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シナリオ詳細

<Stahl Gebrull>今は亡き王への忠節

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「この忙しい時に、別ルートが見つかるなんてね」
 そう呟いたのはオデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)である。
 ここはエピトゥシ城と地下で通じていたとある遺跡。
 もう少し先に進めば、そこには魔王イルドゼギア四天王のクローン2体とイレギュラーズが戦った場所がある。
 毒々しい魔力と瘴気のもたらす澱んだ空気に包まれたそこは、今やエピトゥシ城防衛戦のためにイレギュラーズの手で魔改造を施されていた。
 だが、今回の問題はそこではない。
 魔改造を施し終え、今回の『鋼の咆哮』作戦を開始せんとしたそんなある時だった。
 偶然――本当にまったくの偶然なのだが、隠されていた通路が見つかったのだ。
 その通路はエピトゥシ城へと至るのとはまるで違う方向に伸びていた。
 そこでこの遺跡を支部の防衛機構の1つとして使うのはどうかとの策を立てたオデットやヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)の2人をはじめとするイレギュラーズとそれに軍務派軍人であるユリアーナによる探索が行われることになった。
 既に足を進軍を開始してから数分。
 敵対勢力のような者もおらず、防衛装置の類も無い何の変哲もない通路が延々と続いていた。
 それはまるで迷宮のようにも感じられるのは気のせいだろうか――などという考えすら出てくるころ。
「――――!」
「おや?」
 ヴェルミリオは思わず首を傾げる。
 かたりと首の骨が音を立てた。
「皆様、何やら聞こえませんでしたかな?」
「そうね、なんだか人の声みたいのが……」
 オデットが頷いた刹那――何かが壁にぶつかるような音が響いた。
 遺跡の一箇所、そこの壁面がぱらぱらと小さく崩れる。
「な、なによ、今の!?」
「――つつ……――な!」
「! やっぱり、そうですぞ。ええっと……ここ、この辺りから……」
 ヴェルミリオが驚きつつも近づいて壁面に触れ――ふと何かに触れた。
 かちりと音が鳴り――くるり。
「あっ!」
 そう呟くヴェルミリオ共々、壁が翻った。
「むむっ、新手……おや、スケさん殿ではござらんか!」
 盛大に倒れこんだヴェルミリオの上から声。
「お、おお! 貴方はダルギーズのクローン体! 生きていたのですな!」
 ヴェルミリオ同様に骸骨兵を思わせる風貌をした青い鬼火の剣士。
 他所でもよく見たダルギーズのクローン体の1つだ。
「むっ!」
 顔を上げたダルギーズがヴェルミリオの正面に立ち――直後の閃光。
「ちょっと、大丈夫!? って、あなた!」
 そこへオデットが姿を見せ、次々とイレギュラーズが入ってくる。
 一同がダルギーズ・クローンに臨戦態勢を取った直後――
「某に警戒なさるのもよろしいが、まずは周りの把握をしておくべきでござるよ!」
 イレギュラーズに振り返ることもせず告げたダルギーズに従い周囲を見る。
「こいつらってたしか、なんとかアームズ?」
 改めて周りを把握すれば、地下であることを忘れさせるほどの広大な空間が広がっている。
 その空間には複数体のゴーレムの姿がある。
 セレストアームズ――所謂イレギュラーズが修理したりなどで友好な個体もあった彼らから、その上位であるハイアームズ。
 だがもう1体。今まで見たことのない個体がある。
『――せ、――せ、――殺してくれ――』
 悲痛な声だった。
 それは今まで見たことも無かったその個体から聞こえてきた。
「聞いたことのある声だが……鉄帝軍人か?
 顔を覚えている……というほどの関係ではなさそうだが」
 目を細めたユリアーナが訝しむ。
 だが、アームズの姿にはどこにも『人間』らしさはない。
 それは鉄騎種がどうとかのレベルではないほどに。
「……つまり、あの個体は『人の魂を動力源の類に採用した上位個体』のようなものと考えた方が自然だろう」
「そんな……! 救える方法は?」
「……ないだろうな。恐らく。しいて言えば、苦しまずに殺してやることぐらいだろう」
 オデットの言葉にユリアーナがふるふると首を振った。
 その直後、アームズの上位個体がぶっ放したミサイルがイレギュラーズめがけて降り注ぐ。
 牽制だったのか、傷を負うほどの火力ではないが――
「――っていうか、助けるどうこう言ってる場合じゃないわねこれ!」
「はははっ! 全くその通りでござる! いやはや、勇者殿!
 某はクローンなれどイルドゼギア様の四天の一、彼奴らを魔王城へ踏み入れさせる気はござらん。
 しばしの間、共に戦うという手もござるが、いかがいたす!」
 飛んできたゴーレムの斧を盾で防ぎ、反撃の太刀を入れながらダルギーズが声をあげた。


 憤怒の魔種となったパトリック大佐は、アーカーシュの最高権限(システム・メタトロン)なるものを手に入れている。
 おそらく古代遺跡に未だ眠る脅威を大軍勢として仕掛けてくるだろう。
 そう読んだ鉄帝国皇帝ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)は、帝国として『後始末』をつけるため、イレギュラーズであり帝国軍の大佐でもあるエッダ・フロールリジ(p3p006270)に、次なる戦い、即ち魔種パトリックとの全面対決――決戦の指揮権を与えた。
 こうして鉄帝国軍とイレギュラーズは、予想される大規模戦闘に備え始めたのだ。

 イレギュラーズは前作戦『鋼の進撃(Stahl Eroberung)』において、魔王城『エピトゥシ城』を入手している。
 ここは『後から作られた遺跡』であり、アーカーシュの権限――つまりパトリックのコントロールが及ばない唯一の場所だ。今や魔王城は、アーカーシュにおける最も安全な場所なのである。
 鉄帝国はこの場所をローレットに与え、新たな支部となった。ローレット魔王城支部の爆誕である。
 帝国軍とイレギュラーズは、急遽改築されたこの城を拠点に、作戦行動するのだ。
 即ちパトリック軍の迎撃、そして討伐のための進撃である。
 レリッカ村の住人も、この城に避難し終えており、決戦前夜の機運が高まっている。

 ――とはいえ、これはただのパトリックの討伐作戦ではない。
 彼はあくまで殉職扱いとなっている。
 即ちは、彼の魂を歪めた存在(魔種)の討伐は、鉄帝国の同胞パトリックへ手向ける弔い合戦である――と。

 そんな時だった。
 突如としてアーカーシュから超高温のエネルギー砲が発射されたのだ。
 名は『ラトラナジュの火』――それこそ、かつて魔王が求めた伝説の古代兵器の姿であった。
 文字通り大地を抉りとり、町を丸ごと吹き飛ばさんばかりの超火力。
 そして魔種は宣言した――『私はパトリック・アネル、鉄帝国の次期皇帝となる男だ!』――と。
 そんなものをそんなものを帝都に撃ち込まれるなどあってはならない。

 ――作戦は宣言され、鋼の咆哮が浮遊島を貫く時が来たのである。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 三つ巴となるか、共闘となるかは皆様次第。
 楽しんでまいりましょう。

●オーダー
【1】エピトゥシ城の防衛

●フィールドデータ
 エピトゥシ城の地下、前段作戦においてイレギュラーズが踏破した遺跡。
 そこに存在していた隠し通路から辿り着いた不思議な部屋です。

 多面体の敷き詰められたような壁面はショコラ・ドングリス遺跡を思わせますが、
 全体の薄暗い雰囲気はエピトゥシ城を思わせます。

 多面体の壁面は3Tに一度、角ばったレーザー砲のような形状を取り、
 陣営を問わずレーザー砲撃をぶっ放してきます。

●エネミーデータ
・天空機団共通
 古代の防衛兵器達です。
 イレギュラーズ及びダルギーズ・クローンを敵対勢力として行動します。
 アルトラアームズの統率を受けており、アルトラアームズを倒すことで動きが鈍る可能性があります。

 ハイアームズの下に各セレストアームズが2体ずつの小隊のようなものを構築し、
 それをアルトラアームズが統率するような形です。


・アルトラアームズ(天空機将)
 アームズ系の敵に対する指揮能力の搭載されたアームズ系の上位個体です。
 足と背中にミサイルポッドを搭載した四本腕の機体です。
 飛行機能を有し、ドローンを搭載しています。
 パトリックによって起動されました。エンジンに特務派軍人の魂が使われています。
 ユリアーナ曰く『聞き覚えはあるが顔までは思い出せない』とのこと。
 完全に身体ごと融合しており、破壊して終わらせてあげることが救いとなります。

 物理神秘両面型、HP、EXA、命中などが高め。

 ミサイルポッドからの物理中~遠距離攻撃、
 ドローンから神秘遠距離攻撃の他、近接格闘攻撃を行います。
 その他、スキルとして以下のような攻撃を行います。

<スキル>
誘導ミサイル:無数のミサイルを一定範囲に向けて射出します。
物中扇or物超範 威力中 【万能】【スプラッシュ2】【致死毒】【業炎】【崩れ】

集束レーザー:多数のレーザーを一定地点に向けて照射します。
神超単or神超貫 威力大 【万能】【追撃】【炎獄】【氷漬】【ショック】

多機能多腕:近接範囲内に向けて多腕で攻撃します。
物近単or物自域 威力中 【スプラッシュ2】【邪道】【致命】【滂沱】

・ハイアームズ(天空闘騎)×2
 アームズ系の上位個体です。飛行機能を有します。
 パワフルでタフです。
 腕をドリルのように回転させての近接戦闘の他、
 瞳相当の部品から高熱のビームを放つ遠貫攻撃を持ちます。

【火炎】系列、【出血系列】、【致命】のBSを用います。
【追撃】を持ちます。

・セレストアームズ(天空機兵)〔斧〕×4
 アーカーシュに眠る古代の防衛兵器です。
 近接戦闘全般に長け、力強い斬撃を行います。
 射程は単体の他、近範、近扇を持ちます。
 飛行機能を有します。

【出血】系列、【乱れ】系列、【致命】のBSを用います。
 また、【防無】を持ちます。

・セレストアームズ(天空機兵)〔槍〕×4
 アーカーシュに眠る古代の防衛兵器です。
 近接戦闘全般に長け、素早い突撃を行います。
 射程は単体の他、近貫を持ちます。
 飛行機能を有します。

【出血】系列、【毒】系列、【致命】のBSを用います。
 また、【追撃】を持ちます。

・セレストアームズ(天空機兵)〔銃〕×4
 アーカーシュに眠る古代の防衛兵器です。
 遠距離闘全般に長け、恐ろしい銃撃を行います。
 射程は単体の他、遠貫を持ちます。
 飛行機能を有します。

【凍結】系列、【足止め】系列、【致命】のBSを用います。
 また、【スプラッシュ】を持ちます。

●中立またはエネミーデータ
・『骸騎将』ダルギーズ・クローン
 鎧を着た骸骨です。いわゆる剣士といった雰囲気です。
 前段シナリオにてイレギュラーズ側との戦闘後に行方をくらましたクローン体です。

 当シナリオにおいては皆さんが望めば友軍として共にアームズとの戦いに参加します。
 戦力としては非常に強力ではありますが、シナリオ開始時点で既にアームズらとの交戦を始めていたらしく、かなりの損耗が見受けられます。

 友軍として戦う場合、アームズとの戦いの後にイレギュラーズと戦う気力と体力はありません。
 イレギュラーズとの連戦になるまでもなく、そのまま死亡すると思われます。
 三つ巴を選んだとしても倒すことは難しくはないでしょうし、それを卑怯とは思わず剣を振るうでしょう。

 堅実な戦闘スタイルをした剣士であり、【反】を持ちます。
 また【ブレイク】、【単体必殺】を持ちます。

 自身の剣を【火炎】系、【凍結】系、【乱れ】系のBSいずれかを付与した魔剣へ性質を変化させます。
 魔剣の力をフルで発揮し、神超貫の魔力砲撃を保有します。
 パッシヴに底力系のステータス向上、復讐を持ちます。

●友軍データ
・『銀閃の乙女』ユリアーナ
 軍務派の鉄帝国軍人。反応型EXAアタッカーです。
 何かやらせたい場合はプレイングで知らせてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Stahl Gebrull>今は亡き王への忠節完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年09月01日 22時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日の優しさ
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
サンディ・カルタ(p3p000438)
抗う者
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
マルク・シリング(p3p001309)
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ラムダ・アイリス(p3p008609)
咎狩り
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

リプレイ


「このような所で貴殿にお会いするとは何たる偶然、さらに肩を並べて戦う事になるとは何たる奇縁!
 “生きる”とはやはり面白い!」
「まさに! 某もまさか再会できるとは思ってござらなんだ!」
 立ち上がった『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)に対して、ダルギーズがからりと笑う。
「しかし、人に骸骨兵にクローンに人魂ゴーレム……多種多様とはこのことですな!」
「かかか! そう考えるとその通りでござるな!」
「このまま語り合う……というわけにもいきませんな。まずは彼らを鎮めねば」
「しかればいかがいたす?」
「他の火力役の方と目標を合わせて戦っていただけますかな?
 貴殿の強さはスケさんがこの身を持って知っておりますゆえ、頼りにさせていただきますぞ!
 盾役はどうぞお任せを! スケさんのしぶとさはご存知でしょう?」
「共闘でござるな! 承知いたした! それではお任せいたす!」
 楽しそうに笑うダルギーズ――似て非なる骸骨兵の傷だらけの背を見やった朱色の瞳がゴーレムを映す。
(なんかやり合ったやつと共闘するなんて変な気分。
でもまぁ、その信念は嫌いじゃないし別にいいか)
 降り注ぐミサイル群を防ぎ切りながら『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は少し前にいる骸骨戦士を見た。
(なんてね。妖精は気まぐれなのよ)
 温かな光をその手に集めつつ、オデットの視線は気まぐれに笑む。
「今は亡き王への忠節……か。その心意気、気に入ったぜ。
 このヨハンナ=ベルンシュタイン、忠義の骸骨剣士の為にも全力を尽くそう。
 敵の敵は味方だ。そうだろ?」
 魔弓から炎の矢を牽制のように打ち出しながら『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)はダルギーズクローンの方へと己の名を告げる。
「おお! 流石に頼もしいでござる!
 拙者はダルギーズ……まぁ、そんなことは分かっておられるやもしれぬが!」
 からからと笑うダルギーズの音は骨同士が擦れるようだ。
 健在を装うようにして剣を振るうダルギーズの様子を見ながらも、ヨハンナはその骨の身体に刻まれた傷の数に察した。
(彼はきっと……もう、持たない。ならば、最後の花道を贈ろうじゃないか)
 魔弓へ炎が揺蕩う。
 それはまるで魂の揺らめきのように。
(忠義――私にとっては、騎兵隊の皆の信頼に応える時が近いかしら)
 戦旗を掲げるようにして立て『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はその単語に思いを馳せる。
「私は貴方に敬意を表する。
 だから、私は今この間、魔王城を守る輩として貴方と共に立つ。
 何に忠を尽くすべきか――行くわ」
 すらりと黒剣を抜いて構えれば。
「神がそれを望まれる」
 宣誓と共に紫紺の瞳が深く輝いた。
(死してなおの忠誠、か……。
 テレーゼ様はそんなこと望まないと思うけれど、そうありたいという気持ちは理解できる……つもり、だよ)
 マルク・シリング(p3p001309)はしばしの間、目を閉じて深呼吸を一つ。
「でもそれは、自らの意志でそうあるべきだ。だから君は敬すべき相手だし、
 望まぬ形でアルトラアームズに捧げられた彼は……速やかに、その魂を解放しよう」
 ダルギーズの背中に告げれば、ワールドリンカーがキューブを形作っていく。
「ゼシュテルの軍人が暴走した末の騒動なら、ゼシュテル人がシマツを付けなきゃね!」
 真剣な瞳で名の知らぬ鉄帝軍人を元とするアルトラアームズに視線を向けて、すぅ、と目を細める。
(死んでも戦い続けられるのはゼシュテル人の本願でもあるけれど、鍛える身体がなくなってちゃなぁ……)
「ゼシュテル……おぉ、今、この島の下にあるという国でござるか!」
 聞こえていたらしいダルギーズが驚いた様子で声をあげる。
「少しの間、ヨロシク! 握手したアイテと次の日に殺し合えば、殺し合ったアイテと今日は共に闘うのもまた渡世だね!」
「ははは! まさしくその通りでござる!」
 頼もしそうに、楽しそうに笑いながら言うダルギーズにはまだ余裕がありそうだ。
「既に亡き王へ忠を誓う騎士と堕ちた大佐によって魂を囚われた軍人……なんともまあ皮肉なものだ」
 術符を取り出す『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は視線を上げて両者を見れば。
「ははは、騎士とはまた! そう言われると少しばかり照れるでござるな!
 某、そのような善き存在ではござらんよ!」
 錬の言葉が聞こえたらしいダルギーズが声をあげて陽気に笑う。
 この戦いは『パトリックへの弔い合戦』だ――そうと考えれば、なるほどあの2人はどちらも『既に亡き王』に仕え続ける道を選んだ者たちともいえるのか。
「それにしても……ダルギーズ、意外と余裕あるな!」
「かかか、英雄殿のお力添えをいただけるというのでござるゆえ。
 楽しくないといえば嘘でござろうよ!」
「そりゃあ良かった。……状況は俺達に追い風、早いところ解放させてやらないとな」
 返事を返してから、錬は術符より鍛造を開始する。
「わーお、見事な布陣……っていうか攻撃の層が厚いんだけど!?
 鉄帝軍人って言えばほら、脳筋で武装の能力とかガン無視でそのまま突っ込んできて殴りかかってくるイメージじゃない!」
 敵の布陣を眺めみた『咎狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)が風評被害というか事実というか微妙なラインを叫ぶのも仕方のない事か。
 とはいえ、布陣の攻撃特化っぷりを見れば脳筋というのも間違いではなさそうだが。
「一歩間違えたら作戦中にこの隠し通路から天空機団の団体様に背後から襲撃を受けてたわけね。
 ……偶々とはいえ運が良かったと言うべきかな?」
「隠し通路が事前に知れて良かったわね」
 両手の術式を活性化させ、爪に攻勢を抱く『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の視線の先で、壁面のキューブ体が一箇所へと集合し、その形状を変えていく。
 ラインが幾つも発光し、熱量を帯びて行くのが見えたかと思えば、刹那――熱線が戦場を駆けた。
 射線にイナリの姿はない――その代わり、ぴょんと跳躍し、そのままくるりと身を翻したのは『ゴミ山の英雄』サンディ・カルタ(p3p000438)である。
「おっと、あぶねえな!」
 着地と同時、サンディは思わずつぶやくのだ。
 放たれた熱線が地面を焦がし、熱を帯びて橙色に溶ける。
(多分、元々防衛機構なんだろ?
 レーザーの向きとかがある程度分かれば良いんだが)
 ブロック型の壁面が不規則な動きを経て形状を解く。
「こんな所で防衛装置が稼働してるなんてな。後で魔改造してやるから大人しく待ってな!」
 錬はその様子を眺めみるや、疼く職人魂をそのままに口に出す。
「それなら、この邪魔で憎々しい連中をさっさと倒すわよ!」
 錬に応じるように言えば、イナリは一気に走り出した。
 誰よりも速い圧倒的な速度を以ってアルトラアームズの背後へと飛んだ。
「私が相手よ。大人しくしてなさいな!」
 戦場の最奥、アルトラアームズの背後にてイナリは術式を更に活性化させる。
 圧倒的な反応速度から紡がれる爪牙の斬撃は金色を抱いて迸り、遅れて小麦色の髪が踊り狂う。
「この辺りとかどうかしらね」
 虚空を切り裂く爪の一撃は狙いすましたようにアルトラアームズの身体に傷を刻む。
 突き立つ爪がアルトラアームズの挙動を生むパーツに突き立てば、スパークが微かに爆ぜた。
 鮮やかに撃ち抜くような刺突と斬撃は鍛冶と修理を可能とするセンスをフルに活用して『直しがたい箇所』を暴き立て動きを封じて行く。
「……より速く、より多くへ。制圧戦は得意なンだぜ?
 さぁ、俺の術中へ堕ちるンだなァ」
 数多の機体を見据え、ヨハンナは静かに零す。
 全身を熱が帯びて、仄かに緋色の光がヨハンナを包んでいく。

 ――神は復讐を咎める、神の怒りに任せよと

 出力が一段階跳ねあがる。

 ――だが神は手を差し伸べず

 抑えつけられた力の一切を、1つずつ解き放てば、仄かな輝きは良い濃く鮮やかにその掌に収束する。
「故にこの手を鮮血に染めよう」
 荒れ狂う術式は彼女の本質を示すもの。
 美しき獣の本性をさらけ出し、戦場を焼かんばかりの炎を抱き。
 それらはやがて、たった一本の矢へと姿を変える。
「復讐するは”我”にあり──」
 魔導弓へと添えた紅蓮の炎――引き絞り、放たれた一条の炎が迸る。
 それは幾度にもわたり多くの個体を炎の中に包み込む。
「オーケー、オレはあいつらだね!」
 イグナートは広く視野を確保するように試みながら目を閉じる。
 意識を集中して呼吸を整えれば、極限の集中の向こう側で複数のゴーレムの姿を捉えた。
 再び目を開けば、ゴーレムたちへと飛んだであろう気配に絡めとられた個体たちがイグナートを見ていた。
「ヨウシャはしないよ!」
 獰猛に笑い――拳士は己が武器(こぶし)を握り、腰を落とした。
「照らし、飲み干せ」
 錬はそれの様子を確かめるや作り出した虚像の鏡を天に掲げた。
 写り込む昏き太陽が鏡の内側から深き闇を溢れださせる。
 闇に照らされたセレストアームズ達の動きが著しく落ちて行く。
「ユリアーナ、一緒にお願いできる?」
「あぁ。どれからいく?」
「そうね――それじゃあ」
 イーリンは旗を掲げ、一気に走り出した。
 視線の先にいる両手が銃になったセレストアームズに握りしめた黒剣を振り抜いた。
 鮮やかな三閃は黒を抱いて紡がれる。
 追撃の連撃を刻んでいく。
 踊るように鮮やかな足運びと剣の軌跡を生み出す様は、いっそ捨て身と呼んでもいいほどに。
 その視線は戦場をめぐり、御旗は倒れる事なく戦場のど真ん中に立っている。
 追撃となるユリアーナの槍が終息へ向かうダンスを引き継いで紡がれていく。
「まずはお手並み拝見だね」
 アイリスは式魔導収束砲に籠めた魔力を2発ぶっ放す。
 魔弾は尾を引くような黒を描きながら縦横に走り抜け、やがて銃型のセレストアームズの1体を貫いた。
 間髪を入れずに放たれたもう1発が追撃のようになって再びその身体に食い込んでいく。
 強烈な連撃を浴びた敵軍の様子は思ったような動きではないのだろう。
 最奥にあるアルトラアームズはイナリの猛攻を受けてその身動きを封じ込められている。
 両手が銃のようになったセレストアームズの内の1体はイーリンへと無茶苦茶な距離からの砲撃を叩きこんでこそいるがそれだけだ。
 銃口をイレギュラーズへと巡らせた2体のセレストアームズは放った銃弾が不発となっている。
「――殲滅スル」
「――破壊セヨ」
 そうなれば代わって動くのは前衛となる槍と斧の個体であろう。
 巨大な斧を握り締めたセレストアームズがハイアームズに引き連れられて飛翔。
 そのまま一気に地面へと落下する。
 地面を打ち付けた斧の衝撃が大地を揺らす。
「止まってもらうよ」
 飛空探査艇に跨るマルクもまたセレストアームズの斧を受けていた。
 マルクは呼吸を整えて体勢を整えると、ワールドリンカーをハイアームズと銃型の一部を巻き込むような位置を指定する。
 天へと昇るようにして射出されたキューブ状の魔弾は幾つにもわたって分裂しながら戦場を飛翔する。
 放物線を描いた魔弾がハイアームズの上空で何かに呑まれ――代わって世界に穴が開いた。
 零れ落ちるは泥。根源たる汚泥がそれを呑みほしていく。
「あんた達も悪さする前に落としてあげる! お願い、手伝って」
 オデットは両の掌を空へ掲げるようにして仰いだ。
 姿を見せたのは小さな光。
 それは熱を帯びた光となり、飛翔してセレストアームズの頭上へと走る。
 そのままくるくると幾度かの旋回すれば、一際大きな光を放つ。
 放たれたのは熱。ラサをそれを思わせる熱がゴーレムたちの身体に絡みついて行く。
「ダルギーズ殿に大見得切ったわけですからな。
 恥ずかしくない姿を見せるところですな!」
 ヴェルミリオはそういうと術式を起動する。
 朱色の輝きが戦場を迸り、複数の斧型セレストアームズの身体を絡めとっていく。
 縛り付けるような術式を嫌ったようにセレストアームズ達の視線がヴェルミリオへと集まっていく。
「これは某も負けてられませんな!」
 それを見てダルギーズが笑い、剣を振り抜いた。
「確かに太古の昔にゃ栄えたんだろうが、そのころから『嵐』にゃ苦しんでんじゃねえか?」
 ナイフへと纏うは嵐。
 槍と斧を握るセレストアームズらの中央にいる1体へと投擲すれば、ナイフは着弾の瞬間に内側に揺蕩う嵐の暴威をまき散らす。
 嵐の権能がそれらの身体に異常を刻み付け、邪霊の声が彼らを呪い殺すように傷つける。
 その最中、サンディの視線が静かにアルトラアームズを捉える。
「――よう、元気か?
 ほんとはレディのお願いごとしか聞かねーんだぜ? 俺はさぁ」
 意思疎通を図る問いかけに、アルトラアームズが周囲を見渡すような動作を見せた。
「んだけどまぁ、今回はそうも言ってられねーよな。
 だからまぁ、アンタもてつだってくれねーか?」
 サンディの声は、果たして聞こえていたのだろうか。


「てめえらで俺を捉えられるかな!」
 複数の砲撃を受け、或いは躱しながらサンディは挑発的に笑って見せる。
 まるで挑発に応じるように、銃型の砲撃がサンディを狙って撃ち抜かれていく。
「風を捉えられるか!」
 飛び回るように駆けるサンディはその挙動の合間に自然にナイフを投擲していく。
「意外といけるわね!
 今楽にしてあげるわ……バラバラに解体してあげるから大人しくしてなさい!」
 自らの技術をフル活用するイナリは術式により刃のようになった爪を構えると、一気にアルトラアームズへと斬撃を見舞う。
「飛行機能は……そのジェットパックみたいなのかしら!」
 穿つように、忍び込ませるように描く軌跡。
 美しき金色の旋風と化したイナリの斬撃はアルトラアームズの装甲を抉り、切り刻んでいく。
 銃型のセレストアームズが倒れて行くのを確かめ錬は一気に跳躍する。
「――墜ちろ!!」
 跳躍からの振り下ろし。
 それはセレストアームズの斧型にも似た動きであった。
 振り下ろしたそれは神秘を帯びた五行の循環を為す業物。
 両腕を構えて防がんとしたハイアームズの両腕ごとに零距離の斬撃が断ち割った。
 2体のハイアームズの間、イーリンは旗を握り締めた。
 その身体に傷は多い。
「上等――」
 ヘイト管理をしているとはいえ、戦場のど真ん中に立つ旗手の姿は敵の攻撃を受けるには十分だった。
「――でも、私は倒れない。
 これが私の覚悟。私の言葉は、輩として認めるという言葉が、嘘ではないと証明するために」
 鮮やかに魔力を帯びた魔眼が輝いた。
 それに苛立つようにハイアームズがドリルのように腕を動かして攻撃を仕掛ける。
 それ受けながら、イーリンは顔を上げた。
 跳躍して、位置取りを変えれば――熱線がアルトラアームズ、ハイアームズとイーリンを巻き込んで戦場を走る。
「司書殿、大丈夫か?」
「構わないわ。それよりも、仲間に情報を。勝利の一瞬を掴むために。
 信じる仲間に――貴方達(ダルギーズ/ユリアーナ)もいるのよ。
 行きましょう、私達の勝利へ!」
「そうか――それなら私もそれを支えなくてはな」
 隣で笑うユリアーナに合わせるようにして、イーリンは黒剣に魔力を籠めた。
 紫紺に輝く魔力を全霊を以って振り抜いた。
 彼女の覚悟を乗せて。
「見えた」
 アイリスはハイアームズへと至る道を描くや、一気に駆け抜ける。
 速攻を以って描いた軌跡の最中、魔力を雷轟の銃口へ。
 それは本来であれば斬撃を為すアイリスの奥の手。
 勢いに肉薄の末に銃口をハイアームズの中心辺りへと突きつけ――引き金が引かれた。
 音を置きざる閃光が戦場を白く塗り潰し――雷が轟いた。


 確実に減っていくセレストアームズ、完全に沈黙したハイアームズを見てヴェルミリオは敵軍の最奥に視線を向ける。
「まだ“人”としての意識が残っているかは賭けですが……“人”とは何か。肉の器か?
 あるいは魂そのものか? 貴殿にまだ“貴殿の意志”が残っているのであれば抗うのです!
 辛くとも苦しくとも“貴殿の意志”を手放してはなりません!」
 揺らめく篝火の骸骨兵が告げるは叱咤の響き。
「造り主にやられっぱなしで良いのですか!
 なんのため、誰のため、何を守ろうとしたのかを思い出すのですぞ!
 ――それは、あるいはかつての自分が彼女を守るために果たした軌跡を思うように。
「お、ぉぉ――おぉ――おれ、は……く、く……にに……故郷に……」
「やるじゃねーか!
 鉄帝のあんたらが守りたかったモンなら、ひとまずは代わりに守ってやるからさ。
 だから――少しだけ抗ってみろ!」
 サンディは刹那ながらも動きを止めたアルトラアームズへと声をあげた。
「あぁぁぁああああ!!」
 アルトラアームズの、文字通りの魂の慟哭が戦場を貫いた。
 刹那、サンディが投擲したナイフが炸裂し、内包された嵐が吹き荒れアルトラアームズの身体をより強く拘束する。
「やるわね。もしかして、私と戦っている時もずっと抗ってたのかしら?」
 イナリは露骨に動きを抑えていくアルトラアームズを見下ろし、空を蹴るようにして飛び込んでいく。
「これで終わらせるわ――!」
 手刀を構えての吶喊ののち、振り抜いた両腕の斬撃がアルトラアームズの装甲を瞬く間に引き剥がし、弱点になりうる場所を露出させる。
「ダルギーズも、あんたもお疲れさん。
 後は俺たちに任せろ」
 ヨハンナは動きの緩んだアルトラアームズへ向けて、弓を構える。
 その右半身は緋色の輝きを帯び、鷲の片翼が美しく輝いている。
 その身体に抱く限界の全てを力に変えて、不死の王は魔力を引き絞る。
 放たれた紅蓮の矢は3つ。全力の魔弾の直後に伸びた呪いを帯びた矢は、破邪の結界の後ろ側で暴れ狂う。
「ダルギーズ!」
 身動きを止めるアルトラアームズを見て、ヨハンナはダルギーズの名を呼んだ。
「なんでござるかな!」
 元気のいい声を返した骸骨剣士の身体は確かな傷が増えている。
「まだやれるか!」
「……もちろんでござるよ!」
 そう言ったダルギーズが剣を掲げて振り抜き、戦場を魔剣の砲撃が走り抜けた。
「セッカクだから、君の名前を教えてよ!」
 アルトラアームズへと肉薄したイグナートが問えば。
「お、おお、おれの……俺の名――は……ファ――ム」
 ほとんど何も聞こえない声で告げられる。
 はっきりと聞こえた単語だけでは、とてもじゃないが特定できそうにない。
「あぁ! 君はラザファムか!? なるほど、道理で聞き覚えがあった!
 そうか……君は、特務に着いていたのか……そうか」
 驚いたように察したように声をあげたのはユリアーナだ。
「知り合い?」
「私の同郷だ。父の代に自警団にいて、その後は中央に転属した人物だ。
 道理で聞き覚えがあっても思い出せないはずだ」
 少し目を細め、どことなく悲しそうにも懐かしそうにも見える表情を浮かべたユリアーナが槍を振るう。
「そっか。それなら猶更だね! 後で残骸を集めて供養してアゲヨウ!」
 背中を押されるようにユリアーナが強く頷いたのに応じて、イグナートは拳を握りしめた。
「――ころ、せ――はやく――頼むから――」
「それじゃあ、いくよラザファム――」
 確かに聞いた声に応じるように、黒腕へ闘志を籠めて撃つ。
 覇竜を穿つ拳にアルトラアームズもといラザファムの身体が軋みを挙げた。
 イグナートは全身を無理矢理に動かすと、そのままに連撃を叩き込む。
 栄光の拳に合わせて穿つは破城の拳。
 ラザファムの身体がみしりと音を立てた。
「おぉぉお!! ――エラー エラー エラー システム制御を解除。
 自動防衛体制に移行します』
 雄叫びのようなものの直後に聞こえた機械音の刹那――アルトラアームズの身体がその場で回転を開始する。
「――させるか!」
 錬は握りしめた相克斧を思いっきり横に薙いだ。
 回転の終わりに合わせて撃ち込まれた斬撃ないし打撃がアルトラアームズの装甲を横薙ぎに抉り取る。
 想像を絶する高火力の斬撃を受けたアルトラアームズの身体がピシピシと音を立てる。
『ビビビ』
 不吉な音を立てて、アルトラアームズの身体がミサイルを吹きだそうとして、爆発を引き起こす。
「本気で征くよ? 魔力最大収斂――」
 アイリスは死角からアルトラアームズの懐へもぐりこむや、一気に踏み込んだ。
 雷轟の近距離戦用のブレードに魔力を籠める。
 極限の集中と、無想。無我の極致へと至る。
「……華散らせ……剣禅一如『彼岸花』
 人間らしい人間性を獲得するに割くリソース全てを魔力の収斂へと切り替えれば。
 撃ちされる斬撃は究極の一言。
 文字通りの全身全霊。
 刹那の斬光の末、アルトラアームズの半身がズレた。
「せめてこれ以上苦しまないように――」
 マルクはワールドリンカーに魔力を籠めた。
 キューブ状の魔力体は形状を変え、さながら剣のように姿を変えていく。
「これ以上、貴方が望まぬ戦いを強いられることのないように。
 僕達がここで止めるんだ!」
 鮮やかに輝く魔力に全てをかけて。
 マルクは思いっきり振り抜いた。
 零距離で打ち出した魔力はボロボロのアルトラアームズの身体に破滅的な破壊をもたらしていく。
「俺があんたに声をかけたからな……責任は取るぜ!
 約束もしちまったしな!」
 サンディはナイフを取り出すと再び嵐をそれに纏わせた。
 全力で投擲したナイフが露出しているアルトラアームズの核へと突き立ち――暴風がその動きを絡めとり、抑えつける。
「自動防御システム……」
 イナリはラザファムの自我の失せたアルトラアームズに自分でも気づかぬうちに目を細め、手を軽く開いた。
 そのままの肉薄、自らの攻撃により露出していた核らしきそこへ、思いっきり両手を突っ込んで引き剥がす。
 音を立てて引き剥がされた核を握り潰した辺りで、アルトラアームズが崩れ落ちた。
「かわいそうだけど眠らせてあげる」
 オデットは続くようにしてその手に太陽の光を束ねる。
 美しき極光。温かなまどろみに誘う優しい光。
 育みの光。その性質が牙を剥いた時の熱を。
 肉薄の刹那、陽光の極光をアルトラアームズへと叩きつければ、直後に光が爆ぜた。
 優しい極光と、全てを干上がらせる熱を帯びた破滅の閃光。
 陽光の優しさと厳しさを体現した壮絶な一撃がその身体に猛攻を刻んでいく。
「――太陽の光のもとでおやすみなさい」
 慈しむような微笑と共に、もう一度の光が戦場を包み込んだ。


 兵器が崩れ落ち、戦いが終わりを告げる。
 それと殆ど同時、イレギュラーズは何かが崩れ落ちる音を聞いた。
「おや……足に力が入りませぬ」
 拍子抜けしたような声だった。
 そちらを見れば、尻もちをつくようにして倒れる骸骨兵が一人。
「どうやら、某も時間切れのようでござるな……」
 拍子抜けするほど呑気な声でダルギーズが笑う。
「治療は……無理そうだな」
 ヨハンナは医師としてダルギーズの身体を見る。
「かか、そうでござろうな。そもそも、某の傷は奴らとの戦いだけの物ではござらぬゆえ」
 その身体が、どうしようもない『終わり』が近づいているのは明白だ。
(刻まれた傷の数と種類がアームズの奴らのだけじゃねぇ……)
 状態を見ればそれは直ぐに分かった。
(ここまでの道中、自棄に敵性個体がいなかったのも……もしかすると)
 そんなことも思い浮かべるほど、その身体に刻まれた傷は多様だった。
「最期を看取るのも医者の務めだ。……来世で会える事を祈ってる」
「はっはっは! しかり、しかり。その時は輩でも、あるいは敵となるのであれ。力いっぱいお相手致すでござる」
 からからと楽しげに笑うそれが無茶をしているのも分かって、ヨハンナはそっと目を伏せた。
「そういえば、どうして貴方はこんなところにいたのかしら?」
「ははは! 恥ずかしながら、迷子でござるよ!
 ちょびっと曲がる所を間違えて、気付いたら罠に引っかかってここに放り込まれていたでござる。
 そんな時、あれらを見て……魔王城に乗り込まれちゃ敵わんと、そう思ったのでござる」
 オデットが小首をかしげながらに問いかけたことに、ダルキーズが呟いてどこか遠くを見る。
 何かを懐かしむような雰囲気を漂わせるダルキーズにオデットは一つ、言おうと思っていたことがある。
「敵としては面倒極まりなかったけど、味方としては頼もしかったわよ」
「ははは、そう言ってもらえると嬉しいでござる」
 かたかたと骨を鳴らしながらに笑ってそういう様はどこか痛々しい。
「おやすみなさい。今度は、太陽の下で会いましょう」
 オデットが自然と口に出していた言の葉に、ダルギーズが目を見開いたように鬼火が大きく揺れる。
「ダルギーズは墓とか持たないのかな?」
 そう問いかけるイグナートにダルギーズからはやや乾いたような声。
「そもそも、某らは数が多かったでござるからなぁ。
 一々墓場などあっても置き切れんでござるよ」
 からりともう一度笑って首を振る。
 クローン体であったイルドゼギア四天王――なるほど、前段の戦いでその殆どが倒された彼らの数を考える。
 あの人数の同一存在を一つ一つ墓に入れていたら土地が足らなくなる。
 それも道理であろうか。
「ただ、願わくば……他の某同様、魔王城にて眠れるのなら、それはとても嬉しいでござる」
「そっか! それじゃあオレ達にマカセテ! 送り届けるよ」
 イグナートの言葉に、ダルギーズが笑ったように見えたのは、きっときのせいではない。
「しかし、惜しいですな……貴殿とは様々を語り合ってみたかったのですぞ。
 貴殿がこの先も手を貸してくだされば、とも……いや、無粋でしたかな?」
「スケさん殿……」
 ふいに、ダルギーズの鬼火がふっと消える。
 目を閉じて思い馳せるような――そんな雰囲気。
 再び鬼火をボゥと燃やして、笑った気がする。
「某も、貴殿とは語り合ってみたかったでござる! 然れども、それは某の未練ではござらん」
 かと思えば、嬉しそうに、楽しそうに骸骨が声をあげた。
「……どうしてですかな?」
「うむ! 死ぬ前に某以外の某の輩に出会えたでござる。
 オリジンには、そのような者がいたかどうか……知りませぬが、他の四天王を思い起こすに想像はつくでござる。
 故、某は……某はきっと、幸福、というものでござろう。そう思うでござる」
「そうですな! スケさんと、此処にいる皆様、それに貴方は友と言って、良いと思いますぞ!」
「……うむ、うむ。満足、満足でござる……友よ」
 しきりに頷いてダルギーズがもう一度目を閉じる――そんな風に、鬼火を絶やす。
 けれど、今度のそれはもう一度灯ることはなく、だらりと落ちていった。
「その精神に敬意を。その魂に安らぎを」
 そっと目を伏せたマルクはその戦場に消えた2つの魂へと黙とうをささげる。
「任を解く……」
 それは、鉄帝軍人へと告げる言の葉であり――きっと、生き残ってあったクローンへと告げる言葉でもあった。
「綺麗ね、同じ物を守るのって――」
「いいわねえ。イーリンちゃん」
 その様子を遠巻きに見て呟いたイーリンが声を聞けば陶と笑むレイリンがすぐそこにいた。
「この子はもう、生きてはいられないでしょうけれど。
 それ以外の子供達の面倒は、私も見させてもらうわね」
「……頼むわね、レイリン」
「――もちろん。貴女は進みなさい。それでこそのイーリンちゃんだもの」
 その呟きに押されるように、イーリンは顔を上げた。

成否

成功

MVP

ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

状態異常

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)[重傷]
天才になれなかった女

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
ダルギーズにしろ、アルトラアームズにしろ、実のところ、普通に敵として死んでいくはずの個体たちでした。
そう終わらなかったのは皆様のご活躍の賜物です。

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