シナリオ詳細
氷結鏡面の罅
オープニング
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きゃらきゃらきゃら。
きゃらきゃらきゃら。
「凍った、凍った!」
「今年もきれい!」
鈴を鳴らすような笑い声を上げて、2人の精霊が湖の周囲を飛び回る。彼らの纏う光が周囲を踊って、湖面が反射でキラリと光った。
否――煌めいたのは湖面を凍らせた氷だ。まるで鏡のようなそれは空を反射し、精霊たちは空と空に挟まれて飛び回る。もう暫しすれば、この天然スケートリンクに気づいた人間たちも遊びに来るだろう。
「今年は何を作ろうか?」
「今年は何を生み出そうか?」
彼らが来るまでに、このスケートリンクを飾り立てておくのが精霊たちの恒例である。彼らが目にしたものを作ることが多いから、大抵は春に飛び回る蝶や夏に咲いていた野花であるのだが、精緻な氷の作り物に人間たちは大喜びだったのである。
「今年は動物にしよう」
「鹿やリス、兎も作ろうね」
作るものが決まったようで、精霊たちは頷きあうとそれぞれで別行動し始めた。片やはあちらへ、片やはこちらへ。互いが具体的にどこへどう作るかも示し合わせていないというのに、2人はバランスよく小さな氷像と飾りを作っていく。
――その矢先のことであった。
「キャー!」
精霊の片割れがあげた悲鳴にもう1人が振り返る。視界に映ったのは複数体の獣だ。鼻息の荒い獣たちの足元では今しがた作られたのだろう、兎の氷像『だったもの』が無残に砕かれていた。同時に視線へ気づいたのか獣の何体かが首を巡らせる。捕食者の瞳に精霊の体が竦んだが――。
「逃げて!!」
――片割れの声が精霊の体を動かした。
(助けなくちゃ、助けなくちゃ、助けなくちゃ)
そうしないとあの子が食べられてしまう。そう思うのに体はあちらへ向かってくれない。理由なんて明白だ。『立ち向かっても倒せない』から。
彼らは芸術的な魔法に秀でていたが、それだけだったのだ。
視界の端で囲まれていた片割れが高く飛び上がり、森の奥へ逃げていくのを捉える。
ああ、どうか、そのまま逃げ続けられますように。わたしもどうか、生き延びられますように!
●
「皆さん、寒いのは大丈夫ですか? 今回は深緑に行って欲しいのです!」
「精霊たちが騒めいている。『わるいもの』が出ているそうだ」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)が続く。曰く、深緑北部の湖周辺で魔獣がうろつき、魔力あるモノを食らわんとしているのだそうだ。通常の獣たちであれば冬眠する種も少なくないが、その必要がないほどに丈夫な類なのか――或いは、なんらかの理由で冬眠しそびれたか。
「魔獣の出ているあたり、とても綺麗な湖があるのです。冬にはスケートリンクになるし、精霊さんたちが素敵な飾り付けをしてくれるんだとか」
魔獣が出たとなれば迂闊に近づけはしない上、その湖だって魔獣に踏み荒らされてしまうかもしれない。
「魔力を求めているってことは、力が足りないってことじゃないかって思うのです」
「いずれにせよ野放ししておけば、少なからず深緑の幻想種も被害に遭うだろう。その前に討たねばならないな」
魔獣は群れて今も精霊たちを追いかけているという。どのようなルートを辿っているかもわからないが、それならばこちらへ向かってくるよう仕向ければ良い。魔力を感知すれば魔物もこちらへ来るのではないか――そんな予想からユリーカはあるアイテムを練達へ依頼したそうだ。
「これなのです。一瞬ですが魔力を拡散してくれる機械なのです!」
腕時計のような形をしたものが人数分。装着者の魔力を吸収・蓄積させて一度に放つのだと言う。吸収に時間がかかり、それを任意のタイミングで拡散しかできないというが、今回についてはそれで良いだろう。
「素敵な冬を迎えるためなのです。皆さん、よろしくお願いするのです!」
- 氷結鏡面の罅完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月28日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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はぁ、と吐く息が白く染まる。ぶるりと体を震わせた『森の善き友』錫蘭 ルフナ(p3p004350)はローレットで報告を待っているだろう情報屋に心の中で詫びた。
(ごめんねユリーカさん、寒いのダメです)
普段の恰好だと結構足とか出しちゃってるけれど。そして深緑とは縁のあるハーモニアという種族ではあるけども。それでも寒さの耐性は個人差があるのである。
「このまま湖畔へ向かうんだっけ?」
氷の張った場所へ行くなんて正気の沙汰じゃないぞ――そう思いながら仲間へ確認したルフナへ『神威の星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は「いや」と頭を振る。そこまで向かう必要もないだろう。精霊たちを今回のターゲットが追い回しているのであれば、湖にはもういないだろうから。
「木が少なくて、戦いやすい場所がいいな」
「そうだな。氷湖の外側で探そう」
「……ってことは、やっぱりそれなりに近づくの? 凍え死にそう」
『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)と『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の言葉に小さく口を尖らせるルフナだが、その足は躊躇なく――心の中では躊躇いの言葉を吐いているかもしれないが――ローレットで教えられた湖の方角へ向かい始める。どれだけ寒かろうと、オーダーをこなすのがイレギュラーずの仕事である。それに、深緑で燃え盛るほどの炎を操る魔獣がうろついているなんて冗談じゃない。下手をしたら大火事だ。
「魔力の溜まり具合はどうだ」
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)がウィリアムや錬、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)へ魔力放出機の状態を問う。イナリは腕へ装着した機械のメーターを確認した。
「もう少し入れたいのだけれど、それまでにメーターが上限まで振り切れそうなのよね」
「ふむ。ならそこまでしか入らない、ということだろう」
フレイムタンの言葉に一同は顔を見合わせる。ターゲットを確実に引き付けるため、2回に分けて放出する要諦だった。1回目は早く精霊たちから注意を逸らすため。そして2回目はより確実に引き付けるため。しかし1人あたり同量の魔力しか込められないのであれば難しいだろうか?
「元々人数は後半のほうが多いのですし、引き付けきれなかったらさらに人数を増やして試してみては?」
「そうですね。……この辺りなら戦いやすそうです」
『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)に頷いた『Dramaturgy』月錆 牧(p3p008765)は立ち止まって辺りを見回す。少し開けた場所には誰も踏み荒らしていない雪が積もっており、いつかの住処を想起させた。
(あそこはこんな風に……いえ、最低でも腰のあたりまで積もりましたか)
なんて思い出してから牧は小さく息を吐き出した。さあ、過去を懐かしむのはここまで。仕事の時間である。
「まだ放出に時間がかかりそうだから、何人か手伝ってくれ」
錬はざくざくと雪の中を進んでいくと、術符を用いていばらのバリケードを作り出した。それを一か所に立てると、周りへと雪を固め始める。本来ならば燃えぬよう土をかぶせたかったところだが、この状況では満足いく材料が『時間内に』手に入るとも思いにくい。ならば使えるものを使ってしまおうという魂胆である。雪はやがて解けてしまうだろうが、それでも一気に押し寄せるような事態はいくらか回避できるはずだ。
「なんだか、雪合戦の壁みたい」
コゼットも手伝ってバリケードを設営する。錬の手際の良さもあり、魔力放出機のメーターが振り切れそうになるころには完成した。同タイミングでどこかに足を運んでいたルフナが帰ってくる。
「追いかけ回されてる精霊たち、北の方へ行ったみたいだよ」
「あちらの方向ね」
索敵に、と少し離れた木々たちから情報を得て戻ってきたルフナの言葉からイナリは視線を移す。精霊たちもめちゃくちゃに逃げ回っているだろうから大まかな方角だろうが、それでも情報があるのとないのでは大違いである。
「それじゃあいくぞ」
ウィリアムの掛け声でイナリと錬、そしてルフナは魔力を放出させる。その感触とともに『誓いの傷』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)はそっと息を吸い込んだ。
(ここの空気、すごく綺麗)
深緑の木々や動物たちの力だろう。澄んだ空気は美味しく、どの季節だって穏やかに過ごせそうだ。なればこそ――そこへ踏み込み、踏み荒らす相手を放置などしておけない。例え声が出なくたって、精霊のためにしてあげられる一番のことは変わりないのだ。
放出しきるとすかさずリンディス、錬、ウィリアムの3人で仲間同士の魔力回復を促進させる。その間にも過敏な感覚でルフナが他の存在をとらえた。
「もう少しかかりそうだけど……ああ、精霊たちも向かってきているみたいだ」
ルフナの耳には雪を踏みしめ、それなりのスピードで向かってくる複数の足音。そして時折響く叫び声が聞こえていた。
「大丈夫、そのまま逃げてくださいねー!」
リンディスは味方がここにいるのだと励ますように声をあげ、自らの魔力放出機を見る。メーター限界値。もうそろそろ良いだろう。
「フレイムタンさんも、準備はいい?」
「ああ。いつでも問題ない」
フレイムタンもメーターを確認し、コゼットへ頷く。やがてルフナの目が木々の合間から群れと、逃げてくる精霊たちを視認した。
「こちらへ! わたしたちの後ろへと逃げてください!」
牧の声に精霊たちも気づいたようだ。そこへコゼットとアイラ、フレイムタン、リンディスと牧が一斉に魔力を放つ。
「こっちにこーい……!」
コゼットが呼びかけ、アイラが蝶を精霊たちへ飛ばす。味方なのだと、怖くないのだと伝えるために。精霊たちがイレギュラーズの後ろまで飛んでいき、その射線を遮るようにウィリアムは立ちはだかった。
「――悪いな、喰わせる訳にはいかないんだ」
彼の言葉とともに牧が敵陣へ突っ込み、間髪入れず名乗り上げる。魔力を削ればそれだけ群がってくるだろうが、時間は惜しい。
「彼らよりわたしの方がたっぷり魔力を持っていますよ!」
敵の――イグニたちの視線が牧へ注がれる。美味しそうな魔力を持った者。そう、先程のちっこい生き物よりも!
そこへ雪のように色の薄い剣を手にしたアイラが肉薄する。炎の一族に生まれながら、氷の妖精に祝福を受けてしまった忌み子――されどそうでなければイグニたちの炎に耐える事も、異世界における氷の精霊を愛することもなかっただろう。
出自も、血筋も、傷さえも。全てが今の『ボク』を作っている。
(氷の精霊さんなら愛せる。ううん、愛してみせる)
夜闇に咲く雪月花のように目を奪う壱の斬撃。同時にぶわりと魔力の蝶が膨らむ。彼女から広がる様は、まるで彼女自身の想いの大きさを表すように。
『――そのために、ボクは』
『ボクが立ち止まることを』
『考えない!』
イグニたちの傷口から花が咲き、命の一端を喰らう。蝶たちはその花へ留まり、ほろりと花弁が落ちれば再び舞い上がった。その頭上でウィリアムは星の眩い瞬きを顕現させる。天へと陣を描き、仲間を援護することも忘れない。
(精霊たちは……逃げたかな)
一緒に行動することを提案したかったが仕方がない。自らを強化したルフナは、自身の背へ光の翼を生み出す。飛ぶためのものではない。これは――味方を癒すための羽根となり、敵を倒すための刃となる。
「こんなところで炎を吐かないでくれる?」
炎を吐き出したイグニへそれをぶつけると、槍を手にしたイナリが肉薄して連続攻撃をしかける。
「フフ、フフフフフ、この犬の肉は美味しいのかしらね?」
「こいつ……食べられるの?」
炎を纏った魔獣たちにルフナは胡乱な声を出すが、その間にも苛烈なイナリの畳み掛けにイグニは命を刈り取られていった。
「さあ、次よ。お残しせず綺麗に平らげてあげるわ!!」
目を輝かせる彼女からはどことなく狂気めいたものまで感じられる。身体強化による何かしらの要因か――ともあれ、彼女は次の獲物(イグニ)へ向かっていった。
戦いの中、乱撃でイグニたちの体力を削っていたコゼットは魔力の底をついたことを知る。
(うまく、引きつけられているみたい)
ほんの少し前あたりから、こちらにも注意が向いていることは気づいていた。けれどより確実にとコゼットは魔力を徹底的に削ったのだ。
(氷の像みたいし、スケートもしたいし、精霊さんたちと遊びたい……! そのために、がんばる!)
彼女を捕らえ、傷つけるならそれ相応の技量がいる。どこからでもかかってこいとコゼットはイグニたちに向かい合った。
「全く、素直に冬眠していれば良かったものを」
キン、と澄んだ音と共に無数の金属槍が形成される。それは錬が操るままにイグニたちへと降り注いだ。フレイムタンの炎がその間を舐めていく。
イグニの数もだいぶ減ったが、イレギュラーズとて無傷ではない。その中で回復の主戦力たるリンディスは素早い判断のもと支援を行なっていた。
(負けるわけにはいきません)
ここを突破されたなら、彼らは再び精霊たちを追いかけ回すことだろう。冬を彩る彼らを犠牲にするわけにはいかない。
パンドラの奇跡によりかの牙を耐え抜いた牧は、すぐさま迫る爪に息を呑む。瞬間、リンディスが前に出てそれを受けた。
「大丈夫、立て直します」
力強い言葉。牧は頷くと目の前のイグニを袈裟懸けに切り捨てた。
『お腹がすいていても、傷つけちゃだめだよ、イグニ』
『美味しいご飯だって持ってきてあげる』
イグニたちの間を蝶が乱舞する。けれどそれを通したアイラの呼びかけも、気が立った彼らには届いていない。
(……くやしい。けれど、)
精霊たちを傷つけさせるわけにはいかないから――取捨選択を、しなくちゃ。
●
『ごめんね』
アイラの蝶が息絶えたイグニに止まる。叶うのならば平和的解決が良かったけれど、彼女とってイグニより精霊たちのほうが大切だから。
「精霊さんたち、無事に逃げられたかな……?」
コゼットは視線を巡らせる。激しく戦っていたこともあって、周囲に生き物の姿はない。追いかけられていたという精霊もたちも、生き物たちと同様にどこかで息を潜めているのだろうか?
「隠れているとしたら……洞窟、とか?」
「それだとイグニに見つかったとき、逃げ場がないんじゃないか」
リンディスの言葉に首を捻ったウィリアムは、暫し考えて湖はどうだと仲間たちへ問うてみる。スケートができるほどの場所であればそれなりの広さがあるのだろうから見張らしも良いはずだ。敵の接近に気付くのも早いだろう。精霊にそこまで思い至るほどの知があるのかは定かでないが。
「行ってみるの、いいと思う」
『もしかしたら』
『氷像を、つくっているかも!』
コゼットとアイラが賛成したことを受け、一同はひとまず件の湖へ向かってみることにした。ルフナは相変わらず寒そうにしているけれど――やはり、安否は気になるのだろう。
「氷像は見たことがありませんね」
どんなものなのだろうと牧は目的地へ向かいながら首を傾げる。言葉の意味を考えれば、そのまま”氷の像”なのだろうが。氷の塊が鎮座しているということだろうか。
森を抜けた一同は綺麗に氷の張られた湖を視界へ収める。静謐な風景の中、アイラはきらりと光った精霊の輝きを見つけた。
『いた』
『湖のまんなかに』
彼女から拡散していく魔力の蝶に、一同は彼女の見た方へ視線を向ける。同時に相手もイレギュラーズたちへ気づいたらしく、慌てた様子ですっ飛んできた。
「気を付けて!」
「怖いものがいるの」
「大丈夫ですよ。怖いものは退治しました」
リンディスの言葉に2人の精霊は顔を見合わせる。本当に? と言いたげな表情で一同を見る彼らに「本当だ」と返したのはフレイムタンだ。
「イグニは我らで討伐した。一先ずの心配はないだろう」
「とは言っても、もう居ないとは限らないからな。重々気を付けてくれよ?」
ウィリアムの念押しへ神妙深く頷いた精霊たちは、しかして次の瞬間ぱっと表情を綻ばせた。
「それなら」
「つくりなおし、しましょう!」
湖にあるのは作られていたのであろう氷像の残骸。壊される前のかたちはわからないが、元通りにするのか新しいデザインで作るのかは精霊たち次第だ。
「あ、ちょっと待って。怪我しているじゃない」
だがそれを止めたイナリは、彼らのうち片割れの体に傷があることに気付く。この精霊たちに本当の――血が出るような――肉体があるのかわからないが、怪我は怪我にかわりないだろう。
「本当ですね。治療しましょうか」
リンディスは魔導書を取りだして傷を治療する。どうやらイグニのものではなく、逃げる際に枝か何かにひっかけてできた傷のようだ。
「ありがとう、大きなヒト!」
嬉しそうにくるりと空中で飛び回った精霊に、何人かはおずおずと「氷像作りを手伝ってもいいか」と問い、また何人かは「氷像作りを見せてもらってもいいか」と問う。精霊たちはにっこりと笑った。
「命の恩人だもの」
「どうぞ、ごじゆうに!」
精霊たちに促されるまま、イレギュラーズは思い思いに湖での時間を過ごす。精霊の力で作り上げられる氷像を牧はこうやってできるのかと眺める。ただの氷の塊ではない。その姿は奇しくも、彼女が身に纏う着物にある花のようだ。
「なあ、氷の塊は出せるのか?」
「もちろん!」
「好きにつくって!」
錬の言葉に精霊たちが大きな氷の塊を作り上げる。おお、と感嘆の声をあげた錬は張り切って道具を取り出した。これのために依頼へ参加したまであるのだ、いいものを作らねば。この大きさならばきっと、カムイグラでお目にかかった黄泉津瑞神だって迫力満点に仕上がることだろう!
「おなか、空かない?」
次々と氷像を作り出す精霊たちを呼び止めたコゼットは、お気に入りのキャンディを差し出した。色々な味のキャンディが入った詰め合わせはいつ食べたって幸せになれるのだ。
「わあ、ありがとう!」
「春の味がする!」
受け取った精霊たちはすぐさまキャンディを口の中へ放り込む。小さい菓子と言えど、精霊たちの体からすれば小さいとは言いがたい。暫くはもごもごと口を動かしていたものの、やがてちょうど良い大きさになったようだ。
『あれ?』
次々と出来上がっていく氷像をわくわくと眺めていたアイラは、とある氷像の前で立ち止まる。決して大きくはない作品だ。けれども可憐で綺麗な蝶の群れは、まるで――。
「まあ、これだろうな」
『お星師さま』
アイラの蝶を指へ止まらせたウィリアムは、その姿と氷像を比べ見る。彼女だけではなく、他にもモチーフにされている者はいるようだ。
(冬に訪れる精霊さんの贈り物……綺麗ですね)
リンディスは天然スケートリンク周辺にできあがった氷像を見てほう、と息を漏らす。その傍らでフレイムタンはルフナに視線を向けた。
「大丈夫か?」
「寒いに決まってるじゃん。……でも」
ルフナの視線もまた、氷像のほうへ。その視線はまるで『悪くない』と言っているようだった。
「ねえ、一緒に遊びましょ」
「あたしも、遊びたい。スケートとか」
イナリとコゼットの誘いに精霊が喜んでと飛んでいく。元々ヒトを好ましいと思う性質なのだろう。
そうして遊び、また氷像を楽しんだ彼らはイグニの討伐をローレットへ報告したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
今年もスカートが無事できそうです。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●成功条件
イグニの群れの討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。
●イグニ×20
火を纏った狼のような魔獣です。纏う火は何かを燃やしたりはしないようですが、攻撃手段として放つ火は燃えます。
魔力を欲しているためか非常に獰猛です。そして腹も空かせているようです。APの少ない者から狙います。
炎ノ牙:吐き出した炎が獣の牙を形取ります。【火炎】【喪失】
爪ノ痕:彼らの攻撃は色々なものを奪い去るでしょう。【Mアタック100】【HA吸収50】
●精霊×2
OPで登場した精霊です。小人のような姿で、飛行能力を持っています。戦闘力はなく、近くの凍った湖に氷像を作りに来たところを狙われました。
未だ追いかけ回されているようですが、イレギュラーズがうまく引きつけられたなら逃げられます。
その後も元気であれば、再び氷像作りに励むでしょう。
●魔力放出携帯機
腕時計のような形をした機械です。時計盤に当たる場所にはメーターがあり、どれだけ装着者から魔力(AP)を吸収したか表示されます。付いているボタンを押すと魔力が放出・拡散されます。
人数分配布されてはいますが、狼を引きつけるのに何人分必要かは不明です。また、1回放出してしまうと再放出に時間がかかります。
●友軍
『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)
精霊種の青年です。精霊を助けるため、皆さんに同行します。
指示があれば従いますが、特になければ魔力放出機を使いますし魔獣には近接アタッカーとして参戦します。
●ご挨拶
愁ともうします。
深緑で暴れる魔獣を大人しくさせましょう!
ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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