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シナリオ詳細

上流から流れてくる冷たい麺に群がりたいだけの夏の一日だった。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「竹――木だか草だかよくわかんね。木にしては細いし、草にしては堅いし。刈ってきて」
 『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、わからないことはわかんね。と素直に言う。
 今回も、メクレオからの依頼だ。素材調達の一環らしい。化け物胎児でない場合が多いが、大抵作業が過酷で時間に猶予がなかったりするやつだ。
「よくワンねえけど、これ、結構いい素材で、燃やした灰がこっちでいい感じなお値段で売れるのよ」
 商売繁盛。本要高副業だかわからないが、お稼ぎあそばしているご様子。
「余った竹で遊んできていいからさ」
 遊ぶ。とは?
「この時期には、器にするとか言ってた。いい匂いがするんだって。冷たくした麺を入れたりする」
 冷えたパスタってサイテーじゃね? と、ローレット・イレギュラーズは顔をしかめた。
「へっへ~ん。ところが、俺は冷たい麺は食べたんだよねー」
 畜生。ちゃっかりご飯をごちそうになるギフト持ちめ!
「こう、涼しさを食べモノにしたら、こんな感じ。魚を加工した冷たいスープにつけて食べるんだけど、のどから胃までスルーっと小川が流れるように滑り込む。食道が気持ちいい」
 お前は何を言ってるんだ。
「実際、すっごい体がさわやかになる。ほてった体に最高。食欲なくても食べられる」
 何――だと?
「竹を切っていただいた後、慰労会として、その冷たい麺を余興込みで楽しんでいただく手はずが出来ております」
 え。なんで。メクレオの癖に福利厚生が行き届いてる!
「竹が一本、高さ10メートルくらいあるからさ」
 お前は何を言ってるんだ。
「まあ、裏はないよ。つまりそれだけ重労働になるってことだよ」
 カムイグラは勤勉を尊しとするそうで、つまり、基本仕事がきつい。後、納期が短い。
「そうだな。色々おもてなししてくれるだろうし、異国人だから融通利かせてくれるだろうけど――これだけは言っとく。食べ物を粗末にするな。おもちゃにするな。基本残すな。食に対するこだわりがここらと段違いだ。そこだけ気を付ければ大丈夫だから。基本温厚だから!」
 基本何とか。と、やたらと情報屋は繰り返す。おい。基本から外れたらどうなるんだ。


 そして。実際、竹を切る作業は地獄だった。なんだ、あの植物性戦象の鼻みたいなの。うっかりするとぶっ飛ばされるし、圧死するかと思ったし、ばねだし、空に射出されるかと思ったわ。
 辛かったので思い出したくない。
「――異国の方々、流しそうめんの準備が整いましたのでこちらへ」
 案内されたのは、清らかな水辺。
 張り巡らされた竹筒の水路にさらさらと清水が流れている。上流の湧き水だそうだ。
「上から、麺が流れてきますので、それを救ってこのたれの中に入れて召し上がってくださいね」
 あれよあれよと麺つゆを入れた竹筒を握らされる。
「異国の方はこちらの方がよろしかろう」
 これまた竹製のフォークだ。最近作り始めたという。
「薬師殿が、異国のヒトにはこれが受ける。間違いない。と」
 あの情報屋、こんなところでもお商売に励みやがって。
 でも、まあ、これで箸が使えず食いっぱぐれるという間抜けな目に遭うことはなくなった。
 つまり、ここからどれだけ流しそうめんを楽しめるかは実力だ!

GMコメント

 田奈です。
 リクエストありがとうございます。
 レッツ、流しそうめん!
 そうめんと一緒に食べられないもの流したりしない限りは大丈夫。
 念のため一例あげておくと、パンツ流そうとしたりしないように。後々まで異国のヒト頭おかしいって言われ続けますよ。
 だめなものはダメと言われるので安心してね。ノーと言えるカムイグラのヒトです。

 会場
 *そうめんは上流から流れてくるから、上座を取った方がいいよね。
 *いっぱい食べさせるのがおもてなし。もう結構です。堪能しました。と、崖の上のヒトに伝わらない限り、じゃんじゃん流れてくるから。足の速い伝令を用意しておくといいよ。
 *残すと、あらあら、おかわいいこと。――って空気になるから。

 キャンプの用意はできてます。猪焼いたり、お魚焼いたりしてくれます。
 雨の心配はありません。竹で即席の小屋を組んでくれました。いい匂いの中で寝るがいい。
 
 大体のネタは拾いますので、竹やぶ横のキャンプを楽しむといいよ!

  • 上流から流れてくる冷たい麺に群がりたいだけの夏の一日だった。完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ


「流しそうめんというものは初めて見ますね。竹を切ってこのように加工を……」
『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は、和製ウォータースライダー曲亭の宴風を見て、なるほどとうなずいた。
 青竹を縦に割って節を抜き、それを連ねて水路を作って水を流し、その流れに冷たい麺を乗せる。
「この竹に水を通して、上から素麺を流す訳か――風景も楽しめる訳だな」
『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も段差の上を見上げる。
「涼し気で風流さを感じます。夏にこそぴったりな催し物ですね」
 主従でにっこり。
「これが拙者の世界ではもはや伝説となっていたジャパニーズミルキーウェイそうめん!」
 知っているのか、『不揃いな星辰』夢見 ルル家(p3p000016)!
「まさか身を持って体験出来るとは! なるほど、これが豊穣ですか!」
 歓声を上げる異国のお嬢さんに、豊穣の人々もにっこり。
「俺のいた国にもあったけど、やったことはないんだよな。楽しみだ」
『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)、戦わないお仕事をメインに受けている。竹伐採はジャストミート。ええ、あんなことになるとは思ってなかったけど。
「この世界で花丸ちゃん達の世界と似たような文化が息づいてるって言うのは知ってたけど、いざこうして目にすると何だかとっても感慨深い感じだよ」
『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)も、歓声を上げる。
 しかし、この三人、非常に類似した文化を共有しているが、元いた世界は全く別なのだ。
「美味しいご飯が食べられると聞いてたので、楽しみなのです!」
『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)から笑顔があふれる。守りたい、その笑顔。
「竹には骨を折りましたが、その甲斐もあったというもの!」
「さんざ働かされたんだ。うまい飯にありついてもバチは当たらないよな。しっかり食おう」
 うんうん頷きあう二人に、『妖精譚の記録者』リンディス=クァドラータ(p3p007979)が恐る恐る訪ねた。
「竹……筍のお話もお伺いしましたがこれは過去に開発された植物兵器というわけでは…ないのですよね……?」
 少なくとも、ルル家と誠吾と花丸の世界線でそれが少なくとも公に公表された事実はない。武器や防具の材料にはなったけれども。
「最近は縁があるのう、切ったり運んだり竹振り回した相手に襲われたりと色々じゃが」
 『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)の脳裏に竹との思い出が流れる。まだぴちぴちの102歳だから断じて走馬灯ではない。
 少なくとも、この場にいるローレット・イレギュラーズには竹の脅威が刻まれた。
 こんな、笑い合えるなんて数時間前には思えなかった。なんか、目玉が熱くなってくる。ローレット・イレギュラーズは目頭を押さえた。ちゃんと俺たちやり遂げたんだ。
 ごく普通の植物をただ切っていくだけの依頼。尋常じゃなかったのは、量だけでそれ以外は別に魔物でもなんでもなかったというのに。え、あんなぐゆんとしなる植物、全部つながっててどこにでも生えてるっておかしくない? 枝もなければ幹もないって何? 中が空っぽで枯れないとか訳が分からないし、花が咲くのが数百年に一回で咲いたら枯れるとかどういうことなの? 竹を知っている三人がそういうもんなんだ。と、ずっと繰り返していた。この植物が生えている土地が似通った文明になるのではないかとリンディスが仮説を言い出したとき、全員休憩を取ろうと言い出した。
 竹は怖くない。実際、切った一部はこうやって流しそうめん用の樋になっている。これにつけて食べてね。と、握らされた器も竹。そう、カムイグラではヒトと竹は共存している。大丈夫。普通の竹は、のっとえねみー。
 それでも、作業中のことをあまり思い出したくない。天然カタパルトで射出されたりとかしてないです。
「忘れよう」
 せめて、食事の間位は。と、ベネディクトが言った。先日、気鬱を飲食の場に持ち込むとろくなことにならないのを学んだのだ。
「うん」
「楽しもう」
「そうですね」
「――そういうことでっ!」
「……竹、焼き切ったらいかんかのう?」
 胸につかえるモノは燃やしちゃうとすっきりするのだ。アカツキの経験上。
 はっはっは。だめだぞー。焼いていいのは、焼き魚の竹串だけだ。爆ぜるからね、危ないよ、生の竹。繰り返し言うけど、植物兵器ではないからね?


「くくく、食いっぱぐれないようにするのが忍者の知恵です! 陣取りから戦は始まっているのですよ!」
 ルル家が素麺ファーストランディングポイントから30センチのところに陣取った。
 流しそうめんを知る者は、まず上流をゲットすることを命題とする。
 流しそうめんに等量配分というゼロサムはない。あるのは弱肉強食。本気でいかんと食いっぱぐれるで。の、炭水化物なのになぜかワイルドを求められる戦場だからだ。
 その押し合いへし合いの陣地取りもある意味醍醐味で、ぎゅうぎゅうしてる間に互いの距離も縮まり、暮れなずむ河原でドつき合いよりはマイルドな感じで「お前、なかなかやるな」を、味わえるという――。
「「「なのに、なんだって、そんな端っこにいるのっ!?」」」
 カムイグラ類似文化圏出身の三人は、はるか後方に鎮座する主従に声を上げた。異文化コミュニケーションをためらわないで!?
 興味津々のソフィリアに、麺は食べたことがあるが素麺は初挑戦のアカツキ、食はほどほどなので、食べそうな人を優先して中盤辺りにリンディス。そして、だいぶ空いてベネディクトとリュティス。
「皆様が取りやすい位置について頂ければと思いますので」
 まず、リュティスが職業意識の観点から下座を譲ろうとしなかった。さながらゴールキーパーだった。
「私は最後の砦として細々と食べる形にしておきます」
 最終防衛ライン。食材ロス、いくない。
「――むしろ、たくさん来ても対応できませんので皆様の頑張りに期待しますね……」
 この後、猪肉や焼き魚があるのだ。ペース配分は大事だよね。
「ここで構わないぞ、皆が楽しんでいるのを見てみたいからな」
 その主のベネディクトも利他が過ぎる男だった。実際流しそうめんで下流を見るのは、色付き素麺が箸の間を通り過ぎた時くらいだ。さらば、色付き素麺。幼年期のあこがれ。
「いや、そこまで行くとふやけるから。素麺は流れてる間に水吸うから」
 花丸が手招きした。
「ふっふーん、そうめんの食べ方って言うのを、この花丸ちゃんが皆にご教授して進ぜようっ! お願いしまーす!」
 上流から流れに乗って素麺がさらさらと流れてくる。
 右手にお箸、左手に素麺つゆ。青竹のいい匂い。
「流しの意味は分かったのです。ほんとに流れてくるのです」
 ソフィリア、はわはわしている。想定外だ。
「分かったけど、食べられる気がしないのです、これ!」
お箸は混沌に来てから雑多な文化圏になれるべく、何とか使えるが、流れてくるものをとらえるとか、それは何という曲芸ですか。
「見てみてーっ、こうやって食べるんだよ?」
 花丸が流れに箸を浸し、さっとつまんでつゆをちょっとつけてすすり込む。ちゅるるるるんっ!
 キンキンに冷えた素麺に絡むおつゆが絶妙。喉から胃まで気持ちいい。
「んーっ、美味しいっ!」
 思わずバンザイからのハイタッチ。パンパカパーンっ!
「なるほど、流れを止めるように…」
 ソフィリア、見様見真似。
「もうちょいこっち。そうだな、うまい」
 誠吾がソフィリアの素麺チャレンジに助言する。固まりすべては無理でも、回数をこなせばいいのさ。
 つまんだ素麺を落とさずつゆへ。そして口へ。プルプルしてるがやってるうちに力の抜き方は覚える。
「――うん。美味しいのです!」
 にこぱー。美味しいものは笑顔を生むね。誠吾も自分の分をキャッチ。慣れた手つきで啜り込む。
「美味い。竹の器が風情あって、更に美味く感じる」
「――そのちゅるるるってどうやるのですか」
 ソフィリアのチャレンジはまだ続く。
「思ったよりも流れが速い……」
 リンディスはつつーっと目の前を滑っていく素麺にさよならを言った。滑っていった素麺はベネディクトがおいしくいただきました。
「フォークをお借りしておいてよかったです。おはしの使い方も練習したいところですが」
 無理はしない。それがリンディスのスタンス。
「そこの方、箸を一組貸してほしいのじゃよ~!」
 その横でアカツキがすいっと素麺をつまみあげた。
 はっとしているリンディスと目が合った。
「――うむ。実は妾、箸は使えるのじゃ。実家におったころに何故か練習させられたのじゃ」
 アカツキの実家は非常に閉鎖的な新緑の名家。なぜに、海の向こうのこれまた閉鎖的な土地の作法を。
「はて、よく考えると何ゆえあそこに箸があったのか……?」
 アマギ家の謎に突入してしまう。
二人の間を通過する素麺。下流のベネディクトが何とかしてくれるでしょう。
「――まあ考えても判らんことは置いておいて」
 目の前をキノコが通過していく。キノコ?
「私がお願いしてたものです。そういうのを混ぜるというのを聞いたので」
 実際、ゆでられたキノコはしゃくしゃくして美味しかった。
 更に、流れてくる緑色の――。上流の四人は全員バンザイしている。ノーピットだ。奴らはこれが何かわかっているのだ。
 緑の流線型の憎い奴。
『あ、そうそうっ! そうめんって言えば薬味も一緒に食べるのがお勧めだよ?
って事ですいませーんっ、薬味ってありますかっ!』
 さっき聞いた花丸の言葉がリフレイン。リンディスはそういうものだと聞いたから頼んだだけで――自分が食べるというのは想定していなかった。
「……じ、自分で取ってしまったからには!」
 自己責任。
「リンちゃん…………ほれ、お水じゃぞ」
 ベネディクトは、唐辛子をかじりながら上流を見た。ベネディクトのところまで長手てくる素麺が増えた。この後の猪と焼き魚のことを考えるとぼちぼち。
「リュティス」
「はい」
 リュティスの主人は『ご馳走になったと言ってくるとしようか』とか言い出しかねない。
『堪能いたしました』 と、伝えに参る役目は、ご主人様に譲るわけにはまいりません! 一職業婦人として。
 よい主人とは使用人の意をくむところから。腰が軽い主人はある意味使用人をすり減らすのだ。
「――そろそろ皆限界だ。頼めるか?」
 リュティスの勝利である。何の勝負かはわからないが、場の流れを制したのはリュティスであった。
「承りました」
 礼を欠かぬ速さで起ちあがり、かつ、優雅さを失わない範囲で全力異動。あれが職業意識。
「これで、次流れてくるので終わりだぞ」
 そう聞いた瞬間、上流組の箸が伸びる。ラストオーダーはなんか別腹なのだ。


 猪はもう狩ってあるそうだ、血抜きとか解体とか色々しないと食べられないから。
 せせらぎで釣りとかいいんじゃないかな。清流釣りは魚が敏感だから隠蔽が重要だけど。
 仕掛けも凝れば天井はないけど、この際浮きと針くらいでいいじゃない。最悪釣れなくても、猪はある。
「誠吾さんは魚釣りが出来るのです? 美味しいお魚が釣れる事に期待なのです!」
 ソフィリアは誠吾の後ろをついて回っている。
「釣りなんて、餓鬼の頃にやって以来だな。釣れるといいが」
 誠吾は竿を借り、早々と糸を垂らして、ちょいちょい動かしながらしばし待つ。
 ソフィリアが脇に立って誠吾の手元とせせらぎにぷかぷかしている浮きを交互に見ている。
「大きいの釣れたら焼いて貰おうな。そしたら食うといい……」
 ソフィリアの手がもぞもぞしているあれは、やりたいと言い出したい子供の仕草。
「何ならお前もやるか?」
「うちも釣り、してみて良いのです?」
 同時だった。顔を見合わせてけらけら笑った。
「うーん……今日は初めての挑戦ばかりなのです」
 清吾の脇で糸を垂らしながら、ソフィリアはご満悦だった。
 そんなほほえましい光景を確認して、リュティスは首を巡らせた。
「ご主人様も挑戦してみてはいかがでしょうか? 折角の機会ですし、皆様と一緒にやるのも楽しいかもしれません」
 リュティスはベネディクトを仰ぎ見た。
「魚釣りか……昔の知り合いに得意な人が居てな、あの人の真似だけは出来ないなと思った物だ」
 どこの世界にも釣りキチがいる。たまに周囲にトラウマを残す者もいる。メインウェポンより高い仕掛け買ったり、布教と称してまったく興味がない奴を過酷な現場に同行させたり、どう見てもゲテモノの釣果を食わせようとして来たり。本人に悪気がないので性質が悪い。
「サポートは私がしますし、不安に思う事などありません。安心して作業に専念して下さい」
 リュティスのサポートが手厚い。いや、騎士たるもの、食糧調達の一環として釣りくらいは従騎士の時に覚えるから未経験という訳ではないのだが。
 やってみれば結構楽しく、リュティスは満足げに頷いた。

「お魚が釣れたら、アカツキさんに焼いてもらうのです。いつも火を使ってるから、火加減には信頼が持てるのです!」
「そうだな。沢山釣れたら皆にも振る舞う」
 ソフィリアと誠吾がほほえましい。
「出来れば大きな鯉みたいな魚が釣れればよいのですが」
 ルル家は、どこでも簡易キッチンをもちこんでいる。カムイグラの皆さんが目を丸くしている練達の謎製品だ。まさしく舶来の品物じゃ。
「お刺身を作ります! 鯉は洗いですよね。竜胆師匠から教わったこの包丁さばきを見るのです!」
 ほんとはそうめんと一緒にで食べるつもりだったお刺身。だが、麺つゆはまだあるのだ。
「刺し身はめんつゆに付けても味が負けないよう、そして強すぎないような厚さで切りますよ! さぁさぁご覧あれ!これが幻想で店を出し、豊穣でも(無許可で)店を出して好評を博している拙者の料理です!」
 大皿は、八人で食べきれないほどある。
「ささ、豊穣の方々もご飯はみんなで美味しく食べるのが一番ですからね!」
 やんややんやの喝采である。ぜひ、正規の許可を取って店を出していただきたい。
「意外だな、ルル家は料理が出来るのか。いや、婚活? とやらには必須技能なのか……」
 婚活をしていると思しき女子に婚活中かと聞いてはいけない。社交界でそれをやったら針の筵に座ることになる。
「アカツキさん、お魚、焼いてほしいのです!」
 ソフィリアはお魚釣った。釣れた。えらい。
「火加減ならこのアカツキ・アマギにお任せなのじゃよ!」
 誠吾が串に川魚を刺して焚火でぱちぱちやりたいと言っていたのだ。
 その願いを叶えてあげるアカツキ、マジ年長者。
「リュティスちゃんがワタは除いてくれるそうなので、妾は焼くことに専念するかのう」
口に竹棒突っ込んで恵良語と内臓をからめとっていく様に、ソフィリアは大音声を上げた。
「内臓を残しておきたい方いらっしゃいますか?」
 鮎ならはらわたまでいい匂いだが、素人のテキトー仕掛けで鮎を釣れる訳もなく。
「では、私が串を打ちましょう。そのくらいはできます」
「妾はじっくり直火焼きしつつ、焚火の番人としゃれこむとしよう」
 リュティスが内蔵を抜き、リンディスが串を打ち、アカツキが焼く。どこぞの運命の女神のような流れ作業だ。
「見事な手際、流石だな。有難く頂くとしよう」
 座りしままにいつの間にか食ってるのがベネディクトと花丸である。
「普通のお魚なんだね。もっとこう、へんてこな格好の魚かもって思ってた」
 カムイグラ類似文化圏と言えど、花丸の出身は科学とファンタジーが入り混じったところだった。当然、誠吾の『普通』ともかけ離れている。
「猪肉はいつも食べてるお肉とちょっと違うような、不思議な感じっ! お魚食べたら食べるといいよ!」
 花丸は一足お先に頂いてきたのだ。だって、じゅーこじゅーこいってたから。
「お仕事をするからその時またこっちのお料理を食べさせてもらえないかって話してきたよ!」
 営業力があるな。念のため、荒事はローレットを通してね!
「ごちそうさまでした!」
 たらふく食べて、ローレットイレギュラーズが礼を言った頃、空はすっかり暮れなずんでいた。


 一応、女子と男子で分けられた竹小屋だが、音は聞こえてくる。
「竹――お仕事中はもう見るのも嫌だったけど、今日一日で色々な使い方を見たのです。便利な植物なのです……」
 ソフィリアの中で、竹の株が上がった! 明瞭に寝言を言う女子は、なんでこんなにかわいいんだろうな。
 聞こえてしまった誠吾とベネディクトは笑いをかみ殺した。笑ってはいけない。ソフィリアが傷つく。
「毎日勉強に明け暮れてたが、こう言うのも悪くないかもな」
 誠吾が言った。
「そうだな。悪くない」
「いつかは帰りたいけどな。馴染みつつあるなとも思うよ」
 次元の狭間を越えられない壁とするものも、何度も渡り歩いているものも。ウォーカーにはそれぞれの事情がある。
 世界は広く、どこまで遠くに来たと思ってもなじみのあるモノと遭遇したりする。
 先のことはわからないが、ゆるりと羽を伸ばした思い出がイレギュラーズの糧となるように。
「――竹藪のことは内緒ってことで」
「同意する」
 だから、竹藪伐採依頼で何があったのか。それは、八人の秘密になった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。竹藪伐採大変でしたね。ゆっくり休めたでしょうか。次のお仕事頑張ってくださいね。

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