PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ウマッチョ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●深く考えたら負けな類のアレ

―先頭はフッキンワレスギ! その僅か後ろをフルエルキョウキンが追っています!―

 歓声と悲鳴。そして何より脳が理解を拒みそうな解説の声が響いている。
 広い屋外闘技場を走っているのは、実に見事なマッチョたちだ。
 細マッチョにゴリマッチョに隠れマッチョ、まさにマッチョの博覧会だ。
 そんなマッチョたちが様々な衣装に身を包み走っている姿は……なんだろう、この世の終わりだろうか?

―ミセルコウハイキン、追い上げる! 追い上げ……フッキンワレスギ、ここにきて急加速! き、きまったああああああ!―

 空を舞う馬券……もといマッチョ券。なるほど、どうやら人を走らせ賭けをやっている場所のようだった。
 
「どうだ? 実際見た感想は」
「ああ……たいしたことないな。これなら俺のほうが速い」

 そんな中、不敵な表情で闘技場を見下ろす2人。
 1人はスキンヘッドのゴツい男。
 もう1人は、赤毛の優男風の……しかし、しっかりと筋肉のついた若者だ。

「その通りだ。レイノルド、お前ならマッチョネームを手に入れるのもすぐだ……頂点たるフルマッチョの称号だって手に入るかもしれねえ」
「すぐに魅せてやるよ。俺の筋肉が最高に輝く時をな」

 白い歯を光らせあう2人。このレイノルドという若者が何者かに襲撃されたのは……この日の、夜の事であった。

●マッチョを守れ

「依頼です」

『旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)はそう切り出すと、集まった全員の顔を見回した。

「ウマッチョダービーとかいう試合を……まあ、知らねーとは思うですが」

 ウマッチョダービー。人を馬にみたててレースさせる試合のことである。
 起源は人馬一体を超え、心にこそ馬を抱けとかいう訳の分からん事を言いだしたダービー氏に由来するとかで、それなりに歴史のあるイベントであるらしい。
 そして常に華麗であれというダービー氏の言葉に従い、闘技者たちは華麗な服を纏い……何を間違ったか、着飾ったマッチョが走るイベントになっているのだという。
 すなわち、ウマッチョ。これの命名もダービー氏であるという。
 ちなみに本名はソウボウ・ダービー。凄いマッチョであったらしい。それはともかく。

「そのウマッチョダービーにデビュー予定だったレイノルド氏が何者かに襲われたです」

 幸いにも怪我の程度は軽いが、デビュー予定だった試合に出る事は出来ない。
 しかも……未だに自分を狙う何者かの気配を感じてもいるのだという。

「賭けもあるイベントです。そういうのもあるでしょうが、依頼人はレイノルド氏の代わりに出走する人材と、犯人もとっ捕まえる事を望んでいるです」

 レイノルド氏の代わりに出走するともなれば、妨害は当然予想される。
 更にレースで勝てば、犯人の思惑も完全に潰せる、という寸法だ。

「では、よろしく頼むのです」

GMコメント

レイノルド氏が出走予定だったレースまでは5日間あります。
その間に、代わりに走る人に合わせて衣装が仕立て直されます。

□衣装の詳細
真っ赤な鼓笛隊っぽい服です。男女に差などあってはならないという理念によりスカートです。
下はちゃんと短パンが用意されています。安心ですね。安心かな?
短パンを履かないとレギュレーション違反なので安心かも。

□その他
代理出走する人が優勝する必要があります。プレイングにて細かく指定していくと、優勝確率が上がっていきます。
決め台詞なども用意しておくと、更に良いでしょう。
必殺技風の何かを用意してもいいかもしれません(本当に技ではなく本人の演出ですが)。
ちなみにレースで他選手への攻撃は禁止です。

参加選手以外の皆様は、参加選手に選ばれた人、そしてレイノルド氏を守る必要があります。
雇われたチンピラ達、そして彼等を雇い違法な賭けをしている組織「ダークプロテインズ」を叩き潰しましょう。
ダークプロテインズは全員マッチョで油でテカテカしています。
得意技は体当たりやタックル、関節技などです。
襲ってくるチンピラを捕まえて行けば、ダークプロテインズの情報に辿り着くことが可能です。

ただし、あからさまな警戒をしているとチンピラは所詮チンピラなので寄ってこない可能性もあります。

無事に優勝すればマッチョネームが授与されます。
何も指定がないと「キンニクテカリ」を本気で称号として授与しますので気をつけてください。
なお、その他の皆様も無事にダークプロテインズを倒せば名誉マッチョネームが授与されます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ウマッチョ完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ

●代理出走するのは

「おやっさん……大丈夫なのか? なんか細っこいぞ」

 レイノルドは、代理出走に志願した『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)を見て自分のトレーナーたる「おやっさん」へと心配そうに振り向く。
 なるほど、確かに百合子は細い。一見すれば、可憐な美少女だ。
 しかし……おやっさんは百合子を見て、戦慄にゴクリと喉を鳴らす。

「レイノルド……お前気付かねえのか。このお嬢ちゃん……すげえ筋肉してやがる」
「何!? いや、これは……!」
「吾は美少女(種族名)である故、圧縮されてより強度の増した筋肉をこのぷにぷにボディに隠しておる。まさに隠れマッチョとは吾の事であろう!」

 そう、百合子の成長記録を見る者が居れば驚くだろう。
 強くなればなる程に見た目が可憐になる。さながら、まるでもう威圧する外観など要らぬというかのようにだ。

「なんてこった。インナーマッスルってやつか!」
「そういうこった。これはウマッチョダービーの歴史が変わりかねないぜ……!」

 もはやおやっさんもレイノルドも、百合子が代理出走するのに否は無い。
 むしろレイノルドも万全であったとして、喜んで百合子に出番を譲るだろう。
 互いの筋肉が通じ合ったからには、もうそこに言葉など要らないのだ。たぶん。

「さあ、そうなると衣装の仕立て直しも始めないといけねえが……今後の作戦ってやつを聞いてもいいか?」

 そう、代理出走の百合子。けがをしたレイノルド。どちらも守らなければならない。
 そして……レイノルドを襲った連中もどうにかしなければならないのだ。

「レイノルドさんの護衛は自分がします」

 進み出た『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)に、レイノルドは頷いてみせる。

「ああ、頼む。アンタもいい筋肉してる」
「ええ。とはいえ、ある程度の隙は見せないといけないようなので、適度に距離を置きつつ視界に入れる感じでいきましょう」
「そこは任せるぜ。俺はそういうのはプロじゃないからな」

 言いながら肩を叩いてくるレイノルドにオリーブも頷き、そこに『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)が咳払いをしてみせる。

「私も護衛だね。どうぞよろしく」
「ん、そうか。アンタも強そうだ……こりゃ大船にのった気分ってやつか?」
「こういうのは得意だよ! 守ることこそ我が軍の真骨頂だったしね!」
「頼りにさせてもらうよ。で、アンタ等2人が護衛ってことでいいのか?」
「いや、僕もだ。シュベールト・シュヴァリエ……全力を尽くそう」

 名乗り出る『竜食い』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)にレイノルドも頷き、百合子をチラリと見る。

「俺に3人……で、あっちの美少女(種族名)にはつけなくていいのか?」
「自分がつくでありますよ」
「あとはトラコフスカヤちゃんだね」
「おう……おう?」

『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)を見て納得した様子のレイノルドだったが……マリアの紹介した『アルハランドの支配者』トラコフスカヤちゃんを見て疑問符を浮かべてしまう。

「おやっさん……」
「いや、俺にも分からん」

 任せろと言いたげにシャドウをするトラコフスカヤに……しかし、レイノルドとおやっさんはやはり顔を見合わせてしまう。

「ウマッチョダービー!? マッチョの博覧会!? 最高じゃないかぁ……馬に見立てられてるってことはそらもうあちこち馬並みなんでしょうね! ハンモはどっちも好きだけど!! やばっ、涎が垂れちゃってた! あんまり興奮するとまた捕縛されちゃうから気を付けようね☆」
「おやっさん……」
「ああ、いつでも通報できるようにはしとこう」

『超変人・男フェチ』金枝 繁茂(p3p008917)の漏れまくっている呟きに、密かに官憲への通報手続きが整えられていたが……ちょっと考え直して、おやっさんは繁茂へと問いかける。

「なあ、お前さんは……どういう役割なんだ?」
「ハンモは敵の黒幕の情報を集めるよ! 好き好んで体を鍛える自意識過剰なマッチョがコンテストに出ないだろうか? いや出るだろう(反語)。奴らはボディビルコンテストにも出ているはずだ!! なら街中のボディビルダーに話を聞けば丸っとズバット解決ってもんよ!」
「お、おう」
「なぜならマッチョはマッチョの情報に敏感、なのでマッチョに聞けば目的のマッチョに通じる。ハンモはこれを『マッチョの法則』と名付けました。あとはマッチョの法則を実践していくのみ!」
「そ、そうか。しかしそりゃあ、マッチョが引っかかるだけに思うが……どうやって見分けるってんだ?」

 聞くおやっさん……よせばいいのに聞いてしまうおやっさんに、繁茂は一点の澄みもない瞳で答える。

「え? どうやって見分けるのかって? はぁ~、ハンモを誰だとお思いですか? 男の体なら服の上からでも丸裸みたいなもんよ!! だから男たちをガン見するよ! これは業務上必要な行為だからしょうがないよね!! ア゛ッ何か天啓が下りそォ~♪」

 聞くんじゃなかった。おやっさんは本気でそう思ったという。

「しかし競技性があり人が集まるとなれば、良くない企みが起こるのは必然でしょうか。放っておくともっと悪質な物を呼び寄せたりするかもしれません。それは気に入らないので、今の内から叩き潰さないといけませんね」
「ああ、その通りだ……頼むぜ!」

 全員繁茂みたいだったらどうしよう。そんな不安を吹き飛ばすオリーブの言葉に、おやっさんは全力でのっかっていくのだった。

●ダークプロテインズをおびき出せ

「あれとー、これも欲しいのですよ!」

 ちょっとワガママな女の子を装っているのは『にじいろ一番星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)。
 露店でおやつなどを買う……まあ、娘とはいかずとも妹ポジションだ。
 そしてもう1人は『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)。こちらはルシアの姉的ポジションだ。
 ちょっとワガママな妹に振り回されるエルシアのお財布は、当然のように少し寂しく……。
 そんなルシアとエルシアがいるのは、競技場の周りの露店。
 当然そこには違法ではない……競技場が胴元を務める合法な賭けのオッズ表が飾られている。

「足りない……」

 切なそうに、そう呟いてみるエルシア。そう、ここだけ見れば妹のワガママに付き合った結果、お小遣いが足りなくなったお姉ちゃんだ。実は「奴隷商に捕えられた仲間達を救う為に、手持ち資金×最大オッズの倍くらいの金額が要る」みたいな筋書きも用意していたのだが、か弱い女の子が1人より2人の方が引っかかる確率が高いのは間違いない。
 たとえエルシアとルシアの年齢差が47であろうと、姉妹なのだ。そしてそんな姉妹に今、油でテカる悪の手が迫ろうとしていた。

「そこのお母さん。娘さんの為にも一発デカく稼いでみないかい?」
「おか……」
「上手くいけば100倍200倍は当たり前。リスクもあるっちゃあるが……娘さんも大喜びさ!」
「むす……」

 この油、よく燃えるのでしょうか……燃やしてしまって構いませんよね……?
 そんな事を思わず考えてしまうエルシアであったが、グッとこらえる。
 元々荒事が苦手だから、チンピラを倒さずとも懐に入り込もうと考えた作戦なのだ。
 此処で燃やしてしまってはスッキリするだけだ。

「お母さん! 中々楽しそうでしてー!」

 上手く目的の相手が引っかかった事に気付いたルシアが演技の完成度を高めるべくエルシアの腕に絡みつく。

「こっちだぜ、お母さん。大丈夫、すげえ良い話だからよ!」

 そうしてエルシアとルシアはテカる男についていくが……この時点で、彼の末路は大体確定していたと言えるだろう。
 ちなみにだが、こうしている間にも百合子はチンピラに狙われていたりする。

「へっ、お嬢ちゃん。レイノルドの野郎の代わりにウマッチョダービーに出るみてえだが……悪い事は言わねえ。怪我する前にぺひゅん」

 百合子に絡んだチンピラが一撃で地面に沈み、白目をむく。

「ああ、やっぱり自分が手を出す隙はなかったでありますな……」
「守られるのって初めての経験かもしれぬのでちょっとドキドキであるな!」
「まあ、本番ではレースの邪魔をさせんようにしっかり守るでありますが……」

 倒れたチンピラに蹴りを入れながら、そんな会話を百合子とエッダがしていると……官憲の使う笛の音が聞こえてくる。

「野戦憲兵隊よ!! 駐屯兵から通報がってお姉様!?」
「おや、お勤めご苦労様であります」
「サイテー!! ナニしてるんですの⁉」
「蹴りでありますな。襲ってきたチンピラに」
「なんですって!? 確かに、そんなチンピラ顔!」

 ブリュンヒルデ・フロールリジがチンピラを引き起こしてビンタで目覚めさせようとしている間に百合子とエッダは餅は餅屋とばかりに居なくなってしまうのだが……それはまた、別の話である。

●襲撃から守り切れ

「百合子君が襲われたらしいね」
「ああ、さぞ恐ろしかっただろうな」
「チンピラも可哀想にね。同情はしないけど」
「……そうかもな」

 アッサリと言うマリアにレイノルドは頷いてしまう。
 衣装の仕立て直しも進む中、百合子を襲ったチンピラは見事に全滅。
 となれば、レイノルドをどうにかしようと考え始めるのもそろそろだろう。
 ならばと囮をかってでたレイノルドの心意気に応え、こうして外を歩いているのだが……。

「あちらから来てくれるのは好都合! 仲間達も目を光らせて捜索と警戒をしてくれている。悪いが奴らの目論見は全てご破算だ」
「ああ、流石にチンピラ共もそろそろ品切れだろう。背後の連中が出てくるのも時間の問題だ」
「そうだな。レースもいよいよ明日。となれば……仕掛けるのは当日を除けば、ここをおいて他にない」

 友人的な立ち位置で護衛しているシューヴェルト、そして離れた位置ではオリーブも護衛をしている。
 隙は無い。いつ襲われても問題はない。そして……。

「レイノルドォォ……お前も頑張ったみてえだが、それもここまでだぜ!」

 黒くテカテカ光るマッチョに、レイノルドは思わずチッと舌打ちしてしまう。

「お前が黒幕ってわけか……!」
「その通り! ダークプロテインズの幹部たる俺が直々にお前を再起不能に!?」
「やはりここにきたか……覚悟しろ!」
「うお……ぐはあ!?」

 シューヴェルトの一撃でアッサリ倒されたダークプロテインズ幹部に、マリアもシューヴェルト自身も……離れていたオリーブも思わず目を丸くする。
 幹部というには弱い……そう思ってしまったのだ。

「碌でもない事を企んでいた様ですが、年貢の納め時という奴です」

 ともかく、捕まえたことは間違いない。オリーブがそう告げると、幹部はへッと鼻で笑ってみせる。
 この余裕は何なのか。マリアは、少し脅してみようと考えつく。

「さて……誰の差し金でこんなことを? 好んで酷い目に遭うこともあるまい?」
「言わなきゃ殺すってか」
「命を奪う気はないから安心するといい……。けどね…死んだ方がマシ、と思わせる程度の「やり方」は知っているよ。でも可能ならそういうことはしたくない。あとは分かるね?」

 実際に拷問する気はない。ないが……そう告げるマリアに、幹部は余裕の表情を崩さない。

「いいとも。教えてやるよ……」

 そう言うと、ダークプロテインズの幹部は目を見開く。

「俺は幹部の中で最弱! そして数日前にうっかり招き入れた人妻と子供の2人のせいで、うちの組織は壊滅寸前だ! なんだあの人妻! とんでもねえ火力の技でうちの本拠地焼きやがったんだぞ!?」

 人妻……ではないが、マリア達はエルシアとルシアのコンビのことを思い出す。
 そういえばまだ帰ってきていないが、残党を追っているのだろう。

「そして俺はドMだ! さあ、拷問してみやがれ! だが俺の悦びを超えられると思ったら大間違いだ!」
「うわキモ」

 結局オリーブとシューヴェルトが引きずって官憲に引き渡したが……これで、あとは明日のレースを待つのみである。
 ちなみにエルシアとルシアはその日の夜に笑顔で戻ってきた。
 エルシア曰く「誰かを傷付ける事への罪悪感は不思議となかった」、ルシア曰く「他の方の迷惑にならないよう、真上からずどーん! でしてー!」であった。
 何を真上からズドーンしたのかは……怖くて、誰も聞けはしなかった。

●ウマッチョダービー

「頑張るのですよーー!!」

 ルシアの応援の声が、競技場の様々な声に負けない程に響く。
 そう、いよいよレース当日。百合子が走る日である。
 ちなみになぜかパドックまでエッダがついてきてもいる。

「あ、手綱とか引くでありますか? ヒンヒヒン」
「否。ここまでくれば……吾! 行くのみである!」
「……で、ありますな」

 鼓笛隊のような赤い服を纏った百合子はまさに威風堂々。
 一切の不安を感じさせぬその姿に、エッダはそのまま戻っていく。
 エッダが考えているのは、百合子のレースの完遂のみ。

「……随分と入れ込んでやがる。おかげで隙が無かったぜ。何故だ? 何故そんなにこだわる」
「なぜかって?」

 おそらく最後の1人のダークプロテインズ。その問いに、エッダは答える。

「かっこいいじゃないでありますか、彼女が勝ったら。その速さ、見習いたいでありますし。彼女の速さにはそう、信念がある。信念の強さを、証明してほしい」
「分かんねえな……それで?」
「故に――お覚悟なさいませ。自分は、その走りを見届ける者であります」

 そうしてエッダとダークプロテインズ最後の1人が殴り合う、その光景をほとんどの者が知らないままにレースは進んでいく。

「おおっと代理出走のユリコ、インコースを維持したまま走る! 先頭はユリコ譲らず、僅か後ろをフッキンワレスギが追う! 両社の差は僅か! だいぶ離れてカガヤクキョウキン、これは先頭争いは確定したか!?」

 ただ走っているわけではない。百合子はコースの研究も、ライバル選手の研究も怠ってはいない。
 先頭でレースの展開を引っ張る事で、後続を変化する速度で幻惑し消耗させる作戦も見事に決まっている。

「美少女の威信を示す為!」
「ぬ、ぬおおおおおおおお!」

「ここでユリコとフッキンワレスギ、互いにスパート……ユリコ、ここにきて爆発的な伸び! まだ伸びて……伸び……決まったあああああああ! 優勝はユリコ! 圧倒的差を見せつけ、ユリコ1位! マッチョネーム『ツインソーボー』の授与も決まりましたあああ!」

「わー! 百合子くーん!!!」
「やったな、百合子君!」
「みなさん! クラッカーの準備は大丈夫ですよ? それでは! せーのっ!」

 クラッカーの音が鳴り響き、百合子の勝利を祝福する声が響き渡る。
 それは、これ以上ないくらいに素晴らしい勝利で……繁茂が官憲に捕縛されたことを忘れるくらいには、素晴らしい勝利であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

コングラチュレーション!
見事ダークプロテインズを壊滅させました!

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