シナリオ詳細
【シギズィーランドへようこそ】わくわくゾンビーパーク
オープニング
●前提的スプレマシー
ここは最近人気の巨大テーマパーク『シギズィーランド』。
園全体の面積は不明。入場ゲートで配布されている地図を見ても、所々が黒く塗りつぶされているばかりか、大部分が『未到達区域』として明らかにされていない。
そのシギズィーランドで近日公開される新アトラクションが『わくわくゾンビーパーク』である。CMが流れ、新聞の折込チラシも毎日の様に挟まっている。
『ゾンビパニックを体感できる』『安心安全にゾンビになれる』という見出しが目を引くものだが、その詳細もまた不明であり、『シギラー(シギズィーランド愛好家のこと。または年間パスポート所持者のことを言う)』は公開日を今か今かと待ち続けていた。
●試験的ハザード
「というわけでだ、新規アトラクションのテストと新CMの撮影を兼ねて、諸君らにはこの『わくわくゾンビーパーク』で一日遊んでもらいたい」
依頼人としてローレットに募集をかけたその男は、新規解放されるという区画を指し示してそういった。
区域は一言でいえば、夜の墓地である。
墓石が不揃いに立ち並び、時間に関係なく薄暗く、灯りは弱々しいランタンがいくつか下げられているのみだ。
なにか出そう、霊感のまるでない者でも、きっとそう言うに違いない。
「アトラクションの説明をするとだね―――」
ここは、『ゾンビパニックを安全に体感できる』アトラクションであるという。
アトラクションが開始されると、墓の下から無数のゾンビが這い出てくる。一般的な食べることだけを考えるゾンビから、昨今流行りのダッシュ決めるやつやムキムキのやつや粘液吐くやつまで、種類は様々だ。
それらを倒し、くぐりぬけ、ゴールまで辿り着くか、時間いっぱいまで生き残ればクリアなのだという。
しかし問題がある。ゾンビに噛まれればゾンビになるのが道理である。無論、客の人生を終わらせるアトラクションなどあってはならない。
「しかし、ここのゾンビは品種改良に成功したのさ!!」
ゾンビに噛まれるとゾンビにはなるが、アトラクションが終了すると元に戻り、後遺症のたぐいも一切ないのだという。
ゾンビパニックを体験でき、ゾンビに捕まってゾンビにされても無傷で元に戻ることが出来る。
無論、ゾンビに食べられてもノーダメージだ。パット見思いっきり食べられているように見えるかも知れないが、ノーダメージったらノーダメージだ。
「そうこれは、ゾンビパニックのどちらサイドも体験できる夢のアトラクション!!」
そんな体験したいやつがいるんだろうか。
「というわけで、安心してゾンビから逃げたりゾンビを倒したりゾンビになったりしておくれ」
まあ、お金がもらえて未公開の最新遊具で遊べるのだから、それはそれでいいのかもしれない。
- 【シギズィーランドへようこそ】わくわくゾンビーパーク完了
- GM名yakigote
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年07月31日 22時55分
- 参加人数23/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 23 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(23人)
リプレイ
●正気を削るテーマソング
シギズィーランドは入園料が無料であり、金銭が必要となるのは園内での飲食・買い物のみであり、アトラクションの類は全て無料で利用できる点で大きく話題を呼んでいる。
それで収支が取れるのかと疑問視される声もあるが、実際に稼働しているのだから、問題はないのだろう。
入場ゲートをくぐれば、枕元まで耳にこびりつくと大人気のテーマミュージックが流れ、マスコット達がお出迎えしてくれる。
いつもなら、そのままどこへ行こうかと、マップとにらめっこをするところだが、今日は違っていた。
今日の目的はわくわくゾンビーパーク。
エリアに入れば、急にBGMが鳴りを潜め、周囲は薄暗くなり、真っ昼間であっても、夜へと変貌する。
そこは大きな大きな墓地で、カウントダウンが終われば、土の下から腕が何本も何本も突き出して、中から這い上がり、命を求めて死者が動き出す。
ここはゾンビーパーク。
世界で一番安全なバイオハザード。
●怪我をするとか心に傷が残るとかそういう面での配慮は致しませんとチケット裏に記載されている
「ちょっと待てや何がわくわくなんスかこれはァ!?」
葵が何やら叫びながら駆けていく。さすがはスポーツマン。そのスピードは並ではない、が。
「う゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
最近はダッシュするやつが居る。美しいフォームで走り抜けた葵の後ろを、両腕を前に突き出したゾンビースタイルで追従する汰磨羈ソンビの姿があった。
「ていうかゾンビってダッシュ出来んのかよ!? スゲェな!」
だってゾンビって脳のストッパーが外れてるのでうんぬんかんぬん的なあれこれだから脚が速くたっておかしくはないのだ。
「('ω'≡'ω')あ゛ーーーーぉ゛ぅ゛!!」
しかし、残念ながら脚が遅く、彼らのランニングデッドについていくことが出来ないゾンビも存在する。
「……ヴァーッス゛」
ジルゾンビである。誤変換で液体攻撃できそうだったことは秘密にしておこう。
悲しいかな、ジルゾンビの脚ではボルテックな追いかけっ子が難しく、生存者を追いかけても逃げられてしまうのだ。
「ヴァーヴァーヴーヴーッス゛……ヴァッ?」
あなg……ソンビ語で隣のお仲間にどうしたら追いつけるものかと相談するジルゾンビ。
話しかけられたスノウもその哀愁漂うさまに同情したのか、同じくゾンビ語で返答していた。
「う゛ぁ゛ー……」
「ヴァーヴァーヴッッヴァ、ヴァ?」
「う゛ぁ゛ー……」
生存者目線では全く意味不明だが、どうやら会話は成立しているらしい。
ところで、ジルはスノウが噛まれていないことに、いつ気づくのだろう。
その隣を、ノリアが悠々と通り過ぎる。
「海に、いたころは、わたしは、デトリタスを、食べていましたの」
まあ生物の死骸とかそういうのである。つまるところ、安全なゾンビなどノリアにとってはかつて食用であったもの、恐れることはない。
こともなかった。
むんず、っと。ノリアのつるんとしたしっぽが掴まれる。相手はゾンビ、動かないデトリタスと違って自分から攻撃してくるのである。
「貴方。とても美味しそう。私がゾンビにしてあげる」
そう、コレットゾンビのように。
ノリアの中で蘇る、大魚に噛みつかれた記憶。パニックに陥ったノリアは一目散に逃げ出した。
「おいしく、ありませんの……! ありませんの……!」
逃げ出すノリア。しかし獲物を定めたコレットゾンビの目が光る。
「逃がさない」
駆け出したコレットゾンビの居た近くで、幻が入場ゲート付近で配布していた園内マップ片手に悩んでいた。
「え、なんで、僕、こんなアトラクションに参加してるんです?」
どうやら間違えて入ってきたようである。周りがローレットの人間ばかりだったので、思わずついてきちゃったのだろう。
その隣で、ローズゾンビもまた自分の失敗を実感していた。
「なんで私、こんな擬態が解けるに決まってる試運転に参加しようと思ったんだろ」
結構な割合で元からゾンビさんが参加しているが、この園内に特殊な誘引効果でもあるんだろうか。
「あ、『シ』と『ツ』を間違えてます! まさか、読み間違えて、違う場所に行ってしまうとは……!?」
「はっ、レオンきゅんから『依頼に参加して(可能な限りイケメンボイスで真似ること)』されちゃったからだ!」
双方、理由が判明したようで何よりである。うん、ねえよ。
二人は同時にため息を吐いていた。
焔とフランは既にゾンビとの大立ち回りを終えた後だ。
彼女らは襲いくるゾンビを千切っては投げ、千切っては投げ、力で敵わないところは知恵で戦い、知恵でもどうにもならなければマッスルで解決し、最後には小高い山で100体のソンビ達が合体したキングゾンビーと物件を巡る戦いを繰り広げ、お邪魔カードを駆使して目標の駅にようやくの思いで到達し、
「噛まれたね……」
「噛まれたね……」
噛まれたのである。
噛まれたからにはゾンビである。
ゾンビになったので生存者を噛まねばならないのである。
二人はお互いを見つめると、強くうなずきあった。
「「お胸の大きい人を狙おう」」
こいつら、同物同治を狙ってやがる。
「ねぇ、何ここ!! なんであたしはこんなトコに居んの!?」
二人が振り向くと、丁度いい獲物、もといリアが叫んでいた。
怖いものが苦手なはずだが、どうしてここにいるのだろう。たぶん経験から言ってホがつく人に騙されたんだと思う。
「ア、アオイ……アオイ……」
章の頭にいたけど、おそらくそのアオイではない。
焔とフランは誰を狙うのか決まったようで、極力優しい声音でリアに呼びかけた。
「あ、あれは……!? ア、アオイーーー!!」
アオイではないが、二人はにっこり笑うと口を開いた。
幸いなことに、お胸というものは大体ニコイチになっているので、二人で獲物を取り合う心配もないのである。
「おむね、くいちぎる、もぐ」
「おむね、せいちょう、うれしい」
「おむね、たべる」
「おむね、たべる」
「って、ぎゃーーー!! ゾンビじゃねーかーーー!!!」
逃げ出していくリア、もはや正体を隠す必要もなくなって追いかける焔とフラン。
「アオイーーー!! アオイーーーー!!!」
本人参加してないのにここまで連呼される奴、他にいねえんだろうな。
「いやあああああ!? こっちこないでぇ!?」
全力で腕も足も振りながら、逃夜が逃げていく。墓石を飛び越え、壁があれば乗り越え、狭い路地に入れば壁天井を使い螺旋状に走り抜けていく。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!! なんだよ! ワクワクとかきいてワクワクしてきたらゾンビ!? ゾンビだ?! エッ ええええええっなんだよ! こええ! こええよ!! 助けて!!」
その横を懸命に走るもうひとり、葭ノが……よく見えない。大声を出しているので存在は主張されているが、小柄な逃夜と比べてもさらに小さく、寧ろ手のひらサイズである葭ノの姿は、動きまわっているとうまく視認できない。人と並んで走るとそのうち踏み潰されそうでヒヤヒヤするな。
「羽衣教会っ! 羽衣教会っ!」
その後ろを茄子子ゾンビが追いかけてくる。手には免罪符。満たされるべきは自己発現。ゾンビが後ろから改宗しませんかと追いかけてくるのだ。
「なんか違うけど怖いいいいいいいいいいいいいい!!!」
宗教を押し付けられると誰だって怖い。
「ここまで、ここまでくれば……!!」
手近な建物に隠れ、息を潜めてゾンビをやり過ごす。遠ざかっていく勧誘の声。もう一安心かと一息ついた時、背中を預けていた壁が不意に崩れた。
「ア゛ァァァァァァァァァ……」
メアリーゾンビである。チェーンソーで壁を切り裂きながら現れたのだ。
刃の回る機械鋸が地面と擦れてぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり言っている。
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
安全な場所などどこにもない。
「キャーーッ! ゾンビよーッッ!! 助けて―くだサーイ!」
ワタクシゾンビはもうすでにゾンビになっているのにゾンビが怖いようで、生存者よりもゾンビ優先で逃げ回っていた。 普通、ゾンビになった時にもっとも切り替えられるのは、飢えでも本能でも無く美的感覚だと思う。
「叫ぶと体力を消耗するので、逃げることに集中するべきですよ」
それを助けたのはブラッドだ。聖なる光を呼び出すと、ワタクシゾンビを追いかけていたゾンビが消失した。うっかり余波でワタクシゾンビも消失しそうになったが、ローリング回避に成功する。
「お礼のひと噛みネ!!」
しかし助けてもらってもゾンビはゾンビ。本能に逆らうことは出来ず、恩人であるブラッドに噛みつこうとした、そのとき。
「危ないっ」
割って入って代わりに噛まれたのは笹丸であった。他の仲間を庇って代わりに噛まれるけど結局ゾンビ化して襲い掛かってくるムーブである。ゾンビ映画に一回はこういうシーンがあるだろう。
じっとしていて、ゆっくり振り向くと、既に肌は白く、目はうつろになっているのだ。
そうして二体に増えたゾンビ。
「握ったる……生存者のタマを握ったるで!」
なんかひとり増えていた。キンタゾンビである。だいたいのゾンビは両手を突き出したポーズをしているが、キンタゾンビはなんか違う。なんというか、構えが下段であった。
「ギャーーーーーーーーーー!!」
容赦なく聖なる光が浴びせられる。ゾンビしすべし。
「海の向こうにゃ、こんな遊び方もあるんすねぇ……」
腐り、崩れかけの自分の身体を興味深く観察している慧ゾンビ。大丈夫、海の向こうのやつらもこんな遊び初めてだ。
逃げ切れず、噛まれて、気がつけばゾンビに。脳がガンガンに飢えへの本能を訴えかけてくる。
後で戻るとは聞いてもちょっとだけ不安になりながら、叫び声が聞こえたので視線を向けると、ジョーイが無数のゾンビに追いかけられているところだった。
「ぬわあああああああ! 吾輩食べても美味しくないですぞおおおおおおおお!」
逃げても逃げても軸がぶれないフォームでゾンビが追いかけてくる。
「このままでは追いつかれて吾輩もぐもぐコンボされてしまいますぞ! こういう時には冷静に素数を数えながら対応策を考えるですな! 1! 2! 3! ダー!」
1の時点で間違いだ。
自分が、別のものになっていく感覚。恐ろしいことに、それは愉悦や快楽を伴っていた。
死者は仲間を喰らわない。
ヴィクトール自身が変質したことで、彼らも興味を失ったのだろう。
波が引くように、群がっていた彼らもざああらと引いていく。
腕を掲げてみてみれば、噛まれたあちこちを中心に、ところどころが腐って崩れ落ちている。
なんだか、ひどく腹が減った。
空腹を感じていると、誰かが仰向けの自分を覗き込んだ。
「こんなにぼろぼろに為る迄、守ってくれていたのですね」
涙を流しながら、未散は笑っている。泣いているのに、口は笑みの形をしている。
逃げてくれれば良かったのに。そうしてくれて、良かったのに。
どうしてと思いはすれど、思考がうまくまとまらない。脳の一部も食われたろうか。
それよりひどく、腹が減って、視線は彼女と言うよりも、彼女の肌に向いていた。
白くて、柔らかくて、美味しそうで。
その視線に気づいたのだろうか。
未散は首筋を見せながら、ヴィクトールに近づいていく。
ああ、この匂いだ。生きているものの、血の匂い。芳しい、美味の予感。
「本当、」
彼女が何を言っていても、耳に入らない。
浅ましく口を開き、彼女の肩を掴み、その肌に顔をうずめて。
「……本当、お人好しなんだから」
これで君も、同じものだ。
「ひやああああああああああああああ!!」
なんだかシリアス空気カマしていた隣をギャン泣きのノリアが逃げていく。
ノリアの目には、追いかけてくるゾンビ共がでっかい魚の大口に見えていた。下手すると周囲ごと丸呑みだもんな、でかい魚って。
「あんたもゾンビになれ~」
追いかけてくるばかりがゾンビとは限らない。
追跡が面倒になっていた慧ゾンビは、出口までのルートを把握して、そこに待ち伏せしている。ゾンビに知恵がついたら人間の上位種ではなかろうか。
「こうなりゃもう、何が何でもクリアしてやるっスよ!」
突然出てきたゾンビに驚愕したものの、葵はその膝と肩を足場に駆け上がると、華麗に跳躍してみせた。
視線が高くなったことで、ゴールと思われる看板が目に入る。あそこまでいけば、きっと。
「花丸ちゃんに噛まれて君もゾンビに、なろうっ!」
しかし跳躍することでスピードが落ちたのか、追いついてきた花丸ゾンビにしがみつかれてしまう。
「ほら、美少女の噛みつき攻撃だよ、喜んでよ? え、喜べない? 怖い? そんなーっ!」
まあ腐ってるし。
「醜くなって夫に幻滅されたら嫌じゃないですか」
迫りくるゾンビを振り払いながら、皆が向かっているし、まああちらだろうと検討をつけて歩く幻。
ソンビになるのはごめんだ。心が通じていたとしても、ヒトは目でものを見るのだから。
「こういうのはトラブルが生じるものなんです!」
振り払われ、獲物に逃げられたワタクシゾンビが『の』の字を書いている。
生存者には逃げられ、かといってゾンビに混じるのも怖くて、とりあえず明るい方へと歩き出した。
そんな自分とは真逆のゾンビの存在を、スノウは興味げに目で追った。
もともとゾンビであるスノウのことを、園内のゾンビもどう扱っていいか困っているようで、手を出さないでいるものが殆どであるようだ。
「あはは、ウケる」
なお、ゾンビでありながらゾンビになるというよくわからない現象を起こしたローズゾンビは、噛まれたり振り払われたりする状況に興奮していた。
妄想にドリップすることにしたのだ。どちらも美少年であるという設定に。
「監督! カメラ頂戴!」
止めるなよ。
「お肉大好き! 会長お肉大好き!」
いつの間にか、生存本能が布教欲を上回ったらしい茄子子ゾンビがそのレンズの端に映る。なんだろう、団体名を連呼していたさっきの方が怖く感じる。
「なんでなんでなんでなんで!!!?」
逃夜を追いかけるゾンビの姿は多い。どうしてなのか。多分背中に大きく『お肉』って書いてあるからだ。額以外に書いてるやつを初めて見たよ。
「……お゛ま゛え゛の゛ぜい゛がバカ手袋ぉお!?」
『愉快! 我、とても愉快なりィ!』
「ア゛ァァァァァァァァァ……」
手前のアイテムと問答している場合ではない。
メアリーゾンビは今もアスファルトの上を駆動中のチェーンソー引きずってぎゃりんぎゃりん言わせながら追いかけてくるのだから。
たとえそれが殺傷機能を削がれていたとしても、追いかけられている側に気づく余裕など無い。
「うわアアアア助けてくれェ!!!! ああああ!!!! 畜生!!!!!!!! 誰か助けてくれええエッ!!!! あっ、噛むなら優しく……」
影が差して、追いつかれたことを悟ったのか、葭ノは僅かな期待をこめて後ろをちらっと見る→チェーンソー引きずりゾンビ。
「駄目だああああああああああああああああああああ!!!!」
「ふふふ……ゾンビというものも、中々に楽しいものだな!」
汰磨羈ゾンビはいつの間にかバックダンサーゾンビを何人も引き連れて、リズミカルに踊りながら生存者に迫っていた。
「行くぞ野郎共! 至極の恐怖というものを生存者達に味わわせてやるのだ!」
ゾンビ達がアウッとか高音で返事して四股を踏むようなポーズで行進していくのを、ブラッドは至極冷静な目で観察していた。
「最近のアンデッドは愉快なのですね」
真面目な顔で頷くが、あのダンスはどちらかというともう教科書に近いレベルのものだ。
「ヴヴ……ガア゛ア゛ア゛!!!」
そこに、理性を失ったコレットゾンビが襲いかかる。
どうやら、ゾンビ化が進行することで、徐々に自我を失ったようだ。
「ヴェア゛ア゛オ゛オ゛ウ゛!!」
「ええい、こうなったら最終手段! ソーシャル! ディスタンス!」
ジョーイがその横合いから術式を繰り出すと、その結果には目もくれずに一目散に逃げ出した。そういえば、ゾンビ化って何感染なんだろうな。
もうすこし、後少し、ゴールはそこに見えている。
上から何かが降ってきた。鳥か、飛行機か、支援物資か。いいや、ジルゾンビである。
「ヴァヴァヴァーーーーーッズゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛!?」
頑張って走っても追いつけやしなかったので、適当な仲間ゾンビにゴール近くまで投げてもらったのだ。
狙いは完璧。標準良し。そのまま―――地面に顔から突き刺さった。
「…………」
生存者も、ゾンビも、流石に手を止めて様子を見ている。
何ていうか地面版犬神家。刺さるほど脳天からイッたのは、流石に危ないのではなかろうか。
皆がドキドキしながら見つめる中、しばらくもがいていたものの、そのうち動きを止め、何やら音が聞こえてきて。
「ス゛ヤ゛ァ゛、ス゛ヤ゛ァ゛……」
どうやら諦めて眠ってしまったようなので、皆がほっと胸をなでおろした。
●お礼に優先予約クーポンを貰ったらしいよ
後日。
依頼時間までの待ちがてら、適当に目についた観光雑誌を開いていると、シギズィーランドのことが書かれていた。
どうやら、ゾンビーパークは中々に好評らしく、また新たなシギラーを生み出してしまったらしい。
走って、追いかけて、追いかけ回されて、けっこう大変だったが、問題なく公開できたのなら、その一助になれてよかったとも思う。
かと言って、宣伝用の一枚写真に自分が載っていたのは、なかなか気恥ずかしくもあったのだが。
了。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
後遺症はナカッタヨ。
GMコメント
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
最近ちまたで流行りのテーマパーク『シギズィーランド』の新規アトラクション『わくわくゾンビーパーク』のテストプレイをしてください。
ゾンビーパークではアトラクションが開始されるとエリア全域に無数のゾンビが出現し、参加車に襲いかかります。
これを掻い潜り、ゴールに辿り着くか、時間いっぱいまで生き残ればゲームクリアとなります。
ここのゾンビは品種改良に成功しており、噛まれたり、食べられたりしてもダメージはありません。
噛まれた人はゾンビにはなってしまいますが、アトラクション終了後には元に戻ります。
安心して噛まれてください。
【注意点】
・【生存者】【ゾンビ】のどちらかをプレイングに明記してください。
・【生存者】を選択した場合、あなたはゾンビから逃げる、もしくは戦っているところです。生き残りとして頑張ってください。
・【ゾンビ】を選択した場合、あなたはもう噛まれた後です。ゾンビになって、生存者に襲いかかりましょう。
・ゾンビはでてきますが、今回はグロテスクな表現は使用されません。苦手な方もご安心ください。
【シチュエーションデータ】
・アトラクション『わくわくゾンビーパーク』敷地内。
・大きな墓地。夜間であり、灯りはそれ程多くない。
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