PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おてんばメープルと空色の泉

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「やっほ~! 妖精のメープルだよー!」
「……えっと」
 それはイレギュラーズ達が暖かな深緑の村で木漏れ日を浴びながら、木の実採取の依頼をしている時の出来事であった。
 突如現れた茶の長い髪をたなびかせる30センチほどの妖精の女の子を相手に、あなたは少し困惑する。
「あれ? 君達イレギュラーズさん、だよね? 妖精の事知ってるよね? 頼み事があるんだけど!」
 そんな特異運命座標の反応を他所に、マシンガントークで手を組み甘えるように頼み事をするメープル。その様子に【いねむりどらごん】カルア・キルシュテン(p3n000040)は首をかしげながら要件を聞くのであった。
「頼み事って?」
「おっ、話が分かるー! 『妖精郷アルヴィオン』って知ってるよね! 私達の王国!」
「……うん、知ってるけど」
 常春の王国、混沌世界のどこかにあるというその場所は、『妖精の門』というゲートから時折深緑に訪れ、深緑の様々な地域で『妖精伝説』として語り継がれている――そこまではイレギュラーズ達の知る所であった。
「えっとね! この村を出てから森をずーっといった先にね! あそこに行ける『空色の泉』ってすっごく綺麗な泉があるんだ! そこに飛び込むと私達の所にいけるの! ……でも」
 大雑把に方角を指さしながら腕を伸ばし妖精の門との距離感を伝えるメープル、しかし彼女はそこまで伝えると、がっくりと空中でうなだれた。
「今まではそんなことなかったのに……最近、その門のエネルギーを吸って、破壊しようとする変な魔物さんが出てきちゃって……もうピンチなんだよぉ……このままじゃあ門の数が減って、私達がこっちに来れなくなっちゃう」
「それで……どうしようもないから私達の所に来たの?」
「そうそう! わっかる~!」
 カルアの言葉に目を見開き、再び元気になるメープル。どこまでも能天気な彼女であるがどうやら困っている事は本当の様だ。
 メープルはこちらの方へと向き直ると、改めて手を組みイレギュラーズ達にお願いをする。
「イレギュラーズのみなさん! どうか助けて!」

●「こっちこっち! 早く来て!」
 先に任されていた依頼を済ませ、メープルに急かされるがまま村から出たイレギュラーズ達が見た光景は蔓がロープの様に橋渡しになっている木々が無造作に生い茂り、高い草が進行を阻む獣道であった。
 同時に感覚の鋭い物ならば感じとられる、無数の肉食動物の荒い鼻息。体力に自信の無いものが単身向かおうものなら、辿り着く前に行き倒れるのが関の山である。
 なるほど。これほど困難な道のりならば妖精達の住処が『伝説』となるのもおかしくない。

 さて、どうやって進もうか?

GMコメント

 塩魔法使いです。
 ラリーシナリオの執筆は初めてとなります、よろしくお願いします。

●依頼目的(第一章)
 ・森林迷宮の攻略
 妖精の道案内に従い森林迷宮を抜けて『空色の泉』へと向かう。
 泉への道は荒れており、また周囲には興奮状態の動物達が獲物を求めて徘徊しています。
 非戦スキルを活用し道を切り拓く、あるいは道中襲い掛かる動物を戦闘で退治する等して対処しましょう。

●依頼目的(第二章以降)
『空色の泉』にたむろする魔物達との戦闘が予想されます。

●NPC
・メープル
 イレギュラーズを泉まで案内する茶髪の妖精さん。ハイテンションで明るい性格。戦闘能力はありません。
 魔物をなんとかしてくれれば、お礼としてアルヴィオンの美味しい樹液をイレギュラーズ達に渡してくれるそうです。(樹液の売値がGOLDとして還元されます)

・『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)
 ローレットへの報告も兼ねて同行するウォーカーの情報屋。飛行持ちで戦闘の際は壁になってくれます。
(プレイングで呼ばれない限りは描写される事はありません)

●ラリーシナリオについて
 このシナリオはラリーシナリオです。
 1章につき『4~10人程度』の採用を予定しております。2章以降からの参加も歓迎します。(その場合は初めから同行し冒険していた、という扱いになります)
 1節につき1~3人程度纏めて描写される事があります。一人が良ければ【ソロ希望】決まった複数人での描写を望む場合は必ず1行目位に【ぱんつ】などのタグを記載するようにお願いします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • おてんばメープルと空色の泉完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月14日 15時28分
  • 章数3章
  • 総採用数42人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

●僅かな休息、怒りの樹木
「皆、怪我は無いか?」
「ええ、掃討にはそうとう疲れたけどね」
「……頭をやられてる奴が一人いないか?」
 緊張の解けた特異運命座標たちは風と木々のざわめきが聞こえる小さな草原の中、周囲の警戒にあたりつつ短い休息を取っていた。
 癒し手達が怪我の応急処置をする間、冒険者達に与えられた僅かな足を休める時間である。
「頭ではないですが……少し肩を切られてしまったみたいですね」
 そう報告したのはラクリマ、彼の雪の様に白い肌には確かに紅い切り傷の様な傷口と出血が見られていた。傷口の周囲には若干かぶれの様な水銀色が肌に染み付いている。ローレットへ戻れれば傷跡無く治療できる傷ではあったが……。
「誰にやられたんですかね、それ?」
 冗談めかしてからかうヨハンに対し、ラクリマは首を振る。
「あいつらですね、素早いので。逃がしてしまいましたが、きっと誰かが倒して――」
 ラクリマの言葉は、不意にメープルの悲鳴のような叫び声に遮られた。
「嘘、どうして、どうしてなの!?」

 メープルの視線の先を見た冒険者達は、咄嗟に立ち上がり武器を構える。一体いつの間に? そう彼らが思ったのも無理はない。
 泉の守り神……御神木『だった』所に居たのは、黒々と変色し、紅に輝く顔の様な穴が開き、四本の大きな枝が殺意を持った腕の様にゆらゆらと動く、巨大な木の魔物だったのだから。
 もしや魔物が『空色の門』を傷付けたから暴走したのだろうか? そうイレギュラーズ達が思考する間もなく、木の魔物――トレントは地中から串刺しにするためにその腕を地面へと突き刺した!

○第三章の依頼目的
『グレート・トレント鎮圧依頼』
『アークモンスター』と呼ばれる強力な魔物の一種、『空色の泉』の御神木が何かの影響を受け暴走した姿。
 木らしく機動力は0、BSの類は使用しないが高い攻撃力と体力、4本の腕を駆使したカウンターの高命中技を叩きこむ強敵。とはいえ相手は1体。
 全員で力を合わせて叩けば暴走は止まり、元の姿へと戻るだろう。

 それではよろしくお願いします。


第3章 第2節

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補

 魔物の奇行も気がかりだが、これ以上泉への損害を出す訳には行かない。
「……今はこっちが優先かな」
 セリアは怒りのまま暴れ続ける木の魔物を前にゆっくりと立ち上がると、休息の間に蓄えた膨大な魔力を身にまとう。

「それと頭をやられた人がいたんだね。次は気をつけなさいよ」
「あの」
 暴走したトレントが繰り出す地中からの棘状の根による連続攻撃をセリアは持ち前の悪運で逃げ延びると、魔物との距離を測る。
 相手は動かない魔物ではあるが射程外からの一方的な攻撃を赦すほど愚直ではない。
「うまく距離を取れんと苦戦しそうだね」
「セリアさん、ちょっと」
「今集中してるんだからだまってて!」
「はい!」
 セリアはメープルのツッコミを軽く受け流しつつ射線上に仲間のいない格好の位置へと移動するとその半目で木の魔物を睨み、戦意を急速に高めていく。
 同時に彼女の周囲に纏った魔力が熱を増し、純粋な殺意の塊へと成形され――
「こっちにも用があるの、いつまでもうだうだしてないでよ!」
 それはセリアの指先に乗るほどの小さな針の形へと圧縮されると、トレントの顔へと向けて衝撃波を伴い放たれた!
 爆風で草原がざわめきトレントの肉体の一部の破片が巻き上がる、その圧倒的な火力にメープルはおもわずうっとりしてしまうのであった。
「す、すごい……」
「なるべくはーりーに倒さないといけないからね」
「あ、前言撤回」
 やはりセリアは、いつも通りであった。

成否

成功


第3章 第3節

ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌

「これは、みんなで泉の魔物退治なんて気楽な依頼じゃなくなってきた雰囲気ですね」
 泉の護り神の暴走、漆黒の影と化した姿にラクリマは身構え肩の傷を抑える。本当にこれが植物の言っていた黒い影なのであろうか?
 影に何者かの思惑を感じながら、ラクリマは護りの唄を奏で上げた。
「早く暴走を止めて原因を特定しなければ……頑張りましょう!」
 ラクリマは定位置であったカルアの背後からぴょこんと前へと飛び出すと、目を見開き驚くカルアへと振り向き闘志を表明する。
「――危ない時は絶対助けてくださいね?」
 完璧なアピール、だが目はうるうる。若干呆れてカルアは肩をすくめると頷き、槍をトレントの方へと向けた。
「……危なかったら言ってね」
「はい!」
 お返事は勢いよく。ラクリマは透明に透き通る杖を懐から取り出し握りしめると、飛び出したカルアを援護するべく蒼剣の魔術を解放する。
 蒼い軌跡を描く幾多の刃は地中から襲い掛かる根を断ち切り、腕から放たれる鋭く尖った葉の弾丸を弾き飛ばし、その木の形を成形していく。
「……使うね?」
 カルアがその舞い飛ぶ剣の柄を1つ握りしめると、トレントの正面へと飛び込み、槍と剣による鋭いクロスを刻みつけた――!

「お、おお! 俺たちの交流が産み出したコンビネーションですね!!」
「……いや、別にそうじゃないけど……」
 左目を輝かせ感激するラクリマに対し、やれやれとカルアは大きな欠伸をするのであった。

成否

成功


第3章 第4節

茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女

うへへへへへーと楽しそうな笑みを浮かべながらぬるりとトレントの前へと躍り出たのは『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。秋奈はまだまだ戦い足りないとばかりに血の様に赤黒い双刀を抜くと、楽しそうに鼻歌を唄いながら剣舞をする。
「御神木だっけ? よくわからない傷を付けてくるんだっけ? まっ、倒しちゃえば! 関係ないよね!」
 とにかく正義の使途としてこれを攻撃すればいいのだ、刀をかっこよく交差させると秋奈はトレントへと名乗りを上げた。
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 有象無象が赦しても、私の緋剣は赦しはしないわ!」
『グァァア……!』
「おーおー、暴れなさる!」
 秋奈はトレントの攻撃を短刀で受け流し、時には弾く形で身を護りつつ、優雅な川の流れの様に魔刀による一撃を叩きこむ!
「さぁさぁ、平伏せ! ざんげの時間の始まりよ!」
 魔物の皮が剥がれ、露になった脆い内部を修復しようとトレントは秋奈を振り払おうとする。
 だが、一度流れに乗った秋奈の乱舞は止められない。蝶の様に舞い、蜂のように刺す彼女の猛攻は、敵をぶちのめさんと魔物の肉体へと激しく叩きつけられた!


成否

成功


第3章 第5節

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

「木のお化け……やっぱりさっきの水銀の毒にやられたのかしらね? それとも別の要因……」
 仲間の血を吸い、御神木を暴走させる水銀の魔物――残ったわずかな残骸が土へと染み込む前に片を付けなければ。
「さっきの水銀は回収して詳細に調べた方がいいわね!」
 イナリは勢いよく叩きつけられる樹木の枝へと燃え盛る古刀を振るい斬り下がると、厄介そうにトレントへと戦闘態勢を取る。
「とりあえず、殴って治すわよ! 映りの悪いテレビは斜め45度で叩けば治る、って逸話もあるしね!」
 木に宿った邪気を焼き切れば――そうイナリは根拠なく確信すると刀を更に燃え上がらせ、その炎で再び朱の鳥居の幻影を身に宿す。

「貫くわ!」
 その炎が自らの尾を焼こうが、根が自らの身を貫こうがイナリに恐怖の表情は微塵たりとも浮かぶことは無い。そしてイナリは自らの意識を集中すると、その暴れまわる太い枝の一本の根元へ向け、強烈な熱線を解放。
 深紅の熱線は草原を一直線に突き進み、下の草が一直線に焼け焦げ跡が突くほどの熱量を放ちながら腕へと着弾。直後、眩い輝きと轟音と共にトレントの腕の1本が激しく炎上した!
『ゴ、オオォ!』
「やったわ!」
 イナリは耳をピンと立てて喜ぶと、傷ついた自らの身体を奮い立たせ飛び上がり、古刀から紅い衝撃波を放つ!
「いい加減、目を覚ましなさい!」
 イナリのダメ押しの一撃は炭になったトレントの腕を一本、音も無く吹き飛ばした――

成否

成功


第3章 第6節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

「まさかスライムの変な毒で暴走したのか……?」
 邪気を振り払う治癒の力を行使できない事にサイズは憤りながら鎌を強く握りしめる、元より大きな力に突き動かされるように暴れるトレントに素直に治癒が通じるとも思えない。
「トレントが暴れてる以上、まずはおとなしくしないとダメだな!」
 御神木には悪いが、多少その鎌で刈り取らねばなるまい。サイズは冷気の盾と追加装甲の展開を同時に起動し、護りをしっかりと固めると後ろで震えるメープルに声をかける。
「メープル、下がってるんだ!」
「うん! サイズさんも無事でいて!」
 勿論、負けるわけにはいくまい。サイズは妖精鎌を強く握りしめるとその懐まで一直線に突っ込み、すかさず刃を叩きこむ。
「ちょっと静かにしてくれよ!」
 魔鎌に切り裂かれ、傷口から溢れる深紅の樹液……否、妖精の血をその刀身で吸い取ると、サイズは傷口を覆う様に魔の鎖を展開する。
「少しだけ伐採するけど、我慢してくれよ!」
 冷たい金属の音と共に全身を鎖に締め上げられ身動きが鈍るトレント。サイズは大きく息を吐くと、血の色に輝く己の本体を振り被り、大きく斜めに薙ぎ払う様にその胴体を切り裂いた!

 魔に染め上げられた鋭い刃の一撃はトレントは大きく苦しみ、サイズの身体を大きく振り払う。
「このままだと妖精の門もやばそうだな……無事であってくれよ……!」
 サイズは受け身を取ると舌を打ち、焦燥感を胸に立ち向かうのであった。

成否

成功


第3章 第7節

ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

 誰の仕業か。魔物へと転じた御神木の姿にジュルナットは憤慨の声をあげる。
「さっきまで守っていた神木が邪に変化、なんてのは流石に堪忍袋の緒が切れるヨ!」
 自然を愛するハーモニアの狩人であるジュルナットにとってこの現状はとてもではないが看過できるものではない。トレントを早急に苦しみから解放するべくジュルナットは魔力を束ねた矢をつがえると、トレントの腕を目掛けて矢継ぎ早に狙撃する。
 攻撃器官である腕を1本失った木の魔物は明らかに攻撃のペースが緩慢になっている。腕さえ抑えきれば彼は攻撃の手段を失うはず。
「とにかく狙撃だヨ」
 前方には自らを支援し、攻撃を受け止め、回復してくれる仲間達がいる。何より魔物と化し。意志に反した行動を続け苦しむトレントをこれ以上放置するわけにはいかない!
 ジュルナットの懸命な攻撃の勢いは、地中から襲い掛かるトレントの根に足を貫かれようとも、トレントの放つ真空波に切り刻まれようとも弱まることは無い。
「この程度、全然平気だヨ!」
 仲間のために、そして何より御神木のために。ジュルナットはトレントの腕を懸命に狙い続けると諦めず打ち続け、その腕の1本へと決定的な一打をついに打ち込んだ――!

成否

成功


第3章 第8節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ

「うっわあ大きい……」
 魔物と化し、暴れだした大木を眺め思わずティスルは仰天する。ともかく今はこいつを止めるのに集中しなければ。
「なんだ、俊敏に動き回らない敵を斬るだけの事だ、そうだろ?」
『真実穿つ銀弾』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は事態の急変も冷静に判断し、銃剣に火薬をリロードしていく。赤黒く鈍く光沢を放つその刀身は、彼の左眼の様に冷たくトレントを見据えているようで。
 倒れるより早く案山子を切り刻むのと大差ない、この相手ならば俺の本領発揮だ。準備を手早く終えたクロバが前傾姿勢で突撃すると、ティスルは笑顔で頷いて。
「うん! こうなったかは分からないけど、とりあえず止めないとだよね!」
 直後――ティスルの翼が美しい薊色へと光り輝くと、クロバを一瞬で追い抜かすほどの超光速でトレントへと激突する!
「一気に行くよ!」
 考えるよりも早く行動。ティスルは水銀の魔剣を振りかざすと突き刺すようにまず一撃!
「出し惜しみ無し! メープルさんをしっかり送り届けるんだ!」
 そしてニ撃、三撃! ティスルの先手必殺の衝撃波は、トレントの肉体へ次々と大穴を開けていく!
『グァアエエエ……!』
「ダメ押し!」
 更に突き刺さる真空波――ティスルは素早く戦線を離脱すると、自らを追い抜かしたクロバへと手を振った。
「いっけー! しっかり決めてね!」
「――当然だ」
 クロバはその言葉に小さく溜息をつくと銃剣のトリガーを力強く引き、超振動する業火の剣をトレントへ開いた穴を広げる様に叩きつける!
 クロバの神速に耐え切れず銃剣の薬莢が詰まるのが先か、敵が倒れるのが先か。
「呪いの燼火を浴びる準備はいいか? 死神の剣はそう甘くないぞ!!」
 生死を決定するクロバの剣が示すのは、凶――行使する者をも燃やし尽くす地獄の業火は幾度もトレントの全身を燃え上がらせ、絶大なダメージを浴びせ続ける!

「さぁ、お前の暴走もここでゼロにしてやる!!!」
 クロバは最後に銃剣を大きく振り上げると、トドメの一発を叩き込み、草原中に激しい土煙と雷鳴を轟かせた――

「やったかな!?」
 とても無事では済まない超火力に叩きのめされたトレントを前にクロバは首を無言で横に振る。
「いいや――どうもまだ焼かれたりないようだ」

 土煙が晴れ現れたのは、傷口を塞ぎうめき声をあげ続けるトレントの姿。極大の損傷と修復により邪気が弱まり、大きくよろめくも未だにその敵意が弱まる気配は見られない。
「ええ!? ど、どうすれば」
 慌てるティスルにクロバはニヒルに笑うと、「簡単な事だ」と再び火薬を込め――
「倒れるまでやればオールオーケーだ、そうだろ?」
「……うん、そうだね!」
 敵意を向け、再び木の根を繰り出すトレントへ向けて剣を振り上げながら飛び掛かった!

成否

成功


第3章 第9節

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

 先ほどまで泉の守護神だったモノが辺り一面の草原を吹き飛ばしながら暴れ、イレギュラーズ達へと攻撃を繰り出し続ける。その突然の事態に動揺する者が現れても何もおかしくない。
「何が起こっているの……?!」
 ラヴもまた、思わず銃を引き抜く手が止まり、立ち尽くす――

「危ない!」
 金属がガンと叩きつけられる音――ヨハンがラヴとトレントとの間に割って入り、攻撃を防ぐと背後のラヴへと急いで振り返った。
「絶対に誰もやらせはしない! ラヴさん、急いで!」
 事態の混乱を素早く抑え対処すべく、バックパックから取り出した指揮官用の礼装――若干『不備』があったようだが――へと素早く着替えたヨハンはしっかりと大盾を構え魔物の注意を引きながら、ラヴへと指示を出す。
「ええ、わかったわ……!」
 何故を考えている暇は無いようだ。ラヴは躊躇いながらも拳銃を取り出すと、トレントの猛攻を食い止める牽制の射撃を素早く数発放つ。
 牽制と言えど、ラヴが放った儚い流星の如き速度の銃弾は魔物の『目』を潰す様に素早く突き刺さり、鈍い呻き声を上げさせた。
『グルウアア……!』
 奇襲により狂った態勢を立て直し、注意深く警戒しながらヨハンは木の魔物を観察する。
「神木ですか、そんなものにまで影響を及ぼせるとなるとこれは相当強い力の持ち主がいるんでしょうね」
 彼を放置してしまえば、ようやく護られた『空色の泉』が無残に破壊されてしまうのは避けられない。
「大切な門が、こんなことになるなんて……」
 せっかく。懸命に魔物を打ち払い、門を護ったというのに。ラヴの涙腺が思わず緩んでしまいそうになるのをヨハンは「大丈夫ですよ」と励ました。先ほどから仲間の攻撃で木の邪気は弱まっているのだ、きっととことん叩けば収まるはず――!
「義は僕らにある! ちょっと殴ってもばちは当たりません!!」
 鉄帝思考の檄を飛ばすとヨハンはラヴの傷を癒し、彼女へ腕を狙う様に突撃命令を出した。
「そうね……!」
 多少過激だが実際攻撃によって木の動きは鈍っているのだ、倒す事で元に戻るならば容赦はいらない。
 ラヴはヨハンの背後から横に移動する様に飛び出すと、動き回るトレントの腕の根元、ぴたりとも動かない箇所へと集中して狙いを定める。
 ここならば……ラヴは呼吸を整えると、慎重に重ね合わせた二つの拳銃の震えをなるべく抑え――

「――《ヒロイック・バーン》」
 今までで一番大きな、眩いほどの光束をその銃口から解放する――!

 腕が更に一つ吹き飛び、トレントは鼓膜が破れそうなほどの苦悶の叫びをあげた。同時に彼の体から抜け出て天へと昇っていく黒い邪気をラヴは感じ取ると空を眺め、ぽつりと呟いた。

「……おやすみなさい、夢は見ないまま、どうか安らかに」

成否

成功


第3章 第10節

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

「ほう、水銀乙女の次は御神木だったものか」
 鬼灯は木の根から護る様に即座に嫁殿を大地から拾い上げ、暗器をひっそりと構えると敵の急所を探る様に走る。
『鬼灯くん、なんだかあの木とっても辛そうなのだわ、助けてあげて?』
「わかっているとも」
 腹話術で話す彼の嫁殿の言う通りアレは救わねばなるまい。
「さあ、舞台の幕を上げようか」
 鬼灯は両腕を大きく広げると無数の魔法の糸を纏うと、トレントの2つの腕を縛り上げる様に射出する。
 手ごたえはあった。彼の透明な糸は確かに魔物の片腕へと当りへし折るように軋むが、トレントの腕を大きく振る力に鬼灯の体は前へとよろめいてしまう。
「くっ」
 魔物の攻撃を抑える事ができたものの、トレントは鬼灯の存在を脅威とみなし、真っ先に潰そうと必死に力を行使する!
 鬼灯は危機を察知し、嫁殿を庇う様に腕を覆うと、食い入るように防御の体勢を取った。
 その直後、彼の背後に太い木の根が地面から現れ、鬼灯の肉体を押しつぶさんと振り下ろされる――

 しかし、トレントが鬼灯を押しつぶすことは無かった。どこからともなく飛んできたカードが根を斬りつける様に掠め、地に突き刺さりトレントの注意を引いたのだ。
「待たせたな!」
 ジョーカー、切り札を暗示する道化師のカード。地面へ突き刺さるそのカードの上に颯爽と着地したのは『オトコの見せ所』サンディ・カルタ(p3p000438)、神出鬼没の盗賊は例え深緑の奥深くであろうとも駆けつけるのだ。
「熟練イレギュラーズ、サンディ様の登場だッ!」
 サンディは鬼灯の周囲の根を1つナイフで薙ぎ払うと、爽快な金属音と共に一瞬で全てを斬り落とす!
「サンディ殿、かたじけない」
「いいってことだ」
 サンディはナイフを構えると鬼灯から引き受けた触手の数々相手に食い下がり、本体へ飛び掛かるとその肉体を縫い付ける破壊の剣技を披露する!
「ただでは帰さねぇ、っつーか、ここでバラバラにしてやるぜ!!」
 2人の呪縛をさらに強く刻み込めるサンディの呪怨の一撃はトレントの表面に食い込むように具現化し、その食い込みへダメ押しとばかりに鬼灯が放つ茨の鎖がトレントの表面を削りとり、樹液を強制的に外部へと放出させた!
 茨と呪いに蝕まれ悲鳴を上げるトレントに、鬼灯は優しく語り掛ける。
「貴殿はこの景色を、彼女らを見守り続けてきたのだろう。刃を振りかざす相手を間違えるな」
 再び放たれた鬼灯の糸はトレントの両腕をがんじがらめにして、その動きを阻害していった――

「いい攻撃だったな! 鬼灯さん!」
『盗賊さん、ありがとなのだわ!』
 サンディのエールに対し、鬼灯は表情を見せず嫁殿に返事をさせる。
 嫁殿へサンディは微笑むと後方のメープルもと振り返り、人差し指を揺らしウインクをした。
「俺に惚れるなよ、メープルちゃん?」
「えっ、どうして私の名前を……」
 サンディ・カルタ、どこまでも神出鬼没な大盗賊であった。

成否

成功


第3章 第11節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

 直前まで治療に当たっていたのが幸いか、弱弱しく上がった悲鳴に真っ先に振り向いたユーリエは、怯えるメープルと揺らめく御神木の姿から事態の急変を察すると戦闘態勢を取った。
「……あ、あれは!?」
 邪気に黒く染めあがり、泉と邪魔者を破壊しようと攻撃を始めるトレント。ユーリエは即座にメープルの元へ駆け寄り拾い上げると、同時に深緑の鎖を飛ばしトレントへ威嚇の一撃を行使する――直後、彼女の耳にリゲルの声が響く。
「ユーリエ、下だ!」
「!」
 ユーリエが後方へと飛び退いたのと時を同じくして、太い木の根が土を蹴飛ばしユーリエのいた空間を貫き、苛立たしい様子で周囲を滅茶苦茶に叩きつけた。
「ありがとう、リゲルさん!」
 トレントの根へ剣閃を放ち音も無く断ち切ると、素早くユーリエの前へ飛び出し剣を構え防御の姿勢を取る。
「御神木が……一体何が起こっているんだろう」
「変わってしまったのでしょうかー? それとも、元からあれが本性であったとかー?」
 蒼く透き通る槍にローレットの御旗を掲げたメリルナートは考え込みながら自らの立ち位置へと着くと、再び戦いに赴く兵士達を勇気づける祝福の歌を奏でた。今はあの御神木が自分たちの敵なのだ、なんとか乗り切らねば、と。
「守護者たる木が害を為す、か……」
 エトはトレントへゆっくりと歩み寄ると、タクトを振るい傷ついた仲間達の傷を癒していく。
 あの御神木の行為はとても泉の守護神の本心とは思えない。如何なる理由があろうとも、どれだけためらわれようとも、完全に魔物と化すその前に鎮めてやらねばなるまい。
「なぁに、何時も通りやればいいんだよ」
 エトに続きグレンが仲間達への前へと踊り出ると、御神木を挑発するようにわざとらしく大盾をどっしりと構え檄を飛ばす。その言葉は強がりでもあったが、彼を加護する深緑の護り神たちに少しでも報いようという意志の表れであった。
「今は倒すしかなさそうだな」
「何はともあれかな! みなさん、気を付けて行きましょう!」
 リゲルとユーリエもまたそれぞれの剣を握り直すと、木の魔物へ向けそれぞれの術技を披露するのであった。


 数分の後。
 身の毛のよだつ様な咆哮と共に放たれる無数の木の葉が、鋭利な魔力を帯びた弾丸と化しイレギュラーズへと襲い掛かる。
 グレンは聖槍を力強く振るうと一振りで後方の2人――ユーリエとエトへ突き進む葉の気流を乱し、自らに向かう弾丸を更に漆黒の盾で食い止めた。
「なんて往生際の悪さだ」
 死闘の末、仲間達が体力を削りその腕を叩き落し縛り上げたと言うのに、奴は何度でも回復し微塵たりとも諦めようとしない……グレンは思わず零しながらも、盾を微塵とも動かさずに支え、魔物へとプレッシャーを与えていく……!
「大丈夫ですよグレンさん!」
 ユーリエはグレンを励ますように声をかけると揺らめく片手剣を天へと掲げ、彼の傷口を瞬く間に塞いでいく。
「御神木からどんどん力が抜けるのを感じるんです!」
「見た目は変わらないのだけれどね」
 御神木を覆う邪気が薄れ弱るのを感じる――エトはいい加減見切られるかしらと呟きながらも、魔本から解き放つ光の天術を行使しながらグレンへと報告する。
『ゴォ、ロォ!』
「待っててくださいね、御神木さん!」
『ンガァ!』
 エトの光術によって焼かれた傷口をトレントは呻きながら抑え、大地から棘を放出する、そこをすかさずグレンが割って入るとエトはその攻撃によって出来たグレンの傷を癒し、代わりにユーリエが横から飛び出すと銀色の鎖を放つ!
「効果ありました!」
 手に持つ鎖が青白く変化した様子にユーリエが歓喜すると、トレントは彼女へと木の葉を放出する。それをグレンが塞ぎ、ユーリエがグレンを癒す。
 堂々巡り。敵にとっては防御を貫く手段を奪い、永遠とそびえ立ち続ける絶望の要塞。

 先程までの猛攻はどこへやら、トレントが悔しそうに唸り腕を振るうのを見るまでも無く。
「それじゃあいっきに攻め込んじゃいましょうかー♪」
 メリルナートは皆の活躍を褒めたたえると御旗を前方へと掲げ突撃命令を出した。同時に彼女の背後から無数の氷槍が飛び出し、一番槍とばかりにその肉体へ突き刺さっていく――!
『コオッ、ミァァ!』
 メリルナートは術の効果が先程より落ちているのを手ごたえで知り、静かに笑う……落ちていいのだ、この氷の槍を形成するのは泉の水。先程のスライムや御神木を狂わせた何かなら兎も角、『御神木本体がこれで傷つくはずなどない』のだから。
「さあみなさま、あと少しですわよー?」
 御神木に憑いた何かは弱っている。メリルナートはその魂を傷つける呪いの旋律を奏でながら、ダメ押しを与える仲間達へ支援射撃の手を緩めることは無い。
「んじゃ見せてやるか、邪なる物を打ち払う破邪の一撃ってな!」
 もう仲間を護る必要もない、ただ前進制圧のみ。グレンは盾を手に突撃するとトレントの攻撃を掻い潜り、自らの意志の力を形にした強烈な聖槍の一撃をお見舞いする!
「愛らしいフェアリーが待ってるんだ。さっさと戻って来いよ御神木様よ!」
 凄まじい火力とともに叩きつけられる意志の刃、トレントに出来たその傷口にエトは照準を定めると、一際強い光の柱を解き放つ!
「眠りなさい、大いなる者……光がその魂、天の御園へと導くでしょう」
「それじゃあ私も、いきますよ!」
 穴が開き焼け焦げる魔物へ更に一撃、ユーリエは魔物を拘束する青白い鎖を赤黒く変色させると巧みに操り、開いた傷口を押し広げる様に巻き付ける!
 ミチ、ミチと大木は悲鳴を上げ……ついにその中央、黒く染まり切った澱みの様なコアを露出させてしまう。あとはそこへトドメを刺すだけ!
「さあリゲル、この盾≪父さん≫にかっこいい所見せてやれ!」
 自らの盾を掲げ笑顔を見せるグレンの言葉にリゲルは口元を緩めると、即座にその根元へと疾風の様に移動し、冷たくも確かな信念の一撃をその澱みへと叩きつけた!
「霊木を穢す魔物よ、あるべき場所へ還るがいい!」
 その一撃は御神木の中に宿った『何か』へ確かな一撃となって突き刺さり――


 黒い大木が断末魔をあげる。トレントを覆っていた黒い邪気が一気に噴き出しその姿を一気に包み隠す。
 そして、邪気は何かに引っ張られて行くかのように天へと昇っていくと、静かに影も形も無く霧散していった――

「守り神様!」
 メープルが大木に一目散に飛びつく、先程までイレギュラーズの攻撃を受け続けていた巨大な御神木は何事も無かったかのように傷も無く、日光から還元した魔力を根元の泉へ注ぎ始めていた。
 くすんでいた泉は再び明るさを増し、アルヴィオンののどかな空の風景を映し出す。どうやら、これで本当に終わりのようだ。
「えっと! 本当っ、ありがとう!」
 メープルはイレギュラーズ達の方を向くと深々とお辞儀をして、感謝の意志を表明する。
 数日も経てば空色の泉はかつての機能を取り戻し、再びアルヴィオンへの架け橋になるだろう。冒険者たちは胸をなでおろすと、ようやく訪れた休息に笑顔をこぼすのであった。

 魔物出現の原因こそ完全には解明できなかったものの、この依頼の経過報告は深緑の状況把握に大きな手助けとなるだろう。
 なにより、イレギュラーズ達は妖精たちの一つの悩みを解決できたのだ。
 今はゆっくりと戦闘で疲れた体を休ませ、折角の美しい空色の泉の風景を眺める事としよう……。



成否

成功

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