シナリオ詳細
<虹の架け橋>おてんばメープルと緋色の迷宮
完了
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オープニング
●「わー! なんて運がいいんだろう!」
「……あの」
それはとある月が美しい夜、イレギュラーズ達が深緑のある辺境の村の広場で旅支度をしている時であった。
突如現れた茶色の長い髪を風にたなびかせる小さな妖精を前に、あなたは少しため息をつく。
「イレギュラーズさんだよね? 私のこと覚えてるよね!?」
「……まあ」
妖精の名はメープル。ちょうど数週間ほど前、この村でイレギュラーズと出会い、妖精たちの王国『アルヴィオン』に繋がる『妖精の門』の一つを破壊から救うようにお願いした少女である。
「ごめんなさい! またお願いがあるの!」
「……空色の泉の事?」
メープルに角を掴まれ怪訝そうな『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)があなたの代わりにその妖精の門の名前を答えると、メープルは仰天して宙に浮いたままこてんと転倒してしまう。
「そうなの! 泉の水が干上がっちゃって……でもなんでわかったの?」
「ええと、ね?」
カルアはメープルに事情を説明した。深緑国内の各地にある妖精の門のどこかで魔物がアルヴィオンへと侵入してしまった事。その余波で深緑中の妖精の門が機能不全へと陥ってしまい、再びアルヴィオンに向かい魔物を追い払うためには妖精の門の中に存在する大迷宮『ヘイムダリオン』の深部にある秘宝『虹の宝珠』が必要である事。
説明を聞いていたメープルは深くうなだれる。
「そんなことが……」
「……それでメープル、あなたの助けを借りたいの、空色の泉まで私達を……」
「うん、わかった! ここは妖精さんに任せておきなさい!」
カルアの話を最後まで聞かずメープルは頭を上げると、どんと自分の胸を叩き、勝手に一人先導を始めてしまうのであった。
「……こうなると思って先に準備しといて正解だったね、みんな、いこっか」
●『空色の泉の大迷宮』
メープルの奏でる不思議な術詩が、枯れてしまった空色の泉の底に一つの迷宮を浮かび上がらせる。
それは狭い通路と幾つかの小部屋が複雑につながりあった、石畳と石壁が織りなす真紅の洞窟であった。
苔やひび割れなどの年季を感じさせるものが一切ないその不思議な岩はほのかに赤く輝き、その場にいるものに新鮮な空気と明かりを与え続ける。
「ここが、大迷宮ヘイムダリオン……」
「この奥にみんなが探してる『虹の宝珠』っていうのがあるんだよね?」
メープルの質問にカルアは頷く。イレギュラーズ達が奥へ進むたび真紅の輝きは強さを増し、まるで侵入者に対する警告の明かりのようであった。
「よし、それじゃあガンガン行っちゃおう!」
「あ、メープル、先行っちゃあ!」
気合を入れて奥へと直進するメープルを静止しようとするイレギュラーズ。しかしその配慮もむなしく、メープルは突然上から降ってきた瓦礫に気付くことなく巻き込まれてしまう――
「ひゃあ!?」
大きな音を立てて崩れ落ちる天井の瓦礫に驚き何とか身を躱すメープル。彼女に大きな傷が無い事を確認しイレギュラーズ達は安堵するとともに、一つの情報を得る。
「罠もあるんだ……気をつけて進まないと、だね」
お灸を据えられた気分でしゅんとしてしまったメープルの言葉に、イレギュラーズは思わず苦笑をしてしまうのであった。
- <虹の架け橋>おてんばメープルと緋色の迷宮完了
- GM名塩魔法使い
- 種別ラリー
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年05月31日 20時02分
- 章数3章
- 総採用数41人
- 参加費50RC
第2章
第2章 第1節
●青色の空
「う、うわーーっ!?」
光に包まれたメープルは出口から飛び出るとそのまま垂直に真っ逆さまに落っこちていく、次いで迷宮内に残っていた、十数人のイレギュラーズ達も彼女の後を追って次々と吐き出されるように飛び出していく!
誰か一人でも迷宮の出口を見つけ、脱出する事――それこそが緋色の迷宮を抜け出て、こちら側へと来る鍵であったのだ!
周囲はクレヨンで塗ったかのような鮮やかな青、その中を白い綿あめの様な雲がもくもくと飛び交い、その隙間を縫うかのように無数の半透明の階段が幾つも絡み合って走っていた!
「もしかして、『空色の泉』に映っていた空か……?」
イレギュラーズ達はメープルを庇いながらその階段へと飛び降りると、周囲を確認する。眼下には緑の大地。恐らくそこには魔物たちが乗り込み、支配された妖精の王国が広がっているのだろう。――だが、下手に飛び降りてそこへと向かおうとすれば、死は逃れられまい。
歯がゆいが今の目的はあくまで『虹の宝珠』を探しローレットへと持ち帰る事、イレギュラーズ達は地面へと降りる事を断念すると、視線を空へと動かすのであった。
『ユルサナイ、ミンナノカタキ、ゼッタイタオス』
その先には人の体よりも大きそうな特大の虹色の宝石――そしてそれを覆い隠すように羽ばたく、無数の大鷲を従えた女性型の魔物の姿がそこにあった――!
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大変ながらくお待たせいたしました、第二章です。
●目的
虹の宝珠らしき虹色の宝石へと近づく。
アルヴィオンへ侵入した魔物を排除する。
※階段を飛び降りてもアルヴィオンへと行くことはできません。
●エネミー
イレギュラーズ全員で撃破する事ができれば次の章へと移行することができます。
・ハーピーx1
空色の泉や緋色の迷宮を破壊していたスライム達の親玉、金色の髪、血に濡れた鉤爪と鋭利な羽を無数に生やした巨大な翼の腕を持つ美しい魔物。
スライム達よりも知能が高くずるがしこい、2ターン中~遠距離から様々な攻撃を繰り出した後、1ターン【必殺】【防無】を持つ強靭な至近攻撃、というルーティンで動く。
・大鷲x??
一般的なハーモニア女性とほぼ同じ大きさの巨大な鷲。無数にいる。
特筆した攻撃は無いがイレギュラーズ達の至近距離に纏わりつき、ハーピーへの【ラ】攻撃を阻害する。
第2章 第2節
「お、目当ての宝石が向こうからやってきたぜ!」
光に照らされ水晶玉のように輝く宝珠へ向けて全速全身、カイトは紅の翼を広げ宙に浮かぶ階段を次々と飛び移り、みるみる内に上昇していく。
『キエロ!』
「やなこった!」
ハーピーの怨嗟の声にカイトは笑って応えると蒼く波打つ三叉の槍を取り出し、襲いかかる大鷲達の奇襲をまるで粉雪を振り払うかのように軽く受け流す。大鷲のくちばしがカイトの羽根をついばみ、むしり、何体で襲い掛かろうとも周囲に赤い羽根の煙幕をまき散らせるだけでカイト本体へ一切の傷を付ける事はかなわない。
「へへん、鳥としての格は俺が上だったみたいだな!」
『オノレ――!』
透明な階段の上に立ち、くちばしを大きく開けて嗤うカイトにハーピーは怒り狂い、鋼鉄の様に硬くなった翼を次々と放つ。
「あらよっと!」
カイトは素早くひらりとそれを避けるとすれ違いざまに空を切り裂くような一筋の閃光を放ち――怪鳥が怯んだその隙へ空かさず紅蓮の翼を大きく振るう!
『ギ、アアアア……!』
紅蓮の翼が生み出す複雑な気流はその場で燃え上がり、火焔流と化すとハーピーの両翼を燃え上がらせる!
「だから言っただろ? 俺の方が上だってな!」
高度を落とすハーピーを見下ろしながら、カイトは事の容易さに得意気な声をあげるのであった。
成否
成功
第2章 第3節
『キェー!』
怒り狂ったハーピーが鷲達を集め、青く美しい空が黒く染まっていく。
サイズは反射的に自らの腕を後ろで隠れるメープルへと伸ばすと、自らの全身に機械仕掛けの鎧を纏う。
「メープルさんは危険だから下がって!」
「うん……お願い!」
メープルが下の階層へと急いで逃げる姿にサイズは安堵すると、僅かに翼の隙間から見える異形の姿を睨みつける。
あの魔物は大鷲達を完璧に使役している、この翼のカーテンを乗り越える事ができなければ、他の仲間達が魔物へと攻撃することは困難であろう。
「なら、切り開いてやる!」
サイズは飛び掛かった大鷲を薙ぎ払うと階段を飛び出し、その翼でハーピーが放つ攻撃魔法を躱していく、時折飛び交う鋭い羽根が装甲を突き破り、傷つこうともサイズは怯まない。
「アルヴィオンを護るためにもそれが必要なんだ……!」
追加装甲から取り出し拡張した身の丈大はある砲台を鎌へと繋ぎ、サイズは自らの体内に込められた魔力を全て注ぎ込む。今ここで全部倒してやる――警告がけたたましく鳴り響き急激な魔力の吸収により視界が定まらなくなろうともサイズは両腕に込めた力を緩めず引き金を引き――
「吹き飛べ!」
強烈な業火を伴う魔力の奔流を大鷲の壁へと向けて解き放った。
焦げ付いた匂いが周囲に満ち、大鷲達のカーテンに大きな穴が開く、サイズは好機を逃さず虹の宝珠へと手を出すも、何か大きな力によってはじき出されてしまった。
成否
成功
第2章 第4節
「あ、見てくださいカルアさん! 宝珠があるのです!!」
ラクリマは大空に輝く太陽の様な輝きへと指をさし大きな声をあげる。これほど大きな宝珠であれば……
「あるのですが……」
「……多すぎるね」
このまま無防備に回収へと向かえば何百といるかわからない群れに襲われ餌にされるだけであろう。だがラクリマは諦めない。タクトを手に取ると定位置(略)に付き、透き通るような詠唱を始めながら合間合間に叫ぶのであった。
「さっさと倒して行きましょう!!!カルアさん!!!」
「……結構冷静な人って聞いてたんだけどなぁ」
星竜の振るう旋風の舞がラクリマへ飛び掛かった大鷲達を薙ぎ払う、ラクリマは上機嫌にカルアの身体を護る加護を編みながら冷たい魔力を練っていく。
「冷静じゃなくてもいいじゃないですか、俺達で勝てれば!」
「……いいけど」
タクトを振るい完成した蒼い魔術を解き放つとそれは巨大な氷塊と化し、ハーピーの身体を包み込まんと襲いかかる!
「やりました、ダメ押しいきますよ!」
「……別に乗ってない!」
左脚に錘の様に冷たい氷の拘束が纏わりつき、高度を失うハーピーを逃さんとラクリマの祈りの歌によって蒼く染めあがったカルアの槍が左脚を大きく切断した――!
「! やりました! 完璧な連携技ですね!」
「……何だか私の手柄みたいになっちゃってるけど」
「いいじゃないですか! これからも頼みますから!」
「後ろを退く気は無いんだね……」
成否
成功
第2章 第5節
セリアは遥か下の大地を眺めながら無力感にさいなまれる。目的の大地が目の前にあるというのに、今その危機が迫る地へ行く方法はない。
「……仕方ないわね。まずは目の前の目的を果たさないと助けに行くこともできないし」
今はこの鳥野郎をトリあえず何とかしなくてはならない。セリアはその身にため込んだ魔力を放出すると、連戦に疲労する味方を癒す一撃を飛ばすのであった。
「みんなワシ人間に負けちゃダメ! ワシ達であの宝珠をワシ掴みすればいいのよ!」
「……頭は冷えたかな」
「メープルさん」
閑話休題、セリアの真髄はその体内に秘められた自分でも制御しきれない程の強大な魔力。
「ハーピーの手下なんてパーピー泣きながら尻尾巻いて逃げちゃえばいいのよ!」
飛び掛かる大鷲達を瞬時の判断で出した爆竹の轟音で追い払い邪魔者を排除、傷付いた脚が露出した怪鳥に狙いを定めると、その『とっておき』を解き放つのである。
「逃がさない!」
他の敵に気を取られていたハーピーが異変に気付き見た物は、普段のセリアからは感じられない殺意、怒り、そして暴力――
身を翻す前に放たれた小さな小さな弾丸は、その見た目からは想像がつかないほどの破壊力を伴って、怪鳥の全身を容赦なく打ちのめしていく。
「……今度は失敗しなかったわね」
全身がボロボロになり、慌てて射程外に逃げるハーピーに対し安堵するセリア。陰から見ていたメープルは思った、もうバカにしないと。
成否
成功
第2章 第6節
半透明の階段が怪鳥の突風に切り刻まれ、硝子がひび割れるような音とともに大地へ落ちていく。
『ニガサナイ、クロイオトコ』
「……っち!」
クロバは崩れ落ちる足場から飛び上がり隣の階段へと飛び移ると、忌々しそうに怪鳥を睨みつける。
怪鳥はこれまでの戦いで自分の持つ銃剣がただの刃物で無い事を見抜きその射程を警戒している。随分と頭の回る鳥公じゃないか。クロバは思わず舌打ちをしてしまう。
だが奴はまだ気付いていない。その黒い銃剣が地獄の炎を放った時のクロバの爆発力を、運命特異座標の中でも規格外の爆発力を持つ彼の底力を!
それはハーピーがクロバを追い詰め、勝利を確信したその時であった。クロバは崩れ落ちる階段を駆け上り怪鳥の目前へと飛びついたのだ。
『ギッ!?』
「良くも散々焦らしてくれたな、さぁ、刺し合いと行こうか……!」
いくら素早く飛び回り距離を放そうとも、射程外から引き撃ちをし続けようとも、一度追いついた彼が攻撃を始めれば決して逃れられない。
「俺は死神――貴様の命、刈り取らせて貰う」
クロバの黒く染まりあがった異形の腕と剣がまるで一体となったかの様な神速の突きが怪鳥のガラ開きの胴体に次々と死神の洗礼を浴びせていく。
『ニ、ニゲル、ニゲル』
やっとの思いでクロバの拘束から逃れ、距離を取ろうとするハーピー……しかし、機動力を失った彼女は怒りに満ちたクロバの死の恐怖から逃れる事などできないのであった。
成否
成功
第2章 第7節
「うわ、わっ!?」
迷宮の中から遅れて抜け出したティスルはふわりと階段に着地すると、大慌てで辺りを見回す。眼下には鮮やかな緑の大地、空を見上げれば快晴。どうやら自分は罠にかかったようではないようだ。
ティスルは周囲を見渡し年齢不相応に騒ぎ絶景を楽しむ。
「ホント良い景色だね! ホントに……」
音も無く振りかざされる鈍色の剣、彼女の周囲に燃え盛り落下する大鷲達。
「こっちに殺意向けてくるヤツがいなきゃしばらく見てられたのになー!」
白く輝く翼を広げティスルは飛び立つ、彼女の風をも切り裂く雷の魔剣はその使い手の軽やかなステップに合わせしなり、その剣先が放つ斬撃は的確に素早く大鷲達の皮を切り裂いていく。
「どうかな!」
「やるじゃねえか、おめえさんよ!」
格好良く着地したティスルをグドルフは親指を立てて賞賛する、彼の周囲には無数の大鷲が纏わりつき彼のまるで鋼鉄の様に鍛え上げられた筋肉を傷つけようと爪を突き立てる。
「今は話の最中だ! どいてな!」
大斧を振り下ろし、大鷲の身体を縦に真っ二つに切り裂いた山賊はその亡骸に唾を吐き捨て、鼻で笑う。自らの傷口を塞ぐグドルフの治癒術は大鷲程度では彼に欠伸をさせる程度の損害しか与える事はできまい。
「オラオラァ、ビビってんじゃねえぞクソ雑魚どもがあ!」
「グドルフさん、モテモテじゃん!」
グドルフが斧を振り回し自らの周囲に纏わりつく大鷲を振り払うと、ティスルは軽口を叩きながら彼の背後へと周り込んだ。
「ちっ、どうせならこんな鳥のバケモンじゃなく、もっとイイオンナに追われたかったぜえ!」
二人は素早く背中合わせに向かい合い、鷲達が必死に守っているであろう『親玉』の存在を素早く探す。
「ねえ、宝珠の近くになんか腕が翼の人がいるよ!」
「そこにいたか! あいつが親玉だ、逃がすんじゃねえぞ!」
再び飛び立つティスル、斧を背負い階段を駆け上るグドルフ。ヤツの体力はあと少し、逃がすものか。
「私たち小鳥だって暴れるときは暴れるってところ見せてあげる!」
「俺は山賊だ!」
大鷲達はティスルたちの侵攻に気づき、再び主を護る肉の壁を作る。しかしイレギュラーズ相手に何度同じ手を使おうが意味があるはずもなく、ティスルの剣の錆が増えるだけである。
「吹っ飛べおらー!」
無数の雷光が作り出した大穴を、筋骨隆々、巨躯の大男がぶち破る。部下達に任せ、傷を必死に癒していたハーピーが悲鳴を上げたのも無理はない。
『ギエエエエ!?』
「もう逃がさねえぜ!」
山賊の肉体から赤い決意の炎が立ち上る、覚悟の一撃、対するハーピーにとっては、グドルフの斧は古ぼけた山賊の斧ではなく、巨大な処刑人のソレに見えた事だろう。
すべてをなぎ倒す男の意地は、ハーピーへと振り下ろされ、この戦いの決定打となる一打を確かに刻み込んだ――!
成否
成功
第2章 第8節
『コロス、コロス、ナカマノカタキ!』
「わあっ!?」
ハーピーは最後の力を振り絞り、傷だらけの身体から鎧を射抜く鋼鉄の羽根を空の階段へと解き放つ、半透明の階段の迷宮は降り注ぐその先端にひび割れ、次第に下から崩壊していく。
「何でこんなにいるのよ、こいつら!」
『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は突き刺さる鳥の群れが自らを突き落とそうと襲いかかる中を振り払い、はるか天空の宝珠の傍で吠える親玉へぶちぬく得意の電撃をぶっぱなす。
「キョー! ワーー! キレいなお石デスネ!!」
鬱陶しい大鷲達が巻き添えを食って焼き払われ、『RafflesianaJack』オジョ・ウ・サン(p3p007227)は歓喜の声をくっきりとその姿を露わにした宝珠に向けて――
「デモデモ〜 オジョウサン的にハ〜! 花よリツミレ!おいシそうな鳥サンがGOODデス!!」
――というよりは出来立ての『焼き鳥』に向けて思わずジュルリと涎(?)を疑似餌ちゃんは零してしまった。
この様な好機、逃すわけがあるまい。オジョウサンは踊り食い――じゃなくて親玉への道を拓くために、疑似餌を引っこめるとその全魔力を捕虫袋から解き放つ!
「ヒキニクになれDEATH〜〜〜〜!!」
自らの全身そのものが巨大な大砲と化したその光は、大鷲達を瞬く間に溶かし蒸発させていく……後でサンが火力を上げ過ぎたと嘆いたのはまた別のお話。
「みんな、見て! 道が出来た!」
メープルが長い髪が激しく揺れるほど喜びながら、まっすぐと宝珠へと続く階段のはるか先を指さす。その道を駆け上るのは『森羅万象爆裂魔人』レナ・フォルトゥス(p3p001242)。
「あの汚い方の鳥乙女の所にいくよ、ライトブリンガー!」
「ぶひひひひぃいいいいんっ! ぶるるるるぅっ!(ぼく、ご主人様と共に頑張るよ! 負けないよ!)」
レナはその愛馬、『馬車馬』ライトブリンガー(p3p001586)に跨ると勢いよく走らせ、ライトブリンガーもまた大喜びで鳥達を蹴散らしながら硬い階段を物ともせずに駆け上る! 長い旅を乗り越えた馬車馬と主人にとってはただの大鷲等ちょっとした障害物程度の障壁に過ぎず、その強烈な頭突きで弾き飛ばし吹き飛ばし、その宝珠の元へと大きくダイブした!
『ゲッ!』
「もう逃げられないね、覚悟しなよ!」
虹の宝珠の根本で必死に傷を癒していたハーピーを、レナはその魔力とライトブリンガーの脚で攻め立てる。辛うじて逃れた怪鳥のいた宝珠の真下へとたどり着いたレナは、思わず辺りを見回した。
どうやら宝珠の数メートル下は階段ではなく、半透明の平坦な、ゆとりのある地形をしているらしい。先程までの階段地帯とは見分けがつかないが、恐らく宝珠もある事からここが頂点なのだろう。
「驚いたね……下からは見えなかったけど、踊り場か、これ?」
いいじゃないか、階段の上で戦うよりはよっぽど戦いやすい。
「いくよ、ライトブリンガー!」
「ぶひひひひぃいいいいんっ! (まかせてください!)」
レナの合図と共にライトブリンガーは嘶き、その後ろ足で邪魔な鳥を蹴り飛ばし全力疾走、レナも指輪を付けた手をかざし、邪魔な残りの残党を1匹ずつ丁寧に打ち落としていく……!
「右30度!」
赤き閃光がその翼を射抜き。
「左80度!」
透明な足場の隅から隅まで、自由自在に駆け巡り、飛び交う翼の合間を自由自在にかき乱し、仲間が到着するまでの時間を稼ぐ。しかし大鷲達も最後の踏ん張りどころである、彼らもまたライトブリンガーへと飛び掛かり、その脚をへし折ろうと体重をかける!
「そうはさせないですよ!」
その攻撃が彼の脚を軋ませようとした瞬間、どこからともなく飛んできた回復薬入りのアンプルが割れライトブリンガーの脚の傷を癒し、再び活力を取り戻したライトブリンガーの後ろ足に哀れ大鷲は星となってしまう。
「凄いのです?! 迷宮の中に空があって、上にはステージが……ってそうじゃなかったです!」
物珍しい空の迷宮に心が奪われかけながらも仕事をしたポーションの主、『もふもふバイト長』ミミ・エンクィスト(p3p000656)は軽く勝利のガッツポーズをしてレナ達の元へと駆け付ける。
「大丈夫ですか、レナさん?」
「おっと、止まって! ……悪いね、助かったよ」
ミミはバスケットから傷を瞬く間に塞ぐポーションを取り出すと惜しみなく振りかける。
「ここまで散々だったのです、『がおー! こっち来んななのです!』って威嚇しても突かれますし、痛いですし……というか余計集られて群がれるですし!」
自分や仲間の治療に専念するミミ、怪鳥を警戒しながらもミミの勇気を労うレナと彼女を脅かさぬように静かに振るまうライトブリンガー。仲睦まじい3人(?)の会話にぽつんと取り残された怪鳥は、ただただ怒り狂う。
『ジャマ、スルナ、コロシテヤル!』
ハーピーは全身の羽根を逆立て、抹殺の竜巻を放とうと構えたが、それでも怪鳥に背を向けたミミが振り返る事は無かった。
決して怖くなかったからではない。ただ、ミミには強い安心感をもたらしてくれる、仲間がいた。
「あー、無視してて悪かったですね……でももうミミ達のお仕事は終わったのです」
『ナニヲ――!』
目を見開いたハーピーの横を何かが飛び交う、メープルだ。
「こっちこっちー!」
非戦闘員である妖精が自らの目と鼻の先を飛び、お尻を向けて挑発する。ハーピーが怒りの声をあげ、飛び掛かろうとしたその時――彼女の胸元を緋色の太刀が貫いた。
『ガアッ!?』
「やったー!」
その軌跡は風の如く――絹のように繊細で美しい両腕でしっかりと怪鳥の肺を貫いた『風韻流月』冷泉・紗夜(p3p007754)は静かに呼吸を整える。
己は翼を持たぬ、ましてやこの大太刀を持つ身、とはいえ、振るわぬのは剣士の名折れ。
「その命のひとひら、貰い受けましょう」
紗夜はトドメを刺した手ごたえを感じながら、一思いにその刀を振りぬいた。
『ゴア、ガ』
ハーピーは血反吐を吐きながら紗夜の瞳を睨みつける。呼吸はしているが、もはや酸素を碌に取り込んで戦える身体ではなかった。
事実。再び飛び上がり魔力の風で攻撃しようとも冷静に刀を構えなおした紗夜に反応速度で敵う筈も無く。
「風と共に参ります」
美しい音を鳴り響かせる、風切りの刃に魔力ごと切り裂かれ、右脚をも失い再び地べたへと転がってしまうのである。
自らの血が作り出した血だまりの上で、ハーピーはぐったりと横たわる。もう両脚はない、翼には穴が開き、胸元には無数の穴。自らが死に瀕しているのは誰が見ても、魔物自身にも明白であった。
『ヨクモカノジョタチヲ、コドモタチヲ』
しかし彼女の目からは火が消えず、未だ復讐の炎が宿り続けていた。
「なるほど。敵討ち。殊勝な心掛けだ。」
そこへゆっくりと怪鳥の元へ、階段を上り切った愛無がゆっくりと歩み寄り、その精神を愛無なりに賞賛する。
「だが、言葉が通じるようではあるし。もう一つ忠告しよう。大人しく宝珠を渡して退きたまえ」
『キサマ……』
愛無は怪鳥の怒りに静かに首を振り、その言葉を制止する。最後の忠告だ、ここで去ればこれ以上部下が死なずに済む、と。
「何なら君のその致命傷も癒そうじゃないか、何、心配することは無い。一度倒した相手に負けるような僕達ではない」
この言葉は本心ではあった、が、所詮魔物には意図が理解できなかったのであろう。
『フザ、ケルナ!!』
目を見開き、両手で跳躍すると愛無へと最後の力を振り絞るハーピー。しかしその怪鳥が最後に見た物は自らの鉤爪が目の前の人間の肉を切り裂く姿ではなく。
「勝てないと、言っただろうに」
是非も無し。逆に本性を露わにした愛無の黒い顎に、自らの喉が磨り潰された姿であった――
『ナ、ナニヲ、ナ……ギッ――』
弱弱しく震え、声を失った怪鳥は力なくだらりと崩れ落ちる。メリーは「どんなものよ!」と得意気に歩み寄るとそのボロボロの亡骸を片足で踏みつけた。
「こんな鳥、わたしの敵じゃなかったわ!」
「メリーダメデス! 踏みつけタラ折角の鶏肉がダイナシデス!」
「あら、それはいけないわね!」
大鷲達をバイキングの様に管で食い漁るサンを尻目に足を外すメリー、それにしても随分と配下がいたものだ。前のスライムといい大鷲と言い、中途半端というよりは……
「なんか怪しいのよね。『わたしに倒されるただのハーピー』がこんなに使役できるものなのかしら?」
「気になるのですがまだ次があるとか考えたくないのです、勘弁してほしいのです」
長い迷宮に次ぐ混戦の後だ、今は納得よりも早くこの推定宝石を持ち帰りたい。ミミはメリーの疑問を尊重しつつも、素直に帰還を促す。
「恐らく、この宝珠から感じ取れる魔力が使役の力を与えたのでしょう。魔術に長ける存在が上手く利用すれば入口へ戻れるでしょうね」
「うぐぐ……」
紗夜に諭され塞ぎこむメリー、だがその程度で持ち前のワガママが収まる訳もなく。
「じゃあそこの生き残りに話を聞いてみるわ、ダメだったら帰りましょ!」
「もう帰ろうよお……」
肩に止まったメープルが急かすのも気にせずに、目の前の鷲達へと問いただすのであった。
「さあ何を考えてるか教えて頂戴! そしてそれをさっさと――」
メリーは両手を大げさに広げ――直後、目を見開き、腰から力が抜け崩れ落ちてしまった。
メリーの脳裏から沸き上がったものは、いまだかつて感じた事のない澱、そして情欲――
成否
成功
GMコメント
こんばんは、塩魔法使いです。
妖精卿のシナリオ第二段というわけで、今回は大迷宮に挑んでみましょうなシナリオです。
●依頼目標
・大迷宮『ヘイムダリオン』内に眠る『虹の宝珠』を入手する。
・迷宮内の罠や敵への対処。
●第一章の情報
石造りの通路といくつもの小部屋が不規則に迷路を形成するダンジョン。
ほのかに赤く輝く石畳や石壁の不思議な力で迷宮内では酸素や光源に困る事はありませんが、侵入者を拒む迷宮の罠が侵入者へと牙を剥きます。
岩壁が突然迫ってきたり、大岩が転がってきたり、何故かねばねばのスライムが上から降ってきたり……。
思いつく限りの罠への対策をしたり、いっそ得意な能力を生かして押し切るなどそれぞれの対処で乗り切りましょう。
●第二章以降のヒント
迷宮の奥には妖精卿の青空を模した最深部が広がっているとの事ですが……【何か嫌な予感がします】。
(2章以降の参加は『なんらかの形で同行していた』という形です)
●NPC
・メープル
おしゃべりで活発な性格な茶髪の妖精(精霊種)、空色の泉の大迷宮の入口を開いて維持してくれています。特に何かない限り、危険な時には安全な場所へ退避します。
・カルア
ローレットへの報告も兼ねて同行するウォーカーの情報屋。飛行と壁役に必要な最低限の体力は持っています。
(プレイングで呼ばれない限りは描写される事はありません)
●備考
このシナリオではイレギュラーズの『血』『毛髪』『細胞』等が、敵に採取される可能性があります。
またこのシナリオは『おてんばメープルと空色の泉』に関連するシナリオです。
一切読まなくても依頼遂行に問題はありません。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2861
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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