PandoraPartyProject

ギルドスレッド

月見酒の縁側

公開版・文字の貼り場

SS貼り場やチラシの裏に書いたけど勿体ない、でも出し場に困っている。
だけどあまり人に見られないところがいい、けどやっぱ他の人にも見てもらいたいとか絶妙な場所をお探しの方。
どうぞこちらをご活用ください。

掲載する者に関しては規約に準じたもののみと致します。
最低限の公序良俗は守りましょう。それでは良きひっそりライトワークスを。

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適当に決戦後の闇落ちフラグを考えていた話。
もしかしたら暴走するのかもね((´∀`))ケラケラ とかなりそうなそんな予感だけを出せたらな駄文です。

【悪い”夢”】

男は嗤い、遊ぶかように剣を振るった。
断末魔の叫び、肉の斬れる軽やかな音、そして登る鮮血。それでも彼は愉快そうに頬を緩ませその双刃を踊らせる。
当の本人にしてみれば遊戯にも等しい認識だったのだろう。
だが、傍から見ればそれはただの地獄絵図。虐殺の現場に過ぎないものであった。

数刻もしない内、夜闇に包まれた森は再び静寂に包まれる。
静けさの中で響くのは水の滴る音。落ち往くは刃から垂れた紅の水たまり。
その中心で、”死神”は佇んでいた。
浮かぶ表情は決して明るいものではなかった。そう、例えるなら――玩具を取り上げられて消沈する子どものような、そんな残念がる様子で。
言葉はなかった、だが明らかに興が冷めたという様子で踵を返し、その場を後にするのだった。


「――――また、いつにも増して酷い夢だな」

うんざりとした様子で瞼を開いた黒髪の男――クロバは髪を掻き乱す。
この手の悪夢は慣れたつもりだったのだが、どうにも最近は傾向というよりかは見る夢が似通ったものになる。
”自分が殺す事を愉しんでいるかのような夢”。まさに常人からしてみれば悪い夢とも言えなくもない。
他人の悪夢を喰らうギフトを持つ彼は常にこのような夢に苛まれる事が多い。
だが、毛色が違うと感じたのはこの夢を見ているのは”自分”なのではないかという点。

「はぁ、とにかく今日も仕事をしないとな……面倒な仕事が多いもんだ」

考えようにもすぐに大きなため息をついたクロバは周囲の安全を確認し、近くの川へと足を運ぶのだった。
(こんな夢を見るようになったのは――あの決戦以来か)

忌々しげに左腕を押さえ、歩く彼の心には今も渦巻く。
(さぁ、喰らえ。命を。お前はどうしようもなく渇いている。欲しいんだろう? ――血と、魂が)

まるでオレも原罪の呼び声とやらに感化されたみたいじゃないか、と再び不機嫌に笑いながら。
今日も”死神”は渾沌を歩くのだった。
4
”Pandora Party Project”一周年記念SS

【死神・一日店長になる】

朝日が昇る頃。
死神、”クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)”はとある店先の前に立っていた。

「はぁ……いやいくらなんでも無茶だろ」
――事の起こりは丁度半日前へとさかのぼる。

「何? 菓子屋の一日店長をしてほしい?」
慎ましやかな内装、決して繁盛しているとは言えないが落ち着いた雰囲気の喫茶店にて、死神は眉間を歪めて言い放った。
目の前にいる男性は困り笑顔を浮かべたまま「はい」と答える。
「私の夢だったんですがね、開店前日だというのにうっかり手を痛めてしまいまして……どうしたものかと途方に明け暮れていたところ貴方様の噂を伺ったのですよ。

”お菓子の家を作るイレギュラーズがいる”。と」

「えー」としかめ面を浮かべるクロバだったが、確かに思い当たる節はあった。
つい先日ユリーカの誕生日の催しに便乗し、気ままにケーキを作ったのではあるが普通に作るだけでは飽き足らずついには謎に凝った和風建築のケーキハウスを建築してしまったのだ。

「あぁ、ダンボールハウスよりも楽でいい!!」

とか言い放って。

「なのでどうかお願いです!! 一日だけでいいのです、貴方の名声と腕があれば店の名前を挙げる事は出来るでしょう!! 謝礼は弾みます! どうか、どうかお力添えを!!」
「……なぁ、分かってると思うんだが。オレがやったところで今後店を切り盛りしていくのはアンタだ。オレが店の名前を売ったところで意味がない」
「承知の上です。貴方に勝てぬようでは菓子職人を目指す事は叶わないでしょう」
「……ほう、言ったな」
クロバはニヤリ、と笑みを零す。
気にいったという意志表示とも取れるが。内心はまったくの別物だろう。
「その依頼、受けた!!! オレの菓子がアンタの壁になってやれるよう全力でやらせてもらうぜ!!」

――その実、対抗意識バリバリで燃やしていただけだった。
大丈夫かこの死神。




―――かくして、死神の一日店長という依頼は結ばれた。
待ち受けるのは数多の邪魔もn……いや、エキセントリックなお客様の数々!?
具体的に言えば噂を聞きつけて訪れたイレギュラーズたちなのだが、どうなるクロバ!

ちゃんと店の切り盛りができるのか! そもそもお前は接客できたのか!!
乞うご期待!!!
(以上、予告編でした((
【来客その1】

「で、意気込んで開店してみたが」

オープンより2時間が経った頃だろうか。出だしは散々すぎる程に悲惨だった。
一言で表すならば閑古鳥がオープニングを高らかに歌い上げている程。
まぁ、それもそのはず――

・繁華街を大きく外れ、ほぼ路地裏とも言えるくらいに絶望的に立地が悪い。
・店主はメニュー作りに熱心であり幅は広いがとにかく宣伝がされていない。
・近くにめっちゃ大きな菓子屋がある。

「無理だろ!!!!!!! なんでこんな所に店出した店主!!!!!!!!」

叫びたくもなる。
折角朝早くから仕込みや焼成、店主のレシピ通りに菓子を作り上げていったわけだが。
絶望的なまでに客が来ない事には店として成り立たないにも程があるだろう。

「どうしたものか……やると言ったからには成果は出さないとな……なにか打開策を――」
「オウッ♡この俺を呼んだなマイブラザー♡♡♡クロバ♡フウッ♡困っているようなら俺に任せとけチェケラ♡ッハァ♡」
「……あぁ!?」

思わず声が出てしまったが、目の前にいたのは街角の超が付くほど有名人……?
いや、有名妖精であるラヴィエル(p3p004411)その妖精だったからだ。
相変わらずなんか只者じゃない気配をまき散らせながら、そいつはオレの前で懸垂をしていた。

「色々とツッコミたいところがあるが、一体どう協力してくれるというんだ? まさか買い占めてくれるとでも?」
「ノンノンだぜクロバァ♡♡待っていろカラーァ♡俺が全速力でお前にラヴを届けに今駆け巡るぜ!!!イッツァショウタァイム!!!ムンムンムンムン♡」
「……ま、毎度ー」

――さり気なくイチゴショートケーキを一個とその代金を置いていった愛の妖精を見送った。

「何か分からんが凄く不安しかないな!??」

クロバの一日は始まったばかりなような、気がした――
【2話・予定調和】

「……で、俺は何をすればいいんだホロウメア……」

やつれた顔をしたハロルド(p3p004465)が店を訪れたのは、それから間もなくしてだった。
「……おう、まぁ皆目見当は付くが少し協力してくれ。閑古鳥がうるさくてな」
「閑古鳥? あぁ、この店の事か。内装は新しい感じだが人が兎に角いないのだな」

事情を説明すると、徐々に顔の生気を取り戻しつつハロルドは頷いた。

「成る程。つまりは俺を客の一人として連行――いや、あの愛の妖精は連れてきた訳だな」
「そう言う事だ。オレはお前のその顔見てるのも楽しいが……あ、すまん忘れろ。とりあえず依頼を果たしたくてな」
「あの妖精の事はいい!!!!!? ……コホン。良いぞ、適度な糖分は疲労回復にも適している。お前のオススメをいただこう」

咳ばらいをしつつ興味深げにハロルドが辺りを棚に陳列された商品を見渡す。

(オススメ、か……オレはハロルドの好みを知らないしな、とりあえず妥当なところだと――)
「そうだな、桃のコンポートゼリーとかどうだ? 暑い日が続くから冷やせば美味いものが合う。それに果物の甘味ならそこまで得意じゃない奴でも当たり障りがないからな」
「ほう、それは良いな。では一つ……いや、二つくれ。あんなんでも紹介してもらった筋は返さねばならん」
「義理堅いな……まぁ、オレとしても宣伝と売り上げの両方取れるから別に損はないか」

保冷材と共に梱包した包みをハロルドへと渡し、代金を受け取った。

「ちなみにだがホロウメア、ここに並んであるのはすべてお前の作か?」
「……ん? いや、作ったのは確かにオレだが大体のレシピは店主が考えたものだ」
「そうか。感謝する、他のイレギュラーズたちにも会ったら勧めておくとしよう」
「そうしてくれ、毎度あり」

店を後にしたハロルドを見送り、とりあえずの成果を噛みしめる。

「ま、流れはこっからってとこかな……?」

遠くの方で全力疾走しはじめた聖剣使いを眺めながら、オレは小さく欠伸をかいたのだった。
【3話・盾と花と菓子と】

「クロバ殿! 聞きましたぞ! めでたく就職だそうで!!」
「誰が言いやがったそんな事。違う、一日店長代理だ白盾」
景気のいいような事を言って店に入ってきた壮年の男、刀根・白盾・灰 (p3p001260)は「えへへ、申し訳ありませんぞ! ちょっと言ってみたかっただけなのです!」といつも通り褐色の肌に反して明るめな笑い声を上げた。

「あのぉ……私もお邪魔させていただいても?」

続けて入った来た人物にオレと白盾が同時に目をやる。
幻想種特有の長い耳に白い髪、そして柔らかな服装に花の香り。
と来れば思い当たるのは一人だった。

「ようアニー。お前も来てくれたか」
「はい、クロバさまがお店を始めたと聞きまして。私も一ついただければと思いまして」

温和な笑みを浮かべ、アニー・メルヴィル(p3p002602)は先に入っていた白盾にも同じく挨拶をしていた。

「トネさまもクロバさまのお菓子を買いに来られたのですか?」
「アニー殿もこんにちはですね! 普段は私も甘いものは違うものは摂っておりますがたまにはちゃんとしたものも食べようかと思いまして!」
「そうなんですねぇ、ではクロバさま。私たちにオススメのお菓子をよろしければ教えていただけますか?」

なんか白盾の言葉に含みがあるんじゃないかと思いつつ、アニーの頼みでどれがいいかと棚に陳列している商品をのぞき込む。

「そうだな、白盾にはこのブランデーケーキ。アニーにはそうだな、チーズケーキと……そうだなぁ、ハーブティーにマドレーヌはどうだ?」

酒飲みなイメージの白盾にはブランデーの効いたセレクト。アニーは花畑のテラス席で紅茶、あるいはハーブティーを飲んでいるというイメージからのセレクトだ。

「おぉ、ありがとうございます! これって酒と一緒に食べるといいですかね!」
「わぁ、素晴らしいと思います! 今度お茶する方にも振る舞ってみますね!」

概ね好評らしい。
代金を二人から受け取って、品物を渡す。

「よし、毎度アリ。それじゃ宣伝も忘れるなよ!!」

「ハハハ、勿論ですぜ!」と白盾が。「はいっ、私もお友達に勧めてまいりますね!」とアニーがそれぞれ店を去っていく。

「ふぅ……それなりに客足が増えてきたのは成果と言う奴か。……あの愛の妖精、おそるべしだな」

(次の話へ)
【4話・ねこ、ここでもねこ、いや猫じゃないです】

「ふぅー……流石に間に合わんな」

休憩の看板を立てかけ、一度大きく息を吐く。
あれから思いの外に客足が伸びて着始め、五坪近くの比較的小さな店中の棚に並んでいた商品は徐々に減ってきていたのだった。

つまるところ、次のを用意しなければ間に合わない、確実に。
そう考えたオレは昼食も兼ねて厨房に入ろうとすると――

「……待って。私にも」
「何処から出てきたこの猫!!!!? 今休憩中って看板おかなかったかオイ!!」

裾を引っ張りながら無表情に要求してくる猫。もとい、Solum Fee Memoria(p3p000056)―――ソフィーはオレの叫びには動じない。

「……いいから」
「何がいいんだよまったく分からねぇ……仕方ない。あり合わせで適当なの作るから文句は受け付けないからな」
「……文句は言わない。美味しくなかったら爪とぎにするだけ」
「タチが悪いな!!!!!!」

仕方なく要求に応え厨房へ。

「さて、何を作ったもんか……」

元々が菓子屋な訳であり、然程料理用の食材を買い込んでいなかったことを思い返す。
ジーッと睨んでくるお姫さんを満足させなければこちらの身が危ないので、暫く考え込んでみるのだが――

「仕方ない。アレ、行くか……」

残っていた卵を割り、ホットケーキ用の粉と牛乳とで馴染むまでボウルの中で溶き始める。
牛乳は一度ではなく、数回に分けて注ぎ込み凡そ3,4セット繰り返す。
その後生地を寝かせるのだが、部屋をそこそこ涼しい状態に維持していた為か比較的短めに冷やす。
その後は熱したフライパンにバターを落とし、まんべんなく広げれば――

「……クレープ?」
「御名答。生憎とメシはないのと手の込んだ奴は商品でね。こいつで我慢してくれや」

完成したクレープ生地に余った分のカスタード、生クリーム、果物やチョコソースを掛けて仕上げる。
王道のイチゴクレープだ。

「んじゃ、召し上がれってな」
「…………」
仕事が早いねこは既にクレープを一口大にかじり、頬張っていた。
もさもさと咀嚼している姿は相変わらず無表情だったが、特に不満そうな素振りは見せなかった。
(つまり、それなりに満足してはいるって事だな……)

「……欲を言えば魔力になるようなモノがよかったけど」
「ホントに欲張りすぎだ!!!!!」

そんなこんなでオレも同じようにクレープを頬張りつつ、その後の仕込みについて考えるのだった。
【五話・歯に衣着せぬ……にゃん】

と、いう訳である程度菓子を仕込みつつ補充し営業再開。
そして一発目で来たのは――

「ん。クロバが店やってるって聞いたから来た」
「……こけー……zzzzz」

真っ白な犬のようで狼少女らしい、歳若げな見た目に反して喫煙者の神埼 衣(p3p004263)、そして引っ張られているようにギフトで眠っているけど起きているらしい竜胆・シオン(p3p000103)の二人だった。

「おう、衣にシオンか。お前らも宣伝で来てくれた口か」
「うん。安くしてくれると助かるな」
「闇市が……闇市が……zzzz」
「夢の中まで闇市に飲み込まれないでいい!!!?」

と、「嘘だよー……」とシオンがダブルピース決めつつ。
早速二人に品物を見せてみる。

「甘いもの……どれがいいか迷っちゃう。どうせだから決めてくれると助かるな」
「……俺はなんでもいーよー……」
「お前らに良さげなのか……そうだなぁ」

今ある品ぞろえ、そして衣とシオンとを交互に目を遣る。

「なら、ちょっと遊び心入れてオレのを入れてみたんだよな……これとかさ」

二人にそう言って差し出したのは元いた世界、地球の中でも日本という国で親しまれた和菓子と言われる種類。
今回は音を鳴らす”銅鑼”に似ているからその通りの名がついた――どら焼きを勧めてみるのだった。

「銅鑼焼きという。中に餡子の入った焼き菓子になるんだが」
「面白い形だ。これなら見た目的にも面白いし良さそうかも?」
「……サムライソードを使う人間は菓子と一緒に茶をしばき倒すって聞いたー……zzz」
「なんか色々屈折してないかそれ……まぁ、シオンの言う通り和菓子って言うんだが。こいつは緑茶と合わせて食べるのが美味いらしい。生憎と茶の持ち合わせがないのでアレだが」
「ううん、だったら探してみる。旅人のおかげでいろんなものが商店に出るし見つかる筈。これ頂戴?」
「ほいほい、毎度アリだな」

衣とついでにシオンの分で代金をもらう。
……そう言えば自分で勝手に作ったメニューなのでロクな料金設定を決めていなかったが。
まぁ、特にイレギュラーズだし稼ぎには困ってないだろう、きっとな。

「ん。ありがとう、それじゃあ私たちは行くね」
「応。ついでに宣伝よろしくな、オレの菓子が喰えるのはこの店だと今日だけだってな」
「……覚えたらやっとくー……!」

意外と和菓子売るのも悪くないな、と思ったオレだった。

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