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シナリオ詳細

<虹の架け橋>おてんばメープルと緋色の迷宮

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「わー! なんて運がいいんだろう!」
「……あの」
 それはとある月が美しい夜、イレギュラーズ達が深緑のある辺境の村の広場で旅支度をしている時であった。
 突如現れた茶色の長い髪を風にたなびかせる小さな妖精を前に、あなたは少しため息をつく。
「イレギュラーズさんだよね? 私のこと覚えてるよね!?」
「……まあ」
 妖精の名はメープル。ちょうど数週間ほど前、この村でイレギュラーズと出会い、妖精たちの王国『アルヴィオン』に繋がる『妖精の門』の一つを破壊から救うようにお願いした少女である。
「ごめんなさい! またお願いがあるの!」
「……空色の泉の事?」
 メープルに角を掴まれ怪訝そうな『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)があなたの代わりにその妖精の門の名前を答えると、メープルは仰天して宙に浮いたままこてんと転倒してしまう。
「そうなの! 泉の水が干上がっちゃって……でもなんでわかったの?」
「ええと、ね?」
 カルアはメープルに事情を説明した。深緑国内の各地にある妖精の門のどこかで魔物がアルヴィオンへと侵入してしまった事。その余波で深緑中の妖精の門が機能不全へと陥ってしまい、再びアルヴィオンに向かい魔物を追い払うためには妖精の門の中に存在する大迷宮『ヘイムダリオン』の深部にある秘宝『虹の宝珠』が必要である事。
 説明を聞いていたメープルは深くうなだれる。
「そんなことが……」
「……それでメープル、あなたの助けを借りたいの、空色の泉まで私達を……」
「うん、わかった! ここは妖精さんに任せておきなさい!」
 カルアの話を最後まで聞かずメープルは頭を上げると、どんと自分の胸を叩き、勝手に一人先導を始めてしまうのであった。

「……こうなると思って先に準備しといて正解だったね、みんな、いこっか」


●『空色の泉の大迷宮』
 メープルの奏でる不思議な術詩が、枯れてしまった空色の泉の底に一つの迷宮を浮かび上がらせる。
 それは狭い通路と幾つかの小部屋が複雑につながりあった、石畳と石壁が織りなす真紅の洞窟であった。
 苔やひび割れなどの年季を感じさせるものが一切ないその不思議な岩はほのかに赤く輝き、その場にいるものに新鮮な空気と明かりを与え続ける。
「ここが、大迷宮ヘイムダリオン……」
「この奥にみんなが探してる『虹の宝珠』っていうのがあるんだよね?」
 メープルの質問にカルアは頷く。イレギュラーズ達が奥へ進むたび真紅の輝きは強さを増し、まるで侵入者に対する警告の明かりのようであった。
「よし、それじゃあガンガン行っちゃおう!」
「あ、メープル、先行っちゃあ!」
 気合を入れて奥へと直進するメープルを静止しようとするイレギュラーズ。しかしその配慮もむなしく、メープルは突然上から降ってきた瓦礫に気付くことなく巻き込まれてしまう――

「ひゃあ!?」
 大きな音を立てて崩れ落ちる天井の瓦礫に驚き何とか身を躱すメープル。彼女に大きな傷が無い事を確認しイレギュラーズ達は安堵するとともに、一つの情報を得る。

「罠もあるんだ……気をつけて進まないと、だね」
 お灸を据えられた気分でしゅんとしてしまったメープルの言葉に、イレギュラーズは思わず苦笑をしてしまうのであった。

GMコメント

 こんばんは、塩魔法使いです。
 妖精卿のシナリオ第二段というわけで、今回は大迷宮に挑んでみましょうなシナリオです。

●依頼目標
 ・大迷宮『ヘイムダリオン』内に眠る『虹の宝珠』を入手する。
 ・迷宮内の罠や敵への対処。

●第一章の情報
 石造りの通路といくつもの小部屋が不規則に迷路を形成するダンジョン。
 ほのかに赤く輝く石畳や石壁の不思議な力で迷宮内では酸素や光源に困る事はありませんが、侵入者を拒む迷宮の罠が侵入者へと牙を剥きます。
 岩壁が突然迫ってきたり、大岩が転がってきたり、何故かねばねばのスライムが上から降ってきたり……。
 思いつく限りの罠への対策をしたり、いっそ得意な能力を生かして押し切るなどそれぞれの対処で乗り切りましょう。

●第二章以降のヒント
 迷宮の奥には妖精卿の青空を模した最深部が広がっているとの事ですが……【何か嫌な予感がします】。
(2章以降の参加は『なんらかの形で同行していた』という形です)

●NPC
・メープル
 おしゃべりで活発な性格な茶髪の妖精(精霊種)、空色の泉の大迷宮の入口を開いて維持してくれています。特に何かない限り、危険な時には安全な場所へ退避します。

・カルア
 ローレットへの報告も兼ねて同行するウォーカーの情報屋。飛行と壁役に必要な最低限の体力は持っています。
(プレイングで呼ばれない限りは描写される事はありません)

●備考
 このシナリオではイレギュラーズの『血』『毛髪』『細胞』等が、敵に採取される可能性があります。
 またこのシナリオは『おてんばメープルと空色の泉』に関連するシナリオです。
 一切読まなくても依頼遂行に問題はありません。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2861

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <虹の架け橋>おてんばメープルと緋色の迷宮完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年05月31日 20時02分
  • 章数3章
  • 総採用数41人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

「どうしたの――!?」
「何よ、いや、気持ち悪い!」
 仲間の拒絶にも似た悲鳴に、メープルは必死に声をかける。
「ねえ、どうしたの、大丈夫?!」

「いる。そこになにかいるのよ!」
 そのイレギュラーズが指さしたのは自らの身体よりも大きな虹の宝珠――その輝きがまるで反転するかのように黒く染まると、巨大な腕がぬるりと顕出し、ハーピーの亡骸を鷲掴みにする!

「ダメ、この子も失敗作、あのメガネちゃんとした方法教えてくれたんでしょうね?」
「誰!?」
 宝珠へとハーピーの身体が取り込まれると内側から響く女性の声、そして姿を現したのはドス黒いオーラを放つ、妙齢の女性の姿をした何か。
 イレギュラーズの何人かはその姿を見るや否やメープルの前へと周り込み、急いで逃げるように大声を張り上げる。

「あらあら残念、さっきの子は余所者だったのねぇ~ せっかく仲間を増やせると思ったのに――」
 黒いローブの女性はくすりとほほ笑むと、メープルの方をじっと見つめる。
「ちょうどいい子がいたわ、あの子をミネルヴァ様の配下にしてあげましょう?」
「来ないで……!」
 メープルは拒絶するも、相手は心を読み取ろうとしただけで狂気に飲まれかねないほどの魔種だ。放置していては彼女が堕ちてしまうのは時間の問題であろう。
「逃がさない。さあ、おいで?」
 事実、逃がすまいと魔種が滲み出た虹の宝珠が黒い結界に覆われる。黒い結界は瞬く間に広がるとそれは3体の黒い怪鳥と化し、メープルの身体を掴み取ろうと飛び掛かった!


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 また大変ながらくお待たせいたしました、第3章となります。
 難易度が変更されました、ご注意を。
 
●条件
 魔種『ミネルヴァ』の撃破

●フィールド
 虹の宝珠から3メートルほど下方の周囲100メートル程は不思議なオーラに包まれており、平坦な足場として利用できる。
 ※虹の宝珠は機能を封印されており、魔種を倒すかメープルが反転してしまうまでは使用することができません。

●『ミネルヴァ』
 どす黒いオーラを纏った褐色の女性。ローブと三角帽子に身を包んだ豊満な肢体をこれでもかと見せつける色欲の魔種(元幻想種)。
 何者かから受け継いだ秘術を用いて女性型の魔物を生み出し、ヘイムダリオンを制圧したと思われる。

 ・神秘格闘術で戦う。全ての能力、特に攻撃力とHPが高い。
 ・奇数ターンには回避が、偶数ターンには防御技術が大幅に増加する。
 ・BS攻撃を使用する、少なくとも【魅了】【石化】を伴う至近攻撃があるようだ。
 ・また、近寄る者に『原罪の呼び声』を放つ事がある。

●ハーピーx3
 ミネルヴァが生み出した真っ黒いハーピーの『改良作』。攻撃力は低下したものの高いEXAから物理属性の【必殺】【ブレイク】を伴う羽根を飛ばす。
 知能はないため少しでも攻撃を仕掛ければ目的を忘れるが、しばらくするとメープルを確保し魔種の元へと運ぶという役目を思い出してしまう。


第3章 第2節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
グドルフ・ボイデル(p3p000694)

「あの子が余計な探りを入れなければ、こんな手間はいらなかったのに」
 闇が蠢く。怪鳥の複製品は黒い淀みを滴らせながらメープルを捉える黒い衝撃を放つ。
「でもこれで問題ないわ?」
「いや、いやっ……!」
 メープルのその小さな翅が落とされようとしたその時――鈍重な刀が振るわれ、メープルを庇う様にグドルフがその巨体で放たれた羽根を吹き飛ばした。
「遅えんだよ!」
 グドルフは鼻を啜ると怪鳥達へその無骨で巨大な刀を向けながら余裕の挑発をかます。
「ハッ、こいつが本命か! 面白ェ、全員ブチのめしてやるぜえ!」
 そして落ちた黒い羽根を勢いよく踏みつけると、ロザリオを手に闇を切り裂く光を纏う――それは何度打ち破ろうとも、決して彼の肉体に傷を与えることを許さぬ無情の光!
「かかってきな!」

「さ、山賊さん……」
「メープルさん、こっちだ!」
 足場にへたりこみ、震えるメープルにサイズが素早く駆け付け声をかける。奴の狙いは呼び声への耐性が薄い精霊種のメープルだ、同じ妖精として、ここで同胞を魔種などに堕とさせはしない。
「まだ飛べるよね?」
「うん……びっくりしただけ」
 その身体を抱え込むとサイズは自らの身に纏った強化装甲に備え付けられた小さな赤いボタンを素早く押す、鳴り響く小さな警報音に目を光らせるはミネルヴァ。
「坊や、どこへ行く気かしら?」
 ミネルヴァから放たれた幾多の黒い腕が、翼がサイズの鎌を、胸部を逃すまいと斬りつけ、締め上げる。
「サイズさん! サイズさん!」
 悲鳴を上げるサイズにメープルが声をかけるも、サイズは食いしばる。
「大丈夫だメープルさん……俺が付いている!」
 蒸気が抜けるような音と共にサイズの強化装甲の一部が剥がれ落ちる――露出したのは小さな特殊ブースター、サイズは必死に手を伸ばすと、メープルの身体を再び強く抱きしめる。
「あとちょっと――!」
「逃がさない!」
 ミネルヴァが若干焦りの様子を見せて狙いをサイズに定め、ハーピーをけしかける。
「どこ見てんだ、あぁ!?」
 向けられる鉤爪、放たれる泥の翼。必死にサイズを狙うその集中攻撃は、山賊グドルフの荒々しい斧に弾き飛ばされ。
「乙女のハネムーンを邪魔するんじゃねえぞ!」
 よろめいてハーピーの一体が地に落ちたその瞬間、グドルフは綺麗な歯を見せ嗤うと重力と筋力に身を任せた鈍重な一撃を叩き込む!
 山賊のアシストと言葉に苦笑いをするサイズ、だが今はその感想を言っている暇はない。
「助かる!」
「そっちもな! そら派手にぶちかませ!」
 グドルフがミネルヴァの放った黒い腕を叩き切ると、警報音の間隔が短くなる――時間だ。
「……あぁ! 行くぞ、メープルさん!」
「う、うん!」
 サイズはメープルを横向きに抱きかかえて上げると、ブースターを全力で解放、足場の遥か遠くへと勢いよくぶっとんだ――!


成否

成功


第3章 第3節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣

 妖精に、妖精なんかに逃げられた。魔種は怒りを露わにし、闇を纏うローブを鋼の様に硬質化させる。
「妖精如きが!」
 足元から具現した黒い腕を薙ぎ払う様に振るい、魔種は怪鳥達をメープルが逃げた方向へと弾く。再び彼女がこの空間へ連れ戻されるのは時間の問題だろう。
「良くも――!」
「やってくれたな、か?」
 だがこれで魔種を守る盾はいなくなった。仲間が命がけで繋いだ好機を逃すまいと弾薬を込めなおしたクロバが魔種へと飛び掛かる。
「ッ!」
 闇のローブと闇の炎を纏う銃剣が激突し、火花が走る。
「チッ!」
 クロバは後方へと退くと魔種の姿を睨み、再び銃剣の引き金を引く。
「お前が親玉か……生み出しておいて失敗作と切り捨てる姿を見てると”殺したくて仕方ない奴”を思い出して来るだろうに」
「お前達が醜くしたのよ? 醜い奴はゴミなの、研究材料になるだけ名誉と思いなさい?」
 魔種は闇を鎌の形へ作り上げ八つ裂きとばかりに振り払う。その闇へ愛無が飛び出すと、文字通り巨大な顎でその闇を食いちぎる!

 全身を白い粘液に覆われた、本体を敢えて魔種の前へ曝け出すのは彼女への当て付けか。愛無は自らの尾を食いちぎった鋭い鎌の形へと変形させながら吐き捨てる。
「喰うためでもなく。己が殺したでもない死体を弄ぶか」
 先程の魔物はこの魔種の被造物ではあったろうが、それでもこの地に巣食っていた同胞に対する情は厚かった。一方死ねば同じモノとはいえ、この魔種の同胞への対応は――
「何よりも、僕は食事の邪魔をされるのが嫌いだ」
 不愉快だ。愛無は大きく口を開け蒸気めいた息を吐き威嚇すると、自らの尾を肥大化させ、魔種の心臓目がけて刺突する!
「クソ、クソォ!」
 硬質化した闇がどれだけ硬かろうが愛無の粘液を纏った尾の前には硬いパンも同然。黒い血液を流し悶える魔種に容赦なく、愛無は傷口を広げるように尾を振るいその胸元を切り開いた。

「心臓を刺された程度の傷は塞ぐか、流石は魔種だ」
「キィ! これでも食らってみなさい!」
 魔種は無数の黒いバーナーを形成し愛無を焼却する一撃を放つ。愛無は尾を振るい火を切り裂きながら冷静に魔種をあしらった。
「その言葉、そっくり返そう」
 最も、食らわせるのは僕ではないが。魔種がその言葉の真意に気が付いた時には既に、クロバの銃剣の炎が再生しつつある自らの胸元を焼き捨てていただろう。
 有効な一撃が入り悶える魔種に静かなクロバの宣告が入る。
「メープルはやらせない、ここで終わりだ、魔種」
 どの様な過去があれ、お前は生かしてはおけない。クロバの研ぎ澄まされた魔力の刃は2色の無情な炎となり魔種の胸元を十字に切り裂くと、その肉の中で爆発的な火力となって解き放たれた!
「喰らえ――無想刃・重白魔」
「が、はあっ!?」
 激しく後方へ吹き飛ばされ、魔種はよりメープルから引きはがされる。二人は刃を振るうと、更に彼女への追撃を始めるのであった――!

成否

成功


第3章 第4節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

 体勢を立て直そうとした魔女の足元から炎の渦が巻き起こる。影で焔を消し、睨みつけてくる魔女にカイトはヒュー!と口笛を吹く。
「アンタ、すげー恰好だな? 一目見ただけで魅了されそうだ」
 俺の好みとは違うけどな。軽口とは裏腹にカイトの目つきは鋭かった。下種な侵略者などに心を許すはずがない。
「だがお前からは嫌な風を感じるぜ。だからここで倒してやる!」
「なら心地よくしてあげる!」
 カイトの周囲から冷たい風を漂わせる触手が露出し、彼の翼を凍てつかせようと絡みつく。しかしそれは彼を護る様に纏う不思議な風に阻まれ、掴んだ翼はまるで幻を掴んだかの様にするりとすり抜け、その体に触れる事を許さない。
「おいおい、数うちゃ当たると思ってるのか?」
 その言葉通り、例え相手が魔種であろうとも彼の回避に失敗など存在しない。風と緋色の翼に愛された勇者は緋色の槍を握りしめると、ミネルヴァのローブに目がけて再びその槍から緋色の奔流を解き放つ!
「喰らいな!」
 三つの先端から放たれた炎はお互いが絡みつき、傷口を焼き切る無情の旋風となって魔なるものへと降り注ぐ――魔女は避け切れない。
「その自慢の肌も焼けちまえ!」
「ク、アァァ!」
 ローブに火が付き、魔女は必死にその火傷の広がりを食い止めようと振り払う。どれだけ美しかろうと焦げついてしまえば意味もあるまい。怒り狂う魔女の攻撃をひらりと避けながら、カイトは静かにほくそ笑んだ。

成否

成功


第3章 第5節

ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
世界の合言葉はいわし
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標

「よくも、よくも――!」
 ミネルヴァはふらふらと立ち上がる、仲間の攻撃は確実に魔種を追い詰めた。
『特異運命座標』羽住・利一(p3p007934)は止めを狙おうと先の戦いで拾った階段の欠片を眉間へ向けて弾き飛ばそうとする。しかし微かな風の音を聞き、その寸前で思いとどまった。
 耳を澄ませば小さな悲鳴と獣の叫び声……利一は指に込めた力を解放する手を止め、即座に振り向くと昏い闇の中へと半透明な欠片を弾き出した。
「ギエッ――」
「ひゃあっ!?」
 闇の中から響く二つの叫び声、ちらりと見えたのは風に舞う茶色の髪。
 利一はその意味を察し若干の焦りを覚える。ハーピーがメープルを捕まえ戻って来たのだ。
 魔種の狙いがメープルである以上、あの黒い複製品どもを無視するわけにはいかない。利一はすかさず次の指弾を弾き怪鳥を牽制するが、別の怪鳥がその攻撃の隙を狙い、メープルをその鉤爪でつかみ取る――!
「ちっ、誰か援護を!」
「おっけー!」
『エンジェルいわし』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)が利一の声に呼ばれて飛び出て急遽参陣、両手を拳銃の形に整えると、ばっきゅーん!と怪鳥の鉤爪へと向けて全力照射!
 重ね合わせた人差し指から放たれた水量は想像以上に多く、驚いたハーピーはギィと小さな悲鳴と共にメープルを再び落としてしまう。
「アンジュちゃんが来たからにはもう大丈夫、みんなやっつけちゃうもんね!」
 一仕事を終えて羽織ったコートの中で腕を組みどや顔のアンジュ、だが問題はメープル、腕をばたばたと振る彼女は明らかに飛行能力を失いそのまま足場の外、数キロ下への妖精卿へと――落ちる前に何か柔らかいものに落下し、ぽてんと転がった。
「大丈夫、だね?」
「カルアさん?」
 震えるメープルを宙で抱きしめるカルア、しかし彼女が翼を広げるという事は――メープルの視線は足場の上でカルアを見上げるラクリマに向いていた。
「本当に、いいんだね?」
 静かに聞いたカルアにラクリマは力強く頷く、最善を尽くすために彼は勇気を以て本音とは逆の言葉を振り絞る。
「俺の事よりカルアさんはメープルを!」
 怪鳥はメープルを取り返そうと吠えている、もう時間はない。
「いくよメープル……背中、ちょっと寂しいけど」

 カルアを見送るラクリマ、これでメープルはもうしばらく安全だ……自分はそうともいかないが。
 仲間と交戦する魔種を前にラクリマは静かにタクトを握りしめる、ここは俺一人でやらなければ――そう彼が覚悟を決めた矢先、彼を護る様に硬い鉄の翼が広げられるのであった。
「ライセルさん」
「大丈夫。俺が守るから」
 その男『Dáinsleif』ライセル(p3p002845)はラクリマに優しくほほ笑むと、魔種から彼を庇う様に血の色に染まった刀身を構える。さあラクリマ、思う存分戦うといい――

「お兄さんも妖精さんのお友達かしら、殺してあげるわ!」
「やってみるといい、魔種さん、ラクリマには傷一つ付けさせやしない」
 大切な仲間をもう失うのは怖いから、例え自らの身体を犠牲にしようとも。
 再び散る魔種との火花、ライセルは血に飢えた魔剣を魔種が放つ闇の武器の数々へとぶつけ連戦で疲労しているラクリマを庇いながら、溢れる闇の魔力を必死に食い止める!
「俺達は魔種を抑え込みます、アンタはあの鳥を!」
「よしきた!」
 待っていたとばかりに妖精を追い回す怪鳥の方角へと飛び出す利一。
「アンジュもいるよ!」
 その後ろからひょっこり顔を出すアンジュ、気が付けば彼女の周囲には恐ろしい数のエンジェルいわしの群れ――ここにいるのはおかしいって? きっと妖精卿産なんだよ。
「いっけー!」
 アンジュは駆け付けた無数のいわしたちに発破をかけ、どかどかと怪鳥達に向けていわし魚雷を発射する。まさか黒い怪鳥達も魚がこの空間に飛んでくるとは思わず、驚く間に次々と直撃していく。
「クエー?!」
 混乱状態に陥ったハーピーはそのまま足場へと激突し、周囲に血の様に闇をまき散らしながらバサバサと翼を振り半狂乱で羽根の弾丸を放つ。しかし体も自由に動かせぬ状態で撃つ弾丸など冷静沈着に構えた利一の前にとっては子供の戯れも同然。
「そんな攻撃当たるかよっ!」
 羽根が突き刺さる前に避け、不規則に動き回り翻弄し、利一は自らの中から複雑に絡み合う力を引きずり出す――自らの性という有様すら捻じ曲げるこの力ならば。
「こいつでも持っていきな!」
 その力を指に込め、利一は周囲の空気を巻き込み勢いよく解き放つ――その力は闇の怪鳥の体内へとめり込むと、その存在そのものを『反転』――次の瞬間、ハーピーの体を構成する闇が全て激しい光となり、激しい爆発とともにその存在はこの世から消滅した。

 部下の消滅を察し、ミネルヴァの顔が険しくなる。
「その血、私のルージュにしてあげる!」
 魔種は周囲に放っていた闇を一つに集め、身の丈程はある杖の形を作り上げるとライセルへと飛び掛かる。精神を破壊し停止させるそのドス黒い魔力の全てを解放した魔女の攻撃が次々と突き刺さろうと、彼は決してその広げた翼を折りたたんだりなどはしない!
「こんな所で倒れない、倒れるものか」
 体がどれだけ痛もうとも、後ろのラクリマがいる限り根を上げるものか。そのライセルの自己犠牲を無駄にしないと、ラクリマは素早く魔力を練り上げ、魔種の顔面目がけてその塊たる蒼剣を投げつける!
「グウ!」
 硬質化したローブをすり抜け、魔種の肉体を幾多の剣が突き抜ける。
「これでフィナーレです!」
 そして淡く輝く宝石が強く光り輝き、魔女の身体へ呪いの一撃を叩き込む――怯んだその隙に
距離を取り、ライセルを気遣うラクリマ。

「あの、小娘さえ捕まえれば」
 仰向けで倒れ込んだ魔種は静かに立ち上がると、異形の杖を握りしめ静かに嗤う。随分としぶといようだがあと少し、ダメ押しに繋がる一打さえ叩き込めば……!

成否

成功


第3章 第6節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ミミ・エンクィスト(p3p000656)
もふもふバイト長
レナ・フォルトゥス(p3p001242)
森羅万象爆裂魔人
ライトブリンガー(p3p001586)
馬車馬
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
冷泉・紗夜(p3p007754)
剣閃連歌
羽住・利一(p3p007934)
特異運命座標
ロト(p3p008480)
精霊教師

 魔女ミネルヴァの持つ杖から妖気と闇が広がり、妖精卿の鮮やかな空をさらに漆黒に染めていく。あれだけのダメージを与えてなお全力を隠し持っていたとは、これもまた反転がもたらす邪悪な力なのか。
 ミミはぷるぷると震える脚を必死に抑え、目の前の魔なる存在に思わず悲鳴を零してしまう。特異運命座標とはいえ元は普通の町娘、たとえ美しかろうとも人類の仇敵は恐怖の感情しか湧き上がらない。
「それでも、助けないと」
 ミミの震えを止めたのは、逃げ回る妖精メープルの助けを呼ぶ声。イレギュラーズでない彼女は今も必死に奴から来ているであろう狂気に耐えているのだ。そう思うと、勇気が湧いてくる。
「大丈夫、頼れるローレットの皆さんも一緒です!」
 ミミは態勢を立て直すとバスケットから特大の瓶を取り出す。大きく振りかぶって叩きつけられた瓶は外気へと触れると一気に揮発し、黄金色の輝きとなって傷つき倒れた仲間達を叩き起こす! ……きっと何とかなる、メープルさんも、ついでに高いこの薬代も!
「メープルさん、今回復しにいくです!」
 ミミはハーピーの姿を視認すると自分に喝を飛ばすように大声を出し、獣種譲りの素早さで彼女の元へと駆け付けるのであった。

「ぎぃ……」
「よし、あと1体……」
 ハーピーが一体光の粒子となって消えて行ったとしても利一は決して気を緩めず、仲間を追い回す最後の怪鳥を鋭い目で睨みつける。メープルが再び捕まえられてしまうのは時間の問題だ、魔種に『献上』される前に、なんとしてでも捕まえなければ!
 魔種と命がけで戦う仲間達の為に何としてでも。利一はメープルに狙いを定める怪鳥へ弾丸を拾い上げると自らの力を込めた魂の一打を叩き込む!
「そら、よくなじむぞ!」
 弾丸は先程倒した怪鳥の身体を構成していた『闇』の破片に湾曲の力を込めたもの――利一の目論見通り、それは怪鳥の体内へとずぶりと入り込むと、内側から精神を歪めていく……!
「めーぷる、めーぷる!」
 認識を歪められた黒い怪鳥はそう叫びながらも利一の方へとまっすぐ向かってくる。精神攻撃は自覚無き破滅、なんと恐ろしい事か。利一は回避の構えを取り五感を研ぎ澄ましながら、怪鳥の精神を揺さぶる様にあざけ笑うのであった。
「『私を捕まえてごらん』――いつまで経っても当たらないけどな!」
 利一が飛び交う羽根を食い止め、受け流し、ひらりと躱す。そして翻したその後ろから紅蓮の魔力が飛び出し、怪鳥の翼を焼き焦がす!
「ぴぎぃ!?」

「ピギィだってさ! いいよライトブリンガー!」
「ぶひんっ、ぶるるるるぅっ!(今回のボスもやっつけるよ!)」
 馬の騎手――レナはライトブリンガーの首を優しく撫で、再び走らせる。魔種の射程内に入らない様、器用に足場の先端ギリギリを走らせながら針の穴に糸を通すような一発をハーピーに撃ち込んでいく。
 不死の魔種に対抗する力はライトブリンガー達にはなくとも、その露払いは十二分にできるのだと彼らは意気込み、混乱した鳥公の精神を破壊しつくすサポートをする。
「あたしは旅人だから、『原罪の呼び声』なんてのは聞こえないけどさ」
 レナはぐったりと疲れて倒れ込んだメープルの方をちらりと見ながら身構える。この世界の妖精は精霊種――彼女も純種である以上、例外はない。

「最後の1体だけでも残したら大変だよ、ダメ押しといこうか!」
「ぶひひひひぃぃぃんっ!! (うん、レナ!)」
 ライトブリンガーは広い円の足場を大回り、魔種の射程外を意識しつつも怪鳥へいつでも攻撃ができるように器用な足さばきでレナをサポートする。レナはニヤリとほほ笑むと、怪鳥のバランスを崩す一発を指輪から解き放つ!
「もいっちょ食らいな!」
「ぎゃっ……」
 よろめいた、わんこそばか何かを差し出すように素早くポーションを手渡していたミミはその様子にはっと気付くと大声をあげる。
「利一さん、トドメを刺すチャンスなのです!」
「了解、仕上げだね」
 頷いた利一は呼吸を整え、拳を握りしめる。運命を湾曲してやるまでもない、こいつに必要なのはその命の終焉のみ。
「いい加減に……しろっての!」
 利一の力強いアッパーで怪鳥の顎は砕かれ、その身体は大きくアーチを描くように吹き飛ばされる。そしてぐたりと地面に倒れ込むと――霧散し、闇となって魔女の身体へと帰って行った。

「やった……!」
 邪魔な取り巻きは始末した、あとはメープルを逃がして魔種を始末するだけ……そんな希望の声を嘲笑うように、魔女が高笑いをする。

「はん、所詮はあの眼鏡男の間に合わせね!」
 闇へ還った最後の怪鳥を尻目に、ミネルヴァは悪態を吐き捨てる。
「あいつも死体も醜いわ、醜い奴に用はないの」
 闇は魔種の持つ杖に還元され、魔力は暗黒の風となり周囲の有象無象を薙ぎ払う。
「みんな……!?」
「失敗作に任せるわけにはいかなかったわ、私直々に呼んであげる?」
 焦げ付いた豊満な肢体を見せつけながら、魔女は優しくメープルへと声をかける。逃げたいのに、逃げられない――!

「さあ、いらっしゃい? メープル――」
 その言葉と共に魔種の杖から放たれる『呼び声』がメープルへと放たれようとしたその寸前――走る魔力の刃が、黒い言葉を激しく斬りつけた!
「ぐうっ!?」
「そうは……させるかよ!」
 意識が逸れ杖を落とすミネルヴァ、その瞳に映るのは、赤黒い妖精の血に染まった鎌を握りしめるサイズの姿。
「何故、もう貴方は」
 動けないはず。
「苦しんでる妖精がいるのに、俺が倒れてられるわけないじゃないか!」
 歯を食いしばる魔種にはサイズの妖精を守る捨て身の覚悟は理解できまい。サイズは残った力を振り絞り、魔種へ向かって食って掛かる。
「旅人の妖精もどきが、よくも、よくも!」
「ああそうだ、お前はそいつに斬り倒されるんだよ!」
 サイズは魔種の力任せの魔法をその小さな体ですり抜けると、怒り狂う魔種を翻弄する様に動き回る。とにかくメープルの意識を逸らし続けるように、近寄らせないように大振りな攻撃で意図的に魔種を挑発する。
「妖精鎌サイズ……俺が相手だ!」
 魔種はサイズの思惑通り、血走った目を見開き、サイズの小さな身体を引き裂こうと杖から具現化した爪で引き裂こうと腕を振り回す。

「みんな、いいかい」
 魔種の視線が逸れた今なら――『特異運命座標』ロト(p3p008480)はメープルを庇い、胸に負った傷を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。
「ロトさん!? 動いちゃだめ!?」
「大丈夫だよ、メープルさん……君こそ呼び声でまだ不安定なはずだ、無理しないで」
 ロトは心配するメープルを宥めると仲間へと呼びかける。魔種に立ち向かうにはあまりにも出来る事が限られていると自覚する彼でも、出来る事をしなければならないという使命感は人一倍強かった。
「嘘かと思うかもしれないけど聞いて欲しいんだ……宝珠を攻撃して欲しい」
 厳密には、宝珠を包み込むミネルヴァの闇を。動揺する仲間にロトは説明する。
「精霊達から聞いて確信したんだ。奴はアレから魔力を奪って生きている、僕達が宝珠を攻撃できないと踏んでるんだ」
 難しいかもしれないけど、宝珠を壊さない程度に叩けば奴は弱るはず。その言葉に悩むよりやってみろと飛び出したのはティスルであった。
「おっけー! 壊さない程度に叩けばいいんだね!」
 メープルは渡さないし『虹の宝珠』もこれ以上は使わせない。ティスルはしなる水銀の剣を取り出すと、その切っ先で虹の宝珠を斬りつけた!
「なっ――!」
「お、焦ったのかな?」
 ティスルの魔剣は器用に黒い太陽と化していた宝珠の表面を皮を剥くように切り裂き、中から眩い虹の閃光を溢れさせる!
「ん、ぎゃああああああ!?」
「おーおー、何でもやってみるものだね!」
 再び溢れ始めた虹の光にティスルはふうと陰鬱な空気を吹き飛ばすかのように呼吸を整える。これで奴の気持ち悪い能力ももう終わり。
「あとはその装甲をぶち抜いてあげる!」
「やってみなさい!」
 歯を食いしばりミネルヴァは黒い蒸気へと姿を変える――だがそれよりも早く、鋭く、ティスルの彗星の如き一撃は強かにミネルヴァの肉体へと叩きつけられる――!
 魔種が血反吐を吐こうとも容赦はしない、それは自分も同じなんだから。
「やってやるよ、派手にやってやろうじゃん! 私が壊れるか、アンタが倒れるか。ちょっと付き合ってもらうよ!」
「良くも、この私に向かって――!」
 ミネルヴァはローブを硬質化しティスルの胴体を打ち抜こうと拳を振るう、しかしティスルの身体は干潮の様に素早く引いていくと、代わりに紗夜の冷たい刀がミネルヴァの胴体を貫いた!
「ギッ!」
「あなたは嫌な風を感じさせてくれましたが、ようやく」
 いい風が吹きました。紗夜は目の前の黒く奇妙にして不自然な『来訪者』に氷の霊力が通った手ごたえを感じると、彼女の脚を崩すように容赦なく連撃を叩き込む。
「余所者、回復を止めた程度で、調子に乗るんじゃあ」
「元よりそのつもり」
 魔種が紗夜を睨みつけ、その緋色の刀身をへし折ろうと魔力の拳でつかみ取る。だが、汚らわしいとその拳ごと紗夜は跳ね飛ばすと切り下がる。
「あとは任せましょう」
 魔女の三角帽子がはらりと落ち、怒りの形相に満ちた色欲の魔種の姿が露わになる。その傷と火傷と怨嗟に満ちた顔に魅了される男など最早いないだろう。

「任せる? 私はミネルヴァよ! 余所者が! 倒す!?」
「余所者はアンタでしょ、魔種のくせに何純種ツラしてんのよ」
 魔力で出来た顎が魔女へと襲いかかり、ローブを食い破る。勇気か、あるいは怒りか。セリアが放った無数の悪意の牙は魔女の肉体を抉り飛ばす。
「それに知らなかったの? 巨乳には先制攻撃にしても集団でなぐっても正当防衛になるって法律で認められてるのよ」
「聞いた事無い……」
 抗議しようとも魔種に法(なさけ)などかけられる訳がないだろうに。魔種は必死にメープルの元へと歩み寄ろうとするも、割って入ったロトに食い止められる。
「どんなに強かろうと、1回殴らなきゃ僕は倒せないだろう?」
 自分にできる精一杯の事を、自己評価の低い彼の為した事はブロック、自分自身を肉の壁にする事――頼りない彼の笑顔は、魔種にとって最大の精神攻撃となったであろう。
「殺してやる! そして魔種に出会ったことを後悔して死ぬのよ!」
 半ばヤケクソか、一矢報いるのか。ミネルヴァは目の前のカオスシードを引き込むという発想にすら至らず、彼を石に変えてしまおうと最後の魔力を練り上げる。
「……なに人の友達に手を出そうとしてるのよ。ぶっ殺すわよ」
 魔種の攻撃がロトへと突き刺さろうとしたその時、セリアの魔撃が突き刺さり、魔種の肉体を弾き飛ばす。静かな言葉と派手に噴きあがるオーラとは裏腹にあまりにもか弱く針よりも細い一撃は魔種の心臓へと突き刺さると、一気に解放され巨大な魔力の爆発となって炸裂した――!
 もくもくと燃え盛り、魔種の闇で出来た身体が妖精卿へ融けていく。もう奴は動けない。
「無駄なのよ、余所者がいくら頑張っても、もう」
「地獄の鬼にでも言ってなさい」
 魔種の負け惜しみなど聞く価値無し。セリアは光に融けていく魔種に静かに背を向けると、静かに笛を取り出し、安らぎの旋律を奏でるのであった。
 どんなに遠くても、遥か下の妖精卿にきっと届くと信じて――

「メープルさんが無事でよかった、一緒に帰ろう」
 魔なる存在はまた一つ潰え、イレギュラーズ達は妖精卿へと繋がる大きな鍵の一つを手に入れた。長らくかかった冒険も終わり、サイズはゆっくりとメープルへ手を差し伸べる。
「うん……よかったよかった、う、うう……!!」
「メープルさん!?」
 突然頭を抑えうずくまるメープル。その様子に肝を冷やしたイレギュラーズが駆け寄るとメープルは大きな声で泣き出しサイズへと抱き着いた。
「うわぁぁぁあん! 怖かったよー!」
 がっくし……でもよかった、ちょっと肝を冷やしたけど今度こそ一安心。
 仲間達は揃って肩の力を抜きながらメープルを慰めてあげるのだった。
 虹の宝珠は――ハーピーや魔種がやっていた様に神秘の力を込めて強く祈ると――強く輝くと元の世界へと戻る渦を作り出す。イレギュラーズ達は遥か下の妖精卿の大地を眺めると、大きな虹の宝珠を数人で抱えて渦へと飛び込んでいくのであった。

成否

成功

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