シナリオ詳細
<FullMetalBattleRoarーFinal>ザーバクライシス
オープニング
●最終決戦にして最大危機
新皇帝就任の、そのまさに翌日のことであった。
「サーバ軍閥が首都進撃!?」
新しいお土産を酒にするか饅頭にするかで真剣に悩んでいた皇帝夢見・マリ家(p3x006685)はとらをだめにするソファから転げ落ちた。
伝令に駆けつけたのはローガン・ジョージ・アリスと冬越 弾正。
ザーバが反転した事実を受け、正式にザーバ軍閥を脱退。ゼシュテリウス軍閥に協力することで国政に参画した戦士達である。
「――」
「ゼシュテリウス軍閥の首都進撃をそのまま真似たかのように、移動要塞ギアブルグを用いまっすぐに進撃しております、と弾正は言っているである。
このままでは首都の被害は確実である!」
ザザ、とノイズ音のようなものを発した弾正と、ボードを手に顔をしかめるローガン。
ディアナの占領下にあった頃は民に事前の布告をした上、要所はすべてシャドーレギオンで占められていた。しかし今回は民の避難が間に合わないほど突然で、しかも要所に詰めているのは生きた兵達だ。
首都のうける被害は当時の比ではないだろう。
「なんということだ。私がダンディすぎたばかりに……」
「いや、ダンディは関係ないですね今は」
じょーじ(p3x005181)と九重ツルギ(p3x007105)もその場に集まり話し合いに加わった。
「とにかく避難を進めましょう。我々はギアバジリカで……」
「ソイツは難しいんじゃあねえか?」
振り向くと、部屋の壁際に腕を組んでよりかかっていたダリウス(p3x007978)がいた。
「首都進撃時のダメージが残ってる。修理にはまだ時間がかかるぜ。回復魔法でシャランラしてんじゃあねえんだ、『修理をやめる』のにだって時間がかかる」
「避難誘導にマンパワーを裂く以上、それ自体が無理っスねえ」
ぱかっと開いた箱から上半身をのぞかせるミミサキ(p3x009818)。
「最悪のタイミングですね。なぜそんな見計らったように……」
そこまで言ってから、弾正はハッと顔をあげた。
ダリウスとミミサキが互いの顔を見て、そして深くため息をついた。
「俺……いや、『バルガル』ならやるぜ。相手のコンディションが最悪な時を狙う。そうなるまでじっと観察し続ける」
「『佐藤 美咲』はそういうヒューミントのエキスパートっスから、これだけ巨大化した軍閥の中で監視の目を摘むのは無理っスね」
ザーバ軍閥に所属していると目されているバルガル及び佐藤 美咲。潜入に長けた彼らが本気でこの首都に紛れ込んでしまえば、確かに探し出すのは困難だ。第一、この国は各所の修復や選挙で大忙しだった筈。
そこへ、もう一人の新皇帝ソール・ヴィングトール(p3x006270)が部屋へとやってきた。
「鋼鉄民は家や道路が壊れたくらいで泣かない。むしろ縁起がいいと喜んだほどだ。
けれど隣人の死は違う。悲嘆に泣き、復讐のために飛び出してしまうかもしれない。
そんな連鎖をここスチール・グラードでおこすわけにはいかない」
頷くマリ家の隣に立ち、そして叫んだ。
「避難誘導を最優先。ザーバ軍閥は精鋭部隊を編成して首都外縁で迎え撃て!」
●ザーバクライシス
大軍勢と呼ぶに相応しい。
首都決戦時に動員した多くの小隊が再編制され、首都外縁部へと集結。
迫る巨大な影を相手に完全武装で構えていた。
その現場に駆けつけたのは、新皇帝いりす(p3x009869)である。
「昨日の今日で、ですか……」
多くの支持を受け、弱者をも守る国をつくると期待された彼女。ここでザーバ軍閥による進撃を許すようなことがあってはならないのだ。
この防衛ラインは、どうあっても守らねばならない。
大砲を担ぐジェイビー、ジェネレーターを起動させるホランド。
「準備は良い?」
「だめでも無理矢理ぶっとばすけどな」
二人の声をうけ、フラッシュドスコイ(p3x000371)は万歳の姿勢をとった。
「大丈夫! いつでもいけるよ! 『あのとき』の続きをしっかりたたき込んであげなきゃね!」
フラッシュドスコイがセットされているのはエクスギアの発射装置である。ギアバジリカから切り離す形で持ち込んだこれを使えば、ギアブルグに対して直接的な突入が可能になる。
その機械の横にはジャック翁(p3x001649)が立ち、端末を操作するアスナ・トロージに視線をやった。
「反応は?」
「予想通りね。こちらに接近……というか、ギアブルグの移動と完璧に重なってる。例の技術者に拿捕されたっていうのは本当みたいね」
「ザーバ軍閥がエクスギアEXを大量に鹵獲したという情報もある。開発中のパーツもな。そこから考えられる機体特性を見るに……」
リアム・クラークがため息をつき、そしてギアブルグを見つめた。
ドッという遠い砲音。連続して打ち上げられたのは、無数の棺……ではない。カタパルトより発進したエクスギアEXの一団であった。
飛行形態から人型形態へと変形体したロボット『エクスギアEX』が、大地に着地しこちらへと武装を展開する。
「識別信号キャッチ。――やっぱりね」
今度はアスナがため息をつく番だ。画面を覗き込むと、『DexM001-7810-SpiegelⅡ』と表示されている。
「そういうことだろうと思ったよ!」
そう言って味方側から立ち上がった鋼の巨人。ラムダ専用魔導重装『黒麒・改』。
同じく鬼丸専用機『鎧闘騎兵アハト・弐式改』。
拡張されたアーマードパッケージを装着すると、背部スラスターからエネルギーを噴射。完全戦闘モードで走り出す。
「ザーバのアレがコピーされた原罪による『反転』だと分かった以上――」
「クリミナルオファーを受けた戦士達がいるのは確実。ここは倒して、先に進むしかない!」
続いて、フラッシュドスコイのエクスギアも発射された。
なぜなら、ギアブルグからも黒いエクスギアが発射され、空中で解放。
敵前線部隊の指揮官とおぼしきリュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガーが飛び出したからだ。
「貴方たちの想いを、認めるわけにはいきません。潰えて滅び、歴史と化せ!」
リュカシスは握っていた杖を振ると、英雄たちのコピー体を大量に作成。軍隊を作り上げこちらへとけしかけた。
「何度だって言ってやる! 『ボク』の目指すべき一番は、そんな手じゃ掴めないよ!」
「「全軍突撃!!」」
ゼシュテリウス軍閥とザーバ軍閥。
およそ百人規模の師団と十数台のエクスギアEXで構成された、二つの前線部隊が激突する。
●ノーザンキングス連合王国
ザーバ軍閥首都進撃の裏で起こったもう一つの事件がある。
「我ら、ノーザンキングス連合王国……これより王座を手に入れる」
怒りと憎しみに満ちた目をした女にして、『初代国王』リズリー・クレイグは剣を振りかざした。
新皇帝即位にあたって実質解散状態になりかけていたノーザンキングス連合に属する各部族の長たちを殺し、全ての部族の統一と国家独立を宣言した女である。
今やノーザンキングスは『鋼鉄に最接近した外敵』であり、兵らはリズリーから伝播した憎しみに感化されバーサーカーとなっていた。
それもそのはず。リズリーは『反転』現象を起こし、この世界で魔種と同等の存在にまで上り詰めていたのだ。
「全てを壊せ! 全てを殺せ! 屍と瓦礫の上にこそ、あたしらの国は建つ!」
聖器ネアンデルタールを振りかざして叫ぶ長谷部 朋子軍団長。
彼女はリズリー国王より『軍団長』の座を与えられ、多くの兵を率い首都進撃の第一打を与える役割を持つ。
咆哮する戦士達。そのなかで、ウサーシャもまた同じように咆哮し……そしてズキリと心に痛みをはしらせた。
「何……? われの行いは、何も間違っていないはず。なのに……この痛みは……」
脳裏に響く、ある戦士の声。黒いもやのようなものに遮られ聞こえない声。
何を忘れているんだろう。なにかを、なにかを……なにか大切なものを心に掴んだ気がしたけれど……。
「いい軍団じゃねえの、エーデルガルト大佐殿?」
カイト……否、『プロモーター』と名乗り直した男は、ズボンのポケットに手を突っ込んで壊れた建物の上からノーザンキングスの軍勢を見下ろしていた。
『プロモーター』から湧き上がる黒い気配は、彼が魔種に相当する存在であることを示している。
同じく、彼の隣でじっと黙っていたエッダ・フロールリジ……否、エーデルガルト大佐は憎しみに顔を歪めた。
「帝国は……奴らは何も理解していない。『死なない皇帝』を即位させたところで内乱は終わらない。民は苦しみ国は傾いたままだ。それに、所詮は『外の世界』からやってきたゲーム感覚の人間達。そんなものが正しい統治と言えるか」
吐き捨てるように言うと、ギラリと振り返る。
ノーザンキングス連合軍によって破壊された街並は、まさに瓦礫と屍の山であった。
ザーバ軍閥進撃の影に隠れる形で同時進撃を開始したノーザンキングス連合軍は、今まさに首都へと侵入を果たしつつある。
「これは正当なる『テロリズム』だ。政府への反抗であり示威だ。
その高い鼻っ面に鋼の拳をたたき込み、『甘ったれるな』と言ってやるのだ」
エーデルガルトが拳をあげると、それにあわせて連合軍の兵達が武器を掲げた。
●あるひとつの終焉
ROO内にログインしていたイレギュラーズアバターたちの視界に、小さくメッセージウィンドウが開いた。
『ザーバクライシス』と名のついたそれにピンときた人間は、おそらく数十人ほどだろう。
鋼鉄帝国に新皇帝が即位したあとも、少なからず続いている内戦。これがもっとも激化していた時期に起きた『ザーバインパクト』という特別クエストをクリアした際、予告されていたタイトルがそれだったのだ。
ついに、である。
クリアした際、ザーバを含む数名が『黒き絶望(DARK†DESPAIR)』という異常状態に墜ちたことは確認されていたが、それが欺瞞情報をかぶせた『反転(魔種化)』現象のことであったと、最近の調べで分かっている。
つまりは、『魔種になってしまったザーバ』とそれに連なる複数の魔種たちによる軍勢が首都へ進撃するという一大イベントが、このタイミングに発生したということになる。
この特別クエストをクリアすることで得られるものは三つある。
ひとつは鋼鉄帝国首都スチール・グラードの平和だ。
仮想世界とはいえここには確かに生きている者たちがいる。実世界の肉体が傷つかないからといって、誰かの悲しみを見過ごせないという者は多いだろう。
そしてもう一つは、クエストクリアによるデータ収集である。
練達研究員たちの熱心な調査もさることながら、ログインして無数のクエストをクリアしていったイレギュラーズたちによってこの世界の謎……つまりは原罪をコピーしてしまったがゆえの歪みを突き止め、可能な限りそれらを復旧するという練達の大目標を叶えることができる。
練達の夢には関係ないなというイレギュラーズもまあ少なくないが、このROO自体が練達代表からの大規模な依頼であるという側面からみれば、イレギュラーズたちにとって努力義務のある目標となるのだ。
そして重要な三つめ。
「このクエストの重要人物のひとり、ノーザンキングス軍団長『長谷部 朋子』に奇妙なものがある。
具体的には、昨今観測されはじめた『パラディーゾ』と同一のパターンが検出されているんだ」
練達三塔主のひとり佐伯はそう述べると、『長谷部 朋子』を示すウィンドウを開いた。
パラディーゾとはROOの裏で暗躍する強大なる悪、ジェーン・ドゥ&ピエロが仕掛けたドッキリボックス。要約すると、『冠位魔種に相当する悪』だ。
そしてこれらの関わるクエストには『トロフィー救出チャンス』が発生する。
「このクエストをクリアする中で、現在ログアウト不能になっているイレギュラーズを、一人だけではあるが解放することができるはずだ」
世界のため、依頼主のため、そして仲間のため。
強大なる敵との戦いが、幕を開けたのだ。
●闘争を求める
「ようやく……だのう」
ギアブルグ内部。コントロールデッキ。
玉座に腰掛けていたザーバ・ザンバは笑った。
あふれ出る力は闘争を欲し、荒ぶる感情は闘争を求めた。
戦いが欲しい。血が踊るような戦いが、心が高鳴るような戦いが欲しい。
首都進撃など、『手段のための目的』にすぎない。
「ザーバ軍閥閣員、全速前進! 総攻撃!
さあ、ゼシュテリウス軍閥……戦いを寄越せ!」
- <FullMetalBattleRoarーFinal>ザーバクライシス完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別長編
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年11月07日 22時05分
- 参加人数30/30人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●レジェンド・オブ・ノーザンキングス
要塞都市メリカナ陥落の知らせに駆けつけた帝国軍王都防衛隊の数は、決して多いとは言えなかった。
国の最高暴力装置であるところのザーバが魔に落ちザーバ軍閥を率いて首都へ進撃したというニュースが先んじて王城へと届いていたためである。
動乱の隙を突くように、もしくは逃げ道を塞ぐように現れたノーザンキングス連合王国軍に、ギリギリのところで対抗できる程度のわずかな軍。
血に濡れた剣を手に、牛の角をそなえた兜を被ったノルダインの兵団が歩を進めてくる。
シルヴァンス銃歩兵隊及びハイエスタ弓兵隊による遠距離射撃と帝国軍による機関銃射撃が交差する街。
かつては入り組んだ市街地であったこの場所が、今は戦場となっていた。
連合軍の先陣を切って突っ込んできたのは狂気のウサギ戦士ウサーシャである。
「……間に合った、のだろうか?」
白い壁の建物。屋根の上に立つ鎧のウサギ騎士、『魔剣遣い』アーゲンティエール(p3x007848)。
彼は魔剣『アーゲンティエール』を抜くと、くるりと両手で回して垂直に、そして正眼の位置に立てた。
刀身に映る自らのヘルメット。その向こうに見えるウサーシャは確かにこちらを見た。
「我らの目的は鋼鉄国の秩序。そのために色々あって少し遅くなったが、取り戻しに来た。いざ――」
足場を蹴ると、アーゲンティエールは宙へと踊った。
対抗するように建物の壁や屋根を蹴り俊敏に宙へと飛び上がるウサーシャ。
「清算の時だ!」
アーゲンティエールの魔剣とウサーシャの大鋏型両手剣が交差。
そのさまを連合軍兵士たちが見上げた。
「先の選挙で三人の皇帝が選ばれたのは君たちも知っているだろう。
我は応援する側の立場ではあったが……ともかく重要なことは、立候補者たちが民に対しこの国の将来に何ができるかを説き、信任して頂いたということだ」
「『よそ者』が遊び半分で始めたことだ!」
「確かによそ者だ。遊んだ者もいる。だが『全力で』だ」
互いに壁を蹴り、再び激突。
空中でつばぜり合いとなった二人は、そのままもつれるように回転し地面へと着地した。
「鋼鉄の未来に対しての責任、これを遂行する意思は決して軽薄ではない。
それを証明する為に、今我はこうして君たちと対峙している。
『民の求めに応じ、これを護るために在る』ために」
アーゲンティエールの呼びかけに、ウサーシャの表情が歪む。
痛む頭を抑えるように片手をかざすと、小さく首をふった。
「そんなこと。そんなことを、なぜ――」
「なぜならば!」
アーゲンティエールの魔剣が、大鋏剣を跳ね上げた。手から離れ回転し飛んでいく大鋏剣。
「――格好良いからだ」
ウサーシャが、がくりと膝を突く。その身体を片腕でささえ、そしてアーゲンティエールは頷いた。
「魔種に相当する存在といっても、『同一』ではない。この狂気、払えるぞ。墜ちた者とて、あるいは……!」
ザーバ、エーデルガルド、リュカシス、更にはリズリーまでもを魔に落とし鋼鉄帝国が傾きかねない打撃を与えた男。
通称『プロモーター』。彼は……。
「後ろでふんぞりかえるでもなく、こうして前に出てくる。要するに、もう『仕事は終わった』んだろう? こっからは趣味の時間だ、ってな」
結界術に使う札を扇上に広げ、『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)は青白い炎のような、あるいは冷気のようなもやをあげた。
あちこちでは連合軍と帝国軍がぶつかり合い、銃声と剣のぶつかる音、時折の爆発が聞こえている。
元は静かな街並みだった大通りの真ん中で、カイトと『プロモーター』は向き合っていた。
ギラリ、と『プロモーター』の眼が光る。
「『アンタ』はどうだ。『俺ならもっとうまくやれる』とでも思ったか? どうだい、一緒に。
国のトップがすげ変わった途端にぶっ壊れて、国全体が無法地帯になって誰も彼もが殴り合う世界。見たくねえか?」
楽しそうに笑う『プロモーター』に、カイトは肩を落とした。
「そうだな。俺のルーツは『偽物』で、『悪人』だ」
『どうでもよくなった』俺と、『どうかしちまった』お前。
きっと二択だったんだろう。自分はもしかしたら、挫折した姿なのかもしれない。
けれど、だから。
「――終わらせよう。誰かに『使われてる』と気づかない、惨め過ぎるお前の大風呂敷って奴をさ」
カイトの力が解放されるのと『プロモーター』の力が解放されるのはほぼ同時。
互いの腕を封じるように氷の結界術がはしるが、戦力は『プロモーター』の方が圧倒的に上だ。
実際、『プロモーター』は指すべき手を全て差し終え、彼自身の戦いは既に勝利で終わっているのだ。今はその余暇を楽しんでいるに過ぎない。
「俺もお前みたいになれれば楽だったろうよ。でも、『ならなかった』」
カイトの作り出した氷の壁が崩れるその瞬間、壁に隠れて接近していた『マジカル・アイドル☆』ナナミン(p3x009198)と『世界終焉機構最終番』ルイン(p3x008578)が同時に襲いかかった。
「やっぴー★ みんなのアイドル・マジカルナナミンだよぉ★
ナナミン、いきなりこんな戦争に巻き込まれて大ピンチって感じ?」
ナナミンは両手でハートを作ると空に無数の鏡を出現させた。
その全てが光を発し、『プロモーター』を中心とした敵兵たちへと毒々しいレーザーの雨を降らせた。
「毒と火炎をばらまくなんて、魔法少女の時はできないからネ~、ふひ、もとい、えへへっ★」
ナナミンの後ろについた帝国軍兵士たちが一斉に盾をかざし、連合軍からの集中砲火を防ぐ。
「いくらゲームだからって殴られたりとかはノーサンキュー! アイドルにお触りしちゃだめだゾ!」
ナナミンのウィンクでさらなるレーザーが放たれる。
その中を抜けるようにルインは『プロモーター』への追撃を仕掛けていった。
「『簒奪せよマクベスの剣』――一番危険そうで怖そうなキミからぶっ壊すね!」
ルインの実行したコマンドにそって放たれた雷が『プロモーター』へと放たれる。
「大変だね大変だね!
大軍と大軍のぶつかり合いなんて元の世界じゃなかったからね!
破壊活動の記録としてはボクの性能上昇に役立つかもかな?
……でも変だね? どの兵隊さんも怒りに憎しみばっかりだ。
同型機の二番目が人を扇動するのとかに特化してたけどその時みたい?
うん、性能上昇の機会も捨てがたいけどここでもボクは正義の味方!
全力でぶっ倒しにいこう――『嘆き嗤えアトモスの涙』!」
攻撃の手は一切緩めない。ルインの第二のコマンドが炎と毒、そして氷の檻へと変わっていく。
「とにかく壊せばいいなら壊すが吉だよ!」
急接近をかけ、『終幕に開けデスペランサ』のコマンドを実行。
至近距離からたたき込むルイン最大の『破壊』が襲う。同時に、ナナミンの歌『Space Colony』がスペシャルバージョンでうたい上げられ、ルインやカイトたちに飛行能力や特別な追撃能力が付与される。
仲間達の支援を受け、絶好のチャンスを手に入れたカイト。
埋めた戦力差を、どうやら『プロモーター』は察したようだった。そして、皮肉のように笑う。
「アンタは『こうなりたくない』わけだ」
「ああ、だから――知りたくもない幕引きを見せてやる」
それが俺の役目だろうから。
カイトの放った冷気の光線が、『プロモーター』を打ち抜いていく。
砕け散った破片に、目を瞑る。
言われることは分かってる。
「これで『おしまい』にはならねえぞ? 俺はもう『差し終えた』」
●世界平和を目指して、世界を燃やそう
灰色の軌跡を描いて青空を飛ぶ無数のミサイル群。そのひとつが教会の鐘を打ち鳴らしながら爆発し、建物を倒壊させていく。
その中を、『ケモ竜』焔迅(p3x007500)は走り抜け、そして翼を広げて飛び上がった。
ジェット噴射によって空中へと飛び上がったエーデルガルド大佐の姿がある。
「おぉ、皆さん……何とおいたわしい事でしょうか。
強く、美しく、可愛らしく、格好いい。あの皆さんがこのように変わり果ててしまうとは!」
こちらをちらりとみたエーデルガルドは手をかざし、出現したミサイルポッドから大量のミサイルを発射。
焔迅はそれを右へ左へ飛んでかわすと、炎のブレスで反撃を仕掛けた。
「しかし悲しんでばかりもいられません。皆さんを止めなければ。
力の限り戦います。歪められた皆さんに必ずや引導を渡してみせましょう!」
空中でミサイルとぶつかり爆発するブレス。その煙を突っ切って突進する焔迅に、エーデルガルドは六連装ガトリングガンを突きつけた。
「――!?」
ヴンという起動音の間に急いでターンをかけようとするも、強引におしこまれた銃口は回転と共に『火力』を叩きつけてきた。
吹き飛ばされ、建物を破壊しながら地面を転がる焔迅。
「お強いですね……ですが強いだけです。流麗なる錬鉄徹甲門、その拳士であった貴女の方がずっと怖かった!」
「エーデルガルド、貴女のそれは正当なテロリズムなどではありませんよ。思い通りにいかない子どもの癇癪です」
壊れた建物の奥から現れたのは『人形遣い』イデア(p3x008017)。
両手に接続した魔糸全てを操り、顔の前でX字に腕を交差させる。そして小指から順に拳を握りこんでいく動作をすると、連動するかのように後方のトラックコンテナからミサイルポット用のハッチが次々に開き、そしてその全てをエーデルガルドめがけて発射した。
追撃のミサイル群が空中で相殺され次々と爆発していく。
「同じ手はくいませんよ。もう下半身が吹き飛ぶのはごめんです」
そこへ突っ込んでくるエーデルガルド。
ガトリングガンの一斉発射によって道を強引に切り開こうとする様子に、イデアはあえて迎え撃つ姿勢をとった。
魔糸を別の人形に接続。自らを操作させることであえてエーデルガルドへと突っ込む。
「国のために戦ってこその騎士(メイド)。今の貴女は一体なんなのでしょう。
国を想う貴女の心は本物だったはず。それを思い出してください
「国のために戦い、国を想って殺している。何も矛盾はない。
価値観を押しつけたいならば、火力をもって成せ。戦争とはそういうものだろう?」
放たれた球を無数の糸で絡め取り、それを弾丸としてエーデルガルドへ次々と発射する。
が、『火力』という点では歩く武器庫と化したエーデルガルドに勝るものはない。
イデアの肉体はすぐにボロボロになり、よろめくほどに削られた。
だが、こうなることは最初からわかっていたこと。
「そんな方法でしか人を変えられないつもりですか。
さあ、来ますよ。あなたの『成功例』が」
イデアはゆっくりと、指を空に向けて立てた。
直後。
白銀の十字棺が彼女たちを引き離すかのように、大地へと突き刺さった。
扉は開かない。内側からドンと何かがぶつけられる音がする。
開かぬかわりに、扉が歪んだ。
「――雷帝、初陣である!」
そして、吹き飛ぶ扉。
帝国の紋章が入ったメイスを握り、マントをなびかせた、金髪の美しい顔が晒される。
『雷帝』ソール・ヴィングトール(p3x006270)が、棺から降りてそのメイスをエーデルガルドへと突きつけた。
「暗いぞメイド。……笑え!」
帝国軍兵士たちの一斉射撃。対するエーデルガルドの掃射は互角かそれ以上のものである。
兵をなぎ倒す光景の中から、ソールはメイス一本でエーデルガルドへと飛びかかる。そして彼女の顔面をハンマーで殴りつけた。
金属音がして、地面と水平に飛んでいくエーデルガルド。
「耳が痛いことばかりほざきおる。
……つれないではないか。
『同じエーデルガルト』同士、少し話しても良かろうに」
「何が『同じ』だ……」
「余は理解しよう」
瓦礫から起き上がるエーデルガルドに、メイスを突きつけたまま言うソール。
「外様の余らが世界を好きに勝手に――『柵もなく、自由に、善いことをやっていく』のを見てさぞ胸が潰れる想いであったろうよ。
それが世界にとって善いこと――『だが、しかし』と!
叫ぶのだろう、心が!!
『ここは私の国で、この国を善くするのは我々なのだ』と!!」
ぎり、とエーデルガルドが歯をきしませた。
「その地獄(エゴ)を肯定しよう。
汝も鋼鉄の民だ。機会をくれてやる」
共に来ないかという誘いにも見える手をかざすソールに、エーデルガルドは目を見開いた。
「――ッ!」
出現させたミサイルポッドを開く。
何よりも雄弁なそれに、ソールは鎖を巻き付けたハンマーを放った。
「――ああ、そう云うと思ったよ」
王に『ありかた』などない。
片目を眼帯で覆い、剣をさげて歩く軍服の女リズリー・グレイグはある種最も新しい王であった。
かざした剣を突きつけるように前へ払うと、咆哮をあげ獣の如く猛る戦士達が走り出す。
対するは――。
「復讐で、魔種で、おまけにノーザンキングスの王と来た。はあ、なんつーか、情けねえやら恥ずかしいやらで……別モンとは言えアタシはアタシか」
巨大魚型ライド『アトランティスサーモン』に乗ったキラーベアの女、『サーモンライダー』リゼ(p3x008130)であった。
まるで荒波を遊ぶサーファーのごとく軍勢の間を駆け抜け、ハープーン・ガンを乱射。
矢を撃ち尽くしたところで巨漢の戦士と正面衝突。直前に戦士の引き抜いた爆弾のピン。爆ぜた炎と風圧を背にして、リゼは王の前へと着地した。
「自分のケツくらいは自分で拭かないとね」
見開くリズリーの目に、光はない。怒りと憎しみと、燃えすぎて熱を感じなくなった冷酷さがそこにはあった。
リズリーとリゼの剣が激突し、真正面からにらみ合う。
邪魔するなとも、退けとも言わない。目の前にある全てを破壊し尽くし、憎しみのまま破壊を続け、目標がなくなって抜け殻になるまで突き進むつもりの瞳をしている。
(アタシらベルゼルガをベルゼルガたらしめているものは何だ。
血か? 戦い方か? そうじゃないだろう。
悪徳も、善行も、己が心の中に飲み込む生き様だ。
血に飢えた獣に、想いに焼かれた悪魔に成り下がった――いや、『振り切れちまった』時点でもう、違うんだ)
言うべきことは山ほどある。
だが、ここは一言だけでいい。
「せめてアタシが終わらせてやる」
王が激突するその横で、『蛮族女帝』トモコ・ザ・バーバリアン(p3x008321)は真正面から迫るダークネアンデルタールガールを見据えていた。
「ザーバインパクトのあとどこに行方を眩ませていたかと思えば……まさかこんな形で再会するたぁな」
こきりと首をならし、そして素手のまま歩き出す。傍らに控えていた美少年デルさんがちらりと視線を向けてくるが、トモコは手をかざしすらしない。
「アタシのガワでダセェ生き様晒してんじゃねえ。パチモンに乗っ取られやがって、テメェのデルさんに口出しされるようじゃあなあ……!」
振りこまれるハンマー。
トモコは握りこぶしでそれを『打ち返し』た。
「寝ぼけたまま戦場に立つんじゃねーよ!」
「――うお!?」
思わずのけぞったトモコめがけてキックをたたき込む。腹に入った一撃でトモコは思い切り吹き飛んでいく。
勝敗は明白。だが、トモコは構えを解かない。
そのかわり、手をかざしてデルさんを呼びつけた。
一度光に変わってから巨大なハンマーにかわり、トモコの手に収まる。
一方で。
『クク、やはり現地NPCではこの程度か』
「そゆこと、最初からアタシのまま行っときゃよかったんだよ」
立ち上がったその姿は、トモコ・ザ・バーバリアンそのものであった。
『ネアンデルタールの戦士として理想的な成長を遂げた』姿である。
「そんじゃ、第二ラウンドだ!」
朋子――否、『天国篇第一天 月天の徒』トモコは地面を殴りつけたその途端、大地がゆがみ、波打ち、唸った。
●ダークネアンデルタールガール
大地震が起きた、ように見えた。
敵味方全ての軍勢が瓦解するに充分な威力だった。
「完っ全に虚を突いた筈だったんだけどなー。けどここでツブされちゃディアナちゃんたちにもーしわけねーんだわ。いっちょ、マジ(本気)でやってやっかね。来い、ダークネス・ゲートリ!」
突如空に暗雲がかかり、それを切り裂いて巨大な怪鳥が現れた。裏蛮鳥ダークネス・ゲートリである。
トモコはそれに飛び乗ると、前進を赤いオーラに包み込んだ。
立ち向かうアーゲンティエールとウサーシャ。大空を飛ぶ焔迅が二人を乗せ真正面から激突。
撃ち込んだ力はそのまま跳ね返され、三人はまとめて墜落していく。
だが一瞬の隙はできた。
ナナミン、ルイン、カイトが別々の方向から同時に砲撃。足止めのために撃ち込まれた全ての術が、しかしトモコのハンマーのひとふりによって打ち破られる。
「桁外れの戦闘力。でもって搦め手も通じねえか……」
「ならば、正面突破をするまで」
イデアとソールが同時に走り、そして跳躍。
二人同時に放たれた『雷神戦槌・双』によってダークネス・ゲートリを打ち倒し、墜落してきたトモコめがけてリゼとトモコが同時にとびかかった。
「そうそう、これこれェ!」
トモコはハンマーを振りかざし、そして振り下ろした。
激突。
衝撃。
そして崩壊。
クレーターのようにえぐれた地面に残ったのは、ボロボロのトモコとリゼだけだった。
はっと顔をあげると……。
「めちゃ楽しかったけど、これ以上遊んでると怒られちまう。続きはまた今度な!」
不死鳥のごとく復活したダークネスゲートリに乗った朋子が、空からこちらに手を振った。
ノーザンキングス連合軍は撤退。首都への進撃は防がれた。
朋子のいう『今度』という不穏な空気だけを残して。
●進撃のギアブルグ
屈むような姿勢で待機していたイルミナ専用エクスギアEX『Covert』。
膝や股のあたりに設置されたバーを器用に掴むことで下腹部のハッチへとよじ登り、するりとコックピットへと滑り込んだ『整備長』イルミナ(p3x001475)はポケットから取り出したキーを専用ホールへ差し込むと勢いよく回した。
ドルンという重低音。閉じるハッチの内側に設置されたモニターがヴゥンと音をたて、ややノイズの混じった周囲の風景を表示する。操作レバー側面に並ぶバースイッチを置くから順にカチカチとONにしていきながら、側面モニタに映る見知った顔へ振り返る。
「リアム・クラーク……アタシにメッセージを送った『R』は、アンタだろう?」
沈黙は肯定を意味した。
そして同時に、イルミナが尋ねようとしていることへの返答を先に述べてきた。
「あの『イルミナ』は我が社の大切な商品だ。できれば無傷で取り返したい」
「……」
商品という単語に、イルミナはピクリと眉を動かす。本来人間に対して冷酷な意味で用いるその単語が、とても温かい意味で使われているように感じたからだ。
「どうやら、こっちじゃアンタとは上手くやってるらしいな……『Covert』、出るよ! 作業員はさっさとどきな!」
立ち上がる『Covert』は赤に白いラインをひいたカラーリングの軽装甲人型戦車である。普段イルミナが使うザンバー・ブレードを専用アタッチメントを用いナイフのように使うことで、本来大型であるエクスギアEXへの戦闘に特化させるというこの機体。もちろん設計したのも組み立てたのも、整備したのもイルミナ自身だ。
対するはギアブルグから出撃した数機のうち、ROOイルミナ専用機。赤に黒ラインの軽装甲人型戦車ではあるが、大口径ポジトロンライフルを背部エネルギーパックユニットに有線接続し手足をグリーンの汎用軍用装甲によって覆ったさまは、混沌側のイルミナそのものを想わせた。
「『アンタ』に引導を渡すのは『アタシ』以外にはねーよな……なぁ、『イルミナ』?」
敵イルミナ機が構える、と同時に乱数機動をとりながらジグザグに走り接近。二発の砲撃をかわした次のタイミングで飛び込み前転をかけ、『Covert』は逆手に握ったザンバーナイフを相手の腰部めがけて撃ち込んだ。
火花が散り、ガクンと相手の姿勢が崩れる。
「『アンタ』の弱点もよぉく知ってるんだよ、こっちはね」
ギアブルグからは無数のエクスギアEXが発進し、次々に帝国軍による防衛拠点へと襲撃をしかけていた。
常人を大きく凌駕する機動兵器の投入に、今だギアバジリカを動かすことの出来ない帝国首都防衛軍もといゼシュテリウス軍閥残存部隊は量産型エクスギアEX百合華を展開。ザーバのシルエットにも似た赤く凶悪な量産機『正士』と正面から激突していた。
正士のもつサブマシンガン型武装はそのスケールで見れば小さいものだが、人間基準でいえば攻撃ヘリに搭載する大型機関銃のそれである。対抗するには、やはりこちらもエクスギアEXを出すほかないのだ。
シートに背を預け、装着した専用スマートグラス越しに周囲の風景を見る『月下美人』沙月(p3x007273)。
本来2mもない彼女の身長は視点は大きく拡大され、整備員の走り回る野外用大型ハンガーにて直立する巨人――エクスギアEXのそれになっていた。
「この前も思いましたが、鋼鉄には変わった物がありますね」
両手を顔の前にかざすような動作をとると、鋭い爪をそなえた鋼の両手が全く同じ動作で翳される。右を見て、左を見て、そして光る誘導ロッドを振る整備員にオーケーのハンドサインを送ってからハンガーのロックを解除。歩み出た。
機体の名は『花鳥風月』。
軽装甲型の鎧武者めいたフォルムと所々に施された艶やかな花模様が特徴のそれは、沙月の戦闘スタイルに対し完璧にカスタムされた専用機である。彼女自身のもつ上品な立ち振る舞いをそのままトレースするシステムと、彼女の鋭い感性をそのまま活かせるUI。
「これならば――」
素早く走り出した沙月の『花鳥風月』は一列になってマシンガンを乱射する敵機集団へと跳躍によって一気に距離を詰めると、エネルギーブレードを纏った手刀によって数機の首を素早く切り落としていった。
そこへ斬り込んでいく『アイアンウルフ』うるふ(p3x008288)の専用機。
「エクスギアEX・うるふ機改め"アイアンウルフ"――戦って、壊して! 一人でも多く護るぞ、相棒!!」
突き出した両手の指に仕込まれたフィンガーバルカン砲を撃ちまくりながら牽制。あえて敵機集団の中心へと飛び込むと、『花鳥風月』と背をあわせ、腰から飛び上がるように射出された拳銃型専用武装『アズールオルトロス』を握り、そして踊るような軽快な機動で四方八方へ撃ちまくった。
うるふに直接コネクトされたアイアンウルフの反応速度は敵機の3倍以上。攻撃を避けながらピンポイントで急所だけに当て続けるなど容易なのだ。
そんな戦場へ更に投入される大量の正士。
これは骨が折れるとうるふが顔をしかめた所で、上空より流星の如く新たなエクスギアEXが飛来した。
「長き鋼鉄の内乱も終わりが見える、と。
一般論として、いくさは防衛側の方が有利であると聞くが、逆に防衛せざるをえない状況に持ち込まれるのもそれはそれで面倒ではあるのう。
まあ、よい。正面から迎え撃てるだけで十分よ」
四肢を展開。女性的なしなやかなフォルムに青い花模様が施された正面装甲。どこか中国の民族衣装にも見える『袖』のリングに魔術の光が循環した。
「重武装魔術砲撃型エクスギアEX『Flamethrower』――推参である」
両腕の『袖』をガシンと合わせた途端に超高域型破壊魔術が感性。バックパックよりはなたれた無数の花形ビットが暗雲を作り出し、敵機を粉砕するほどの雷を大量に解き放った。
「これは助かります」
「けど三機だけでこの集団を相手にすんのか?」
「いいや――」
フーが言いかけたところで、通信にもう一人が入り込んできた。
「もう一機――否『四機』います!」
ギアバジリカより射出されたであろう虎型エクスギアEX『キングトラァ』。
その周囲でフォーメーションを組んだのは『クイーントラコフスカヤ』『カイザーブラックタイガー』『エンペラーアルチュウ』。四つの機体を覆うように『VDM』の紋章が輝くと、それぞれの機体が素早く変形した。
半分に割れ脚部ユニットとなる『エンペラーアルチュウ』。大きくボディを開き『キングトラァ』を覆うように合体する『クイーントラコフスカヤ』。『カイザーブラックタイガー』もまた二つに分かれて両腕ユニットとして装着し、中央を鋼の軸がつらぬき内部で強く固定。
最後に『カイザーブラックタイガー』の頭部を胸に装着すると、それぞれの武装を合体。レインボーゴッドアックス『SAKEBIN』を握りしめ、そして叫んだ。
これぞ『虎帝』夢見・マリ家(p3x006685)専用機――。
「『ゴッドカイゼルVDM』!」
小型自律メカの合体によって完成する虎帝専用パワードスーツなのだ。
勇者パースで構えたSAKEBINを握りしめ、敵機集団めがけて突撃。
「鋼鉄虎帝の名において――その暴動、鎮圧します。『カイザーブラックタイガーソウル』!」
燃え上がる四つのタイガーエンジン。まごうことなきとら型である四機のエンジンが連結されたその力は、圧倒的火力となって解き放たれる。
「『キングトラァハウリング』!」
胸のとら(えび)が口を開き衝撃波を発射。敵機を打ち抜き、更に肉球めいたとら(ねこ)の腕を突き出した。
「『レインボーギガブラスター』!」
虹色の光が放たれ、敵機集団を飲み込んでいく。
ザーバ軍が何機ものエクスギアEXを投入しているにも関わらず防衛ラインは維持されている。仲間達の奮戦のおかげだが、状況を俯瞰してみてみると敵には量産型の汎用機ばかりが目立つ。個性に特化しカスタムされることで性能を大幅に向上できるエクスギアEXの戦いは、『専用機の数』が勝敗をも左右する。
『ジャック、大十紋字丸(ダイジュウジマル)の様子は?』
「悪くはない……」
コックピットの中で、『陰』ジャック翁(p3x001649)はレバーを握り瞬きをした。
額から角のはえた仮面のような専用ヘッドギアを通して流れるイメージが、エクスギアEXの巨体をまるで自らの肉体のごとく動かした。いや実際そうなのだろう。これは延長された精神であり、今やジャック翁の肉体なのだ。
レバーを握る力を強め、そして正面のモニターに映る『シュピーゲル』に意識を向けた。
「我が声に応えよ。
そして駆け抜けよ!!
今再び闘争に身を委ねる時!!!」
黒く幅のあるボディで走り出す。専用装備の黒き剣を握り突き進む大十紋字丸に対し、相手は黒をベースに炎のような赤いラインの入ったブレードを握りしめた。
まるで黒い炎に包まれたかのようなそのボディは、混沌側でシュピーゲルが完成させた近接戦闘特化型アーマーパッケージによく似ていた。
その『趣味の良さ』に、ある白衣の女性の姿が脳裏をよぎる。
「当方の剣は変わらぬ。
変わり果てたその先に、己の信念は見えたか?
我が名はジャック翁、汝が意志を見せてみよ。
洗脳されて終わるつもりならば――その怠慢諸共両断する!」
真正面から剣をぶつけ合う。が、力量はどうやらこちらが上。相手の剣を跳ね上げ、大きく隙を作った。
レバーのスイッチを押し込む。モニター端に『ジゲン・ダイジュウジ斬』の文字が走り、その剣がシュピーゲル機を派手に切断した。
むき出しとなったコックピットから、奇妙なヘッドギアを装着したシュピーゲルの姿が見える。
「其方とて、そのままで終わるつもりはあるまい」
崩れるようにこぼれ落ちた彼女を、ジャック翁は巨人の手で受け止めた。
一方で、『黒麒』Λ(p3x008609)は敵機の放つガトリング魔力砲の攻撃に晒されていた。
「再び相まみえるってところかな? 何となくそんな気はしていたよ……」
シールドを展開し防御を固める魔導重装『黒麒・改』。
もはや乗り慣れたといっていいラムダ専用機の最新改修型。アーマードパッケージによる鉄壁の防御が魅力の重装騎馬可変機体である。
「とはいっても、こうも相手の攻撃が激しいとねえ」
モニター越しに見える白銀の機体は、翼を広げた女性的なシルエットをしていた。
両腕側面に装備した魔道ガトリング砲による高火力射撃を得意とした機体だ。反撃を何度か打ち込んでみたが、相手の機動性もなかなかのもので簡単にダメージを与えることが出来ない。
距離をとってたてなおしたいが、ROOラムダを放置するのは今以上に危険だ。彼女がその気になれば同士討ちを連発させて引っかき回すという『敵にやられたら一番嫌な動き』をするのは明白なのだ。
と、そこでコックピット側面に通信ウィンドウが開いた。
「困ってるみたいだね」
『アンジャネーヤ』Ignat(p3x002377)だ。
彼の期待アンジャネーヤが展開し、『黒麒・改』の隣に着地する。
肩に大砲の付いた猿のようなフォルムの機体は、ある意味でIgnatらしく、そしてある意味でIgnatらしくない機体であった。
Ignatと聞いて想像する姿が大体謎の戦車か美女の姿であるがゆえのらしくなさだが、
『らしさ』はなんといってもその軽快さである。
「援護するよ、どんどんいこう!」
肩の大砲から拡張雷網弾を発射。砲弾がパッと電磁ネットの形に開き、回避行動をとろうとした敵ラムダ機に絡みつく。
その隙を逃す『黒麒・改』ではない。
「ったく主に殉じたのかもしれないけど闇に呑まれるとかこちらのボクは不甲斐ない。もらうよ――『ラムダ』!」
魔力砲撃を放ちながら重装騎馬形態へ変形。エーテルブレードを展開。敵機を切り裂き、駆け抜ける……!
鎧闘騎兵アハト・弐式改。『鉄騎魔装』鬼丸(p3x008639)をそのまま巨大化したかのような機体には前回から進んだ大幅な武装拡張が行われていた。
胸部に緑に輝く宝玉と追加装甲、肩部にミサイルポッドを追加し、腕部のドリルは2本に増量。
そんな機体に対抗したのがオニキス専用エクスギアEX。
黒と白によるしっとりとしたカラーの機体には二機の戦車型ドローン兵器が随伴し、それらがバラバラにパーツを分解し各部に装着、合体することで完成する魔道兵器である。
超級魔道八八粍高射砲(スーパーマジカルアハトアハト)を構え、両足のフックで地面に踏ん張りをきかせたその姿はまさにオニキスそのものである。
が、うたせてはならない。
「戦いのために戦いを求める……その闇を、ここで終わらせるよ!」
アハトは氷結拡散閃光砲を放って周囲の量産機達を蹴散らすと、オニキス機めがけて跳躍。背部に装着した拡張型機脚皇瑪駕推進器で高所をとると――。
「『瑪駕閃光砲(メガビームカノン・アハト)』――フォイア」
「『超級魔道八八粍高射砲(スーパーマジカルアハトアハト)』――フォイア」
正面から激突する強烈な魔術光線。
実力は互角に見えるが。
しかし――。
「ほんの少しでも、光が残っているのなら、私の声を聞いて。それを取り戻して!」
鬼丸の込めた想いが力となり、オニキス機の砲撃を押し返しその機体を貫いた。
巨大キャタピラによって突き進む移動要塞ギアブルグ。
その玉座には将軍ザーバの姿があった。
「面白くなってきたのう」
ザーバはくつくつと笑うと、手すり部分に開いたスイッチカバーを拳で貫き、スイッチを押し込んだ。
すると、なんということか。巨大な天守閣を備えた移動要塞ギアブルグがジェット噴射で『立ち上がり』、巨大な砲塔を伸ばし『腕を広げ』、天守閣を割って巨大な顔を覗かせたではないか。
「え、エクスギアEX……なのか?」
「いやデカすぎるだろ!」
それを見上げ思わず身構えるフーとうるふ。
冗談のように巨大な『人型兵器』は、両腕を突き出すように構えると戦場を凄まじく協力な魔道砲によって文字通りなぎ払った。
無数の味方機が爆発しパイロットたちが脱出していくなか、Ignatはギアブルグめがけて大砲を撃ちまくった。
「ザーバ将軍!オレはこの国を壊そうっていうあんたの考えを否定する気はないよ! あんたはオレの知らない世界を色々知ってるからこその結論だと思うからね。
でも! その意志は他のヤツからの干渉で都合よく使われて良いモノじゃないはずだろ!?
世界を壊そうって言うのなら自分の意思一本でやり切りなよ! それこそがゼシュテルの英雄の姿だろ!
他人に操られた命の懸け方なんて、鍛え上げた強さを汚すような戦いをオレは認めない!」
次々に命中する光線。
イルミナの『Covert』とジャック翁のダイジュウジマルが駆け出し、要塞のボディめがけてブレードをたたき込んだ。
「ただただつえー人間が相手なら負けてもいいんだけどよー、魔種が相手なら……負けられないんだわ、アタシら」
「いかに敵が強大であろうとも、一点を穿ったならば……!」
「破壊はその内部へ達し、機関部まで届いたならばこちらの勝利です」
沙月の『花鳥風月』がクロスした傷口へと手刀を突き込む。
あまりの衝撃に外部装甲が砕け、機体が内部へと突入。そこへ
腕による振り払いを受ける彼女たちだが、直後にΛの『黒麒・改』と鬼丸の『鎧闘騎兵アハト・弐式改』が突入し全く同時に魔道砲を発射。
螺旋状に合わさったエネルギーが内部を貫いていく。
爆発が続き、フー・タオとうるふ、そして夢見・マリ家による三機が機関部へと到達。
巨大な動力炉めがけて力を解き放った。
「しかし、妾が以前相手したガイウスは本人の認識はともかく英雄と言うに相応しい存在であったが、今の其方の体たらくよ。
心の弱さとは言わぬ、そんなものでないのは良く分かっておる。
故に、妾が燃やすは其方の罪にあらず、業にあらず。
ただ、荷を捨てすぎた者の命のみを」
「戦いの為に戦うような連中に負ける訳にゃいかねぇデス、こっちは沢山の命背負ってんだ。……お前達の楽しみなんかの為に、皆の命を踏み躙られてたまるかぁ!!」
一点突破用の術式とうるふによるナパーム弾がたたき込まれ、更にマリ家のレインボーゴッドアックス『SAKEBIN』がたたき込まれる。
「鋼鉄の未来の為に!」
砕けた動力炉から光がもれ、そして……大爆発がおきた。
●大地よ唸れ
爆発を繰り返し崩れていく移動要塞ギアブルグ。
が、それは勝利を確信させるものではなかった。
ギアブルグから飛び出したのは敵将ザーバ、そしてリュカシス。
リュカシスの繰り出すコピー英雄軍団が、エクスギアEXが悉く破壊された今こそ猛威を振るうのだ。
迫る軍勢。立て直すことも難しい防衛拠点。
だが、案ずることはない。
我らには三皇帝がひとり、『優帝』いりす(p3x009869)があるのだから。
「皆さん、今こそこの国を、人々を、『想い』を守る時です!」
彼女を支持しあつまった中でも選りすぐりの精鋭たちで構成された優帝いりす小隊。
その先頭に立ち、いりすはライフルを構えた。
「一言に大切なもの、と言っても人によって想ったことは違うでしょう。
それはきっと家族であったり、はたまた財産であったり、この国そのもの、と大きく出る人もいれば、少し前に行ったあのお店、とささやかな人もいると思います。
想いが何であれ、そのためにここに立てるのは紛れもなく『強さ』です。
守るべきものを持った人の強さを見せて、大切なもの、全員で守りきりましょう!」
鼓舞する言葉と共にビーコン弾を発射。いりすの打ちこんだその場所へと、重火器を備えた兵達によって一斉に砲撃が放たれる。
爆発が起こり、その中を英雄軍団が突き抜けるように迫ってくる。先陣をきるのは剣と盾を備えた戦士の小隊だ。
『妖精勇者』セララ(p3x000273)はお菓子の剣を振り上げ、対抗するように飛びだした。
彼女を中心とした魔法少女小隊は鋼鉄国選りすぐりの魔法少女で構成された部隊である。全員が低空飛行状態をとり、魔法のこもった剣で敵兵へと斬りかかる。
「とっつげきー! 究極! スーパーセララキック!」
戦場の主役は、結局の所人間だということだろうか。
『ROO刑事ゼスティアン(自称)』ゼスト(p3x010126)、『人型戦車』IJ0854(p3x000854)、そして『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)の部隊は爆発し崩壊しつつあるギアバジリカより迫るザーバ軍閥の部隊とコピー英雄たちによる混成軍に対して迎撃態勢を取り始めていた。
「総員射撃位置について、用意……!」
ゼスト小隊はパワードスーツを装着した火砲支援を目的とした部隊である。バックパックに接続した携行式ポジトロンライフルを拡張腕で支えながら構えると、掲げたゼストの腕が振り下ろされるのと同時に――。
「一斉発射ァ!」
放たれる光のラインに敵兵たちが倒れていく。一方で、コピー英雄の一人が巨大な斧を投擲してきた。
ブーメランのように飛ぶ斧がゼシュテリウス軍閥の兵達をなぎ倒しながら迫る。
「総員後退! ――『電装』!」
超高速でバトルアーマーを装着したゼストあらあためゼスティアンは飛来する斧をがしりと両手でキャッチ。吹き飛ばされそうになる衝撃を、両足で踏ん張ることで受け止めた。
「新しく即位なさった皇帝三人が最前線で、鋼鉄の民を守るために戦っているであります……総員! 皇帝に続け! 命を賭して、戦えない者のために戦え! 防衛ラインを死守するであります!」
「よく受けたわ」
背後から声がした、気がした。
だが立っていたのは人型戦車IJ0854。
男性めいた電子音でパワードスーツ部隊へと呼びかける。
「我々はこの武を布く国において、守るという力を望み、あるいは優れております。
それはなにゆえか、力さえあれば、守りなど全て奪い取れるというのに。
見よ、あのザーバも、ノーザンキングスも、模倣英雄も須らく奪う力ばかりです。
では守りは無意味か、と問われれば、皆一様に首を横に振るでしょう。そうです、我々の守りの本質はそこにあります」
指さしたいりすを、ゼストもまた見た。
「我々は『生かす者を選ぶことができる』のです! 優帝がさきに述べた、力の使い方の先にあるものです! 生かし、育み、紡ぐことこそ守りの本懐。そして育み満ちれば、いずれ奪うこともなくなる。その果てに至るのが、我々の力なのです!」
言いながら、IJ0854は武装を一斉展開。
副官にあたる黒い大鷲のようなフォルムをした人型戦車が傍らに立ち、同じく武装を展開した。
「隊長殿、攻撃命令を」
「……あなた、もしや名前は」
「当機の個体識別名称は『GRANDIS』であります、隊長殿」
「なるほど」
奇縁もあったものだと電子音を鳴らし、そして、IJ0854は一斉砲撃を放った。
「我々もいくであります! フラッシュストォォォォムッ!」
共に一斉砲撃を実行するゼスト小隊。
そうして切り拓かれた敵陣の穴へ機動力のたかい騎兵部隊が突入する――という作戦がもはや魂にしみこんでいるザミエラ。
馬を駆り、同じく騎兵で構成されたザミエラ小隊を率い突っ込んでいく。
「いよいよ決戦ね。さあ準備はいいかしら、私の元に集ってくれた勇者たち!
敵は英雄のコピー軍団、その力は半端じゃないわよ!
簡単に蹴散らされたりして、私に格好悪いとこ見せないでよね?
格好良い所見せてくれたら、あとでいっぱい誉めてあげるわ!」
『グラス・オブ・ブリザード』のコマンドを実行し、無数の細かなガラス片を召喚するザミエラ。それらを暴風のごとく叩きつけ、そこへ馬上からライフルを構えた部下達が一体ずつ的確に集中砲火を浴びせていく。
ことここに至れば横一列にならんだ機械のような陣形は意味を成さない。敵味方入り交じっての歩兵戦だ。
戦術とは『こうなるまでの段取り』といっても過言ではない。
ではその先はどうするかといえば……。
「これが終わったら、皆さん打ち上げに行きますよ!!
我々の合言葉は『打ち上げまでが戦い』! 全部ぶっ倒して、さっさと打ち上げ行きましょう!」
そう、ノリのいいヤツが勝つのだ。
『夕焼けを穿つヒト』エーミール(p3x009344)率いる戦争屋ボディーガード部隊はまるで友達同士でパーティーでも開くようなテンションで敵陣へ混ざり込むと、自慢の拳や剣でもっての格闘戦を始めた。
エーミール自身もシャムシール片手に敵小隊へ飛び込み、敵の指揮官だ副官だかわからない相手めがけてまずはグリップで殴りつける。
「かなり危険な状況下になるでしょうが、私は……味方を信じています。
たとえどんな状況になろうとも、味方を信じるのが私の信条、心の強さ。
私は今は1人だけど、独りではない」
掲げた拳を目印に叫ぶ。
「――世界を救いたいという気持ちは、誰よりも!」
「「誰よりも!」」
それに伴い、周りの隊員たちも拳をかかげた。
「おーおー、あったまってきたなぁオイ」
『バンデッド』ダリウス(p3x007978)は拳を鳴らして歩き出した。
「荒くれ集団『バンデッド』隊見参。全員馬鹿だが死ぬほどタフだぜ。俺らも混ぜろや!」
敵集団めがけてダッシュし、跳躍。
振りかざした拳をとりあえず目についた敵の顔面にたたき込む。
一発で殴り倒すと、わざと中指をたてて他の敵たちを挑発した。
「さぁてめぇらもっとだ! もっと遠慮なく嗤え!あいつらは俺みたいなチンピラ一人倒せない玉無し野郎だ! 紛い物に頼らなくちゃやっていけねぇ腰抜けだ!
これが俺たちのウォークライだ! さあもっと気力振絞って立ち続けろ! 立ち続けてこんな馬鹿共でもやれるって証明するんだ!」
そんな戦いをしながら、ダリウスは心の中で舌打ちをした。
敵の中に『バルガル』の姿が見えない。
(ヤツが馬鹿正直にオモテに出て殴り合うとは思えねえ。むしろ、ドサクサに紛れてこっちの指揮官を暗殺するだろうな。ちょうどヴィーグリーズの丘でやったみてぇに……)
そこまで考えて、ハッと振り返る。
後方で射撃部隊を指揮している優帝いりすが、味方の軍勢に紛れて見えない。
「……皇帝がやべえ!」
ダリウスの読み通りと言うべきだろうか。
いりすを支持する者たちで構成された精鋭部隊。その中にひとり、『彼』は紛れていた。
まるで何年も前から一緒にやってきたかのように溶け込んだ彼――バルガルは、『史上もっとも優しい皇帝』とすらうたわれたいりすの背後に立った。
「ご覧下さい陛下、敵の部隊が近づいております。ここは後ろへ下がるべきでしょう」
肩越しに指をさし前方へ意識をむけさせると、その細い首へともう一方の手を伸ばす。
彼の握力なら二秒もあれば――。
「そこまでスよ」
手首ががしりと、横から掴まれた。
まるで『最初からそこにあったかのように』弾薬箱に偽装していた『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)がいりすの足下から飛び出し、バルガルの背後へと回り込み首と肩関節をおさえ拘束した。
と同時にすぐ近くに潜伏していたミミサキの隊員たちが飛び出し、いりすを保護。更にいりすの部隊員たちが彼女を囲みガードした。
「おや、おかしいですねえ。スタンドアロンで動いていたはず。どこから情報が?」
「蛇の道は蛇っスよ」
遡ることしばし前……。
ミミサキは敵軍に存在する『佐藤美咲』の存在を警戒していた。
溶け込むことにおいて極めて優秀で、用心深く保険をかけることを怠らない。
そんな彼女の仕事はこの舞台が整った時点で終了しているし、なんならもう二度と姿を見せない可能性すらある。
だが『自分』ならどうだろうか。ボーダーラインを越えてでもめくりたくなる情報(カード)とは?
そんな中でミミサキがきったカードが、己の団員名簿だった。
本来6人程度で構成されるチームに存在しない七人目『結城 誓』という名前を差し込んだのだ。
もし相手が『佐藤美咲』なら、『結城 誓』という人物名を警戒しないわけにいかない。
そして……。
「まんまと調べに来たところを捕まえて尋問したっスよ。バルガル氏、あなたの『上司』のこと、気持ちよく話してくれたっスよー」
片眉を上げるミミサキ。ここでいう『上司』とは本作戦のお膳立てを行った人物。つまりはザーバを鋼鉄帝国にけしかけるという滅茶苦茶な事態を計画し暗躍した――『天国篇(パラディーゾ)第一天 月天の徒』トモコである。
「弱みを握って働かせるってところだけはソレっぽかったけど、指示が雑なせいでかけるべき保険が多くなってたみたいスね。皇帝暗殺の計画も保険カードのひとつとして握ってたみたいスよ」
観念したように笑うバルガルを組み伏せ、ジーンズパンツにねじ込んでいた拳銃を抜いた。相手の後頭部へ押しつける。
「化かし合いはおしまいっス。ここからは、鋼鉄らしくパワーバトルの時間なんスよ」
●いちばんになれないこども
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガーは既に敗北していたと言ってもいい。
巧妙な計画に乗る形で将軍ザーバを堕とし、その過程でザーバ軍閥の軍団長という地位に立った彼。
しかしそのために代償としたものは、今となっては大きすぎた。
友を捨て、国を捨て、夢も捨て、いま目の前に広がっているのは『夢の残骸』から作り出した英雄の模造品たちだ。
ものいわぬ彼らは、かつての英雄ほどの強さも、誇らしさも、そしてかっこよさもない。
「いいえ……いいえ……もう、忘れましょう。過ぎたことです。ボクにはもう、こうする道しかない」
杖を翳し、リュカシスは唱えた。
『征け』とだけ。
今のリュカシスが持っていなくて、イレギュラーズたちが持っているもの。
「フラッシュドスコイさん達の邪魔はさせません。我が剣の誇りにかけて!」
『特異運命座標』九重ツルギ(p3x007105)率いるツルギ小隊。
ROO世界の弾正たちをうわえた精鋭チームが馬に乗り、コピー英雄たちを次々と打ち破っていく。
先頭を進むのはもちろん、タキオン二跨がるツルギだ。
「皇帝になれずとも俺の公約は変わりません。共に強くなりましょう。強敵を前に、奮い立て!!」
そう、これこそが彼らの力。ROOのみならず、混沌世界にも広がった、『信じる力』と『信じてもらえる力』だ。もしくは『絆』という言葉にいいかえてもいい。
ツルギは背部に展開したエネルギーユニットを空中に飛ばすと、砂嵐のようなノイズを放つ弾正の支援をうけつつそれらを発射。
敵陣を貫くように、彼らの部隊はリュカシス本隊へと迫る。
ガードを固めようとする英雄部隊だが、初戦は模造品。今を生き未来へ征くツルギたちを止める力はない。彼らは選挙の中で、公約の中で、同じ夢を抱いた同志として『党(クラン)』となったのだ。
そんなツルギ小隊に支えられる形でリュカシス本隊へと突き進むのは数台の装甲車。
『叩いて直せ!』蕭条(p3x001262)率いる整備士で構成された部隊は、首都進撃時のみならずこんな場所でも活躍していた。
「そらぁっ!」
尻尾でべしーんと装甲車を内側からぶったたく蕭条。するとミサイルの直撃を受けたはずの装甲車はぴかぴかの元通りとなり、力強く車輪で地面をかんで突き進んでいく。
蕭条の部隊員は人数こそ少ないが、こうして車両をいたわりながら、時にいきなり修理しながら突き進むことのできる優秀なチームである。
進んで何をするのかと言えば……。
「ドスコイくんやアダムくん、学生さん達が前線で頑張ってるのに私が折れるわけにはいかないですよー。少しは年長者の見栄をはらないと!
なんだかこっちの世界のリュカシスくんはグレちゃったみたいですが、そういうとき正道に戻して上げるのがトモダチってものですよねお父さん知ってますお父さんじゃないけど!」
装甲車のハッチが開き、ぴょこんとウサギの耳が出る。
隣の装甲車もハッチを開き、ぴょこんと長い袖が出た。
そして同時にぴょんとジャンプし、『うさぎのおひめさま!』アダム(p3x006934)と『よく弾む!』フラッシュドスコイ(p3x000371)がその姿を現した。
(友達と対峙するのは、彼が『俺の知っているリュカシス』じゃないとわかってても苦しいな。でも、ここで立ち止まりたくない、立ち止まらない!)
アダムはぬいぐるみの身体をぽふんと叩くと、気合い充分にリュカシスへと腕を突き出した。
「俺だって頑張れるんだって教えてくれた、前へ進む勇気をくれた友達を全力でサポートするんだ! さあ、世界一可愛く、元気に行くよ!」
「「おーっ!」」
続く二台の車両の上部が解放された。解放っていうか車両の覆っている部分(?)をまるごとぼんっと外して放り出すというダイナミックなオープンカー仕様である。
現れたのは、アダム小隊あらためぬいぐるみ小隊。
同じようなくまやねこやかえるのぬいぐるみたちがロケットランチャーや機関銃を構え、リュカシスめがけて一斉砲撃を開始した。
「皆、一緒にいーっぱい頑張ろうね!
でも、無茶は絶対ダメだよ!
揃って勝利のお祝いをすることが、俺達が何があっても成し遂げなくちゃいけないことなんだから!」
「「まかせてー!」」
一方のフラッシュドスコイ部隊。もちろんと言うべきかジェイビーやホランドという『元リュカシス派閥』をはじめとする学兵チーム。番長の座をめぐり戦ったライバルたちが一同に集まったチームだ。
「あのリュカシスがねえ」
「キレたらヤバイとは思ってたけど」
「けどあれはダメよ。あんなのリュっくんぽくない」
「そういうこった。あれは俺らの目指した『番長』じゃねえ」
ジェイビーはあえてのバットスタイルで立ち上がると、手にフラッシュドスコイを乗せた。
「いくぜドスコイ! あいつの目ぇ覚まさせてやれ!」
バットで打ち出したフラッシュドスコイ。
彼はボディにびりびりを纏うと、その頭でリュカシスへとぶつかった。
「きみのそれは殴っても治らないかもしれないけれど、それでもボクは力一杯殴るよ! ダチコー達もやっちゃって!」
それを受け止めたリュカシスは歯がみし、そしてフラッシュドスコイを打ち返した。
ジャンプしてぽふっとキャッチするアダム。
リュカシスはその様子を、忌々しげににらみ付けた。
「彼が捨てたもの。失ったもの。本当は欲しかった場所に、いまはボクがいる。まるで奪われたみたいで、胸のところがずきずきするんだろ! けど、ちがうんだよ、このおおばかやろう!」
再びの援護射撃。
思わず退こうとしたリュカシスに、フラッシュドスコイとアダム、そして思い切った蕭条が同時に飛びかかる。
「勝手にひとりぼっちになるんじゃないっ!」
三人の繰り出したトライアングルアタックがリュカシスへと炸裂。
杖を放り出し、地面に落ちたリュカシスは大の字に倒れた。
彼から黒い闇のような煙があがり、そして消えていく。
「リュカシス!」
駆け寄る友たちの声に、目を閉じた。
「そうか……ボクは……間違えたのか。間違えたのに……」
●ザーバクライシス
軍団の長であるリュカシスが倒れたことで、状況は決した。
いや、最終段階に達したというべきか。
「面白い、面白い戦……だのう」
鎧も武器も捨て、要塞も捨て軍団も捨て、腰布ひとつ。ただ一人の男として……あるいは獣として立つその姿には、容易に近寄ることの出来ないプレッシャーがあった。
ザーバ・ザンバ。鋼鉄帝国S級闘士にして、帝国の守護神。
伝承王国が帝国領土を奪えないのは南部軍がいるからだが、その南部軍を不滅たらしめているのが彼……ザーバという『個人戦力』なのだ。
ライフルを構えるいりす。
「ザーバさんを倒す事は容易ではありません。けれど、倒さなければ……」
「そう、倒さなければ。国は壊す」
国そのものを人質にとった、決闘。それがザーバが突きつけた闘争の形だった。
「戦うために戦い、戦うために計画を練り、戦うために組織を作り、戦うために歩く。ヒトとは所詮、そういう生き物よ」
うそぶく彼は、一歩こちらにあゆみでた。
ただそれだけでオーラが暴風のように吹き付け、熱すらもって兵達を押しのける。
この領域に踏み込めるのは、真に勇敢な者のみだ。
つまりそれは、この戦いに挑んだイレギュラーズたちだ。
壊れたエクスギアEXから降りたイレギュラーズたちが挑みかかる中……アダム、ドスコイ、蕭条は一台の装甲車に飛び乗ってザーバへと迫った。
備え付けた機関銃を撃ちまくりながら、叫ぶ。
「ザーバ!あなたの偉業を自分で汚すな! 何度もくらえ! 力と力のぶつかり合いだ!」
「フーくん、いっけー!」
「下顎引きちぎって二度とその余裕の笑みできなくしてやりますよてめーっこらーっ」
全弾直撃。更にフラッシュドスコイの熱光線と装甲車そのものまでが直撃するも、ザーバは笑ってそれを放り投げた。装甲車ごと、バンパー部分を片手で掴んで後方へと。
まるでカタパルトで射出されたかのように天へ吹き飛んでいく彼ら。
「良い覚悟。良い戦士だのう。まだいるか?」
「ええ、ここに!」
ツルギ、ザミエラの騎兵部隊が左右から回り込み、連携した一斉射撃をたたき込む。
更にゼストとIJ0854、更にいりすの部隊が支援砲撃を仕掛け始めた。
「わざわざパーティー会場を用意してくれてありがとうね。 おかげでダンスホールは最高に盛り上がったわ」
「貴方はこのROO刑事ゼスティアンが命をかけてでも食い止めるであります!」
「そして、必ず連れ戻します!!」
更にエーミール、ダリウス、ミミサキの部隊が突入し一斉に殴りかかる。
「反転でねじ曲げられた想いでの戦いなんて、本当に楽しいバトルを遠ざけるだけだよ。
ボクは色んな相手とバトルしてきた。皆、命がけで全力のバトルだった。だからこそ、楽しかった。
ザーバ。ボクは本当のキミと戦いたい!紛い物の力で弱ったキミなんかじゃ無く、最強のキミと!」
全員の攻撃が集中し、そしてその全てが直撃しているにも関わらず、ザーバは笑って腕を振った。
それだけで嵐が起こり、足を踏みならすだけで大地が歪んだ。
全ての部隊が壊滅しかけ、いりすの指示によってけが人を庇うかたちで撤退していく。
いや、全てが撤退したわけではない。
「その闘争、ここで終わらせるであります!」
高く跳躍し攻撃をさけていたゼスト――否ゼスティアンが両足にエネルギーを集中。
流星の如くザーバの顔面にそれをたたき込んだ。
彼の魂がこもったドロップキックによって初めて吹き飛ぶザーバ。
ギアブルグの残骸に激突し、そして地面に倒れた。
闇が、闇のような煙が、ザーバの中から現れ、そして空へと登っていく。
大の字に、仰向けに倒れたザーバはゆっくりと目を開いた。
「ここは……俺は、一体なにを……」
頭を抑え、身体を起こす。
部隊は壊滅し要塞も破壊されザーバに至っては腰布一丁という有様だが、なぜだかさっぱりした顔をしていた。
その隣に、リュカシスが立つ。オトナっぽい顔立ちは少年のそれに戻り、彼もまたどこかさっぱりとしていた。
「どうやら、『世界の敵』というやつに一杯食わされてしまたみたいデス」
「ふむ……」
顎に手を当て、リュカシスの手を借りて立ちあがるザーバ。
周囲の光景を今一度観察してから、ゼストたちイレギュラーズへと向き直った。
全てを理解したのだろう。
苦笑し、小さく首を振り、そしてイレギュラーズたちに頷く。
闇は晴れ、鋼鉄帝国にはやっと『平和』が舞い戻った。
だが全ての問題が片付いたわけではない。
ダメージを受けた南方戦線部隊を建て直す計画や、新皇帝のもと国家の防衛網をひきなおす計画。更には『ザーバを帝国にぶつける』などという強烈な作戦を企てたパラディーゾたちへの対策。
山積みとなった問題を前に、しかし、彼らはあえて乾杯をした。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
――ザーバ・クライシス、完
GMコメント
このシナリオには複数のパートが存在します。
自分のパートを選択し、参加してください。
シナリオの成功条件は総合して『ザーバ軍閥及びノーザンキングス連合軍を撃退すること』となります。
(ラストバトル用のプレイングはキャパシティ不足のため省略しても構いません。その際はアドリブで戦いが描かれます)
そしてこの戦いにはザーバインパクトにて登場したPCNPCたちが再登場するかもしれません!
参考:<フルメタルバトルロア>ザーバインパクト
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6304
●パートタグ
このシナリオは前半は三種類のパートのうちから選択し、後半はそれまで選択したパートに応じた『ラストバトルパート』へと移行します。
【ロボット】【軍団指揮】【ノーザン】のうちからタグを一つだけ選択し、プレイング冒頭に記載してください。
以下は各パートの説明になります
================================
【ロボット】
ギアブルグから出撃した人型機動兵器エクスギアEXに対し、こちらもエクスギアEXに搭乗して戦います。
ここではあなたの専用機が与えられます。プレイングには機体名とデザインを書いてみるとよりお楽しみ頂けるでしょう。
強敵としてルクト、ラムダ、シュピーゲル、イルミナなどの専用エクスギアEXが存在しています。
この戦いが終わった後、(死亡した場合は再び出撃して)『ザーバ』との戦いに挑むことが出来ます。
●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。
================================
【軍団指揮】
ギアブルグから出撃した英雄コピー軍団に対して、こちらも小隊を編制して対抗します。
信頼する部下(もしくはダチコーたち)と一緒に悪の軍団を打ち砕きましょう!
この戦いのボスとなるリュカシスを倒すことで英雄コピー軍団を消し去ることができるでしょう。
この戦いが終わった後、(死亡した場合は再び出撃して)『ザーバ』との戦いに挑むことが出来ます。
●小隊指揮について
・このシナリオには小隊指揮ルールが適用されます。
PCは全員小隊長扱いとなり、十~二十人程度の配下を率いて敵部隊と戦うことができます。
・兵のスキルや装備といった構成内容はおおまかになら決めることができます。
防御重視、回復重視、機動力重視、遠距離砲撃重視、特定系統の非戦スキル重視……といった感じです。細かいオーダーは避けましょう(プレイング圧迫リスク回避のため)
・使用スキルや戦闘パターンの指定は不要です。(プレイング圧迫リスク回避のため)
・部下の戦意を向上させるプレイングをかけることで、小隊の戦力が上昇します。
先陣をきって勇敢に戦って見せたり、笑顔で元気づけたり、料理を振る舞ってみたり、歌って踊ったり、格好いい演説を聴かせたり、効率的な戦術を指示したりとやり方は様々です。キャラにあった隊長プレイをお楽しみください。
・兵のデザインや雰囲気には拘ってOKです。
自分と同じような服装で統一したり、自分の領地にいる戦力を選抜したり、楽しいチームを作りましょう。特に指定が無かった場合、以下のデフォルト設定が適用されます。
================================
【ノーザン】
ザーバ軍閥と同時に、そしてその混乱に紛れる形で首都へ攻撃を仕掛けてきたノーザンキングス連合軍を打ち払います。
既に鋼鉄国の帝国軍兵士達が連合軍兵士とぶつかりあっていますが、その中でも重要とされる強敵を相手にすることになるでしょう。
この戦いが終わった後、(死亡した場合は再び出撃して)『朋子(パラティーゾ)』との戦いに挑むことが出来ます。
・エーデルガルド
魔種に相当する存在。鋼鉄帝国の現状に強い不満をもち、今回のテロを計画した。
自由自在に火器を出現させることができ、重機関銃からミサイルまでとにかく火力の限りを尽くしてくる。
・『プロモーター』
魔種に相当する存在。この世界に絶望し、破滅を望む悪魔と化してしまった。
非常に狡猾で、エッダやリズリー、リュカシスやザーバといった重要人物たちを計画的に堕としていった。
氷系の術を使うが、その威力や精度は英雄の域を超えまさに悪魔的。
・リズリー
魔種に相当する存在。己の部族を滅ぼした鋼鉄帝国への怒りと憎しみによって悪へと墜ちた。
剣を用いた近接戦闘が主だが、その能力は圧倒的。
・長谷部 朋子
『天国篇(パラディーゾ)階位』。
長谷部 朋子がログアウト不能になった辺りから(あるいはもっと前から)ピエロ&ジェーンたちによって生成された特別な軍勢。本来のPCNPC長谷部朋子に侵食する形で仕込まれた。
厳密には魔斧ダークネアンデルタールに意識を乗っ取られた存在であり、元々の長谷部朋子の意識とダークネアンデルタールの人格を行ったり来たりしている。
ラストバトル時にはパラディーゾ版と、それまでは通常版との戦いになる。
パラディーゾ版の強さは未知数だが、圧倒的な強さを秘めているのは確実である。
・ウサーシャ
クリミナルオファーをうけ狂気に呑まれつつあるウサギ戦士。
一度はアーゲンティエールの説得を受け己の正義を取り戻していたが、再び闇が覆い隠そうとしている。本当の自分らしさを見つけることができればあるいは……。
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●『パラディーゾ』イベント
(パラディーゾメンバーが登場しているため、特殊要素が追加されています)
当シナリオでは『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
●フルメタルバトルロア
https://rev1.reversion.jp/page/fullmetalbattleroar
こちらは『鋼鉄内乱フルメタル・バトルロア』のシナリオです。
・ゼシュテリウス軍閥
ヴェルスが皇帝暗殺容疑を物理で晴らすべく組織した軍閥です。
鋼鉄将校ショッケンをはじめとするヴェルス派閥軍人とヴァルフォロメイを筆頭とする教派クラースナヤ・ズヴェズダーが一緒になって組織した軍閥で、移動要塞ギアバジリカを拠点とし様々な軍閥と戦います。
・黒鉄十字柩(エクスギア)
戦士をただちに戦場へと送り出す高機動棺型出撃装置です。
ギアバジリカから発射され、ジェットの推進力で敵地へと突入。十字架形態をとり敵地の地面へ突き刺さります。
棺の中は聖なる結界で守られており、勢いと揺れはともかく戦場へ安全に到達することができます。
・移動要塞ギアバジリカ
クラースナヤ・ズヴェズダーによって発見、改造された古代の要塞です。
巨大な聖堂が無数に組み合わさった外見をしており、折りたたまれた複数の脚を使った移動を可能としています。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
(このシナリオで死亡した場合パート内での再出撃はできません)
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