シナリオ詳細
姦し娘、酒と記憶を取引するのこと
オープニング
●誰もこうなるって教えなかったからこうなった
鉄帝の夜は遅い。
毎晩のことながら、鉄の肝臓を自慢してるのかってレベルで野郎共が火の付きそうな酒を煽りあい押し付け合い、酒場でマウントを取り合うからだ。
だが、そんな彼らであっても触れてはいけない連中というのはいる。というか、触れられないよ、と言ったほうが正しいだろうか?
「うぇーい、今晩も沢山飲みますわよ!」
すっかり出来上がって酒瓶を振り上げるヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。彼女に絡み、絡まれて頭をどっせいされて昏倒した者は数しれず。殴った瞬間にパンドラが増えるような音が聞こえたなんて恐ろしい逸話が残っているのは、彼女がイレギュラーズだからだろう。
「ヴィーシャはいつも飲みすぎだから控えるであります。ですのでこのアルコールはこちらで処分しまぐびーーーー」
エッダ・フロールリジ (p3p006270)もヴァレーリヤ同様、鉄帝出身ではあるが騎士(メイド)などと名乗っている彼女がマトモであるかというと議論百出で、酒に関しては五十歩百歩ではないかともとみに囁かれている。
「そうよぉ、エッダちゃんもヴァレーリヤちゃんも正体なくしすぎよぉ? これは私が飲んでおくわぁ!」
そしてアーリア・スピリッツ (p3p004400)を含めた3名は、ローレットの内外にその名を轟かす「アルハラモンスター」なのである。
彼女らの酒の強さは別格である、ということはない。彼女らの上を行くものを見れば普通にワクだザルだが結構いるのでそれはいい。
だが、彼女らはそのハラスメント行為の過激さが別格なのである。兎にも角にも、飲みの席で一緒になったら潰されるか潰し切るかぐらいの選択肢がないとすら言われている。事実、宴会で潰された者は数しれないとまで言われているのだ。
「おらーあなた達も飲み足りないですわよ! コップが! 乾いてますわー!」
「自分たちが注いだ酒が飲めないでありますか。では皆さんお手を拝借」
ヴァレーリヤの檄に腰が引けた1人に、エッダは錠剤を渡して回る。飲めと。酒と一緒に。
「なあにラムネ剤であります。ちょっと甘くなってお酒のまわりが早くなるだけでありますよ」
思えば、同席者達はこの時点で疑うべきだったのだ。
皆のもうぜ、と盃を掲げたエッダのノリは圧がすごく断れない。何かの折でヴァレーリヤが無理やり口に錠剤を押し込む。そしてアーリアはセクシーハプニングのついでに彼らの手にある錠剤を口に(偶然)叩き込んで回る。何もかも遅かったというのなら、この酒宴につきあわされたことを後悔すべきだったのだ。
●でもここまでやるって誰も思わないじゃん?
「うう……頭いてぇですわ……」
「エッダちゃあん、皆に何飲ませたのぉ……?」
「自分が配ったのはなんの変哲もないラムネであります、本当に……あれは偽薬効果を狙ったラム」
ネ、と。
頭痛に悩むヴァレーリヤと疑問と不満に満ちたアーリアの声とに応じたエッダは、ポケットから滑り落ちたラムネ瓶に覚えのない、本当に理解が追いつかないマークがついているのに気付いた。
「「「ドクロマーク……?」」」
『アーアー、聞こえるか暴徒共! 貴様らが昨晩さんざ暴れまわった結果この酒場に戻ったことは証言により確定的に明らかだ! おとなしくお縄につけ!』
3人(と同席していたローレットの者たち)が事態のヤバさに気付いた次の瞬間、屋外から物騒な単語の羅列が聞こえてきた。モクヒケン、とかタイホ、とか。外にいるのは軍警察か?
「昨日、自分たちはずっとここにいたであります……よね?」
「覚えて……ないわぁ。でもなんだかちょっとすーすーするような……」
エッダの疑問にアーリアは首をひねる。そして「あるべきもの」がなくなっていることに気づく。
それは周囲の仲間も同じ。上着でも下着でも肌着でもパンドラアイテムでもまあ、とにかくなんでもいいや。大事なものがピンポイントでなくなっているのだ。
「この瓶の裏、住所が書いてありますが……」
居合わせた1人が、ドクロ瓶の裏面を見る。ある程度飲まないと見えないように瓶の内側に製造者情報か。アジな真似を。
「エッダちゃぁん、ラムネ買った時に誰かにぶつかったりしてない?」
「……そんなこともあったかもしれないであります」
「この住所に見覚えはぁ?」
「ないでありますな」
アーリアの取り調べ(?)の際、特徴的な足跡やら鉄帝の一部でしか出回ってない靴の脱げた跡やら、いろいろ見つかった。
つまりはこれを追っかけていかないと大事なものは取り戻せないらしい。
――その前に外の相手をなんとかしないと逃げ切れないのだが!
- 姦し娘、酒と記憶を取引するのこと完了
- GM名ふみの
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年11月20日 22時15分
- 参加人数10/10人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●何から何まで
『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は酒に強い。だからということもないが、今日は自前の酒を多めに用意し、用事を熟し、万全の態勢で飲兵衛共との飲み会に臨んでいた。ああ、だがなんてこった。彼女は日付を一日ほど間違えていたのである!
「……大変なことになってるの!! 早く何とかしないと!!」
幻想仕込のラガービールを水のように煽りながら、彼女は待ち合わせ場所である酒場の方を見た。
何故か軍警察に包囲され、騒々しいざわめきに包まれ、今や遅しと強行突破されるのではないか――そんな状況を。
『レイリーちゃん?! 助けに来てくれたのねぇ!!』
「アーr……」
足元を通りすがるツェリ(黒猫)経由で『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)からの念話を受け取ったレイリーは思わず返事しようとして口を噤む。だが、ひとまずアーリアが比較的理性を保っていて、自分にコンタクトを取ってくれたことは有り難いと思った。……まあ彼女から聞かされることの次第を聞いたらそれどころじゃなくなるのだが。
で、アーリアの説明は彼女が意識を取り戻した朝、概ね30分前に遡る。
「うっぷモーニングAセットひとつ、ドリンクはブラッディ・マリーで……野菜を摂って落ち着……マ、マスター!?」
アーリアは起きた時、本当にいつもどおりに起き抜けの酒を要求しようとしていた。迎え酒は酔覚ましじゃねえんだが? そしてトマト入ってても酒は野菜じゃねえよ。そう突っ込むマスターはもういない(隠語)。
「オイオイオイ自分の階級章どこ行ったでありますか? あれがないと外の奴らとナシ付けられないんだが? ……そしてスカートの中がスースーするんだが?」
『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は既に起きていたのか、外の騒動に敏感に反応していた。階級章を手にドヤ顔で軍警察を収めようとした彼女だが、階級章がなければ軍法会議も回避できそうにない。階級章を楯にナシつけても控えめに戒告処分だろうが、酔いの残る体では気づかない。
「お゛ぅ……ぅお゛あ゛……二日酔いなぞ久しくしておらんかったわ。ていうかなんじゃあの変なラムねっ……あ、あたまいたぁ……て、ていうか、儂の本体、本体どこ、どこぉ……? あれがないと、儂、死んじゃうのじゃぁ……」
『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)は完全に『ラムネ』の影響で酷い頭痛に襲われていた。それは大体全員同じだろうが、彼女は特に悪酔いが酷そうだ。可哀想。素直に巻き込み事故の犠牲者がここにいる。
「まさかキドー達のパンツが盗まれているだなんて、なんて酷いことを……というか、私が大事に大事に少しずつ飲もうと思っていたお酒も無くなっているのだけれど! 空っぽなのだけれど!?」
「ぱんつ盗まれてねえよ!? 5回ぐらい下着しか残ってない状況まで追い詰められたことはあるけど、逆に言えば下着だけは死守してきたんだけど!?」
『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の断定的口調に、『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)は声を荒げて反応する。大丈夫大丈夫、普通こんなクソみたいな確ロはスルーするけどこの2人は阿吽の呼吸で否定までセットになってるからセーフ。
「お前らみたいな頭の先からケツまでアルコールに浸った駄目人間と一緒にすんなよな!」
「どうやったのかは知りませんが私のぱんt、ごほん、下着を盗むなんて! し、しかも普段より少しアレな時に限って……!」
キドーがヴァレーリヤを指差してそんな事をいった後ろで、『星詠みの巫女』小金井・正純(p3p008000)はぱんつを盗まれていた(現在2人め)。多分この案件はルなんとかさんみたいな奴が関わってる。82世みたいなの。
「だめだわ、マスターはどっせい(隠語)されてる。とにかく脱出しなきゃ……寒いわねぇ、ここ」
アーリアはスカートをめくった。
戻した。
めくった。
「あああ●万Gの海洋最高級メゾンのひものアレが! あれはみピーくんとピーの時ピーの為のものなのに!」
「なんで皆して下着盗まれているんですか? 私は大丈夫……あっ、アレがありません! しかもなんか囲まれていますよ! うわーん私は無実ですよー!」
アーリアがすげぇ事になってる裏で、『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)はぱんつを盗まれた3名(+キドー)に対してマウントを取ろうとした。然し彼女もなんか盗まれている。エロハプニング回避マウントは、それ以上に大事なものを奪っていきました。あと、大丈夫って連呼してるが一同は彼女が酔っていることを理解している。だめだこいつ。
「なぜ皆下着を盗まれているのだ……私はさっき確認したら穿いていたのでセーフ」
『艶武神楽』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は自己申告する時点で間違っている。女性としての慎ましさを剣で斬っちゃってる系だ。黙ってりゃまあ……なあ……。
「そんなことより私の剣を盗んだ大馬鹿者はどこのどいつだ???絶対に許さんかr」
「FOOOOOOOO!! オマツリ騒ぎだね! ところで気付いたら全裸だったのだけれどダレかオレの服シラナイ!?」
ブレンダが感じた憤りはしかし、酔いどれイレギュラーズの最終兵器こと『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の出現ですべてぶっ壊された。今回はいい意味で。
いやだって全裸だよ? なんで全部脱がされて寝てられたのこの男?なにからなにまでおかしくない? 腰にタオル巻いてるけどヒラヒラしてチラチラして不思議な光さんを過労死させるんじゃないよ。
「くっ……剣がないのは落ち着かんな。仕方がない、その辺に転がっている空のボトルを二つほど拝借して武器にしよう」
「うっうっ、一体誰が、どうして……おさけ……」
ブレンダは仕方なく酒瓶を手に軍警察に挑む必要が出てきた。ヴァレーリヤは未だに絶望に打ちひしがれている。なんだろうこの光景。地獄かな?
「取り合えずオモテの騒がしい連中をぶっ飛ばして逃げよう! ダイジョウブ! オレの武器はコブシと気功と師父直伝のケンポウだからね! 腰布だけでも戦えるよ!」
腰布だけで出ていったら別件逮捕があり得るんだよなあ。
『……というワケなのよぉ! レイリーちゃんもこっちに合わせてくれないかしらぁ?』
(どういうワケなのか皆目見当がつきませんが、わかりました!)
レイリーは正常な判断をかなぐり捨てた。そうしないとやってられないと思ったから。
「私はヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ! 邪魔するな全員飲ますわよ!!」
「おーっほっほ! ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤのこのメイス(で一撃ですことよ! どっせーーーい!」
「自分はエッダではないでありますわ! 自分はヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤですですわ! どけですわどっせーーい!!!」
「な、なんだ貴様等? ヴァレーリヤ……まさか『クラースナヤ・ズヴェズダー』の……!」
レイリー、アーリア、そしてエッダがヴァレーリヤを名乗った。レイリーは酒瓶で決めポーズ、アーリアはコート掛け、そしてエッダは自分のポリシーを曲げず拳だ。やる気あんのかお前。
だが軍警察への威嚇効果は十二分だったらしい。混乱を助長する助けにはなったようだ。
「とりあえずそれどころではないのじゃ神気閃光ッ!」
「とりあえず道を阻むもの全てを殺、消せと星が仰っています。ええ、酔ってません。ですからこちらに逆らうと虹を見ることになりますよ。いいんですか?止めるのにも限界ありますよ??」
クラウジアは説明する手間を省いて次々と軍警察を吹き飛ばしていく。正純の脳裏では星が関西弁でやったれやったれ言っている気がするが、気のせいだろう。2人とも無茶すると虹を見せることになりそうだ。
「隊長、こいつら強いです! 誰を狙えば」
「クラースナヤ・ズヴェズダーのヴァレーリヤを狙え! 奴が頭目だ!」
「『どの』ヴァレーリヤですか!?」
「私の名前を知っているなんて、さては貴方達が犯人ですのね!? 返しなさい!戻しなさい!! さもなくば、覚悟なさい!!!」
軍警察の混乱が激しくなるタイミングで、ヴァレーリヤ(本物)は部下の1人を柱に括り付け、持ち上げたタンスの角で相手の小指目掛け連打する。鉄プレートの安全靴でも執拗な打撃には耐えきれず、内側に拉げたプレートの縁とタンスの角が男の小指を苛め抜く。ひでぇ拷問だ。
(アレ? これホンモノの軍兵じゃない? マァ、イイか! イマサラ戻れないよね!)
「家族とかいるのおまわりさん? それじゃあ病室で一家団欒かなぁ……バーカ! ちゃんと捜査しろバーカ!」
正気に戻りかけたイグナートだが、「泥棒をするなら家に火をつけろ」と有名な武人も言っていたのでよしとした。キドーは軍警察の返答をまたずしてボッコボコにして回る。彼の怒りも尤もだ。盗まれたものがデカすぎる。
「私は無実です! 大丈夫、酔ってませんので加減はします!」
シフォリィの攻撃に加減の概念がなかった。絶対酔ってるよこいつ。
「大丈夫、皆? なんで暴れてるの??」
「説明は後だ! 候補は2箇所に絞ったから早々に潰して回るぞ!」
「うぷ……神気閃光を打ちすぎて上がってきた……」
ブレンダは転がした警官を更に蹴り込んでから仲間達と手分けして情報を探しに行くことを提案する。その後ろでクラウジアが吐いた。
「請求はクラースナヤ・ズヴェズダーまで! ヨロシク!」
イグナートお前。
●通り道の草葉に人権が許されると思うか?
「スラムは危険な場所ですので武器を調達します! フライパンは捨てる! その鉄パイプは貰いましたよ!」
シフォリィはスラム街に来るやいなや、ベッコベコに凹んだフライパンを投げ捨てるとそれがヒットした老人から鉄パイプをもぎ取った。条件を出す暇すら与えない。
「慣れ親しんだなんとやら……スラムのチンピラなんてどうせロクでもない連中なんだ! 憂さ晴らしついでにボコボコにしようぜ!」
「スラムだかスクラムだかプラムだか知らんが犯人はどこだ!!!」
「はン、『旦那』の言ってた連中はこいつらか」
「綺麗所まで連れてきてまァ楽しそうじゃねぇか、オォン?!」
キドーの嬉しそうな声、そして怒声を吐き出すブレンダに誘われてか、あちこちからスラムの荒くれ者共が現れる。彼等はどうやら事情を知っている者もいるらしく、イレギュラーズを襲う気まんまんだ。
「ん??? お前たちは犯人の関係者だな??? ならば手加減はしない! 死ねぇぇぇ!!! そして犯人の情報を置いていけ!!!」
「キリキリ吐きなさい。さもなくばこちらが吐きますよ?」
ブレンダと正純は完全にぶっ〇す気で殴りかかりに行く。酒瓶を振り回し殴り飛ばすブレンダ、星の加護を受け次々とスラム街の人々を転がしていく正純。多分後者の酒は残っている。
「さぁ、私が相手になるわ、かかってきなさい!」
レイリーは酒を飲んだがほとんど飲んでないのと一緒感覚なのでシラフの状態で戦っていく。酒瓶で槍の動作をするなよ。リーチ短すぎるだろう。
「さぁ、吐きなさい! 吐かないと飲ますわよ!」
「おrrrrrrr」
「そっちじゃないわよ!」
スラム街の連中も飲んでるじゃねえか。
「私にできるのはひたすら交渉です! 鉄パイプぱんち! 鉄パイプきっく!」
「嬢ちゃんのそれ交渉じゃなくねぇか?!」
「オラッ誰に雇われたんだ言えクズ!」
シフォリィが交渉(暴力)に明け暮れ、『エッダヴァレーリヤアーリア参上と、会心の出来なのでByシフォリィ』と自爆気味のアートを描く傍ら、キドーはリーダー格の男を根性焼きしていた。
どうやら彼等は脱がせたり盗んだりはしていないらしい。が、イレギュラーズの名を遣って一晩で暴力行為に明け暮れたり、謎の薬とラムネを入れ替えた実行犯は彼等だ。
となると、製薬会社の関係性は――?!
「どうやらさっきのは犯人ではなかったみたいですわ、まぎらわしい」
小脇に血まみれのタンスを抱えたヴァレーリヤは、仲間達相手にぷりぷりと怒っている。酔い抜けてねえなこれ?
「ここでナニかのクスリの手がかりを手に入れないといけない……ダメでもカシマシ娘たちがちょっとブタ箱に入るだけで済むからオーライだよね?」
「イグナート、あなたが犯人でしたのね?」
「いぐなーとくぅん、ちょっと詳しくいいかしらぁ?」
「は? 貴様騎士(メイド)の扱いをなんだと思っているでありますか? 鉄帝国民の誇りを置いてきたでありますか?」
イグナートは地雷を踏み抜いたらしい。姦し三人娘を敵に回すとはやるじゃないか(称賛)。
「儂は冗談に付き合っている気分ではないのじゃ神気閃光ッ!」
クラウジアはしかし、そんな軽快なやり取りにおもねっている余裕がなかった。なんでって? 命(本体)がかかっている(勘違い)からだよ。
「な、何者だ! この施設を知っているなんて只者じゃないな?」
「大事な施設ならなんで住所を瓶に書いたでありますか??? 情報統制する気ないのでは?」
「煩い! いけ、試験兵器達!」
研究者たちはいきなりの襲撃に泡を食うが、エッダの言うことがいちいち尤もすぎる。こいつ酔ってるくせに軍人としてマトモだから手に負えない。
そして現れた実験兵器(生物兵器だ!)を見た姦し娘共は途端に口元を抑えた。
「あっ待ってこのぐちゃぐちゃと匂いはうっぷ」
「そのドロドロの不定形具合……なるほど貴方がたも……二日酔いなのでありますね。自分も視界がうねってオエッ……」
「私たちはおにくではありまヴォエッ、離しなウゥッポォエ」
「ほぉ~れ、情報をよこさねば、お前たちの……かわ、かわ、いい? 子どもたちが穴だらけかゲロまみれになるぞぅ?……うぷっ!?」
なお、こいつらこの惨状でも魔術とスピリタス爆弾と暴力で蹴散らしていたことを付記する。
「あっ、このパンツ自分のじゃないでありますか。……あれ、穿いてない?」
おいエッダお前女としてどうなんだ。スカートが長いから? そっかあ。
●黒幕はイレギュラーズに昔ボコボコにされた組織の関係者だった?! (ダイジェスト版)
「もはや何も聞くまい。なんでぱんつばっかり盗んだのかも聞くまい……私のぱんつは無事だったしな。ここに来るまでに随分と手に馴染んだこのボトルたちのシミとなれ……」
「とっとと儂の本体を返すのじゃ神気閃光ッ! いや、ホント殺してでも奪い返す所存……か、かく……~~~~~~」
「うるせえクソ!財布盗りやがって! 中身使ってねえだろうな!? 見てねえだろうなぁ!?」
「クロバさんからもらった指環を返してください! そうでなければこのスラムの剣の餌食ですよ!」
「オレ、さっき研究員から服をヌスめば……?」
「おほほほ、いらっしゃいませお客様。お会いしたかったですわー! よくも私の大事なお酒を盗んでくれましたわね!」
「こんな姿……みピーくんには見せられない。でも私、やらなきゃいけないの。だから……カチコミよおおおおお!!」
「自分の階級章どこ行ったでありますかーーっ!!」
●こいつら放っといた方が却ってやべーんじゃねーのか
「おかしい、今までの記憶がありません……」
酒場に戻ってきたシフォリィは、頭を抱え酷い頭痛と全身の疼痛に悩まされていた。戦闘不能こそ免れたものの、それなり激戦を経ていたから当然、なんだけど。本人はその記憶がすっぽり抜け落ちている。
「おしまいであります、軍法会議ものであります……」
「我のギター……はあった。本体……本体は……?」
エッダとクラウジアは未だに『大事なもの』を取り戻せずにいた。否、エッダは怪生物に脱がされたぱんつを、クラウジアは己のギターを取り返せたのだが、一番大事な階級章やら『本体』やらが見つからない。
「あれ、そういえば酒場に戻って気がついたでありますがキープボトルにぶら下がってるこれ何?」
「本体……ほんた、あれっ?」
そこで2人は気が付く。エッダの階級章は、キープボトルに引っ掛けていた事実に。
クラウジアの本体は、そもそもどこからも動いておらず、デコルテの辺りからこんにちはしている事実に。
「無事に剣も返ってきて一安心だ。このレベルをまた打ちなおすのは手間だからな……」
「よかった……財布が見つからなかったら……ヤベェんだよ……」
ブレンダの剣が手許に戻らなかったら一大事であった。彼女が実力を発揮できないのは、ローレットにとっても多大な損失になるがゆえに。
それはそうと、キドーの焦り具合はそれどころじゃない。みっちり詰まった財布は勝利の証。これがなければ今月末に待つ大惨事は免れなかっただろう。それはそれでローレットへの損失である。
ひらり。
「んっ? あ……」
「あれ? これは…………その」
「あらぁ、キドーさんも好きねえ?」
キドーの財布の底にあったはずの『それ』がまろび出たのは、運命という他はない。それが正純とアーリアの目に留まったのも、運命。
そう、『ママっぽく甘やかしてくれるお店』のチラシは。
「まだ! 行ってない! から!!」
なお言い訳にはかなり苦しい模様。
「もう我慢できないわ、宴会しましょう! 私まだ飲んでないの!」
「そうだな、無事に無くしたものも返ってきたことだし祝杯をあげようではないか!」
レイリーは最初から最後までシラフでよくよく頑張ったものだと感心せざるを得ない。
官憲をなぎ倒しスラム街で脅しまくり黒幕連中相手に圧倒的な守りでもって蹴散らす様は、城塞の如き有様であった。……のだから、そろそろ酒が足りなくても仕方ない。ブレンダがここに乗っかってくるのもあるいみ必然。
「ヤッター! 飲もうぜ! イェーイ!」
「……やけ酒であります! ツケはヴァレーリヤに! わたくしヴァレーリヤですわ!! しゅくせーですわ!」
「とりあえずなんだかめでたいようなのでお酒飲みましょう!」
「ヴァレーリヤ・ダニーロヴナ・マヤコフスカヤの飲酒量を見せてあげますわどっせーい!!!」
レイリーの言葉に乗っかったイグナート、エッダ、シフォリィにアーリア。ここまではっちゃけてて止まるとは到底考えられない。
「まあ、先のことがありますし今回は程々……、いやダメだこれ止まりませんね!?」
「正純嬢も、そこで傍観者気取ってる奴らは強制痛飲ですわ!!」
「あ、ちょっとまってくd」
正純は正気のままなんとか止めようとしたので、エッダの餌食になった。ひっでえ。
「何か私、分身して暴れては足の小指をタンスで破壊する新手の妖怪になっていませんこと!?」
ヴァレーリヤは酒に口をつける前に(記憶を取り戻した影響で)とんでもない事実に思い至る。今回、ヴァレーリヤの名を騙った者が3名はいるのだ。そして本人。
……その後数日間、ヴァレーリヤの手配書が鉄帝の一部で貼られまくったことは記憶に新しく、また、誤解が解けても子供達のミームになってしまったという。南無三。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ヴァレーリヤを騙って暴れたやつが3人いたので悪名3点つきました。
よかったね。
GMコメント
リクエストありがとうございます。洋画もいいなあっておもいました。あとこれは長編でやりたかった。
●達成条件
大切なものを奪った連中のアジトにカチコミをかける
●現状
皆さんは参加確定済みのアルハラトリオにアルハラを受け、エッダさんからもらったラムネ(?)とお酒をちゃんぽんし意識が飛んでいます。
その間なにをやらかしたのか軍警察に酒場ごと包囲されており、『大事なもの』がなくなっています。
(なくなったものは自己申告なのでぱんつがなくなっているとかそういうわけでもないです。「記憶です!」もまあいんじゃね?)
なお酒が飲めない、「ザル」「ワク」などで酔わない方は後から惨状に気づき外部から軍警察へ襲撃をかけて救出する立場です。
エッダさんの持っている薬瓶(ラムネ瓶と取り違えた模様?)のラベルにある住所、現場にある状況証拠から割り出せる2箇所のポイントに向かい、そこから主犯の情報をそれぞれつかみ解決……となります。
なので、戦闘は「軍警察との逃亡戦→2チームに別れ情報源へのカチコミ→主犯へのカチコミ」となります。
別れたグループで片一方が勝てなかったとかになると4人で主犯にカチコミをかけないといけません。
カチコミって何回書かされてんだ俺。
●戦闘1:軍警察の包囲脱出
数は10名ほど。うち1人がOPの隊長格です。
一斉射撃で各個撃破を狙いますが攻撃力もそう高くはなく、【出血】を伴うくらい。HPもさほどありませんが殺すのはアウト。
ある程度倒して包囲を解く、全員蹴散らす、まあお好みで。
●戦闘2a:製薬工場(?)への事情聴取
エッダさんが持っている瓶をたよりに突っ込みます。
ここで「エッダさんの大事なもの+元に持ってたラムネ瓶」が見つかりエッダさん無罪が確定します。見つからないと罪がおっかぶさるから気をつけろ。
なんか怪しげな研究による不定形だったり改造されたクリーチャー群とかわらわら現れます。【致死毒】【必殺】【凍結】あたりをゴリゴリ付与してきます。
●戦闘2b:スラム街掃討戦
足跡などから、真犯人がスラム街の住人を集めていることがわかります。
スラム街に突入し暴れましょう。
こいつら【失血】させるナイフとか吹き矢つかってきますんで気をつけたほうがいっスよ。マジパネーっす。
●戦闘3:主犯がいるなんか、こうアレだよ! アレなところ!
そこそこ強い悪人とかが集まってます。今回の色々はだいたいコイツラのせい。ブッ潰してふんじばっちまおうぜ。
術士を数名抱えており総数5~10程度。回復も使うので長期戦を覚悟しましょう。ここまででリタイア者が出ると結構めんどくさい相手だぞ。
以上、道程は長いから戦闘2辺りまでは流し気味で頑張ろう!
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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