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シナリオ詳細

<マジ卍体育祭2020>心は投げ入れるもの~ハートの玉入れ~

完了

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●平たく言うと玉入れです
「先輩! 僕の心を受け取ってください!」
 高らかな告白と共に少年が剛速球のモーションで投げたのは、砂にまみれた真っ赤なハート。先輩と呼ばれたクールビューティはしかし、目にも留まらぬ速さの投球を軽やかに躱し、その拍子に胸元へ垂れた美しい髪を、はらりと背へ払った。
「何言ってるの?」
 気味悪そうに先輩は告げる。
「届けるつもりのない心なんて、いらないわ」
「ぐ、ぐうう、そんな!」
 崩れ落ちた少年が地面を叩けば、一部始終を目撃した年下の生徒たちから、がんばれがんばれ、と無邪気な声援が募る。気恥ずかしさに少年がうろたえていると、あどけなさを残す小学生がひとり、堂々と歩み出て。
「せんぱーい、ぼくもこころあげるー!」
 言い終えるや放り投げたのは、もちろんハート。しかし先ほどの少年と異なり青いハートだ。先輩と呼ばれた女子生徒は、幼い子からの拙い投球を捉えると、首から提げたカゴへ綺麗にハートが入るよう距離を整えた。
 驚いたのは、先ほどまで先輩へ心を投げていた少年だ。
 眼球が転げ落ちんばかりに見開く彼をよそに、先輩はハートの持ち主の小学生へ薄い笑みを傾けて。
「えらいわ。よく投げられたわね」
「えへへ、やったあ!」
 褒められて上機嫌になった小学生は、次なるハートを求め再びグラウンドを駆け回る。
「ど、どうして……」
 先輩のカゴに、自らのハートは触れることすら叶わなかった。なのにあの小学生は、先輩から進んで心を受け入れているようで。その事実に、少年はがっくりと項垂れることしかできなかった。
 ――これでも、立派な競技である。

●競技概要
「次の競技では、ハートを投げあいましょう」
 音呂木・ひよのの口から聞こえてきた言葉に、驚いたように学生諸氏の視線が集う。当人は至って真面目な顔のまま、体育祭のプリントと思しき紙へ目を落として話を続ける。
「いわゆる玉入れです。玉はハートの形をしていて、カゴは皆さんの胸にあります」
「胸?」
 玉入れといえば、高く掲げられたカゴへ懸命に放り投げる、首が痛くなりそうな競技を連想する者もいるだろう。練達出身者や、練達の雰囲気に近い世界から召喚された旅人などは、アレだよなアレ、と既に光景を脳裏へ描いていた。
 しかしひよの曰く、投げるのはハート型の玉で、投げ入れる先はそれぞれの胸にあるという。カゴは小振りだが装着の仕方は様々で、単純に首から提げるものもあれば、リュックのようにショルダーが付いた胸元で固定できるものもある。いずれにせよ玉を投げたり拾う際に邪魔になりそうだが、それも競技の一環だとひよのは言った。
 つまり、入った玉がカゴから零れないよう気をつける必要も出てくるし、投げ入れるのにもコツがいる。
「相手の顔に当てないよう、それか当たっても痛くないように投げるのが大事ですから」
 せっかくの体育祭で、救護班の世話になりたい人などいないだろう。たぶん。
「ハートを投げる、ということからちょっとした想いを伝え合う場にもなっているようで」
 自分の心を伝え、届けるために投げつけ――もとい投げ入れる。恋に忙しい学生に限らず、感謝の念をぶつけたり、好敵手と対峙するなど、あらゆる『想い』を篭めて投げられるハートの玉。それがこの競技中は空を舞い続け、または地に虚しく転がっていく。
 最終的には、カゴに入っている玉の数が多いチームの勝利となる。しかし競技の性質上、とにかく意中の相手へハートを届けたがる人や、すべての玉を拒む者など、割りとやりたい放題らしい。そういう楽しみ方もあるのだ。
「うまく入るといいですね。いってらっしゃい」
 ひよのからの静かな応援を最後に、教師も学生もこぞって玉入れの準備に向かった。

GMコメント

●目標
 ハートを投げ合って入れ合って勝負!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 玉が顔面に当たったりはするかもしれませんが、想定外の事態は起こりません。

●概要
 チームは赤と青の二つ。
 自分のチームカラーの玉をチームメイトのカゴへ投げ入れ、その数を競います。
 ……が、勝負そのものよりもハートを投げる行為に熱中する人が多いようです。

●カゴについて
 カゴが設置してある場所は、台ではありません。
 各参加者が胸の辺りに提げた、小振りのカゴ……それがハートを入れるべき所。
 顔に当てないよう優しく調整して、誰かの胸元へハートを届けましょう。
 勢い余って顔面に直撃するかもしれませんが、そういう愛もあると思います。
 目の前に立って直接カゴへ入れるのはNGです。必ず離れたところから投げてね。

●ハート(玉)について
 ウレタン製のやわらかいスポンジボール。形はハート。
 予め数個のハートを所持した状態でスタートします。
 全部投げてしまったら、その辺に転がっているのを拾いましょう。
 参加者は全員カゴが胸元にあるので、落ちた玉はちょっと拾いにくいですよ。

●おともだちと一緒に動きたい方へ
 ご一緒する方の【名前とID】または【グループ名やコンビ名】をご記入ください。
 一緒に動く方は、ご希望がない限り同じチームになります。

 それでは、たくさん投げ合ってくださいね!

  • <マジ卍体育祭2020>心は投げ入れるもの~ハートの玉入れ~完了
  • GM名棟方ろか
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年11月26日 22時05分
  • 参加人数12/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 12 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(12人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
雨紅(p3p008287)
愛星
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
伽藍ノ 虚(p3p009208)
     

リプレイ


 光に溶けた青が、若者たちの青春を応援するように色を深めていく。
 そんな空へと鳴り響くスターターピストルの破裂音――心を投げ渡し、胸へと届ける玉入れ競技がいよいよ始まった。
 握り心地の良いハートの玉を手に『精霊の旅人』伏見 行人(p3p000858)は眼を眇める。
「さあて、やるかァ」
 そんな彼と足並み揃えたのは『貴方の為の王子様』ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)だ。
 形に想いを篭める。競技の素晴らしさがアントワーヌの掌へ熱を点す。
「むほー!」
 大空にこだました、一つの奇声。
「ひよの殿の応援! これは気合いが入らざるを得ませぬ!」
 素振りをしつつ『良い夢見ろよ!』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)は、チラッチラッとひよのがいるであろう方角を見て夢想した。
 しかし、やいのやいのと喧騒で溢れているというのに、どういうことかジョーイの胸は空きっぱなしだ。
 からっぽな胸もあれば、逆もある。
「話は分かった」
 澄ました顔で立つ『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)の元を、一陣の風が吹き抜ける。
 美しきスマイル。儚く悲しげな笑みがそこに咲く。
「さぁ、みんなボクに狂う……」
 言い終えることも叶わず、セレマの後頭部に何処から飛んできたのか不意打ちの一球が入る。
 綺麗な姿勢のまま倒れたセレマもすぐに立ち上がり、ふうと一息つく。きらりと光る汗も美少年の権利だ。
「ボクが美少年じゃなかったら危な……」
「受け取るがいい!」
 続けてハートを送ったのは『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ。
「キミもいたのかい?」
 よろよろと起き上がりながらセレマが尋ねると、汰磨羈は頬を少しもたげて。
「当然だ。何故なら……」
 一カメ。
「私の心は!」
 二カメ。
「永遠の17歳だからだ!」
 三カメ。
「観客席を巻き込んでいる……だと……?」
 カメラを回す父兄が、汰磨羈のワンシーンを収めてくれた。
 各方位から捉えた汰磨羈の写真や映像は良きものだぞ。(※本人の許可なく撮って配布してはいけません)
 応援団長のごとく腕を組み、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は競技に参加した皆へ宣言する。
「くらえーー!!」
 白百合清楚殺戮投法により、気合い漲るストレートがセレマを襲う。前触れなく崩れ落ちるセレマに場は騒然とする。
「死んだか!?」
 やったか!? と同じ調子で百合子が叫ぶも、成立したフラグはもちろんセレマをすっくと立ち上がらせた。
「おかしいな、なんでこの競技は美少年の参加を想定してな……」
 直撃、二度目の攻撃が彼へ飛んできた。起き上がりこぼしの如く、美少年は数々の玉に晒される。もちろん百合子の一球も含めて。
「いやいや曲がりなりにもスポンジだぞ?」
 ふに、と汰磨羈がハートを指で押す。柔い。
「さあそこの皆々様も! 吾輩の胸、空いてますぞ?」
 美少年と美少女の対決へ割り込もうとしたジョーイだが、ほぼ同時に投げつけられた複数のハートにより校庭へ沈む。
 籠はまだ、空っぽだ。


 すらり佇む『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は、行き交うハートに口端を上げていた。青春という概念どころか心も、雨紅には未だ理解の及ばぬもの。だからこそ体験することは大事だろうと意気込んだどころへ、鳴り響く声。
「うまく投げられないならハンモにお任せだよ!」
 胸を張ればムキムキと音がしそうな『神ではない誰か』金枝 繁茂(p3p008917)が、生徒たちの中心で想いを叫ぶ。ムキムキと鳴っているのはどちらかというと籠の方だ。繁茂の胸筋で固定された籠は、決して揺らがない。だからこそ良い的となる。
「では一つ、練習のお相手願いましょう」
 細く笑ってみせてから、雨紅は投げた。狙いを過たず、その一球は籠の縁にぶつかることなく入る。
「綺麗に入った! すごーい!」
 バンザイの後、繁茂の大きな手による盛大に拍手が響く。
「もっといっぱい投げて投げて!」
「なら、コレを喰らって立ってられるかぁ?」
 希望ヶ浜において絶好調な行人の口振りは、玉にも乗る。渾身の投球は狙ったのかたまたまか繁茂の胸筋に弾かれた。
「おっと悪いね、玉入れは経験がなくてな。いやあ投げ慣れないもんだぜ」
 いけしゃあしゃあと言ってのけた行人に、がんばれー、と精一杯の応援を腹から出した繁茂の声が轟く。
「な、なんだ?」
 そこへ突如として湧いた声援――よくよく聞いてみるとブーイングだ。
 驚く繁茂や雨紅たちの視界へ、他の生徒に追い回されていた『     』伽藍ノ 虚(p3p009208)が飛び込んで来た。ギフトにより一般生徒から与えられた想いで、虚のは胸はいっぱいだ。そしてイレギュラーズの輪へ混ざる直前、無念にも彼は剛速球を喰らい、顔から地面へ倒れる。
 転んだ拍子にぐるんと背へ回った籠から、次々と玉が零れていく。
「救護班、救護班はまだかー!」
 行人の掛け声を、虚はぼんやり聞いていた。
「起き上がれますか? 怪我は……なさそうですが」
 案じた雨紅にも、虚は悟りを開いた面差しで横たわったまま。
「いつものことです……ハートが好意とイコールになる方程式など、自分にはありませんから……」
「しっかりして!」
 震える繁茂の呼び声に、虚は眦を和らげ、手持ちのハートを差し出す。
「自分の分まで……どうか……」
「寝ないで! 寝たら死ぬよ!」
 それは雪山の場合なのでは、と言おうとした雨紅の声を遮るように、後方から大音声が届く。
「死ぬのはこの美少年と相場が決まっているのである!」
「何度でも蘇るさ!」
 百合子とセレマの掛け合いだ。死ぬ、というワードに反応したらしい。
「これも青春、というものですね」
「うむ、実に青春だな」
 静かに紡いだ雨紅の言葉に、す、と横から汰磨羈が言葉を入れてきた。
 あらゆる想いが飛び交うのを見てきた雨紅は、しみじみ思う。
「本で読んだ範囲でしか知らないのですが、実際はこうしたやりとりを経て絆を紡いでいくのでしょうね」
「ハートの玉入れに相応しい考え方だな」
 あの二人もある意味、この競技に相応しい思考なのかもしれない。
 そんなことを思いながら、汰磨羈は雨紅の籠にもそっとハートを放り込んだ。


「私ね、体育祭って初めて!」
 声も足も弾ませて『神鳴る鮮紅』マリア・レイシス(p3p006685)が微笑む。
「あら、マリィもですのね?」
 思いがけない共通点に『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は澄んだ緑を優しく揺らす。
「初めて同士、助け合って頑張って勝ちましょうねっ!」
 スポーツマンシップに則った一言を傾けながらも、帯びた緊張を解そうとヴァレーリヤはむにむにとハートの玉をいじる。
 ――間違いなく、相手のことは好きで。
 彼女と変わらぬ悩みを、二人して持ち合わせている。多くの言葉を知っているはずなのに。多くの意味を理解しているはずなのに。二人の胸裡でこびりつくいた感情は、ずっとずっと『確かな』形を持たぬまま。
 不意にブンブンとかぶりを振って、マリアがハートをぎゅっと手の平で覆う。
「いくよ! ヴァリューシャ!」
 それは今から届けるという、マリアなりの合図。
「えっとね……いつも一緒に居てくれてありがとう! 君が大切で、大好き!」
 一投目は、僅かな恥じらいを含みながら。
「これからもずっと、ずっと一緒に居てね!」
 二投目は破裂せんばかりに全力投球――ではなく、最初と同じで弧を描くようにぽおんと放った。
 ぽふぽふと籠へ落ちていく玉を見て、ヴァレーリヤは瞠目する。
 その瞬間、縺れていた感情がするすると解けていく。ふふ、と意識せず笑いを零してしまったぐらいに。
「選んでくれて有難う、マリィ」
 だからその場で返す。素直に、感じたままを。
「貴女の明るさと優しさにいつも救われていて、私にとって貴女は……一緒にいるだけで楽しくて癒やされる……」
 蘇ってきたのはマリアと築いた数々の思い出。
 ハート越しに見たマリアの、少しきょとんとした表情にヴァレーリヤもふくりと頬が緩んでしまう。
「大切な存在でございますわ。だから……これからも宜しくね?」
 最後には翳していたハートを、マリアの胸へ送り届ける。今の、紛うことなき本心として。


 アントワーヌの投球フォームは手本のように流麗だ。大振り過ぎず地味過ぎず、行人の元へ一球入魂が送り込まれる。
「君の傍に居るとあったかくてとても落ち着くんだ」
「あったかい?」
 行人は片眉をあげ、次に何も持たぬ手をひらりと掲げる。暗に示した彼へ、アントワーヌも思わず吐息で笑う。
(手の温度だけの話ではないんだが、なんだろうね)
 明確な理由を模れぬまま、アントワーヌは彼の生む陽溜まりへもう一球投げつけた。そして。
「さぁ、行人君。私は此処だよ、届くかい?」
 ベルトでしかと固定したアントワーヌの籠は、ブレない。
 これまでアントワーヌへ投げずにいた行人は漸く一玉、彼女へ届ける。否、たたらを踏んでアントワーヌが受け取りに云った。放られた球の軌道も逸れなかったため、籠へ入れるのは容易く。
「わかってるとは思うが……」
 今し方、伝えられた言葉への返事を込めて。
「嫌っちゃいないぜ、アントワーヌ。その玉を受け止めて欲しかったくらいにはな」
 両者の間に漂う空気は、独特の色でグラウンドを転がっていく。ささやかな砂塵に塗れる彼らをよそに、離れた場所では。
「んほおおお! 初のハートをがっちりキャッチしましたぞ!」
 キャッチというより、生徒から生徒へ繋がる心を横取りした形でジョーイが間に入っていた。しかもせっかく入ったのにわざわざ籠から玉を取り出して、観客席を振り返る。
 どうですひよの殿! 華麗なる妙技をご覧に入れてさしあげましたぞ! きゃー! ジョーイさんすっごーい! 素敵ー! かっこいいー! むほほそんなそんな褒めすぎですぞ!
「あれも青春……でしょうか?」
 妄想真っ只中のジョーイという衝撃の光景を目の当たりにして、遠くで雨紅が繁茂へ尋ねる。
「よくわからないけど、元気なら全部ぶぶいのVだよ!」
「うむ、青春に違いない」
 そして汰磨羈も連ね、迷える若者を導いた後、虚を運んでいく救護班を一瞥する。
「メディックを呼……いや、触れてはならない予感がするな」

 こうしてハートを届け合う玉入れは、いつのまにか赤組の勝利で無事に終わった。
 無事ったら無事なのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 いくつもの想いを届け、届けられ、ぶつけ、ぶつけられた玉入れは無事終了しました。
 皆様にとって、良い想いのぶつけあいとなれましたら、幸いです。

 ご参加いただき、誠にありがとうございました!!(ハートをぶん投げる!)

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