PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Roralet Beginning

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●タイムマシンに誘われて
 突然だが、あなたは過去の世界にいた。
 『無辜なる混沌』は今ほどとの混乱も世界的危機も訪れず、各国は各国なりに些細な(そして主観的には大変な)事件や問題でまわっていた。
 理屈など知らないし、強いていうなら今日が四月一日だからかもしれないが、それを追求するべき時では、きっとないだろう。
 さて、なぜ今が過去だと分かったかについて触れよう。
 あなたが何気なく幻想王国の首都へ、それも行き慣れたギルドローレットの酒場へとやってきた時……そこには、三人のギルド員しかいなかったのだ。
 一人が誰かは、すぐにわかった。
 若く逞しく、そして『まだ自分が世界を救うつもりでいた頃の』レオン・ドナーツ・バルトロメイ。
 もう一人は、雰囲気でわかる。
 ユリーカ・ユリカと同じような服装をした……しかし彼女とは比べものにならないくらい色々と豊かで女性的な女。
 女はどこかよそ行きの声で言う。
「いらっしゃい、ギルド・ローレットへ。私は『シラクサ』。こっちはレオン」
 それと……と向けた視線は、どこか深い親しみがあった。
 テーブルについて酒を飲んでいたレオンがそれにつられて顔をあげると、テーブルの向かいに座って同じく酒を飲んでいた黒髪の男性があなたに顔を向けた。
「こっちは『エウレカ』」
 シラクサ、エウレカ。後者は名前を聞いたことがあったかもしれない。
 そして二人の様子と雰囲気で、きっと察することができるだろう。
 二人は今は亡き、ユリーカ・ユリカの両親であったのだと。
 そしてこの時代は彼と彼女が世界に名を広めんとしていた小さな冒険者ギルドだった時代。
 つまりは――ローレットビギニング。

●世界はまだ滅びを知らなかった
 あなたには、今日一日の自由が与えられていた。それもそのはず。あなたを縛ることのできる人間は、実質的にこの世界にはいないのだ。
 この世界はギルド・ローレットが結成された頃の時代。現代からおよそ17年ぐらい前である。
 過去のあなた自身に会いに行ってもいいだろう。
 当時の国を観光してみるのも悪くない。
 今日だけの――嘘みたいな大冒険が、あなたの前に開けていた。

 早速、それぞれの国の状態について紹介しておこう。

 幻想王国――良き王フォルデルマン二世による政治が行き届き、王国は平和に回っていた。
 リーゼロッテ・アーベントロートやガブリエル・ロウ・バルツァーレクといった将来貴族社会の重鎮となる人物が、その頭角を露わさんとしていた幼い頃。その親にあたる世代が貴族派閥を分けていた時代である。
 『現代』と違ってローレットや王からの後ろ盾がない状態で彼らに接触することはほぼ不可能だろうが、彼らの統治する街並を眺めたり平和な王都を観光することは充分にできるだろう。

 鉄帝国――皇帝ブランドが君臨し、並み居る挑戦者達をはねのけ続けていた時代。
 ヴェルスやザーバ、ガイウスといったS級闘士の面々はそれぞれの役割を(ヴェルス以外は)まっとうしているだろう。
 ただ、今のゼシュテル鉄帝国ほど政治が整ってはいなさそうだ。今以上に物理的実力主義社会になっていることだろう。

 深緑――アルティオ=エルムは女王リュミエ・フル・フォーレのもと、ラサとそこそこに友好な関係を築いていました。
 とはいえ現代ほど開放的かというとそうでもないので、深緑内へ部外者が入り込むのは難しいでしょう。もしあなたが深緑の民なら、雰囲気でなんとなく入れるかもしれません。

 傭兵――ラサ傭兵商会連合は今以上に混沌としているだろう。傭兵団『赤犬の群れ』を率いるディルクという男がまだ若く、レオンとナンパ勝負だの飲み比べだのしていた赤青コンビ時代の話である。
 傭兵団も群雄割拠。商人達も群雄割拠。世は傭商戦国時代である。
 あなたがこの国の生まれなら、過去のあなたや親世代と出会えるかもしれない。彼らの過酷な時代の生き方に触れることも、それはそれで良い観光なのかもしれない。

 海洋――ネオフロンティア海洋王国は現代から数えてひとつまえの大遠征が行われてすぐの頃。『絶望の青』への攻略失敗がほぼ確定した時期である。国中が若干沈んでいる頃かもしれない。
 とはいえ海洋王国の自由で明るい気質は、そんな状態をすぐにでも脱してくれることだろう。人によっては既に明日を見据えて前向きに生きているだろう。
 余談だが、カヌレが『お兄ちゃんのお嫁さんになる!』と言っていた時代である。

 練達――探求都市国家アデプトはやはり『賢者の三塔』によって管理されていたが、このときの各塔の長が誰であったかは分からない。カスパールはともかく、もしかしたらマッドハッターあたりはしれっと今と変わらぬ姿でいるのかもしれないが、国レベルの研究施設のトップに接触し確認することは不可能なことだろう。
 技術の優れ具合で言うならば『今と変わらず近未来的』である。
 そもそもが異世界の文化や技術体系が混じり合ったことで生まれた風景なので、ある意味時代に左右されないのかもしれない。

 天義――聖教国ネメシスは今と比べ非常に平和だ。『コンフィズリーの不正義』以前の時代であることも、アストリア枢機卿が現れる前であることもあって、シェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世のもと『きれいな天義』がまだ続いているはずだ。

 豊穣郷カムイグラの状態はやや複雑だ。霞帝の治世が広がりそれなりに安定していた時代だが、鬼人種への差別は根強い時代である。
 一応ながら、表向きには平和に都市が運営され、国としての体制もそれなりに整っているだろう。
 余談だが、天香遮那が産まれる前の時代である。兄である天香長胤も彼女と仲良くやっている頃かも知れない。

 覇竜領域デザストルは前人未踏の秘境である。そもそもの問題で入ることができないだろうが、あなたが亜竜種であるなら同族として中に入ることができるかもしれない。
 当時はまだ琉珂が産まれる前のこと。里長は彼女の親世代が務めていた頃である。

 さあ、古き世界へ旅立とう。
 一日限りの大冒険の始まりだ。

GMコメント

※ご注意
 このシナリオは四月一日の何もない日限定のシナリオです。そういうことです。わかって!
 なので『17年ぐらい前』と設定こそしていますが各情報には意図的に嘘(フェイク)が紛れており実際の設定情報と異なることがあります。過去の〇〇を探って現在の〇〇を解き明かそうみたいな使い方はできないようになっておりますので、ここはひとつシンプルに過去観光をお楽しみください。

このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13

●過去観光を楽しもう
 過去の自分に出会ったり、昔の混沌世界を観光してみましょう。
 過去の自分に出会ったり観察したりするなら、プレイングには約17年前(多少ブレがあってもOK)に自分がどうだったのかをプレイングに記載してください。

================================
■■■プレイング書式■■■
 迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
 大きなグループの中で更に小グループを作りたいなら二つタグを作ってください。
・三行目:実際のプレイング内容

 書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。

■グループタグ
 誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
 このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【もふもふチーム】3名

■パートタグ
 このシナリオでは【幻想】【鉄帝】【傭兵】【練達】【深緑】【豊穣】【覇竜】のうちいずれかに向かうことが出来ます。
 向かう国家にあわせ、いずれかのタグを【】ごとコピペして記載してください。
(天義へ向かうおはなしは別のシナリオでご案内しております)

================================

●補足
・およそ17年前としていますが、実は15~30年程度のガバらせかたをあえてしています。
・NPCたちに接触することは今回のシナリオではできません。特にフォルデルマンやエリザベス、シェアキムや天香家といった国の重鎮に接触するのはだいぶ無理そうです。
・過去改変みたいな話はあえて気にしないでください。現在に一切影響はないものとします(だって何もない日のおはなしなので)。
・魔種や竜種といった存在は、この時代ではおとぎ話的存在なので人々は『魔種がでたぞー』って言っても「まっさかー」で済ますでしょう。割とそういう時代です。
 その他『17年前にあったかなかったか』みたいな問題に関しては適当にフェイクを織り交ぜていきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はZです。
 そもそもが『何もない日』のおはなしです。

  • Roralet Beginning完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2022年04月01日 22時10分
  • 章数1章
  • 総採用数20人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ツェノワ=O=ロフニツカル(p3p010170)
眠り梟

「平和な街だなぁ……」
 『眠り梟』ツェノワ=O=ロフニツカル(p3p010170)はぼんやりと首都の大通りを歩きながら呟いた。
 彼女からすれば過去も現代も等しく『知らない世界』だ。
 この綺麗に舗装された道路も、等間隔に並んだ魔法式の街灯も、両サイドに並ぶヨーロッパめいた建築様式の美しい建物も。そして焼きたてらしいパンの香りも。
 そうして眺めて歩くたび、この街に暮らす人々も『同じ人』なのだとわかるようになる。
「折角だし、観光をしようかな」
 仮に自分探しの旅という定義があるとすれば、それは既存の環境から大きく離れることで己の輪郭を浮き彫りにし、そして戻った時に自分の輪郭が正しく環境に嵌まっていることを確かめる行為だ。旅はいつも、未知という名の自分を教えてくれる。
 『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)と『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が王都の通りに堂々と拠点を構えるかつてのギルド・ローレットを訪れたのも、あるいはそういう理由かもしれない。
「ここ、酒場かな?こんにちはー!
 シラクサさんにエウレカさん、レオンさんだね!
 はじめまして!」
 ギルドの拠点が今のようにフルオープンな酒場じゃなかった頃のことだ。見慣れぬヨゾラにレオンはきょとんとした顔をしている。
「僕は……うん『エア』とでも呼んでよ」
「ふうん? まあいいが……とりあえず座れよ」
 深くは尋ねずにとりあえず受け入れたレオンたち。拠点を構えるだけあって、入ってきた奴がいるとすればそれは依頼人かそれに準ずる誰かだ。探偵事務所の扉を叩く見知らぬ人への対応と、それは代わらない。
「ええと……」
 ポケットから硬貨を取り出す。どうやら普通に使えるようで、シラクサは奥から飲み物と軽食を持ってきてくれた。
 一方の華蓮はガチガチに固まっている。
「よう、初めましてお嬢さん。レオンだ」
 ちょっとキザな、そして溢れんばかりにハンサムな雰囲気を出して握手を求めてくるレオン。
 華蓮はなるほどこれが『全盛期』ってやつかと内心思いながらも、やや遠慮がちに握手にこたえた。
「うん……はじめまして、なのだわ」
 華蓮は、まずはレオンの話を聞くことにした。旅の話や夢の話。『まだ世界を自分が救えると思っていた頃』の彼は、まぶしいほどにキラキラしていた。
 それが嬉しいような、すこし悲しいような、けれど安堵できたような……、言葉にするのは、少々難しい。

 『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は慌てて路地へと入り、建物の角越しに表通りをのぞきこむ。
(片腕のない銀髪の、間違いない、あれはお父様……! でもなぜこんなところに……?)
「『虹霓勇者団』か? ま、商売敵だな」
 後ろから声をかけてきたのは、紙袋に林檎やフランスパンを詰めたエウレカだった。
 口調に棘はない。好意的な印象を、どうやらもっているのかもしれない。とはいってもここは『フェイクの世界』だ、関係性の根拠にはなりえない。けれど、計るためのモノサシにはなるだろう。
 沈黙のまま、表通りを歩いて行く人影を見送る。
(古い世代の冒険者……ですか)

成否

成功


第1章 第2節

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

 フィルティス邸近郊のとある森中。
 そこには花畑が広がっていた。
「ここは、『現代』と代わらないのね……」
 木の幹に身を隠すようにして覗き見る『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)。
 花畑を若い夫婦とその子供達が遊んでいる。
(エド兄様とラン兄様、それにエルメリア……)
 追いかけっこをする兄たちを抱え上げ、父が肩車を始める。歌を歌って手をとる母。
(こんな毎日がこれからも続くんだっていう事を思っていたのよね……)
 この将来に起こる出来事を知る身として、いまやるべきことは……ない。仮にあるとするなら、眼前に広がる『思い出』を深く胸の奥で抱きしめることだけだ。
 思い出は胸の奥でしか。腕にはもう、抱くことはできないのだから。

 『タイムトラベラー』オウェード=ランドマスター(p3p009184)の考えは決まっていた。
(確かこの時代には、ワシのよく知る「アーベントロート侯爵」が居るらしい。まあ観光と行こうかね。流石にリーゼロッテ様に会――)
 歩き出そうとしたオウェードの視界に、若々しい戦士の姿がうつった。
「今回はラサの依頼で幻想に来たぜ!」
 自分の考えを素直に口に出す彼こそ、若かりし日のオウェードである。
 思わず声を出して凝視してしまったオウェードを見てぎょっとする。
「何だこの髭のおっさんは! まあ俺も後には髭生やす予定だけどね!」
 フフッと笑って口ひげをはやしそうな位置をいじる若かりしオウェード。
「俺はオウェード! 宜しくねー!」
「ウム……」
 手を出し握手を求める若かりしオウェードに若干困惑しつつ、オウェードは握手にこたえた。

成否

成功


第1章 第3節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

 教会があった。大きくも小さくもない、どこにでもあるような天義式の教会だ。
 覚えのあるチョコレートクッキーの香りに誘われて『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)たどり着いたのは、そんな場所だった。
 日曜日というだけあって、教会には人々が訪れ世間話をしている。
 暫くすると陽気なオルガンの音に合わせて楽しげに一部の人々が歌い初め、子供達と一緒にクッキーを食べたりワインを飲んだりする人々もいる。
 あまり形式に拘らず、人々の定期的な交流の場所として教会は開かれているらしかった。
 話題はもっぱら戦争に関することで、鉄帝との小さな戦争がおこることや、この教会の神父も医療スタッフとして出兵することが語られていた。
(…………)
 そんな人々の中に混じってベンチに座り、先のことなどあまり考えていないような姉妹を見つめる。
(ねえ、私。メディカ。
 お父さんのこと好き?
 好きならね、大好きってたくさん伝えるのよ)
 未来が変わってほしくないといえば、それは嘘になる。
 けれど……そうだ……。
「帰ったら、あの子に会いたいわぁ」
 そして、お父さんの話をしよう。チョコレートクッキーを食べながら。

成否

成功


第1章 第4節

レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

「兄さまを護る強い騎士になるんだ!」
 胸に抱いた強い想いを叫びに変えて、レイリー=パーヴロヴナ=カーリナが広い庭で稽古に励んでいる。
 稽古と言っても、木の棒を振り回して走り回る遊びにすぎない。
 カーリン家の庭を走り回るわんぱくなお転婆少女である。
「一人で歩いていると、危ないよ」
 そこへ、声をかける女がいた。『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)である。
 彼女は名乗らなかったが、振り返る少女レイリーに警戒の目はない。どころか、レイリーのつれていた愛馬の立派さに目をキラキラさせるほどだ。
「一緒に乗る?」
 顎で示すと、大きく少女は頷いた。
(絶対に家族を大事にするんだよ、そして、出来うるなら……)
 少女と一緒に馬へ乗り、風をきりながら……目尻にうかぶ滴をぬぐう。

「ほー……」
 一方こちらは『ラド・バウB級闘士』佐藤 美咲(p3p009818)。
 ラドバウにやってきて一攫千金を夢見たが気付けば受付でもぎり兼事務をやっている女。
「なんだ、見ない顔だな」
 小柄な男が声をかけてくる。軍服を着ているが、なんだか服に着られているような有様だ。
「はー、まあ」
 生返事以下のこたえを返す美咲に、軍人は笑った。
「遠くからやってきてラド・バウで戦いたがる奴は山ほどいるからな。皆そうなる。
 けど落ちこぼれて帰っていくよりずっとマシだ。気落ちするな」
「そんなモンですかねえ」
 アイドルを夢見て上京した人みたいな扱いだなと思ったが、よく考えたら同じことだった。
 ぶっちゃけ後援者なしにぽんぽん闘技に出れる現代のローレットのほうがおかしいのだ。
 とか思っていると、並ぶ客たちがモメはじめた。勝った奴が最前列とかいう交渉(物理)であるらしい。
「あーもーこれだから鉄帝民は!」
 腕まくりする美咲。それを苦笑して眺める軍人の右手は、黒い鋼でできていた。

成否

成功


第1章 第5節

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー

 傭兵がいた。若く、独りの、自分を失ったかのような傭兵だった。
「おい坊主」
 そんな傭兵の肩を突如叩く男がいた。彼は名乗らなかったが、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)という未来の山賊である。
 ……かとおもいきや。
「俺は未来から来たお前だァ!」
「嘘だ!!!!!!!!!!!」
 酒臭くて汚いおっさんが上下の歯をむき出しにしていうものだから、若き傭兵は絶叫した。
 だろうなと思ったのだろうか、山賊はゲヘゲヘと笑ってから肩をもう一度ポンと叩く。
「なあ坊主、言いたいことがある」
「さっきのもの意外に……?」
 山賊はもう一度笑って、こう言うのだ。
「未来は、思ったより悪かねえぞ!」

「オォ……」
 物陰からこっそりと、岩場にある盗賊の住処を覗き込む『最期に映した男』キドー(p3p000244)。
 傭兵たちがしのぎを削る時代ゆえにか、盗賊山賊の活動はなかなかに活発であった。統率されないというのは足の引っ張り合いがおこると言うことでもあり、傭兵が他の傭兵を潰して仕事を独占するなんてこともザラにおきる時代である。
 傭兵と盗賊の間を行ったり来たりするような奴だってごろごろいたはずだ。
 そしてだからこそ……。
「あの後ろ姿、ま、間違いねえ……なるほどこの頃は……へぇ……」
 首を伸ばしたりひっこめたりを繰り返しながら眺めていたキドーは、後ろから肩を叩かれてビクッと震えた。
 振り返ると、『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)。
 いきなり見ると怖い顔なのでもっかいビクッとなった。
「なんだオメェ闇市見てくるんじゃなかったのかよ」
「見てきましたよ。箱買いしてきましたとも」
 そう言ってドンと置いた段ボール箱。
 開いてみると――蝉の抜け殻が40個くらいはいっていた。残りは木の棒となんかの骨。そして琥珀のナイフ。
「………………」
 やっちまったかこいつという目でみると、バルガルが自分の身を抱いてブルブルふるえていた。
「この場末の粗悪感――たまりませんねェ!」
「どうかしてやがるこいつ!」

 砂漠の荒くれ者や金持ち達をまとめ上げ、ある種の王となった男。その名も赤犬のディルク。
 そんな彼の傭兵団がはる野外テント脇に、『青鋭の刃』エルス・ティーネ(p3p007325)はめっちゃはりついていた。
(わ、若いディルク様がいる……昔から百戦錬磨の様子は変わりないのかしらね。
 ただこう壁から探れたら……そう! こ、好みとか! そう、女性の好みとか、ね?
 す、少しでもあの方の好みに近づきたいと思うのは――)
 壁にサッと背を向けて自分に言い訳をしまくっていると、その背後に気配。
 ハッと振り返ると、ごつごつした手がエルスの頬をやさしくとらえた。
「――!?」

 後に、『赤犬の群れ』に所属する傭兵は語る。
 ディルクのアニキは女とみるとすぐに手を出す、と。

成否

成功


第1章 第6節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
桐野 浩美(p3p001062)
鬼ごろし殺し
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生

「恵まれぬいわしに愛の手を!
 NOいわし NOらいふ! いわしデモだよ!」
「うわなんだこいつ!!!!」
 突如海洋王国に現れたいわしレディが鰯漁をしていた船を襲撃した。
 そんなニュースが報じられる――よりも早く、爆速で駆けつけた軍人によっていわしレディもとい『いわしプリンセス』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)は捕らえられた。
 ぐえーと言いながら網につかまりぶら下がるアンジュ。
 ふと見ると、なんだか見覚えのある海軍服をきた男性が怪訝なかおでアンジュを見つめている。
「どこかで見たことがある」
「手配書にはないようですが?」
 隣の偉そうな人物が敬語を使ったのでおそらく上官だろう。
 名は? と尋ねられ、アンジュはピッと横ピースした。
「おはようからおやすみまで、いわしの平和を守る正義のヒーロー、いわしレディだよ!」

 海軍繋がり、というべきか『空の王』カイト・シャルラハ(p3p000684)。
 彼が故郷へやってくると、船の上でなんだか複雑な顔をする父ファクルの姿を見つけた。
(親父が大怪我を負ったサフロスの大惨事が23年前だったか? だとすると今はちょうど復興し始めたところだろうな……)
 かなり距離があるはずだが、ファクルはこちらの存在に鋭敏に気付いたようだ。
 しかし、近づいてくることなく船をだし、港へと戻っていく。
 なんとなくそのあとをついて行ってみると……カイトは港に立つ女性の姿を発見した。
(昔はもうちょっと赤み強かったんだな。
お袋は変わんねぇな。で、抱えられているのが俺っと。甘えん坊だな、恥ずかしいせ。
……ん? あの子供)
 目を細めるカイト。
 優しい目をした白の少年が、見えた。

 港町をふらふらと歩く『鬼ごろし殺し』桐野 浩美(p3p001062)。
 テキトーに露天のおっさんと会話して値切ったり値切らなかったり最近の様子を尋ねたりしてみる。
 街の様子はといえば、活気があるといえばあるが、どこかキレのない様子だ。
(絶望の青の攻略失敗で、身内に参加者がいなくてもどうしても雰囲気は暗くなるっすね。
 吹き飛ばすという程で無くても、普段の様な日常にしてあげたいっすね)
 露天から買ったパンをかじりながら歩く浩美。
 通りがかりの暇そうな人をつかまえて話しかけてみる。
「何かおいしいものでも無いっすかね?
 地域的に海の幸が得意そうっすけど」

成否

成功


第1章 第7節

イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ

「これが……ザビアボロスに踏み荒らされる前の街、っスか」
 『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は練達のいち区画へとやってきていた。
 吹き抜ける風はまるで自然のそれと似ていて、しかし草木を含まぬ透明なにおいがする。
 『相変わらず近未来的』な街並は、あの日に見た風景と似ているようで少し違う。時の流れによって積み重なったものを――そしてたった一日で破壊され失われてしまったそれを、イルミナはしかと目に焼き付ける。
「ザビアボロス、ヤツへの恨みを忘れないように。更に燃やせるように……」
 ぎゅっと握りしめた拳が、力となる日を待って震えた。

(いつも行っているあの建物も、まだないのですね。
 いつも会っている人も、まだいないのですね。
 マザーはきっと、今と変わらずいるのでしょうけど。
 きっと会えはしないのでしょう)
 『( ‘ᾥ’ )』ニル(p3p009185)はそんなことをぼうっと考えながら、練達の街をお散歩していた。
(この頃のニルが何をしていたか、ニルはよく覚えていないのです。
 でもここならきっと……ニルの、だいすきな練達なら、もしかしたら知ってる誰かに会えるかもって、思ったのです、けど……)
 足を止め、振り返る。
 街だ。
 大きな、そして豊かな街だ。
 沢山の人が生きている街だ。
「……ニルは。練達がすきなのではなくて、みなさまがいる練達が……すきなのかも、です」

成否

成功


第1章 第8節

エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

 深緑、奥深く。
 焦げた木片を踏み、きびすを返す女の姿があった。
 今や滅びた生まれ故郷、ユリアの森。
 それはこの時代にあってなお、『今や滅びた生まれ故郷』であった。
 『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)はうつむいた顔を僅かにあげ、歩き出す。
 たとえばこの場所にもっともっと前にやってきていたら。
 たとえば母を止めていたら。
 たとえば。
 沢山のifが浮かび、そして苦笑と共に消えた。
 そんな『都合の良い救済』があるわけがないのだ。あったならもっと、世界は呼吸がしやすかったろうに。
「これが逃れられぬ罪だとするのなら……」
 罰は、一体なんだと言うのか。
 燃えて去った森ではないことだけは、きっと確かだ。

成否

成功


第1章 第9節

秋霖・水愛(p3p010393)
雨に舞う

 所は大きく変わって、ここは覇竜領域デザストル。
 ウェスタの里に『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)は訪れていた。
「あれは……」
 立ち止まって目を細める。遠くを走る人影が、双子の弟の水弥だと分かったからだ。
 その後ろを幼き自分が追いかけている。楽しげに。あれは追いかけっこなんだろうか。
(そっか……あのときは普通に仲良しで……お気に入りの水辺に家のことから逃げるように遊びに行くの大好きだったんだよね)
 蘇った記憶をかみしめるように、二人の子供を追いかけるように歩いて行く。
(まだ名前で呼び合って、そうそう、泳ぐのが苦手だった私をよく水の中に連れてこうとしたんだっけ。あぁ、懐かしい……)
 触れないように、もう暫く眺めていよう。幸せだったあのときを……。

成否

成功


第1章 第10節

 かくして夢は去り、現へと変えるだろう。
 この『フェイクの世界』が消えていくことを、あなたは感じることだろう。
 明日目覚めれば、そう、いつもどおりの朝がくる。

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