その部屋は四方の壁から床まで真っ白で、窓も無いような部屋だった。

部屋の真ん中には引き出しも無い簡素な白いテーブルが一卓と同じく簡素な白い椅子が二脚。

辛うじて部屋の一角にある本棚と、そこに陳列されている本たちが、この世がまだまともな色彩を持っているのだと教えてくれる。

壁をよく観察するならば、隠れるように同色の扉が存在しているのがわかるだろう。そこが唯一の出入り口らしい。

ーー遠くで微かな悲鳴が聞こえた？なに、気にするほどの事では無い。

参加
武器商人
ヴァイオレット・ホロウウォーカー

（椅子の片方に、いつの間にかソレは腰掛けていた）

おや、これはこれは…（開いた扉から中へと踏み入れる。不自然な程に白い部屋に目を細める）

…気ままに彷徨っていたら、誘われるかのように奇妙な扉がありましたが…まさかアナタの手引でございましたか、商人様。

ワタクシのような矮小な存在に、何か御用でございますかな？
此方の感覚が間違いでなければ…ワタクシはここに「招かれた」と感じているのですが。

（後ろ手に扉を閉め、口とは裏腹に慄れることなく武器商人の座るテーブルへと歩みを進めてゆく）

やァやァ。コンニチハ、使者殿。
いや、親しみを込めるならあえてホロウウォーカーの方、がよかろうか。ヒヒヒヒ……。

その通り、"招いた"んだよ。ちょっとお茶会でもしたくなってね。
(す、と顎を上げてソレは笑う。少なくとも敵意は無く、歓迎をしているのだという雰囲気はある)

………（ぴくり、とその呼び名に反応し）
……ヒッヒッヒ……やれやれ、只者ではないとは思っておりましたが……
つくづく、こちらの世界の人々は侮れませんね…隠し立てできるものとも思っておりませんが。

呼び名でしたらお好きに…と言いたい所もありますが、他の精神の弱い方に気取られると色々と面倒なので、名を呼んで頂ければ。姓でも名でも、どちらでも構いません。
尤も、どちらもワタクシにとっては偽りの名ではございますが。


…そこまで解った上で、談笑目的でワタクシを喚ぶとは……。
…ヒッヒッヒ、酔狂…とは言いますまい。元よりこの世界はワタクシの世界での人々の常識の及ばぬ見。元の尺度で測る事ほど無粋なものもありますまい。
ワタクシも、アナタには興味がございましたからね。
（くつくつと嗤いながら、対面の席に腰掛けた）