シナリオ詳細
<第三次グレイス・ヌレ海戦>恐怖の海賊連合艦隊
オープニング
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先日、発動された『海洋王国大号令』。
その名の下に、ネオフロンティア海洋王国の活動は活発化していた。
遥かなる外洋、『絶望の青』。そして、その先に広がる新天地の征服を狙う海洋王国は目下の課題を近海の平定、頼みとするイレギュラーズの海上での実戦訓練と位置付けていた。
一方で、活発化し始めた王国の動きに警戒や別の思惑を持つ者達も居た。
その1つは近海掃討の主な的の一つとされた海賊連合だ。
謎の男に煽られた彼等は、海洋王国大号令に纏わる一連の動きに生き残りの道を模索する。
そして、もう1つがこの混沌の大勢力として名高いゼシュテル鉄帝国だ。
国土の大半を厳しい気候で覆われる彼等は、狭小な領土で苦労をする海洋王国と或る意味で近似した問題を抱えている。
そんな彼等は持ち前の武力を活かし、外洋へ出んとする王国の事業に『一枚噛みに』やってきたというわけだ。
この事業は海洋王国にとっての悲願であり、ならず者やゼシュテル等に邪魔させるわけにはいかないというのが海洋王国の意志である。
そして今回の作戦において、ローレットは海洋王国側の支援に回る形だ。
全力をもって、この難局を打破したい。
●
海洋近海にあるグレイス・ヌレ海域。
この場所にて、同時多発的に海洋王国は海賊艦隊や鉄帝国艦隊を相手にした戦いが起こる。
<第三次グレイス・ヌレ海戦>と名付けられたこの戦いにおいて、ローレット勢は海洋王国について支援を行うこととなる。
「負けるわけにはいかないね。海賊にも、鉄帝にもさ」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)もまた海賊ではあるのだが。さすがに海洋の海で大きな顔をする彼らを見過ごせない様子だ。
説明に当たり、彼女はまず、グレイス・ヌレ海域について語る。
「ここは大型の軍船が動きにくい手狭な海域だよ」
全く動けぬわけではないが、機動性を考えれば小型~中型船を使う方がいい。
相手も実際、中型の鋼鉄艦を使ってくる。
これは、オリヴィアの依頼する討伐対象である海賊連合が鉄騎種であることもあるのだろう。
「鉄帝も海賊も、もっと広い海域で戦いたかったはずさ。ただ、そこはソルベの名采配といったところだろうね」
すでに、鉄帝、海賊達は海洋王国群にその動きを察知されていたのか、グレイス・ヌレに引き込まれてしまったようだ。
さて、改めてオリヴィアが願うは、海賊退治。フィアー海賊連合艦隊なる集団の討伐だ。
規模は30名ほどだが、中型の鋼鉄艦3隻で行動する海賊達だ。かなりの難敵と言っても過言ではないだろう。
団長はフィアーを名乗り、恐怖の海賊連合艦隊を自称している。
「鉄騎種なのに、海賊をしている当たり、鉄帝から差し向けられた可能性も高そうだね……」
それだけの力を備えた敵ではある。実際、この近海で活動していた2つの海賊団を力でねじ伏せて吸収しているのだ。
配下となった海賊達もフィアーの強さに心酔し、付き従っている。仲違いなどを画策するのは難しそうだ。
「鋼鉄艦とあって、攻め込むのも難しそうだけれどね。海洋王国も大型鋼鉄艦で後方支援して砲撃をしてくれるよ」
また、相手をこの海域から逃がさぬよう立ち回ってくれるので、海賊達が逃走するなら船を捨てる必要がある。
それでも、相手の船はそれなりの武装を積んでおり、近づくのは難しい。
「2つの海賊団がそれぞれ飛行種と海種で構成されているのも厄介だね。隙をつくのが難しい相手だよ、全く……」
嘆息しつつ、オリヴィアは書類として、敵の情報をイレギュラーズ達へと渡してくれる。
海洋王国友軍とうまく連携を取り、攻め込むのが堅実だが、他に何か策があればこの事態を大きく変えることができるかもしれないので、どんどん提案していきたい。
一通り、オリヴィアは説明を終えて。
「鉄帝に舐められっぱなしな状況に、アタシも嫌気がさしているんだ」
まして、海賊稼業にまで介入されていることに、オリヴィアはやや苛立ちも見せていて。
「アンタ達なら、奴らの鼻っ柱をへし折ってくれると信じてるよ」
そして、彼女はこの戦いをイレギュラーズ達へと託すのだった。
- <第三次グレイス・ヌレ海戦>恐怖の海賊連合艦隊完了
- GM名なちゅい
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年01月03日 22時45分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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海洋、グレイス・ヌレ海域。
現在、この場所を中心に、海賊艦隊や鉄帝国艦隊を相手にした<第三次グレイス・ヌレ海戦>が勃発している。
「これじゃあ暫く、趣味の釣りも出来そうにない」
今回の1件も合わせ、天義の騎士、『誰かの為の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)は些か迷惑そうにぼやく。
仲間と共に、トランジスタグラマーなねこ武者娘、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が操船する中型船に乗って海域に近づいたカイトは、前方の海域に視線をやる。
「これだけ集まると、さすがに壮観よね……」
赤髪ポニーテールの『斜陽』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、海賊達の鋼鉄艦を一通り見回す。
すでに、この手狭な海域へ、海洋王国友軍が海域を囲むように3隻の鋼鉄艦を追い込んでいる。
「海賊というのも、随分賑やかで良いものですね」
水色の髪の獣種の少年、『パンツ泥棒』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が仲間達へと語りかける。
そういう賑やかなのも悪くないと、アルヴァは思ったままを口にした。
――よーほー よーほー かいぞくだー。
――いかりを あげて ほをはって。
――ふなぞこ あなあき どんぶらこ♪
イルカの海種である『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)は波に揺られる船の上で、楽しそうに歌う。
楽しそうに騒ぐ海賊はとても面白い連中だが、残念ながら、今回出くわした海賊は敵でしかない。
その事実にアルヴァは少し残念な印象を抱く。
(ボクも機会があれば、仲間と船に乗ってバカ騒ぎをしてみたい……)
そんな気持ちで、アルヴァはこの依頼に臨む。
「敵が海賊なら、遠慮はいらないね!」
一方で、金髪に大きな赤いうさ耳を付けた少女、『魔法騎士』セララ(p3p000273)は気合十分。海洋の人々の為、全力で海賊を蹴散らす構えだ。
「そういえば、本格的な海戦って初めてだなぁ」
天義出身の貴族、銀髪オッドアイの『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はこの戦いが楽しみなようであり、不安なようでもある不思議な気持ちを抱いて。
「でも、初めてだからって、負けるつもりはないからね! 絶対に勝つよー!」
スティアは頑張らなくちゃと、気合を入れる。
「海戦か。やってやるさ」
帽子から服、ズボン、コートに至るまで黒ずくめの『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)も事態の解決に意欲を見せるのだが。
「それにしても、怪物の次は、鉄帝に海賊か」
「緒戦は烏合の衆、と言いたいけれど、どうなのかしらね」
ルチアの問いかけにアランは思う。
今、この海域にある3隻の鋼鉄艦にいるのは、恐怖を意味するフィアーを名乗る海賊を中心としたフィアー海賊連合と名乗る連中だ。
鉄騎種のみで構成されたフィアー部隊が飛行種のブラックテイル部隊、海種のシースネイク部隊を傘下に置いている。
「おー、フィアー海賊連合。リナリナ、どうも疑問があるゾッ!」
やや色黒な原始少女、『海賊には眼帯!』リナリナ(p3p006258)が叫ぶ。
そもそも、中心となるフィアー海賊団というのは偽物であり、傭兵崩れが海賊っぽく見える武装をしてるだけの連中じゃないのか、と。
「鉄帝の命令で傭兵的な戦闘能力で海賊団2つを騙して吸収し、戦争に利用…………? むー、ドコが海賊連合なんだ?」
そんなリナリナの考えに、アランが唸る。
鉄騎種にかかわらず、武装で固めつつ海洋の海賊をも味方に引き込む手口。近づいて殴るというお得意の戦法ではない。
「ただの脳筋、という訳では無さそうか」
そんな仲間達の推測に、汰磨羈もほぼ同意する。
「厄介な相手だが。そういう時こそ、私達の出番だ」
「海賊を名乗りながら鋼鉄艦を装備している辺り、隠す心算は全くないですね、あれ」
長い黒髪の巫女、凛とした態度の『水天』水瀬 冬佳(p3p006383)が敵の素性について鑑みる。
現地の第三勢力に武器を与えて戦わせる……というのは、装備の技術レベルが上な鉄帝国ならではの策。
そんな冬佳の言葉に、異論は出ない。
「鉄帝さんの海賊なんて、なかなか見ないから楽しいな」
でも、海賊は海賊だから、同じ生き物なのかなとカタラァナは疑問を抱く。
「うん、たしかめてみよう」
しばらく考えたカタラァナは直接、それを確認することにしていた。
一方で、配下となっている2つの海賊団は利用されているだけで、ひどい詐欺に遭っているのではないかと推測していたリナリナ。
「クロクロ海賊とヘビヘビ海賊に伝えれば、戦闘停止に持ち込めるかも!!」
メンバー達の考えは色々あるようだが、ともあれ敵を鎮圧の為、イレギュラーズ達は動き出すのである。
●
さて、イレギュラーズ達は海賊達の討伐を本格的に行うことになる。
「飛行種に海種、まぁ、多少厄介ですが、船さえ無事なら引けを取ることは無いでしょう」
アルヴァが主張するように、船が被弾してしまうと元も子もない。
細心の注意を払いながら、敵艦に近づくこととなるが、汰磨羈提案の作戦方針を軸として動くことになる。
「そろそろ衝撃に備えてくれ」
仲間達へと注意を喚起する汰磨羈が近づいていくのは、シースネイク部隊だ。
「海中を自在に動ける水兵に遊撃をされると、非常に厄介です。特に友軍が狙われると対処がかなり難しいですからね」
冬佳が言うように、飛行種のみの編成であるブラックテイル部隊は砲弾で牽制できるが、海から迫られると流石にどうしようもないという判断からだ。
ただ近づけるだけでは砲弾の的になると判断した汰磨羈は、円弧軌道を意識して操舵する。
その際、他メンバー達が左右弦の大砲を発射して敵艦を撃ちつつ接近していく。
当然ながら、海賊達も主砲、副砲といった武装を発砲して応戦してくるのだが、海域外から、海洋王国友軍が砲弾を飛ばして援護してくれている。
「海洋の海を守るため! 魔法騎士セララ参上!」
敵に向け、堂々とした態度を見せるセララも聖剣ラグナロクを構えて。
「セララ対空砲火カットインだー!」
彼女は見事に飛んできた砲弾を両断し、真っ二つに割った砲弾を海へと落として船を守ってみせた。
とはいえ、皆がそれをできるはずもないし、幾度も成功するとも限らない。
なにより、砲撃の対処に失敗した場合のリスクが大きすぎる。
「……砲撃戦では正直勝ち目が薄そうですし、やはり白兵戦で一隻ずつ叩くしかなさそうですね」
命中すれば、一溜りもないと考える冬佳。立ち上る水飛沫を見てもそれは明らかだ。
その間に、汰磨羈は他の敵2艦の射線上にシースネイク部隊の艦を入れるようにして近づく。
敵艦を盾として利用することで、被弾を防いでいたのだ。
「海賊さんが海へと潜ったよ」
彼女が船を近づけていく間、エコーロケーションによってカタラァナが敵の動きを把握し、仲間達へと告げる。
双眼鏡を使って海を注視するスティアも敵の接近を捕捉して。
「3人がこっちに来るよ!」
「冷たい海の中に入って殲滅しに行くのは、さすがに……」
何せ、時期は冬。いくら依頼とはいえ、冬の海にダイブするのはアルヴァでなくても躊躇してしまうというものだ。
まずは、それらの引き付けを行い、友軍の安全をはかりたいところ。ルチアはその救護をメインに立ち回る構えだ。
なお、彼女が攻撃を控えているのは、別に殺生に対する抵抗があるからではない。純粋に攻撃能力不足だと考えていたからである。
「自分を餌に海種を釣るとは思わなかったよ」
飛行するカイトがそこで、近づいてくる海種へと名乗りを上げて。
「天義の騎士家、ロストレイン家の長カイト・C・ロストレインだ」
エスプリのデコイの効果も合わせ、カイトはシースネイクの隊員を水上から甲板に引き上げようと試みていた。
こちらの目論見通りとスティアが考える横から、アルヴァなどに迎撃を託されて水中を泳ぐカタラァナの姿が。
敵から船底に穴を開けられぬようにする役を担う彼女は、すぐさま歌を歌う。
「海種だからって、海は自分だけのものだって勘違いしちゃだめ」
「う、ぐぐ……!」
それは、夢見る呼び声。
海に潜ったシースネイク部隊員が苦しみ、中には魅了されて仲間に襲い掛かるなど、上手く足止めができていたようだった。
ところで、リナリナだけは汰磨羈の方針とは違った動きを見せていて。
彼女は自身の読み通りに連合が名ばかりで、クロクロ団ことブラックテイル団とヘビヘビ団ことシースネイク団を利用しているのなら……。
「当然最後は………尻尾切り! つまり逃亡!!」
中心となるフィアー部隊の目的が海洋国の妨害であるならば、不利になったらさっさと逃亡し、別の場所で大きい連合を作る可能性もリナリナは示唆していたのだ。
「コレが妨害効果的! ……フィアー、逃がすコレ絶対にだめ!」
彼女は、シースネイクと戦う仲間をそのままに、現状離れた位置にいるブラックテイル団を狙い、ジェットパックで船を飛び立っていったのだった。
●
汰磨羈が操る船は次に、シースネイク号へと死角を突く形で接近する。
ボード型の飛行ユニット、プロメテウスに乗るアランが煙幕を撒き、視界を眩ませる。
彼はさらにカラスのファミリアーを飛ばし、視界を共有して。
「これがファミリアーって奴か。五感共有なんざ、妙な気分だ……」
しばらく、アランは仲間達に敵の位置を伝えることとなる。
そして、接舷に当たり、近づく為に障害となる敵艦側面の大砲めがけ、セララが聖剣から斬撃を繰り出し、真っ二つに切り裂いてしまう。
そうなれば、汰磨羈も一気に敵艦へと接舷していく。
「乗り込めー!」
セララは接舷直前に仲間と共に、シースネイク号へと乗り込む。
彼女は雑魚へと一度回転切りを叩き込み、一気にこの船の制圧を目指す。
カイトに抱えられて敵艦に降り立った冬佳も展開した陣に氷刃を生み出し、部隊員達を次々に切り裂いていく。
冬佳に倒された部隊員の姿に、頭を蛇に変えたウミヘビがその身を震わせて。
「何をしている! 早く叩き落とせ!」
「「「は、はい!」」」
揃って返事した部隊員達もシミター、ショットガンを手に応戦してくる。
「こっちこっち!」
スティアは仲間の盾役として、敵の攻撃を引き付ける。
何が起こるか分からぬ不思議な魔法「千差万別」で敵を翻弄しつつも、貫くレーザーを発して部隊長であるウミヘビへと接敵して直接抑えに当たっていく。
アルヴァもまた、前衛タンクとして機能すべく前に出る。
敵を引きつけつつアルヴァは殺傷の霧を展開して、部隊員達の体力気力を奪っていった。
皆、広範囲攻撃で敵の数を減らそうとするが、元々3体の部隊員は海の中だ。
海中で遊撃に動こうとしていた敵はすでにカタラァナが相手にしており、彼女の歌によって3体とも体力を奪われ、意識を失ってしまっている様子。
少し遅れ、船を接舷させた汰磨羈もまたシースネイク号へと乗り込み、速やかに取り巻きの撃破を目指す。
「貴様等の流儀に合わせよう。力には、力だ」
体内で極度に高めた陰陽二極の霊気を擦り合わせた汰磨羈は、その間に生じた隙間へと刃を振るい、無極の力を飛ばす。
その力は空間を抉り取る波動となり、取り巻き達を倒していく。
遊撃の敵を倒したカタラァナも、敵の不意を突いてシースネイク号へと海から上がり、不意を突いてここでも歌を響かせる。
可聴域外の音は薄黄色の魔力光を伴い、刃物の如く部隊員を切り裂いていく。
勢いは圧倒的にイレギュラーズ達が勝り、瞬く間に部隊員は甲板に倒れていく。
敵を引き付ける前線メンバーはルチアが回復へと当たり、天使の歌を響かせて仲間達を賦活する。
降り立ってきたアランは、気づけば仲間達がもう部隊長であるウミヘビと交戦に至っていた。
「ぐ、使えん奴らめ……!」
蛇の顔を歪ませながらも、食らいつこうとしてくるウミヘビ。
そいつ目がけ、アランは憎悪の爪牙をなぎ払い、敵を圧倒しようとする。
タイマンだとかなり厳しい敵だが、今回は仲間もいる。
飛びかかってきたセララは一気に、ウミヘビを十字に斬り裂く。
敵はシミターを手に応戦してくるが、素早く迫ってきたカイトが機動力を力に変えて魔剣「ロスト・ホロウ」で敵の体を切り裂いてしまった。
「ぐあああぁぁぁ……!!」
大きな叫びを上げ、ウミヘビは甲板の上に転がっていく。
「後は僕達でやるね」
「皆は次の艦の攻略を頼むよ」
カタラァナ、カイトはこの鋼鉄艦内部の探索を行う為、しばし残ることに。
他メンバー達はその言葉を受け、スティア、冬佳がメインとなって体力回復など態勢を立て直しつつ、自分達の船へと急いで戻っていくのである。
●
他メンバーがシースネイクと交戦する間、リナリナは1人、彼女がクロクロ団と呼ぶブラックテイル部隊へとジェットパックを使って向かっていた。
「時間無い! 出来るところから全力だゾッ!!」
彼女はブラックテイル部隊を説得する為、単騎で飛び込んでいく。
リナリナを狙って砲弾が飛ぶが、彼女はなんとかそれを避けつつ呼びかける。
「騙されるな! フィアー海賊なんて居ない!!」
近づきながら、彼女はさらに声を張り上げて。
「奴等、鉄帝の回し者!! 奴等の戦闘力は傭兵の力! 強いけど海賊行為じゃ通用しない力!!」
――フィアーの連中の目的、ウソ海賊連合でっち上げて騙した海賊団を戦争の駒に利用する事!!
敵の攻撃を避けつつ呼びかけ続けていたリナリナ。
しかしながら、ブラックテイルの部隊員達は聞く耳を持たず、砲撃を繰り返す。
「騙されるな!! 真の敵はフィアーどもだゾッ!!」
「彼らが鉄帝の回し者なんてことは、了承済みです」
そこで、ブラックテイルの部隊長、クロネコがリナリナへと告げる。
フィアーという男のカリスマ性について、彼は酔いしれているようだった。
「そういうのが分かって、私達は契りを交わしたんですよ?」
部隊員の砲弾がリナリナへと命中してしまう。
彼女はそれでもなんとか、ブラックテイルの船へと乗り移る。
リナリナはパンドラを使ってしまっていたが、彼女は結果的に、時間稼ぎを行った形だ。
その間、フィアーの乗る鋼鉄艦は友軍2隻が牽制してくれていた。
1隻を落としてしまえば、友軍の抑えもかなり手堅い形となり、敵も迂闊に動けずにいた様子。
「思った以上に、敵も鋼鉄艦の性能を持て余しているようですね」
冬佳はこちらへと向かってくる様子のないフィアー号の様子に、本音を漏らす。
この状態なら、単独で次の鋼鉄艦は問題なく制圧できそうだと冬佳は見通しを語る。
「このままブラックテイルの攻略に向かう」
友軍の状況と、戦況を把握した汰磨羈が仲間達へと告げ、移動を始める。
フィアー号からの砲撃はこちらに及ぶことがないのもそうだが、ブラックテイル号も一悶着起きている状況で、接近は比較的容易だった。
念の為にと、イレギュラーズ達は先程と同様の手順で接舷に当たるが、船は先程よりもやや急な角度で接近、セララが大砲を破壊、アランが煙幕を振りまく。
船の設備が故障し、視界不良となれば、敵も少なからず混乱する。
接舷に当たっては、カイト、カタラァナの2人が不在の為、セララ、アランが先行する形だ。
「いっくぞー!」
リナリナが乗り移ってからすぐ、セララが飛び込んで回転切りで部隊員である飛行種達の体をなぎ払い、アランが憎悪の爪牙を叩きつけていく。
敵がリナリナへと注意を引き付けている間に、汰磨羈が船をブラックテイル号へと接舷させて。
「さあ、2隻目、行こうか」
汰磨羈を始め、まだ余裕を残すメンバーも多い。
彼女は取り巻き排除の為にと、空間を抉り切る波動……刋界剳で海賊たちを撃ち抜いていく。
スティア、アルヴァの2人も、変わらず抑えに当たるが、こちらの艦は動きが素早い者も多い。
その分、威力は先程の海種の海賊に劣る。
「君達全員、切り裂いてあげよう」
クロネコは両腕に装着した刃、カタールで切りかかって来たが、スティアが敵の侵攻を食い止めながらも、終焉をもたらす氷結の花で敵の身体から血を流し、体力を削っていく。
敵は飛行して空からマシンガンを掃射して攻め来る敵もいる。
そうしたうっとうしさを感じる敵をアルヴァは纏めて狙い撃ち、次々に殺傷の霧で覆って次々に墜としてしまう。
友軍の砲撃牽制は変わらず、フィアー号へと向いたまま。
「出来れば、こちらも鹵獲したいですね」
冬佳はこの鋼鉄艦も沈没させずに討伐に当たるべく立ち回る。
だが、素早く飛び回る敵に傷つく仲間も多く、冬佳は序盤、雪のような白い花を仲間の傷口に咲かせて癒しをもたらす。
同じく、ルチアもまた調和の力でピンポイントに仲間の回復に当たっていたのだが……。
ルチアは友軍の状態も確認しようと視線を鋼鉄艦の外へと向けた瞬間、船が大きく動く。
「しまっ……」
それによって、船から落ちてしまったルチア。
だが、空を飛んでやってきたアランが彼女を受け止めた。
「間一髪だったようだな」
「悪いわね」
彼らはブラックテイル号の甲板へと降り立ち、さらに交戦を続ける。
先の艦と違い、今度は空中も含めて散開し、一度に甲板から飛行種の敵が襲い来る状況だ。
少し遅れて、シースネイク号の探索を簡単に済ませたカイトが合流する。
同じく、泳いでやってきたカタラァナ。
彼女はフリーになっている海賊を狙い、恐怖心や危機感、嫌悪感といった言葉を用いた歌を聞かせて。
大きく後ろに飛び退いた敵は水中へと落下してしまう。
そうなれば、翼が濡れてすぐに飛行することもできず、身動きもとれずに戦線復帰できぬ状態となっていたようだ。
そうして、メンバー達が敵をある程度減らしてきていたこともあり、カイトは部隊長であるクロネコを狙う。
「僕と、機動力で勝負しようぜ、黒猫さん!」
「ふっ、いいでしょう」
そして、カイトは敵を空中へと誘い、敢えて飛行させることで味方に有利な状況をつくる。
カイトが引き付けるクロネコへ、セララが空を切る斬撃を浴びせかける。
敵はカタールで鋭く、かつ素早い攻撃で攻め立ててくるが、イレギュラーズが追い込む方が早い。
アランが魔力を纏わせた大剣から光芒を放ち、汰磨羈がここでも剣を斬り上げて空間を抉り切る波動を飛ばすと。
「そ、そんな……はずは……」
それらの攻撃を浴びたクロネコは浮力を失い、甲板へと叩きつけられて失神してしまった。
クロネコの討伐を確認したセララが叫ぶ。
「キミ達の親分は倒れたよ! もうボク達の勝利は揺らがない。痛い思いをしなくなかったら大人しく投稿するんだね!」
自分達の士気を高め、相手の士気を下げる為の一言。
交戦を続けていたブラックテイル隊は自分達の長が倒されたことで、降伏を告げた。
クロネコを討ち取ったのはよいものの。
リナリナは言葉が通じなかったと残念そうな表情をしながらも、残るフィアーの船へと乗り移っていくのである。
●
残るは、この艦隊の通信となるフィアー部隊のみ。
今回は友軍の砲撃で牽制してもらいつつ接敵していくが、追い込まれていた相手は周囲へと砲弾を飛ばしてくる。
戦略眼で戦況を見極めようとする汰磨羈は、シースネイク号の時と同様に円弧軌道で船を接近させることとなる。
適応するスキル所持を度外視すれば、相手は空も飛べず、自重もあって泳ぐのが不向きな鉄騎種達だ。
ともあれ、今回もまたセララ、アランが主軸となって接敵に当たり、大砲破壊と煙幕で船を近づけていく。
再び、セララ、アランが襲撃をかけるのだが、さすがにフィアー部隊はこれまでの2部隊とは格が違った。
屈強な体を持つ敵に対し、セララが聖剣を握りしめて全力で技を繰り出す中、爪牙を振るうアランが重い拳の一撃を受けて卒倒しかけてしまう。
何とか、彼はパンドラの力で踏みとどまるのだが……。
「野郎、よくも俺様の計画を台無しにしてくれたな……」
そう告げたのは、身長2.5mもあるフィアーを名乗る厳つい顔をした鉄騎種の大男。
機械の四肢を持つそいつの一撃はかなりの威力であり、守りも非常に硬く、かなり手強い相手。さすが、賞金首になるだけの力ある男というべきだろう。
そんな中、船が接舷し、イレギュラーズ達が集まってくる。
「で、船長はあのデカブツですか。自分の身体を改造でもしているのでしょう?」
アルヴァが戦闘態勢を整えようとし、ここでもタンクの役割を果たそうとするのだが、フィアーの動きは素早い。
苦しそうなアランの回復に向かうルチアへと素早く近寄り、そいつは強烈な蹴りを叩き込む。
また、敵の統率もとれており、団員が鈍器やマグナム銃で攻めてくることも大きい。
それらの攻撃を立て続けに浴び、ルチアもまたパンドラ後からに頼ってその身を起こしていた。
「海賊達を配下にした力は伊達ではないようだね」
一撃が強力な攻撃を幾度も浴びるわけにもいかないとスティアは判断し、アルヴァと協力しつつフィアーの攻撃を凌ぐ。
2人は敵を煽りつつ攻撃を引付け、その合間にアルヴァは殺傷の霧を発して敵を弱らせ、スティアも終焉をもたらす氷結の花を咲かせて団員達に傷を増やす。
「もう一息だよ」
仲間に呼びかける汰磨羈がここでも「太極律道・刋界剳」を繰り出し、敵の数を減らしにかかる。
冬佳は初撃こそ、白鷺の結界を展開して敵を攻撃していた。
しかし、その後はフィアー団の攻撃の威力を見て、冬佳は防御集中し、清浄なる神水を触媒とした癒しを皆に振り撒いていたようだ。
2隻目の探索を終えたカイトもこの場に合流し、手早く終わらせる為に意志抵抗力を破壊力へと転化し、団員へと叩きつけて沈黙させていく。
「るらー!」
力任せに、ハンマードリルで殴り掛かっていくリナリナ。
彼女へと大斧を振り上げる団員の後ろから、海から上がってきたカタラァナが強襲し、「揺蕩うバーラエナ」を歌い聞かせて倒してしまう。
彼女はさらに、唯一立っていたフィアーへとこんな歌を聞かせて。
――ふきっさらしの しおかぜが。
――ひどく しみて いたむのさ。
――おいらの まっちろ きれいなおはだ。
――つるっと まるい されこうべ♪
美しい声を響かせるカタラァナは、巨躯の相手を見上げて。
「さあ、幕引きだよ。上手に踊ってね」
結局、カタラァナは今回の相手が海賊だと認識したらしい。
もちろん、楽しい相手ではありえないが。
「舐めやがって……!」
力を振り絞り、イレギュラーズ達へと殴打を叩きつけてくるフィアー。
合間にロケットランチャーを取り出し、そいつはイレギュラーズ達を追い込もうとするのだが、前線のスティア、アルヴァが防御で堪え、戦線を維持する。
その合間に、汰磨羈が展開した乾坤八卦陣の中にフィアーを捉え、死極の剣「一菱流(死極)」で乱撃を叩き込み、敵を追い込む。
「フィアー。これもお祭り騒ぎの一種か? キミが命を賭けるほどの主とは一体誰なんだい?」
「さあな。俺の思うがままに振舞って何が悪い?」
敵が喋るつもりがないなら、他の鋼鉄艦と同様に調べるまで。
話し合いを諦めたカイトは、敵に向かって踏み込みつつ魔剣の刃を敵の巨体へと叩き込む。
口から、胸部から、血を流すフィアー。
だが、彼は再び握りしめた拳をセララへと叩き込む。
「負けられない……! 君達を放置すればきっと多くの人々が犠牲になる!」
気合で踏みとどまり、敵を睨みつけたセララは大きく敵の体を聖剣で切り上げる。
僅かに浮く敵の巨体。
そこで、セララは高く跳び上がって。
「人々の笑顔を守るため! 絶対に勝利してみせる!」
聖剣を敵の真上から振り下ろし、フィアーの体を甲板へと叩き込み、めり込ませてしまう。
「ぐ、おあぁ……っ」
重い音を立て、フィアーの巨体は甲板へと横倒しになる。
ようやく、海賊連合の長を倒した一行は、一息つきながら友軍へと海賊達の討伐が完了したことを報告するのだった。
●
全ての海賊達を無力化してからも、一行はしばらく作業を続けることになる。
友軍の海洋王国と協力するイレギュラーズ達は海に落ちた海賊達を救出し、全員を捕えて大型艦へと搬送した。
賞金首を討伐したこともあり、追加報酬も出ることだろう。
また、海賊達の記録から、やはり鉄帝との繋がりを確認することができた。
そのまま鋼鉄艦も友軍に託す形だ。資材、燃料、弾丸などを確保できたこともあり、今後の作戦に流用されることとなるだろう。
ともあれ、無事に作戦を成功したこともあり、イレギュラーズ達も一息つきつつ、乗ってきた中型船で港へと帰ることにしたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは操船、作戦提案などを行っていたあなたへ。
今回はご参加ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
大笑いする海賊団が再度活動しているようですので、の討伐を願います。
●重要な備考
<第三次グレイス・ヌレ海戦>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』を追加カウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
尚、『海洋王国事業貢献値』のシナリオ追加は今回が最後となります。(別途クエスト・海洋名声ボーナスの最終加算があります)
●目的
鋼鉄艦3隻の鎮圧もしくは撃沈
●敵……フィアー海賊連合
2海賊団を配下に置く海賊団で、3隻の鋼鉄艦で行動しています。
3隻は中型の同形艦。それぞれ、部隊(海賊団)の名前をとって、フィアー号、ブラックテイル号、シースネイク号と名付けられています。
武装も全ての艦で同じように搭載されています。
砲台は艦橋から操作する主砲が手前に2門。副砲が左右弦に2連装砲台が1門ずつ。
船倉から操作する船の側面に3門ずつ搭載されています。
◎フィアー部隊(海賊団)
他2海賊を配下とする海賊団です。
団員の能力も他2隊と比べれば若干格上です。
○団長……フィアー(仮名)
敢えて、海洋にやってきて海賊となっている身長2.5mほどもある大柄かつ、かなり厳つい顔鉄騎種。賞金首です。
遠距離で重火器、近距離で機械の四肢を使った打撃と隙の無い攻めを行います。
〇団員……8名
全員が屈強な体を持つ鉄騎種。マグナム銃にハンマー、大斧など、パワーで攻め来る相手です。
素早さこそありませんが、一撃はかなり脅威です。
◎ブラックテイル部隊(海賊団)10名
飛行種のみで編成された部隊。海賊団がそのまま部隊となっています。
3部隊で最も素早さに優れ、空を使って立体的に攻めてきます。
〇部隊長……クロネコ
黒い翼、黒い眼帯とマスクを付けたウミネコの飛行種。
痩せた体躯でカタールと呼ばれる武器のみを使い、銃も使わず襲ってきます。
〇団員……10名
比較的痩せ型な体躯の者が多く、素早く攻める為にマシンガン、サーベルといった初速の速い武器を好んで使ってきます。
◎シースネイク部隊(海賊団)10名
全員が海種。水中から攻めてくることもあり、最も海賊らしい戦い方を好むと言える者達です。
○部隊長……ウミヘビ
その名の通り、ウミヘビの海種。
素早く頭を蛇に変えて食らいつき、麻痺毒を与えてくることがあります。
それ以外は、団員とほぼ同じ攻撃を行います。
○団員……10名
標準的な体格ですが、水中だと魚をメインに元となった水生生物へと変化して襲ってくる為、出来るだけ船上で戦いたい相手です。
ショットガン、シミターといった水中戦でも効果のある武器を使ってきます。
●NPC
○海洋王国友軍(飛行種、海種がそれぞれ1隻ずつ)
大型艦2隻が海域の端を移動しつつ協力してくれます。
ローレットの船には命中させぬよう、主砲で援護攻撃してくれますが、海域に入ると動けなくなることもあり、距離を取っての援護に徹します。
白兵戦もできますが、海賊に力負けする程度の技量ですので、近づけさせぬほうがいいでしょう。
海賊の飛行種、海種から狙われる危険もある為、友軍を守ることも考慮しつつ立ち回りたいところです。
●状況
場所は海洋近海。
海洋の港で中型船を借りて、敵艦隊へと近づくことになります。
甲板左右弦に2門ずつ大砲があり、使うことが可能です。
如何にして敵艦隊へと近づき、直接海賊達を叩くかがこの作戦のカギとなります。
敵は飛行、水中から逆にローレットの船や友軍艦へと近づいてくる可能性があるので、うまく誘導しつつ攻める必要があるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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