PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おてんばメープルと空色の泉

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●「やっほ~! 妖精のメープルだよー!」
「……えっと」
 それはイレギュラーズ達が暖かな深緑の村で木漏れ日を浴びながら、木の実採取の依頼をしている時の出来事であった。
 突如現れた茶の長い髪をたなびかせる30センチほどの妖精の女の子を相手に、あなたは少し困惑する。
「あれ? 君達イレギュラーズさん、だよね? 妖精の事知ってるよね? 頼み事があるんだけど!」
 そんな特異運命座標の反応を他所に、マシンガントークで手を組み甘えるように頼み事をするメープル。その様子に【いねむりどらごん】カルア・キルシュテン(p3n000040)は首をかしげながら要件を聞くのであった。
「頼み事って?」
「おっ、話が分かるー! 『妖精郷アルヴィオン』って知ってるよね! 私達の王国!」
「……うん、知ってるけど」
 常春の王国、混沌世界のどこかにあるというその場所は、『妖精の門』というゲートから時折深緑に訪れ、深緑の様々な地域で『妖精伝説』として語り継がれている――そこまではイレギュラーズ達の知る所であった。
「えっとね! この村を出てから森をずーっといった先にね! あそこに行ける『空色の泉』ってすっごく綺麗な泉があるんだ! そこに飛び込むと私達の所にいけるの! ……でも」
 大雑把に方角を指さしながら腕を伸ばし妖精の門との距離感を伝えるメープル、しかし彼女はそこまで伝えると、がっくりと空中でうなだれた。
「今まではそんなことなかったのに……最近、その門のエネルギーを吸って、破壊しようとする変な魔物さんが出てきちゃって……もうピンチなんだよぉ……このままじゃあ門の数が減って、私達がこっちに来れなくなっちゃう」
「それで……どうしようもないから私達の所に来たの?」
「そうそう! わっかる~!」
 カルアの言葉に目を見開き、再び元気になるメープル。どこまでも能天気な彼女であるがどうやら困っている事は本当の様だ。
 メープルはこちらの方へと向き直ると、改めて手を組みイレギュラーズ達にお願いをする。
「イレギュラーズのみなさん! どうか助けて!」

●「こっちこっち! 早く来て!」
 先に任されていた依頼を済ませ、メープルに急かされるがまま村から出たイレギュラーズ達が見た光景は蔓がロープの様に橋渡しになっている木々が無造作に生い茂り、高い草が進行を阻む獣道であった。
 同時に感覚の鋭い物ならば感じとられる、無数の肉食動物の荒い鼻息。体力に自信の無いものが単身向かおうものなら、辿り着く前に行き倒れるのが関の山である。
 なるほど。これほど困難な道のりならば妖精達の住処が『伝説』となるのもおかしくない。

 さて、どうやって進もうか?

GMコメント

 塩魔法使いです。
 ラリーシナリオの執筆は初めてとなります、よろしくお願いします。

●依頼目的(第一章)
 ・森林迷宮の攻略
 妖精の道案内に従い森林迷宮を抜けて『空色の泉』へと向かう。
 泉への道は荒れており、また周囲には興奮状態の動物達が獲物を求めて徘徊しています。
 非戦スキルを活用し道を切り拓く、あるいは道中襲い掛かる動物を戦闘で退治する等して対処しましょう。

●依頼目的(第二章以降)
『空色の泉』にたむろする魔物達との戦闘が予想されます。

●NPC
・メープル
 イレギュラーズを泉まで案内する茶髪の妖精さん。ハイテンションで明るい性格。戦闘能力はありません。
 魔物をなんとかしてくれれば、お礼としてアルヴィオンの美味しい樹液をイレギュラーズ達に渡してくれるそうです。(樹液の売値がGOLDとして還元されます)

・『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)
 ローレットへの報告も兼ねて同行するウォーカーの情報屋。飛行持ちで戦闘の際は壁になってくれます。
(プレイングで呼ばれない限りは描写される事はありません)

●ラリーシナリオについて
 このシナリオはラリーシナリオです。
 1章につき『4~10人程度』の採用を予定しております。2章以降からの参加も歓迎します。(その場合は初めから同行し冒険していた、という扱いになります)
 1節につき1~3人程度纏めて描写される事があります。一人が良ければ【ソロ希望】決まった複数人での描写を望む場合は必ず1行目位に【ぱんつ】などのタグを記載するようにお願いします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いします。

  • おてんばメープルと空色の泉完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年03月14日 15時28分
  • 章数3章
  • 総採用数42人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●長い迷いの森を抜けて
「やーっと! ついたー!」
 深緑の集落を外れ深い森をかき分け進むこと十数キロメートル、代わる代わる護衛役を交代したイレギュラーズ達は、ようやく『空色の泉』へと辿り着く――

 そこは雲が影も形も見られない快晴の日の光が垂直に差し込む清々しい風が流れる小さな原っぱであった。広さで言うと1,2ヘクタールほどの広さの草原の中央には、光り輝き雲の浮かぶ鮮やかな水色の空が映り込む美しい泉と、それはそれは大きく立派で神々しさも感じられる一本の大樹。
「ねえねえ、凄いでしょ! このご神木様がこの泉を作ってて、ここからアルヴィオンのお空が見えるんだよ!」
 泉の近くではしゃぎ回るメープル。なるほど、この泉がアルヴィオンへと繋がる妖精の門、『空色の泉』なのだろう。大方飛び込めば『向こう側』へといける――と言った所か。
 この幻想的な光景に心を驚かせない存在は居ないだろう……だが、妙だ。平和すぎる、泉を破壊しようとする魔物はどこにいる?
 そうイレギュラーズ達が疑問に思った刹那――突然、泉の中から水銀色の触手が飛び出すと、メープルの羽を掴み引きちぎろうと唸りをあげた!

「きゃあああ!?」
 幸いにもすんでの所で躱し事なきを得るメープル、しかし泉は水色からどんよりとした水銀色へと変わると彼女を逃がすまいと中から何十もの『魔物』を一気に吐き出していく!
『アソボウ……アソボウ……』『ニゲナイデ……ニゲナイデ……』
 それは水銀色の光沢を持つ、明らかにこれまでの動物や魔物とは違う歪な生命体であった――!


○第二章の依頼目的
『マーキュリースライムの討伐』
 水銀の様な液体金属で構成された魔法生物。少女の姿を模した物が大半であるが、形を喪った不定形の個体も少数存在する。どちらも意思疎通は出来そうにない……。
 反応値が優秀で反応依存の技で一気に制圧してくる厄介な敵。水銀の体表は毒であり、泉を啜っていたことから何かを吸い取る力をも持っているようだ。
 総数はイレギュラーズ1人につき2~3匹ずつ狩れば丁度いい、と言った所。

 なるべく多く採用したいですが都合を見て次章へ移る事があります、ご了承を。
 よろしくお願いします。


第2章 第2節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

「スライムか……なかなか厄介な敵だな……」
 例え身体が引き裂かれようとも結合し勢いよく毒の体液を射出する水銀の少女にサイズは顔をしかめた。だがやりようは幾らでもある。
「メープルさんは高く飛んで逃げてくれ!」
「わかった!」
 メープルが空高く飛び上がるとスライム達は即座にサイズを狙いだす。しばらく時間が稼げると確信したサイズは、鎌に取り付けていた強化装甲を展開すると更に注意を引くようにスライムの集団の中心へと突撃した!
「さあ、大盤振る舞いだ!」

 サイズは素早く死角から飛び掛かるスライムを鎌の刃で叩き割る事で受け流し泉から平原の端へと誘導する。メープルに見せない様に魔力を抑えていた強化鎌はかつて啜ってきた妖精達の血で赤黒く輝きまるで血の三日月の様な悍ましさを放ちながら重金属性の毒を物ともしない。
『アソボウ、アソボウ』
「それなら、こいつと遊んでろ!」
 十分誘導が出来たと判断したサイズが叫び放り投げた物は、つい数時間前仕留めた狼の大きな肉。
 その血の乾ききったまだ新鮮な肉に、スライム達の視線が完全に逸れる。

 完全に自分から意識を逸れたスライムを前にサイズは息を整えた。
 思った通りだ、奴らには獲物や敵を判別する知能など――今のうちに殲滅だ!
「これでも喰らえ!」
 今度こそはタダでは済まさない。サイズの魔力の込めた鋭い一撃は水銀の少女達を縦に真っ二つに切り裂き、物言わぬ水たまりへと変えて行った。

成否

成功


第2章 第3節

ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌

「こいつが言っていた魔物ですね。木々が言っていた情報とも一致します」
「そうだね……」
 蠢く少女をカルアの肩越しに眺めながらラクリマは溜息をつく。どうやら退治の他にも調査が必要な敵の様だ。
 ラクリマは魔術具を起動すると当然の様にカルアを肉壁にし、キメ顔で親指を立てるのであった。
「さあ行きましょうカルアさん!! 頼りにしているのです!!」
「……」


「どうして二度も――」
 ラクリマは槍の柄で叩かれた痛みを必死に堪え、怒りに身を任せた白き破滅の術式を紡ぐ。彼の十八番は素早く強力に紡ぎあげる神秘術式。紡がれた破滅は美しい蒼い水晶の剣となってスライム達の身体を八つ裂きにした。
 そして白薔薇が可憐に咲く棘の鞭を繰り出すと、形が崩れたスライム達へと投げ、僅かに残った魔力を吸血鬼の様に吸い上げる!
「僕のダメージがカルアさんからなんですか!」
 吸い上げた魔力から再び蒼剣を紡ぐラクリマの怒りが収まったのは、スライム達が大方殲滅された後であった――

「一致しない情報……『黒い影と置く』……が気になりますね」
 戦いの合間、ラクリマは呼吸を整えると手をかざし魔物の情報を探る。その魔物は、重金属の液体に強力な魔力が注がれて生まれた生命体であった。
「……少し気を付けて戦った方がいいですね」
 どこか不自然さを感じつつラクリマは魔装具を構えると、再びカルアの後ろにくっついたまま次の魔物の群れへと攻撃を仕掛けるのであった。

成否

成功


第2章 第4節

セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補

「なにかおかしいみたいだけど、まずこいつらを排除しないとどうにもならないね」
『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)は魔導書を取り出すと、素早くセリアへ飛び掛かるスライム達を前に――

「妖精さんを困らせるのはよーせー」
「えっ、今なんて?」
「……なんでもないわ」
 それで敵が【凍結】してくれれば良かったのに。

 メープルの顔が強張っているのはさておき、セリアは魔導書を手に大きく後ろへ飛び退くと自らの体内に眠る膨大な魔力を練り上げ、乱暴に他人と交戦するスライムへ向け博打気味の大魔法を解き放つ!
「吹き飛んで!」
 セリアの両手から放たれた紫色の邪悪な波動は軌道を変えながらホーミングし、スライム達を巻き込んでいく!
「まずは一人、次は……!」
『ピゲッ! キケン、キケン――』
 仲間の危険から敵を感じ取り他のスライムがセリアの方を向いた時には、時すでに遅し。
 セリアの姿は見えず、それを妨げる様に光り輝く精神力の塊が、既に彼女へと牙を剥いていたから――

 特大の爆発が起こり衝撃波が草原に広がる中、メープルは半分感嘆、半分呆れの感想を零した。
「セリアさん、ダジャレは下手だけど魔法はとってもすごいんだねえ」
「うるさい……!」
 恥ずかしさからセリアはメープルに思わず言い返すと、スライム達の後ろに何者かの思惑を感じつつ消耗した魔力を回復するまで身を託す仲間の元へと急いで駆け寄るのであった。

成否

成功


第2章 第5節

グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

『オイデ、オイデ』
『風吹かす狩人』ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)の前で踊る様に挑発するスライム達を眺め、彼は呆れる様に呟いた。
「見た目がまた嫌らしいネ、中々エグい事するじゃないカ」
 だが、相手がどの様な見た目であれ敵は撃ち抜くのみ。ジュルナットは泉とそびえ立つ御神木を背にスライム達へ牽制射撃を幾度も放ち惑わせる。それは自然を愛するハーモニアの性、神聖な妖精の門とその守護神を愛するが故の無意識の行動であった。
 そのジュルナットの思惑通り、スライム達は牽制に警戒するように大回りする形で泉から徐々に距離を取っていく。後は……。
「誰か、壁になってくれる人がいるんだけどネ」
「なら、俺に任せとけ!」
 ジュルナットの言葉に応え、『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)が彼の前に割って入るとスライムの変幻自在の攻撃をその巨大な盾1枚で器用に受け止める!
「ありがとね、このまま護っててチョーダイ」
「お安い御用だ、それに魔物と言えどレディの誘いとあれば付き合わなきゃな?」
 グレンのその完全無欠な護りの前には、魔物が何体集まろうと意味はなく、如何なる卑怯な手段も効力を為さない。それはまるで強力な意志を身にまとったかのような、盾役としての完成された一つの姿であった。
「来いよお嬢さん方、俺が一つ遊んでやるぜ!」
 ダメ押しとばかりにグレンは高らかに挑発の名乗りを上げると、更に遠方のスライムも一気にグレンへと群がっていく!
『アソボウ、アソボウ――』
「フフ、人気者だネ、お陰でもう準備は出来たネ」
「お陰様でな」
 弓に魔力を込めた矢をつがえジュルナットがグレンのその強固な守りを褒めたたえると、グレンは余裕ある笑みを見せて。
「さあ、思いっきりぶっ飛ばしな!」
「勿論サ! 隣人を傷付けることは許しはしない!」
 ジュルナットへ合図を飛ばすと、ジュルナットはグレンの後ろから飛び出し、凄まじい矢の雨を何体ものスライム達へ向けて解き放つ!
 突風と共に魔力矢がスライムの肉体を吹き飛ばし、その魂無き肉体に等しくダメージを与えていく。
「……なんてネ」
 ジュルナットがふふと笑い最後の矢を放つと、スライム達は痙攣しながら地べたへ倒れる。
「今度はお兄さんの番だヨ」
「そいつはどうも!」
 次はジュルナットの合図でグレンが彼の元を離れると、高めに高めたその防御力を破壊の力へと転換し、それは彼の持つ槍へ意志のオーラとなって現れる。
「レディには悪いが、妖精達を傷付ける奴には容赦しない!」
 決め台詞と共に意志を爆発させると、諦めず無機質に立ち上がり攻撃を繰り出そうとするスライムの胴へと、トドメの一撃を叩きこむ――!

「やるね、グレンクン」
「アンタもな」

 倒した10体以上のスライム達の残骸の上で、グレンとジュルナットは喜びのハイタッチをするのであった。

成否

成功


第2章 第6節

ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ

「メープルさん、大丈夫!?」
「ティ、ティスルさん!」
 疲れて地面へ降りたメープルの下へティスルは駆け寄ると水銀の少女達の姿を確認する。
「あれが門を壊そうとしてる魔物だよね」
 メープルは首を縦に振る。
「気を付けて……あいつらもすっごく」
『早い』――その言葉がメープルから発されるよりも早く、ティスルは既にスライムへと向けて勢いよく魔剣を振り下ろしていた!
「ちょっとだけ下がっててね、すぐ終わらせるから!」
 スライムはティスルの存在を察知すること無く彼女の羽の様に軽い魔剣に幾度も切り裂かれただの物言わぬ水銀へと変わっていく。幾ら『早い』と言えども限界まで早さを極め音を置き去りにしていくティスルにとっては赤子も同然、朝飯前!
「へえ」
 切り裂いた手ごたえから、魔物の身体が自らの魔剣に入ったものとよく似た軽い液体金属で構成されている事に気付きティスルは思わず唸らされる。この材質、一体どこから?
 返しの刃で次のスライムを素早く切り裂くとティスルは再びメープルの元へと離脱し、彼女に一つ質問をする。
「え、あの金属……?」
「うん、妖精郷であんな金属に悪い言い伝えとか……」
 きょとんとするメープルにティスルは訊ねると、メープルは静かに首を横に振る。
「ごめんね……あんな感じの魔物が最近増えてる事、しか」
「そっか、ありがとう!」
 ティスルはメープルにお礼を言うと、次のスライムへと素早く飛び掛かるのであった。

成否

成功


第2章 第7節

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

「水銀の身体を持つスライム……うん、環境破壊だわ」
 泉の水を啜る水銀の魔物を前にイナリは古刀の柄を握りしめ構える。
「やっつけちゃえー!」
「うん、物凄く環境に悪い連中だから、手早く倒さないとね!」
 イナリはメープルを隠す様にすり足で位置取りをすると、静かに心を集中し――
「いくわよ!」
 背後に鮮やかな朱の鳥居のオーラを待とうと、紅蓮の光束としてスライム達を蒸発させるべく純粋な破壊の一撃を叩きこむ!
『アヅイ、アヅイ!』
「もっとあつくしてあげるね!」
 大きな狐の尾が燃え上がるほどの強力な火の幻を自らに宿しながら、更に一発解き放つと、草原を一直線に焼き尽くすほどの焔がトドメとばかりに焼き盛る!
 イナリは素早く刀を鞘へと仕舞うと、前傾姿勢で素早く駆け込みドロドロの肉体へと一刀両断の一撃を叩きこむ!
 真っ二つになったスライムは切り傷から『爆発』するように飛び散り、甲高い悲鳴と共に蒸発していく。
「っ……何か気持ち悪いわね……」
 スライムの返り血を手に浴び、イナリは顔をしかめてそれを振り払う。
 死してなお効力を持つそれはイナリの血を吸い若干赤く染まっていた。
「これは……少し気を付けた方がいいわね」
 泉を啜る能力と同じものだろうか、死体であったからいいものの、もし生きた個体であったら何を流し込まれたかわかったものではない。
 気を付けねば、そうイナリは警戒しつつ呼吸を整えると刀を静かにしまうのであった。

成否

成功


第2章 第8節

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

「あぁ、道中の八つ当たりで気を静めたと思ったらこれですか――」
 未だ勢力を緩めぬ白銀の魔法生物達を前に、ヨハンは怒りで声を震えさせる。
 それは道中でのお遊びとは違う本気の怒り、『妖精の門』はおろか、力の無い妖精まで手にかけようとする非道さに不倶戴天の念を抱くと、ヨハンはメープルへと声をかける。
「もう完全に頭にきました。メープルさんは下がっておいてくださいね」
「うん、うん!」
 飛び去るメープル、そして迫りくるスライム達を前にヨハンは鉄帝国の象徴たる大楯を構えた。
「ここからは真面目ですよ、僕!」
 見た目は中世的で女性とも見間違えられかねない程のヨハンであるが、彼は根からの鉄の誇りを持つ男。
 幾本ものスライム達の触手がヨハンを狙い鋭くその身を貫かんと唸りをあげるも、アクロバティックに避け大巧みに盾で衝撃を受け止める彼の華奢な身を貫通する事など出来ず。そのような軽い攻撃でまともに毒など通せる様な状況ではない。
「ゼシュテルの人間にそんな卑劣な攻撃は通用しない!」
 攻撃を受け止めきったヨハンは吠え、白銀の剣とその大楯による怒涛の反撃を叩きこむ。質量と衝撃を伴ったその激しい剣技はスライムの肉体を磨り潰し、早さに甘えた一打を決して許さない!
「さぁ他の奴もかかってこい! 僕が相手だっ!」
 まさしく移動要塞の様な堅牢で堅実な制圧戦で一体を制したヨハンは、他のスライムへと勇敢に名乗りを上げるのであった。


成否

成功


第2章 第9節

御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい

「ん、もう。折角綺麗な景色だったのに…なんて、子供みたいに思っちゃったわ」
 思わず綺麗な光景に涙が出そうだったのに、内心そう想いながらラヴは泉から這い出るスライム達へゆっくりと銃口を向けると、セーフティを静かに外し囁くように語り掛けた。
「いいえ……もう、おやすみの時間よ」
 あなた達に遊ぶ時間はもう与えない。

「ふうむ、スライムか……」
 豪斗はスライム達の攻撃を受けつつも涼しい顔で考える。彼は耐える力は人一倍あれど敵を倒す様な類の力を持ち合わせてはいない。
「ゴッドビームやゴッドサンダーをこのワールドで使うにはエレメント、ファクター……そういったものが足りぬ故な!」
 ゴッドは周囲を見渡す。自分の得意分野はどちらかと言うと――


 スライム達が悲鳴を上げる、素早く立ち回り照射されるラヴの魔力弾に吸収する力を奪われ上手く身動きが取れないのだ。しかし多勢に無勢、このままではいずれ追いつかれる、ラヴが飛び掛かるスライムに身構えた瞬間――
「……むっ、そこに見えるはエンジェル! かなりストラグルしているな!」
 豪斗がスライムと彼女との間に割って入り、その攻撃を食い止めたのだ!
「……あなたは?」
 ラヴが尋ねると、「ゴッドである!」と高らかに豪斗が名乗り。
「ゴッドはフレンズを見守り、パゥワーを与えるもの! ゴッドウィズユー!」
 眩い輝きと共に挨拶する。ラヴは若干の眩暈を覚えつつも、自らの内に膨大な魔力が沸き上がるのを確かに感じていた。
 ……この男、随分と珍妙な物言いをするが熱意と言葉は本物の様だ。
「ゴッドのパゥワーとは諸君をほんの少しだけヘルプするもの……何でもアスクするといい!」
「……なら、頼みづらい事だけど一ついいかしら」
 ラヴは安心した様に微笑むと、古びた拳銃を豪斗へと見せる。大技を撃つまで時間稼ぎをしてくれないかしら、と。
「よかろう!」
 豪斗は即座に承諾するとラヴの前へと仁王立ちし、彼女から注意を逸らすべく激しくオーラを光り輝かせると、彼女へと檄を飛ばした。
「フレンズよ、ゴッドと共にあれ! そしてユー達の望むロードをゲットせよ!」
「もちろんよ」
 ラヴは身体が軽くなるのを感じながら、銃弾を込め直す。五感が冴える、力が沸き上がる。原理こそ不明だが確実に今の自分は十二分の力が発揮できる!ラヴはそう確信すると素早く敵の脳天へと銃口を定めると、一切ブレぬ手で素早く銃口を並べた2本の拳銃の引き金を引いた――!
「おやすみなさい。夢は見ないまま、どうか安らかに」
『ジャマ、ジャマ――!』
 邪魔くさい豪斗にスライム達が夢中になっていたのも束の間の間。ラヴの拳銃から放たれた極大の光が、スライム達を浄化し夢無き眠りへと導いた――!
「うむ! ミーのオーラにもイコールなライトであったぞ!」
「……別にそのつもりではなかったのだけれども」
 ラヴの言葉は兎も角、豪斗は自らの成果に大変満足な様子であった……。

成否

成功


第2章 第10節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

「り、リゲルさん!」
「メープル! よく躱したな!」
 リゲルはスライム達の攻撃を喰いとめるとメープルを拾い上げ、カルアへと素早く手渡す。
「カルア、引き続きメープルを守っていてくれ!」
「リゲルさんは?」
「大丈夫だ、俺が何とかする!」
 リゲルは剣を振るい襲い掛かる魔物達の粘液を斬り払い歯を喰いしばる。躱す事自体は難しくないものの、この身軽さは面倒だ!
「これは厄介な敵が現れたな……ならばこれでどうだ!」
 後の先。敵が先に動くならば割り切って敢えて隙の遅い攻撃を最後に振る。何度も敵の攻撃を受け止め、一歩後ろへ踏み込むと銀剣を振るい、スライム達へ激しい一撃を叩きこむ!
「さあ、来るがいい!」
 助けを求めるメープルの事を想えば傷や水銀毒など恐れるに足りぬ、リゲルはただ一体でも多く確実に剣を叩きつけ、敵の魔力の流れを狂わせていく。あとは、決め手となる一手のみ!
「彼女が頼ってくれているんだ、期待に応えなければ……!」
 リゲルの根性にも近い体力が、その一手を彼へと掴ませた。リゲルは残った体力を全て振り絞ると、全てを薙ぎ払う光明の一撃を叩きこむ――!
『ピ、ピゲ――!』
 スライムは見事に横に真っ二つに切り裂かれると、どさりとつぶれる様に倒れ込んだ。もうこれ以上の戦闘は不可能であろう。
「……折角美しい場所なんだ、護っていかないとな」
 戦い抜いたリゲルは空色の泉を眺め、一人再び闘士を燃え上がらせるのであった。

成否

成功


第2章 第11節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 泉から這い出る魔物達の勢いは留まる事を知らない。
「ふむ、これはこれは。水銀の乙女……といえば聞こえはいいが……」
『お友達にはなれなさそうね……』
 見た目は可憐でも所詮は猿真似。『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)はその親バカならぬ持ち主バカっぷりを発揮しつつ嫁殿へ諭すように語りかける。
「嫁殿、そう落ちこまれるな。アレは嫁殿のお友達には勿体なさすぎる――」
 というか俺が認めない。断固として。鬼灯は暗記を静かに取り出すと、飛び掛かる魔物達を前に防御の構えを取った。
「嫁殿には指一本触れさせん!」
 嫁殿が毒で溶けたりしようものならたまったものではない! 鬼灯は片腕に抱きかかえた嫁殿を護りながら必死に護りに徹すると相手の隙を狙い、暗器による鋭い一撃を叩きこむ。
『アガ、ガ、ミエナ』
「何も見えない? ああ、そうだな」
 暗器から放たれた魔力の闇に呻くスライム達を前に、鬼灯は冷たく語りかけた。
「演劇でいえば『暗転』だ。最も――」
 こうなれば奴はもう嫁殿を心配する様な相手ですらない。無闇矢鱈に攻撃しだした水銀の魔物の攻撃を鬼灯はひらりと躱すと、脳天へ更に深い闇と刃を叩きつける!

「――貴殿が闇が開けた舞台を見ることは二度と無いが」
 敵の居なくなった草原の上で、一仕事を終えて嫁殿を強く抱きしめた鬼灯がぽつりとそう、呟いた。

成否

成功


第2章 第12節

ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

 緑の草原に鮮やかな御神木の茶。そして空と泉の美しい青。
 その中に蠢く水銀色の歪な少女を前に、『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は目を疑った。
 この配慮無き魔物は一体どこで生まれた生き物なのだろうか、まさかアルヴィオンから来たわけではあるまいが……それにしてもなんと無作法だろう!
「のどかな風景には似つかわしくないですわねー……」
 敵には配慮も風情も無いのだろうが。メリルナートは残念そうに白く輝く槍を振り被ると魔力で泉の水を媒介に氷の槍を錬成し――解き放つ!
 スライム達は躰を変形させ避けつつ術者を先に始末しようと飛び掛かるもその鎧の下の柔らかい肌を溶かすほどの攻撃を与える事は出来ず、逆にメリルナートの氷槍から逃れようと躱した先で幾本も串刺しにされてしまう。
 スライム達の凝固した肉体はバキバキと音を立て鈍い光沢を放つ。こうなれば自慢の柔軟さや素早さは最早発揮できまい。
「あらあら、魔物さまの大好きな泉の水ですよー?」
 趣の無い魔物には冷たい一撃を。メリルナートは自らの手に持つ槍を振り上げると、痛覚すら凍り付かせるような強烈な魔力を込めて金属の像へと振り下ろした。
 可哀想だが、敵とあらば容赦するわけにはいくまい。キラキラと輝く破片を撒き散らしながら砕け散る魔物を前に怯える他のスライム達を前に、メリルナートは再び魔力の槍を生成するのであった。

成否

成功


第2章 第13節

エト・ケトラ(p3p000814)
アルラ・テッラの魔女
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種

 スライム達の数は残り僅かだが、時間的な余裕は冒険者達には無かった。
 知性の無い魔物達は疲労で動きの鈍ってきたメープルを集中的に狙いだしたからだ。
「あ、あわ、わ」
 水銀の泥が彼女へと飛び掛かる瞬間、『慈愛の英雄』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)が即座に割って入る!
「……! 危ない!」
 メープルがゆっくりと目を開けると、その視界には水銀の鈍い輝きに決して負けぬ美しい銀の髪を揺らめかせ、深紅に輝く瞳で魔物を睨みつけるユーリエの姿が映っていた。
「大丈夫、メープル?」
「う、うん」
 エトも駆けつけ、メープルに大きな怪我が無い事に安堵すると2人へ治癒術を行使する。
「邪魔者がまた湧いて出たみたいね……不愉快よ、早々に失せなさい!」
 相手は金属、そして液体。ならば雷が通らない道理はないだろう。エトはスライム達を睨みつけるとタクトを振りかざし、紛い物の命を纏めて焼き切る魔力の雷を照射。
 激しい蒼の雷にスライム達が痙攣するように怯むのを確認すると、エトはメープルへと優しく声をかけた。
「メープル、ここから動いちゃダメだからね」
 ユーリエもまたにこりと微笑むと、勇気を奮い起こし、右腕に巻き付けた鎖から深緑の魔力を解き放つのであった。
「はい、ここからはお任せを!」
 腕輪が作り上げたのは巨大な翡翠色の弓。紅蓮に輝く矢をつがえると、必死に精神を統一し魔力を保ち続ける。仲間の攻撃で出来た隙に付け込む為にも、この魔力を手放したりはしないと集中し――
「逃がしません!」
 文字通り光速で突き抜ける、純粋な破壊力へと転換し解き放った!
 巨大な柱の様な閃光が弓から放たれ、静かに液体金属へ風穴を開けた直後――凄まじい爆風が魔物の肉体を消し飛ばす!
 辛うじて命を保ち続けたスライムは再び肉体を形成しユーリエに飛び掛かるも、軽くいなされた上に液体であろうと逃がさない魔力の鎖で締め上げられ、その肉体を破壊するようにギチギチと締め上げられていく。
「支援感謝です、エトさん!」
「やるわね、ユーリエ」
 疲労も気にせず笑顔を見せるユーリエに、エトは感謝の代わりに関心の意を示すと魔本を取り出し、粛清の光を練り上げていく。
「聖なるかな、独善たるかな――『癒し手』だからと舐めて、後悔したところで遅いのよ」
 尤も、貴女に知能があればの話だけれども――文字通り魔力回路を焼き切られ、飛び散った残骸にエトは吐き捨てる様に呟いた。

 草原に静寂が戻る、水銀の魔物の反応はもう見られない。
「少女の姿のスライム……何か関係があったのかな?」
 訪れた静寂の中、ユーリエは退治した魔物達の姿を思い出しながら考え込む。
「あのスライム、喰らった人間でも真似たのかしら」
 エトは気色悪そうに水銀の水たまりを軽く蹴ると、2人で傷ついたメープルや仲間達を癒すために駆け寄るのであった。
 戦いが終わった後も、2人には治療という大仕事が残っているのだ……。

成否

成功

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