次の瞬間には回復している。

吸血鬼の回復力にも限界はある。
所持している魔力を消費して、回復に回しているのだ。

私の刺し傷がだんだんと回復し辛くなり、
悲鳴を上げる声も枯れた頃。
兵士が民衆を止め、私をまた牢まで連行していった。
引きずられるままに牢の中で拘束された私には、二日間だけ休息が与えられた。
魔力を自然回復させる時間だ。
そのころには回復力もほぼ元通りまで戻っている。

そしてまた、来た。


「出ろ」


今度の広場に置かれていたのは、積み上げられた木に、周囲を囲う石、その上に置かれた、ヒト1人分はある巨大な金属製の網。
その網に引き倒されると、暴れる身体を網に括り付けられる。
手も足も、体も動かせなくなった私の下で、木に火が入れられた。

──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。
──熱い。

それは、私の身体のほとんどが炭になる5日間の間続いた。
喉が渇いていた。体の感覚が無い。
声も掠れたものさえ出ない。

魔力が切れかけた私は、また牢に繋がれた。
2日間。回復力が戻るまでの、束の間の休養。
そこから先、視えるものはかなり断片的だった。

ある時は、鞭。
鞭は皮を破り肉を断つ一発目が一番痛いと言われている。
それが回復力の続く限り、繰り返される。

打たれ、
撃たれ、
刺され、
沈められ、
焼かれ、
切られた。

そして、一年後。

広場に、両手足に銀の釘を打たれ、磔にされている。
視えているなら、感じ取れるだろう。
既に感情や心などどこかへいってしまっていた。

向けられる視線に何かを思うこともなく、
声も遠くに聞こえるのみ。

視界に映るのは、自身の胸の上に添えられた、銀の杭が。
巨大な槌で打ち込まれる光景。

銀の毒が体を蝕んでいく。
寒い、冷たい何かが、心臓から体中へと回る感覚。

私は。
私は。。
わたし、は。


命の灯が消える直前、視界が淡く白い光で包まれた。
混沌世界への転移だ。


誰かが必死に話しかけている。
答えることはしなかった。そんなことができる状態でもない。

視える景色はそこで、プツリと途切れた。
う゛…ぐ……(吐き気に呻き声をあげるが青ざめたまま、記憶を視ることは辞めない。視始めたら、それ相応の覚悟で毎回望んでるのだ。人の記憶なんて、良い物なんか其処まで残りはしない。それは、知っている)
……………。
(視界が戻れば、感情や心の抜け落ちた空虚な瞳で視線を合わせている)
(よほどな景色が見えたのか、と思って立ち上がり、水を持ってきてアルクとソフィーに差し出す)
…飲め
…、は……はっ…、…、……ぐ、うぇ…(リンクが切れた瞬間、思わずえづいてしまう。こんなモノ、なんで旅人は抱えられるんだ。涙目でぜぇぜぇと呼吸を繰り返す)
…、要らねえ。今、飲めねえわ…(首を弱弱しく振って)>バリガ

…ソフィー、…あのさ。さっき、悪かった…知らずに、とはいえ…血、勧めて。
…多少無理してでもなンか飲め、オマエ顔色酷ェンだよ(ミルクよりこっちのがイイと思う、と言いながら)
……構わない。無知は罪じゃない………ありがとう。
(受け取った水を少しずつ喉に通す。普段通りに見える。瞳を除けば、だが)
…おゥ(大丈夫かとは聞かない。どう見ても大丈夫そうではない)
……よしよし、だ(不器用なりに何かしたいと思い、撫でようとする)
……毎回、こうなってるから平気だ。(とりあえず水は受け取るが中々口にしようとはしない。)

ん…。で、今でも怖くて避けてるのか?怖いと言うか、自分が害獣と思われるのも嫌だから?

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