シナリオ詳細
<13th retaliation>Psyche
オープニング
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「フロース……」
呟くクラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は己の幼なじみであるターフェアイトと彼が追っていた『精霊様』の行方を捜している。
反転し、苛立ちと怒りを募らせたターフェアイトの言葉は鋭いナイフのように修道女の娘の心を剔り揺らがせた。
望むことを捨て去り、神が為にと信仰の礎となる事を選んだ娘の亡郷は『精霊様』の所為で滅んだらしい。
他者の感情を増幅させる無垢なる精霊は大樹の嘆きと呼ばれた森の防衛機構であった。
彼女は無知で無垢な儘に、他者の心を返した。返して、返して、返し続けて――そうして村人は諍いの最中にあった。
芽生えた怒りが殺意に転じるのは易く。抱いた恐怖は斯くも簡単に他者を害する刃となった。
そうして村は滅びの一途を辿ったそうだ。
幼き日のクラリーチェが友人と共に呼び寄せた『精霊』は村を滅ぼしても尚、口にしていたらしい。
――怖い、ってなに? 殺す、ってなに? しぬ、こわい?
無知は罪だ。無垢は言い訳にもならない。故にターフェアイトはソレを殺すために反転と呼ばれた別離を転がり落ちたのだろう。
彼が刃を向ける先に存在した精霊様もまた、『大罪』の声に耳を傾け森を害する者を排する事を選んだらしい。
ころすは、こわすは、こわいは、つらいは――……『たのしい』
その言葉ばかりが耳に残る。クラリーチェは嘆息しながらも吹雪吹き荒れる大樹ファルカウを目指した。
その地に『フロース』が居ると耳にしたからだ。同様に、数人の魔種の姿が観測されたと聞き、アリシス・シーアルジア(p3p000397)とリンディス=クァドラータ(p3p007979)も同行を申し出る。
「お二人はこの先で視られたという魔種を追っているのですよね」
クラリーチェの問いかけにアリシスは「ええ」と頷いた。リンディスも気にはなっていた存在が居たという。
それが『魔種』ブルーベルとリュシアンだ。
アリシスにとってはラサで引き受けたなんてこと無い仕事の一つである。
とある遺跡の中でマッドサイエンティストが教え子の少女をキマイラに変化させた。
その変化に携わっていたのは妖精郷に脅威を齎した錬金術師タータリクスと、ブルーベルとリュシアンの師である『博士』である。
「博士……いえ、『プスケ・ピオニー・ブリューゲル』の開いた私塾は後々に様々な影響を齎しました。
彼が開いたアカデミアは不幸の温床と云えるのでしょうか……。
教え子であったタータリクスは転じ、妖精郷を襲いました。
ブルーベルは奴隷商人に拐かされそうになった所を甘言を齎す『怠惰の魔種』の声に縋り付き反転を。
リュシアンは博士とタータリクスによってキマイラと化した幼なじみジナイーダの仇討ちのために、反転し無数の『反転者』を出したと言います」
アリシスの語らう言葉にリンディスの頭に過ったのはアカデミアに出入りしていたという不老種であった『ニルヴァーナ・マハノフ』――ニーナであった。彼女はまだ博士を探しているのだろうか。
ファルベライズ遺跡群で共闘したリュシアンは、カムイグラで凶行を齎した『巫女姫』エルメリア・フィルティスの反転にも携わっていた。
「……どのような事情があれ、赦される事ではないのでしょうね」
「ええ。そうですね。どのような事情があれども、……存在であれども、失われた者は戻ってこない」
それは、フロースが如何に無垢で無知であろうとも、クラリーチェの故郷が帰らぬ事を示し。
それは、リュシアンが如何に悪逆なる恩師の行いを非難しようとも、それ以上に齎した結果が危険であったことを示し。
それは、ブルーベルが如何に恐怖の体験を重ねてきたと言えども、世界の敵である魔種である事に変わりないことを示していた。
●
猛吹雪の中に、水色の髪の少女が立っている。
「……やっぱ来るじゃん」
「ベル、下がって」
イレギュラーズの姿を確認して、水色の髪の少女ブルーベルの前に立ったのはリュシアンと名乗る魔種であった。
冬の王の権能はどうやら彼女達の『ご主人様』に利用されているのだろう。その封印が解き放たれてからと云うもの、深緑は寒々しい冬に包まれている。
「こんちは、イレギュラーズ。
ご承知置きの通りあたしは魔種ブルーベル。名前嫌いなんでね、Bちゃんって呼んで。
ついでに言やーアンタらが言うところの冠位魔種『怠惰』の部下。
んでもって、コッチはあたしの幼なじみのリュシアン。アンタらも知ってるだろけど冠位魔種『色欲』の部下ね。
自己紹介はこれ位。そっちの眼鏡シスターちゃんは精霊追ってきたんでしょ」
「……ええ」
身構えるクラリーチェにブルーベルはリュシアンを肘で突く。
「アンタが探してる精霊はウチのオーナー――『色欲』が手出しした。
悪い事は言わないから触んない方がいいぜ。オーナーはいろんな所に手を出してのらりくらりしてるから」
「ホントね。まー、あたしらのバックにゃ色々着いてんでね。
これだけでも怠惰と色欲。それからスペシャルゲストもいますんでね。止めときなよ、死に急ぐのさ」
手をぐっと前に伸ばして首を振るブルーベルはあからさまに嫌悪を表していた。
「それで退く訳にはいきません。
リュシアン、貴方がジナイーダの為に動いているように……こちらもこの森のために動いています」
「……ジナイーダの事まで知られてんの? 一途が過ぎるとストーカーじゃん」
「うるせ」
軽口を交わし合う二人に何とも言えないといった様子でリンディスは肩を竦めた。
――ニーナ、無事で良かったよ。それじゃ、正義の味方に護って貰いな。
そんな風に口にする彼は優しい少年だった。魔種である以上は敵対する定めであると知りながらも、彼とブルーベルについて知りたいとリンディスは望んでいたのだ。
「あたしは主さまが幸せならそれでいい。リュシアンは『博士(せんせい)』を殺したいだけ。
ま、目的はそんなもんでね……ウチの可愛い主さまはゆっくりと眠りたいそうなんでさ。
でも、あたしも悪人じゃないからアンタらを邪魔はするけど殺したいわけじゃない。アンタらはあたしを殺したいかもしれないけど」
ブルーベルはアリシスを見遣る。とんでもないと首を振った彼女に「アンタは博士の方が気になるでしょーけど」とブルーベルは首を振った。
「懐かしいね。レースしよう。
アンタらとあたしら。どっちが『マナセ・セレーネ・ムーンキー』の残した制御装置を手に入れるか、だ。
因みに有利なのはあたしら。何でって? 『秘宝』がどんなもんか知っているから!
んじゃ、よーい、どん!」
あ、ずるいと思わず漏したリンディスにアリシスとクラリーチェは頷いた。
吹雪の中に走り行く背を追いかければ、そこは――
●
「……ラサ?」
呟くクラリーチェの声が届いたか、目の前で止まって居た小さな背中は「趣味わる」と呟いた。
「此処は……?」
周囲を見回すリンディスにアリシスは「アカデミア」とぽつりと呟く。
真白の砂ばかりの砂漠に、埋まるように存在する遺跡がある。
「やあ、ブルーベル。今日も勤勉だね」
「……ニーナ……」
手を振った少女ニルヴァーナの背後から顔を覗かせたのは勿忘色の瞳の少女。
白いワンピースを着用した少し焼けた肌の少女は麦わら帽子を取って嬉しそうに微笑んだ。
「遅かったね」
「……ジナイーダ……?」
震える声音でその名を何とか紡いだリュシアンが息を呑む。
気付けば今のブルーベルよりも少し小さい姿の彼女がすれ違うようにジナイーダの許へと走り寄って行く。
この『夢』の世界は彼らの過去だろうか。
淡い。
淡い、思い出の世界。
「今日は何して遊ぶ? あのね、せんせいが呼んでいたの。
タータリクスさんも後で来るらしいんだけどね、今日は少しだけ遠出をして実験用の動物を捕まえるって」
「ああ。それでベルにも協力して欲しいらしい。何、大丈夫だ。
ベルも多少の護身術は出来るだろう? 戦うのは私とピオニーだけだ」
微笑むニルヴァーナは背後から出てきた継ぎ接ぎだらけの体の男を振り返る。
男と言うべきだろうか。無性別。そう言うしかあるまい。
様々な人間のパーツを継ぎ接ぎで組み立てた男はだらりと伸びた腕を振り上げた。
「来たね。それじゃ、今日は砂漠に住む鳥を捕まえに行こうか」
白衣を身に着けた旅人が『博士』と呼ばれた男なのだろう。
彼はゆっくりと歩き出す。
その背を追いかけるジナイーダは「せんせい」と嬉しそうに声を弾ませていた。
「勝負は勝負。胸糞悪い夢の世界だけど、良い?
アンタらとあたしらのどっちが『秘宝』を手に入れるか、そんだけだから」
ブルーベルは睨め付ける。
その眸に揺らいだ不安は、今までにないものだ。
「……リュシアン?」
アリシスは黙りこくっていた魔種の少年に声を掛けた。
「……俺は、知らない」
「何をですか?」
「俺はこんな課外授業も、ベルが『奴隷商人に攫われていった』場面を、知らない。――これは、ベルの夢の世界だ」
- <13th retaliation>Psyche完了
- GM名夏あかね
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年05月15日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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「マナセ、そんなものを作ってどうするんだ?」
「んー……わたしって、直ぐ死ぬじゃ無い?」
「直ぐ死ぬって……」
「幻想種とかと比べればってこと。わたしは彼女達と比べれば短命だもの。
もし、わたしが死んだ後にわたしの魔法道具を悪用する奴がいたら? それってとってもピンチじゃ無い?」
幼い頃に魔法の才能があった。使いこなすことが出来ずに、両親には随分と迷惑を掛けただろう。
幾ら魔法に秀でていたって制御できなければ只の爆弾魔みたいなものだ。放火犯も真っ青な勢いでもある。
『魔法の師匠』を紹介されようとも彼女よりも秀でたものはいなかった。才能を燻らせて過した10年余り。
その道を開いたのはアイオンと名乗った冒険者だった。
彼との冒険は少女に対して様々なモノを与えた。
人を思いやる心。努力。忍耐――それから、仲間を愛するという気持ち。
「フィナリィがもし……もし、帰ってきたら、あの子ならわたしの意図に気付いてくれるでしょ?」
「マナセ、フィナリィは……」
「あれだけの封印術士よ? 回復魔法だって使える! ちょっと怪我をしただけかもしれない。だから……」
だから、彼女の故郷に恐ろしいことが起こったときに『本当に心の強い人だけ』が仕えるように制御装置を作っておこう。
冬の王を封じた魔法道具の対となる。
一方は使い方さえ分かれば簡単に起動できる。冬の王が目覚め、対話が容易でなかった時に妖精達でも使えるように。
それから、もう一方は――保険だ。簡単に使えてはいけない。だからこそ、託す相手を見極めさせるのだ。
「誰かを本当に救いたいと願うなら……我武者羅にこの魔法道具を求めるはず。だから、」
「悪趣味」
「ちょっと、今誰が言った!? 名乗り出なさいよ!!!!」
「マナセの悪戯を悪趣味と言ってやるな」
「真面目な顔して言ったって許さないわよ。ハイペリオンの餌にしてやる!」
「あはは」
「わたし、格好付けたのに! もうっ! ばか、ばかばか! ウィツロも、アイオンも、みんなばか!
……けど、けどね。本当よ。わたし、フィナリィのかわりに此処に来たんだもの。あの子の故郷、護りたいじゃない」
●
肌をじりじりと焼いた太陽。足先から焦がすように沸き立った熱気。それがラサの砂漠である事を感じ取り『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は周囲をくるりと見回した。
「……ここは」
リンディスが見回せば、青ざめた顔をしたブルーベルを支える様に立っていたリュシアンは「ベルの夢だ」と告げた。
「これがBちゃんの過去って事ですか? あのあそこの小さい子がBちゃん(小)さん?」
驚いたと云わんばかりの『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)はぱちりと瞬いた。まだ、夢の導入、『こちらの姿』は認識されていないと言うことか。
「ははあ。吹雪を進んで来て夢の世界に入るとは聞いていましたが! こんな感じに……。
うーん、ここが夢の世界っ! 何とも言えないリアリティ。日焼けしそうな太陽が燦々注いで此の儘ではこんがりハーモニアですねっ!」
明るい声音で周囲を見回した『ワクワクハーモニア』ウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)にリュシアンは「元気だな」とぼやいた。
「ああっ、リュシアンさんにブルー……」
「Bちゃんでいい。名前、呼ばれるのキライだから」
「Bちゃんさんですか!ㅤよろしくお願いします!」
快活な挨拶をするウテナに青ざめた顔のブルーベルは「うす」と酷く胡乱な返事をした。その表情を見るだけで『何』が起こっているかは分かる。
「……Bちゃん様、リュシアン様。ここは」
「アカデミア。俺はジナイーダの家の手伝いをしてたから、その手伝いがあって一緒に活動しなかった日が幾つかある。それが――」
問いかける『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)を見上げたリュシアンの眸に僅かな苛立ちが滲んでいた。
その視線が継ぎ接ぎのように肉体を組み合わせた『男』――男と言うべきかは分からないが性自認の上ではそうらしい――へと向けられていることにリュティスは気付く。
「……それが、アタシが奴隷商人に連れ去られた日。それから、ジナイーダがタータリクスのおっさんと博士の『合作』になった日」
吐き捨てるように告げるブルーベルの青褪めた顔はリュティスから見ても悲痛なモノであった。悲壮感の漂う佇まいのブルーベルへと『永訣を奏で』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は「大丈夫ですか」とハンカチを差し出す。
「……あんがと。アンタは優しいね」
「いえ。聖職者(シスター)として当たり前のことです」
首を振るクラリーチェは此度は気を引き締めていた。精霊様と呼ぶフロースが何処かにいる可能性もある。
フロースの特徴がこの『夢の世界』にも影響を及ぼしているならば、『感情増幅』で一番に影響を受けるのはブルーベルである筈だ。
「アカデミア……ブルーベルの夢か。リュシアンに……タータリクス、あんたもここにいるんだな」
懐かしむように、そして何処か苦しげな目線を投げ遣る『黒鋼二刀』クロバ・フユツキ(p3p000145)は楽しげに博士の背後で師事をするタータリクスを眺めて嘆息する。
彼が錬金術に手を染めなければ――博士と、そしてクロバの父と関わりを持たなければ、冬の王を解き放つことは無かったはずだ。
「タータリクスのおっさんは、ああしていれば善人だけどさ」
「お前が言うか?」
「……ま、『手を下した俺』だから言えるんだよ」
外方を向いたリュシアンは『ジナイーダへの復讐』で彼の人生を破滅に追いやった。
愛しき妖精女王への気持ちを強く、強く揺さぶり掛けて色欲へと転じさせたのは彼と、彼に指示を下した『オーナー』である。
「うーん、勇者王御一行の仕掛けにしてはずいぶんと趣味が悪くないですか?
これも何らかの影響を受けているのでしょうか……なんだか嫌な感じです……」
「マナセってやつの性格がわりーんだろ」
「Bちゃん言いますね」
吐き捨てるように言ったブルーベルに『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)は肩を竦める。
最も、この夢を作り出す事に対して何らかの理由があったとしても――『夢の世界の構築』にはブルーベルの主人の権能が合わさっている筈だ。
何処までが魔法使いマナセによるもので、どこからが『主さま』のものであるかの判別は尽きやしない。
「ええと……リュシアン、久しぶり…ファルベライズ以来かな。Bちゃんは初めまして、だね。夢の世界……Bちゃんの、か。その、大丈夫……?」
「大丈夫に見えるなら節穴じゃね? ……あー、ごめん。そうじゃない。
アンタはアタシに気を遣って。くっそ……うん、ごめん。うん、大丈夫かどうかはノーコメ」
ぶつぶつと呟くブルーベルの毒舌は『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の前では性格に発揮できないほどに弱っていた。
「いーえ。これは過去なんでしょ? 過去に基づいた夢、って奴かしら。嗚呼。屹度、ロクでもないもんなんでしょうね。分かるわよ」
その表情からもね、と付け加えた『返の風』ゼファー(p3p007625)は吹いた風と共に博士が「やっと来ましたね!」とイレギュラーズを『認識』した事に気付いてから背筋をぴんと伸ばした。
●
肉体を捨てる前の姿。形容しがたい印象ではあるが、『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)にとっては想定の範囲内であった。
彼は不老不死と甦りを命題にしていた。その為ならば笑顔で何もかもを贄にくべる事の出来る逸脱者たる本質がその外見には滲み出ている。
隠している心算も『博士』にはないのだろう。ただ、己の理想のために邁進していただけだった。
それでもあの笑顔と、博士(せんせい)と呼ばれ慕われる姿も彼の一面に違いないのだと感じて仕方が無い。
「確かに、アカデミアの子らにとっては楽しくも幸福な日々だったのでしょうね……故に破綻はあまりに心外で、絶望と憎悪はより深い」
取り込まれなければ干渉できない。アリシスは『取り込まれることを選んだ仲間達』の背を見遣った。
「マナセさんの『悪趣味』でもありますが……これは、夢現の境界で己を保ち、踏破する必要がある……防衛機構、試練とも呼べるでしょうね」
「この制御装置を使いこなせるために、ですか?」
ルル家に問われてアリシスは恐らくは、と頷いた。
「Bちゃん、制御装置の名前は何と言いますか?」
『秘宝』としか呼ばなかったブルーベルはうぐ、と息を呑んだ。リュティスは今更隠し立てしても意味は無いだろうと冷めた瞳を彼女に向ける。
「いつまでもこの空間にいたくはありませんよね? ならば共闘致しましょう」
「共闘? アンタらと!? 違うでしょ、秘宝を奪い合いに来た――」
「いいよ」
「リュシアンッ!?」
ブルーベルが呻くがリュシアンは「そうしないと此処からは抜け出せない。ベルは今はクソザコだから」とさらりと言ってのける。
「ならばお聞かせ頂けますか?」
ブルーベルはがくりと肩を落としてから言った。
「――『タレイアの心臓』」
それは開花と繁栄の女神の名前であった。
美しきその女神の名を冠した秘宝を護る防衛機構はイレギュラーズと二人の魔種を『飲み込んで行く』
夢うつつの世界で、己を保ちながらどの様に振る舞うか。そして、それを踏破した暁に女神の加護を得られるのだ。
「遅刻だよ、リュシアン」
唇を尖らせるジナイーダの声にリュシアンの肩がびくりと跳ねた。「アリシスさんも!」と手を引く少女は愛らしく、アリシスが知る『キマイラ』ではない彼女は天真爛漫であったことが良く分かる。
「あ、ああ。ごめん、ベル――Bを迎えに行ってたんだよ」
「そっかあ。もう課題を説明してくれるって。タータ君がクロバおにいさんの肩を掴んで離さないんだから!
今日は皆で課題を一杯クリアして、博士にご褒美を貰おうねっ。遺跡に行くと、そのご褒美に近づけるって言ってたんだけど……」
んーと唇を尖らせるジナイーダの姿にリンディスは息を呑んだ。その『ご褒美』が彼女の姿が変容した切欠であったなら?
「……リンディスおねえさん?」
「いいえ。考え事を。簡単な課題だと良いですね。博士、申し訳ありませんがもう一度教えて頂いても良いですか?」
ジナイーダに手を引かれて前へと走って行くリンディスを見送ってからしにゃこはブルーベルを肘で突いた。『この夢のブルーベル』は面倒くさそうな顔をして博士の前に座っている。
「ブルーベルって呼ばれるのがキライでしたっけ? 区別のためにBちゃんって呼ぶべきですか?」
「まあ」
「じゃあしにゃはCちゃんって呼ぶとかどうですか?」
「……はあ?」
「えー、一時的でも仲良くいきましょうよ! そっちの方が上手く行きますよ! たぶん。
春探すのしにゃ上手いんで! 君の頭は常春だねってよく言われますし! 勝手に頭の中覗かれてる感じでだるいでしょうけど、道中しにゃ達が上手くやっておきますよ!」
「いや、それアンタ馬鹿にされてんじゃない? 頭が常春って随分な言われ様だけどさ。いや、気にならないなら良いよ。良いけど……。まあ、よろしく常春Cちゃん」
しにゃこは「むふふ」と揶揄うように笑った。斯うして対話をしてみれば彼女は魔種だ人間だと区別をする以前に、友人にでもなれそうだと距離感を考えさせられる。
「まあ、行きましょうよ」
「何話してるんですか? あ、あだ名命名式ですか? いいじゃないですかっ! 連帯感が生まれて仲間になれるかもですねっ!」
にんまりと笑うウテナは博士から与えられた課題を熟すためにワイバーンのロスカの背に乗りながらブルーベルとしにゃこに微笑みかけた。
ここでは『仲良く』共闘しようという提案を持ちかけたイレギュラーズに、リュシアンが同意を示す事はリュティスにとっても想像に易かった。ブルーベルが渋ることも――主さまと呼び冠位魔種カロンへと熱を傾けている時点で納得できた。
(……どうやら、リュシアンは『現在のブルーベル』ばかりを気にしていますね。ブルーベルの方は、過去を見て精神的に参っているようにも窺えますが……)
まじまじと見遣ったリュティスの傍でヨゾラは「Bちゃんは辛そうだね」と呟いた。
「ええ、この過去は彼女にとっては見たくないモノでしょうから」
「……そうだね。リュシアンも、Bちゃんも友達だと認識しているけれど、僕の理由で止めるしかないのが歯痒いよ」
ヨゾラは幼い外見をした二人の魔種をどうしても嫌いにはなれなかった。『魔術紋』を刻み込まれた『願望器志望者』は自身が求める未来に向かって邁進する他に選択肢はない。
智慧に届き、根源を探求し、進み続ける。その在り方の為には『タレイアの心臓』は二人には渡せないのだ。
嘆息するヨゾラはブルーベルと目があったことに気付く。
「……どうかした? 喉渇いた? Bちゃんの水筒にもちゃんと水分を配分したはずだけれど」
「別に。貰ってるよ。……そもそもさ、友達じゃないし、敵じゃん。アタシら。
アタシは魔種で、アンタはイレギュラーズ。羽虫を虐めたって殺しに来る奴も居るくらいだったし、仲良くは出来ないと思ってるんだけど。
アタシを心配するのは何? 善意? それとも、カワイソーだから?」
「……辛そうだから、かな」
困ったように笑ったヨゾラを見てからブルーベルはふうんと呟いて外方を向いた。
待ってくださいと追掛けるしにゃことワイバーンに乗るかと笑いかけるウテナから逃れるように課題のスポットへ向けて歩くブルーベルはぽつりと呟いた。
――どうせ、ここで馴れ合ったって。最後は殺し合う運命のくせに。
●
どこからか極楽鳥の声が聞こえるらしい。
どこかなあと首を捻って周囲を見回すジナイーダに手を引かれた幼い『ベル』は「しらねーだりー」とぶつぶつと呟いている。
「おにーさんも、こっちに来て! タータおじさんが疲れたって動かないから」
「はいはい」
すっかりタータリクスの世話役に任命されてしまったとクロバは肩を竦める。
ジナイーダとベルを追掛けようとするクロバの背中に「馴染んでるじゃん」とリュシアンはぽつりと呟いた。
「そうか?」
「そう。俺達のことだって無視だしさ」
「どの道俺達の最終目的は”一致している”。だったら蹴落とすタイミングは選ぶべきだろう? それまで利用しあおうじゃないか」
「……俺はそれで良いよ。確かに一致してるし」
だろう、と笑いながら手を振ったクロバの背を見送ってからリュシアンは舌を打った。
楽しげに笑うジナイーダを『見ることが出来た』だけで、どうしても胸が痛むのだ。
「Bちゃん、Bちゃん、こうやって手を握っていれば多少気が楽になりますよ!」
ニコニコと笑顔で手を握りしめたルル家に「はあ?」とブルーベルが驚愕に目を剥いた。手を振り払わんとする彼女に離されてなるものかとぎゅうぎゅうと握りしめる。
「さぁ、宝探しにレッツゴー!」
「マジでアンタさあ!」
ずるずると引き摺られていくブルーベルの様子にくすりと笑みを零したクラリーチェへと『博士』は「君は耳が良いのかい?」と問いかけた。
「どうしてそう思われましたか?」
「迷う仕草を見せなかったからだね。君と……それから、そこの魔道士の彼、ハイエナの彼女は随分と耳が良さそうだ。
そこのペンと本を手に記録を取る彼女は目が良いね。久しぶりに学び舎の戸を叩いてくれた君たちだ。生徒のことは隈無く見ておかなくては」
へらへらと笑う『博士』にクラリーチェは「冒険には必須のスキルを皆で揃えているのですよ」とぎこちなく微笑んだ。
その様子を眺めながらもアリシスは警戒を解くことはない。『博士』に関しては要注意だ。特に、これが防衛機構だとするならば意地の悪い仕掛けが発動する可能性さえある。
アリシスの視線に頷いてからゼファーは「博士(せんせ)」と手を振った。
「やあ、極楽鳥は暮れ暮れに生け捕りにね」
「ええ。そうさせて貰うつもりよ。けれど、現場までは少し距離があるじゃない?
久しぶりの『再会』だから少し親交を深めるのとかは? ――はぁい、先輩。恋バナでも如何? 主に初恋とか」
「ひえっ、ぼ、ぼかァ恋なんてものは」
たじろぐタータリクスにゼファーがにやりと笑う。『博士』は「慌てて逃げ出すあの子も可愛らしいねえ」とアリシスに同意を求めるように微笑んだ。
「そう……ですね」
「君も話してやってくれ。彼は会話を得意としていなくってね。『どうやら君たちは彼に詳しそう』だから」
――違和感だ。『夢』の中でも彼は此方が『取り込まれている』事を知ったように振る舞ってくる。一先ずは『博士』に話を合わせて立ち振る舞う方が良いだろうか。
(ああ、違うか――私達は『博士』という存在がどの様な危険性を秘めているかを知っている。
この夢が『様々なモノを反映する防衛機構』であるならば、彼は油断ならぬ存在としてインプットされ出力されたのかも知れない)
アリシスは内心推測しながらタータリクスを追掛けた。
「お姉さんとは上手く行ってますかい? ”家族は大事にしなくちゃあな”ってね、ター君先輩?」
がしりと肩を組んで立てと言いたげなクロバに続き「タータリクス様。お姉様のお加減は如何でしょうか?」とアリシスも問いかける。
「ああ、姉は……いやあ、でもあの鳥を捕まえれば良い方向に進展するかもしれないと聞いてね!
アハハァッ、そうすれば、良いことずくめだろう。そうだろう。だから、クロバくん、アリシスちゃん、頑張ろうでは無いかァーッ!
あ、ゼファーちゃん、そのね、恋の話はゴニョゴニョ……」
「キモ」
「ベルちゃァん」
妖精郷でも見たことのあるやりとりであるような気がしてクロバは何とも言えぬ心地に陥った。
索敵するウテナが「何か居ましたよー!」と叫べばリンディスが頷く。ヨゾラとしにゃこ、クラリーチェもその『声』を確かに聞いたのだろう。
「皆さん、準備は良いですか? どうやら声量は十分、距離は近そうです」
「大きい……ですね」
クラリーチェが振り返ればリンディスは予想よりも巨大であった極楽鳥に息を呑む。其れそのものだけでもラサから討伐依頼が出そうなものによく『アカデミア』だけで挑もうと考えたのだとリンディスは呟いた。
「違うよ、リンディス」
「……どういうことですか? リュシアンさん」
首を振ったリュシアンに「やめろ」とブルーベルが震えた声を出した。ルル家の手をぎゅうと握りしめて立ち止まった彼女は青褪めている。
「アレ見て、分かった。『どうしてジナイーダがああなったのか』――そうだろ、ベル」
リュシアンがブルーベルを振り返る。
それだけでも討伐依頼が出されるようなモンスター。アカデミアは博士、タータリクスを覗けば幼い子供二人。
ゼファーは「ああ」と呻いた。気付いたのはヨゾラやクロバも同じか。
「……まさか」
しにゃこは愕然と極楽鳥を見上げて言った。
「しにゃ達が今から捕縛する極楽鳥に、傷付けられたんですか? ジナイーダちゃんは……」
――太刀打ちできるわけがない。
ルル家やクラリーチェ、リュティスならば容易に生け捕りにまで持って行けるだろう。
だが、『アカデミアの少女』達は無力だ。愕然と眺めるクラリーチェは「なんてことを」と呟いた。
『本来の夢』を辿らぬように、過去を改変する望みを掛けたかのように。
捕縛した極楽鳥が弱々しく横たわっている姿を見て「こうなりゃよかったのに」とブルーベルは呟いた。
●
「ファルベライズですか。ふうむ……」
ルル家は首を捻る。ファルベライズといえば現実の『博士』が潜んでいた場所だ。場所はそれ故に知っていた。
辿り着いてから内部の遺跡を探索する事も吝かではないが――先ずは罠の回避からだろうか。
「ファルベライズの敵となればゴーレムと砂漠の魔物が恐らくメインでしょうから、出来る限り警戒しながら征きましょう!」
「ああ。そうだな。……警戒を怠らないよう進もうか」
ちら、と後方を眺めるクロバはルル家が『博士』の手が入っていないならばホルスの子供は居ないだろうと認識していることを察していた。
これが過去だというならば、あの様な紛い物がこの地に蔓延っている可能性はないからだ。
「……遺跡と言えども霊魂は存在しないようですね」
「ははー。外郭部位と分れているから、探索が不可能だった人は普通にリリースされているんでしょうか! 随分優しい遺跡っぽいですね?」
周囲を見回したウテナは日常が続いたってつまらないという意味合いで『30年』の停滞を振り払うように冒険を楽しんでいた。
背後をてこてこと歩いてくるロスカに「着いてきてくださいよ!」と何度も繰り返す。
「可愛い子だね」
「あげませんよ!?」
『博士』の興味を揺すったのはそれがワイバーンと呼ばれる覇竜領域に生息する亜竜であったからだろう。
ホルスの子供達が居ないことを確認してホッと胸を撫で下ろしたリュシアンと未だに顔色の悪いブルーベルを振り返ってからしにゃこは「変哲も無いですねえ」と周囲を見回す。
「そうですね。……この遺跡、何かあるのですか?」
問うたリンディスに博士は「いやあ」と気の抜けた返事を返す。
「……博士。何時このような遺跡の事をお知りになったのでしょうか?」
「君は聡い子だね、アリシス」
穏やかに微笑む『博士』はアリシスがこの遺跡に何が存在しているのかを知っていると理解した上でその言葉を投げかけた。
「……もしや、色宝を見つけファルベリヒトに出会ったのは、この日ですか。
ファルベライズで得られるものは、確かに研究を大きく進ませるでしょう」
リュシアンが唇をぎゅ、と噛みしめた。ああ、そうだ。ファルベライズで得られる『色宝』は『願望器以上』の力を持ちながら『奇跡以下』であった。所詮は紛い物だ。PPP(奇跡)よりも尚も浅く淡い人の夢を体現するような遺跡を彼が何処で知ったかは定かではないが――
(そうして得た着想の実験として、『怪我をして助手としては使い物になくなった』ジナイーダは……)
アリシスの表情が曇ったことにヨゾラは気付く。
ヨゾラにとってブルーベルとリュシアンを取り巻くいざこざは外から見るだけのものではあった。彼らを否定しなくてはならない辛い立場でもある。
ブルーベルはこの日に奴隷商人に拐かされて魔種になったのだろう。不運か、幸運か。逃げ果せた深緑で彼女は『出会った』のだ。怠惰にも変わらずに過していける日常を追い求めるばかりに冠位魔種に。そうして得た力で奴隷商人を振り払ったことは想像に易い。
リュシアンは知らぬうちに『アリシスが言った研究への着想実験』で愛しい少女を失った。その恋心が燻り色欲の魔種の囁きへと身を任せたことも――此方も、言わずもがなである。
「早く行こう」
ブルーベルが叫べば、瓜二つでありながら未だ幼い『ベル』が「何でそんなキレてんの」とぼやく。
「早く!」
「……急かすモンじゃあないわよ。ま。貴方達二人は遺跡の罠程度で死にやしないでしょうし、私達が死んだところで構いもしないでしょう。
……だけど、死ぬのがあの子達だったなら、どうかしらね?」
囁くゼファーにブルーベルが息を呑んだ。遺跡の内部を緩やかに歩けば屹度、地底湖に辿り着く。
落ちている石ころを幾つか採取する博士を眺めながらブルーベルはゼファーに問いかけた。
「……アタシはアタシがココで死ねば良いって思ってたよ。アンタってそう思うことはない? 自分が死んだら、って」
「さあ、どうでしょ。風に吹かれて忘れられることは――記憶から消えることは死んだようなものでしょうけど」
「そ。アタシがココで死んで、ジナイーダの身代わりになれてたらさ……リュシアンはああならなかったかな」
ゼファーの眉がぴくり、と動いた。傍で聞いていたヨゾラは息を呑む。
「アタシがココで死んで奴隷商人になんて拐かされてなかったら、さ。……アンタらと出会うことも無かったのかな」
「Bちゃ――」
慌て、手を伸ばしたヨゾラに「何も無い」とブルーベルは外方を向く。
後方で話を聞いていたリュシアンは何も知らないと言った様子のタータリクスと、彼の傍で揶揄いながら過していたクロバを見上げた。
「……困惑した」
「聞いてないが、聞いてやろうか?」
「お前は心強そうだし、良いかな。そっちのシスターもそう。
友達が、俺の境遇を不憫に思ったり、自分を犠牲にしても良いと思った時ってどんな顔すりゃいいんだろうね」
クラリーチェはクロバと顔を見合わせてからリュシアンの言葉の続きを待った。
『博士』の号令が聞こえるまで。先頭を務めていたルル家が罠の確認をし終えてリュティスと安全確認をして帰路を辿るまで――少年は、言葉に迷った様に黙りこくってから言った。
「俺達は、世界を壊したいわけじゃない。ただ、救われたかったんだ」
ファルベライズからの帰り道を進むルル家はブルーベルの手をぎゅうと握りしめた。
大丈夫だと、幼い子供にするように。安心して欲しいと微笑みかけるように。
――アタシがココで死んで奴隷商人になんて拐かされてなかったら、さ。……アンタらと出会うことも無かったのかな。
そんな言葉を紡ぐ彼女は屹度優しい存在なのだ。『博士』の事は注視し続けるべきだ。
ルル家はブルーベルを十分には警戒していない。何故ならば、彼女は秘宝という共通の目的に辿り着くまではイレギュラーズに敵対しないことが分って居たからだ。それは恐らくリュシアンもそうである。
彼女らを敵対させていない理由がジナイーダにあるのならば。ジナイーダを守り切ると誓った言葉を反故にしない限りは彼女は傍に居てくれる。
「……Bちゃん、大丈夫ですか?」
「ん」
短い返答にルル家は唇を噛んだ。彼女の心は傷ついている。酷く古い傷であれども、じくじくと熱を帯びて痛み続けているのだろう。
「大丈夫ですよ。今は拙者たちが居ますから!」
明るい笑みを浮かべるルル家にブルーベルは「そうだね」と呟いた。
今の彼女は魔種で、世界の敵で、ルル家にとっては大切な誰かの命を脅かす存在だ。あの琥珀のいろを曇らせるかも知れない恐ろしさが横たわる。それでも、見捨てておけないと感じたのは彼女が余りにもちっぽけな少女だったから。
(……ファルベライズ然り、秘宝に細工を加えていてのこの状況なのでしょうか。
マナセの防衛機構が『ここまで精巧にBちゃんの過去』を作り出せるのかは分かりませんが……フロースが居る事を考えれば――)
桃色の髪に、くすくすと笑う声。鉄の爪先で優美なワルツを踊るような、鋼の乙女『色欲の冠位』。
彼女の介入が全てに存在していた可能性さえある。手駒は多ければ良い。話をこじれさせれば良い。そうして、彼女が『元から狂っている存在』に手出しをする事が多くあったならば。
アリシスはルル家の考察と同じく『博士』と『彼女』の繋がりに行き着いた。もしも、そうならばアカデミアの子供達を渡し、シンプルに狂っている男が情報を得ている可能性さえあるのだ。
「……度し難いことですね」
「何か?」
「いいえ」
首を振ったアリシスに博士はにこりと微笑んだ。外面だけならば確かに良い教師ではある。そんな彼を眺めやってからクロバは「何か来るな」と呟いた。
「ええ。人影が幾つか……隠れられますか?」
小さなベルとジナイーダに囁いたクラリーチェに「怖い人?」と少女達が顔を上げる。クラリーチェが小さく頷き、しにゃこと共に砂漠に転がっていた遺骸の陰へと身を隠す。
「ベルさん。離れてはなりませんよ」
守り抜かねばならぬのは其方であることを認識してアリシスは囁いた。不安げなベル達を護るようにヨゾラは振り返る。
「……自分の身を守ってね。大丈夫だから」
「ジナイーダを護ってくれる?」
「ベルさん。ジナイーダさんもだけど、ベルさんもだよ」
宥めるように背を撫でたクラリーチェにヨゾラは見ていて上げてと頷いた。前線で幾つかの人影と、物音を注視するゼファーの眸がきらりと光る。
誘拐が目的ならば隙を付かれぬようにそれらを対処すれば良いだけだ。リンディスは幼い子供達に害が及ばぬようにと息を呑んだ。
飛び出してきた奴隷商人はイレギュラーズに気付かれた事を察知したのだろう。隙を狙わんと出来る限り疎らに姿を現してくる。
「かーーーっ! 可愛い子供を食い物にするクソ大人は瞬ころです! 夢の中だろうとね!」
びしっと指を差すしにゃこの弾丸が奴隷商人を狙い穿つ。蒼褪めたブルーベルも助けてみせるとウテナはびしっと指差した。
「ロスカ! 燃やしちゃってください! いいですよ!」
「くぁ~!」
分かったと言わんばかりにぴょんっと飛び出してきたロスカに驚いた奴隷商人が『商品』が増えたと下品な笑いを零す。
「美少女には指一本触れさせませんよ! しにゃの方が美少女ですけど! あと、ワイバーンにも!」
しにゃこが地団駄を踏めば、身を固くしていたブルーベルの代りにリュシアンが前線へと飛び出してナイフを振り上げる。
戦い慣れしているのは彼が魔種になったからだろうか。幼い普通の少年でなくなった彼を思えばこそ、アリシスはじわりと胸が痛む感覚を覚えた。
(……ああ、確かにこれは彼女にとって認められない最後の壁に相応しい。
未来を失った日。助かってしまえば、運命とは出逢えない。『Bちゃん』、貴女は……)
――走った。
『博士』とタータリクスは少し離れた場所を歩いていたから。今は、クロバとアリシス、ゼファーが『博士』とタータリクスの話し相手だった。
だから大人が傍に居ただけだ。
――走った。
ジナイーダを攫われないように我武者羅に。
ジナイーダを護る為に傍に居てくれるリュティスやクラリーチェ、ヨゾラが居たわけではない。
ジナイーダが問いかければ能面のような表情に僅かな笑みを差し入れるリュティスが居た訳でもない。
――『ベル、ベル!』
あの日の声が脳を掻き混ぜる。未来を失った日。ジナイーダだけでも『博士』に押し付けた。
反対側に逃げていく自分の姿が砂漠に重なった。大人の大人の手が幾つも自分に絡みつく。砂の上に押さえ付けて、足の腱を切られた。
それでも、翼があったから。血を滴らせながら森の中に逃げた。
――『分かったね? ベル。あの森は惑わせる。入ってはならない』
孤児だった自分を拾ってくれた商人が言っていた。だからこそ、森の中に飛び込んだのだ。
追い縋る男の声が聞こえる。怖い、大人の男なんて嫌いだ。大人の男なんて信用しちゃいけない。
――『どうしたにゃあ?』
神様のようだった。丸くなって眠っているだけの、小さな主さま。
イレギュラーズにとっては未来を失った。ただ、アタシにとっては未来を開いた日になってしまった。
「――――ハッ」
「息をして。大丈夫ですから。……良いですね。共闘しているのです。
ここで貴女が飲まれては此方が得するだけ。貴女の目的は何ですか?」
静かに問うリュティスにブルーベルは「あ、主さまの為の……」と呟く。その表情は痛ましい。
ブルーベルは使い物にならない。その代りに、リュシアンは我武者羅に先頭へと飛び込んでいく。
「クロバ、遅い!」
「いきなり指示するな! 対応しただけ良いと思え!」
「は? ゼファー、そっち」
「あら、いきなり友人のようなメンタリティを発揮するじゃない。いいですとも!」
奴隷商人をここで倒しきるぞと言わんばかりに先頭に興じるリュシアンが一人取り逃がしたと舌を打つ。
「彼女達は大切な友達だ……貴様等の好きにさせてたまるか!」
ヨゾラは庇うように睨め付けた。しにゃこの弾丸が迫る。奴隷商人を捻じ伏せる。
(――けれどもリュシアン、貴方は秘宝の事を抜きにしても……それでも助けたいのでしょうね)
この場面に、立ち入ることの出来なかった少年の意地であるように感じてアリシスは嘆息した。
●
「ベル、ジナイーダ。大丈夫だったかい?」
「せ、せんせぇ……」
涙をぼろぼろと流すジナイーダの背を撫でた『博士』は有り難うとイレギュラーズに礼を言う。流石に課題として設定されていたとしても『秘宝側』がシンプルな問題を用意していただけなのだろう。
「一先ずはアカデミアに戻ろう。ジナイーダ、ベル、いいね?」
「……うん。皆は?」
頷いたジナイーダの手を引く『博士』は「皆には何か目的がありそうだから」と意味ありげに微笑んだ。
楽しかった。ずっと、彼女達と共に過ごしていられたら――きっと、友情が芽生えるのだろうか。
そんな停滞(たいだ)を求めてしまう自分を殴りつけるようにヨゾラは首を振る。寝ていたら何も変わらない。春は訪れず、目覚めの時さえ知らない。
現実の深緑に美しい星空を与える事さえ出来ないのだ。
「思い出は思い出の儘、忘れられずにいるのは人と同じ……いや。人のままなのね。
そう思うと、貴方達を嫌いになれなさそうな自分が少し情けないわ?」
「アタシもだよ……。アンタらはアタシ達と何ら変わりないのに。
その存在が変容(ちが)ってしまったらここからは敵同士なんだ」
ブルーベルを前にしてゼファーは幾人か、魔種を救いたいと願ったイレギュラーズ達の顔を思い浮かべた。
「境遇には同情の余地がありますが、それだけで秘宝渡す訳にはいきません」
リュティスは、春の香りを前にして目を伏せる。ゆっくりとブルーベルとリュシアンの前に立ち、構えたナイフの切っ先がぎらりと光を帯びる。
「本当は、名残惜しいですよ」
ルル家はブルーベルの手をぎゅっと握った。何時だって厭そうに、虫けらでも見詰めるような厭世の顔をした彼女。
その普通の少女のような姿に友人となる未来を夢想せずには居られなかったからだ。
「……これが貴女の過去なのですね、Bちゃん。お話を聞かせて欲しいと以前も言いましたが……こんな形で拝見する形になるとは」
ごめんなさいと謝ったリンディスにブルーベルは「お人好しすぎるよな」と呟いた。
「ふふ、そんなことはありませんよ。リュシアンさんも貴方も十分にお人好しです」
肩を竦めるリンディスはリュシアンを留めるように言葉を重ね続ける。
春の気配とは何か。探すまでもなく『課題を熟し続けることで』秘宝が防衛機構の作動を停止して読んでいる感覚に陥る。
「お人好しじゃん」
「お人好し? ……言葉、返しますね。こんなに優しかったんじゃないですか、Bちゃん。
ジナイーダさんのために、ってここまで行動できるなんて。こうならなかった本当の未来で――貴女は魔種となったのですね」
「……そうだね」
そうならなければ、出会わなかった筈なのに。
リンディスを見詰めるブルーベルの瞳が揺らぐ。手を離すルル家に名残惜しさを感じたのは彼女だって同じだ。
「ルル家」
「はい?」
「手を、……いや、手、もう握ることはないだろうね」
ふい、と外方を向いた彼女が何を言いたかったのかを察してしまった気がして――ルル家は切なげに眉を寄せた。
「『春』が近い。秘宝が近い」
呟いたリュシアンは何かを知っているのだろう。ヨゾラは「タレイアの心臓。開花の秘宝……」と呟いた。
故に、春の気配を『春の少女』が運んできたのだ。
「ここからは敵同士。仲良しごっこは終わろうぜ」
「……ねえ、リュシアンさん。貴方も、Bちゃんも、それほどにジナイーダさんが大切な存在だったのですね。
……だからこそ、だからこそ、博士があまりにも、許せないのですね」
リンディス問いかけにリュシアンは唇を噛んだ。
春の匂いが近付いた。
「……ッ、じゃあね。アタシが主さまに渡さなくっちゃならないんだ!」
「ブルーベル! 譲れないのは俺達もだ!!」
クロバがブルーベルの前に滑り込む。地を蹴り上げて上空に飛来した翼から痛ましく血潮を滴らせながらブルーベルは蹴撃を放つようにクロバの上へと飛び込んだ。
剣と、少女の足がぶつかった。全体重を込めた追突にクロバの腕が僅かに痛む。
「主さま。確かにお前にとっては命の恩人だろう。それがお前の勝手で、お前の信念ならば此方にだってある!
俺はこの冬を終わらせる。ファルカウにいるであろう『あの人』との勝手な約束だがな! これが俺の信念だ!」
少女を振り払うように腕を掲げたクロバからブルーベルが離れる。リュシアンとブルーベル。魔種二人を相手に10人のイレギュラーズ。
――……あの人のためだもの。
何処からか聞こえた声にクラリーチェは「精霊さま!」と叫んだ。
色欲の魔種の影響を受けているという彼女。だが、クラリーチェが感じたのはそれだけではなかった。
故郷を滅ぼした一因は色欲。生き延びていた幼馴染みも『声』を聞いていて――一人残されただけのクラリーチェはフロースに手を伸ばす。
「精霊さま。私のことを覚えていますか? 今から15年ほど前。幼い私や幼なじみは貴女を精霊様と呼び、慕っておりました」
「……りーちぇ」
指差した、その声に聞き覚えがある。クラリーチェと呼ぶ事の出来なかった彼女に呼びやすいようにと愛称を教えたのだ。
「貴女が持っている『大切なもの』。私に譲っていただけませんか?」
「欲しい、皆、思ってる。
わかる。森、変わった。森、変わらない方が良い。でも、それ、ベルの『ご主人様』も思ってた」
「……え?」
ひゅ、と息を呑んだクラリーチェはこの大樹の嘆きは正確に言えば『二種類の存在』の声を聞き、一方の手を取ったのだと気付いた。
「りーちぇも、森、大切?」
「……大切です。どうか願わくは、争うこと無く託して欲しい。
本来の貴女が深緑を守る存在ならば。私もそれを守る為に来たと……信じて欲しい。いけませんか?」
「でも、『リュミエは森を開いた』」
クロバがリュミエを守りたいと願うように。フロースとてそうだった。それでも、彼女は裏切られたのだ。
美しき森をイレギュラーズと呼ばれる存在に開くことで、森に新たな害悪の種(あらそい)を産んだのだと。
「リュミエ、傷ついたのに、開いた」
「……精霊さま……?」
クラリーチェが一歩下がる。リュシアンがその隙を寝るように飛び込むが、アリシスは首を振り、その導線を遮った。
「退けよ!」
「お互い譲れぬ一線です。リュシアン、『Bちゃん』――秘宝に手出しはさせません」
ブルーベルが途惑いながらも走り出そうとするその眼前にしにゃこが飛び込んだ。
「へい、Bちゃん! Cちゃんともっと遊びましょうよー!」
「邪魔するなってCちゃん!」
「そこでも呼んでくれるとこ、嫌いじゃないですよ?」
足を縺れさせながら、走る。クラリーチェを前にしてフロースは笑った。
「また、逢おうね。りーちぇ。また、呼ぶね。りーちぇ。
りーちぇ、りーちぇ、りーちぇ――いっしょに、おいで。『ひとりにしないで』」
フロースの指先から小さな花を象った杖が落ちた。
マナセ・セレーナ・ムーンキーの手にしていた『花』のスティッキ。其れを象って見せたような小さな杖。
まるで少女の玩具のような其れをクラリーチェは拾い上げて走り出す。
後ろ髪を引かれるような気配。ルル家が走り出し、クラリーチェと共にそれをリュティスへと手渡した。
「待って!」
叫ぶブルーベルを遮るのはウテナとその相棒。くぇーと鳴き声を漏したワイバーンに跨がったウテナは「行かせませんってー!」とからからと笑う。
「Bちゃん!」
ヨゾラは手を伸ばす。
本当は、彼女の事だって――
「貴女は本当は救われたかったのですか? それとも今の境遇で良かったと思っているのでしょうか?」
ブルーベルを前に、リュティスは問いかける。
動揺が、滲んだ。ブルーベルが動きを止めれば、ゼファーはするりとその眼前へと滑り込む。
「戸惑い躊躇う所も、嫌いじゃないけど」
「アタシは大嫌いだよ!」
吼えたブルーベルの前に槍の穂先を差し出した。ひとふりが、命を奪う前にブルーベルが一歩後退する。
「渡せよ! 強欲! なんなんだよ。世界を救ってヒーロー気取りかよ!
アタシの事は救えなかったくせに。アタシだって――アタシだって……ジナイーダとリュシアンと、在り来たりな未来を得たかった!」
叫んだブルーベルにリュシアンが動きを止める。
雪解けが来たって、彼女は救われないとクロバは知っていた。
深緑が救われたって、彼女を倒さなくてはならないとゼファーは知っていた。
この場で秘宝を奪われることを『彼女達の主人』は予期していたのだろう。だからこそ、此処に居たのが『フロース』だった。
ここで奪われたところで『問題など無い』と思っての行動なのだろう。
(ああ、違う――寧ろ、ここまで揺らぎやすいブルーベルを処分したかったのか。
もっと、使い勝手の良い駒にするためにリュシアンの目の前で『ブルーベルを処分』して、私達と敵対させようと……)
アリシスは唇を噛む。
「性格の歪みを感じますよ、『冠位色欲』」
呻いたアリシスの言葉を聞いてからリュティスは只、走った。
「待って!」
ブルーベルが追い縋る声がする。リュシアンを留めるクロバは「行け!」と叫んだ。
「待って、主さまに渡さないと!
役に立たないと、役に立たなきゃならないんだ! 今度こそ、あの人のために、アタシを救ってくれた人の為に――もう、帰る場所もないから!」
我武者羅に手を伸ばすブルーベルを抱き留めるようにリンディスが力を込める。
「それしか、もう、生きている意味も無いのに――……」
苦しげに呻いたブルーベルから逃れるように。今は、走り続けた。
そうしなくてはもっと沢山の命が失われる。
――砂漠出会ったはずの夢が掻き消える。
吹雪の中に道が見える。
「――アンテローゼ大聖堂……!?」
滑り込めば、驚いた様子の司教フランツェルと幾人かのイレギュラーズが其処に居た。
「……夢が覚めたのね。あの子達は、吹雪の中に置いてきたみたいですけど」
ゼファーはほっと胸を撫で下ろしてから、幾人かのイレギュラーズが『禁書』の解析をしていることを聞いた。
そうして、その最中にアンテローゼ大聖堂と森を覆った影を見たのだ。
竜の影を。
ファルカウで待っていると告げるような冠位魔種達の挑発を――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
秘宝の確保おめでとうございます。これで道が拓けますね。
ブルーベルとリュシアンは、そのまま置いてきましたが夢の世界は霧散したので問題は無いでしょう。
ただ、この冒険で二人は10人のイレギュラーズとは友人のように接した時間が確かにありました。
それが、二人と皆さんにとってどの様な影響になるのかは、まだ分かりませんが。
GMコメント
夏あかねです。夢の世界にて。
●目的
・『秘宝』の確保
・『夢の世界』から抜け出す
●『アカデミア』と『夢』
これはブルーベルが反転する前を再現した世界のようです。
ラサの砂漠地帯を練り歩くこととなります。夢の世界でありながらも砂漠と同様の疲労感や空腹感を感じさせます。
非常に暑く疲労感が蓄積して行きます。時間経過で判断能力や行動に鈍りが出る可能性があります。
食糧や水などは準備された物資のみが使用可能であり、さらに準備を整えることは出来ません。
皆さんは現実のように過すアカデミアの面々と一緒に動物狩りにでかけねばなりません。
OP時点では皆さんの存在は受け入れられて居ませんでしたが、皆さんが夢の世界だと認識した時点で『登場人物』達は皆さんを受け入れます。
どうしてか、この夢の世界ではずっとこの日常が続けば良いのに、と願ってしまいます。
それだけ夢の強制力が強いのか、それとも『秘宝』の防衛反応か。
この夢の世界の中では皆さんもアカデミアの一員であり、楽しく日常を送っているような感覚に陥るのです。
●出来ることとは?
皆さんはアカデミアの一員、つまり『博士』の教え子です。
共に『博士』の出す課題をクリアしていかねばなりません。課題をクリアする事に意識が明瞭になり、目的を思い出せます。
・課題1:砂漠に住む極楽鳥を探そう。奇妙な鳴き声が聞こえる。
・課題2:砂漠にある遺跡探索に行こう。ファルベライズと呼ばれているよ。
・課題3:奴隷商人を倒そう。君が助かる未来が見えるよ、ブルーベル。
・課題4:砂漠に咲いている春の花を探そう。本当に花であるかは分からないし、どのような『モノ』かはわからないよ。
この世界では『アカデミア』が出してくるお題をクリアしながら『秘宝』を探さねばなりません。
その『秘宝』というのが『茨咎の呪い』の制御装置となるものであり、この付近に隠されています。
青ざめたブルーベルは口にしませんが、この夢から一刻も早く醒めたいリュシアンは、それは『春の気配がする』と呟きました。
春の気配をさせるそれは花の香りを漂わせ空色をしているそうです。『まるで、クラリーチェさんの追う彼女のよう』ですね。
この夢の世界を構築するのはその秘宝です。つまり秘宝を魔種かイレギュラーズのどちらかが確保することでこの世界は崩壊し、元の場所に戻れます。
●『秘宝』
深緑を覆っている『茨咎の呪い』をキャンセルするための道具です。
マナセと呼ばれた勇者パーティーの魔法使いが作成したものであり、どうやら夢の世界を構築して自己防衛を行っています。
この夢の世界は最初に踏み入れたモノの『最も嫌な過去』を作り出しているようであり、強力な力を有するために内部での戦闘は困難なものになりやすいそうです。
どうやら、春の気配をさせる存在によって『移動』しているようですが……。
●登場人物
・リュシアン
色欲の魔種。冠位魔種ルクレツィアの付き人その1。何時も彼女に振り回されています。
カムイグラの巫女姫を反転させたり、それはそれは色々と(ルクレツィアに言われて)ちょっかいを出してきました。
彼の目的は幼なじみである少女ジナイーダを『博士』を殺す事です。
今回は『秘宝』探しをしています。秘宝を前にした段階で皆さんとは敵対するでしょう。
・ブルーベル
怠惰の魔種。口が悪い女の子。冠位魔種カロンの側近。主さまと呼んで猫を猫かわいがりしています。
妖精郷から『咎の花』を指示で奪い去った少女。カロンのためなら何でも出来ます。
彼女の目的はカロンの平穏。奴隷商人に拐かされて命の危機であった際に助けてくれたカロンを盲目的に愛しています。
今回は『秘宝』探しをしており、秘宝をゲットした段階で皆さんと敵対するでしょう。
・ブルーベル(夢の世界)
ベルと名乗る水色の髪の小さな少女です。現在のブルーベルより幼く、口が悪いことには変わりません。
ジナイーダと手を繋いで「だるい」とぼやきながら歩いています。
・ジナイーダ(夢の世界)
リュシアンとブルーベルの幼なじみ。リュシアンの初恋の人。現実では『博士』にキマイラにされ、イレギュラーズに撃破されました。
とても明るく可愛い女の子です。ラサの商家の娘さんでもあります。
・ニルヴァーナ(夢の世界)
不老種の少女。リュシアン、ジナイーダ、ブルーベルの三人の保護者。少しばかりならば戦えます。
・博士(夢の世界)
色々なことの元凶です。彼は皆さんをアカデミアの臨時生徒であると認識し、皆さんに課題を出します。
皆さんがいるならば、戦闘は皆さんに任せようと考えているようです。なんだか薄ら寒い存在ですね。
・タータリクス(夢の世界)
妖精郷を混乱の渦に陥れた原因の錬金術師。現実ではイレギュラーズによって撃破されました。
少し遅れて到着します。皆さんを後輩として扱い、とっても先輩面で関わってきます。
・フロース(???)
何故か夢の世界に存在する精霊です。どこに居るかはわかりませんが、花の香りをさせます。
どうやら、彼女が秘宝に携わっているようですが……。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです。
無いよりはマシな情報です。グッドラック。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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