PandoraPartyProject

ギルドスレッド

商人ギルド・サヨナキドリ

【RP】二階・白い部屋

その部屋は四方の壁から床まで真っ白で、窓も無いような部屋だった。

部屋の真ん中には引き出しも無い簡素な白いテーブルが一卓と同じく簡素な白い椅子が二脚。

辛うじて部屋の一角にある本棚と、そこに陳列されている本たちが、この世がまだまともな色彩を持っているのだと教えてくれる。

壁をよく観察するならば、隠れるように同色の扉が存在しているのがわかるだろう。そこが唯一の出入り口らしい。

ーー遠くで微かな悲鳴が聞こえた?なに、気にするほどの事では無い。

参加
武器商人
ヴァイオレット・ホロウウォーカー

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キミたちにとっちゃあ、それに偽名も真名もあってないようなものだろうに。ま、それならひとまずはホロウウォーカーの方と。ヒヒ。

なに、我(アタシ)は存外おしゃべりというものが好きでね。

だって、ほら。

"視て"答えるだけよりも、ずうっと人間らしいだろ?

おしゃべりをするなら、可愛い隣人とお茶会の一つもしたくなるってものさ。ここに招かれてくれたお礼に、よい茶菓子があるよ。

アップルパイはお好きかぃ?紅茶とコーヒー、どちらがいい?(何もない机の上で、頬杖をついて楽しそうに聴く)
……ヒッヒッヒ、違いありますまい。言葉とは人間特有のコミュニケーション手段でございますからねえ、コミュニケーションそのものを娯楽とする人間らしい行為と言えましょう。

ワタクシとしても、このコミュニケーションの手段はとても気に入っておりますゆえ
こちらこそ有り難くお受け致しましょう…

しかし、「人間らしい」ですか。
その言葉自体が既に別の意味をはらんでいそうな気配が致しますが…ヒッヒ。ま、そこは深く言及しないでおきましょう。蛇が出ると解って藪をつつく者はおりますまい。


では珈琲を。ワタクシは珈琲が好きですゆえ、フルーツを使ったパイはよく合うので…好んでおりますよ
心得たとも。食は娯楽だからね。楽しい要素は多ければ多いほどいい。

(くすくすと笑うソレの影がごぼり、と沸き立つ。影の中からひらべったい箱を取り出す)

キミはかのモノガタリよりは少食かと思って普通のサイズで焼いてもらったけど……なに、おかわりはあるから遠慮はいらないよ。

(そうしてもう片方の手の人差し指の先にはいつの間にやら引っ掛けられたカップ。そのカップをことりと相手の前へ置くと軽く指先で突いた。瞬きの間にカップには湯気を立てるコーヒーが注がれている。ゆら、と湯気に紛れてエチオピア・モカのベリーや豊潤なワイン、スパイスを思わせる上品な香りが立ちのぼる)
ヒッヒッヒ、然りでございますな。
人の娯楽というのはなかなかに侮れぬもの。それが大欲から来るものであれば心を躍らせぬ道理はありますまい。

(武器商人の影から沸き立ち出てくるという現象にも特に驚かず、「便利そうだ」という印象で眺める)

そうですねえ、ワタクシはこの姿…いわゆるただの娘子でございますゆえ、多くを頂く事は難しいです。

(突然現れたカップ、突然入れられたコーヒーにも、「ほう…」と感嘆の言を漏らすのみ)

(フェイスベールを取り外し、カップを手に取り、上品な所作で顔まで運ぶ。カップを揺らして立ち上る芳醇な香りを堪能し、上品な、されど確かな好みの風味に満足そうに瞳を伏せた。

嗅覚で味を楽しんだ後、そっと小さな唇をカップの端につけ、カップを傾ける。唇で熱を、舌で味を、口の中で風味味わい、やがて、こくんと小さくその喉が震えた)

…嗚呼、これは良い。非常に美味で…味わい深い珈琲でございますね。果実味が強く…爽やかで、口当たりがとても良いものです。…ヒッヒッヒ、これはワタクシでなくとも、普通の人間であれど舌を巻く逸品でございましょう。これをどちらで?
ラサとゼシュテルの間くらいに環境が適したところがあってね。そこの仕入れだよ。

(ソレが箱を開くとバターの香りがふわりと鼻をくすぐることだろう。中に入っていたのは狐色の焼き色が美しいアップルパイだった。円盤状に形成されていて、りんごがパイ生地に包まれているタイプらしい)

さて、と。ただの娘子さんはこの菓子がお気に召すかな?

(どこからか取り出した小さなナイフを片手でくるりと回す。パイ生地にナイフを入れるとサクッと軽快な音を立ててパイが切り分けられ、中から甘く爽やかな芳香を漂わせながら黄金色のりんごが顔を見せた。ソレがテーブルの上を撫でるように手のひらをかざすと陶器製の平皿とフォークがセットで現れる。まずは一切れ、皿の上にアップルパイを乗せると白く細い指で客の前へ皿を押し出して)
なんと見事な焼き色でございましょうか…まるで絹のような艶の生地と、宝石のような色をした林檎です。このお菓子を焼いた方はさぞかし名のある菓子職人なのでございましょうね…
では、ひとつ失礼して……

(フォークを使い、パイの一部を切り出すと、それを口へと運ぶ。ゆっくりと味わうように咀嚼すると、さくさくとした噛み応えを堪能する。やがて中の蜜たっぷりの林檎に差し掛かれば、甘酸っぱく濃厚な味わいが口いっぱいに広がって)

……これまた、絶品ですね。ワタクシは甘いお菓子というのはそう得意ではないのですが、これは…甘すぎず、果実の味を非常に引き出しておりますね…。この果実味は、この珈琲ともよく合いますね。大変素晴らしい味わいです…。

(しばし、パイと珈琲を一緒に堪能する。この時の顔はいつもの様子の薄ら笑いこそ絶やしてはいないものの、どこか年相応の少女そのものにも見えた)

……ヒッヒッヒ、随分と手厚くおもてなしして頂けますね。
ワタクシとしては、好物を堪能できてありがたい限りでございますが…生憎と、ワタクシに支払えるものは何もございませんよ?
流石だね、この菓子が最大に伝えたい事をちゃんと汲み取ってくれる。

菓子を作ったのはジェイル・エヴァーグリーンという男さ。最も、パティシエは副業……というか、本業の為にやってるようなものだけど。

(菓子に何も入っていませんよ、という証左にーー最も、これらにとっては形式的なものに過ぎないがーー自分もパイを少量切り分けて、ゆっくりと、少しずつ味わう。甘く砂糖で煮詰められながらもしゃりしゃりとしたりんごの食感が、バターの優しい味を纏うパイ生地と合わさって、早く次の一切れを、と誘惑してきた)

対価の話?これに関しちゃ、みんながそうしてるから我(アタシ)もそうしてるだけなんだけど……ふむ。

強いて言うなら、こうして茶飲み友達として雑談に付き合ってくれる事が対価かね。生きる上では、こういう楽しみは多ければ多いほどいい。退屈は我らのようなものを膿腐らせる毒だからね。
なるほど…その方はイレギュラーズ…ではないのでしょうか。少なくともワタクシは聞いた事がございませんゆえ…とはいえ、ここまで見事なものを副業で手がけられるとは、一度お会いしてみたいものです。


…なるほど、商人様なりのもてなしと礼節によるもの、という訳ですか。
ワタクシもこうして機会を設けて頂けている事自体には、悪い感情を抱いておらず…むしろ、無聊を慰めるに留まらぬ愉しみを頂いております。
今の言葉を借りるのであれば、Win-Winという事でしょうね。ならば対価や代償などという言葉は無粋でしょうね。では、遠慮なくご相伴に預からせて頂きましょう。
イレギュラーズではないね。でも、我(アタシ)の商人ギルドに所属しているコだからもしかしたら依頼に来ることもあるかもしれない。

いやはや、意外意外……はこの間も言ったのだったか。イレギュラーズという枠に収まっているせいか、キミは珍しく警戒心の強いタイプに見受けられたからね。(くすくす)
なるほどなるほど。ではいずれお会いできる日を心待ちにしておりましょう。

そりゃあそうでございましょう。
元の世界では人間程度がワタクシに傷をつける事など叶いはしませんでしたが、此処でのワタクシはただのイレギュラーズ。剣で斬られれば傷つきますし、使っていた力も混沌に定義された範疇でしか行使できません。いつ死が襲ってくるかわからない状況など、ワタクシにとっては初めてでございますからねえ。

…しかし、職業柄、人や…人でない者と接する機会は、これでも多かったのですよ。
少なくとも対面している相手が楽しんでいるかどうか、敵意があるかどうかくらいは判別できます。
そういう意味で言えば、商人様も、ワタクシのような者と会話を楽しんで頂けているように感じましたが…勘違いでなければ、ですがね。
ヒヒ、たまにはこういうのもスリルがあって悪くないさ。界(さかい)を渡る上でこういった"縛り"に出会うことは時たまあるけれど、その代わりに特上のモノガタリを提供してくれることがほとんどだ。経験上、だがね。

当然楽しいさ、愛らしき隣人。(人差し指をくるくる、遊ぶように回して)
我(アタシ)はキミたちがさほどの全能性を持ち合わせているわけではないことを知っているが、それ故にキミたちのモノガタリは愛しているとも。あと、他と比べてもキミには親近感がわきやすいんだよね。こういう実に他愛のない雑談を交わして、取り留めのない、互いに関する情報を交換するのも悪くないと思う程度には。
(瞬きの間に、ソレの傍に暖かい紅茶が入ったティーカップが現れる。飲むのが目的というよりは、この会を楽しんでいますよと表示するためのもの。両手でカップを持つと、熱い飲み物を飲み慣れていない幼子の様にチビチビと飲んで)
ほう…有り体に言えば、気に入られているということですか?光栄ですねえ
ワタクシは人の世で評するならば、不幸を愛し、悪を肯定する異端者でございますからね
ワタクシの正体を知り…その上でそう言って頂けるのは、掛け値なしに有り難いことと存じますよ。

斯く言うワタクシも、この世界に来るまでは人外の方と親しく話す機会というのには恵まれておりませんでした故ね。ワタクシは…端的に明かしてしまえば「紛い物」の化身でございます。
それ故に、話す相手は唯の人ばかり。ワタクシの側に居るような「外の者」とは、談笑どころか顔を合わせれば殺し合うような間柄でしたからねえ。
今のような、ただの親交を深める談話というものは、貴重な体験であると同時に…ええ、楽しいものです。

(珈琲を更に一口。風味を楽しみ、雰囲気を綻ばせながら目を細める)
うン、そう。つまるところ、気に入っている。(くすくす)

「紛い物」ねぇ。確かにキミはだいぶ素直で愛らしい性質(タチ)だからちょっかいかけたくなる気持ちもわからなくはないが。ま、いずれにせよ楽しんでくれているなら善き哉、善き哉。

(紅茶の風味を楽しんでから指先で机を叩いてミルクをその場に出すと、くるくると紅茶を混ぜながらミルクを投入する。赤と白が渦を巻きながら混ざり合ってミルクティーになると、またカップを両手で持って一口)
素直で愛らしい…と評して頂けるのはありがたく思えば良いのかどうか…。
…まあ、お褒めの言葉と受け取っておきましょう(コーヒーカップを揺らしながら)

ええ。この機会を設けて頂いた事には感謝しておりますよ。
…それにしても便利ですね、そちらのその手品のような…

…此方の秘密を幾分か知っているのです。そちらもどういった存在なのか、明かして頂ける範囲で教えて頂いても良いのではないですかな?
ン、これ?手品では無いよ。魔術はおろか、魔法とも明確に呼べない。ただ、“事実をそこに置いている”だけさ。

それで……我(アタシ)がどういう存在か、か。教えるのは非常に難しいね。

誤解が無いように先に言っておけば、これは別に秘匿した情報があるわけでもない。“よくわからない”、が情報なのさ。

なにぶん、気が付いた時にはヒトリで空の上を漂っていたし……それなりに年月を費やしても、我(アタシ)を識っているモノや同じ種に逢わなかった。だから、“よくわからない”。ある程度の推測は立てられるけど、確実では無いからね。

だから色々と好きに観測されるのさ。御伽噺の魔法使い、名も無き悪魔、武器商人、古の夜……みんなが色んな名前で呼ぶのは、これはこれで中々に愉しい。(けらり、けらり)
事実を、置く…ですか。ふむ…奇妙な物言いですが、ここに見ている事象の数々を見れば、自然と腑に落ちるのが不思議なものですねえ。

アナタの正体はアナタ自身にもわからない…という事ですか。
なるほど、アナタにとっては自らの正体が未知である事すらも愉しみの内だということなのですね。しかし、何となくその感覚は解る気がします。
観測者によって様々に形を変える姿、正体は、ワタクシの”大本”にも通ずる趣です。

で、あるならば…ワタクシにとっても、商人様。アナタには親近感を抱く存在ですね。
不明瞭な正体でありながら、見る者、感じる者にとって数多くの顔を持つ者…という事ですから。
ふむ、もう少し平易な言い方をするなら現実改変かな?といっても、此処まで使えるのはこのギルド内だからだけど。

愉しみ……今は、そうかもしれないね。これでも初めは色んな所を探したものさ。自分のルーツってのは1度は気になるもんじゃない?ただ、どこに行っても人も、妖精も、天使も、悪魔も、妖も、カミサマも、だぁれも知らないものだからそのうち識るのを諦めちゃった。(くすくす)
なるほど。…商人様もこの混沌に来てから、様々な事を経験なさったようですね。
未だ尚も正体を知らず…されど「そういうもの」として受け入れ、混沌での日々に興じている…という事でしょうかね。

…思えば得体の知れないワタクシのような者をも、この混沌は受け入れております。
混沌だけではありません。ここに喚ばれた…商人様をはじめとする、様々な方が、ワタクシのような存在に興味を示し、隣人として受け入れて下さっております。

…奇妙な気持ちですが、ワタクシもそれを悪くは思っておりません。
そのあたりは…少しばかり商人様と通じるものがあるのかもしれませんね。
混沌に来る前も、混沌に来た後も、ね。

ヒヒ…この混沌は、実に多くのものを受け入れる。これからキミ自身が作り出すモノガタリが楽しみで仕方ないとも。友人なり、師弟なり、番なり。そういった縁が出来るのは楽しいものさ。
なるほど…そのように期待を寄せて頂いているのは光栄ですねえ。
ワタクシのような存在が、此処に喚ばれ…何を為せるのか。どんな方々に出会うのかは…
ワタクシ自身にもわかりませんからねえ。

それが商人様にとっても愉しみとなるならば、精々微力を尽くすと致しましょう。

(いつの間にやら、空になったコーヒーカップを置いて)
さしあたって茶飲み友達ってのはいかがかな、お嬢さん?(くすくす)
ほう、悪くございませんね。
時たま、ワタクシが単なる娘子だと…此処に来て錯覚する事が多々あります。

…アナタとのお話は有意義で愉しいものであると同時に、ワタクシの"正体"を忘れずに居られる良い機会でもあると思いますので…

ワタクシでよければ、喜んでその関係、お受け致しましょう。
おやまァ、そいつはよかった。
実のところ、キミたちと茶を飲むのは初めてじゃあないんだが、ここまで穏やかなのもこうして面と向かって誘うのもキミが初めてだったからね。

じゃあ改めてよろしくお願いしようかな、可愛い隣人。(上機嫌な様子で指の細くて綺麗な手を差し出して)
ヒッヒッヒ…それは光栄です。お眼鏡にかなった…という事でございますからね。

此方こそ、どうかよろしくお願いします。末永く佳き関係であれれば良いですね…
(その手を取り、握手に応じる)
ヒヒ、全く。キミであれば、"暫く"退屈しなさそうだ。(ゆるりと握る優しい握手をして)

さて、それならキミのことをキミの言葉でもっと知りたいな。もちろん、我(アタシ)のことで何か知りたければ可能な限り答えるとも。例えば、今まで渡った界(さかい)とか。

(おかわりいる?と前髪の奥の視線をホロウウォーカーの方へ向けると、チョコレートに似た甘やかな香りを放つモカがカップに注がれている。今度は、何かしらの動作すら無かった)
ヒッヒッヒ、何卒末永い関係になる事を願っておりますよ、ええ。

ワタクシの事ですか?まあ教えて害になるものでもございませんし、答えられる事は答えますよ。

界…商人様の話に時々混じる言葉…ですね
その口ぶりからすれば、ここ混沌に流れ着く前にも、様々な世界を渡り歩いた…という事でしょうかな?

おや、今度は随分と甘そうな香りですね。せっかくですし、そちらも頂くと致しましょうか。
そうそう。我(アタシ)は界(さかい)と読んでいるけど、異世界だとか、ドミニオンだとかそういうの。此処だと、境界に潜る感覚によく似ているね。キミは渡った経験はある?

(コーヒーを口にするなら、陰干しして仕上げられたコーヒーはフルーティーでまろやかな甘さすら感じる。後味は嫌味のない苦さがすっと抜けて香ばしい香りが口の中に残るだろう)
ワタクシですか?いいえ、ワタクシは異界に渡った経験があるのは混沌が初めてですね。
意外かもしれませんが、ワタクシが普段吹聴している齢16というのは嘘でも誇張でもないのですよ。本当に、世に産み落とされてから16の歳月しか経過しておりません。
故にまだまだ若輩も若輩、人の世界から見ても、ましてや彼方の神々の尺度から見ても芥子粒の如き時間しか、ワタクシは存在していないのですよ。

(コーヒーを一口、口の中で転がす。舌を流れる味わいと香ばしい香りを堪能し、うっとりとした顔となりながら)
なるほどねぇ、可愛いモノガタリ程ではないがキミもまだ生まれたばかりなんだ。それなら確かにキミ自身が界を渡る経験が無かったとしても不思議ではないね。

我(アタシ)は幾つだったかな。なんせ、“目が覚めて”からは暫くぼんやり空の上で過ごしてたから実際の歳は知らないのだよねぇ。普通の人間よりは長生きしてると思うけど。それで、空で考え事をするのにも飽きてきたから地上に降りてきてね。界をいくつも渡って色んな所で時を過ごしてたんだ。キミ達が住んでいる所にも行った事があるよ。
(ちびちび。紅茶をようやく飲み終わって、カップをソーサーの上に戻す)
ヒッヒッヒ、空の上で目を覚ますとは…まるで仙人ですな。

ほほう、宙の先の先…深淵を見た事があると。人の身で…いえ、人の身であるかも定かではないからこそ、でしょうか。いずれにせよ…あんな場所に踏み入れて今もなおこうして健在とは。…ヒッヒッヒ、さすがは商人様、底が知れぬお方でございますねえ。

(コーヒーの香りを堪能した後、空になったカップを商人と同じタイミングでソーサーに戻した)
たまーにあのコ達と同じモノと見間違えられる事があったせいか、親和性みたいなのが発生したのかもね。ま、元々我(アタシ)の正気というものが曖昧な物なのかもしれんが。ヒヒ……。
なんにせよ、楽しかったよあそこは。キミ達と一緒に遊んだり、ニンゲンに手助けしたり……。
ああ、そういえばあの界(さかい)にある魔術書は面白いのが多くて、ついあれこれ蒐集しちゃったなァ。(くすくす)
なんと…あそこにある魔術書を持ち帰るとは、なんと冒涜的な事を……

ヒッヒッヒ……人の正気は常識に保証されるものですが、我々のような人でなしの正気は一体、誰が定義してくれるのか…何を以て、正気と狂気を分けるのか……

ま、そのあたりを厳密に決めても面白くありませんね。ようは我々は「愉しめるかどうか」。この一点に尽きましょう?そこは人であろうと、なかろうと変わりますまい。

特に…我々のような存在は、退屈ほど忌避すべきものもありますまい?
もちろん、あれらが及ぼす影響は承知しているよ。だから本当に縁のあるコが現れるまでは迂闊に人が触れぬ様に保管してあるとも。

ーーま、魅入られたコに一部を写本をしてあげるくらいはするけれど。(その方が退屈しないであろ?と笑って)
本はいいよね。我(アタシ)は好き。知識を長いこと留めておけるってのもそうだけど、人の頭の中を覗ける手段でもあるからね。
そうですねえ、本はどんな本であれ、少なからず作り手の主観…即ち意思が入るものです。
本に込められた意思、踊る言の葉から書き手の人生を見る事も、アナタにとっては容易い事でございましょう…。

その様子ですと、読むものは魔導書ばかりという訳ではありますまい
どんな本を好んで読まれるので?
我(アタシ)?……そうだねえ、どんなジャンルの本でも読むけれど…物語が読み取れるモノが特に好き。娯楽小説でも、怪談話でも、絵本でも、日記でも。

それから、シンプルに人間の知識に触れられる本かな。ホロウウォーカーの方は好きな本はある?
なるほど、物語……。先程の会話からも察して余りありますが、商人様は人の紡ぎ出すものを大層好いておられるのですね。
人の想い、人の憧憬、人の空想…そして人の願い。それらが込められている『物語』を好いておられると。

ワタクシですか?そうですね……
…ヒトの心理を読み解く為、心理学関係の書物を読み漁った事はございますが…
別段、好き好んで楽しむ為に何かの書物を読んだ、ということはあまりありませんね。

商人様読んできた中でも、特に愉しかった本など…ございますか?
せっかくこの世界にて第二の生を楽しんでいるのです。今までの愉しみ方とは趣向を変え、誰かの好みに寄り添ってみるのも面白そうですゆえ。
そう、我(アタシ)は人の紡ぎ出すモノガタリが好き。理由は言うまでもなかろ?(くすくす)

特に楽しかった本、かァ。そうだねぇ……どのジャンルでも大方好きだけど、キミの興味をより惹きそうなものといえば怪談やホラーはどうであろ?古典的なものでもいいけど、一部の旅人たちがいう「現代社会」が舞台の怪談も捨てがたいね。キミが恐怖を娯楽として消費するというのも皮肉の効いてる話だが。
ほほう、怪談、ホラー……ヒッヒッヒ、確かにそうでございますね。
どちらかといえばワタクシは人間の言うホラーの側ですからね。恐怖を愉しむ…というのはワタクシには理解できませんよ。

とはいえ、そういったものも人間の心を読み解く為に重要であるのも確か。
ヒトは怖いと解っていても、好奇心が勝れば覗かずにはいられない…難儀な性質を持っておりますからね。後学の為、そういった本に触れてみるのも良いかもしれませんね。
特にね。

怪異の、絡まない話がいい。否、絡んでもいいけれど。その方がおそらくキミ好みの話が出てくるんじゃあないかな。「心霊写真の女」の話とか、ね。

(きゅ…と前髪の奥の瞳が愉しげに細められる)
ほう? 怪異の絡まない話の方…でございますか
確かに、ワタクシは名前のある怪異や悪霊、怪物に関しては「どういったもの」かを理解しておりますゆえに、恐怖に対する感覚が抱けないと思いますが…

ふむ…心霊写真の女の話…ですか
その心は一体?

(細められた目、その仕草を見逃さず)
ああ、「そういう噺」があるのさ。もしかしたら、知ってる噺かもしれんが……(聞くかい?と首を傾げて)
ほほう…それは興味深いお話ですね。

よろしければ、是非。語りながらお茶を頂くというのも乙なものですゆえ
(コーヒーカップを揺らしながら)
いいよ、今度はカフェイン少なめでどうだい?

(それがくつくつと笑うと、瞬きの間に新しくコーヒーが注がれている。口にするならばシナモンなどのハーブを思わせるスパイシーな香りと、バタートーストのような重厚なコクと雑味の無いクリアな苦味を感じられる。どうやらマンデリンを水出ししたもののようだ)
さて、心霊写真の女の噺だったね。

時は旅人たちでいう2000年代。キミも馴染みのある時代かな?
ある若い男が、自宅で友人と飲み会をしていた時の話だ。

酒好きの男たちは大いに盛り上がってね。気持ちの良い気分で酔っ払いながら、盛り上がっている様子をSNSにアップロードしようと友人と写真を撮ったんだ。

そうしたら、撮った写真からなんとはなしに嫌な気配がする。
はて、なんだ?と男が不思議に思っていると、「おい、」と友人が青い顔で“ある箇所”を指差した。

そこは押入れ。ほんのり開いた隙間に……蒼白い女の顔が写っていた。

じっ…………、と。

眼を見開いて食い入るように男と友人の後ろ姿を眺める恐ろしい視線は、写真越しでも自分達を見ているような心地に囚われる。男達は当然、飲み会どころの話じゃあない。2人揃って慌てて逃げ出して、その日は友人の家に泊まったのさ。

一夜明けて、男は酒が抜けると大学の後輩に霊感が強い者がいたのを思い出した。
いてもたってもいられなくなって、男は早速その後輩に「部屋に幽霊がいる、助けてくれ」って写真を送信して視てもらったんだ。

すると後輩はこう返事を返してくれた。
「近くにいた浮遊霊が写真に映り込んじゃってますね。これなら、盛り塩をーー」
霊感のあるコはすぐに返信を返してくれてね。男は手順を聞くとすぐに家に帰って実行し、部屋の写真を撮って後輩に送ったんだ。

後輩は「もう幽霊はいませんよ。一緒にいた人たちにも大丈夫って伝えておいてください」と太鼓判を押してくれたよ。もちろん、男は喜んで後輩に礼を伝えた。今度家で飲もうと後輩を誘って、それから友人にもう大丈夫って連絡したのさ。

ああ、それから最後に。後輩はこう書いて返事を締めくくっていたんだ。

「こういう写真を撮ろうとすると、雑多な霊が入りやすくなっちゃうので気をつけてくださいね」

ーーお了い。
……(その顛末に愉悦を覚え、にやぁ…と口元を細める)

ヒッヒッヒ、これはこれは……随分と愉しい話ではございませんか。
自己顕示欲や興味の昂りから、『してはならないこと』にこうもいとも容易く踏み込んで
果てはもう既に取り返しのつかない事になっているとは…いやはや、いやはや

こういう人のどうしようもない欲望の応報というのは爽快でございますねえ、ヒッヒッヒ…
大変満足のいく話でございますよ、流石は商人様でございますねぇ
いやはや、気に入ってくれた様でなにより。全く以って愉快な噺だよねぇ、これ。酒気を帯びていたとはいえ、すべき事があったろうに。ーーなんで1人で家に帰ってしまうんだか。(くすくす)
ヒッヒッヒ…その後の顛末は推し量る事しかできませんが、碌な結果を想像させないという語り方にこそ巧さがございましょう。その聞き手によって、どうとでも捉え、愉しむ事ができる…

それはまさしく物語の妙と言えましょう。
これは商人様が気に入るというのも理解るもの…
初めて聞いたときはつい感心したものさ。まさか、心霊写真という題材でコントを聞くことになろうとは、とね。…その通り、この話は聞き手によって怖さが変わるのを楽しむことができるのさ。実に言葉とは面白いモノだ。
そういった噺を創り出す事ができるのも…人間ならではという事なのでしょうねえ。
人は様々な事を想い、色々な事を考え、そしてあらゆる事を感じる。
体験を言葉に、形に、行動にして紡ぐ、人の創り出す「物語」の魅力、確かに味わわせて頂きました。感謝しましょう、商人様。

…ワタクシも、娯楽の為の読書などに興じてみましょうかね。
ここ最近は字を読む事すらご無沙汰でしたからねえ。

思えば、共通の本を読み、その感想を語り合うという事も、したことがありませんしね。
いずれ商人様の好む本を読んだ時などは、そうして感じた事、考えた事を互いに持ち寄りたいものですね。
ああ、それなら折角だし書庫を見ていくかい?蔵書数もあるし、ジャンルは幅広くおいてあるからキミ好みの書物もきっと見つかろう。

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