シナリオ詳細
<デジールの呼び声>儚き菱へ<琥珀薫風>
オープニング
●
遠くに見える水平線は何処までも続いている。
この海の先には故郷である豊穣の地があるのだろう。
青い海と白いコロニアル様式の建物に囲まれていると胸の不安が少しだけ軽くなる。
浅香灯理はベランダの欄干に手を置いて蒼穹の空を見上げた。
一羽の鳩が灯理の視界の端に流れ込む。
ベランダの上空を旋回した鳩はゆっくりと灯理の手に降り立った。
鳩の足には小さな筒が着けられており、その中から灯理は紙切れを取り出す。
「ようやく見つけたか……」
それは豊穣に残した家臣からの便りだった。
『――鳥籠ノ黒翼』
そう書かれた紙切れを、灯理は掌から出した炎で燃やす。
灯理は深い深呼吸をして、拳を握り締めた。
このシレンツィオに来る事が出来て良かった。
親友である『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)の子供みたいな笑顔を久しぶりに見る事が出来たのだから。当主を継いでからというもの彼は難しい顔ばかりしていた。
遮那には青い空を自由に翔てほしいのに。
だから、このシレンツィオで屈託の無い笑顔ではしゃぐ遮那を見て灯理は安心した。
「やっぱり、君には大空が似合うよ、遮那……」
天香邸の執務室に閉じ込められている窮屈な彼は本当に可哀想だった。
「でも、大丈夫……もう心配しなくていい」
小さく呟かれた灯理の言葉は青い空に消える。
――――
――
「何? 先に帰るのか灯理よ」
荷物を纏めていた灯理に遮那は驚いた様子で尋ねた。
遮那の後には『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)と姫菱安奈の姿も見える。
「うん、向こうも心配だしね。一足先に帰って様子を見てくるよ。君が帰って来る前に」
朗らかな笑顔で旅行バッグを担いだ灯理は遮那とルル家を見つめた。
「ルル家殿、遮那をよろしくね……じゃあまた」
「はい! お任せください! 灯理殿も道中気を付けて」
手を振って見送るルル家の隣で遮那は琥珀の瞳を揺らす。
何故だろう、背を向ける灯理が遠くへ行ってしまうような焦燥感がある。
豊穣に帰ればきっといつも通りの笑顔で迎えてくれると確信はあるのに。
どうして、こんなにも怖く感じるのだろう。
「……灯理っ!」
思わず引き留めてしまった遮那の手を、ぱちくりと見つめる灯理。
「ん? どうしたの遮那。もしかして、先に帰るのが寂しいのかい?」
「いや、そんな事は……」
視線を落す遮那を灯理は優しく抱擁する。背中をぽんぽんと叩いてあやすように。
「大丈夫。心配しなくて良い。君達の笑顔は僕が守ってみせるよ」
「何を……」
「じゃあ、またね」
別れの言葉を残し、灯理は遮那の元から去った。
大切なものが、零れ落ちて行くような感覚に、遮那は身を震わせた。
●
灯理が去ってから一週間が経った昼下がり。
遮那達はフェデリア島総督府、ローレット支部へと足を運んでいた。
「例の『灰の魔人』の足取りが掴めましたわ」
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はテーブルの上に資料を広げる。
先日、遮那達はフェデリア島近郊の小島で『灰の魔人』と称される少女に遭遇した。
白百合清楚殺戮拳の開祖。『彷す百合』咲花・香乃子と記された文字を咲花・百合子(p3p001385)は真剣な表情で追う。
「あの時の、か」
百合子の隣で資料を覗き込むセレマ オード クロウリー(p3p007790)は彼女との戦闘を思い返していた。
圧倒的な戦力でセレマを何度も『殺した』相手だ。その時は逃げるのがやっとだった。
拳を握り締めた日車・迅(p3p007500)は香乃子が纏う死の匂いを思い出す。
「インス島ですか……」
イレギュラーズ達が調査した結果、『深怪魔』は『悪神ダガヌ』によって生み出される怪物であり、代々『竜宮』の乙姫がその封印を担ってきていたのだということが分かったのだ。
その悪神ダガヌの本拠地があるインス島を一斉攻撃し、玉匣による再封印をより強固なものとする。
それが竜宮の乙姫がローレットに提案した作戦。
されど、作戦決行の直前竜宮が再び深怪魔たちに襲われたというのだ。
この緊急事態に動けるのはイレギュラーズだけ。
「その最中に『灰の魔人』の居場所も突き止めたというわけだな」
遮那の言葉にヴァレーリヤが頷く。
「では、島を二手に分れて探索し見つけ次第合流という形だろうか」
島の大まかな地図は当てにはならず、現地に行って確認する他無いのが現状。
「まずは相手を知らねばならぬからのう。以前会った時よりも此方の人数は多い。準備も万全なれば、戦えるであろうしな、頼りにしているぞ神使たちよ」
遮那はイレギュラーズに信頼の眼差しを向けた。
――――
――
赤い雫がぽたりと落ちて地面に染みを作る。
息遣いは荒く、苦悶の声が喉から漏れた。痛みが熱を帯びて全身に広がる。
「生意気に菱ですか。それも刀を使うとは……」
白いセーラー服の少女が血に伏した姫菱安奈の頭を踏んだ。
風に靡く黒髪の間に赤き慟哭を纏わせた種族美少女『彷す百合』咲花・香乃子であった。
「……逃げ、ませ、早く……ッ!」
安奈は香乃子の足を掴み、遮那達へ叫ぶ。
「だが……!」
「遮那くん、駄目ですッ! ここは一旦、皆と合流しましょう」
此処で逃げなければ遮那やルル家の命が消えてしまう。
安奈はその命を賭して、助かる可能性に望みを抱いた。
去って行く遮那達を一瞥したあと、香乃子は安奈の頭を掴み、顔を近づける。
スカートのポケットから取り出した赤い種子を安奈の腹の傷に埋め込んだ。
根を生やした種子は成長し、やがて花咲くように赤黒い目玉を開く。
「殺せ……ッ、ぁぎ、ッ」
「……美少女は全て殺しますよ。でも、効率的に行きたいではないですか?
貴女を此処で捕まえていれば彼らは必ずやってくるでしょう? つまり貴女は餌です。
その植えた種は貴女を侵食し蝕むでしょう。存分に鳴いて下さい。呼んでください。
主の名を。友の名を。男の名でも良いですよ。大切な人の名を叫びながら……」
「誰が……ッ!」
乱れた髪が地に落ちる。体内で蠢く種に安奈の意識が遠のいた。
- <デジールの呼び声>儚き菱へ<琥珀薫風>完了
- GM名もみじ
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年10月10日 22時11分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●
声が聞こえる。
波の音と男の声。
刃が重なり、離れ、また重なる。
これは記憶だ。
浜辺で、『忠継』と手合わせした時の風景。懐かしい。
あの頃はただ、背を預け目の前の敵を打てばよかった。
何の恐れも無く、前だけを見ていられたのに。
どうして、刀(じぶん)は守るべき者の血を啜るのか――
何故。その問答に応える背は何処にもなくて。
「まさかこんなに早く役に立てる機会が来ようとはね」
『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)は苦しげに眉を寄せる『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)の肩へそっと手を置いた。何事も無ければいいと願っていたのだが、運命は遮那に過酷な道を歩ませたがっているのだろうと手に力を込める。
「だけど安心して、俺達がいる。それに、黙っていられないと言ったのは俺のほうからだからね」
「史之……すまぬ」
「謝らないで。今は頭を垂れるよりも前を向くべきだからね」
「ああ、そうだな」
遮那は史之の言葉に顔を上げた。
その隣で『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)はギリと唇を噛みしめる。
腹の奥から怒りがわき上がった。
遮那を助けるため安奈を置いて逃げるしかなかった自分の弱さにだ。
「絶対に……絶対に助けます!」
「ルル家」
幾度となく『家族』を失った遮那の思い出をこれ以上壊させない。
ルル家は遮那の手をぎゅっと握り締める。
「もう二度と、遮那くんに悲しい想いをさせてなるものですか!」
遮那は強い意思を秘めたルル家の緑瞳を見つめ「ありがとう」と頷いた。
種族美少女であるという事は些末な事で、その所業こそ見過ごせないものだと『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は浜辺で待ち構えて居る『彷す百合』咲花・香乃子を見据える。
香乃子は自分達が目の前に出てくるのを待っているのだ。
それは安奈を人質にして、もう一人の種族美少女である『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)をおびき出す為。聞き及んでいた種族美少女の特質とは異なるものだと錬は考えを巡らせる。
清廉潔白とは程遠い歪んだ思考。花を纏えないのはその歪み故なのだろうか。
懸念はもう一つある。遮那が前線に出ることだ。
遮那は豊穣でも名のある貴族の当主だ。天香に以前程の権威は無いが、それでも豊穣での立場を考えると前に出て欲しくない。されど、状況はそれを許さない。なればこそ錬は遮那を戦場に出す決断をする。
「戦えるよな、遮那」
「ああ……安奈を助ける為にも共に戦おうぞ」
遮那の声を聞いた『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)は誰も死なせないと巨斧の柄を握り締めた。
敵味方問わず殺させない。香乃子に着いているダガヌチや深怪魔は流石に別であるけれど。
必ずしも不殺を貫く事はないが、それでも。
「……最初からできない、やらないなんて理由はあるはずもないからな」
誰一人死なせやしないとエイヴァンは強く決意するのだ。
「あの島で見たのはただの悪い夢かと思っていたのだけれど……」
溜息を吐いて視線を上げた『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は、香乃子の前で苦しげに膝を着く安奈を見つめる。
「こんなことになるのであれば、あの時、無理にでも倒しておくべきでしたわね」
夏の日。ヴァレーリヤは一度香乃子と対峙したことがあった。
戦闘の準備をしていなかったヴァレーリヤや『疾風迅狼』日車・迅(p3p007500)は、香乃子の圧倒的な強さに一旦の撤退を余儀なくされたのだ。
「安奈殿……何という事でしょう。苦しいと思いますが、もう少し耐えてくださいね」
必ず助けると迅は百合子へと視線を送る。それを受け取った百合子も大きく頷いた。
「安奈殿は凄く強い。吾も何度も助けられたのだ。
だから、だからこんな所で終わりになってほしくない! 負けてほしくない!」
感情が胸の奥から溢れ出す。安奈と綴った思い出が百合子の脳裏に浮かび上がっては消えた。
そんな百合子の背を『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は緩く叩く。
「ボクは怪物との取引が本職だがな……なんだ、あれは」
以前戦った時よりも、禍々しさが増している香乃子の様相。
「怪物が怪物の手を借りるのは反則だろ、クソがよ!」
ダカヌチを取り込んだ香乃子の悪性は跳ね上がっているのだろう。
「やれ。前から思ってましたけど。美少女って呼び名に対して、やること言うこと、随分と剣呑過ぎやしないかしらねえ?」
百合子の隣に立った『風と共に』ゼファー(p3p007625)はその頬を指でつつく。
それは百合子を落ち着かせるための彼女なりの優しさであった。
「ま、其れは其れ。あっちがどうかは兎も角、あの子はお友達なんでしょう?
助けるべき相手が、目の前にいるのだ。全力で戦い救い出すのがイレギュラーズのやり方ならば。
「だったら此処に来た意味があるってもんよ」
ゼファーの言葉に『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)も頷く。
「むずかしい事は分からない。でも、あれを倒せばいいのだろう?」
アーマデルは金色の瞳を香乃子へ向けた。
「ええ、行きましょう! 安奈殿を助ける為に!」
大きく息を吸い込んだ迅は真っ先に砂浜へと駆け出す。
●
「ははっ、ようやく来ましたね。怖じ気づいて逃げ出したかと思っていましたよ」
柔らかな香乃子の笑顔は、いっそ禍々しく。忌避感を覚える物だ。
ずるりと這い上がってくる深怪魔が砂浜を覆う。
迅は其れ等が此方の進路を塞ぐ前に安奈の元へ走り込んだ。
安奈は身軽な剣士だ。回避も高いだろうと踏んだ迅は氷を孕んだ拳を何度も繰り出す。
いくら回避が高い安奈といえど、繰り返される拳の乱打を避け得ぬ場所が出てくるものだ。
「安奈殿、申し訳ない!」
「ぐ……っ」
蹌踉けた安奈に迅の表情が歪む。それでも迅の拳は揺るがない。
これは彼女を救うための戦いなのだから。
セレマはエイヴァンに視線を送る。現段階であれば、セレマが『灰の魔人』香乃子の前に対峙する事が出来るだろう。
「こっちは大丈夫だ。行け」
「うん、危なくなったら交代お願い」
短い言葉でお互いのやるべき事を把握する。それは、幾度となく死戦をくぐり抜けてきたイレギュラーズだから出来ることだ。
セレマは美少女(百合子)に何度もサンドバッグにされた経験がある。
己の戦法が異常なまでに息切れが早い事は把握しているのだ。
されど、この状況に限っていえばそれがセレマの強みであった。
武術とは『してはならない動き』『するべき動き』を型にはめるものだ。
攻勢時の構え、呼吸の間、視線の動き、それを殺し合いの距離で観察してきた。
白百合清楚殺戮拳を受け続けてきたセレマだからこそ。香乃子の狙いを読み、先回り出来る。
これは香乃子がセレマの不死性の絡繰りに気付くまでのその場凌ぎにすぎないだろう。
されど、惑わすには大いに有効である。
以前の情報では必殺を持ち合わせて無かった香乃子だ。
セレマに任せていても問題は無いとエイヴァンは判断したのだ。
されど、それは古い情報に過ぎない。用心に越した事はないとエイヴァンはセレマを見遣った。
香乃子の前に立ちはだかるセレマをフォアレスターが追いかける。
「おうおう、邪魔するもんじゃねーぞ!」
そのフォアレスターの眼前にエイヴァンの巨大な斧が振り下ろされた。
ギィギィと怒りを露わにするフォアレスターがエイヴァンに槍を突き出す。
されど、エイヴァンの分厚い皮はフォアレスターの槍先を跳ね返した。
「はは! 全然効いてねぇんだよ! ほら、どうしたお前らの攻撃はそんなもんか!? 海の中を漂ってるだけの生っちょろい身体してるからじゃねーのか?」
エイヴァンは己の胸板をバンと叩く。
「どいつもこいつも弱い。俺みたいに強いヤツはいないのか!」
覇気のあるエイヴァンの声が砂浜に響き渡った。
その声を上空で聞いたのはアーマデルだ。空を飛ぶエピゴウネはその性質上、頭上を取られると反撃の余地がない。アーマデルはそれを狙いエピゴウネの上を取った。
「案外簡単に取れるのだな……それだけ防御は弱いと」
頭上から降ってくるアーマデルの声に、エピゴウネは暴れ回る。不快感を示し、アーマデルの上を取ろうとぐるぐると上空で旋回を始めた。
アーマデルは追いかけてくるエピゴウネを一瞥する。
どうやら作戦は上手く行ったようだ。能力や生態を考慮すれば陸地に打ち上げた方が良さそうだが、とアーマデルは砂浜を見下ろした。
「だめだな。ここに落せば仲間を巻き込む」
海の上に落す方が安全であろうとアーマデルは判断する。
対峙するエピゴウネは頭上を取られまいと跳ね返り、アーマデルに体当たりを仕掛けた。
巨体からの追突はそれだけでかなりのダメージがある。軋む身体を翻したアーマデルは体勢を立て直す。
「俺は能力は半端だが、お前達を始末するまでは倒れない。それに、繰切殿の侵食の方が余程痛いぞ?」
真性怪異からの侵食は傍に居るだけで『パンドラ』が削れていくもの。
アーマデルは口元の血を拭き、剣を鞭のように振った。
「屍拾いにやってきたの? あいにくと君らの分はないよ。だって死ぬのはそっちだからね」
アーマデルの作り出した隙を史之が効率良く叩く。
自由に動き回るエピゴウネを狙い撃つにはアーマデルとの連携が不可欠だ。
「それに、動きを封じてしまえばどんなに大きい敵でも怖く無いんだよ」
「……たしかに」
史之が叩き込んだ刀から生じる死の領域。
相手をねじ伏せる斬砕の檻だ。
血を拭きだして高度を落すエピゴウネにアーマデルは追撃を重ねる。
エピゴウネの体力は不明だが、爆発することを考えれば落すべきは海だ。
「こっちだ、デカイの……」
アーマデルの刃がエピゴウネに命中し、巨体が海面に叩きつけられ再び浮上してくる。
その上空をリトルワイバーンに乗った錬が駆け抜けた。
海に落ちて、怒りを鎮め正気に戻ったエピゴウネを引きつけるためだ。
より多くのイレギュラーズが巻き込める浜辺上空へと移動を始めるエピゴウネ。
錬はその前方上空へワイバーンで飛ぶ。
「なあ、エピゴウネをフォアレスターに落せないか?」
追いかけてきた史之とアーマデルに錬は問いかける。
「狙って落すのは難しそうだね。地上で戦ってるエイヴァンさんたちに危険が及ぶからね。まあ、エイヴァンさんなら大丈夫な気もするけど……とても強そうだし。でも、安奈さんや遮那さんが怪我してしまう」
「そうだな。海に落す方が被害を抑えられる」
史之の言葉にアーマデルも頷く。
「じゃあ、今度こそとどめを差して海に落そう。さっきの攻撃で随分と弱ってるみたいだからな。二人とも協力してくれ」
「わかった」
錬は史之とアーマデルを連れて、エピゴウネの視界を撹乱した。
目の前を左右に揺れ動く史之とアーマデルに気を取られ、エピゴウネは苛立ちを覚える。
その苛立ちが頂点に達した時を見計らい、錬は呪符を取り出した。
五行の循環。相克の魔力を宿した呪符が空に浮かび上がる。
手にした杖と盾に力が巡り、迸る魔力の奔流が巨大な斧となりて錬の眼前に現れた。
「覚悟しろ、俺の斧は重いからな」
天高く掲げられた魔力を帯びた斧がエピゴウネへと振り下ろされる。
「ギギギィァァ――――!」
肉が割け骨が砕ける音とエピゴウネの断末魔が響き渡った。
――――
――
「深怪魔の排除を第一に考えましょう。包囲されてしまっては勝てる戦いも勝てませんものね」
ヴァレーリヤは敵の密度が少ない場所を移動しながら戦場を見渡す。
エイヴァンがフォアレスターを引きつけ、セレマが灰の魔人と対峙していた。
上空では史之、アーマデル、錬がエピゴウネを相手している。
おそらく傷の具合を見てもエイヴァンとセレマの負担が大きい。
ヴァレーリヤは彼らの元へ向かうフォアレスターを横から殴り付けた。
「この先へ行くなら、私達を倒してから行きなさい!」
深怪魔に邪魔などさせないとヴァレーリヤはフォアレスターを睨み付ける。
メイスから伝わってくるぬめりが、彼らが水生生物であると物語っていた。気味の悪さに背筋が震える。
「うう、何だか体力というか精神力が削られる感じがしますわ」
ヴァレーリヤはフォアレスターを見遣り眉を寄せた。
その向こうに見えるゼファーにヴァレーリヤはアイコンタクトを送る。
「ゼファー! エイヴァンの援護をお願いしますわ!」
「任せてちょうだい!」
エイヴァンが受け持つフォアレスターに向かってゼファーは槍を突き入れた。
目の前に突然現れた長い槍にフォアレスターの注意が逸れる。
「さあ、一緒にダンスでも踊ってくれるかしら?」
ギイギイと歯を鳴らした数体のフォアレスターはエイヴァンからゼファーへと攻撃の手を移した。
ゼファーは敵の攻撃を槍の柄でいなす。
不敵に微笑むゼファーは砂を巻き上げフォアレスターの怒りを更に加速させた。
「ということで、そこのポニテガール? さっさと帰ってらっしゃいな!」
ゼファーは道が拓け安奈の元へ向かうルル家と百合子の背を一瞥する。
「こっちは任せてよ。アンタの大事なものは守ってみせるからさ」
安奈が守りたい遮那を自分達が守るから。だから、安心してほしいとゼファーは声を張り上げた。
「……囚われのお姫様なんて柄じゃない、って気分かもですけど。まあ、偶にはいいんじゃない?」
●
声が聞こえる。
誰かが自分を呼ぶ声だ。
聞き覚えのある少女たち。
――敵であるならば、倒さなければならない。それが主君の友人であってもだ。
忠継はそう言った。敵ならば倒せと。
けれど、震えるのだ。拒絶するように手が震える。
抗うなと、誰かの声がした。何も考えず目の前の敵を斬れと――
「安奈殿、お待たせしました! 少々手荒になりますが……すぐにお助け致します!」
ルル家は叫んだあと、遮那へと振り返る。
安奈を救出するまでは深怪魔を相手取ってほしいというルル家に遮那は一瞬だけ憂う瞳で視線を落した。
それはルル家が感じた『悔しさ』と同じもの。自分にもっと力があれば共に戦う事が出来たのに。安奈を救う事が出来たのに。
その悔しさを感じ取ったルル家は遮那の手をぎゅっと握る。
「大丈夫です! 安奈殿は決して死なせません!」
だから、心配しなくていい。必ず助けてみせるからとルル家は『笑顔』を見せた。
「拙者にとっても安奈殿はもう家族のようなものですから!」
駆け出したルル家の前には百合子の姿がある。
「安奈殿! 天香の双剣、その一振りが貴女だ!」
世界線を手繰り寄せる。最適解を導き出す。それがこの拳に込められた想い。
最も安奈を助けられる道筋を掴み取るための境地。
「貴女は絶対生き残らねばならぬのだ! 後の事を任されたのだろう!!
――こんな所で負けるのは許さぬぞ!」
揺らいでいた安奈の瞳に光が一瞬だけ戻る。
腹の傷から首に移動した寄生生物は赤黒い瞳をギョロりと覗かせた。
声が聞こえていないわけではないが侵食によって意識が混濁しているのだろう。
安奈はルル家と百合子を相手に刃を走らせる。
「こんな時に出し惜しみなどせん! あの時には劣るが……これが今の全力である!」
魂を込めた拳。連撃と星の煌めきが安奈の身体を撃つ。
「吾はあの時貴女に忠継を切らせた責任を共に背負う覚悟がある!」
「……ただ、つぐ」
ぶるぶると震えた安奈は砂を蹴り飛び上がった。
距離を置いた安奈は痛みに頭を振りながら刀を鞘に収める。
それは菱葉ポニテ抜刀術の一の型であった。
美少女としては平凡な安奈が積み重ねた極地。
間合いに入り込めば、地面が血で染まる決死の領域だ。
背後に回り込んだ迅は唇を噛みしめる。ここを一歩踏み込めば安奈の背後を取れると思うのに、死の予感がしてしまうのだ。それでも意を決して迅は飛び込む。
同時にルル家も間合いの中に踏み込んだ。
この一手を防ぎきれば、百合子と迅がきっと彼女の肉腫を剥がしてくれる。
だから、仲間を信じて己の身を曝け出す。
安奈が鯉口を切った瞬間、ルル家の目の前に真っ黒な翼が広がった。
赤く彩られた黒翼は、それでも揺るぎない琥珀の瞳でルル家を見つめる。
「あ……、遮那く……」
遮那の背に走る傷に動揺したのはルル家だけではない。
刀を振った安奈が、驚愕に目を見開いていた。
「遮那、様……」
血に濡れた刀を持つ手が震えている。
「あぁぁぁぁぁ……っ!!」
――全ては、天香のため。
その矜持が奈落に沈んで行く感覚に襲われた。
遮那が己の刀に斬られ死ぬことなど、あってはならないのに。
動かなくなった遮那の白い顔が安奈の脳裏にこびりつく。
「今です!」
迅は動きが止まった安奈の背後から彼女を羽交い締めにする。
「嘘だ。我が……この手で? 嫌だ。そんな……はず!」
遮那がルル家を庇ったのは無謀などではない。この隙を生み出すためのもの。
「安奈殿! 遮那くんは強くなりました……。どうか我々と遮那くんを信じて下さい!」
涙を流し自害しようと錯乱する安奈をルル家が抱きしめる。
「もはや、守られるだけの若君ではないのです! 遮那くんは安奈殿も守れる男なのです!」
「そうである。安奈殿の刀を受け。それでも生きているではないか!!」
百合子は安奈の刀を押さえつけ声を張り上げた。
ゼファーに支えられ、遮那は自分の足で立っている。
「そうだ、安奈。私は生きているぞ! だから、自害など必要無い!」
ルル家と百合子は力の弱まった安奈の肉腫を無理矢理引き剥がした。
その様子をゼファーは確りと観察する。もし『次』があるのなら、些細な情報も必要だから。
香乃子が安奈に着けた肉腫は目玉の根元を掴んで思いっきり引っ張れば、比較的安易に取り除く事ができるらしい。即席のものだったということだろうとゼファーは考えを巡らせる。
「……ぐっ」
痛みに呻く安奈を遮那に預け、ルル家達は元凶である香乃子へと向き直る。
安奈の気持ちを思えば、沸々と怒りが湧いてきた。
「大丈夫。きっと助かりますわ」
ヴァレーリヤは安奈の手当をしながら不安げな遮那に笑顔を見せる。
消耗は激しいけれど、命だけは助かった。
今後肉腫の影響があるかもしれないけれど、今はただ無事であった事に安堵する。
アーマデルは遮那の背を見つめ僅かに金瞳を伏せた。
遮那の運命の糸は捩れ、縺れきっているのだろう。
断ち切れば手っ取り早いだろうが、もやは戻らない。
解きほぐすのは難解であり、それが為せる確証も無い。
「……だが、彼の往く道に、さやかな灯のあらん事を」
祈りを込めてアーマデルは遮那の道行きの幸福を願った。
●
「あともう一息だよ、耐えて、俺が支えるから」
史之は戦場を見渡し、肩で息をする。
戦況は激しい戦いとなっていた。爆散したエピゴウネはアーマデル錬と連携し海に沈めた。
此方の損耗も大きい。特にエイヴァンの傷が深かった。それだけ仲間への攻撃を防げたともいえる。
エイヴァン自身も自己回復で補っていた事も功を奏した。
「流石はエイヴァンさんだね。もうちょっと行けるかな?」
「ああ、まだ一山残ってるからな。回復頼む」
史之が降り注いだ癒やしの光でエイヴァンの傷が瞬く間に消える。
「よし、行くぞ! まだまだ、倒れてやるものか!」
この場で香乃子を倒せずとも、有益な情報を得ることは可能だろう。
その為には自分が立っていることは重要だとエイヴァンは口の端を上げた。
「あのさ、美少女ってわりにひどく醜いのだけど、なにがあったの?」
史之は香乃子へ顔を向けた。ぴくりと空気が張り詰める。
一手でも多く香乃子の攻撃方法を明らかにしたいのはイレギュラーズの願いだ。
恐らく再戦する事になるのだろう。
「私は元々美少女ではなかったのですよ。けれど、世界は法則を塗り替え私を美少女へと変えた。
その恐怖と絶望が分かりますか? 周りは私を『気味の悪い』美少女であると蔑むのです」
最初の願いは元に戻りたいという純粋なものだっただろう。
けれど、人々の思いを受け取った香乃子という存在は『化け物』として変容した。
花を纏えない醜い化け物。それが世界が人々が香乃子に架した在り方。
「だから私は元に戻る為に美少女を殺すのです」
正しい在り方で在るために。世界が己を歪めるなら、自分はそれを殺す。
アーマデルはその様子を遠巻きに眺めていた。
周囲に転がっている亡骸は香乃子によって殺されたものであるらしい。
彼らから感じる無念は悲しみに満ちていた。突然奪われた命に戸惑い苦しんでいるのだ。
「なぜ……美少女ではない者を?」
「そちらは私の中のダガヌチが欲したからですね。餌。養分ですよ」
人を喰らう度に力を増すということなのだろう。
「ダガヌチの力で深怪魔を従えてるんだろうが、この地が力を齎すのはそちらだけじゃないぞ!」
錬は式符の斧を香乃子の頭上に振り下ろした。
他の防御役が立て直す時間を稼ぐ為のもの。錬の攻撃を受け止めた香乃子は三日月の唇を引き上げた。
「ははっ、良い重さですねぇ……、痛みによって人は強くなる」
錬の攻撃に香乃子はうっとりと目を細める。
「貴方も痛みを欲しますか?」
「遠慮願いたいね」
弾ける血飛沫が白い砂浜を染めた。
錬の稼いだ時間は仲間にとって有意義なものだった。
史之はその間に回復を行き渡らせる。
「こちらもお相手願いますわ!」
「おや、貴女は以前お会いしましたね……?」
ヴァレーリヤに今気付いたと言わんばかりに香乃子は目を細めた。
美少女以外は等しく同じ人間に見えるのだろう。
それでもヴァレーリヤは特徴的で記憶の隅にあったのだ。
「美しい赤毛のメイスを使う聖職者の……逃げ帰った?」
「最後の情報は不要ですわ! 私はヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤですわ。きっちり覚えて帰ってくださいませ」
ヴァレーリヤに向き直った香乃子は白いセーラー服のネクタイに手を当て僅かに視線を落した。
「私は白百合清楚殺戮拳開祖、咲花・香乃子。以後お見知り置きを」
名乗りを受ければ、其れに応える。それが戦闘中であってもだ。
「では、行きますわよ!」
浜辺に響き渡るヴァレーリヤのかけ声と香乃子の雄叫びがぶつかり合う。
身体が動き続けるまで。迅はそう己に言い聞かせる。
今の自分ではまだ敵わない相手なのかもしれない。それでも次に繋げる為に一つでも多く情報を得たい。
「……いや、やっぱり情報はいいです」
迅は深呼吸をして首を振った。
「安奈殿を叩き伏せたのは戦いの結果として致し方ないとして妙なものを埋め込んで餌扱いしましたね。許しません。情報とかいいので殴ります!」
仲間を侮辱されている以上、情報を聞き出すとかそういう難しいことは考えられないのだと迅は香乃子の前に飛び出した。
「同じ戦場で同じ敵に向かったからには遮那殿も安奈殿も戦友。友を弄ぶものは絶対に殴ります!」
素早い迅の反応速度に、香乃子は同等に追いついてくる。
されど、必ず先手ではない。つまり、捉えられる範囲であるということだ。
いくら化け物と呼ばれようと、覆しようも無い差があるわけではない。それだけ分かれば上等だ。
難しい事はセレマ達に任せ、迅はただ拳を前に突き出す。
「その顔面に拳を突き立てるまで、僕は殴るのをやめません!!」
「はっ! 良いですねぇ! そういうのは好きですよ」
黒い嗤いが香乃子の口から漏れた。
「拙者の家族を傷つけた覚悟は出来ているんでしょうね!!」
不殺など使ってやるものかとルル家は怒りを露わに香乃子へと吠えた。
闇色の糸が戦場に張り巡らされ、滴る泥が香乃子を覆う。
溢れ出た混沌の泥は香乃子の白いセーラー服に染みこんで赤黒い血を思わせた。
それはルル家の怨嗟の発露であるのだろう。
苦痛に香乃子の顔が歪み、やがて不気味な笑みに変わる。
「は……っ、ははっ」
「黒幕ヅラして、全てが上手くいくとでも思ってそうなヤツほど
思い切りブン殴ってやりたくなるってもんでしょう!」
ゼファーは香乃子へと風を纏わせた槍の一撃を穿つ。
力と力のぶつかり合いは香乃子の感情を振わせるもの。
「拳の達人って点じゃあ、惹かれるものはありますけれど。
其れは其れ。誰かに踊らされて、曇った目をしてちゃ技の冴えも曇るものよ。
悔しけりゃ、自分を取り戻して見せなさいな、美少女さん?」
濁って歪んだ思想と在り方を、ゼファーは否定する。
それを乗り越えてこそ、美しく咲けるのではないかと挑発するように嗜めた。
「ああ、本当に悔しいですね。本来の自分であれば、もっとこの戦いを楽しめたでしょうに」
歪められた存在ではなく。在るべき姿なれば。
「だからこそ、私は美少女を駆逐し本来の姿を取り戻したい」
「頑固ジジイみたいよ、あなた」
下段から翻る槍先が香乃子の髪を散らす。
己の本職は魔性との駆け引きだとセレマは香乃子を睨んだ。
会話が通じない程度は序の口だ。
大事なのは相手の欲望を見抜くこと。
仲間へと香乃子が語った言葉からも、その本質が覗える。
香乃子は隙を見せれば百合子を摘みにくるだろう。
己の目的の為に手段を選ばぬ傲慢さ。
百合子は香乃子の前に立ち、強い眼差しでにらみ合った。
「吾がやる事は変わらぬ!」
望んだ未来を掴み取ること――即ちぶっとばしてダガヌチ引っ張り出す事である!
「聞きたい事は色々あるが、吾はどうしたら開祖に言葉を届けられるか分からぬ
それに今回貴女が敵だという事はハッキリわかった
あの時は引いたが二度も引く気はないぞ、最後まで吾に付き合ってもらう!」
百合子の隣にはセレマが並ぶ。
彼の不死の絡繰りに最初は戸惑っていた香乃子であるが、次第に歓喜し、そして仕組みに気付いた時、興味をうしなった。誰もが望む無限の命は存在しないのだと落胆したのだ。
「貴女のお友達の『不死』は紛い物なのでしょう?」
「それがどうした。美少年も寝るな、働け、見解を述べろ」
自分のお気に入りのサンドバックでいつまでも遊んでもらうのは嫌なのだと百合子は拳を叩き込む。
目の前の香乃子が安奈を憎む理由は何となく百合子にも見当が付く。
安奈の剣術は美少女と混沌の技術が混ざったものだ。
開祖の異世界嫌いは資料が残ってるほどのもの。二重になれば許し難きものだろう。
「吾もまた変わった。他人に求められる振る舞いではなく、個人の楽しみや悲しみが分かる様になった
それは安奈殿のお陰であり……そこの美少年のお陰だろう」
一瞬だけセレマを見遣った百合子は真っ直ぐに香乃子を見据える。
刹那、香乃子が目にも止まらぬ速さで百合子の首に手を伸ばした。
――誰があの潔癖な未開人に世間を叩き込んでやった。
セレマは歯を食いしばり、その決死の一撃を受け止める。
あれを磨いたのはボクだ。着飾ることすら知らないバカに服飾の意義を仕込んだ。
腹立たしいことにボクを差し置いて評価された。目覚ましい成果だ。大した成長だ。
……ボクの磨いたものをお前に壊させるかよ!
己の利益を守る為にセレマは香乃子の攻撃から百合子を庇う。
これは百合子が知らなくてもいい『真実』だ。
――失いたくない、どちらも。
失ってしまったらもうどうしたらいいのか分からない。
それが百合子の切なる願い。
百合子の拳が香乃子を穿ち、その身体が宙を舞う。
空に浮かび上がった香乃子の背後、黒い雲が一瞬いして立籠めた。
黒い雲から現れたのは、『キャラック船』だ。
「LILYYYYYYY――――!!!!」
そのキャラック船を香乃子は持ち上げ、弱っている安奈へと叩き落す。
「そうはさせない! 百合百合百合百合百合百合!!!!」
百合子は安奈へと落されるキャラック船を拳で粉砕した。
木の破片が飛び散る砂浜から振り返れば、そこに香乃子の姿は無く。
晴れ渡る青い空が広がっていた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
無事に安奈は戻って来ました。
MVPは心揺さぶるプレイングだった方へ。
GMコメント
もみじです。タイトルに二重タグの許可を貰ったので
前回の『<光芒パルティーレ>白き石柱と輝碧<琥珀薫風>』にも入れてます。
今回は『<夏祭り2022>アクアマリンが零れる』で咲花・香乃子と対峙した方へ優先が入っています。
●目的
・咲花・香乃子の撃退
・姫菱・安奈の救出
・敵の撃退
●ロケーション
ダガヌ海域に存在するインス島近郊の小島です。
干からびた死体が何体か転がっています。
島の海岸(砂浜)で香乃子は待って居ます。安奈も傍にいます。
イレギュラーズが再集結すると、深怪魔が海からぞろりと出て来ます。
●敵
○『彷す百合』咲花・香乃子
元男性の種族美少女。
海洋南西部に浮かぶセントリリアン諸島からやってきた白百合清楚殺戮拳の開祖。
現地の人からは『灰の魔人』と呼ばれ恐れられています。
白いセーラー服を纏い尋常ならざる能力を持ちますが、花は纏っていません。
元の世界で消失してしまった『己』を取り戻す為、種族『美少女』を執拗に殺そうとします。
会話は出来ます。話が通じるかは不明です。
報告書によれば、有り得ない程の速度で命を刈り取ってくるようです。
攻撃力や命中、EXAが高く体力もあると予想されています。
一瞬で距離を詰め攻撃に転じるスキルもあるようです。
白百合清楚殺戮拳の開祖の名が表す通り、拳で戦います。
ただ、歪みが生じているのか異様な雰囲気があり、攻撃手段には不明な点も多いです。
○姫菱・安奈
天香家に仕える種族美少女です。
美少女刀法、菱派。自在抜刀夢幻の型。
その名も「菱葉ポニテ抜刀術」の使い手。
美少女(種族)の中で珍しい剣術の達人である安奈は香乃子にとって忌むべき存在です。
遮那達を逃がす為に安奈は香乃子と対峙しました。
その際、香乃子に『肉腫』のようなものを植えられました。
厳密には肉腫ではありませんが似た性質を持ちます。
打ち倒し体力を削れば引き剥がす事が出来ます。
イレギュラーズと戦うか自害のみを許されています。
遮那に被害が及ぶのであれば、『自害』を選びます。
○ダガヌチ
香乃子に取り憑いた悪霊です。
彼女に尋常ならざる力を与えています。
元々強い香乃子ですが、ダガヌチの影響で更に強くなっています。
香乃子の体内深くに核が存在していますので、取り除くにはまず香乃子を瀕死の重傷にし昏倒させる必要があります。とても難易度が高いです。
○深怪魔
・エピゴウネ×3
巨大マンタ型深海魔です。
相手の頭上をとり、卵形の爆弾を次々に下方へ発射することで爆撃を行います。
爆撃は高い攻撃力のほか【業炎】【足止】【飛】といった厄介なBSを持っています。
ですが上を取られると爆撃ができなくなるためかなり無防備です。
また、海上にでて短時間だけ簡易飛行する能力もありますが、
これは安全圏に逃げるためでなく船などを覆って破壊するためにありあます。
また、破壊すると大爆発を起こします。
○フォアレスター×10
半魚人型深海魔です。
首から上に魚がまるごと乗っているような造形をしており、人間と同じく武器をもって戦います。
●NPC
○『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)
豊穣の大戦で天香の当主と成り日々精進しています。
現在は向学の為シレンツィオに遠征中です。
自分の身は自分で守れる程度の実力です。
背中の翼で戦場を飛び回り、アクロバティックな戦術を駆使します。
○浅香灯理
遮那の親友です。天香家の親戚筋である浅香家の少年。
戦場には居ませんが記載します。
遮那に別れを告げ、一足先に豊穣へ帰りました。
重大な『何か』を胸の内に秘めているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
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