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シナリオ詳細

監獄島のローザミスティカ
監獄島のローザミスティカ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●監獄島
 幻想国――その南部、大陸より離れたぽつんとした場所にそれはあった。
 通称を監獄島と呼ばれるそこには幻想国での罪人達が収容されているらしい。
 さて、表舞台に出ず筈のその場所に一人の乙女が収容されている。
 その名をローザミスティカ。
 本名は又別に。
 彼女は老婆であると伝えられたり美しき聖女であるとも言われていた。
 その罪状は貴族殺しであるという。その全容は知らされいないが――彼女はフィッツバルディ派に属する貴族であったと噂される。
 彼女が本件の『重要人物』である。


「貴殿らには監獄島に渡り、ローザミスティカの依頼を受けてきて欲しい」とレイガルテ・フォン・フィッツバルディは詰らなさそうにそう言った。
 彼直々の願いではあるが、特段重要視されていないのか興味があるものであればそれでよいと広く間口を広げて依頼された。
「ローザミスティカ……通称名であり、本名を語るの事は控えさせて貰おう。
 大罪人たる彼女が監獄島の実質的看守として動いている事が現状では判明している。
 ……愉快な事に『監獄島』の王たる存在になり刑罰の管理を行っているという情報も手に入れておる訳だ」
 調査報告書と書かれた冊子を机の上に乱雑に投げ捨ててレイガルテはテーブルに置かれた茶器を見下ろした。まだ暖かい紅茶は波紋を作り、静かに揺らいでいるだけだ。
「貴殿らに乞うのはローザミスティカによる『監獄島』の実態調査だ。
 まずは小手調べではあるが……彼女によって死刑が執行されるらしい」
 その一件、『慈愛』のアリスティドと呼ばれた男の死刑の執行に立ち会う事が目的だ。
 ローザミスティカに信頼され、島の全容を掴む事こそがレイガルテからの依頼ではあるがそう簡単に事は進むまいというのが彼の考えだ。
 曰く、『ローザミスティカは狡猾で警戒心が強い』事から、調査という大義名分で乗り込めばその全貌を把握することはできないという事だ。
「監獄島の掌握と言うなら、兵を出せば容易だろう?」
 特異運命座標の言葉にレイガルテは「それでは詰らんだろう」と面白くなさそうに言った。
「何故貴殿らを呼んだか、というのが焦点だ」
 つまりは、監獄島の事実上のトップとなっているローザミスティカさえ手中に収めれば事実上は監獄島の管理がフィッツバルディ派となるという事だ。そう言った『黒い事』に長けるアーベントロートでも手が届かぬ監獄島を『背後で掌握しておきたい』という欲求は成程、この渾沌たる幻想国の有力貴族の姿そのものか。
「……では、善き知らせを待っている」

●『ローザミスティカ』
 鴉の声がする。小舟などが討ち捨てられ、整頓もろくにされぬ我楽多の小島。それが監獄島と呼ばれた場所であった。
 美しき青い海に囲まれながらもその近海にはローレットにも時折依頼として舞い込む様なモンスターたちが跋扈する。海へ落ちればモンスターの腹の中という言葉が正しく似合うその場所に特異運命座標たち8名は送り込まれた。
 小高い塔の中に誘われるように入れば、看守であろう男ががらんどうの牢を示す。
「あれがローザミスティカの牢だ」
 鍵が開いているではないか、と誰ぞが言った言葉に看守は胡乱に頷いた。
 看守長の部屋へ向かおうと呟く看守の背を追い進む。
 こざっぱりとした貴族の執務室を思わせたその場所に青い瞳の女が座っていた。
 焼けた肌にソバージュのかかった黒い髪をした女は「あんたらがお客人かい」と首を傾いだ。
「『看守見習い』なんざに立候補するとはローレットも相当の暇人だね。
 まあ、いい。今日は一件の死刑があるもんでね。……ああ、聞いた話じゃ、死刑の手伝いもしてくれるんだったか。
 イキが良すぎて抵抗するもんでねえ。看守も何人かお陀仏だよ。さ、早速仕事にとりかかろうか」
 差し出された紙にはアリスティドという男のプロフィールが並んでいる。
 ローザミスティカがこうして看守長の席に座っている理由を問えば彼女は面白そうに笑った。
「看守長? ああ、最初に死んださね」
 死んだ。
「そう! こりゃビックリ。普通に死んで空席になったもんだからアタシが座ってんだ」
 それ以上は何も言わずにローザミスティカは「さて、仕事だよ」と笑った。

GMコメント

夏あかねです。

●成功条件
『慈愛』のアリスティドの殺害(死刑執行)

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●『慈愛』のアリスティド
 旅人です。彼は元の世界で身につけた技能より回復に優れて居ました。医者だそうです。
 しかし、医者としての技能を謝った方向に使用し、人々の臓器を集め無理に癒して生かし続けというのを何度何度も繰り返した猟奇的殺人犯です。
 死刑には抵抗を続けているようです。タグには11と刻まれています。後述、死刑台の効果で強敵となりました。

●死刑台
 アリスティドとの戦いの場所です。この場所では様々な技能の『封印』がある筈でしたがローザミスティカの細工により『囚人』がタグを身に着けている場合にその力を倍増する効果を付与しました。
 周囲は見通しもよい小部屋です。隠れる場所はありません。

●ローザミスティカ
 監獄島の実質的な統治者。貴族殺しの大罪人。本名不詳。
 特異運命座標の前に現したその顔は30代の女でしたが噂では老婆でもあり乙女でもあったそうです。
 彼女に関するデータは少なく、全てが噂の範囲を出ません。
 今回は特異運命座標の実力を見たいと死刑執行を命じたようです。

悪依頼です。
よろしくお願いいたします。

  • 監獄島のローザミスティカ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年10月24日 23時35分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
ロリ宇宙警察忍者巡査下忍
エマ(p3p000257)
こそどろ
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
メリンダ・ビーチャム(p3p001496)
瞑目する修道女
クーア・ミューゼル(p3p003529)
こげねこ
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
闇討人

リプレイ


 調書には抜けが多かった。ローザミスティカ。『元』幻想貴族の大罪人。
 特異運命座標だからこそと任命された仕事とは思えぬほどの情報の少なさは『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)を困惑させていた。しかも、その情報提供主であり、依頼主が幻想大貴族レイガルテ・フォン・フィッツバルディその人で有るというのだから。
「……フィッツバルディ公の仰り様からすると、本名含め一通りの情報を握ってはおられるようですね。情報を出さなかったのは不要な詮索をするべからず、という意味でもありましょうけれど」
 もしも、直接ローザミスティカの事を問い掛けたとしても「罪人について口にするなど」と一蹴されたであろうことをアリシスは想像がついていた。
「監獄島。『島流し』ですか……。
 ここにぶち込まれる事がなくて本当に良かったー。なーんて」
 薄ら笑いと共に『こそどろ』エマ(p3p000257)はほっと胸を撫で下ろす仕草をした。天涯孤独の身であった彼女にとっては、その日を凌ぐ為ならば何でもするのが盗賊だ。
 幻想貴族の御機嫌を損ねれば簡単に島流しにされてしまう事など、想像には易くない。逆に、頼みたいと幻想貴族直々のご用命なのだからローレットは――特異運命座標は――信頼に値するとあのフィッツバルディ公に認識されたという事だろうか。
「フィッツバルディ公は本当に頭の良いお方」
 そう何気なく口にしたエマの言葉に被さる様に『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)の明るい声音が「はい!」と響いた。
「幻想にて貴族殺しは大罪。その大罪人たるローザミスティカ殿を利用しようとは……
 流石はフィッツバルディ卿……いえ、ダーリンと呼ぶべきでしょうか」
 ダーリン、とアリシスが繰り返したその言葉にルル家はにんまりと笑った。どうやら、彼女の中でフィッツバルディ公は『ダーリン』なのだろう。そのダーリンからのまたと無い望みならば熟すが吉、ということか。
「ちょっとデンジャーなレディにお近づきになりゃいいんだろ? まーいつもやってることだからな」
 デンジャーなレディならば『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)に任せろという様に、彼はさもない依頼だと一分しか書かれていない依頼書を眺めた。そこに躍る文面は『詳細は現地で』だけである。
「ご丁寧に秘匿され続けてるのです。『仕事内容』も善人なら口が裂けても言えない事なのです」
 これから『囚人の死刑を代行する』というのだ。『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)は「なんか、やることが処刑というより実験じみてるような気がするのですが」と首を傾いだ。
「そうでござるな。公開処刑とは名ばかりの『見世物小屋』の所業でござる」
 肩を竦めた『暗鬼夜行』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)。御手前拝見と言えどもやって居るのは強化される囚人との命懸けのバトルだ。
「それが許される……囚人の身でありながら監獄ごと乗っ取ってしまう女傑だなんて、なんだか痺れるわねぇ」
『瞑目する修道女』メリンダ・ビーチャム(p3p001496)は吐息を漏らした。今回はローザミスティカからしても軽いご挨拶と顔見せ程度なのだろう。看守長の椅子に座った淑女はその美貌を衰えさせる事無く、嬉々と輝かせていたではないか。
「末永く『よろしく』させてくれるかしら?」
 目を伏せった修道女は口元にゆったりと笑みを浮かべた。監獄島、孤島にある『囚人収容施設』。海の牢獄に一つのいのちを奪う為、八人は『死刑台』への扉を開く。


 ――奇しき薔薇 芳わしく 恵みたもう 愛のみ母
 アヴェ アヴェ アヴェ マリア アヴェ アヴェ アヴェ マリア♪

『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)は常の通り、楽し気に歌声を響かせた。
 11番のタグをつけた男は「ああ」と声を漏らす。
「神よ、何という事でしょう。ついに命を奪われるかと思った矢先――美しい『臓器(かのじょ)』の方からやってきたではありませんか!」
 手を組み合わせた男はずたずたに裂かれた白衣をドレスローブの様に地面に広げて指を組み合わせる。ちら、とルル家がその後ろへと視線をやれば、楽し気に笑ったローザミスティカが安全地帯よりこちらを見下ろしているのが分かった。
(先ずは『ダーリン』の為にも拙者たちの力を存分にアピールしてローザミスティカ殿に認められるとしましょうか。……気になる事は多々あれど、まずは着実な一歩から、です!)
 此度の事ひとつで状況が大きく転じる事はないとルル家は分かっていた。それ故に、今後の為にローザミスティカから最大限の評価を引き出したいというのが特異運命座標の考えだ。
『慈愛のアリスティド』が身に着けたタグの効果で強化されるとしても、だ。真正面から戦って、機転と連携を活かして着実に相手を倒す事が求められる。
「へえ、アンタらはこの死刑台を見てもたじろいだりはしないんだねぇ」
 興味深そうに、そうして言葉を響かせたローザミスティカをチラ、と見遣ってアリシスは興味深いと目を細めた。フィッツバルディ公の思惑がどうあれ『何者なのか』というのは興味深いではないか。
 性別は一定、女性である事は確かだと言われているが、外見年齢は不定、恐らくは容姿さえも変えている――旅人ではなく純種であるのは確かではあるが、『外見を変化させるべく旅人の技術を駆使した』か。女から感じる気配はそう言ったものだ。
(魔種ではありませんが……外見を変える必要があった『仕事』か、はたまた『出自』だったのでしょう)
 幻想も一筋縄ではいかぬ国だ。そういう存在が居ても何らおかしくはない。アリシスは一定、ローザミスティカに視線を送った後に、にまりと微笑んだ。
「『処刑』の場に立つのは久しぶりですね。それも『異端者』以外が相手というのは」
「立った事が?」
「……ええ、まあ」
 異端というモノは何処にでも居り、そして逸脱した存在は何処でだって上手くは生きられないのだ。くつくつと笑ったアリスティドを見遣って祈るように手を組み合わせたメリンダは「ああ」と『悲しむ様に』声を漏らした。

 ――話は少し前に遡る。「これから天に召されるあの方が、少しでも心安らかに逝けますように……」とメリンダはローザミスティカにアリスティドへの面会を申し入れた。
 シスターという立場を活かせばローザミスティカは止めやしなかった。否、彼女に許可さえ取ればこの島では何だってできたのだろう。
 アリスティドに暮らしぶりやこれまでも経緯を聞き出せば、幻想国で捕縛されてからこの場所へと送り込まれた事、そして、この島には特異な『通貨』が存在し、ローザミスティカがそれを管理しているからこそ統率が取れているのだという事を耳にした。
「……人というのは何処までも、欲深いのですね」
 アリスティドは通貨で管理された『人間らしい生活』を島では遅れなかった。湧きあがる殺戮という衝動が、どうにも抑えがたかったのだ。先ずは、看守を捕らえてその臓器を取り出した、そして××し、××が、××で――――

「……『異端』。
 極悪人であれば別に焔色の終わりを齎す義理もないのですし、呪い殺してやってもいいのですが。
 折角ですので私自身のより深い焔の探求の為、付き合ってもらうのです」
 クーアはとん、と地面を踏み締めた。ぶつぶつと『臓器』への愛情を呟いているアリスティドを見遣った彼女の瞳には炎がちらついている。
「さて、死刑囚アリスティドさんでしたね。
 恨みも何もありませんが、依頼ですので……死刑執行のお時間ですって。いざっ!」
 エマが地面を蹴った。走りだしたそれをサポートするように咲耶とサンディはアリスティドを見遣る。
 炎の気配に焦がれながらもクーアは簡易封印式をアリスティドに向かって書きだした。行動を阻害するような彼女の動きを受けながらも尚も瞳を輝かせた旅人は『臓器』しか見てはいない。
「殺せと言えば殺すのかい。こりゃ、予想外だねえ」
 上より降ったローザミスティカの言葉にルル家はくすりと笑った。ああ、『常人は殺せと言われれば躊躇う』という当たり前の常識をあの大罪人は持っているのか――
「『慈愛』のアリスティド、法で死刑と決まった相手を屠るに躊躇はありません。むしろ専門分野です」
 冷えたその言葉にローザミスティカは手を打ち合わせた。宇宙力(うちゅうちから)を発揮して、アリスティドに対して距離を詰めたルル家。全力での戦闘はこのタイミングではないとアリシスは目を凝らす。告死の刃を振るうアリシスの視線はこそりと『こそどろ』が為に走ったエマへと向けられた。
「あの『タグ』、何やら特別な効果がある様子。盗んでみたいですよね。えひひ」
 タグが無ければこちらのものであることをエマ走っていた。サンディが仲間が倒れる事ないようにと支援した其れを受けながら、メリンダはモーニングスターを『眼を開き振り上げる』。
 アリスティドが手刀を放ったそれでぶちりとメリンダの縫合部位が音を立てたのもご愛敬。リミッターでも外れた様に彼女は武器を振り上げる。
 アクロバットでかく乱する動きのエマを支援する朔耶がアリスティドを呼んだ。
「元より貴殿、前の世界でも医者であったとか。何故人を無理に生かす様な真似を?」
 相手をおだてながらも彼の心を誘導しエマから意識を逸らす。それこそが忍術の内であると朔耶は息を潜める。
 火事一犯は日々の研鑽の賜物――そう豪語するこげねこメイド拘りの美技は初歩の初歩。人間は初心に戻るべきが大事なのだと炎を纏いながらクーアが尾を揺らす。勿論の事だが放火犯罪だ。
 ぐ、と掴みかからんとしたアリスティドに「触ると火傷しますよ」とクーアはにやりと笑みを溢した。その愛らしい笑みは悪魔のささやきが如く、炎をより強化させる。
 その隙をつき、エマはぐん、とアリスティドのタグを引っ張った。
「――ああ、悪い指先だ!」
 アリスティドが叫んだ其れを遮るようにクーアの炎が一気にその身を包んだ。
「指先は切り取っても後で縫い付ければいいさ。ああ、そうか。その炎も放つ君も炎に焼かれる身体を綺麗にして癒さなくてはね。先に開腹手術から始めようか」
「御免蒙るのです!」
 ふん、と視線を逸らしたクーア。カタラァナは歌いながら首を傾いだ。これが、慈愛か。
「慈愛。なにかので読んだことあるな。ええ、なんだっけ。
 七つの徳? とすれば、引っくり返れば憤怒なのかな」
「ああ、どうだろう! しかし、病から守る為にも君の体も『開いて美しくしようじゃないか』」
 ぐるぐると厭な言葉が響く。カタラァナはその言葉に首を傾いで千変万化の魔法の楽器を響かせた。

 ――はりつけだいにゃぁ なにがある ぼろをまとって こうべをたれて
 ままもならにゃぁ ゆめもなく つまりぁ すべてが そこにある♪

「あなたの罪は、なぁに? ねえ、知りたいな。教えてよ」
「此れが罪なのかい?」
「それはどういういみかな」
「人を救う事さ!」
 ああ、これは救いがないなとカタラァナはぼんやりと思った。無論、それはアリシスも同じであったか。うげ、と小さく息を吐いたサンディに朔耶は「笑止」と肩を竦める。
 くん、と再度指先かければタグはアリスティドから離れて落ちる。
 タグを手にしたエマはそれにより『所有者の身体能力』が強化される事を認識した。どうしたことか、自身も強化されるのだ。
「サンディさん!」
「あ、ああ」
 攻め手がガス欠になっても困ると支援を続けるサンディへと手渡したのはエマの機転だった。無論、それで『強化のなくなったアリスティド』と支援者が強化された事で戦線の維持が易い特異運命座標では状況は一瞥するだけではっきりしていた。
「主義主張は構わぬが拙者等もこれが仕事でござるからな。黄金双竜に睨まれるのは勘弁願いたい所」
 息を付き、朔耶が刃を振り上げる。『本気』を出したルル家がこれが連携だと見せつける様に錯乱する仲間達の背後より姿を現した。
 一気呵成、振り上げたモーニングスターを大仰によけたアリスティドに放つ一撃。『悪人成敗』の為に、ルル家が被ったのは紅色であったか。
 タグへとアリシスは目を凝らす。刑場、タグ。細工の構造。術式、意味、変化、影響。
 どうにも、強化魔術が仕掛けられているか――ローザミスティカが『この島で作成した』ものではないのだろう。彼女には特別な素養が備わっている訳ではない――処刑対象を強化する細工は処刑に困っているという言葉を嘘だと結論付けさせた。
(戦わせることに意味があるのか……或いは、死ぬのは誰でも良く死ぬ事に意味があるのか)
 アリシスは顔を上げる。その身を引き裂かれ、赤を一心に受け止めるルル家の向こう側に見下ろすローザミスティカが見える。
 ああ、と唇が動いた。そうか、彼女は此処の王だ。しかし、ここは幻想の牢獄。
『誰でもいい』のか。『処刑の実績』さえあればこの島は彼女の王国であり続けられる――


「実力をみたいという事はなにか本命のご用命があるのでしょう? お聞きしますよ看守長殿」
 ぐい、と頬についた赤を拭ったルル家は幼さをひた隠しにした表情でローザミスティカを見遣った。死刑台を眺める事が出来る上等な椅子は看守長の為に誂えられたものなのだろう。そこで足を組み、見物客の様にぼんやりと眺めていた女は「実力は十分だねえ」と低く返した。
「実力は十分かもしれないですけど、アリシスさんが持ってるタグとこの処刑台はなんなのです?」
「ああ、それかい。面白いだろう! 仕入れてみた」
 クーアは「仕入れてみた、なのですか」と気の抜けた反応を返した。簡単に言ってのけるローザミスティカにこれ以上聞いたところで知らぬ存ぜぬと返されるだけだろうとその反応を推測して息を吐く。
「仕入れた――という事は、外とは繋がりがあるのですか?」
「ああ、島っていってもねぇ、囚人にゃ『生きててもらわなきゃ困る』だろ?
 衣食住の保証の為にも幻想国内とはやり取りがある。ま、それに『狡い囚人』がこの島には山ほどいるって事さね」
 頬杖をついて楽し気に笑ったローザミスティカは「そうだ」と呟いた。
「そういつらの相手も今度してやりな。何の因果か看守見習いをしに来たんだろう。
 アタシと仲良くしたいんならこの島でよろしくやってみな。『依頼主』もそれである程度満足するだろうしねえ」
 まるで依頼主が誰であるかなど言わなくとも知っているとでもいうようにローザミスティカはからからと笑った。
 咲耶はその言葉に、ふとローザミスティカを引き込むための彼女の要求を引き出そうと視線を送る。
「フィッツバルディ殿に何か要求があるなら一応伝えておくでござるよ」
「そのオッサンにはないけれどね、アンタにはある。『その名前、口にしない』でくれないかね」
 冷えた、声音であった。フィッツバルディ公の名を出した途端にローザミスティカは苛立ったように視線を逸らす。
 彼女は多くを語らず、同時に彼女の情報は幻想国内からも消去されていた。
 それはサンディのdevil's proofの様に『記憶媒体の上にローザミスティカが存在しない』様な人為的細工が施されているのだ。
「……老女でもあり乙女でもあり、また貴女でもある。貴女は一体、何人目の貴女なの?」
 カタラァナの言葉にローザミスティカはその美しい美貌にゆったりとした笑みを浮かべる。
「私は何時だって私だよ。そうさね、
 例えば――美しい乙女であった私はある貴族の妻であったし、老女だと言われた私は夫を亡くした後家だった。それだけさ」
 看守長の椅子に深く腰掛けたローザミスティカを見詰めながらカタラァナはきょろりと目を丸くした。
 そうだ、彼女には居の一番に聞くべき言葉があった。此処にいるのは裁く人と裁かれる人だけなのだ。知りたい、慈愛のアリスティドと呼ばれた男なんて『もう捌かれた後』でどうでもいい。
「……あなたの」
 カタラァナは確かめるように、口を開く。知的好奇心とは別の、また違う欲求を孕ませて。
「あなたの、罪は、一体なぁに?」
 さあね、とローザミスティカは口にした。
 今日の所はもうお帰り。また今度、菓子でも持っていらっしゃいな。
 
 ――次は大事に大事に扱ってあげるからね、『お客人』

成否

成功

MVP

エマ(p3p000257)
こそどろ

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 ローザミスティカに関してはまだまだ謎多き女ですが……
 これから追い掛けていただけると幸いです!

 ローザミスティカより『監獄島』での評価が高かったため、皆さんへこっそりとおひねりが舞い込みました。
 ああ、けれど、島での事は「口外せずに」という意味もあるかもしれませんね?

 また、お会いしましょう!

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