シナリオ詳細
<被象の正義>異言都市、顕現す
オープニング
●リンバス・シティ
「ここが……リンバス・シティなのか……」
と、イレギュラーズの一人がそういった。あなたは、緊張感を確かに抱きながら、その都市の姿を見やる。
リンバス・シティ。その再外層にあたる、モルト・レネンティア街区。言ってしまえば『町の入り口の一つ』に当たる(もともとテセラ・ニバスは巨大都市であったため、いくつかの入り口は存在する)わけだが、入ってみただけでも、既にこの都市は異質なのであると理解せざるを得なかった。
街に、まるでノイズが走っているかのような違和感がある。この街は、まだ『町の形を保っている』といえる。報告によれば、既にあらゆる『異常』が、街区ごとに発生しているとのことであったからだ。
「ローレットの皆様。どうかお気を付けください」
澄んだ少年の声が響く。そちらの方を見てみれば、真新しい天義の騎士服を着た少年と、同様に聖騎士のいで立ちをした青年が立っていた。
「その。皆さまが、御強いのはわかっていますが、ここは未知の場所ですので……」
「彼らも、それくらいはわかっているだろうね、ジル」
と、青年が穏やかな表情でそういう。
「もちろん、君の心配や心遣いも理解してくれているだろう。
すまないね。ジルはまだ、こういった場での経験は少ない」
そういう青年の名を、セレスタン・オリオールと言った。天義の聖騎士の一人である。ジル、と呼ばれた少年=ジル・フラヴィニーは、彼に仕える従騎士である。
従騎士がいる、ということで、セレスタンはそれなりに高名な家の出であることは予測できた。実際その通りで、彼は『聖盾』の聖遺物を受け継ぐ一族だ。ただ、聖盾は先の冠位魔種の騒乱の際に、アストリアに奪われ散逸し、今は行方が知れないということらしい。
彼らは、ローレットの依頼に、天義より同行を願われた聖騎士の二人だった。依頼。あなたたちが受けた依頼は、天義に突如発生したこの都市――『異言都市(リンバス・シティ)』の調査及び切除であった。
「改めて、今回の依頼を説明しよう」
セレスタンがそういうのへ、あなたはうなづく。
「この都市――リンバス・シティは、昨日突如として出現した。なんでも、『帳』のようなものが包み込んで、気づいたときには、この都市が発生したらしい。
そして――これは秘匿情報なのでくれぐれも他言無用だが、シェアキム猊下によれば、新たなる神託が下ったそうだ。
偽りの正義に満ちた都市を断罪し、真なる正義により被象する――。
つまり、天義の正義は嘘っぱちで、我らこそが真なる正義の象徴ってことらしい。その象徴が、ここ。異言都市――ということだそうだ」
セレスタンの言葉に、あなたはもう一度頷いた。
これまでにもたらされた情報によれば、ここ、テセラ・ニバスという都市が、ある日突然、『変貌』したのだという。それは、どうやら昨今天義に関係する地を騒がせている『遂行者』による仕業であるらしい。
テセラ・ニバスは、ワールドイーターや影の天使などにより文字通りに『造り変えられ』、内部を『異言を話すもの(ゼノグロシアン)』たちが闊歩する、異言都市(リンバス・シティ)へと変えられてしまったということだった。そして、まるで犯行声明であるかのように、天義に新たな神託が下された。それが、『天義の偽りの正義を罰するための、真の正義をここに降臨させる』というような内容で、つまり『リンバスシティこそが、本来あるべき天義の姿である』……と主張しているかのようだった。
「それで、ローレットに相談と依頼がおこなった。ローレットの情報によれば、どうもこれは、以前同様のケースが別の場所で観測されていた、ということだったね?」
セレスタンが言うのへ、イレギュラーズたちはうなづく。ROOと呼ばれた練達の秘匿事業で起きた事件に関与したローレット・イレギュラーズは、その『再現・シミュレートされた混沌世界』の中で、『正義国』と呼ばれる天義のシミュレートを確認した。そこでは、『ワールドイーター』による、『世界を食われ、変質させられた』という事件が発生しており、まるでROOの事件は、現実に起こりえた今の状況をシミュレートしていたといわざるを得ない状況になっていた。
もし、ROOの事件が現実のシミュレーションの結果であるならば、解決策も同様のものであると考えられた。
つまり、『変貌した都市の内部に入り、核となる存在――例えば、ワールドイーターを撃破する』。これにより、変貌した世界は現実に戻ってくると予測されていた。
「けれど、これだけ巨大な都市を、一度で奪い返すのは現実的ではありません」
と、イレギュラーズの一人がそういう。
「街区ごとに世界が違う、と、天義の調査チームから報告が上がっています。つまり、この都市は、『街区ごとに、異なる核が存在する』と予想されるのです。
このことから、私たちがやるべきは――街区に侵入し、調査・そして切除を行う」
「そうすることで、街区ごとに、元の姿を取り戻せるのですね……!?」
ジルがぱぁ、と表情を輝かせるのへ、あなたは頷いて見せた。
「そう。これが今回の依頼だ。
僕たちがやるべきは、いわば切除実験、だ。
この都市を可能な限り調査し、核となる存在、おそらくワールドイーターというやつだね。それを見つけ出し、倒す。
そうして、この街区をリンバスシティから切除し、僕たちの手に取り戻す……!」
セレスタンの言葉に、あなたはうなづいた。それはまるで、奇しくもROOでパラディーゾ達が仕掛けた、『陣取り合戦』を現実でも再演するかのような戦いだった。
「それでは、よろしく頼むよ。
……報告によれば、この街の住民は、すべて『異言をはなすもの(ゼノグロシアン)』たちだ。
最悪、戦闘になる可能性がある。可能な限り、余計な戦いはさけてすすもう」
そういうセレスタンの言葉に、あなたたちはうなづいた。
まるでノイズに包まれたような街の調査と切除が、始まろうとしていた――。
- <被象の正義>異言都市、顕現す完了
- GM名洗井落雲
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年03月09日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●被象の国
「――――」
飛び交う言葉の意味は分からない。もし崩れないバベルがその言葉を翻訳してくれているとしたら、きっとこういっているに違いない。
例えば、「今日はいい肉が入ったよ! ぜひ買ってくれ!」とか。
例えば、「おかあさん、おもちゃ買ってよ~!」とか。
例えば、「いやねぇ、外では祝福されなかった人たちがあたしたちを狙ってるんだろう?」とか。
例えば――いや、たとえを出すには、枚挙にいとまがない。
それはすべて、『日常的な会話』であるのだから。
世間話。雑談。あるいは、誰かに愛の言葉をささやくのですら――。
我々には理解できない言葉で通じ合っている。
単純に言えば――例えば、いわゆる現代地球世界出身のウォーカーの感覚でいえば。
自分の生まれ育った国とは違う国、異国の文化圏に、ぽつりと放り出されてしまったような感覚だろうか。
自分たちとは異なる言葉を話すものがいる。それを常識として理解していたとしても、そうなってしまえば、心細いとか、不安とか、そういうたぐいの恐怖を覚えるのは仕方がないだろう。
違うものがいると理解していても、不安は払しょくできないのだ。
ましてや、ここは混沌世界。
通じ合えないものなど存在しないはずの世界。
そこで、まったく、理解のできない存在がいるのだとしたら――。
それは、どのような恐怖を生むのだろうか。
「――」
『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は、街の光景に、タバコを吸いたい気分だった。どうにもこうにも、胸にもやもやとしたものが浮かぶ。それを、吸い込んだ煙と一緒に吐き出せたらどれほどいいか。
「これが天義の真実、真実の正義、ですか」
舌打ちをしそうな勢いで、リドニアが吐き捨てる。
「こんな、こんな出来損ないのテクスチャまみれの世界が?」
被象現象。テセラ・ニバスという現実に、覆い被さるもう一つの現実という現象というべきか。それは、天義の正義を、自らのエゴで覆い隠し、台無しにするような行為ともいえる。
「作ったやつの程度が知れるわね」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が言った。
「無神経で、身勝手な奴よ、きっと――情報によれば、サマエルとかいう遂行者は男だったかしら。
たぶん、女にはバラの花を送ればいいとか思ってる気障な奴に違いないわ」
「そういうものなのか」
『暴食の黒』恋屍・愛無(p3p007296)が、ふむん、と唸る。一行がいるのは、街区のはずれ。いうなれば、入り口、といってもいい場所だ。その人気のない場所に集まって、これからどうするべきか、という確認を行っている状態である。
人気のない場所というのは当然で、我々イレギュラーズは、この街にとっては『祝福されざる悪魔の手先』であるに間違いないわけだ。というより、祝福され、異言を話す住民たち――ゼノグロシアンたちにとっては、イレギュラーズは暴力を持って排斥する存在である。
「とはいえ、この現象にもワールドイーターがかかわっているのか。ROOのワールドイーターがあのような変化を遂げたのは、僕にも責任の一端がある。
ROOのワールドイーターの祖たるスターイーターは、僕がログインしたことで、データの干渉が起きて生じたようなものだ」
「気にすることはないんじゃないですか? 貰い事故みたいなものでしょう?」
『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)が言う。
「ROOが混沌世界のシミュレーションなのだとしたら、キミの介入がなかったとしても、あの『バグ』はすべてを食らうものになったはずですよ。
……むしろ、シミュレーション通りにワールドイーターや終焉獣が生じたというのなら、もしかしたら、現実で発生する現象そのものが、愛無くんと相性が良かったのかもしれないし」
「同質の存在、ということだろうか。まぁ、確かに――僕は化け物ではある」
ふむ、と愛無が言った。
「だが……なんというか、な。否定したい感覚と、申し訳ないような感覚は、常に付きまとうのだ」
「まぁ、おめぇのことをどうこう言うつもりはねぇが」
『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が、ふん、と鼻を鳴らした。
「この街が気に入らねぇのは確かだ。
テセラなんたらがどうなろうと知っちゃこっちゃねぇし、この国がどうなろうとも知ったこっちゃねぇがな。
──気色悪ィバケモンに好き勝手されるのも気に食わねえのさ」
「できれば、天義もテセラ・ニバスも、どうにか守っていただきたものですが」
苦笑するのは、同行していた聖騎士セレスタン・オリオールである。
「ですが、皆さんのことは頼りにしています。このような不正義の街を、許すわけにはいかないのです」
いささか堅物なのだろうか。セレスタンの言葉に、
「そうですね。いつもの不正義でしょう。逆にこちらが断罪して差し上げますよ」
茄子子が頷いて見せた。
「心強く感じます。正しき正義のために、頑張りましょう!」
にこりと笑う彼は、しかしふと真顔に戻ると、
「……ところで、イーリン殿がおっしゃっていたことですが。
女性に薔薇を送るのって良くないのですか……?」
などというので、茄子子は「はい?」ときょとんとした顔をした。
さて。いずれにしても、ここでいつまでも待っているわけにはいかないのは事実だ。『氷の女王を思う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は、うーん、と唸りつつ、人気のない路地から外を見やる。あたりには前述したとおりの『日常の風景』が広がっている。それはいささか奇妙な感覚を、イレギュラーズたちにもたらした。
「とうとう町一つ、飲まれちゃったのかぁ……。
見た目には、何も変わらないように見えるけど……」
「コアとなったワールドイーターの『趣味』で違うらしい」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)が声を上げた。
「しかし、練達の科学者が聞いたらひっくり返りそうな状況だな……たぶん、敵は魔種なんだろうが。こんなことまでできるのか」
「めちゃくちゃだよね……ちょっと、上の方まで飛んでみるね」
ぴょん、と地をけって、壁伝いに上空へと向かう。町並みは、おそらく依然とさほど変わりはないだろう。時折はしるノイズのようなものが、この光景が異常であることをかろうじて主張している。
街区の中心には、大聖堂が建てられているのが見える。建築様式は、天義のそれと変わりはないから、おそらく元々あったものだろう。
「大丈夫か? オデットさん?」
心配げにサイズが言うのへ、オデットは笑ってみせた。
「大丈夫、この辺りならあんまり人がいないからね」
「スラムみてぇなもんだ」
グドルフが言った。
「こういう所には、酔っ払いしかいないもんだ。おめぇが飛んだって、夢かなんかだと思うだろうよ」
「ありがたいね。ほかには――」
くるり、と視点を動かしてみる。『街区の外』を覗き見ようとしても、何かヴェールのようなものが見えて、街区の外は確認できない。『帳』とはこのことだろう。街区を、世界から被象している……覆いかぶさって隠している、ともいえた。
「じゃあ、やっぱり街区ごとに、景色が違ったりしてるんだね」
その情報を聴いた、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が声を上げた。
「確かに、この普通の景色の街の遠くを見たら、火山だったり洞窟が見えたりしたら、いくら何でも騒ぎになっちゃうからね。
やっぱり異変は、街区ごとに起きてる、ってことなのかな」
「おそらく、テセラ・ニバスという巨大な都市そのものを被象する力はないのでしょう」
ふむ、『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)がうなづいた。
「よって、テセラ・ニバスを切り離した、街区という単位でそれぞれを変貌させ、その集合体として一つの被象都市を作り上げる。
リンバス・シティはホールケーキのようなものですね。街区はショートケーキであり、乗っている具材が違うと」
「情報によると」
そういったのは、セレスタンの従騎士であるジル・フラヴィニー少年である。
「街区ごとに核があって、それを何とかすれば、街区をもとの状態に戻せる……ということですが。
正しいのでしょうか?」
「それを確認するのが、我々の実証実験でしょう」
ウィルドが言った。
(中々強烈な違和感ですが……少しだけ、懐かしくすら感じるのは、何故なのでしょうね?
あの黒山羊のような、自分だけが甘い蜜を啜る、くっだらない正義……。
嗚呼、全く持って──気に食わない)
仲間たちがそう話す中、胸中で述懐するのは、『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)だ。ジルは心配げに、ルトヴィリアへと声をかける。
「大丈夫でしょうか? どこかお具合が……?」
少しばかり、気持ちが顔に出ていたらしい、ルトヴィリアは「い、いえ」と上ずった声を上げた。
「なんともないのです……そう、ですね。すこし、き、緊張していたといいますか」
「……英雄様も、緊張なされるのですね」
ジルはそういって、少しだけもじもじとした様子で言った。
「じ、実は僕も……とても緊張しています。セレスタン様を身をもって守らなければならないこともそうですし、こ、このような敵地に潜入するのも初めてでして……」
「あ、そ、そうですか……大丈夫ですよ。ええ。
あたし……は頼りないように見えるかもしれませんが、ほかの方たちは、とても。御強いので」
「ルトヴィリア様も素晴らしい方に思えるのです」
ジルはキラキラした瞳で言った。
「彼の冠位を次々と打ち破る英雄、ローレット・イレギュラーズ……とても憧れます……!」
「え、そ、そうですか? ああ、ええと、困りますね……」
「ジル、あまり困らせてはいけないよ」
セレスタンが苦笑した。
「申し訳ない。まだまだ英雄にあこがれる子供でね。
そのような子を連れまわすのはどうだということもあるが、やはり若いうちから経験はつませておきたい。
彼もきっと、いずれ天義を背負う騎士になるのだから」
うんうん、とセレスタンが言う。なんとも、さわやかな男である。
「まぁ、英雄の話は云々としても」
ウィルドが言った。
「早速調査を始めましょう。確か、核となっているのは聖遺物……でしたね」
「うん。別の所で遂行者たちが起こした事件でもそうだったけど、聖遺物とか、祝福された物品とか、そういうのが核になってることが多いみたい」
焔が言った。
「だから、ここもそうだと思うよ! となると、聖遺物とか、祝福された物品とかがありそうな場所だけど――」
「やっぱり、あの大聖堂ね」
そういったのは、オデットだ。
「中心にあるの。大聖堂。あとは見えそうなのは――お城だけど」
「お城?」
サイズが言った。
「うん。街区の外に、お城が見えるみたい」
「街区の外って、外は見えないんじゃないのか?」
サイズの言葉に、イーリンがうなづいた。
「妙ね。街区の外にあるのに、城が見える? うーん、街の調査をしながら確認してみるわ。
ただ、街区の外ならば、この街区には関係がないと思う」
「そうなると、やはり大聖堂か」
愛無が言った。
「茄子子君。この街区の聖遺物などに心当たりはあるかい?」
尋ねる愛無に、茄子子はうなづいた。
「おそらく、『カトレア司祭の聖錫杖』でしょうね」
「ああ、あれか。確かに、この街区の大聖堂にあったはずだ」
セレスタンがうなづく。
「おとぎ話に何度も聞きましたわね。なるほど、あの聖遺物が」
リドニアも納得した様子でうなづいた。
「なれば、これ程の異変を起こせる核となる理由も納得というものですわね」
「ということは、目指すは大聖堂、でしょうか?」
ルトヴィリアが言うのへ、グドルフがうなづいた。
「目的地がわかってるのは助かるな。こんな気味の悪ィ街、長々とぶらつきたくはねぇ」
「確かに、敵地ですからね。長居するのは、ちょっと」
ルトヴィリアがうなづく。
「あまりぞろぞろと大勢で動くのは目立つわね。事前の作戦通り、二手に分かれて調査を行いましょう」
イーリンが言うのへ、仲間たちはうなづいた。
「嗚呼――胸躍るわね。
何もわからないこの都市そのものが迷宮。
宝もあるなら、やることは一つよ。
潜るわ。
――神がそれを望まれる」
その独白を胸に、一行は、未知なる都市へと足を踏み入れた――。
●異言都市
「本当に気持ち悪ィ街だな」
しばしの探索ののちに、グドルフが言った言葉といえば、おおむねほかのメンバーも想いを同じくするような気持だった。
まずもって、『当たり前の生活を送っている』事が気持ちが悪い。まるで、異世界にでも迷い込んでしまったかのような気持ちだ。
自分たちが蚊帳の外に置かれているような感覚は、まったく、奇妙な感覚がする。不安、とか、そういうものだと言い換えてもいいのかもしれない。自分たちこそが、狂ってしまっているのではないかという、勘違いだ。
「法則性がまるでないわね」
イーリンが言った。
「言葉のよ。人間が話す言葉っていうのには、本来ある程度法則性があって……なんだけど、まるでそういうのが感じられない」
「他の場所で使っている異言もまた、意味不明なことが多いですからね」
ウィルドが言うのへ、イーリンがうなづいた。
「ええ。というか、この異言が、どういう体形で作られた言葉なのかすらわからないもの。例えば、神の気まぐれで作られた言葉なのかもしれない。
そうなると、明日突然、神の気まぐれで、音節からなにまですべて違う法則に代わっている可能性もあるわ」
「あぁ? んじゃ調べるだけ無駄じゃねぇか?」
グドルフがめんどくさそうに言うのへ、イーリンは頭を振った。
「だから面白いんじゃない。もしかしたら、異言って言うのには、そうね、旅人(ウォーカー)たちの言葉の様にいくつも種類があるのかもしれないし」
「調べれば調べるほど、何もわかりませんね。ふふ」
茄子子がほほ笑んだ。
「ですがわかることは一つ――この街区を作った存在は、とても性格が悪いと」
「性格ですか?」
同行していた、ジルが言う。
「ええ。平穏な日常を演じさせることで、そう、自分たちこそが平穏と日常を齎す真なる正義である、と訴えているかのよう。
それを、おそらくはやってくるであろう私たちに見せつけたいのです。そして、あわよくば絶望してほしい。
まったく、性格が悪く、傲慢といえるでしょう」
「遂行者サマエル、という方ですか?」
「以前の遂行者の起こした事件とは、いささか方向性が位置がいますからね」
ウィルドが言う。
「劇場型、と言いますか。自分に酔っているタイプでしょうね、きっと」
「ああ、それはわかるぜ」
グドルフが笑った。
「随分と下らねぇ安酒で酔っ払ってるみてぇだ。ハン。酒くせぇってな」
「それはさておき、街の光景も、以前のテセラ・ニバスと変わらないという点で、やはり『普通』を見せつけたいのでしょう」
茄子子が言う。
「自分に酔っている。その通りでしょうね。自分の正義に酔っている。絶対正義圏、でしたか。気持ちの悪い。
天義の正義が嘘? そんなこと、今更言われても困ります。
もはや彼らの言う偽りの正義こそが天義の正義なのですから。嘘だって、続ければ真実です」
「えっと?」
ジルが少し困ったような顔をするのへ、茄子子はくすりと笑った。
「今のは秘密でお願いします」
「あんまりでかい声で言うなよな。絡まれちまうぜ?」
グドルフが言った。
「いえいえ――我々の言葉など、酔客の妄言としか思われないでしょう」
ウィルドが言う。彼らは、襤褸をまとった『はぐれもの』のような恰好をしている。グドルフの提案だ。例えば、スラムに根差す貧者のような。いくら普通と正義を気取ったところで、そういった『はぐれもの』が生まれてしまうのは世の摂理だろう。ならば、そういったものに化ければ、少なくとも向こうから積極的に接触してくることはあるまい。
「しかし、襲われたのならば、いろいろと試してみたいこともあったのですが」
「できれば、襲われるのは避けたいわね」
イーリンが言った。
「今回は隠密でいましょう……上の方、見た?」
空を見れば、何か黒い影のようなものが飛んでいるのが見えた。影の天使だ。敵によって生み出された怪物。
「あれが見張ってるとなれば、余計な接触は避けたいわ」
「確かに。こちらは数が少ない……フルメンバーならともかく、戦闘は避けたいですね」
ウィルドの言葉に、グドルフが舌打ちをした。
「チッ。こそこそするのは性に合わねぇんだがな……まったく」
「耐えてくださいね、グドルフ様」
ジルが申し訳なさそうに言うのへ、グドルフは「ああ、よ」と手を軽く振って見せた。
「ところで、あちらの方はどうですか?」
茄子子が言う。
「たしか、焔さんや、ルトヴィリアさんのファミリアーと連絡を取っているのですよね?」
「ええ。ちょっと確認してみるわ?」
イーリンがそういって、ルトヴィリアの『猫』へと視線を送った――。
さて、もう一方のチーム。ルトヴィリアは、イーリンのファミリアからもたらされる情報に、こくこくとうなづいていた。
「向こうは順調そう、ですね……」
ルトヴィリアの言葉に、焔はうなづく。
「こっちも順調。さすがに、動物まで異言は話さなかったよ~」
焔が苦笑する。現地で見つけた小動物(ねずみとか)をファミリア―にした焔が、建物内部を探る。ごく普通の一軒家のようだ。中には、当たり前のように人が暮らしている形跡がある。大人の部屋。子供の部屋。おもちゃ。あるいは書物など。
「書物の中身が気になりますね……」
ルトヴィリアが言うのへ、
「時間があるなら、図書館にでも行ってみますか?」
リドニアが言う。
「まぁ、入り口で門前払いを食らう可能性もありますけれど」
「文字を確認したいなら、そのあたりの屋台を見るのもいいだろう」
愛無が言った。
「見たことも理解もできない文字が見える。こんな感覚は、混沌世界に来て初めてだ。めまいがする、というやつになる」
「……あれは数字かなぁ。ゴールド? じゃあ、あの文字がゴールド?」
焔が、むむむ、とうなる。屋台に並ぶ文字も数字も、まるで理解ができなかった。
「そもそもお金の単位がゴールドかも怪しいですわよ」
リドニアが言った。
「ティーチャー・ナーワルにも聞いてみたのですけど、こちらの情報は知らないようなのですのよね。
アドラステイアは、きっとこの件の派生……いいえ、アドラステイアの同じ根っこを持つのが、このリンバス・シティなのですかね?」
「同じ天義で起こった事件だからねぇ」
焔が言う。
「ただ、ほんとに……ここにいるとすごいムズムズするよ。違和感っていうのかな。
きっと、あっちのチームも感じてると思うけど……当たり前に、普通に、異常な光景が繰り広げられているっていうのは、本当に」
心に来るものがある。
「そうだな。俺は、異言に法則性がまったくなさそうなのが気持ち悪く感じるよ。
それに、世界から切断されているような状況なのに、この街の住民は何を食べているんだ……?」
「ワールドイーターがROOの通りなら、この世界の情報を消費してなんらかを生み出しているのだろう」
愛無が言う。
「まぁ、周辺都市も侵食されているということだから、流通も何とかしているのかもしれないが。
焔君も言っていた通り、動物はまとも……ということは、大元の世界のものなのだろうね。家畜とか」
「そう言えば、オデットさん。その、街区の外に見える城、なのですけれど」
ルトヴィリアが言った。
「まだ、見えます?」
「うん。ずっと」
オデットがうなづく。
「この街の中心の方だと思う……まるで自分の存在を誇示しているみたいに、見えるよ」
「あれが、この街の大元なのかもしれませんわね」
リドニアが言った。
「趣味が悪いな。なんだろう、自己愛が強い、みたいなやつか?」
サイズが言うのへ、オデットが苦笑した。
「どうだろうねぇ。でも、自分こそが絶対の正義、みたいなことを言っていたらしいからね。そういう所はあるんだろうね」
「ふむ、耳が痛いな」
セレスタンが苦笑した。
「まぁ……天義にも、そういう所はあるからね」
「ああ、別に天義についてどうこう言ったわけじゃないから」
サイズが言った。
「それで、大聖堂まではどういったらいいんだ?」
話を変えるようにそう尋ねるサイズへ、道を探っていた焔がうなづく。
「大通りは避けたいよね。このまま裏路地を進めば行けると思う。
もともと、大聖堂は町の中心みたいな感じで、いろんなところからアクセスできるようになってるみたいだよ!」
「ということは、このまま進めば問題ないね」
オデットが言った。
「道中はいろいろ確認しながら行こうか。
異言……もそうだし、この建物の材質とか」
オデットが、目の前の何の変哲もない建物、その石造りの壁を触りながら言った。
「普通の石だったり、そうじゃないのが混ざっていたりするし」
「ワールドイーターが作ったやつが混ざってるのか?」
サイズが言う。
「……まさかここで壊して持って帰るわけにもいかないからな。とにかく、大聖堂に向かいながら色々調べよう。
ルトヴィリアさん、イーリンさんに、大聖堂で合流するように伝えてほしいんだけど」
「はい、任せてくださいね」
サイズの言葉に、ルトヴィリアはうなづいた。
●合流と、戦闘
「まるで分らないということが分かった、でしょうか?」
茄子子が言う。大聖堂の入り口には、不思議と人の気配がなかった。まるで、ここにあるものを避けているかのような風にも感じられた。
「でも、それは大きな収穫よ」
イーリンが言う。
「つまり、確実に、異常、ってことが分かったの。
世界法則にのっとったものではなく、何らかの手が加えられている、ということが」
「崩れないバベルの影響を受けないとするならば」
サイズが言った。
「それは、混沌法則に打ち勝つような力ってことなのか? 魔種っていうのは、そんなに……すごいのか?」
「あんまりにきにしすぎないでね、サイズ」
オデットが言った。
「ゆっくり、ね?」
「……ああ」
サイズが頭を振る。
「さておき、ここが終点でしょう」
ウィルドが言う。
「鬼が出るか蛇が出るか。何か出るのは確実でしょうが、行きましょう」
その言葉に、仲間たちはうなづいた。
果たして大聖堂の中に入ってみれば、どうにもピンと、冷たい空気が張り詰めているのがわかる。一目でわかる、異常な雰囲気。一歩進めば、冷気のようなものが、ゆっくりと、体の芯を冷やしているように感じられた。
「……あれ」
焔が指さした。
「あれが、聖錫杖、っていうやつ?」
焔の言う通り、大聖堂の壁には、一本の錫杖が飾られていた。周りには、何かひどい、ノイズのようなものが走っていた。街を包む、ノイズ、その終端というか、発生源のようなものであると、イレギュラーズたちは直感的に認識していた。
「……くるぞ。構えたまえ」
愛無が言う。
「まったく。現実と言えど、気配は変わらないのだな。ワールドイーターというものは」
呟きと同時――錫杖を、包み込むように影が生み出された! それはどぶり、と泥の様に吹き出し、錫杖を飲み込む! 泥のような影は、そのままブクブクと膨れあがり、巨大な一滴の影となった。ぼぢゃん、と音を出して、影が地面に落着する。すると、間髪入れず、影は巨大な怪物のような姿を取った。例えるなら、怪獣、恐竜、であろうか。巨大な、狂暴な、凶悪な、怪物――。
轟! 影の怪物が吠える! 同時に、壁に設置されていた三体の天使像が、これまた泥のような影に包まれた。天使像は泥に溶けると、すぐに影の天使へと変貌する! 影の天使は、汚泥の槍を構え、こちらにポイントした!
「派手な登場ですね」
茄子子が言った。
「なんとも――おおもとの遂行者の趣味らしい。
そうそう、ジル様、危ないので下がっておくことをおすすめしますよ」
「ジルさんは、セレスタンさんを、守ってあげてください。
セレスタンさんは、後方で援護を、お願いします」
ルトヴィリアがそういって、構えた。セレスタン、ジルがうなづく。
「すまないが……」
「いいえ、こちらも全力を出したいものでしてね」
ウィルドが言う。
「応。こそこそしててストレスってのが溜まっててな。ここからは全力で暴れさせてもらいてぇんだ」
グドルフが、にぃ、と笑った。
「やるぞ、おめぇら。このくそみてぇな街とも、こいつでおさらばだ!」
グドルフが吠えた――同時! ワールドイーター、イレギュラーズ、動き出す!
「さて、ワールドイーターか。この世界の君たちの味、試させてもらうか――!」
愛無がとびかかる! 先頭、影の怪物へとむけて! その手を、鋭い爪のごとく変貌――同時に殴りかかった! だが、影の怪物は、その体表を固く変化させ、愛無の攻撃を受けててみせる!
「ほう――」
感心したようにつぶやきつつ、愛無は二撃目を加える。怪物は吠えると、己の鋭い爪で応戦した。がぎぃん、と爪同士がぶつかり合い、悲鳴を上げる。
「……聖なる、というものは感じないな。純粋に、聖遺物をエネルギー源としているイメージか」
「だったら、奴を倒せば聖遺物は解放されるのか?」
サイズが言う。
「わからないけど、やってみる価値はあるか……!」
鎌による、斬撃――怪物の体に、一閃が走る。ぎぃ、と怪物は吠えた。だが、致命打には遠い。怪物が吠えるのに反応して、影の天使が飛翔する! 手にした槍を次々と投擲! 地面に突き刺さったそれが、影のウェーブを発生させ、周辺に衝撃を与える!
「ちっ……」
ウィルドが舌打ちを一つ。
「ですが、外にいたものとは比べ物にはならないですね。こちらの方が、ええ、格が落ちる」
ダメージを瞬時に計算し、ウィルドがそういった。どうやら、外を警戒していた影のそれとは明確に強さ(レベル)に差があるようだ。取り巻きの雑魚、といってもいいだろう。
「まとめて薙ぎ払ってしまうのがいいでしょうね」
「では、その間、ワールドイーターは私が」
茄子子が言った。足止めをする。この身をもって。
ワールドイーターが、吠えた。強烈な爪による斬撃――いともたやすく、茄子子はそれをいなして見せた。茄子子をとらえるには、ワールドイーターは――遅い。
「あらあら、そんなにじゃれついて。私は隙だらけなんですから、もっとちゃんと狙ってもいいんですよ」
挑発するように言う言葉に、ワールドイーターは得体のしれない言葉で返した。ふむ、と詰まらなさそうな顔を、茄子子はして見せた。
「ああ、言葉が通じないんですよね……本当に、うっとうしい」
「影の天使を落とすわ!」
イーリンが言った。オデットがうなづく。
「任せて! 熱砂の精よ、力を貸して!」
オデットが手を掲げると同時に、影の天使に向かって、強烈な砂塵が吹き荒れる。熱砂の精による砂塵の檻は、影の天使たちを打ちのめし、その動きを止めさせた!
「とどめ、いくよ!」
焔が、その炎槍を構えてて突進! まさにその前身のばねを使い、まさに一筋の焔の槍と化し、強烈な突きの一撃を、影の天使に叩きつける! 轟! 炎は一筋の軌跡を描き、影の天使を貫通した。甲高い悲鳴を上げて、影の天使が消滅!
「よし、このペースで行こう!」
「わかりました!」
ルトヴィリアが頷き、
「気に入らないんですよ、お前らのやり方が!」
その触媒を掲げた。その先端から解き放たれた炎は、何もかもを焼き尽くす黒の炎! 影の天使の影にも負けぬほどの真っ黒なそれは、その身の内に跡形も残らぬほどに、影の天使を飲み込んだ。ぎゅいおおお、と悲鳴をあげながら、その黒の炎のうちに影の天使が消滅する!
「蒼熾の魔導書、起動」
静かに、リドニアが声を上げた。
「これ終いよ、偽りの天使気取りが」
リドニアが放つは、荒れ狂う炎と雷。煉獄の責め苦。意思持つ怒りは裁きと破滅を齎すために、偽りの天使を貫いた。ばぢばぢ、と強烈な雷の音が鳴り響き、すぐにそれを炎が飲み込む。期せずして、放たれた三つの炎。焔のそれ。ルトヴィリアのそれ。そしてリドニアのそれ。何れもその性質は違えど、強烈にして鮮烈な炎であった。そしてその三つの炎が、それぞれ影の天使をこの世より焼き払ったのである――!
「あとは、その化け物だけです」
リドニアの言葉に、茄子子が後方へと飛びずさった。
「もう少し遊んであげてもよかったですが、ここまでのようです」
「足を止める!」
入れ替わりに飛び込んだイーリンが、その剣を抜き放った。先の先。制圧の剣。動きを封じる。封の一撃――。
その虚を突かれた一撃に、ワールドイーターが動きを止めた。止めざるを得なかった――そこへ飛び込んできたのは、無頼の一撃。
「へっ……何がワールドイーターだ、舐めやがって。
喰った奪ったは、山賊の専売特許だぜ!?」
グドルフだ! その斧の一撃を、ふかく、ふかく、叩きつける! ぎゅおおおお、とワールドイーターが悲鳴を上げた。
「ケッ、悲鳴だってのは伝わるのかよ。異言ってのはどうした。
まぁ、いい。おめぇらには伝わらねぇだろうが――」
グドルフは、もう一度斧を構えて――。
「正義だなんだ、くだらねえ。結局最後に必要なモンは──こういうバケモンをぶちのめせるだけの、圧倒的な力だけさ」
振り下ろした。
その言葉通り。
圧倒的な、暴。
圧倒的な、力。
それだけが、この世界唯一の真実であり、絶対正義であるとでもいうように。
叩きとおされる!
そして、ワールドイーターが迎えるのは、死という、この世にある一つの絶対事実だ。
ばぎり、と、その陰の体のあちこちにひびが入る。ばきばきとひびがはいり、そして、くだけ、こぼれ、くちるように、ばらばらと、ばらばらと、体が零れ落ちていく。
すっかり影の破片が地面に転がり落ちて、すべてどろりと溶けて消滅した。中空には、聖錫杖が浮かんでいたが、それもすぐに地面に落下した。
落下した聖錫杖は、まるでガラスが粉々に砕け散る様に、ばぁん、と音を立てて砕けて散ってしまった。まるで、力をすべて使い果たして消滅したかのようだった――。
同時に。イレギュラーズたちは気づいた。世界の彼方此方を覆っていたノイズが、まったく、消えていることに。そして、急速に世界が音を取り戻したような感覚を覚えて、気づけば、あちこちから『理解のできる言葉が響いていることに気が付いた』。
「切除できたの?」
焔が言った。
「もとに、戻ってる?」
「間違いない」
セレスタンが言った。
「作戦は、成功です――」
切除、完了。情報と、推測の通りであった。コアを破壊すれば、奪われた町は取り戻せる。これが、反撃の一手に間違いなかった。
「街の様子は後で見に行きましょう。みなさん、傷ついていますから、今は一度帰還しましょう」
ジルがそういうのへ、イレギュラーズたちはうなづいた。
(……遂行者、か。何を企んでるやら)
茄子子が胸中でつぶやく。
(やっとアドラステイアを排除したと思ったら、次は異言都市? 次から次へと、本当に面倒。
ポッと出のよく分からない集団がなんでこうもタイミング良く現れるんだか。これも運命ってやつなのかな。クソが。
……天義は私のものなのに。私が最初に目を付けてたのに。ここまでくるのに13年もかけたんだから。これ以上はもう待てないよ。
シェアキムは私のものだし、天義を滅ぼすのは私だ。誰にも邪魔なんてさせないから)
そう、胸中で呟きながら――。
茄子子はゆっくりと息を吐いた。
テセラ・ニバスの空気は、現実の味がした。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
調査と、切除、完了しました。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
異言都市への潜入。そして、切除。
●成功条件
コア・ワールドイーターの撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●状況
異言都市(リンバス・シティ)。それは、天義の『もう一つの聖都』と呼ばれるほど巨大で栄えていた都市『テセラ・ニバス』が、遂行者と呼ばれる謎の敵により変質させられた都市である――と目されています。
内部は街区ごとに様々な姿を見せており、その街区ごとに、核となるワールドイーターや影の天使などが存在するようです。
さておき、皆さんはこのリンバス・シティの入り口の一つ、モルト・レネンティア街区へと潜入しました。
この街区は、『比較的、平常な街の様子を保っており』、一見すれば、平穏な街にも見えます。
ですが、街のあちこちでは、まるで無理やり現実を被象したが故にノイズのようなものが走っており、明らかに『異常事態である』事は実感させられているのです。
この街区では、『異言をはなすもの(ゼノグロシアン)』たちが普通の生活を送っており、『異言(ゼノグロシア)』を話しながら、日常生活を送っています。
皆さんはこの街に潜入しています。まるで自分も『祝福を受けた人』のようにふるまい、目立たず、潜伏し、街の調査と、核であるワールドイーターを発見、撃破することになります。
メタ的な情報ですが、核は街区にある大聖堂の聖なる物品、『カトレア司祭の聖錫杖』になります。ワールドイーターはこれを取り込んでいるため、この大聖堂を目指せば、コア・ワールドイーターと接触できるでしょう。
ただし、漫然と進んでいては、ゼノグロシアンや、翳の天使などに行く手を阻まれるかもしれません。
潜入調査中です。それだけは忘れないでください。
●エネミーデータ
ゼノグロシアン ×???
異言をはなすもの、たちです。この街区にいるものは、元々の住人が、狂気に当てられて異言を話すようになってしまったタイプです。
そのため、街区を解放すれば、そのまま正気に戻ることでしょう。
一見すれば平常に生活を送る一般市民ですが、前述のとおり狂気に陥っています。偽りの祝福は彼らの凶暴性を増加させ、力をも増加させているでしょう。
一般人と侮って戦闘に入っては、数と暴力で負けかねないということです。
なので、可能な限り戦闘を避ける方向で進みましょう。
影の天使 ×???
ゼノグロシアンと戦闘になるなど、何らかの『異常』を察知した場合、どこからともなく飛来する、影で作られた天使のような怪物です。
それぞれ、このシナリオでは中ボスクラスの戦闘能力を持っています。皆さんを相手に、3体くらいで襲い掛かってくる程度の強さのイメージです。
主に神秘攻撃を行ってきます。火炎系列のBSなども使ってくるため、回復などの対策を用意しておくといいでしょう。
コア・ワールドイーター ×1
カトレア司祭の聖錫杖を飲み込み、この街区を被象する、核の怪物です。
巨大な影の怪物のような姿をしており、強力な物理攻撃と、タフな体力による純アタッカーといったイメージです。
取り巻きとして、影の天使(弱)を三体ほど連れています。これはメタ的なことを言えば、上記の影の天使の、取り巻き雑魚様にパラメータを調整したユニットです。
影の天使(弱)に背後から攻撃させ、コア・ワールドイーターはその隙をついて貪欲に前に出て攻撃をしてくるでしょう。
盾役などでしっかり受け止めてやるのがいいと思います。
●味方NPC
セレスタン・オリオール
ジル・フラヴィニー
天義より派遣された聖騎士セレスタンと、その従騎士のジルです。
セレスタンはそれなりに強力なユニットで、ジルは半人前の騎士といったイメージ。
ジルは健気にセレスタンや皆さんの力になろうとしますが、力は足りないようです。
彼ら二人は自分の身なら守れます。また、ジルは簡単な探索用のスキルや、回復スキルなども装備しているため、「あるくやくそう」とか「ないよりましなレーダー」くらいに扱うといいかもしれません。
セレスタンは戦闘能力はありますが、扱うなら指示を出してあげるとよいでしょう。そうでなくても、邪魔にならないように頑張って活動しています。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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