PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雪辱は鏖殺の宴のあとに/最悪の後のたった一つの冴えたやり方

完了

参加者 : 15 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「これが『依頼』だと、お前は言うのか」
「はい。正式な依頼です。少なくとも、先日の依頼の影響を加味すれば判断がおそすぎたくらいです」
 イレギュラーズの詰問を真正面から受け、『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は表情を変えずに断言した。判断が遅かったのだ、と。速やかに進めねばならぬ依頼であると。
 依頼書には、「豊穣某所の2村に対し、壊滅及び証拠の全抹消」とある。わかりやすくいうなら鏖殺と完全破壊だ。更地にせよというのだ、人の住んでいる、生きた村を。余りにも酷ではないか。
「皆さんはご存知ないかもしれませんが、先日取り逃した天女は移動ができないため、ここに居座っています。植物型であるデメリットといえますが、しかし花粉や寄生植物による洗脳が可能で、周囲から命を奪って生き延びる事が可能です。どころか、放置すればその力は増す一方でしょうね」
 過日、この土地、その2つの村の中間地点にある森の中、そして東側の村に天女が現れ猛威を振るった。東の村はなんとか危機を脱したが、その時の影響は排除しきれていない。ばかりか、森の中の天女は十分な有効打を与えられぬまま敗走している。放置しておけば、人の血肉を喰らい力を増すだろう。最悪の場合は2つの村と森を巻き込み周囲の命を奪い尽くした後、ゆっくり枯死を待つ方法もあった。だが、それを由としないイレギュラーズも少数ながら存在したのだ。
「……で、そいつらは呼んでないんだな?」
「この依頼を嗅ぎつけて参加するのは自由です。ですが、その人達はまず間違いなく難色を示すでしょう。決心が揺らぐくらいなら、呼ばないほうが良心でしょう。彼の天女へと勝手に向かって決死隊でございと洒落込んでもいいでしょうが、そんな決意で徒に仲間を失う道理も権利も私にはありません。確実に兵糧攻めの地固めをしたいのですよ」
 それに、と彼女は追加で書類を差し出す。
 村の周囲に「灰桜衆」――「天女」同様、羅刹十鬼衆の手駒が出現しているという事実。彼等が肉腫をなんらかの手段で崇めるよう仕向け、灰桜の勢力を増そうとしたら? これを外部に持ち出したら?
 考えられるのはこの上ない地獄絵図なのである。彼女が雪辱の請願を無視した上で依頼を用意したのには、そういう事情もあるのだ。
「わかっていると思いますが、『寄生植物や花粉の影響がないとは言えないため死体は焼却を含めたあらゆる再生不可能な破損を要し』『生体的再生を阻害して処理し』かつ『生活痕跡を含め破壊し更地にする』くらいがスタートラインです。下心を出して状況を悪化させれば、もう私に提案できる作戦が存在しないことをご留意ください」
 三弦の目は本気だった。本気でこの結論を憂い、こんな提案をせねばならぬ状況に苛立ちを覚えていた。

GMコメント

 本当は続きを出さずにこの村々が地獄になりましたっていうオチだったんですが、地獄になりましたというより自分の手で地獄にしてもらったほうがとっても素敵やん? という私の中の悪い癖がお邪魔ンボウ(死語)してしまったため、このようなシナリオになりました。なお内容が内容なのでアフターアクションを採用していません。

●成功条件
・東西の村の人間の鏖殺(一人たりとも逃してはならず、温情によって連れ帰ってはならず、全ての人間を何らかの手段で『なかったコトにする』。部位欠損を伴う『持ち帰り』を断じて許さない)
・(努力目標)天女『無限香花』の弱体化

●西の村、東の村(西の村は【1】、東の村は【2】)
 拙作連動シナリオ「花蝶天女譚」において、それぞれの村が強力な天女を排出しています。この経緯に関して村人達には何ら非はなく、元凶に見初められただけの話です。
 うち、「花はあなたを求めてる」にてイレギュラーズが敗走したため、この両村は天女『無限香花』の影響下にあるといえます。
 即座に何か起きることはありませんが、中長期的に彼等は生贄を差し出し、これを崇拝、そして花粉や寄生植物の影響で村まるごとが配下になる危険性があります。
 くわえて、前回の戦闘においてまあ色々処理不足なところが多いため、潜在的に両村に既に寄生されたキャリアがいる可能性が高く、その潜伏期間も判明していません。判別方法も現状なし。
 然るに「全ての村人を焼損を含む何らかの方法で鏖殺後に処理し、植物的生育の道を完全に断つ」ことが最適解と判断されました。これが「最悪よか2段階ほどマシな着地点」の影響です。
 両方に人を送り込む必要がある、且つ不測の事態に対処するため人数割り振りが重要となります。後述の敵に対しては完全にオプションとして切り捨てることもご検討ください。
 なお、両方の村はともに人口約30~50程度、寄生体を最優先で判別して殺さないと指数関数的に潜在難易度が上昇します。村に変わったギミックや変更点などはありません。木造住宅です。

●『無限香花』(選択肢は【3】)
 先述の通り、天女(変質が激しく、人に戻ることのない複製肉腫の女性)です。なお、この個体がセバストス化する可能性はありません。
 HARD相当の能力を持ち、前回からさらに人を食っている為実力は上がっています。
 これに対し、「村の鏖殺が終わったからついでに」感覚で首を突っ込むと間違いなくろくなことになりません。
 確実に逃げ切れるメンツで十分に距離をおいてダメージを蓄積させるか寄生植物を蹴散らし撤退、ぐらいがベストです。死亡判定はありませんが決死隊と何ら変わりません。

●プレイングテンプレート
 1行目:参加選択肢
 2行目:タグまたは同行者ID
 3行目以降:自由(上2行の指定がなくても空行を入れてください)

●備考
 成功条件を隈なくお読みください。凄いぶっちゃけますがこの辺りのコンセンサスが取れてないと綺麗に鏖殺しても失敗判定が発生し得ます。
 また、参加条件が割とアレなので、善人の皮を被っていられないシナリオであることをご留意ください。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『豊穣』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 雪辱は鏖殺の宴のあとに/最悪の後のたった一つの冴えたやり方完了
  • GM名ふみの
  • 種別長編(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月01日 23時30分
  • 参加人数15/15人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 15 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(15人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
キイチ(p3p010710)
歩み続ける
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ
斬隠 キリカ(p3p010844)
人斬り

サポートNPC一覧(3人)

日高 三弦(p3n000097)
ナーバス・フィルムズ
ドロッセル=グリュンバウム(p3n000119)
蒼ノ鶫
パパス・デ・エンサルーダ(p3n000172)
ポテサラハーモニア

リプレイ

●惨劇の嚆矢(西)
「鏖殺とは穏やかではないですね」
「要するにヤバい地獄になる前に処理して、マシな地獄しとこうぜってカンジか?」
「ええ、ええ、正しい……間違いなく正しい選択肢でありましょう、正義すら感じます」
 『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は依頼の内容を思い返し、改めてその異常さに顔を顰めた。村人を、つまりは一般人を鏖殺するというのだ。地獄のような話である。が、『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)や『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)のように、悪に徹する『だけ』でその日の飯と酒、そして己の経験の糧と出来るならなんだってやり果せる者達にとっては非常に割の良い仕事でもある。
「そこまで事態が切迫している以上、誰かがやるしかないならその業を背負える人がやるのが一番良い。殺しの仕事なんて今に始まったことじゃないしね」
「あまり気乗りはしないけど、事態の連鎖を止めるためには必要だね」
 『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)と『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)の割り切り方は、ライやことほぎとは意を異にする。仕事を受けることで得をしたい、ではなく。仕事を受けなければ害が及ぶ、という事実にこそ己の役割を見出しているのだ。……少なくとも、無制限に強くなり、倒す為の下地が作れなかったり。或いは灰桜の連中に先んじられるよりはずっとマシだ。過ちを自分の手で終わらせるというなら、それに越したことはない。
「討伐に失敗したとはいえ助けた命に変わり無い。誰一人として、この場にいられるようにしてやる」
「ではいつもの如く、ゆるりと参りませうか」
「ええ、ええ……わたくしたち二人で、先に参ります。『他』はマニエラさん達におまかせします」
 『威風戦柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は失敗した。彼女一人に責があるかといえば全くそうではないが、然し西の村の状況悪化を招いた一因ではある。だから責任を取る必要がある。助けるべきだった者達を鏖殺するというやり方で。

●惨劇の嚆矢(東)
「あら、まあ……! 貴女はあの時の神使様で? どうしてこんなところに!」
「ちょっと様子見をな。村人は皆ここにいるか?」
「いいえ、流石に皆では。私どもは今後のことも、森のことも、あの件のこともあり此処を出ようかと協議を重ねていたところで……」
 『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)は先んじて村に訪れ、人々の話しかけて回っていた。ひときわ大きい屋敷(村長の宅であり寄り合い処だ)に数名がいたが、今後を憂慮しての会議中であったらしい。都合がよすぎるな、と彼女は嘆息する。今まさにこれから、この村を滅ぼすべく手を回す。いい気持ちがするものではないが、さりとてやらねばより致命的な事態を招く。彼女に選択肢など、なかったのだ。
「わかった。村の人達に話がある。集めてもらえるか?」
「神使様御自らお話だなんて……此方でも話は通しておきましょう。時間はいただくと思いますが……」
 屋敷に詰めていた女の返答を聞くより早く、ミーナは踵を返していた。あのときは極楽蝶を開けた場所で仕留めたが、その分内部構造には疎い。今のうちに確認しておくべきと考えたのだ。

「くそったれ、最悪だな!!」
「他のイレギュラーズ共がやらかして? んでその尻拭いってやつっスカ。んま、試験運用さえ出来りゃイイし知ったこっちゃねぇけド」
 村の人々を皆殺しにせよ。すべての証拠をくまなく奪え。消し炭にしろ。……その依頼を受けた際の『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の心痛は慮るに余りある。事情を微塵も知らぬ『けだま吐いた』玄野 壱和(p3p010806)の心無い言葉にイズマは思わず視線を向けたが、即座に逸す。口惜しいが事実だ。部外者が茶化す話ではないが、否定する権利は少なくとも当事者にはない。
「村人の皆殺しがオーダーとは……くふふ、物騒でありんすねえ」
「やるせないがこの様な汚れ仕事また忍びの役割でござるな」
 『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)は言葉に反して非常に嬉しそうにこの現状を語っていた。楽しそうに、とも言えようか。兎角、人を好き勝手殺せるという事実はそれだけで嗜好者の心に高まりを与えるものなのだ。反して、『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)はその事実に心痛を覚えながらも、しかし依頼である以上は躊躇なく行える自分を再確認している。汚れていようと、目的は至極真っ当な正義なのだと。
「流行り病、というものが僕の世界には有りまして。時には村一つ焼かねば収まらぬ……とまあ、何とも遣る瀬無い場合があるものですが。今回のコレもまた同じだと考えています」
「解ってる。これが最適解なのは異論ない。むしろどんな手であろうと打てるだけで喜ばしくすらある……ある、んだ」
「まさかこんな仕事を引き受けて罪悪感を感じてる子なんて居ないと思うケド。これは考えて動かなかったこないだのマリカちゃんのせいでもあるんだよネ」
 『歩み続ける』キイチ(p3p010710)の持ち出した喩えは、実に的確に的を射たものだった。2つの村にいる人々は、判別不可能なまでに希釈された感染症のキャリアとなんら変わらない。放置した病原菌はやがてより大きな脅威になること請け合いだ。だから鏖は当然の所業デある……割り切ろうとして言葉を噛み殺したイズマの肩を軽く叩いて、『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は不自然なほどにあどけない笑みを浮かべた。彼女は一歩間違えればすべての状況をぶち壊しかねぬ狂気でありながら、そうあることで他を活かす手練でもある。罪をかぶる、ということに関してなんら躊躇が見当たらないのだ。
「何だかこの依頼、色々と込み入った事情がある模様じゃな? じゃが、儂にとっては善悪などどうでもいい事。儂は兎に角人が斬れればそれで良い……実に単純明快。スマートな理由じゃ」
「確かに、酷い罪を犯す事になります……ですが、罪を恐れて為すべき事から目を背ける事こそ真に罪深い事であるのだと、私は母の一件で学んだのです。滅ぼしましょう、すべてを」
 事情を知らぬからこそ、否、知っていたとしても『人斬り』斬隠 キリカ(p3p010844)の心にはなんら響きはすまい。彼女にとって敵は斬るべく現れる巻藁に等しく、それに憐憫や感情を持つことなど雑音としか思っていない……可能性も、ある。対して『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)にとって、名も知らぬ人々を虐殺することは過去の所業に比べれば幾らのものでもないが、命を背負うという重大ごとは間違いなくそこにある。
「では……私は村に入ります。イズマさん、手筈通りによろしくお願いします」
「俺も準備は出来たよ。最低限だけど……ついていこう」
「ミーナが人集めしてるんだっケ? 実験には丁度イイ」
 エルシアはミーナが動き出したのを確認し、東の村へと静かに歩き出す。周囲で破壊準備を進めていたイズマは、バレない範囲ではあらかた片付いたらしく、その後に続く。壱和はなんらかの考えがあるのだろう、ミーナが人集めに奔走する方へとあえて向かった。
 彼ら三人は誘導の補助として、残りのメンツは合図を待ち行動を開始することになる。何処まで計画通りにいくか、その補正をどう行うか……イレギュラーズの実力が試される局面が、すぐそこに迫っている。


「皆様、ご機嫌麗しう」
「商売人さんかい? こんな山の中に……ご苦労さんだねえ」
「珍しいねえ、こんな辺鄙なところまで……今日は何かと人入りのある日だねえ。雪でも降るかいね?」
 行商人を装って村に潜入したヘイゼルに対し、人々はなんら警戒なく対応していた。もともと閑散とした場所の人々だ。外からの刺激に乏しい分、内向的でありながら刺激に飢えているのだ。物珍しい行商人が現れれば、興味も抱くし再訪を期待して温かく受け容れもするだろう。
(ライさんも歓迎されてる様子ですね。もう少し警戒されると思いましたが……でもあちこちで『変な音』がするのも事実。正直、此方は思ったより文字通り『根』が深い……)
 ヘイゼルが戸惑い交じりに周囲へ視線を向け、上空を見やる。かなりの高度にあるゆえに姿はおぼろだが、おそらくあれはアクセルか。彼が哨戒して状況把握に務めるのは、非常に心強いと彼女は思った。

「ね……こんな村では娯楽に飢えてはいませんか? 男女数人お誘いしています、あなたも楽しい事……しませんか?勿論私自身も……ね」
「あ……アンタ、黄泉津の神職だろう? そんな、よくねえよ、そんなの……」
 ライは艶やかな声で相手の耳元を撫で付けると、これまた艶やかな表情で下から覗き込んだ。なけなしの理性から漏れ出た相手の言葉に、笑みを深くする。神職だからよくない、か。素晴らしい模範解答だ。
「いいえ。主は救済の為ならば、汎ゆる行為を許されます。なんなら……こんな山奥で飢えているあなた達に新しい道を示すことだって」
 主が許す。なんという甘言だろう。男を追ってきた女や周囲の男女も、自分たちの様子に少しばかり興奮を隠しきれない。何処か休める場所はといえば、我先に名乗り出るだろう。
 クソッタレな主を体よく冒涜しながら目的達成も兼ねる。最高の仕事だった。
(なんて手際がいいんだ……でも、あそこまでやってくれたなら俺も報いなきゃ……)
 その様子を隠れて見守っていた雲雀は、ライの目の奥に浮かんだ黒々とした闇を見た気がした。だからこそ、やりきらねば。物陰に頸動脈を断った第一犠牲者を投げ捨てると、彼は再び物陰から物陰へと姿を消した。


 まず、エルシアが村に現れた際の村人の反応は端的に言って『好意』、或いは『激しい下心』であった。
 色恋という軛から逃れた少女の色香は、ライほどの技能はないがその純朴さと服装がゆえに、田舎者受けがよかったのだ。よくいえば親しみやすく、下卑た言い方をすれば手折りやすく見えたわけだ。
 数歩下がって歩くイズマは苦い顔を押し隠す。つい先日、色香に導かれ命を落としかけた『熱』は、既に村人の喉を抜けていったのだと。
「私どもは神使です。仲間が此方に伺ったと聞きました。今日は……外の話を、慰安を兼ねてお届けに参ったもので」
「おお……! あの神使様の! そいつぁ歓迎せにゃあいかんな!」
 ミーナや、他の極楽蝶討伐隊の勇姿を知る人々はその言葉に俄にざわめき、すぐに歓迎の意思を見せた。花が咲くように、とはまさにそれで、周囲からは強い好意に満ちている。だからこそ、違和感ひとつが致命的だったのだ。
「その必要はありません。お気持ち代わりに、あなた方に祈りを捧げましょう」
 エルシアはそう言うと、両手を組み『祈り』を捧げた。次の瞬間、伸び上がった茨が数名の男女を縛り上げ轢き潰し、然し僅かな瞬間、茨の隙間からビチビチと跳ねるように何かが動いた。臓腑の鼓動ではない、新芽の断末魔のような。
 当然ながら周囲はパニックに襲われ、とっさに彼女を狙った者までいた。
「なんだ、なんだコイツ等、なんだ『あれ』!? ふざけ――」
「ては、いない。抵抗されて引き下がる程度なら最初からやってない。諦めろ」
 とっさに突き出された拳を難なく受け流し、イズマは驚いた声の男に言ってのけた。次々と伸び上がる得物と拳はしかし、彼の肉体に危機感を与えるような驚異はない。が、はっきりさせておかねばならない。
「もう遅いが、家もお前達もすべてだ」
 戦闘ともよべぬ虐殺を自覚しつつも、イズマは空いた手で近くの家に火をくべた。燃え上がる家、乱れる死。突然の惨状は、人々が何一つ気付かぬ現状への報復であったか。
「…………!」
「誰一人も逃がすつもりはござらぬ」
 その混乱より前に、すでに咲耶は何名かを殺して回っていた。静かに浸透した彼女の動きは鮮やかに、人々を殺す最適解を導き出す。外側から、内側に追い立てるように。逃げ場を奪うように、じわじわと歩き追い詰めていく。
「マリカちゃんのお友達が、みんなとお友達になりたがってるから。一緒に楽しくなろう?」
 そして、村人にとって最悪なのはその村の外縁部にマリカの『お友達』が少なくない数蔓延っていたこと。それらには(マリカの術式なしには)物理的干渉力はないが、さりとて死霊に突っ込んでまで逃げる気骨など一般人にはなく、どころかマリカに追いつかれればそれらは凶器と化すのだから、たまったものではない。
 奇策を講じるために凡作を教え込むことの必要性を彼女は説くが、今この状況が最上の奇策であることは疑う余地すらない。
「ひぃぃぃ、武芸者様、たす、助け」
「いやー、無理ですね」
 逃げ惑う一人を、キイチは正面から斬って捨てた。イレギュラーズを見た希望が絶望に変わる表情の動きは、彼にとっても見目いいものではない。が、死ぬより最悪の片棒を担がせるよりは死んだ方が、己が殺したほうがマシだろうと思うのはきっと、傲慢とも自己憐憫とも遠いものだ。彼は、己が思っているより高潔で、自分でわかっている程度には下卑た行いに手を染めている。
「呵々! 外道? 鬼畜? 大いに結構! 所詮、この世は弱肉強食じゃあ!」
「嫌だ、死にたくない……!」
「無理じゃなあ!」
 他方、キリカはこの辺りの葛藤だとか、罪を背負う意味だとか。そういうものについての頓着が全くない。人を斬ることを喜び、それが依頼であればなおよしと思うタイプだ。彼女に善悪を語る滑稽さときたらない。少なくとも依頼に忠実で、余計なことをせず、そして後腐れないという意味で、彼女はこういう依頼に素晴らしく適性があったのだと判断せざるをえない。
「……こそこそやる必要はごぜーませんよね?」
「皆慌てるな! 私が賊くらい追い返すから、一箇所に集まって身を守れ!」
 混乱の渦中にあって、エマは笑みを湛えながら数名を砂嵐に巻き込み殺していく。その場に現れ、彼女に立ちはだかるようにミーナが身構え、残った村人たちに寄合所へ向かうよう叫ぶ。
 村人たちの多くは彼女の勇姿を見届けている。そして、居並ぶ襲撃者の顔の多くを、彼らはイレギュラーズだと理解していない。旅人かなにか、放浪の略奪者程度の認識だろう。だからこそ『効く』。
「おやおや、よろしいんでごぜーますか? 見届けないと危ないでしょう?」
「……それはちゃんとするさ。けど、騙すなら期待させてやらねえと」
 間合いを詰め切り結ぶと見せかけ、ミーナとエマは弾かれたように距離を取る。攻撃する気も、まして敵意の一欠片すら無い舞踏じみた振る舞いは、しかし遠巻きに見る者にとっては――神使の決死行として見えたやもしれぬ。
 あちこちで巻き起こる混乱の中、人々は寄合所へと詰めかける。次なる悲劇が待つとも知らずに、だ。


「討伐に失敗したとはいえ助けた命に変わり無い。避難はこっちだ」
「……神使様? でよろしいので?」
「そうだ。東の村側は危険だ、できるだけ一箇所にまとまって家に、男達は外で守りを固めろ。いいな、私は襲撃者をなんとかする。一人たりとも逃しはしない……ところで、人の数を調べる術はあるか?」
「恐らく、長の家に台帳が」
「そうか。行方不明者の検分もしたいからな、助かるよ」
 マニエラは外を出回っている人々に襲撃者の一報を与え、避難と籠城を提案する。
 寄生された人々が判別できない以上は集まってもらうに限り、そして彼女は一つたりとも嘘を言わぬうちに人心を纏め上げた。的確な指示は人々の安堵を生み、そして彼女もまたその場を離れる。

「お前、寄生されてるだけじゃねえな。何モンだ」
「そういうお前は、神使か。人殺しに躊躇が無いのだからおかしいとは思っていたが……」
「質問を質問で返すんじゃねえよ。クソッ、楽な依頼だとおもったんだけどなぁ!」
 ことほぎの足元で悶絶する人々を見て、顔を布で覆った男は不敵に笑う。ことほぎの目にも其れが寄生体であることは明らかで、且つそれは荒事なれしているように見えた。そういえば――情報屋が言っていたか。
「ンだよ、灰桜とか言う連中か」
「ご明察。皆を殺すというならそれもよかろう。精一杯抵抗させてもら――」
「っても困るのです。灰桜が混じっているとなるとやることがもっと多くなるのです……」
「お疲れヘイゼル。涙拭けよ」
 寄生体、こと灰桜信者は、背後から駆け寄ったヘイゼルにより一瞬で命を絶たれた。ただでさえ行商人の偽装と並行して周辺警戒と敵数の確認などを行い精神疲労がかなりのレベルだったのに、そこに灰桜が交じるのは反則だ。彼女の心痛たるや。
「こっちは大丈夫そうだね。……なんか、大変だよね。あとは家を回って逃げ遅れを仕留めていけばいいかな」
 そこに降りてきたアクセルは、村人の動きが特に激しい西端側を捨て、家を出ない人々の異常さを鑑みて合流に向かったのだ。
 ことほぎとヘイゼルは頷くと、視界の隅に見えた中規模の建物を見た。マニエラの指示で守りを固めている連中ではなく、別な家を。
「あそこに妙な気配あるように思うのです」
「……ああいや、放って置いてもいいぜ? あそこは」
 次の行動を定めたヘイゼルを手で制し、ことほぎは別の家へ突っ込んでいく。
 ヘイゼルは知らない。その中では、文字通りの酒池肉林、そしてその中央で返り血に塗れたライがいることに。
「慈悲も無ければ謝罪も無く、彼らにかけるべき言葉も私からはありません。ですが、その声は素晴らしかったですよ」
 ライの言葉に応じる者はいなかった。そして、一箇所に集められた人々は徐々に狭まるイレギュラーズ包囲網の前に、逃げる術などなく。
(ヒトの尊厳としても、天女に力を与えないためにも、餌にはさせない)
「ばっ化け……っ」
「人間じゃない?こんな目をした奴が普通の人間とでも思ったのかい?」
 アクセルが高度を落として襲撃を仕掛ければ、その動きに声を失い。その間に硬直した者達は、次々と雲雀に頸動脈を捌かれ倒れていく。
 そして、マニエラは淡々と、避難先へと向かい優しくもない手段で殺しにかかった。
「そん、な、一人も……って……」
「ああ。一人たりとも逃しはしない。それは嘘じゃない」
 村人の絶望の声、そしてマニエラの返答は一切の嘘が混じっていなかった。その絶望感に、村人の息の根が止まるのはそう遅くもない状況であった。


「はーいみんなー、こっち見てネー」
 外には暴徒、村の最奥の集会所は多少なれど頑丈で、広間もある。村の長老衆がミーナの言葉に従い、ここを避難所として人々を纏めたのも、納得が行く理由だった。
 ミーナが一通り集めた村人たちと正対し、「術式起動 縺帙s縺ョ繝シ 限定行使 ふせいそうさ」と口中で壱和は呟く。瞬間、その目は人の心を撫で付け、その自由意志を奪い去る――のが、当然の流れであった。反応が消えたことから、初動は成功している。ミーナが勝手口から潜み、固唾を飲んで見守る中、壱和は口を開く。
「王ノ御前デアル。列ニ並ビ頭ヲ垂レヨ。
 ……コレヨリ王ノ勅令ヲ下ス。己ガ手デ首ヲ絞メヨ。出来ヌ者ハ我ガ直々ニ潰シテヤル。光栄ニ思エ」
「ばっ……!」
「…………王、とは?」
 その発言の『まずさ』に気付いたのは、豊穣動乱を肌で感じた面々だ。村の長老は毒気を抜かれたようにきょとんとした顔で、壱和をじっと見た。豊穣動乱の後に混沌に降り立ったがゆえか、この異常に対処する知識が、壱和にはなかったのだ。
「我ガ、王ダガ?」
「我々は『王』を懐きませぬ。我々にとっての絶対があるとすれば、それは『霞帝』で御座いましょう……仮に霞帝の命でも無為に死ぬなど、とてもとても……神使様、あなたは何をなされようと……?」
 壱和はその返答に首を傾げた。絶対の自信があった魔眼が、『常識』と『生存本能』に打ち破られるなど想定していなかったのだ。範囲術式を使うには距離が近すぎる。至近術で殺し回ろうにも集められた三十ほどの人間を一度には無理だ。
「つまらぬ謀など無駄だろう! 鏖にすればいいだけの話よ!」
「さようなら、罪の無い皆さん。……運が、悪かったですね」
 状況の異常さをいち早く悟っていた者が壱和の横をすり抜けたところで、キリカとキイチがほぼ同時にそれを斬った。流血が遅れるほどに鮮やかな斬撃を経て崩れた肉塊は、見事さゆえに現実感が薄れていく。流血と臓物の赤が目を貫く刺激で、人々は漸く恐慌を引き起こした。



「少なくとも生き残りや逃げ延びた人はいないよ。オイラも上から火をくべるよ。ここでミスややり残しがあったら、この村のヒトたちは何のために鏖殺されたのっていうことなるから」
 アクセルはすべてが終わった村を改めて周回すると、集められた死体の山に顔を伏せる。覚悟があろうとなかろうと、ここまで生々しいとは、考えが及ばなかったのだ。
「死体と建造物、畑の作物、あとは家畜とか? 一切合切燃やしちまおう」
「火種なら用意したので、アクセルさんには上から燃やしてもらえると助かるのです」
 指折り数えて消すものを検討することほぎ、そして火種を渡しながら周囲を見回すヘイゼル。二人の思考や行動は全くの罪悪感も気の衒いもなく進んでいき、燃え盛る村にあってひどく静かに見えた。
「台帳通りなら、これですべてですね。鏖は完了しました、お疲れ様でした」
「よかった……これ以上はないんだね」
「今日のところはな」
 マニエラが回収した住民台帳を精査して閉じ、炎にくべたライの言葉で雲雀はその場に膝をついた。人殺し二罪悪感がある、動けなくなるという惰弱ではないが、しかし疲労はそれなり以上だ。灰桜は結局一人だけだったが、下手をすれば状況がさらに悪化していたことは否めない。
 己の行為で人が死に、己の覚悟で村を潰した。
 マニエラは、その言葉の意味を理解している。

「熱つつ……こんなに怪我するならいっそ村人喰っておけばよかったカ?」
「マリカちゃんはお友達が増えたからもういいや、ばいばい」
 壱和は全身の煤やら刺された後やらを撫でさすり、溜息を吐いた。仲間からさんざ釘を刺されたが、おそらく村人を口にしていれば……依頼の失敗以上の最悪を招いていたことは想像に難くない。マリカはその点、毒を持とうがなんだろうが魂になれば一緒なのだろう。おもちゃを失った、或いは買い溜めて満足したかのようにいち早くその場から去っていく。
「儂も人殺しさえ出来れば満足じゃ、あまり長居はしたくないでの!」
「あ、おいちょっと、後始末までが依頼だろう! ……ったく」
「仕方ないですよ、残った人間でちゃんと燃やし尽くしましょう」
「困ったもんだけどな。あとは土壌に塩を撒くか」
 キリカは趣味に走ってスッキリしたのか、後始末までが依頼であることをスッポ抜けた頭でそのまま去っていく。呼び止めようとしたイズマはもはや疲労と負傷と呆れで言葉を失ったが、義務を見失わぬキイチの言葉に救われた立場だ。なお、イズマが一番えげつない後始末を考えていることは間違いないが。
「少しでも長く彼らを記憶に留めておくのがせめてもの罪滅ぼしでしょう」
「ああ、殺すことで恨んでもらえれば、あいつらの心に私がのこってるなら……それはそれでよかったのかもしれねえな。私は死神なんだからよ」
「でしたら、私は母殺しですので」
「張り合うなよ……」
 赫赫と燃え上がる炎を押し広げながら、エルシアは淡々と仕事を熟す。死んでいった者達は、助けたはずの者達だと、閉じられた瞼を見ながら、燃える炎に投げ込みながらミーナは声を震わせた。エルシアの言葉は、果たして冗談だったのやら。
 これで、村から無限香花へと栄養は届くまい。これを弱らせて殺すか、速やかに殺すかは、最早。『そうすべき者達』に委ねられている。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

エマ・ウィートラント(p3p005065)[重傷]
Enigma
玄野 壱和(p3p010806)[重傷]
ねこ

あとがき

 お疲れ様でした。
 前回同様、今回も「リカバリーがないと一発で失敗になりうる不安要素」が幾つか盛り込んであったのですが、相談段階で大体潰されていたようで正直胸をなでおろしています。
 リベンジ組がちょいちょい混じっていたのはちょっとした誤算でした。もう少し入るのに躊躇すると思ってた……。
 それはそれとして、これから2つの選択肢があります。
 即座に撃破に動くとなれば、難易度はそこそこ高い状態で無限香花に挑まねばなりません。
 そうではなく、周辺の栄養枯渇から無限香花の体力減を狙うなら、若干の日にちを空ける必要があります。
 その辺りは十分ご検討のほどをお願い致します(これに関しては一定期間内に届いたアフターアクションの内容その他で判断する場合があります)。

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