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シナリオ詳細

亜竜の星を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幻の果物
 覇竜の生き物とて、肉ばかり食べているわけではない。
 亜竜にしろモンスターにしろ、それ以外を食べる事もある。
 たとえばギガマンドラゴラを襲ったり……いや、その辺りはさておこう。
 ともかく覇竜の生き物も色々なものを食べる。
 その中には当然、フルーツの類も混ざっている。
 たとえば亜竜種が蛇眼苺を栽培しているように、亜竜にも好んで食べる果物がある。
 それは、覇竜に存在する巨木に生えているリンゴだ。
 木自体が見上げるような凄まじい巨木であり、その上で暮らせそうなくらいに巨大な枝が生えている。
 そして、その木こそが巨大リンゴ「亜竜の星」が成る木なのだ。
 真っ赤で巨大なそのリンゴは、大きなは全長1m。非力であれば抱えられない程度にはずっしりと中身の詰まったリンゴだ。
 少しの酸味と、強い甘み。パイにすれば砂糖要らず、生食すれば口に幸せ広がるとまで言わしめたものだ。
 だが……それを味わうには当然問題がある。
 人が食べて美味しいものが亜竜種が食べて美味しくないわけもなく、リンゴが生る頃にはワイバーンが飛んでくるのだ。
 一時期、それを奪い合ってワイバーン同士が争った事から「亜竜の星」などという名前がついた。
 今となってはすっかり縄張り争いが済んだらしく、付近で特に強いワイバーンが亜竜の星を食べ、余ったモノを他のワイバーンが食べにくる。
 つまるところ、普通なら亜竜種の入るスキなどないのだが……そこはアクティブジジイと一部の亜竜種に呼ばれている黒鉄・相賀だ。
 安全なルートはすでに調査済だったりする。あとは、そういうのを欲しがる者がいれば……といったところだが。
「亜竜たちも食べる美味しい果物があるなら食べてみたいです!」
「おお、あるとも。丁度時期でのう」
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)の言葉に、相賀は頷いたのだった。

●危険だけど美味しいよ
 亜竜の星。
 その大きく美味しいリンゴは、普通であれば手に入らない。
 当然だ。巨木に登ってでっかいリンゴをもいで、背負って降りてくる。
 飛行したところで、怒りのワイバーンの猛攻撃を受けるのは明らかだ。
 リンゴを守りながらでは、とても無理だ。
 だが、手はある。
 亜竜の星の生る木は巨木であるが故に、それなりに低い位置にも果実が生るのだ。
 高さ的には地上から5mといったところだが、充分に許容範囲だろう。
 ワイバーンは比較的上の方に居る為、気付かれるには時間がある。
 その間にリンゴをもいで下に降り、運ぶ準備を整えてダッシュで逃げる。
 当然ワイバーンは気付いて追っかけてくるだろうが、いつまでも亜竜の星の木をそのままにしておくわけにもいかない。
 比較的早めに追跡を諦めて戻っていくだろう。
「後は此処まで戻ってきて、好きに亜竜の星を味わう……と。こうじゃな」
 何しろ巨大なリンゴだ。パイだろうとタルトだろうとジュースだろうと作り放題だ。
「此処に炭酸水もあるでの。リンゴソーダも出来るっつーわけじゃ」
 勿論お酒にしたければベースになる炭酸酒もある。
 まさにリンゴパーティーというわけだ。
「前に食ったことがあるがな……かなり旨いぞ?」

GMコメント

黒鉄・相賀からの依頼です。
地図のルートに従い、ゴツゴツした荒れ地を抜けて巨木のある場所に行きます。
青々とした葉の見上げるような巨木に巨大なリンゴが生っている姿は、中々に壮観です。
その中で一番低い枝(地上から5m)に全長1mほどのリンゴが2個生っています。
1個で充分ですが、2個持ち帰っても構いません。
逃げる準備が出来る頃にはワイバーンが気付くので、全力で逃げましょう。

戻ったらリンゴパーティーです。
好きな形で楽しみましょう!
なお、相賀に任せると生で食べたり、すりおろして炭酸水や炭酸酒に入れるようです。

●ワイバーンリーダー
 普通よりも結構強いワイバーン。強力な炎のブレスを吐いて追撃してくるでしょう。
 一定距離を逃げれば帰っていくので、倒す必要はありません。

●亜竜の星
全長1mの巨大林檎。多少の酸味と強い甘み。
シャクッと歯応え充分。どうやっても美味しい幻のリンゴ。

●黒鉄・相賀(くろがね・そうが)
亜竜集落フリアノンで酒職人を営む亜竜種の老人。
それなりに戦えるらしいのですが、今回はついてきてくれません。
気の良い酔っ払いに見えますが、概ねその通りです。
義理には相応の友好を、不義理には相応の冷徹さを返してきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 決められたルートを通る限り、想定外の事態は絶対に起こりません。
 決められたルートを外れた場合、難易度が大幅に跳ね上がる可能性があります。

  • 亜竜の星を求めて完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月02日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
シラス(p3p004421)
超える者
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ウーナ・ブルー(p3p009736)
薔薇剃刀
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

●亜竜の星を求めて
「林檎は私も大好きだよ。野に実る素晴らしき宝石だよね。それにしては随分大きいようだけど……まあ食べ応えがあるのは良い事だ。どのような味なのか、私の知る林檎とはどれ程違うのか、実に楽しみだね」
『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)のそんな声が響く。
 亜竜の星。全長1mの巨大林檎であるというソレは、確かに色々な意味で「外」のリンゴとは別物だろう。
「巨大リンゴが取れるなんてなんだか不思議。今までの常識が一気に崩れ去るみたいでなんだか面白いね! リンゴ狩り、頑張っていこうね!」
「1メートルの林檎かあ、確かに食べてみたいし、実がなってるのも見てみたい」
『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)に『竜剣』シラス(p3p004421)も頷き、林檎の木を想像する。
 きっと、木も立派なのだろう。そんな期待をせざるを得ない。
「そ、そんなに大きなリンゴがあるのですか。独特の生態系ですね。『亜竜の星』……果物も、この地域では小さいままでは生き残れないという事でしょうか」
『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)も驚きながらも、ふと頭をよぎることがある。
「……しかし、ワイバーン種が縄張りにして食料にしている程のリンゴとは……そして、それを密かに収穫する術を一応確立しているらしい亜竜種の方々のたくましさには恐れ入りますね」
「危険はありそうだが、その分良い結果が返ってくる……ということなのだろうな」
『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も、そう言ってリースリットへと頷く。
「亜竜の星か、手に入れたら幾らかお土産に貰っても良いだろうか?」
 あぁ、いや、鮮度が落ちるから余りそれは適さないかな、などと呟くベネディクトだが……調理した後のものであればお土産にはなるだろう。きっと、良い土産になるはずだ。
「ワイバーンさんも美味しいリンゴ好きなのね……! みんなで分けっこ出来れば良いけど、ちょっとしかない宝物だとそれも難しいものね。でもね、ワイバーンさんも気付いてない下の方にあるリンゴさん、ダメになっちゃう前にルシェたちに分けて貰うわ! ルシェも美味しいリンゴ食べたいの!」
「リンゴ、美味しいよね? アップルパイはもちろんだけど、タルトタタンもいいし、バターと砂糖で炒めたリンゴに外れはないんだ。アイスクリームに混ぜてもいいし、パンケーキに添えてもいいし。あ、ジャムにしてクッキーで挟むのもいいよね。ねっとり系で。お酒もいいよね。そもそもが美味しいもんね。サクサクとした食感に甘い蜜。飲食不用のアタシだけど、美味しいものは別腹!」
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)と『薔薇剃刀』ウーナ・ブルー(p3p009736)がそんな会話を交わす。
「リンゴ。林檎ですか。なるほど、そういうのもあったのですか。亜竜という固有の生物が数多いるのなら、固有の植物だって数多いるのも確かに道理なのです」
『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)も、納得したようにそう頷く。
 実際、覇竜には他とは全く違う生き物や植物が多い。
 そんな中で亜竜の好む「覇竜らしい」植物があるのは、ある意味で当然とも言えるだろう。
「これは味にも期待できそうなのです。いざ、リンゴ狩りなのです!」
 叫ぶクーアに誰もが微笑んで。ベネディクトとマルベートが「おや」と声をあげる。
 まだ少しの距離はあるが……流石の巨木ということだろうか。
「遠くからでも見えるが、あれが例の巨木か?」
「これだけ遠くからでもリンゴがわかるのって圧巻だね」
 まだ距離はあるはずだが、明確に「林檎の木」だと分かる。
 縮尺が狂ったような……という表現はこんな時に使うべきなのだろうと思わせる光景だった。
「ともあれ、このまま地図に従って接近しましょう。ルートを外れて良い事など一つもない場所です」
 リースリットの言葉に全員が頷いて、そのまま慎重に進んでいく。林檎の木までは、もう一息だ。

●亜竜の星をゲットせよ
「で、亜竜の星。盗みがいが――もとい、技の見せがいがあるね、後食べがいも。ワイバーン達には悪いけど、一個だけなら貰ってもいいよね? うん貰う。今決めた。そもそも依頼だから何の問題もなし」
 そう言い放ちウーナが林檎回収の為の準備を進めていく。
 こうして木の近くまで来ると、とんでもなく巨大で……キルシェは思わず歓声をあげる。
「わぁ……大きい……!! リンゴも大きいけど、樹もすっごく大きいわ! リンゴの樹さん、こんなに大きくなるなんて凄いのね!」
 そう、見上げるような……という表現はあるが、先の見えない巨大さだ。
 確かにこの木であれば、亜竜が満足するような林檎をつけることが出来るのだろう。
 事実、狙いの場所にある林檎もかなりの大きさだ。
「あのね、リンゴの樹さん。ワイバーンさんも気が付いてない実を一つ、貰っていきます」
 そうキルシェが林檎の木に話しかけている間にも、ウーナの準備は進んでいく。
 まずはウーナの「逃走」スキルをマルベートの「テスタメント」が強化する。
 手が足りなければベネディクトも手を貸すつもりだが……まあ、ひとまずは大丈夫だろう。
 警戒をしっかりとする中で……ウーナは目標の林檎……「亜竜の星」をしっかりと見上げる。
(アタシの自慢と言ったらもちろん素早さ! 反応もそうだけど、機動力! でもそれを生かして真っ直ぐに突っ込んだらただの馬鹿)
 葉の生い茂る木の下に居るせいか、ワイバーンリーダーは此方には気付いていない。
 つまり、この環境を上手く利用するのが最善。
 だからこそウーナは遮蔽物の状況を確認し、利用してジグザグな動きでひっそりと近づいていく。
(気付かれる恐れはなさそうだけど、時間稼ぐのは長い方がいいからね)
 その様子を全員でハラハラしながら見守るが……やがてウーナは林檎の真下まで辿り着く。
 そのままダッシュして飛行して林檎を奪取すると 運搬性能スキルを利用し抱きかかえて、即座に逃走を選択する。
「皆、サポート宜しくね! アタシは必死に走るから!」
 林檎がもがれれば、当然枝が揺れて振動が全体に伝わる。
 するとどうなるか。当然……。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
 ビリビリと上空から声が響く。
 林檎を狙ってきた何者かにワイバーンリーダーが気付いたのだ。
 その視線は当然、此処から逃走していくウーナへと向けられる……が。
「足止めして、ウーナお姉さんが逃げる時間作るのよ!」
「追うべきものさえ居なくなってしまえばお互いに争う意味もなくなるだろうしね。頑張るとしようか」
「それじゃ、ちょいと根性を見せようかね」
 だがそこにキルシェたちが立ち塞がる。マルベートのハルメギドが放たれ、スティアの『ステイシス』が発動する。
「勝手に奪った林檎のお詫びに軽く遊んであげよう。甘い果物も良いけど、私としては肉も捨てがたいのでね。その血肉と魂も存分に味見させてもらうよ?」
 そうマルベートが妖しく笑って。スティアは真剣な表情でワイバーンリーダーへと対峙する。
「あっちにいけー!」
 通常のワイバーンよりも強大にして強力。それがスティアにもハッキリと理解できたのだ。
「このままリンゴの運搬が十分に距離を稼げるまで迎撃して足止めしますよ!」
 リースリットの雷光の剣が放たれれば、ワイバーンリーダーもかなり迷惑そうに上空へと飛翔するが……まだ追撃を諦めてはいなさそうだ。
「流石に簡単には逃がしてくれそうにないか。だが、こちらも何も準備をしてこなかった訳じゃない!」
 ベネディクトも誓約の一撃を放ち、ワイバーンリーダーが忌々しそうに炎のブレスを放つ。
「くっ……!」
 流石に強い。だが、気は引けている。ならば、このまま足止めするのみだ。
「追いかけっこはねこの領分! 足止めだっておまかせなのです!」
「しかしデカいワイバーンだ。こいつを倒せって話じゃなくて助かったぜ」
 クーアのふぁーれがワイバーンリーダーの機動力を削ぐべく放たれて。
 シラスもとにかく時間稼ぎに専念していく。
 とにかくウーナが狙われるのが一番困る。だからこそ、全力で気を引いて時間稼ぎをするつもりだった。
 勿論、少しずつ逃げながら……だが。
 その努力がようやく報われる瞬間が、そしてやってくる。
 ウーナの姿が見えなくなって、ワイバーンリーダーが悔しそうに声をあげたのだ。
 そして、いつの間にか結構な距離を移動してきていたことに気付いたのだろう。
 ワイバーンリーダーは炎のブレスを一吹きすると、身を翻して林檎の木へと飛び去っていく。
 いつまでも林檎1個に固執して、縄張りの木を奪われてはたまらないと思ったのだろう。
「よし……作戦成功だ!」
 ベネディクトのそんな声が響いて、全員で意気揚々とフリアノンへと戻っていく。
 そうして改めて巨大林檎「亜竜の星」を見ると……その艶やかさは、驚くほどの美しさを伴っていた。
「あ、切る前にルシェリンゴさんと背比べしてみたいです!」
 そんな可愛らしいことを言うキルシェに全員が頷き、背比べが始まる。
「ルシェ、顔しか出ないわ……! リンゴさん凄く大きいのね!」
「……ひとの幼子ほどもあるサイズのリンゴ。現物を改めてみると実に壮観なのです」
 クーアもそんな感想を漏らすが……そう、亜竜の星はとても大きい。これで何人分なのだろうか?
 どう食べても美味しい。そう思わせる芳醇な香りは、切ることで溢れ出る蜜からも明らかだ。
 料理をするメンバーは各々の分を確保するが……マルベートも早々と調理に取り掛かっていた。
「お待ちかねの林檎パーティーだね。林檎はデザートとして食べても良いけど、実は肉にもとても合うものなんだ」
 そう、何も林檎がメインである必要はない。美味しい林檎は料理の美味しさを引き出す助けにもなるのだから。
 マルベートは調味して肉料理用のソースにして、「林檎ソースの鳥肉ステーキ」を作り始める。
「この存外応用の効く食材を皆がどのように使うのか楽しみだよ」
「ルシェは熱々のアップルパイにひんやりバニラアイス添えが良いです! あ、でも他の食べ方も気になるわ!」
「アタシは甘いもの……じゃなくてカレーを作るよ。甘いもの尽くしは飽きるし、何より空腹!」
 ウーナはそう宣言する。
「リンゴのカレー、絶対美味しいからね。 亜竜肉とかない? あったらそれで」
「ほれ、ワーム肉」
「あ、あるんだ。で、ルーは辛口! すりおろしじゃなくて水の代わりにリンゴジュースを使う! 味が濃くなって辛味と合わさってお酒に合うんだなーこれが」
 そう、水の代わりに別のものを使うのは中々玄人な手法だ。きっと素晴らしいものになるだろう。
 スティアはどうか。こちらもやる気満々だ。
「そのまま食べるだけじゃ味気ないと思うし、料理もしないとね!」
 何やら一部の面々が遠い目をしていたが、何なのだろうか。
「食べてくれる人には私のスペシャル料理(量が凄く多い)を振る舞うね!」
 何やら言外に含まれていた気がするが、作るのは「りんごのガトーインビジブル」であるようだった。
「どちらもリンゴをいっぱい使うから丁度良いよね! 皆に喜んで貰えるように頑張って作るよ! ベネディクトさんが連れてるポメ太郎も期待してる気がするしね」
 どうだろうか。ポメ太郎の可愛い表情からではよく分からない。可愛い事しか分からない。
 キルシェの連れて来たリチェルカーレも……やはり分からない。可愛い事しか分からない。
「運動した後だし多めに作った方が良いよね?」
 それはどうだろう。ともかく相賀が面白がって食材を追加で渡さなければ常識的な範囲に収まるだろうか。
「スティアさん……またスペシャルを……とはいえ、リンゴのサイズがサイズですし、それでも使い切れなくはあるのかな」
「む? 食材なら追加を」
「やめてください」
 リースリットが止める事でどうにかなった。安心である。
「折角ですので私も少しいただいて調理してみるのです。こげねこメイドの腕の見せ所なのです!」
 そう言ってクーアも調理開始だ。
「かなり量が多いので、食べきれなくても大丈夫なよう保存の効くコンポートにでもしておきましょうか。相応の素材があるならケーキを作ってその上に乗せて、ないなら別の果物に添える形で頂きましょう」
「うむ、何でもあるぞい」
 あるようだ。ケーキでもタルトでも何でも出来そうだ。
 そんな最中、シラスは味見とばかりに林檎をすって炭酸水に入れていた。
「ぷはっ、生き返るー!」
 林檎だけだというのに、この甘み。疲れがスッと抜けていくようだ。
 そうして一息つけば、自分も調理しようかという気になってくる。
「刻んだ林檎の身を砂糖で煮込んでパイ生地に包み焼き上げる……最高に贅沢なアップルパイだぜ」
 この為にパイ生地も出発前に仕込んでおいたという、中々のやる気っぷりだ。
「ああ、匂いだけでもうヤバいな、涎が止まらねえ」
 そうして出来上がっていった料理は、どれも美味しそうで。
「さて、勝利の盃と行こっか!」
 今日の功労者であるウーナがそう合図をして、ベネディクトが乾杯の音頭をとる。
「俺は今日はリンゴ酒にしようかな。相賀殿、良ければご一緒に」
「うむ、では乾杯!」
 そうして始まる宴は、ポメ太郎やリチェルカーレの分も充分に用意された派手なパーティだ。
 ポメ太郎も実に嬉しそうで……訳するならこんなところのようだ。
「え? 僕の分もあるんですか? 食べて良い物なんですか?! 今日はたくさん食べても怒られないんですね?! やりました! ご主人様達だけ食べる何てズルいですからね! とっても甘くて美味しいですね! まだあるんですか?」
 何とも楽しそうだ。
「良かったな、ポメ太郎」
「ベネディクトさんは……リンゴ酒ですか。まあ、まあ。ぽめ太郎、食べ過ぎないようにね」
 リースリットもそう言いながら、スティアに料理をよそっていく。
「折角一杯あるのです、スティアさん『も』いっぱい食べましょう! さ、よそってあげますから遠慮しないでください。……ね?」
「リースリットさんにはサービスして大きめにしておいたからね! そんなに喜んで貰えるなんて嬉しいなってなんで私のお皿にちょっと移してるの!?」
 何やら乙女の戦い(言葉通り)が始まっているようだが、さておいて。
「リンゴはリチェも食べようね。そのままも甘酸っぱくて美味しいし、リンゴソーダもしゅわしゅわ……リチェはリンゴジュースね。リチェもポメちゃんも、もふもふが美味しそうに食べてるの見てると幸せ……」
 ほっこりしていたキルシェだが、思い出したように相賀へと声をかける。
「あのね、種を他の場所に植えても良いかしら? ルシェのお家深い森の中にあるの。樹もいっぱいあるから、リンゴの樹も元気に育つと思うの! 美味しいリンゴが増えたら深緑の人も、ついてきたドラネコちゃんたちもきっと喜ぶわ!」
「ん? おうおう、好きにしたらええ。じゃが死ぬほど大きくなるからのー。植える場所には気をつけるんじゃぞ」
「はい!」
 元気なキルシェに、ポメ太郎が「わん!」と鳴いて、リチェルカーレも「ぷい!」と鳴く。
 そんな幸せで、あまーい一日を全員が過ごしたのだった。

成否

成功

MVP

キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

状態異常

なし

あとがき

林檎のコンポート、天野も大好きです。

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