シナリオ詳細
<神逐>つづりてそそぎ、よをなくす
オープニング
●
身体が動かない。
ひどく重たい何かに、手足の動きを遮られるような感覚に襲われている。
そそぎは今の状態に既視感を覚えていたが、はたと正体に気付いた。金縛りに似ているのだ。
動かせるようで動かせない。しゃべれるようでしゃべれない。暑いのか寒いのかもよくわからない。
身体中にありったけの力をこめても、ただ背筋をじっとりと張り付く衣服の気色悪さだけを感じる。
「いい気味ね。このまま全部死んじゃえ」
己の口は、今どんな言葉を吐いたのか。怖気が走る。
「殺して、殺して、殺し尽くして……あっは! きっと気持ちいいに決まってる」
良い訳がない。だが己を押さえつける何かは、そそぎの身体を使い、はっきりとそう述べた。
「――最高」と、身体が言った。
――最悪。と、わたしは思った。
身体を蝕んでいた苦しみも痛みも、今は感じない。
怖気の走る闇の澱みに、身動きを封じられているだけだ。
どろどろの底なし沼にでも沈めば、きっとこんな気持ちになるだろうか。
けれど意識だけは、やけに明瞭であった。
蝕む呪詛が、複製肉腫が、ついにそそぎの制御下を離れてしまったのだろう。
そそぎ自身が、そうあるように望んだという所も、ないわけではなかった。
むしろそそぎが意識を保てているのは、そそぎの意識が混ざらないように引き留めている細い細い蜘蛛の糸が存在してくれている理由は、その正体は――神使や姉との絆に他ならないと思える。
そそぎの意識に出来るのは、その絆へとすがりつき、掴んだまま離さないようにし続ける事だけだ。
先程、耳にした誰かの話では、神使達がこの高天京に攻め入ってくるという。
「……最悪」と、身体が言った。
――最高。と、わたしは思った。
海を越えてやってきた神使達と、この地を蝕む魔の勢力は、ついに最終決戦の時を迎えた。
魔の勢力の思惑は様々だが、この場に居る《転輪穢奴》忌拿家・卑踏は、世を平らにすることだと云う。
神威神楽の地では、古来より獄人が虐げられてきたという歴史がある。
そそぎやつづり達のような此岸ノ辺の巫女は、そうして生じた憎悪や悲哀を『穢れ』として身に集め、浄化してきた。卑踏はかつて遠い昔に、その一族の遠縁であったと云う。
卑踏は既にただの妖であるが、おそらくその獄人の想いを核としているのだろう。
今や祓われるべき古の呪いそのものであるが、そそぎはその手をとってしまった。
神使達が神威神楽にやってきた少し前のことだ。
身近な人々を貶め、己と姉に穢れを押しつける八百万への怒りが、そうさせてしまった。
結果としてそそぎは、卑踏やカラカサ、巫女姫等、魔の一派からいいように踊らされたのだ。
今は卑踏の操る霊長蠱毒なるおぞましい呪詛の依代として利用されようとしている。
だがそそぎは、寸での所で踏みとどまっている。
身を侵す呪詛から意識を切り離し、霊長蠱毒の完全な成立を阻止しているのだ。
――巫女の娘、観念せよ。
一度全てを投げ、打ち捨てよ。
冥府魔道の中にこそ、開ける光もある。
巫女の娘よ、貴様は姉と共に居たいのではなかったか。
立ち塞がるものを討ち滅ぼし、正当な結果を得るには、力が必要ではないのか。
神使共の甘言を受けて、一時の気まぐれに信を曲げ、初志貫徹から逃げただけであろう。
逃げるそれ自体は良い。だが切り札はどこで切るかを選ばねばならん。ならばこの声を選べ。
そして神使を打ち払い、姉を取り戻し、霊長蠱毒がこの国の天地を返すまで手を携えるが最良。
巫女の娘よ、貴様であれば古今無双の力とて得られよう。姉も呼びとこしえの安寧を目指すが良い。
それから満を持して忌拿家卑踏を伐てば良いではないか。最早、穢れを背負うことなど不要の筈だ。
(うるさい、うるさい、うるさい、だまれッ――!)
頭の中に響いてくるのは天香長胤の配下である『魔種』楠忠継の声であろう。
(そんなのは絶対に嫌。私はつづりも、神使も信じてる。
それに嘘つき! あんたは私を利用して、天香の家を続けたいだけでしょ!)
そそぎを蝕んでいるのは、穢れや呪詛だけではない。魔種の声もそうだ。
原罪の呼び声を撥ね除け、そそぎは神使の到着を、姉との再会を待ち続けていた。
それが虫の良い話であるのは分かっている。だが孤独なそそぎにとって、絆が唯一の支えとなっていた。
「実に強情なものです。神使はまことに厄介なことをしでかしてくれた」
くつくつと闇が嗤う。
「あれなる呼び声に堕ちようが、当初の通り依代となって頂こうが。
この際、己としてはどちらでも構いませぬが。このまま抵抗を続けるもまた平等ではある」
此の世の穢れを凝縮させたが如き邪悪――卑踏の声だ。
卑踏はそそぎの巫女としての特性を尊んでいた。
つまり穢れを蒐集し取り込むそそぎの力は、卑踏の策にとって必要不可欠だと考えていた。
故に原罪の呼び声などで下手に反転されては、どう転ぶか分からない故に、それを疎んでいた。
そそぎが反転した結果、能力に予定外の変成を来しても困るのである。
だがこの期に及べば話は変わってくる。これほどの穢れを集めそうな合戦は当面あるまい。
或いはこの後に世が乱れるならば、次の機会を待つにも悪くはない、か。
だから今は当初の通りに呪詛の依代でも、計画外の反転でも、最早どちらでも良かった。
とはいえど。そそぎはそそぎで、どれほど心をなぶってみても一向に折れやしない。このまま強情に自我を保ち続けてしまいそうにも見える。あまつさえ身体を穢れや複製肉腫に委ねたまま籠城の構えだ。
神使が戦場で、どれほどおかしな状態の彼女を見つけたとしても、助けてくれると信じ切っている。
確かに、依代となる前に、ないしは反転する前に複製肉腫を剥ぎ取られてしまえばそれで終わりだろう。
計画の狂いはどれもこれも神使のせいであり、神使との絆とは実に面倒なものであった。
これほど忌々しいことが、他にあるものか。
「当代の巫女殿。神の殺した鬼は、死して神を弑す――
そうして転輪の法理を導き、世の渾てを挽き潰す。さすればそこに真なる平等が訪れましょうに」
卑踏は続ける。
獄人ばかりが苦しむならば、八百万もまた苦しまねばならぬと。
互いに相責め合い、殺し合い、滅ぼし合い――"よ"を消し去るのだと。
「いずれにせよ、刻はいずれ満ちるもの。あるいはあの黄泉津瑞神の呪詛を聞かせれば良いか」
(……狂ってる。あんなものが遠い祖先様の親戚だなんて、冗談じゃない!)
そそぎは睨み付けてやりたい気持ちで一杯だった。
あらゆる生命を憎むカラカサも、この世を潰したいだけの卑踏も、淫らな愛欲ばかりを求める巫女姫も、そろそろいい加減に報いを受けるべきだ。
(……私だって、本当は)
助かりたい。甘い願いだとは思う。
助けてほしい。報いを受けても当然だとも思う。
一時とはいえ、自身は魔の連中と手を結ぼうとさえしたのだから。
それでも身を縛る複製肉腫を神使に取り祓ってもらい、姉つづりを思い切り抱きしめたい。
そしてそれが叶わぬのなら。
これ以上、世の中に迷惑をかける前に。
自分が本当に自分でなくなってしまう前に。
誰かを、なにより神使や姉を不可逆に傷つけ、殺してしまう前に――
「卑踏。誰を殺せばいいの? 全部、そのあとはあんたも壊す? あっは!」
まるで己自身が話すように、己の声音で、誰かが自身の口から耳障りな反吐をたれ流している。
ほんのしばらく前まで、己自身とて『あんなこと』を口にしていたのも思い出す。
やれ死ねだ、滅べだ、殺したい、だのと。
己が如き小娘が、さも分かったような口を利き、皆にとてつもない迷惑をかけたのを思い出す。
つらくて、恥ずかしくて、情けなくて、冷たいものが心の臓を鷲掴みにするようだ。
複製肉腫の憎悪が、この地を蝕む穢れた澱が、己の口を使って胸の奥を延々と反響し続けている。
(……でも、そんなこと、させるもんか。あんなやつらに、私の心を壊させてなんてあげない)
それでも駄目なら、どう足掻いても、どうしても詰んだなら、万策が尽き果てたなら。
もう決めたのだ。絶対にどうにもならないと思ったなら。
魔になど利用される前に。堅実に、着実に、確実に。
――死んであげるから。
もしもそうでないなら。
望む可能性が赦されるならば。
金平糖のように甘い願いが叶うならば。生きたい、償いたい。
だってわたしはまだ、此岸ノ辺の双子巫女。つづりの妹の、そそぎだ!
●
黄泉津と呼ばれる大地――神威神楽では呪詛が蔓延していた。
神使(イレギュラーズ)は、この地を魔種が蹂躙していることを知っている。
中務卿建葉晴明や此岸ノ辺の巫女つづりと手を携え、眠れる帝を呼び覚まし、四神の加護を得たイレギュラーズは、いよいよ以て魔の京へ攻め入らんとしていた。
この地を牛耳る魔種『巫女姫』と『天香長胤』は、『黄泉津瑞神』と呼ばれる守護神をけがれと大呪によって歪め、利用しようとしている。
黄泉津瑞神は犬の姿で権限し、時の権力者へ預言と加護を与えてきた存在だ。
だが 獄人差別・獄人による八百万暴行事件による二種族の怨み嫉みから発生した『けがれ』、そしてソレを媒介にして行われた『大呪』が黄泉津瑞神の在り方を歪めてしまった。
黄泉津瑞神の叫びは高天京全体へと響き渡り、悍ましき魔性の月の加護を得て、この地をけがれの焦土へと変えてしまうだろう。
神使達は黄泉津瑞神の荒魂を鎮め、『巫女姫』や『天香長胤』をも討伐して、この地を正さねばならない。 討伐すべき魔はそれだけではない。
この大地を魔に染めるカラカサなる化物も居れば、穢れから産まれた妖《転輪穢奴》忌拿家・卑踏の姿もある。有象無象の妖の他、彼等に与した者達もまた、立ち塞がる敵となるだろう。
一行の前で、此岸ノ辺の巫女つづりがぺこりと腰を折った。
「……神使。来てくれて、ありがとう」
「まずは楽にしてほしい」
晴明が言葉を続ける。
「決戦か」
新道 風牙(p3p005012)の言葉に、一同が頷いた。
「それで、私達はどうすればいいのよ」
述べた鉄帝国軍人リーヌシュカ(p3n000124)は当事者ではないが、乗りかかった船にとことんまで付き合うつもりらしい。お国柄か個人の性格かは知れぬが、どうにも義理堅い所があるようだ。
この僅か十二歳の戦士は、単に『合法的に暴れたい』だけかもしれないけれど――閑話休題。
晴明の説明によれば、作戦ではつづりの双子の妹『そそぎ』の奪還と、卑踏討伐を行う事になっている。
無論だが卑踏配下の妖と、長胤旗下の隠密集団『冥』が居るのも間違いない。
対するこちらの陣営は――
「はあ? 十人? わたしをいれても十一人? 五十人……最低でも三十人は必要って言ってるの!」
素っ頓狂な声をあげたリーヌシュカは、眉をつり上げた。
「……済まない。可能な限りの人員は用意する。三十には近づけよう」
「相手は化物なんでしょ。敵は民兵でもなければ、作戦だって都市占領じゃない。
本当に必要なのは雑兵や腰抜けの陰陽師達なんかじゃない! イレギュラーズよ!
駄目でも必要なのはプロの戦士であって俄仕込みの素人じゃないわ。とびっきり歴戦のやつだけよ!
だったら最低でもサムライとニンジャを連れて来なさい! それでもちっとも足りないんだから!」
苦しげに応じた晴明に、リーヌシュカが声を張り上げた。
戦場全域を見渡せば、最大の関門は黄泉津瑞神を鎮めることであろう。
後は巫女姫に、天香長胤や義弟の遮那、更にはカラカサに、刑部卿近衛長政――大規模な動員が予測される戦場は多く、また卑踏の操る『霊長蠱毒』なる儀式の成果は長胤の部下である楠忠継が預かったらしいが。
それでも《転輪穢奴》忌拿家・卑踏は伝承級の妖であれど、魔種ではない。
「あれは、この世界に存在しちゃあいけないものだぜ。これは絶対だ」
風牙が拳を握る。卑踏を討ち滅ぼすのは間違いなく最善だ。
あの化物を討伐しなければ、この地に真の安寧は訪れない。
けれど。つまるところ――
「わたしは死ぬのなんて怖くないわ。
三十路まで生き晒す鉄帝国軽騎兵なんて、臆病者のクズだけよ。
なら十二だって二十だって、いつだって死に時だもの、たいして変わらないわ!
でも許せないことだってあるの。それは生ぬるいモルスと、スメタナのないボルシチと、負けることよ!
そんなこのわたし、鉄帝国軽騎兵にしてラド・バウ闘士セイバーマギエルに、作戦を失敗しろってわけ?
いい? たった一つの命を賭けるなら、それは絶対に勝利と、戦果と引き換えにするものなんだから!」
「否、そこまでは申さぬ、海向こうの客員騎兵殿。むしろ貴殿等の生還は必須事項だ。ただ……」
陰陽師の言葉に、リーヌシュカは卓上へと激しく拳底を打ち付けた。
「ただ、何だって言うの! わたしじゃなくて、無為に兵を死なせるなと言ってるのが分かんないわけ?」
――後回しなのだ。どうしようもなく。ここは。この戦場は!
最悪でも、皆が無事で、どうにかそそぎだけ連れ帰れば良いのだと、その程度に思われているのだ。
全体の勝利を確実にするのが戦略というものではある。そこ自体はリーヌシュカとて否定しない。
「もういいわ。でもやってあげる。いい? 全部……全部よ!
私とイレギュラーズが、絶対にどうにかするんだから。それでいいでしょ!?」
勢いは結構だが、ともあれ無い袖は振れぬ。
この戦場は少数精鋭で、どうにかするしかないのだ。
「神使が十。客員の騎兵殿で一。陰陽寮から十八を派遣しよう」
「……合わせても二十九」
僅か二十九。それも雑兵さえ交えて、たったの二十九ぽっち。
「三十におじゃる!」
突然大きな音をたてて、飛翔武威(ふらいんぐぶい)の琵琶をもった男が怒鳴り込んできた。
「はあ?」
「麻呂を含めれば、三十名になるでおじゃる!」
びっくりした。長胤かと思った。いやさすがに、それはまさか!
「三十あれば、鋼鉄騎兵(へびーめたるきゃばりやー)殿の考えたる陣容に事足りようぞ!」
お前は、真坂門・宣明(まさかどの・のぶあき)!
表の顔は兵部省の役人であり、要は下級貴族である。
だが夜ごと雷舞(らいぶ)と称しては琵琶を弾き殴る蛮怒人(ばんどまん)であった。
「へびい……誰よそれ。てかあんた馬鹿なわけ!? 詩人はひっこんでなさいよ!」
リーヌシュカが威嚇する。
「通信唐手初段、習字算盤生け花茶道を合わせて八段! 後は刀もちょっとだけ知ってるでおじゃるが」
「何言ってんのよ、意味わかんないわよ!」
「そちが三十と言ったのでおじゃろうが!」
「確かに言ったわ!? 必要だと思ったイレギュラーズの数をね! それも最低最小の数として!」
「しかしてされど、三十は三十におじゃろうが! 麻呂は算盤二級におじゃるぞ!」
「鉄帝国人は四以上の数なんて知らないわ! もういいから、ずぶの素人はすっこんでなさいよ!」
「ずぶの素人にはおじゃらん!
今は無官(ぷうたろう)の麻呂とて、昨日の昨日……おとついまでは兵部省に勤めておじゃった!
それに麻呂とて神威神楽の男子(おのこ)。この事態に及んで大切なふぁんを前に逃げとうない!」
「ふぁん……」
おかしな公家とリーヌシュカの応酬に、つづりが言葉を飲み込んだ。
「じゃあもういいわ、勝手にしなさい。
でも自分の命は自分で守りなさいよね。戦場に足手まといなんかいらないんだから」
「覚悟はとうに出来ておじゃる。
本件、麻呂は烏滸(おこ)やもしれぬが、されど怒(おこ)におじゃる!
この大地を穢し蹂躙する邪の輩は、麻呂が許せどもへびいめたるが許さん!
麻呂の身一つなど、必勝の捨て駒風情とでも考えて頂いて、結構でおじゃるよ!」
「ノブ。アンタぶれねえな。やるじゃねえか。けど捨て駒なんて軽々しく言うもんじゃないぜ」
風牙が宣明の背を叩く。
「さようかの」
「ああ。俺の師匠なら、げきおこもんだ! けどそのロックが、今は心強いぜ!」
「新道風牙殿!!」
ハナから相手にしなかったリーヌシュカと違い、風牙は宣明の技量を読んでいた。
自身には及ばぬであろうが、少なくとも素人ではない。全うな修練を積んでいる。
会議が紛糾する中、つづりは潤んだ瞳に微かな悲しみと、強い決意の色を湛えていた。
悔しいのだろう。この決戦の場に立てば、戦えない彼女は足手まといでしかないことが。
悔しいのだろう。さして年端も変わらぬうら若き戦士達が、とんでもなく大人に見えることが。
すぐにでも駆けてゆき、そそぎを抱きしめたいのに。それは叶わない。だから。
「……邪魔は、したくない。待ってる。だから絶対にみんな無事に帰ってきて。そそぎと、一緒に!」
仕方が無い。やるほかないのだ。後は仔細を詰めれば良い。
既につづり(おひめさま)のオーダーは下っている。掴むべきは全て。全てだ!
- <神逐>つづりてそそぎ、よをなくすLv:30以上完了
- GM名pipi
- 種別EX
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2020年11月19日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
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湿気を含んだ微風が『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)の頬を撫でる。
冷えた霜月の大気と酷く不釣り合いに、生暖かい気配を乗せていた。
戦場に火の手か――否。
一行の背を駆ける怖気の正体は、神威神楽を穢す『澱み』そのものであった。
(まさに天津罪と国津罪……)
ゆっくりと這い出す闇を睨みながら、冬佳の脳裏に過ぎるのは古の歴史であった。
かつてその罪と穢れに耐えられなかった存在が居たと。
発生それ自体は、ある種において致し方なくもあろう。
人は間違いを犯す生き物であり、仮に正しいと思える方策すら、後の世に覆されることもある。
それが古の時代において、かつ社会的不合理を抱えた由来であるならば、尚更に――
くつくつと、闇がどよめいた。
「よくぞ参られた、神使殿。己は今宵の災厄を、善へ導く者であります」
慇懃無礼な言い回しで、其れは述べた。
「アンタの口から、よりによって『善』とはな。吐き気がするぜ」
吐き捨てた『麒麟の加護』新道 風牙(p3p005012)が、愛槍『烙地彗天』の覆いを払う。
「己共の訳を問うてはくれぬでありましょうか?」
「聞きたくもねえが、垂れ流すなら好きにしな。それがアンタの好きな『平等』って奴なんだろうぜ」
「ふふ……然り!」
――この国(神威神楽)は古来より、歪みを抱えてきた。
被差別階級獄人の嘆きから生じる穢れを、巫女が浄化する謂われだ。
たった今、闇の汚泥から忽然と現れた《転輪穢奴》忌拿家・卑踏は、そうした状況に絶望した者であるという。調査によれば此岸ノ辺の双子巫女つづりとそそぎの、遠い遠い血縁であると云う。
尤も卑踏は既に人としての生命を喪い、強大な妖と成り果てているのだが。
さておき。高天御苑に進撃したイレギュラーズは、いずれも破竹の勢いでこれを制覇し続けていた。
だが――それは『この戦域』を、ある意味では『捨てた』程の、勝利への覚悟も一因と思われた。
実のところもなにも、疑うこともなく勝利はイレギュラーズが活躍した所以であり、弄した策の意味は小さかろう。だが高天京での大規模な戦場は総勢六百名以上のイレギュラーズが参戦している。
半面、この戦場もまた重大な事件ではあるが現状では大局に影響を与えぬと判断されたこの戦場を、確実な勝利に導く陣容を整える余裕は全くなかった。
卑踏の後方から闇に乗って現れた少女――敵に操られた『そそぎ』を救出する事だけが本題であり、この場での卑踏の打倒は『必要』だが『最悪のケースでは二の次』だとされた訳だ。
「本当にどれだけ居るってのよ。ふざけるのもいい加減にしなさいったら!」
鼻を鳴らした『セイバーマギエル』エヴァンジェリーナ・エルセヴナ・エフシュコヴァこと、リーヌシュカ(p3n000124)が叫ぶ。
「いやぁ、なかなかに厳しい状況ですねー。聞きしに勝るとは、こういう事を言うのでしょうけど」
桐神 きり(p3p007718)のぼやき通り、現れた敵の数はかなり多い。
ぞろぞろと現れたのは後方に控えた卑踏を筆頭に、敵に身体を操られているそそぎ、天香の隠密衆『冥』――そして卑踏配下の妖である。一行を徐々に取り囲みつつある数は、四十騎手前にも及ぶ。
対するこちらは――
「たかが三十、されど三十におじゃるよ!」
お歯黒を剥き出しにして呵々と笑ったカムイグラの元役人、真坂門宣明の言葉通りだ。
十名のイレギュラーズと客員のリーヌシュカの後ろには、中務省から来た十数名の兵が控えている。
三十と云っても、最精鋭は僅か十一名に過ぎない。
きりにとって、勝ち目の薄い戦いが趣味であろう筈がない。
一見カムイグラの剣士にも見える彼女は、実のところ高度な文明社会からやって来た来訪者(旅人)だ。
そうした社会の知性的な常識と照らし合わせるならば、戦いとは高度な遊戯における架空世界の中に存在するものであり、現実の命を賭けるものではありえない。
だがそれでも、眼前のそそぎは今も心の中で戦い続けているはずだ。
つづりは妹そそぎの身を案じて、きり達を信じ待ってくれている事を、心へ刻みつけられている。
ならば――きりは瑞々しく愛らしい唇を引き結び、凛と瞳を輝かせた。
「柄じゃあないですが……限界まで足掻いてやりましょう!」
「もちろんよ、みんなでぶった斬ってやるんだから!」
真っ先に駆けだした風牙を負い、一行は、そしてサーベルを抜き放ちったリーヌシュカが後に続く。
相変わらず――『赤と黒の狭間で』恋屍・愛無(p3p007296)は嘆息一つ。
リーヌシュカは『勇猛』だ。愛無としてはこの僅か十二歳の戦士に『人並の幸せ』というヤツも手にして欲しいと願うが。無論それはそそぎも同じこと。
「早く終わらせ祝勝会と君の誕生会をしよう。リーヌシュカ君」
「ありがとう。あなたに言われて思い出したのよ、愛無。
鉄帝国軽騎兵の年齢が話題になるのなんて、戦死した時だけよ。
けど、あんな贈り物なんて、最高に気が利いてるじゃない!」
●
「君たち双子が救われなければ豊穣は救われた事にならない。ってさ」
戦場の後方で、『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)がぽつりと零した。
闇の中に煌めくような瞳が見据えるのは、そそぎだ。
――頼まれたんだ。君の姉に。
頼まれたんだ。あたしの仲間に。
だから助けてみせるよ。卑踏の思惑を覆そう。
ヒトの想いの力、精々見縊ってくれても構わないよ!
「戦いの火蓋は切り落とされたみたいだよ。だからみんな、準備はいいね」
バスティスはくるりと振り返り、小首を傾げて見せる。
――鋭! 鋭! 応!
「誓おう! 我等は決して足手まといにだけはならぬ。神使殿! どうぞご命令を!」
こくりと頷いたバスティスは、あらかじめ命じておいた隊列が崩れていないことを一目確認する。
ともあれ兵士四を護衛につけ、侍と兵と陰陽師とを一人ずつ組み合わせ、隠密と他の兵で遊撃を行う。
いずれにせよ、単騎突出は絶対に避けさせるつもりだ。
戦場とは常に霧に覆われているものだ。
戦闘における意思決定の質は的確な情報の量と質に依る。無論だが、常に完全な状況が把握出来るほど情報が揃う戦は、極めて稀である。
だが戦いの教本――天才参謀クェーサーの叡智を宿すバスティスに、見通せぬ霧はない。
「この国の未来の為に死んでくれ、とか言う気は無かったんだ」
バスティスはゆっくりと語りかけ、一同が固唾を呑む。
「敵は強大で悪辣で、あの悪意に立ち向かうには、『覚悟』がいる。
だから、言うよ。この国の明日の為に、命を懸けてくれ」
ざわめきは、ただの一つも無かった。
バスティスが率いるのは、中務の兵達だ。決して弱くはないが神使には及ばない。
しかし彼等にとて一角の矜恃と、必勝の覚悟はある。バスティスはその気概を解き放ってやったのだ。
「応!」
武者震いと共に、誰かが言った。
「乗った! 我が藤沢家も此の戦、バスティス殿と共に往く!」
「応よ! 元より腹は決めていた! この水嶋家が次男昌成の命は貴殿に預ける!」
「我等が帝へ、必勝を捧げん! 備え! 前へ!」
――鋭! 鋭! 応!
周囲の戦場全域から、鬨の声と共に陣太鼓の音が響いてくる。
遠い戦域から、無数の具足が地を微かに揺らしている。
比してここは――この戦域はあまりに小さい。
敵は強大(ばけもの)、こちらは無勢。常識的に判断するならば、どうにもならない。
主力(イレギュラーズ達)とて、この後は成否を問わず、各々大規模な戦場へすぐさま赴かねばならぬ。
「でもね……信じてるよ、あたしは。君達ならやってくれるって」
自由気ままな猫神は、けれどこの日、軍神(ネイト)にだってなってみせる。
バスティスの呟きが、鬨に溶け消え――
――最前線で得物を抜き放ったイレギュラーズの後方でも、また鬨の声が闇夜を貫いた。
「後ろの連中も準備万端って感じじゃねえか。
いいか、絶対に死ぬんじゃねぇぞ! 死ぬ事は戦友を殺す事になると思え!」
晴れ渡る蒼穹を宿した聖剣を、『天駆ける神算鬼謀』天之空・ミーナ(p3p005003)は天高く掲げる。
「それじゃあ行くぜ。全軍突撃!」
名も無き兵士を英雄に変える全軍銃帯の号令――オールハンデッドが高らかに響き渡る。
槍を構えた風牙が流星の如く駆け抜け――妖の一体を深々と貫くと共に激突が始まった。
無数の怒声が大気を揺さぶり、数多の具足が大地と共に一同の鼓膜を激しく蹴りつける。
「逆賊風情が何するものぞ! ここを高天が御苑。帝の膝元と知っての狼藉か! 者共、かかれい!」
冥の部隊が雄叫びを上げる。
この戦いは、全体を通してみれば帝(国主)と天香(大政大臣)との戦いであるとも見られている。
互いに大義名分――天香側には些かの無理はあるが――を抱え、天下分け目の決戦となった。
帝と中務省にしてみれば天香こそ逆賊であり、天香一派としてみれば帝を拉致(!)したこちら側が逆賊と呼ばれている。
多くのイレギュラーズにとって、この戦場はあくまで『魔を討伐する使命を果たしに来た』のであり、政治的な問題に直接関わるつもりはなかろう。
それにしても厄介事に巻き込まれたのは間違いないが。
「……本気で行く」
帽子を目深に下ろした『命繋ぐ陽光』アラン・アークライト(p3p000365)が、不気味に脈動する巨大な剣『Code:Demon』を腰だめに構えた。進撃を止める理由になんて、なりやしないのだから。
高速思考演算の術式を展開させ、更に古き月輪――月輪の聖剣《セレネ》の残影を天へ解き放つ。
「月よ、分かたれ降り注げ!」
闇を切り裂く蒼きが、唸りを上げて迫る妖共を次々に穿ち貫いて往く。
「あっは! 何人死ぬのかな。たくさん、たくさん殺してあげる!」
憎悪に歪んだそそぎの相貌は、しかし不意に唇を戦慄かせた。振り上げた腕を震わせ身もだえする。
「……人間の分際で、邪魔をしないで!」
そそぎが自身の胸をかきむしる。巫女装束が裂け、顕になった白い肌に細い数本の赤が滲んだ。
「あの子が、そそぎさん……」
剣を抜き放った『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が小さく呟く。
戦場の向こう側で、そそぎは身体を支配している複製肉腫と呼ばれる化物に、懸命な抵抗を続けているのだろう。小さな身体で頑張っているのが、ここからでもありありと見て取れる。
(あと少しだけ我慢してね。絶対に連れ帰るから!)
ルアナは剣の柄を痛いほどに握りしめた。
そそぎは歴戦のイレギュラーズではない。
重責を背負う巫女ではあれど、実際はどこにでも居そうな、ごく普通の少女だと聞き及んでいる。
それに戦場に挑む会議の中で、そしてこの地におけるいくらかの冒険の中で、ルアナもまたこの国の在り方や、長い時間を燻り続けた歪みを理解するに到った。
双子巫女(つづりとそそぎ)は、そんな社会における人柱(いけにえ)だ。
だからこそ、これからそれを正していくために、ルアナは絶対に負けられない。
冥の斬撃が放たれる僅か直前に、がら空きの胴へ向けて、ルアナの斬撃が乱舞する。
大剣が戦場を駆け抜け、無数の血花が舞い散った。
「当代巫女――そそぎ殿は己と共に、世を挽き潰す使命を帯びております。
やがて来たる平等のために、貴殿等の足掻きはいずれにせよ無駄となりましょう……ふふ」
喉の奥で卑踏が嗤う。
「あんな子に、あんなことを言わせるなんて……」
そそぎの身体を使い罵詈雑言をまき散らす複製肉腫に、怒りの炎が燃え上がる。
「あの子を、絶対にここで終わらせたりなんかさせない!」
決意と共に『清楚にして不埒』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が振り返る。
「敵が陰の気ならこっちは陽の気! 宣明サン! やるよ!」
「承り申した! へぇびぃめとおおじゃぁああある!」
「そうだよ。誰かが犠牲になる終わりなんて、私だって絶対にお断りだからね!」
梅の花びらを纏い、『麒麟の加護』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が美しい指先で指し示す先――
「例えどれほど細い希望であったとしても、掴んでみせる! それでこそヒーローってものでしょう!」
――白の《ガランサス・ニヴァリス》が咲き乱れ、刹那の衝撃が邪しきを撃ち貫く。
●
イレギュラーズの猛攻は、先陣を切った風牙と共に敵陣へと浸透を始めている。
零れたものは兵達に着実に拾わせ、まずは堅実な各個撃破を目指すのだ。
大凡の目標は十五の撃破である。
彼我の戦力差、より正確には数の差を乗り越え、そそぎの救出に繋げる作戦だ。
ならば敵方はどうか。卑踏の狙いは妖に兵を殺させることである。
亡者を妖とする権能を有し、人の無念から生じる穢れをまき散らすことこそ、本懐へ通じる。
一匹の妖が侍の腕に食らい付き、地へと引き摺り倒す。
侍は雄叫びをあげ蹴りつけるが、妖の鋭い牙は喉笛を噛み切らんとしていた。
振るわれる妖の術に爪牙、降り注ぐ闇の矢雨は、けれど。
「やらせるものかよ。おい、アンタには足がついてんだろ」
ミーナの術式が温かな光を湛え、自陣へと救いの音色を奏でる。
妖を蹴りつけた侍は、ミーナに癒やされた腕を振るい、脇差しを妖へと突き込んだ。
此の世のものならざる絶叫と共に、妖が闇へと還る。
「いいかんじだね。それじゃあ全軍、前進だよ!」
「応!」
魔性の直感で自陣の災厄を打ち払ったバスティスの号令に合わせ、兵達は更に踏み込んだ。
戦場を穿つ光翼の乱舞と共に、兵達もまた果敢に敵陣を切り拓く。
勝敗の行方は未だ混迷のままに、しかしイレギュラーズの猛攻は止まる所を知らない。
「みるびい殿、もしや歌(ろっけんろうる)のお次は、舞踊(だんす)の披露(きめ)時におじゃろうか」
「宣明サン、アンタ分かってるじゃないか」
数匹の妖が弧を描き、得物を狙い定める猛獣のように牙を剥いている。
背を合わせたミルヴィと宣明二人は剣を抜き放ち、地を蹴りつけた。
妖にここを突破されれば、拮抗が崩れる。
勘づいた冥の一人が指で仲間に合図を送るが、ミルヴィの斬撃は遙かに速い。
闇夜の舞台を踊る暁の剣姫が妖(いのちならざるもの)の一体を斬り伏せ、あるべき自然へと還す。
背の向こうでは宣明もまた妖に斬撃を見舞った。
さすがのミルヴィには及ばぬが、一角の剣士たる矜恃を見せつける。
「貴方たちの相手してらんないの! さっさとやられて転がってて!」
ルアナが対峙するものは、人の想いそのものなのであろう。妖も、生きた冥も、おそらく卑踏さえも。
積み上げられた憎悪と嘆きは、しかし勇者こそが打ち払うべきもの。
果敢に飛び込むルアナの乱撃が、数体の妖を切り裂き、一体を消し飛ばす。
視線で冬佳へと合図を送ったアレクシアは、ミーナを支柱とした陣の両翼を広げるように歩みを進める。
相紡がれるのは白の波動、二重の術式。
清冽なる氷刃と雪花による十字砲火が敵陣を撃ち貫き、妖の数体が同士討ちを始めた。
敵陣が俄に崩れる。これを逃す手はない。
「ねえ愛無。分かるでしょう?」
恋を知らぬ耳年増な乙女が、蓮っ葉の真似事でも囁くような声音で尋ねる。
「もちろんだとも。こんな所で君が言いそうな事ならば、なんだって」
「あの点を砕くの。それって最高にハジケてるって思うでしょ?」
「徹頭徹尾において、全く同感だ。無論付き合う事を許してもらえれば光栄だが」
「Вот это да(いいじゃない)! あなただって、いつも最高に嬉しい言葉をくれるのね」
「君のお眼鏡に適ったならば、これ以上はないな」
愛無は人形のように端正な顔を崩し――突如放たれた咆哮が冥の脳髄を揺さぶった。
それと同時に、数本の軍刀を放ったリーヌシュカが、敵陣へ斬撃の嵐を見舞う。
「知ってた? 鉄帝国ではわたし一人を一部隊と数えるのよ!」
「なるほど、海向こうの帝国とやらは、さぞ人手不足とお見受けする!」
斬撃に傷つきながらも死角へ斬り込んできた冥は、しかし突如黒い塊に跳ね飛ばされた。
「あっ、ぐっ」
地に背を打ち付けた冥が、腐食性の物質を振り払おうともがく。
「ありがとう、さすがね。けど次はそうはさせないわ!」
「受け取ろう。実に君らしい」
「実に……実に憎らしい。やはり妖風情では役立たずにありますか!」
卑踏が動いた。権能の一つ大妖鬼嘯は集中を要する。
卑踏の戦力は甚大だが、逆に妖の戦闘力は大幅に低下するということ。
「だったら、チャンスに変えますよ」
妖刀を振りかぶったきりが踏み込む。神速の斬撃が駆け抜け、一刀。更に一刀。
軌跡が闇夜を切り裂くたびに、妖が虚空へと溶け消えてゆく。
●
これでようやく、十五だ。
作戦は次のフェーズへと移行する。
さしもの冥は僅か数名の戦闘不能に止まるが、妖はその大部分が掃討されていた。
卑踏の火力は甚大であり、特に傷の深い数名の兵達には危険過ぎる。
誰しも傷ついていないものなど居はしないが、だがものには順序というものがある。
だからそうした兵は、まずイレギュラーズが一旦後方へと下がらせた。
アレクシアが紡ぐ術式――ティフェア・フォリアの色彩が侍の身を包む。
「……誠、かたじけのう御座る」
「気になんてしないでよ。これが私の役目なんだから!」
「ありがたきお言葉、なれば我が身も一層奮い立つ!」
ようやく勝ち得た数の優位とはトレードオフとなるが、傷が癒えれば復帰出来るのだから問題はない。
第一に死体を操らせる愚を冒す訳にはいかず、そも兵であろうとも死なせることなど許すものか。
いかなる側面からも、殺させてやる訳にはいかないのだ。
「そそぎ、待たせたな。今から悪いもん引っぺがすからな!」
駆け抜ける風牙が叫んだ。
「あっは! そんなこと、させると思う? この子の身体は私のものよ!」
「思われなくたって、するんだよ――!」
跳躍し、朱塗りの柱を思い切り蹴りつけた風牙は、刹那の間合いでそそぎへ迫る。
全身全霊を一点収束させた刺突、一迫彗勢が首元で蠢く複製肉腫を貫いた。
黒い破片が飛び散り、そそぎの白い首が僅かに顔を覗かせる。
もみ合うように落下した二人は、けれど大地を蹴り互いに間合いを開いた。
「そそぎさん、よく頑張りましたね」
掲げるように伸ばした手の先に輝く美しい指輪に左の手を添え、冬佳はまっすぐにつづりを見据えた。
光が闇を切り裂くように破邪の五芒星を描く。
「今少し耐えてください。貴女を包む汚れを祓います――禊祓」
刹那――轟音と共に退魔の雷光が爆ぜ、そそぎを覆う闇を強かに撃ち貫いた。
あの闇を、あの膨大な穢れの塊を全て祓い落として肉腫を伐ち、そそぎを取り戻すのだ。
そそぎは纏う闇に担ぎ上げられるように、宙を舞っている。
卑踏と共に広範囲を狙う攻撃は些か以上に乱雑だが、それはそれで脅威には違いない。
当人はあふれ出す穢れの器に過ぎないが、なるほど神威神楽に積もり積もった怨念とは侮れないものだ。
「貴女の苦しませているもの、今取り払ってあげるから。お願いこっちに降りてきて!」
何はともあれ、まずはこちらへ引き付けねばならぬ。
叫んだルアナへ首を傾げたそそぎは、昏い喜悦に満ちた表情を俄に歪めた。
「……よこし、なさいよ! これは、私の身体。おまえのなんかじゃ――ない!」
そう叫んだのは肉腫の意思か、それともそそぎ本人か。
間違いない――後者だ。
身を包む黒い汚泥のような闇の塊を鷲掴みにしたそそぎが、地上へと転げる。
「やらせんぞ、小童共めの浅知恵が!」
舌打ちし、そそぎの元へと駆ける冥の一人へ、しかしアランが斬り結ぶ。
「邪魔だ、そこをどけ!」
「やれるもんなら、やってみろや。隠密さんよ!」
火花を散らす斬撃の応酬はすぐさま鍔迫り合い――
「……――ッラァ!」
裂帛の気合いに冥の小太刀がひび割れ、砕け散る。
弦が弾けるように駆け抜けた斬撃が、冥を袈裟懸けに斬り伏せた。
すかさず、冥のさらなる一人が斬り込んでくるが、大剣を片手に任せたアランは、左手に顕現させた擬似聖剣を鋭く突き込み、続く大剣の斬撃を見舞う。
十字に駆け抜ける軌跡を残し、二人目の冥が仰向けに倒れた。
「はてさて、ここへきて大切な依代を、己がみすみす奪わせるとお思いでしょうか」
嗤う卑踏の声音に呼応して、残り少ない妖が駆ける。
「思ってなんていないよ。けどね、ただやり抜くだけなんだよ、私達は!」
腕を真っ直ぐに天へ伸ばしたアレクシアに集う鮮やかな色彩が収束し、白へと変わる。
戦場に聖純なる純白の花びらが舞い、妖の邪な実体そのものを蝕み、一行の災厄もまた打ち払った。
「今だ、行け!」
アランは跳ね起きた冥の刃を、受け流して叫んだ。
「お前も頑張ったよな。必死になって意識繋いで、闇の誘惑跳ね除けてさ。私にはできねぇよ」
「誰に言ってる訳? そんなことば、あの子には絶対届かせない」
「届いてるだろ、肉腫如きがデカイ面してんじゃねえ」
ミーナもまた踏み込んだ。闇夜に燦然と輝く蒼い切っ先――その封魔の一撃が澱みを引き裂き、闇が俄に動きを鈍らせる。闇の矢雨が止んだ。肉腫はもはや至近戦しか叶わない。
「つづりはいってたぜ。そそぎ、アンタと一緒に帰ってこいってな。さあ、一緒に帰るんだ!」
そそぎの元へ踏み込んだきりが、凜と鯉口を切った。
「たしかに、任されましたよ」
神速の抜刀から放たれる光の軌跡が、そそぎに群がる闇を切り裂いた。
のたうつ肉腫が、そそぎが纏う衣服の間からあふれ出す。
「待っている人が居る、彼女の未来をこんなところで奪わせはしません」
何に代えてもだ。きりは更に一歩踏み込む。
駆け抜ける斬撃が肉腫を切り裂き、無数の闇がきりの肌を引き裂き、赤い霧が舞った。
「柄でもないですけど、まだ倒れる訳にはいかないんですよね」
可能性の炎を燃やして、きりが震える膝を叱咤する。
一行はいずれも満身創痍の様相であった。
残された力は、決して多くない。
だがきりが、仲間達がこじ開けた機会を、冬佳は決して逃さない。
五芒の光条が導く退魔の陣に、肉腫はついに溶け消え、支えを喪ったそそぎが闇の汚泥に転げた。
「『次』は思ったより早かったろう?」
倒れ伏したそそぎを助け起こしたのは、愛無であった。
「……ありがとう、本当に。そしてごめ――」
「無理に喋らなくていい」
愛無は咳き込むそそぎの背をさすり、抱きかかえようとする。
「……待って。この力がまだ残って居るうちに。あれを一発殴らせて」
唇を歪ませたそそぎが、未だ纏う穢れを拳に束ねた。
「せめて、遠くからにしたまえよ」
「……分かってる」
「ろっくな顔つきになった。矢張りつづり君と似ているな」
愛無の言葉に微笑んだそそぎは弓状に展開した闇を引き絞り、一気に解き放った。
一直線に飛んだエネルギーが、卑踏の胸を貫き天へ駆け抜ける。
それと同時に、そそぎは愛無の身体へと倒れ込んだ。
「あとは……お願い、ね」
そそぎは目を閉じた。最早動く体力は残されているまい。
「その為に僕は此処に来た。君は必ず護る。安心したまえ」
「さっきの借りを返すわ。ここは任せて、早く行きなさい、愛無!」
「頼む、リーヌシュカ君」
戦場後方へと一気に跳躍した愛無は、加速装置と共に侍へとそそぎを預ける。
「我が命に――否、我が藤沢の家名にかけても、巫女殿はお守り致す!」
直後、藤沢が何事か叫びながらカッ飛んだ。
「では僕も戦場へ戻ろう。せめて一口かじれるように、待っていてくれたまえ」
「ならぬ、ならぬ、なりませぬ。依代は渡すものか」
口元から黒い汚泥を吐き出した卑踏が喚きちらす。
「あの子はアンタの子供同然なんでしょ? 利用だなんて情けない奴!」
そそぎの元へ、一直線に宙を駆ける卑踏の前に立ち塞がったのは、ミルヴィである。
「大地の悲願は、果たされねばなりますまい。海向こうの者共に何が理解できましょう」
舞うように放たれた鋭い斬撃を厭わず、卑踏はミルヴィに背を向けるが。
「悲願がどうとか言うけどさ。少なくとも、アンタはアタシから逃げる気だ」
「何を申しますやら。その命、ここで散らすと言いまするのか」
振り返った卑踏が俄に殺気立つ。
「で、結局やるの、やらないの?
アタシは逃げたアンタを畏れもしない。
そもそも背を向けた時点で、あんたは自分自身その程度の存在だと証明した事になる!」
「其れは無理を通す屁理屈にありましょう」
だが苛立つ卑踏は、纏う闇の波動をミルヴィへと放ち――
●
「何人動けるかな?」
小さな問いに、兵達は「応」と叫んだ。
「ここからは二人一組で散開して、あれを伐つんだ」
バスティスが指さすのは、立ち上がった冥――その屍を借りた新たな妖だ。
「応!」
「麻呂も混ぜるでおじゃる!」
宣明が声を張り上げた。
「必ずや勝ちましょうぞ!」
「勝利の暁には、皆で必ずや猫見参道へ参拝致す!」
「そこは、うん。よろしくたのむね」
バスティスと共に、兵達が再び進撃を開始した。
清らかな光を湛えて、バスティスは斬り結ぶ兵達の傷を癒やす。
冥の身を借りた妖はひどく強力だ。
対する兵達は、イレギュラーズには及ばない。
だからこんなことが、いつまで持つかは分からない。
だが決して諦める訳にはいかなかった。
バスティスの志願部隊が敵を引き付ける一方で、イレギュラーズは卑踏の喉元へと迫っている。
「それをやったからには、アタシはアンタを永遠に許さない……!」
「結構! それもまた平等と云うものにありましょう!」
卑踏の一撃はミルヴィ諸共に、倒れ伏した冥をも貫いていた。
冥が、その身体が、這いずるようにゆっくりと動き出す。
殺した相手を不浄、汚泥、穢れによって即座に操る術らしい。
「アタシはここでアンタを祓う!」
激情に瞳を燃え上がらせるミルヴィが、卑踏に斬撃を刻みつける。
「最後にお前だ!」
風牙が槍を構えた。
「卑踏さんだね。貴方の企みはここでおしまいだよ」
肩で息するミルヴィの横にルアナが立ち、卑踏へと切っ先を向けた。
「よぉクソ野郎。テメェを倒す為にどえらい苦労したもんだぜ」
その後ろで、ミーナもまた聖剣を掲げた。
「このまま、一気に行くぜ!」
ミーナの号令と共に、ルアナは卑踏の元へ一気に踏み込んだ。
「豊穣を混乱に陥れた始末、つけてよね!」
凛と声を張る。法理の剣が、大妖へ断罪の牙を突き立てる。
澱みをまき散らしながら、卑踏が喚いた。
「させぬ、させぬ、させはしませぬ。転輪の理は決して終わりはしないのです」
――幾度かの攻防に、未だ終焉は見えぬまま。
イレギュラーズの猛攻をも押し返すように、卑踏もまた苛烈な反撃を続けていた。
「なぜ分かりませぬか。全てを等しく穢し、世を挽き潰せば良いのだと。
其れで漸く、散った命共の溜飲が下りる。全ては等しく平らとなる。
そうしてはじめて人の世にはびこる憎しみは祓われ、消えて無くなりましょう。
この地で綴られてきた罪は濯がれるのです。当代巫女殿は、その才覚を有する。
当代巫女は、穢れの一族は、此の黄泉津の大地は、そうして救われるものであります」
「今、時が来ているのです。永く重い穢れを重ね続けた歴史の果て、その在り方が大きく変わる時が」
だが冬佳は卑踏の言葉を一蹴した。
古の時代に、罪と穢れに耐えられなかった者が居たのは事実であろう。
人は過ちを犯す生き物であり、積み重なった歪みそのものは、致し方のない事かもしれない。
だが、それで終わらないのが人が人たる所以である。
過ちを重ね続けても、人は何れ正しき道を選び取ることも出来る。
「その未来を、もはや昔日の闇たる貴方に否定はさせない――忌拿家・卑踏」
癒やしの術式による、戦場を立て直した冬佳は、再びその指先を卑踏へと突きつけた。
破邪の五芒から放たれた光――破魔雷煌の雄叫びが戦場を劈き、卑踏を灼き貫く。
「行きますよ。たまには派手にやらないと、ですからねー」
身じろぎする卑踏へ肉薄したきりが、神速の斬撃をたたき込む。
駆け抜ける軌跡は三閃。そのいずれも卑踏の身体を深く切り裂いた。
「神使風情が、人間の分際が、己の身を滅ぼせると夢想なさるのか」
卑踏が戦慄いた。
「しかしてそれもここまで。貴殿等とはいずれ――な、忌々しき光を、よくも!」
「さぞ眩しかろうよ。俺はお前のことなんざ知らねぇ。今助けた巫女のガキの事も知らねぇ」
アランが大剣を振りかぶる。
「だから助ける、だから壊す。見せてやるよ。ここからの俺は修羅……いや、真の勇者だ」
「戯れ言を申すな。この澱みは決してきえはせぬ!」
「ごちゃごちゃとうるせえ! 俺は太陽の勇者――アラン・アークライト! お前はここで、必ず殺す!」
セレネを顕現させたアランが放つ十字の斬撃が、卑踏の身を切り裂いた。
イレギュラーズは卑踏を光の檻に閉じ込めている。
情報は古い伝承と以前の戦闘に依るもので必ずしも定かではないが、卑踏は恐らく闇潜匿影の術を以て影の中へと逃げ込むことが出来る。
「……お待たせした」
漆黒の塊が逃げようとした卑踏を打ち付け、再び光の檻へと吹き飛ばす。
戦場に戻った愛無もまた、光の檻の一翼に加わった。
「さて、一口囓らせてもらおうか」
あくまで淡々とした声音を残し、漆黒の怪異が咆哮した。
「今まで何人がお前の前で無念に斃れたか!」
散っていった命のためにも、カムイグラのためにも。
「前へ!!」
全てを救うために。この剣で、皆で必ず! 絶対に!
「てめえの言う『平等』なんぞクソ食らえだ!
ここでお前を討ち、お前とは別の形でそれを叶えてみせる!」
裂帛の踏み込みと共に天地が震える。
閃光を纏った風牙の姿が掻き消えた。
音速を打ち破る轟音と共に、彗星の如き軌跡を残した風牙は、卑踏の背後に現れる。
炸裂する光が、卑踏の左半身を吹き飛ばしていた。
卑踏の身体が徐々に崩れてゆく。
其れは最早、人の形を為していなかった。
虚空からあふれ出す澱み、穢れの汚泥そのものであった。
漆黒の穢れをどろどろと零しながら、卑踏は――穢れの塊は尚も身体を振り、逃げる機会を伺う。
更にたたき込まれ続けるイレギュラーズの猛攻を前にに、汚泥の塊は歪み、一気に膨れ上がる。
己を形成していた力すらも、解き放つつもりなのだろう。
あれを形作る一滴すらも、逃せば元の木阿弥だ。
しかし、それでも。
卑踏はイレギュラーズが築き上げた光の檻から、逃れることが出来なかった。
「いい加減に、もう眠りなよ。私達が必ず未来を切り拓いてみせるんだ!」
アレクシアの足元から閃光が迸り、極大の魔方陣が花開く。
左手に顕現した仮初の弓を引き絞り、アレクシアは光を束ねた。
黄金の煌めきが舞い、希望の矢が解き放たれる。
続くアランの斬撃が駆け抜け、遂に汚泥がぐずぐずと崩れ始め――
「お疲れ様。終わったね」
卑踏という原動力を失い、冥が再び倒れ伏したのを確認したバスティスが、兵達を労った。
武器を支えに膝を震わせる者、その場にへたり込む者、いずれも呆けたような顔をしている。
――かつて己は、己共は、獄人と名付けられし、神の矛でありました。
遍く命は総て神子であり、神遣でありました。
されどいつしか人の世は移ろい、斯様な煉獄へと成り果てた。
己は、否、かつてつむぎと呼ばれた者は、そこへ生を受けました。
世のすべては、すでに澱み穢れておりました。
今の己はそれを決して赦さぬ者であります。
「……然り。されど神使よ。己が消え果てようとも、この闇は決して拭えはしませぬ」
最後の言葉へ、アランは静かに背を向けた。
「だったら冥土の土産に覚えとけ。お日様に照らせねえもんが、この世にある訳ねえだろうが」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
卍ゴイスー。依頼お疲れ様でした。
神威神楽の黄泉津言葉に習いまして。誠に御美事です。
何か一つでも欠ければ成し得なかった最高の結果でしょう。
少なくとも卑踏撃破の可能性は、ほぼないと考えておりました。
いや、普通そう思いません!?
MVPは潤滑油となった方へ。
それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。
GMコメント
pipiです。いよいよ決戦ですね!
書きすぎたのは、ごめんなさい……。
既にお気づきでしょうが、実はこの戦場は10人のEXシナリオです。
いわゆるイベントシナリオ形式の、決戦やRAIDではありません。排他もありません。
そしてこの作戦の難易度はVERYHARD、つまり成功の見込みが非常に低いものとなります。
あらかじめご承知置きの上で、ご参加頂ければ幸いです。
ただし一応、成功出来なくはない……とは思っています。
●諸注意
本作に細かな時系列は余り関係ないのですが、この依頼に限っては、もみじSDの『<神逐>月途の誉』の前にあたります。
排他ではありませんが、成否や状況に互いの影響を受ける場合があります。
●目的
以下、全て必須です。一つでも満たされない場合は失敗となります。
・此岸ノ辺の巫女『そそぎ』を蝕む複製肉腫を祓い、連れ戻す。
・忌拿家卑踏の討伐。確実に討ち滅ぼすこと。
・妖共の撃破。
・天香の隠密衆『冥』の撃退。
・イレギュラーズ及びリーヌシュカ達の生還。
※味方の兵達や、真坂門宣明の生死は不問です。彼等は足手まといになることを望みません。
●ロケーション
高天御苑。
おおざっぱにいえば、京の城の外郭部にあたります。
平らであり広いので、その辺りにはあまり注意を払う必要はありません。
●敵
《転輪穢奴》忌拿家・卑踏
強大な妖です。どう見てもボスで、実際にボスで、異常に強いです。
ついでに言えば、間違いなく現在の事態を招いた元凶の一角です。
人外ステータスですが、HP、AP、神攻、防技、抵抗、EXAが特に高いようです。
性格(と云えるかは疑問ですが)自信家で好戦的な傾向はあります。
以前の戦闘の結果、及び伝承を調査した結果、以下の能力が判明しています。
・蠱毒糾糸(A):物中範、識別、致死毒、流血、呪縛、窒息、停滞、必殺、ダメージ
・暗劔殺(A):物遠範、識別、不吉、不運、致命、暗闇、万能、スプラッシュ小、ダメージ
・影惑厭魅(A):神中範、識別、恍惚、狂気、封印、鬼道小、ダメージ
・????(A):神??、?????(おそらく不浄、汚泥、穢れに関する攻撃術)
・????(A):不明。攻撃ではあると思われる。
・大妖鬼嘯(P):死者を怨霊や妖として操る術と思われる。
恐らく人を邪道へ拐かす術とも思われる。
また他の行動をしない時、レンジ4以内の怨霊や妖のステータスを大幅に向上させる。
・闇潜匿影(P):不明。おそらく卑踏はマーク/ブロックされない。
また、なんらかの条件下で戦場を離脱する術と思われる。
・吉凶輪転(P):不明。おそらく影響範囲は自身。CTやFB値への限定的干渉と思われる。
・不浄の澱(P):不明。おそらく効果量がなんらかの条件に左右される自己回復能力と思われる。
・飛行(非戦):ただの飛行能力。
『此岸ノ辺の巫女』そそぎ
複製肉腫と、この地を歪ませている呪詛や穢れに操られた状態です。
非常に好戦的な人格に支配されています。
そそぎの精神それ自身は、心を閉ざしたまま皆さんの助けを待っています。
状態は察することが出来ます。どうにか倒して、複製肉腫を剥ぎ取ってあげましょう。
絶大な神攻以外に特筆すべきステータスはありませんが、複製肉腫であるため、そこそこ強いです。
・けがれの槍(A):神中範、呪殺、ダメージ
・けがれの雨(A):神超域、ダメージ
・浮遊(非戦):要するに飛行です。
『冥』
精霊種(ヤオヨロズ)の精強でバランスの良い部隊です。
それなりに精鋭であるため、割とそこそこ強いです。
卑踏と連携して行動します。
・近接型×8
刀を持っており、積極的に近接戦闘を挑んで来ます。
中~遠距離では鋼糸や投擲型の暗器も使用するようです。
バランスの良いトータルファイターです。
保有BSは致命、流血、猛毒、足止め、必殺
・遠距離型×4
投擲型の暗器を多数もっており、遠距離から集中攻撃を仕掛けてきます。
高命中、高威力のアタッカーです。
接近した場合には、暗器を駆使した格闘戦も行います。
保有BSは必殺
・遊撃型×4
遠近の攻撃手段を持っており、臨機応変に戦います。
やや脆いですが、命中回避防技抵抗に優れています。
保有BSはブレイク、Mアタック
・支援型×4
呪符や巻物などを使用し、遠距離から攻撃と支援を行います。
接近した場合には、体術を駆使した格闘戦も行います。
保有BSは業炎、痺れ、ショック、呪殺
『あやかし』×20
獰猛な獣のような姿のあやかしです。
強くはありませんが、中々にタフで俊敏なようです。
また攻撃力も侮れないでしょう。
保有BSは毒、出血、火炎
●味方
『セイバーマギエル』エヴァンジェリーナ・エルセヴナ・エフシュコヴァ
愛称はリーヌシュカ(p3n000124)
皆さんと一緒に行動します。
勝手に皆さんと連携して戦闘しますが、やらせたいことがあれば聞いてくれます。
必要分の他は、プレイングで触れられた程度にしか描写しません。
ステータスは満遍なく高め。若干のファンブルが玉に瑕。
・格闘、ノーギルティー、リーガルブレイド
・セイバーストーム(A):物近域、識、流血
『中務省陰陽寮直属志願隊』×18名
侍4名、兵士8名、隠密2名、陰陽師4名の部隊です。
皆さんと一緒に行動します。士気は高いです。
勝手に皆さんと連携して戦闘しますが、やらせたいことがあれば聞いてくれます。
皆さんのプレイングを理解し、出来るだけ足を引っ張らない形で戦おうとはします。
ただし残念ながら、全員合わせても皆さんと同等の戦力と云えるかは疑問です……。
必要分の他は、プレイングで触れられた程度にしか描写しません。
・侍:弓や刀で武装した、なかなか頼れる奴等です。
・兵士:槍で武装し、皆さんへの信頼と勢いだけはある奴等です。
・隠密:素早い行動で、敵へ奇襲等を仕掛け、その後は直接戦い支援してくれます。
・陰陽師:遠距離から攻撃や回復の術で支援してくれます。
『真坂門・宣明』
皆さんと一緒に行動します。
勝手に皆さんと連携して戦闘しますが、やらせたいことがあれば聞いてくれます。
へんなお公家さんです。実は弱くありません。
あくまでそこそこ程度……ですが。
一応『<巫蠱の劫>真坂門夜美逸雷舞』というシナリオに出ています。
知らなくても問題ありません。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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