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シナリオ詳細

<果ての迷宮>三感死怨乱れ歌

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悲願へ
 『幻想』王都メフ・メフィート。
 嘗て勇者王と呼ばれた人物の血筋と夢とを礎として存続してきたこの都市は、『果ての迷宮』と呼ばれる『踏破されざる迷宮』をその中心に据えている。
 その踏破は幻想王家、ひいては王侯貴族達が追い求める夢であり、幻想という国家に課せられた一種の義務でもあった。
 『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)を中心とした探索者(エクスプローラー)をして足止めを食うほどの地への道程は、しかしローレットのイレギュラーズ達の手により光明が見えていた。
 斯くしてイレギュラーズはペリカを中心としてより深くへと潜っていく。未踏の地へと、向かっていく。

●感じぬという恐怖
「これが26層の入口ってワケだねぃ。……何か書いてあるのだわさ」
 果ての迷宮、26層。先だってのアタックから日が開いてのトライとなった一同は、意気揚々と突入しようとしたペリカが片手を上げ、一同を制した為に足を止める。張り紙、とペリカは告げたが、どうやら扉に打ち付けられた看板のようなものである。
『見えず聞こえず触れられず、知ろうとする意思や感覚はそのことごとくを奪う。知覚を失った恐怖は魂に鑢(やすり)をかけ、時間という漆喰が塗り隠した罪を暴き出すであろう。罪の声は汝らを苛み、肉体は罰を求める。罪を受け容れ己の血肉とするか、罪を否定し己が血に濡れながら道を拓くか、覚悟の下に選ばれよ。さすれば門番を制し、次の階を得られよう』
 文章はやや古い文体の幻想文字で書かれており、この先に広がる階層についての情報らしい。相変わらず、何某かの、心を揺さぶる試練を与えることが目的のようだ。
「一応階層主はいるみたいだわさ。戦闘準備は十分に、でも不用意に動かないほうが賢明ってことだね」
「なんか、こういうの前にもあったな……」
「それだけ、探索者に心のあり方を確認させたいってことなんだろうねぃ。……ま、行くしかないんだわ」
 うんざりしたような一同に向かってペリカが先を促すと、一同は観念した様子で扉に手をかけた。
 そして、フロアに入った一同は次の瞬間、地面が亡くなったような感触とともに視界がブラックアウトする。

●心許なき不覚
 イレギュラーズを襲ったのは、足場が消失したかのような不快感。
 ついで、唐突にブラックアウトした視界、環境音すら消失した感覚の闇であった。
 肉体が倒れているのか立っているのかすらも定かではなく、得物を握っている感覚も覚束ない。体を起こそうにも指先の、そして皮膚の感覚がない。
 口の中にざらざらとした感触と苦い唾の味が広がるが、そのくらい。嗅覚に集中すれば、感覚の優れたものなら仲間の位置がわかるだろうが、視覚聴覚の距離感覚、肉体の距離などを測るための触覚を奪われて、性格な攻撃が行えるかと言えば怪しいものだ。
 くわえて、周囲の敵味方を探ったり、思念会話を司る拡張感覚やギフトの類には凄まじいノイズが走り到底使い物にならないのは明白だ。
 失った感覚に焦りを覚えると同時に、ザリザリとノイズのようなものが走り、暗闇のなかに過去に見た死、大小様々な奪った命、挫いた誰かの望み……それこそ大量な『悔い』が流れ込んでくる。
 それは自分のものではなく、しかし触覚を失い、自他の境界が曖昧になった今『我がことのような』不安感が押し寄せる。
 どこからか、鑢の音が聞こえてきた。

GMコメント

 大変お待たせいたしました。果ての迷宮は3度目ましてでしょうか、26層は私、ふみのがお送り致します。



●成功条件
 スティマル・スティグマの半数以上の撃破

●スティマル・スティグマ×8(正確には9だが、自動破壊判定。プレイング表記は「階層主」で可)
 第26階層・階層主。各人に1体つく形となる。
 攻撃行動は行わず、防御能力は低い。だが、各人についた個体は本人にしか攻撃できず、他者が範囲攻撃などで一掃しようとしても効果がない。
 強力なジャミングがあったりなんだりするわけではないので、ある程度能動的に動ける状態なら倒せる目はある。
 だが、後述の戦場状況により開始時点で倒せる可能性は極めて低い。
 なお、ペリカはリプレイ最終盤あたりでなんとか倒せる模様。

●26層ギミック
・階層に踏み込んだメンバーは一定距離離れた状態で「視覚」「聴覚」「触覚」を剥奪され、「索敵系」「精神感応系」のスキルは強烈なノイズがかかっています。元から視覚ないし聴覚が封じられている設定の人には大して影響はありません。
・視覚聴覚は今更説明するまでもないでしょうが、触覚はつまり「皮膚感覚、重量感覚の完全消失」、つまり立っている感覚、持っているかどうかの確信、体を動かしているのか、どう動いているのかの知覚が出来ない状態となります。
 そのため、武器を振るった際にすっぽ抜けるとか、敵に向けて攻撃した際に体が正確に動かず誤爆したりだとか、そういうリスクを背負うことになります。逆説的に言えば、思考や意識を飛ばすのみで攻撃できる術式系は割と不利を被らないかも。
・状況進行中、毎ターン「固定値」のダメージを受け続けます。これはスティアル・スティグマ撃破時に消失します。それと同時に、負傷も全快します(パンドラ消費は不可逆)。
・一定ターンごとに「過去に殺した人物、魔種、モンスター、その他諸要素の存在が自分を責める」幻覚に襲われます。これには「確率値」のダメージが伴います。
・これについては「私はそういうの罪悪感無いから関係ないもんね!」は滅茶苦茶ダメージ率が上がります。そういった精神性の場合「殺してきた何某かの迎えるはずだった幸せな未来」を幻視するためです。
・確率ダメージを負うたび、「視覚・聴覚・触覚・スキル(ギフトのノイズ)」何れかの異常解除を選択することができます。解除された手札で手早く倒せれば、比較的安全にクリアできるでしょう。
・でも闇雲に感覚足りてない状態で攻撃しようとすると仲間を攻撃してしまって助かる人も重傷判定! 大変! ってなるので気をつけましょう。
・4回目の確率ダメージまで待って攻略しようとするとまずパンドラが減ります。ご注意下さい。

 以上です。
 皆、殺してきた過去に殺されよう!(言い方

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <果ての迷宮>三感死怨乱れ歌完了
  • GM名ふみの
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月06日 22時35分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
サンディ・カルタ(p3p000438)
横紙破り
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
希う魔道士
アト・サイン(p3p001394)
観光客
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
進撃のラッパ
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
ノット・イコール(p3p009887)
想いの届人

リプレイ

●数多ある業、人の思いの交わるところ
「初めての果ての迷宮……! アトさんもお師匠先生もいて……」
「なかなか機会が無くて参加できなかったけど、未踏の地の探索に携われるのは光栄だね」
 『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)と『想いの届人』ノット・イコール(p3p009887)の両者は、初めて踏み入った果ての迷宮の雰囲気に興奮気味だ。未だフロアの前にいるとは言え、周囲の空気の異様さは、ここが混沌であって混沌ではない場所であることを容易に理解させるもの。こと、フラーゴラは『観光客』アト・サイン(p3p001394)と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)、慕っていて、かつ迷宮踏破に殊更力を入れている2人と同行できているとあって感慨はひとしおだ。
「フラーゴラったらはしゃいじゃって、本当に仕方ない……」
「初めて迷宮に入ったなら、そうもなる。僕達だってここの探索を任されると知った時を思えば……」
 当のイーリンとアトは、そんなフラーゴラの反応にそれぞれ思うところがある。愛弟子の、或いは己に懐いてくる相手の新鮮なりアクションは、初めてここに飛び込んだ日のことを思い出させた。……それからどれだけ冒険を重ね、それに伴って業を背負ったのやら。
「深緑生まれの私には幻想の政争なんて興味ありませんし、折角なら依頼で知り合った貴族の名代にでもなっておこうかとは思ったのですけれど……」
「『果ての迷宮』の探索は夢の夢じゃと思ってたが、探索できる日が来るとはな」
「……あの人のために、ですね? オウェードさんの恋の後押しに協力しましょう……勝ち目があるかは兎も角」
「これから作る気でいるつもりじゃ」
 『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)にとって、幻想国内のあれやこれやは実際のところ、興味の外だ。だからこそ、『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)のようにある種純粋な想いから果ての迷宮に挑む者の背を押したくなる気持ちもまた偽らざるものである。
「フォルデルマンも三大貴族も好きじゃねーし、俺は俺で推したい奴に貢献するぜ」
「俺も同じく。キミとは違う貴族だろうけどね」
 『横紙破り』サンディ・カルタ(p3p000438)と『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は三大貴族でもフォルデルマンでもなく、個々に関わりのある貴族の名代を名乗って参加している。勢力争い激しいこの国で、三大貴族以外の貴族の名が表に出ることは大変珍しく、だからこそ彼等イレギュラーズが前に出てその名乗りを上げることの意味が大きい。少なくとも、表立った権力闘争ではどうにもならない穴を埋める意味で果ての迷宮というものの影響力がうかがい知れよう。
「個人的には人文科学の研究者として、遊楽伯爵殿に力をつけてもらいたいと思っていてね」
「僕は……これまでの幻想のゴタゴタを経て、陛下が成長したから、かな」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)にとって、幻想で探求の路を往く上でガブリエルの存在が重要なのは事実であろう。『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の支持する相手は変わってはいないが、さりとて『理由』という点では大きく変わっている。フォルデルマン三世の過去と今。そして乗り越えたもの。それを知って、その人となりをより強く意識したから『支持し続けよう』と思うこともあるだろう。
「ひとまず、今回『も』一筋縄では行かないみたいだわさ。皆、準備は出来てるかい?」
 『総隊長』ペリカ・ロズィーアン(p3n000113)は各々に思うところあるイレギュラーズに向け、念押しするように問いかける。無論だと頷き合う彼等は、主張の差異はあれど決意の固さは同等に見えた。つまり、十分だということ。
 納得したように頷いたペリカが扉を押し開け、フロア内に踏み込んだイレギュラーズは次々と五感にノイズが走り、探知能力を封じられ、ふらふらと膝をつき、地面に倒れ込む。平衡感覚を失ったとかそんな生易しい話ではない。重力をどう受け止めていたのか、それすらも忘れてしまったかのような、全身がゴムで覆われたような不快感。これを振り払うために意識を断てればどれだけ楽か。
 四方から、否、意識の内側から響き渡る声はイレギュラーズを苛むべく響き渡る。どこかで聞いたような、その声が。

●割り切れるなら記憶は要らぬ
(君たちは……そうか、『ここ』はそういう所か)
 ノットは、暗転した視界の隅にちらつく見覚えある影に視線を向け、得心したように口元を歪めた。尤も、声を発したのか心で思ったのか、口も歪めたのか、はっきりしないが。
 それでもたしかに、意識の底から浮かび上がってきたそれらがかつて殺した相手だということは分かる。だが、彼等は自らを見てくるだけで口を開かない。じっと見つめてくるだけで、己の罪を自覚せよと言わんばかりだ。
 迂闊に身動きも取れず、然し周囲には己の犯した罪の足跡を見せつけられる感覚。それらが恨み言を吐き出さずに立っていると言うだけで、精神は重い鉛を呑んだように沈んでいく。

 オウェードの頬を、濡れた感触が叩く。それが幻覚だと自分に言い聞かせるより早く、鈍い鉄錆の――血の匂いが鼻をつく。これも幻覚。だがあまりに状況がリアルすぎた。
 倒れ込んだ視界の端で飛び散る血、積み重なる肉の音、すべては幻覚だと繰り返し言い聞かせるが、それらはかつての彼が見聞きし嗅いだ感覚たち。否定しようもない出来事の追体験だ。仲間が自分を信頼する言葉を口にする。その声が失っているはずの聴覚を叩くのが、彼の罪悪感に鑢をかける。やめてくれなど言えようものか。それは彼の手にした罪だ。

(……これまずいな、五感殆ど奪われてる)
 ヨゾラは体に力を籠めようとしたが、どの程度籠っているのかわからず、一瞬の浮遊感の後に長い静寂を認識した。要は、力を入れすぎて上体を起こし、いきおい、倒れこんでしまった、のだろう。
 辛うじて魔術を練り上げるのに問題はなく、放つことはできそうだ。が、敵味方を認識して放つ前提のそれを放った場合、待っているのは無差別な攻撃か、その逆か。
 仲間達の状態が分からない。己の状態が分からない。わかることがあるとすれば、過去に奪った命の記憶。水底から浮いてくる泡のように精神に触れると、ざらりとした感触が心に触れる。『魂に似た何か』が削られていき、それに引っ張られて命が擦り減る感触があった。願望器たれと求めるヨゾラにとって、覚えてすらいない命の記憶が浮かび上がるのは、正直楽な感触ではないだろう。それが声を上げたなら、なおのこと。

(……まいったね、目的の為に手を下した相手は大しておぼえていないな)
 ゼフィラは失った感覚を素早く切り捨て、目の前に現れる幻影に意識を向ける。殺した相手なのだろう、然し思い出せるほどに情が深いわけではない。彼女は嬉々として、或いは感情にまかせて誰かを殺すことはない。状況を甘く見て命の危機に瀕したことは二度や三度ではなかろうが、殺人の罪業には積極的に向き合ったことがない。だが、そういう類の人間にとってこのトラップは袋小路だ。何故なら、触れるべき罪の手ざわりが感じられないから。

(感覚がないとは、斥候殺しにもほどがあるね。だが体力が削られる感覚……内側に向かっての術行使はいけるか……?)
 アトは、鼻孔に届いた僅かな鉄錆の匂いを感じ取り、自分ないし誰かが物理的な負傷を負ったことを理解する。外向きの力は、何も判断できなければ暴力となろう。とすれば、伸ばすべきは内側だ。魂を削る鑢の刃を鈍らせるように魔力を集中させ……遮るように現れた、闇よりなお黒い球体を認識する。こんなものを手にするのは1人しかいない。そんなものを持って現れるのは1人しかいない。
「なるほどお前か、メルカート・メイズ」

(浮かれてたけど、実際に受けると辛いんだね……それはそっか。迷宮、だもんねえ)
 フラーゴラは暗闇の中で、平衡感覚が無事であることを理解する。触覚とは別の知覚であるそれは、しかし体を自由に操れなければ意味がない。体をまっすぐに保とうとしても、そうするための肌、肉体の連動が上手く行かぬのだからどうにもならない。成程、触覚喪失が厄介なのはこれが理由か。
 彼女がそう理解したと同時に知覚した幻は、嘗てファルベライズ遺跡群の奥底で討った2体の魔種……グラーノ・トラモントと『望まれぬスティルバース』。口を開かぬそれらの存在は、然し在るだけで彼女の記憶をまさぐり刃を突き立ててくる。その感触は、鋭く深く。

(殺すことが前提となる武器に殺しの罪を問うとか本当にろんが……い……)
 サイズは両手と得物を雁字搦めに縛ることで不要な傷を生むことを阻害した。が、それゆえに上手く転ぶことができなかった。もとより武器であった頃の己に戻ることを意識すれば、多少の傷など気にもならない。サイズにとって、肉体は妖精となることで得たものに過ぎぬがゆえに。……だからこそ、妖精であるという自認が妖精郷に対する思慕を強くする。ゆえに、妖精郷で拾えなかったものを殊更に強く悔いる。盲だ視覚、その裏に現れた景色はなるほど、平和になった妖精郷。そして、有り得べからざる景色。救えなかった者達が陽気に遊ぶ、その景色。

(元々育ちが悪いんでな、綺麗ゴトだけで生きちゃいねーさ。んだから、一々死人の顔なんて覚えちゃいな……きゃ、良かったんだけどな……)
 サンディは悪党だ。どう控えめに表現しても、贔屓目に見ても、イレギュラーズとして積み上げてきた名声を別として、決して善人といい切れぬ人種。それが彼である。
 だからこそその身に刻んだ傷は数知れず、心に刻んだ闇は深く。その闇に放り込んだ過去は、ふとした時に顔を覗かせる。或いは同じイレギュラーズだった者。仲間の恩師だったひと。それから、それから。
(俺は本当にレディを守ってるのか? ただ世界に流されたまま、守った気になってるだけじゃないのか?)
 パンドラを積み上げ、幸福への道を舗装する。その石畳の下に隠した、数多の死体から目を背けて。

(嗅覚は生きてるんだったわね。却って面倒だわ……だって、この匂いが幻覚か本物かわからないじゃない)
 イーリンは横たえた身に、偽りの感触と水気、即ちあたり一面を濡らす血の池を知覚した。嗚呼幻だな、と理解はした。けれど、これが偽りだなんて断じることはできない。
(生温い幻覚ね。私が殺した命なんて、これだけじゃ済まないっていうのに)
 仲間の幻覚がいる。いつ殺したかも分からぬ誰かがいる。命を奪ってきた過去が未来へ追いつき踏み潰そうと迫ってくる。なんて滑稽な光景だろう、と彼女は笑った。

「解っております、お母様」
 エルシアは口を開き、声を発した。脳が命令したとおりに発音できたかは分からないけど、彼女の思考はそう言ったのだ。イルシア・ユーリオータ。遭ってからも、逢った後も、彼女はエルシアの敵であり続けた。エルシアの記憶にない、いつか。母に業を背負わせた日から、最後まであの人は娘を娘と言い切れぬまま死んでいったのだったか。最期まで分かりあえなかった人の記憶は、感覚を失った肉体を撫で付ける生温い風のように不快で、口の奥に染み入る錆の味をした血のように苦々しい。『幻想の悲願』にも『勢力争い』にも興味がなかったけれど、この地獄はとても心地の良い音がする。命を擦り上げる音は、自分を追い詰めるそれは、或いは死した母からの福音ではないだろうか――。


 どうして彼等を殺したのか。決まっている、生きる為だ。
 実験のために殺し合い、勝利できなければ容易に死が待っていた状況下で、殺さずに解決することなど出来なかった。それ以外の選択肢はなく、「もしも」を語る権利などない。
 何で殺したのかという恨み言よりも、なんでお前を殺せなかったのか――彼女につきまとう影の声は、滑稽なほどに内向きのそれであった。
(視覚が戻った……か。なるほど、『番人』というからには仰々しいものを想像していたけれど、思ったよりも小さいんだね)
 ノットの視界の端に映り込んだのは、観測手としての小型の球体だ。付かず離れずの距離を保ち、彼女をじっと観測している。既に行動を開始した仲間もいる。なんらかのアクシデントで外傷がある仲間もいる。
 恨み言が思考をかき乱す。仲間を救えぬ口惜しさが、精神の摩耗を加速させる。これが罰だというのなら。

(ワシを頼ってくれた……にも関わらずに敵に見殺しを許してしまった……)
 あの時、油断はなかった。庇おうと手を伸ばした、その意思は本物だ。だが、敵の悪意が上手だったのは間違いない。オウェードの手は届かなかった。
『また俺達を見捨てる気か?』
 仲間のひとりの肉体に死に傷が刻まれ、傷口から血が溢れ出す。それが失った者の痛みか、と。彼は苦々しい表情で仲間を見る。
(そう言えば聞いた事がある……生物は五感から生きて行く事と、五感の内の一つ「嗅覚」は慣れやすい事を……)
 指先の感覚が、皮膚の感触が戻ったことを知覚したオウェードは、指先の感触だけで香水瓶を探し当てる。上品な香りは彼の想い人を想起させ、彼のみならず周囲の面々の鼻孔にもしっかりと届く。
 助けられなかった仲間がいる。どれだけ悔いても足りぬ敗北がある。それでもきっと、『勇者』を名乗るために伸ばした手を、掴み取った希望を、そして胸の高鳴りを、偽りだなどと断じたくはない。

 何も感じず、指先の一つも動かせない。何一つ自由になることがない不快感の中、イルシアの恨み言がエルシア脳内で繰り返される。あの時母に従うと自暴自棄になった彼女は、しかし反転することすら許されなかった。それが母の与えた罰ならば、あの時もう悔恨の機会は失ってしまった。エルシアの心には、既に『悔いていい機会など二度とない』。
(この香り……そう、オウェード様のものでしょうか)
 だから幻想の悲願とやらに興味はなく、貴族達の狂乱に関心はない。だが、彼女恋しさに武器を取り、この迷宮で苦難を選び、なのに青薔薇をイメージした香りに身を委ねるオウェードの、老いてなおぶれぬ純粋さだけは背を押したいと彼女は願った。ただそれだけのために、組んだ手を循環する魔力は母の幻影すらも吹き飛ばす。あの時よりも穏やかな母の『死に顔』を目にした彼女は、しばしの間祈りの姿勢を崩すことはなかった。

「ああ、確かに大罪だな……妖精武器なのに妖精を救えなかった……」
 サイズは異界の妖精として、妖精郷で赫々たる戦果を上げ、『妖精の守護鎌』とすら称される程の存在感を示した。だが、それはサイズにとって不十分な成果だった、といえる。如何に傲慢と誹りを受けようと、総ての妖精を救いたかったという決意に偽りはない。
 その呼び名を重圧と思えばこそ、これからそれに見合う妖精武器でありたいと願う。サイズはその呼び名を背負うことを、重い十字を背負うのと同等とまで思っていたのだ。
 助けてと訴える数多の声。もう逃げられないと嘆くキトリニタス達の核。通り過ぎたはずの過去が、再び自らに襲いかかるその絶望が、後悔が、その背を掴んで離さない。
(わかっています……この罪は必ず償います……妖精郷の闇……女王の短命の定めを断ち切ることで救えずの罪を償おう)
 分不相応と笑う者も居よう。だが、それを願うことの何が悪いのか。開かれた目は、雁字搦めの両手を見て、敵の姿を捉えるべく動き出した。

「はあ、まるで弱ったな、お前には実際悪いとは思っていた」
 「帰って」「来ないで」「どうして」。闇の球体を抱えて自らをじっと見据え、否定の言葉を連ねるメルカートの姿は最期に見たそのままのもの。それはそうだ、アトの記憶から浮かび上がった幻なのだから。
「子供のように、いや、実際お前は子供だった。子供のお前と僕はお互いに傷つけ合いながら戦い、そして先に剣が届いたのはこちら側だった」
 恨み言ばかりが漏れる口はあの日と変わらず。迷宮の奥で迷宮の少女と対峙するなどという笑えない、救えない冗談はアトの望むところではない。指先の感触を頼りに上体を持ち上げると、彼は大きく息を吸う。
 殊更に強い金属の匂いはサイズ。やや薄い鉄錆の匂いは誰かの血。量は少ないか。それに伴う皮脂の匂いは人間のもの、香水は……女性のものかと思ったが、この香りはオウェードだろう。
 だとすれば、機械でありながら武器ではなく、人を模す為の作り物じみた革の匂いは合成皮革か。機械に革を貼り付けた不気味な球体、それが『スティマル・スティグマ』の正体か。
 アトは片手剣を抜き、構える。周囲にびゅう、と木枯らしが吹いた。

「助けてやったのに、なんて救済する側が押し付けるものじゃない。本気でアナタは言ったの?」
 グラーノやスティルバースの口から漏れる恨み言を聞きながら、フラーゴラは静かな怒りを覚えていた。彼等の恨み言はどうにも手前勝手な理屈に思える。フラーゴラに注いだ力を、想いを、等価以上で手にできることが当然であるかのように。報われて当然の事をしたと言いたげに。
 殺し難い気持ちになったとしても、彼等と対話を繰り返し、その人となりを知ったならばもう少し、両者との関係は変わったのだろうか? 知っておくべきだったのだろうか? 同じ罵倒でも、もう少し……そう、もう少し思いに寄り添ってくれたのだろうか?
(そっか。これが後悔で、罪悪感)
 フラーゴラがそれを自覚するのと、頬を空っ風が撫で付けるのを感じたのはほぼ同時。迷宮に流れる風の感触を、彼女が間違いようがない。追って、祈りにも似た熱が頬を撫でたのは、その威力を思えば笑うしかない。
 手にした棒の感触を理解して、倒れたままで己の得物を手繰り寄せる。まずは、それを縛り付けるところから。

「この痛みは、僕が僕(ヨゾラ)である証でもある、か」
 殺した相手に意味があるとするのなら、混沌で肉体を持つことで初めて得ることが出来たものでもある。それが罪だというのなら、罰や後悔は肉体を得た事に対する代償なのだろう。
 ヨゾラが己を認識する意味なれば、その痛みを否定する道理はない。魔術紋を通し流れる魔力は、己の傷を、誰かの傷を、癒す力に変換されていく。
「返せよ、この体の感覚を……過去も罪も知覚する為のものを全て返せ!」
 叫び、開かれた視界の先にある仲間へと魔力を傾ける。視界に現れないスティグマを倒すことは儘ならぬが、それでも味方の不利を払うことは十分にできるのだ。
(これで……僕の視覚がまたなくなったら怖い……!)
 癒やされることは、己が悔いと痛みを否定する事になりえないかと、彼は不安を覚えた。……結果は、それを否と言ったけれど。

(私は自らの手でこの未知の世界を踏破すると誓ったし、それを諦めるつもりはないよ。悪いけど、私は先に進ませてもらう。だから……)
 だから、絶え間なく苛む声を止めてくれ。
 ゼフィラは己の肉体から力が失われていくペースが尋常ではないことを知覚していた。想定していたそれを超え、仲間達が感じているものよりも尚強固な痛みではないか――と。事実、彼女を苛む痛みは、魂を削る感触は仲間達のそれよりも強い。
 理由は、この階層が何を以て死を認識し、何をしてその痛みからの脱却を求めるかを理解すれば容易に辿り着く理屈だ(彼女は気付くことはないだろうが……)。
 そういう意味では、彼女は殺してきた過去と向き合うことも、死への経緯も、他の者とは明らかに違った。優劣ではなく、『合わなかった』。物事は時に、理不尽な回答を求めるものだ。

(依頼だからと殺した子供は? 家族を思っていたシスターは? 魔種に扇動されて暴走しただけの民は? 忠義を尽くしただけの騎士は?)
 ……名前さえも覚えていないな、と。
 イーリンは改めて、己の軽薄を心中で嘲笑った。己の人生に関わらぬ者の顔も名前も覚えては居ない。そういう意味で、彼女はゼフィラと精神性を同じくしているように思えた。だが、根底が違う。
 イレギュラーズ『だった』仲間達を殺した。大事だった仲間を、見送るなどという綺麗事で見殺した。騎兵隊として、飛び込んだ戦場で無慈悲に敵として磨り潰した。
 そして、数多足元から這い上がる声、声、声。それらは恐らく、ゼフィラとも、他の仲間達とも比較にならぬ数なのだろう。だから、削り取られた命の量は比較にならぬほど多い。
 ラムレイの感触を思い出すために、幾度の治癒術を己に叩き込んだだろうか。運命に指をかける一歩手前だったはずだ。ラムレイに活を入れ、感触だけで走らせる。広くはないフロアを叩く蹄の音は、きっと多くの者には聞こえまい。だが、その足音の振動は、命を削る多くの者に響く筈。

 守りたいと思った命は数多い。だが、本当に守れたと胸を晴れる命は果たしてどれだけあるのだろう?
 力なく石畳をひっかくサンディの指先は、触覚を失ったまま繰り返しているようだった。繰り返し繰り返し、感覚ではなく反射で動かしたような指先から爪が剥がれかけ、指の腹はしとどに血で濡れている。ざりざりという音がぬちゃりという濡れ音に変わってなお続ける動きとはべつに、腰に回された手は「己の体を知覚していないかのように」大振りで振り回され、そしてナイフを取り落とす。首を動かすそれは、目を瞑ったままで何も見ようとしていない。
 死人の顔など覚えちゃいない。自分の過ちで、取り落した命以外は。
 或いは自分の過ちだと述べることこそが、きっと傲慢なのかもしれないけれど。
 付かず離れず距離を保つスティグマは、決して彼に近づこうとしない。何故なら、それの目的は観測だ。
 だから近づかない。だからこそ、気付かない。サンディの本懐は、騙すことにあるということを。


(ゼフィラ殿は……少し危険じゃな。だがこの階層の特性上、死にはすまい。センサーに引っかかってるのに走り回っておるのはイーリン殿か。全く……)
(フフ、どうやら後ろをついて回っているのが階層主かな。……なら、ボクの後ろにいるのも、それか)
 呆れたような思念を乗せつつ立ち上がったオウェードと、苦笑しつつ思念で返すノット、両者は共に相当に『待ち』を経たがために傷が深い。それでも致命傷まで至っていないのは、ヨゾラの術式がかろうじて届いたからだ。スティグマは積極的に相手には近づこうとしない。されど、近づかれる事に対して相手以上に素早く逃げる、ということはありえない。
 暴威を重ねるノルダインのそれを参考にした斧は、オウェードにその勇猛さが乗り移ったかのように鋭く速く、スティグマに到達する。一撃で半ばまで引き裂かれたそれは火花をちらしながらフラフラと離れようとし、同時に彼の思考の裏に仲間達の敵意を吐き出していく。
「まだ許されてない……か」
「皆で笑い合って生き延びた未来は訪れなかった。殺したのはボク自身だし、殺されかけたのも事実だ。だからこそ、ボクはキミ達に会えたことに感謝している」
 ノットにとっては辛い記憶だ。或いは、混沌で生きてきて奪った命以上に重いものを背負って、それに押し潰されそうになりながら。するりと踏み込んだ間合いの中で、指輪に触れたスティグマがノイズを立てて崩れていく。
(アトさんを好きで居られることで、ワタシは脇目もふらず盲目で居られる。でも、アトさんを都合よく『そう』ある理由にしちゃダメだ)
 棒を杖代わりにして立ち上がったフラーゴラは、自らに敵意を向ける相手を知覚する。死角に潜り込むように隠れているそれの正確な位置を認識するのにさして時間はかからず、そして振動と手足の感触から、向くべき方向と、突き出すべき業はわかっている。突き出した盾が打ち据えた、奇妙な感触。それが仲間であるわけがない。ハンマーで叩くが如く切り替えられた敵意のスイッチは、そのまま魔力を伴って防風のごとくに荒れ狂う。その力の本流が晴れた跡には、すべての感覚を取り戻した彼女と、哀れに転がるスティグマの姿があった。
「まったく、フラーゴラもよくあそこまで成長したものね。そう思わない?」
「僕にそれを聞くなよ。からかってるつもりかい、司書?」
 勝利に快哉を叫ばず、呆然と立ち尽くすその姿を見て、イーリンは我がことのように誇らしげだった。
 がむしゃらに駆け抜け、取り戻した視界と共に振り向きざまに放たれた魔力の塊は、一撃にてスティグマを撃ち抜いた。彼女が彼女として、内側から苛む声を鳴り止ませたのは、ただ一つ心臓の波濤(こどう)である。
 誰が、どう、冗句混じりに彼女のあり方を笑おうとも、己の命だけは聞き間違えることはない。だからこその電光石火。
 『お前が選ばれし英雄に憧れるのならば、僕は語られぬ只人として剣を取ろう』。アトはそう告げ、誰にも聞こえることのなかった言葉通りに剣を振るった。
 憧れて、焦がれて、遂には攻略される側に堕した少女のことをアトが忘れるわけがない。だからこそ、足を止めようと強制してきたスティグマの仕掛けはアトとの相性が悪かった。立ち止まらないことを是とする冒険者が、後悔だけで倒れているわけがない。
 スティグマは近付くことがない。
 そして、状況証拠のみを元にして観測するそれは、サンディの動作が嘘だらけであることを最期まで見抜けなかった。近付かなかったことだけは褒められよう。されど、不意打ち気味に突き出された攻撃に反応することは叶わない。万死の一撃を突きこまれ、機械ごときが対応できるわけがない。
「俺が砕いた夢の数だけ、俺は、飛ばなきゃいけねぇんだっ!」
 その叫びがスティグマに届いたわけはないだろう。だからこそ、消える前に笑みを浮かべた誰かの口元に、サンディは心からの仲哀を想い、顔を伏せた。
(お母様。これは、絶望の結果でも自罰でもないんですよ)
 祈りを只管に捧げながら、総ての感覚を取り戻しながら、それでもエルシアは祈りの姿勢を崩さなかった。
 背に降りかかるヨゾラの治癒。仲間達の決意の声。飛び交う思惟と術式や武器の音。それらを聞きながら、祈りだけで母の幻を打ち破った少女は息を吐く。
 己を見失ったときに差し伸べられた手。その手を握ろうと手をのばす白い姿。そんな白を慈しむような、紫の輝き。
 届かぬことを笑って、『届かせる』と拳を握った若き心の老体。
 母が記憶を押し込めても、引きずり出しても、私はここにいると伝えられる積み重ねが、エルシアにはある。
「俺はまた、いつか守れないことがあるかもしれない。やらかすことがあるのかもしれない。だが、そうだとしても俺は」
 妖精のために妖精として、彼等の武器となることを忘れない。妖精達へと掲げた誓いを違えることはありえない。サイズは、妖精であるがゆえに妖精へとすべてを捧げる覚悟のもと、立ち止まらないと誓ったのだ。
 地面を砕いた鎌の先端をスティグマに向け、鎖で縛られた両手を起点に放たれた斬撃がそれを捉えないわけがない。砕け散ったスティグマの破片、一つ一つに幻のように映った妖精達の顔は、幻覚のそれだとしてもサイズは忘れることはないだろう。
「過去はしみついて……時として、追ってくるものなんだね」
「だからって、何度も何度も見せられる気にもなってよね。……まったく、しらけるわ」
「そういう事もあるじゃろう。ワシも、こういうのは一度だけでいいが」
 ヨゾラの感慨深げな言葉に、イーリンは肩を竦めて二度と御免だと顔を歪めた。それは偽らざる本音なのだろう。オウェードも、同様に。2人の感想にはヨゾラもまったくの同意らしく、なんとも曖昧な表情で笑い返す。
「私は、恨みつらみを今聞く気にはなれないね。……だからって、それを忘れようとは思わないけど」
「奪った命にも意味はあると、ボクは思っているからね。そうでなければ、ボクが生き残った意味がない」
「まーな。殺した分は生きてやらなきゃ採算が合わねえし、そうじゃなくても飛んでいたいんだよ、俺は」
「僕はこの迷宮を踏破しないと、死んでも死にきれないからね。只人がこの国の悲願を超えるのは、気持ちがいいだろう?」
 ゼフィラは辛うじて体を持ち上げ、息とともに絞り出すように声を上げた。ノットも、サンディもアトも、奪った命で殊更に印象深い者は、奪ったことに何か意味を見出すことで一歩踏み出そうとしている。その決意は、殺した瞬間から変わっていない。
「ワタシは……うん……」
「そうですね……分かりますよ、フラーゴラさん」
 なお、フラーゴラとエルシアの視線がアトに向いているのは勘違いでもなんでもないだろう。分かっちゃいるが、その光景は周囲の表情を僅かながらに綻ばせた。
「皆、なんとか無事……無事? まあ攻略完了ってとこだねぃ。ひとまず帰って、きっちり体を休めて次に備えるんだわさ」
 ペリカがようようと立ち上がり、壊れた階層主を抱えあげてしげしげと眺める。一同は、そんなものは放っておこうと言いたげだ。
 ややあって地面に放り投げられた機械が、何を観測したのかは各個人のみぞ知る。
 されど、それらは、彼等自身の中に秘めたもの。
 少なくとも、ここに集まったイレギュラーズは過去に潰されも、罪の意識に立てなくなることもなかった――はずだ。
 だから次へ、更にしたへ。果ての迷宮の探索は、なおも続く。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

黎明院・ゼフィラ(p3p002101)[重傷]
夜明け前の風

あとがき

 大変お待たせして誠に申し訳有りません。
 ひとまず、本階層突破となります。次の機会まで、皆様ゆっくりと体を休めて頂きたく。
 ご参加、ありがとうございました。

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