ギルドスレッド
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もふもふハウス
(そこには既に視線が向けられていて)(思い出そうとしなかったそれを、取り出す。埃を払うと見えて来るのは、丸い思い出ではなく鋭い刃。ぐさりと頭の中を抉るそれを、少しずつ、少しずつ、動かしていく。最初に見えて来るのは、見たこともないような街並み‥‥)
様々な種族の住む町だった。
吸血鬼、小人、ゴブリン、オーガ、妖精、エルフ。
そして若干の人間。
彼らは種族で差別をすることもなく、ありのままに生きていた。
そんな街を見下ろしながら、屋根から屋根へ。散歩中だ。
民家、店、教会、ギルド、酒場。
よく聞こえる猫の耳は、やがて喧噪の中から会話を拾い上げた。
「おい、また人間が襲われたってさ」
「またか!? ついこの間あったばかりじゃねェか」
「ああ、何でも”また”吸血鬼の仕業らしい」
「あいつら、契約があるってェのに見境なく人間を襲いやがる」
「そう言ってやるな。ほとんどの吸血鬼は契約を守っている。お前たちも知っているだろう?」
「親方! だが俺ァ自分の女房が襲われたらと思うと心配で心配でしょうがねェ」
「あんたの言い分は分かるけどねぇ、あいつらにもあいつらなりの事情ってもんがあるんだよ。領主様だっておっしゃってたじゃないか」
「そらァそうだけどよォ」
また、か。
襲われた誰とも知らない人族に、心の中でそっと手を合わせた。
確かに、吸血鬼が生きていくために、血は欠かせないものだ。無ければ死んでしまう。
しかし、吸血鬼は人間と一つの契約を結んでいるのだ。
採血して集めた血を必要な分だけ、いくらでも提供する。その代わり、人間を襲わないで欲しい。
という契約を。
これは吸血鬼である領主がサインをし、正式に交わされた契約だ。
だが、それを破るものが後を絶たない。なぜか。
生身の人間の血は、美味しいからだ。
私などはその契約が成された後に生まれ落ちた存在だから、生身の血の味なんて知らない。採血されたもので十分だ。
ただ、その契約以前から生きている古い吸血鬼たちはそうもいかないらしい。
だから度々、契約違反とわかっていながらも人間を襲う者が出る。
勿論、領主の協力の元、捕縛されて死罪に処せられるのだけれど。
そんな事情を彼らは知っているようだ。
私はそっと、その場を立ち去った。
見つかればあまりいい顔をされないだろうから。
様々な種族の住む町だった。
吸血鬼、小人、ゴブリン、オーガ、妖精、エルフ。
そして若干の人間。
彼らは種族で差別をすることもなく、ありのままに生きていた。
そんな街を見下ろしながら、屋根から屋根へ。散歩中だ。
民家、店、教会、ギルド、酒場。
よく聞こえる猫の耳は、やがて喧噪の中から会話を拾い上げた。
「おい、また人間が襲われたってさ」
「またか!? ついこの間あったばかりじゃねェか」
「ああ、何でも”また”吸血鬼の仕業らしい」
「あいつら、契約があるってェのに見境なく人間を襲いやがる」
「そう言ってやるな。ほとんどの吸血鬼は契約を守っている。お前たちも知っているだろう?」
「親方! だが俺ァ自分の女房が襲われたらと思うと心配で心配でしょうがねェ」
「あんたの言い分は分かるけどねぇ、あいつらにもあいつらなりの事情ってもんがあるんだよ。領主様だっておっしゃってたじゃないか」
「そらァそうだけどよォ」
また、か。
襲われた誰とも知らない人族に、心の中でそっと手を合わせた。
確かに、吸血鬼が生きていくために、血は欠かせないものだ。無ければ死んでしまう。
しかし、吸血鬼は人間と一つの契約を結んでいるのだ。
採血して集めた血を必要な分だけ、いくらでも提供する。その代わり、人間を襲わないで欲しい。
という契約を。
これは吸血鬼である領主がサインをし、正式に交わされた契約だ。
だが、それを破るものが後を絶たない。なぜか。
生身の人間の血は、美味しいからだ。
私などはその契約が成された後に生まれ落ちた存在だから、生身の血の味なんて知らない。採血されたもので十分だ。
ただ、その契約以前から生きている古い吸血鬼たちはそうもいかないらしい。
だから度々、契約違反とわかっていながらも人間を襲う者が出る。
勿論、領主の協力の元、捕縛されて死罪に処せられるのだけれど。
そんな事情を彼らは知っているようだ。
私はそっと、その場を立ち去った。
見つかればあまりいい顔をされないだろうから。
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