PandoraPartyProject

シナリオ詳細

行くぜ林間学校!

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●本日のローレットの一幕
「夏が……終わっちゃったね」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は懐かしむようにそうつぶやいた。
 そうだね。今年の夏は本当に良かったね。
 海洋での一大イベントは大盛況だったし。
 すてきな水着や浴衣がたくさん見れたし。
 あの方やこの方まで水着や浴衣になったし。
 花火したり、蛍見たり、海行ったり、BBQしたり、スイカ食べたり、サメゾンビ映画とったり、ゴリラ祭ったり、密造本狩ったり、温泉までいった、うん、満喫。いい夏だった。
「だけど、足りてない。足りてないんだ。パズルの最後のワンピースが……」
 おまえは何を言っているんだ。
「夏 っ て い っ た ら 林 間 学 校 !」
 またそーゆー季節外れのネタをやりたがる~~~。
「美少女が食中毒起こしたりする大事なイベントさ、忘れるなんて許さないからな?」
 誰が喜ぶんだ、あのイベントは。しかもランダムのはずなのに2周連続で起こるとかもうバグじゃねえの。
「まだ暑いからギリセーフ! 俺は目をキラキラさせて虫採りしたり、枕投げしてきゃっきゃする皆さんの報告が聞きたい!!!」

●練達にて
 階段教室へ集められた特異運命座標のひとりであるあなたは、壇上に上がった白チャイナの青年へ目をやった。
「こんにちは、フィールドワーカーのファンです。お集まりいただきありがとうございます」
 そう言うとファンは空中のパネルを操作した。彼の背後、壁一面がスクリーンに切り代わり、一枚の航空写真を映し出した。ビル群の間、ぽっかりと切り取ったように真四角の緑地帯。ゆったりとした起伏があり、川まで流れている。周辺のビル群はかなりの高層建築物のはずだがこの写真だとマッチ箱以下にしか見えない。緑地帯はかなりの広さのようだ。というかこれはもう、森だ。
「コレは練達にある実験場のヒトツ、第弐森林公園です。と、コレだけで、勘の良い方はお気づきでしょうガ、今回は特異運命座標の皆さんにワタシたちの基礎研究へ協力していただきます。
 目的は自然状態における特異運命座標の測定と分析……要するにデータ収集ですネ。練達では悲願達成のため様々な研究が日夜行われていますガ、その中でも特異運命座標そのものを理解することでワタシたちの悲願へアプローチするという研究のデータを集めたいワケです。データは多ければ多いほど良い結果につながるモノです。そうなってくると国内はもちろん国外の特異運命座標のデータも欲しいのが正直な所。そこで皆さんのご協力を仰ぎたいのです。
 といっても、特別なことをしていただくわけではありません。皆さんは丸一日、自然の中でのびのびと過ごしてください。その状態をデフォルトとして情報化し今後へ活かします。研究へのご協力を納得された方へは栞をお渡ししますから、それを持って表のバスに乗ってください」
 そう言うとファンは栞を配り始めた。あなたがお手製らしきその小冊子を受け取ると、ファンはいってらっしゃいと手を降った。

GMコメント

みどりです。
田んぼにアマガエルがいたので捕まえたら手の中で粘液だされました。あれは本当にアマガエルだったんだろうか。さておき。林間学校いきましょう。

場所は練達のすっごいひろーい森林公園。各種実験場として自然に近い状態を維持されており、公園内の気候は夏に設定されています。つまり、とても、暑いし、セミとかカブトとかクワガタがワンサカいる。

年季の入った平屋の宿泊施設「紅染舎」が今回の拠点です。大きな和室がふたつと、食堂、机のある洋室、無人の用務員室、トイレ、炊事場、掲示板などがあります。和室は男子部屋と女子部屋に分かれます。性別アンノウンは好きな方に行くがよい。あとエアコン完備だから安心して。
施設裏手には広場があります。広さは80*50mほどで、消えかけの白いトラック(車じゃないほう)が1本描かれています。
左手には滝があり、川が流れています。川幅は8mくらい。一番深いところで2mくらい。川では釣りができます。水も飲めます。
右手は森に接しており、鳥の声が聞こえリスが走り回っています。もっと奥へ行くと猿や鹿を見ることもできます。また食べられる野草や木の実を見つけることができます。

火を使う場合は、広場か川辺でお願いします。
食材、おかし、おもちゃ、持ち込み自由。ゴミはお持ち帰り。

プレイング冒頭に行動タグを、ついで同行者のいる方は共通タグかフルネームとIDを記入してください。ソロの方は適当に混ぜくります。独りだけでの描写をご希望の方は【ソロ】といれてください。

行動タグは二つ。

【昼】あそびます。
【夜】あそびます。

以上!
というのも不親切ですので皆様、お手元の「林間学校ノ栞」を御覧ください。

=====

「林間学校ノ栞」

序文
 特異運命座標ヲ自然ノ中デ活動セシメ其ノ心身ヲ観測シムル為第**回「林間学校」ヲ行フ。

計画
 昼ノ部
 七時  第弐森林公園前集合
 七時半 宿泊施設紅染舎到着
     荷物整理 男子ハ右和室、女子ハ左和室使用ノコト
 八時  自由時間
 十二時 飯盒炊爨 皿洗ハ紅染舎水場ニテ行ヒ川ヲ汚サヌコト

 夜ノ部
 十四時 自由時間
 十八時 紅染舎集合
     夕飯 各和室布団用意
 二十時 就寝

=====

 もちろん寝るわけないよね?

  • 行くぜ林間学校!完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年09月22日 22時40分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
斉賀・京司(p3p004491)
雪花蝶
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
リナリナ(p3p006258)
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
シリル=エンフィールド(p3p006919)
緑の癒し手
フィーア・プレイアディ(p3p006980)
CS-AZ0410
アリシア・ステラ・ロゼッタ(p3p007414)
特異運命座標

リプレイ

●昼
「林間学校……べつに学校とは言わずにキャンプと言えば良いのではと思うのですが、何ででしょうか?」
 エルたちが紅染舎につくなり、とんでもない勢いで列を飛び出していく娘っ子あり。
「おー、川! 川! リナリナ焼き魚食べたい! 捕まえる! 捕まえる!」
 エブリデイ野生全開リナリナだ。
「リナリナさん、ごはんはお昼からですよ」
「知らない! リナリナ魚食べる! 魚がリナリナを呼んでいる!」
 言うなりリナリナは川幅が狭い部分を狙って石を置きまくった。さらに狭くなったそこを通ろうとする魚影めがけて……。
「ふん!」
 一閃、魚をすくい上げる。吹っ飛んでいった哀れなイワナは岸へ打ち上げられた。
「一匹! 二匹! 三匹!」
 豊富な川の幸をばんばん獲っていくリナリナ。エルはリナリナの手腕に見とれてほへーとなっていた。
 ある程度獲ると満足したのか、リナリナは川から上がって火を起こした。適当な木の枝に魚を刺してじっくり火を通す。じきにいい香りが漂いだした。
「うまうま! ん、エル、一匹食うか? 旨いぞ!」
「じゃあお言葉に甘えて、一匹だけ」
 もぐもぐおいちーすると、エルは荷物からハンモックを取り出して設置し、おもむろに脱ぎだした。下着まで脱いだところで、ピカーン! 全裸になったエルの胸と股間から光がほとばしった。
「おおお、これは伝説の規制フラッシュ! エル、まぶしい、服着ろ!」
「えー、森林浴して森と一体化しようと思っていたのに」

「ミラ様ミラ様! 始まりましたね林間学校!」
 うきうきるんるん、今にもスキップしそうなシエラは、ミラーカの耳元へ顔を寄せて囁いた。
(恋人らしいこと、しましょう?)
 こ、恋人らしいこと!?
 ミラーカの頬が赤く染まる。
「野生のハムスターを探しに行きましょう♪」
「あ、そうね。そうなのね。……ちょっとびっくりしたわ」
 そう言いながら二人はお揃いの真っ白なワンピースに着替え、麦わら帽子をかぶった。避暑地スタイルになった二人は森の中をゆっくり歩く。
「ハムスター様は神です、きっと私たちを祝福してくれます! きっといますよハムスター様は! 夜行性なので穴とかに!」
「なら地面に気をつけて歩かないとね、ふふふ」
 と、言いながらふたりはお互いにお互いへ見とれていた。
(同じ格好なのに、シエラが似合いすぎて可愛すぎるわ……)
(ミラ様、綺麗で麗しくて、とても良く似合ってます!)
 絡まる視線、繋いだ手と手。ハムスターですか? いえ、一応探してるんですけどね。
 歩いているうちに目の前がひらけた。
「まあ、花畑」
「きれいですねミラ様! 私、花冠作りたいです!」
 ふたりで花畑に座り景観に酔う。せっせと花冠を作っていたシエラが「できた!」と声を上げた。
「はい、ミラ様、差し上げます。ああ、お似合いです!」
「ありがとう、お礼に……」
 ミラーカの唇がシエラの頬に触れる。顔を離すと、シエラは恥ずかしげに。
「ほっぺた、だけですかあ?」

 グレイルは森の中をまっすぐ歩いていた。目指すは森林公園の境目。思い出すのはファンの説明。
「…えーと…つまり…『平常状態のサンプル』…として…データを取りたいと…そういう事だよね…? …なら…普通に過ごしていたほうが…資料としては役に立つ…ということでいいんだろうな…」
 てくてく歩いているうちに、ツユクサを見つけた。
「…これって…確か食べられるんだっけ…」
 柔らかい葉を選ってつみとる。ひょいと顔を上げると、こんどはカタバミが見えた。
「…これと…あれで…サラダにしたら…たぶんおいしい…」
 注意深く見て回ると、あちこちに山菜が生えている。ついつい採取に夢中になっているうちに時間はあっという間に経っていった。
「…そろそろ…お昼の時間だ…」
 来た道をとって返すと、既にあちこちで火が焚かれていた。飯盒なる練達くらいでしか見かけない変わったアイテムが紅染舎の壁際に並べられている。
 ルフナがグレイルの腕の中の山菜を見て、顔を輝かせた。
「大漁だねー、それ。よかったら少し分けてくれない?」
「…いいよ…食べちゃうつもり…だし…それより…飯盒の使い方を…知ってたら…教えてほしい…」
「OK、勉強家の僕に任せなさい。ようはこれは煮炊きの道具なのさ」
 ルフナは米を研ぐと、調味料で下味をつけてベーコンやらとうもろこしやらバターやらと一緒に飯盒へ入れ、中蓋へ山菜をセット。焚き火の上に仕掛けた。
「あとは焦がさないように時々揺すったり向きを変えたり? まあ焦げたら焦げたでそれはそれでおいしいんだけどね」
「…手際がいいねえ…」
「まっかせーなさーい。君のもやってあげようか? 中蓋でプリンを作ってみたいんだ」
「…じゃあ…お願い…」
 と、グレイルが自分の飯盒をルフナへ差し出していた頃、それはもう張り切ってる二人組が居た。
 蛍と珠緒だ。
「林間学校と言えば!」
「林間学校と言えば?」
「カレーライス!」
「かれーらいす。魅惑の響きです。桜咲は就学経験がないので学校と名のつくものを体験できるのはうれしいのです」
 蛍が切なげに眉を寄せ、珠緒の手をとる。
「珠緒さん、今日はいっぱいいっぱい楽しもうね。おいしいカレー、一緒に食べようね!」
「はい。では……ゴリョウ先生、よろしくお願いします」
「ムフゥ、先生か。悪くないな。よーし、じゃあカレーとご飯をしこたま作っていくぜ!」
「「はーい」」
 ゴリョウは百花調理用具を取り出して並べた。よく磨かれた銀食器のような輝きに珠緒が目をキラキラさせる。
「カレーは肉なしの野菜カレーにして、肉は種類ごとに味付けて炒めたもんを用意し、各自で盛ってもらう。これなら宗教上肉が食えねぇ奴でも大丈夫ってわけだ」
「なるほど、これが気配り。勉強になります」
 珠緒はこくこくとうなずいている。
「よし、じゃあお嬢さん方には野菜を切ってもらおうか」
「やるわ」
「がんばります」
 蛍はとんとんとリズミカルに野菜を切っていく。そんな蛍を参考に、珠緒も包丁を扱う。ゆっくり丁寧に、だけど具材ごとに異なる切り方が難しくて、これはあれ、あれはそれ、なんて考えこんでいるうちに、さくりと指先を切ってしまった。
「あ……」
「珠緒さん! だ、大丈夫!? その指ちょっと見せて血が!」
 あむっ。思わず珠緒の指先を口に入れる蛍。傷口に当たる舌の感触が熱い。蛍はすぐに我に返って珠緒の指を離した。
「ご、ごめん、つい動転しちゃって。治癒魔法使えばいいのよね、そうよね」
「ふふ、蛍先生はあわてんぼうですね」
 なんて言いながらも、珠緒は頬を染めていた。蛍の口元から目が離せない。
(いいねえ、青春青春)
 ゴリョウは人知れず笑い、じゃんじゃか肉を炒めた。

●夜
 眠れない。年甲斐もなくはしゃぎすぎたか。京司は布団の中で寝返りを打った。
 ふと隣の布団を見ると、同じようにヨタカがもぞもぞしている。
「……なんだヨタカ、寝れないのか?」
 不明瞭なつぶやきが聞こえてヨタカが京司へ体を向ける。
「あぁ…少し…あのヒトの事を考えていたら…眠れなくなってな…。」
 そうヨタカは言う。だけど本当のところは、彼自身があのヒトと同じ存在になってしまったからだ。食事も睡眠も不要な体に、まだヨタカは慣れていない。そんなヨタカのことを知ってか知らずか、京司はうつむいて顔をしかめた。
「……僕は怖いのだ、あのヒトにドロドロと甘やかされるのが。ただただ愛されるのが。まるで底なし沼のようで」
 気がつけば足をとられ身動きすらできなくなるように思えて、怖い。京司はそう言う。
 ヨタカは京司の手を取った。ひんやりとした、骨ばった華奢な手。
「俺は少し…あの底なし沼に…沈みすぎている…のだな…。」
 そうだ、とヨタカは心を新たにする。俺はこの世界で生きてあのヒトの星になると決めたのだ。きっとあのヒトは離さないだろう。なのに京司はため息をつく。
「だけどあのヒトは僕の願いは叶えない。叶えられない。だって僕という所有物を殺せると思うか?」
 僕はこんなに、あのヒトに殺されたいのに。そんなセリフを吐くこと自体が、もうあのヒトなしでは生きていけない証拠。愛は時に、蜜にも毒にもなりえる。

 グラスに琥珀色の液体を注ぎ、義弘は舌先をそれで湿した。アルコールに混じるスモーキーな香りが鼻に抜けていく感触を楽しみながら空を見上げる。
「やっぱりあの店の酒は旨いな」
「どこの店なのじゃ?」
 背後からかけられた声に、一瞬殺気立った目をした義弘だったが、それが仲間だと気づいて目元を和らげた。そこに立っていたのはメーヴィン。彼女は義弘の殺気にもひるまず、彼の隣へ座った。
「昼寝をしすぎてちっとも眠れぬ、よければそいつをちと分けてくれんかの?」
「ああ、酒飲み仲間なら歓迎だ」
 メーヴィンは懐からぐい呑を取り出すと、義弘のウイスキーを注いでもらった。香り立つ洋酒に自然と笑顔になる。一息に飲み干し、余韻を感じて目を閉じる。
「いやしかしいいなぁここ。暑いが。練達でこんな場所があるなら小さい頃からお世話になれば良かった……暑いけど。冬は寒いのじゃろうか」
「なんでもファンの話によると、この公園の気候は常に夏に設定されているとか」
「ほっ? ということは、一年中春だったり冬だったりする公園もあるということか。面白い国じゃ」
「そうだな。しかし林間学校か、高校ぶりか?」
「高校?」
「そういう施設があったんだよ俺の世界に。こんなナリだが、昔はそれなりに真面目にやっていたもんよ」
「そうか? 儂には今も一本筋通って見えるが?」
「褒めたって何も出ねえぞ」
 そう言いつつ義弘はぐい呑へ二杯目を注いでやった。

 ぴかぴか光っているのはセントエルモの火。
 それを見かけたルチアは布団から起き上がって外へ出た。そこにはギルドマスター、ヨハンがいた。
「いやー、ぼっちかなーって思ってたらルチアさん見かけて助かりました……えへへ」
「うん、昼にはできなかった話をいっぱいしよう?」
「は、はい!」
 ヨハンが笑顔を浮かべた。二人で夜の森を歩いていく。
「ルチアさんはどんな世界から来たんですか?」
「そうね、一言で説明するのは難しいよ。偉大だった故郷の栄枯盛衰を語るには、歴史の源流を辿らなくちゃいけないから」
「え、えーと、ルチアさん?」
「どこから話し始めたらいいのか、まずはそこから考えなくてはならないの。歴史の区切り方にも色々あって、そもそも『Imperium Romanum』という言葉の持つ意味からして多義的解釈がなされている現状においては……」
「そ、そうなんですね。僕は、その、ルチアさんの服装とか、かっこいい? かわいい? なーって思っていて」
「あ、そう。ありがと。そうね、やっぱり帝都の賑わいについて語るのがいちばんとっつきやすいかな。コンスタンティヌス1世が建設した帝都は……」
「えっとえっと、ルチアさんの赤い髪も素敵だなって僕は」
「え、ああ、母がサクソン族だからね。それで帝都は皇帝の名前をとってコンスタンティノープルと名付けられたの……」
 ルチアの講義は三時間におよんだ。

 アオイは栞を開いて眉を寄せた。
「二十時就寝ってふつーに寝れねーだろ」
「寝させる気もないよね、これ」
 リウィルディアが同意して目をすがめる。
 案の定というべきか、男子部屋も女子部屋も明かりがついている。たしかに就寝とは書いちゃいるが、消灯とは書いちゃいない。とはいえうるさくするのも気が引けた。
「夜釣りでもするかあ」
「へぇ、僕も一緒に行っていいかな」
「リウィルもくるのか? まぁ道具は二人分あるし、問題ないよ。暇つぶしくらいにはなるだろ」
「……ふふ、ありがと」
 川辺へついた二人は、とりあえず滝つぼへ釣り糸をたらした。ぴくりとも動かない竿にあくびが漏れる。どうせ暇つぶしだし釣果はこの際問わないからいいや。と、思っていたら。
「……! 来た! ……な、なんだこの馬鹿力!」
「大地釣ったとかそんなんじゃないよね、アオイ?」
「いや違う、動いてる、やべ、引き込まれる!」
「えっ、大丈夫!? 僕も手伝う!」
 二人で竿を引っ張るも、ずるずると滝つぼへ引き寄せられ、どぼーん。二つの水柱が立った。そして二人は見た。ゆらりと動く巨大な魚影を。それは首を振って口へ引っかかった疑似餌をはずすと滝つぼの奥へ消えていった。
 どうにか岸辺へたどり着いたふたりは濡れ鼠のまま顔を見合わせる。
「今の見たか?」
「うん、見た」
「……浅いところいくか」
「賛成」

(さすがにこの時間じゃ寝れなーい)
 アニーはこっそり部屋から抜け出した。すると、ばったり見慣れた人影と出会う。零だ。
「あっ、零くんも抜け出してきたの? どこかお散歩でもする?」
 喜色をにじませて声をかけると、零は人好きのする顔に笑みを浮かべてうなずいた。
「滝、行ってみるか? 蛍が見れるかも」
「うん、夏の夜はやっぱり蛍だよね。見に行こうよ」
 二人で並んで夜道を歩く。以前もこうして蛍狩りへ行った事があった。
(そういえばあの時、抱きしめられちゃったんだっけ)
 ふといたずら心がアニーの中で頭をもたげた。
(ちょっとだけ姿を消してみようかなー、ふふふ、零くんどんな反応するのかなぁ楽しみ)
 アニーは闇へまぎれた。零があわててあたりを見回す。
「アニー? アニー!?」
 そんな零の背後から。
「わっ! えへへー、びっくりした?」
 満面の笑みで姿を見せたアニーは、すぐにその笑みを消すことになる。零がしごく真面目な顔でアニーを見つめていたから。
「……不安になるから、そういうの、やめてほしい」
「ごめん……」
 どちらかといえば明るい零の、本気の顔がすこし怖くて、アニーは素直に謝った。
「怒った?」
「怒ってない。心配した」
 うつむいてしまったアニーの片手をふわりとぬくもりが包み込んだ。目をやると零がアニーの手を握っていた。いつもの顔に戻った零がいう。
「夜道は危ないから」
 その心遣いを、アニーはうれしく思った。

 ウィリアムです。今外に出ています。栞には二十時就寝と書いてあったけど、僕の林間学校はここからだ。
 それもそのはず、ウィリアムは昼の間に自然会話で虫の集まりそうな樹に目星をつけ、たんまりとバナナと焼酎を混ぜた罠を仕掛けておいたのだ。さあどうなってるかな。ウキウキ。
 行った。いっぱいいた。ちょっと引いた。
 え、多すぎない? なんかギチギチ言ってるし。こんなにいるとありがたみが薄れるなあなんて思いながらウィリアムは罠に集った虫たちを観察する。虫たちは争うこともなくおいしそうに食んでいる。見ているうちに平和な気分になって、ウィリアムは虫たちをそっとしておくことにした。
 帰ってゆっくり寝よう、騒音対策に押入れで。

 ウェールとアクセルとレーゲンは森の中を行進していた。虫取り網と虫かごをもって進む進む。
「こういう豊かな時間って大事だねー。まあ実験の一環ではあるけど。普段は温泉行ったり八百長したり、あれ? 意外といろいろやってるねオイラ」
「経験が豊富なのはいいことだぞアクセル。この虫取りも、息子に会えたときの予行演習。まあ息子は既に成人済みだが、男はこういうのが好きと本にも書いてあった。実際俺も胸が高鳴っている。なあ、アクセルにレーゲン! 20代でも70代でも虫は好きだよな?」
「もちろん20代でも虫捕りは好きだよウェール! ロマンだね!」
「レーさん虫取りはした事がないから、ドキドキわくわくっきゅー」
 グリュックの腕の中で森海豹は懐中電灯を持ったひれをちたぱたさせる。
「レーゲンの世界だと、虫はどんな感じ?」
「レーさんの世界の虫さんは優しいから好きっきゅー。蜂さんが蜂蜜くれたり、蝶々さんは甘い蜜の花の場所を教えてくれたり……」
「おっ」
 ウェールが足を止めた。彼のハイセンスに反応があったようだ。
「近くに樹液を出している樹があるぞ」
 ウェールに導かれてたどり着いた先は虫たちの楽園だった。
「いるいる、クワガタにカブト、カミキリムシ、お、こいつはコガネムシじゃないか?」
「わー、キラキラしてきれいっきゅー」
「オスもメスもいるぞ。こんなにいると採るのを迷ってしまうな」
 せっかくだから虫取り網を使うと、網の中にころんころんと虫たちが落ちてきた。
「かごに入れるのはレーさんにやらせてほしいっきゅ!」
 レーゲンはせっせと網からかごへ虫を移し変える。最後にカチッとふたを閉めて。
「できたっきゅー!」
 興奮した顔で虫かごを掲げる。その様子をほほえましく見守るアクセルとウェール。
 虫かごはすぐに満杯になった。三人そろって満足しながら帰路へつく。木立の向こうに、紅染舎が見えてきた。
「ここでお別れしようか」
 ウェールが虫かごのふたを開けた。
「そうだね、この森で暮らすのが一番だろうね」
 アクセルとレーゲンもウェールに倣った。ところが虫たちが飛んでいったのは、まだ明かりのついている紅染舎のほう。窓にびっしりひっついた虫を見ながらアクセルが。
「そういえば虫は光にもたかるんだったね……」

 シリルは女子部屋の隅で体育座りしていた。
(うっ、まさか女子と間違えられて男子部屋を追い出されるなんて……しかも丁寧に女子部屋に案内されたし戻れないよ……!)
「シーリル! 何してんの? 女子部屋のぞきに来たの?」
「えっ、フラン……!? あの、それはこの、ひとつの、誤解のループというやつで……!」
 顔を覗き込んできたのは幼馴染のフラン、「森ガール」と書かれたナウなヤングにバカ受けTシャツを着ていた。
「もしかして男子部屋追い出されちゃったとか?」
「……そのまさかですぅ」
「あはははははは、あっはははははは! 確かに女の子みたいだけど男の子なのにねシリル! あはははははは!」
「……そこまで笑わなくたって」
「どうしたのフラン、何が笑いのツボをついたの?」
「あっ、ニーニアせんぱーい、ちょうどいいところに」
 顔を出したニーニアはニーニアで「二度寝侍」と書かれたヤバイTシャツ屋さんでしか売ってなさそうなTシャツを着ていた。事の次第を聞いたニーニアは化粧品を取り出し、メイクブラシを、あのなんかサイリウム5本持ちみたいな感じで握った。
「ふふふ、実は最近メイク指導してもらって練習してるところだったんだよ~。ということで、この際、シリル君を女の子にしちゃおう!」
「ナイスアイデアー!」
「……本人の意向は?」
「「無視!」」
 女子二人に囲まれて逃げられようはずもなし。
「メイクの基本は美しい肌! っていってもー、シリル君お肌すべすべだねー、これファンデ無しでいけるんじゃない?」
「色も白いし、いけるいける!」
「……ぜんぜん誉められてる気がしない」
「ラメ入りファンデを軽く塗ってー、ゴージャス感と透明感をプラス。リップは何色がいいかな、フラン」
「当然ピンク!」
「そうだね、透け感のある赤系ピンクで血色よく仕上げちゃおう!」
「まつげもくるんってしよ、ね! シリル!」
「……ね! って言われても」
 だがしかしメイクが佳境に入ってくると、フランの胸にもやが広がり始めた。
(あれ、もしかしてあたしシリルに負けてる?)
「ニーニアせんぱい、あたし、あたしにもメイク教えて!」
 目の前の美少女(男)に焦りを覚えるフランだった。

「お泊りといえばー?」
「「ま・く・ら・な・げ」」
「ですよね! せっかく和室だし、浴衣を着ましょう皆さん!」
 アリシアが押入れの中から旅館に置いてそうな浴衣を取り出してきた。
「オーッホッホッホッホ! このわたくし!」(指ぱっちん)
   \きらめけ!/
   \ぼくらの!/
 \\\タント様!///
(エクストリームブリリアントエレガンスポーズ)
「……にかかれば、ただの浴衣も華やぎますわー!」
「さすがタント様、とっても似合ってるよ! あ、そうだ。これっておそろいだよね? うふふー、タント様とおそろい。タント様FC会長の血がふつふつとたぎる……! だけど!」
 シャルレィスはびしっとタント様を指差した。
「ふっふっふ……いくらタント様相手でも、勝負では手加減しないからね! FC会長の立場も今夜だけは忘れちゃうから!」
「その言葉、宣戦布告と判断しますわ! わたくしもフルパワーで参りますことよ!」
「おふたりとも準備万端ですね、行きますよ? 遊ぶからには全力……寝 か せ ま せ ん よ ?」
 アリシアの枕が飛んだ。それを皮切りに枕がいくつも宙を舞う。三つ巴の戦いの幕が切って落とされた。タントは飛んでくる枕をばんばん叩き落とし、見栄を切った。
「今宵のために鍛えたわたくしの防御技術をもってすれば! このような枕などぴかっと捌いてみせますわーー!」
(アグレッシブアクロバティックアバンギャルドポーズ!)
「いまだ、狙えー! ダブルマクラボンバー!」
「ぴゃああああ! ポーズをとってるところを狙うなんて卑怯ですわ!」
「隙を見せるからです! 戦場に味方無しですよ!」
「ここで一気にたたみかけるよアリシアさん!」
「了解です!」
 シャルレィスはアリシアの分まで枕を集めると、いくぞ、と力んだ。
「連撃……枕五月雨投げだーー! って、わわっ!」
 おおっとファンブルだ(すっとぼけ)。すっころんで枕の山に頭をうずめるシャルレィス。
「今ですわー! 必殺タント様乱舞ですわーーっ!」
 無慈悲な枕がシャルレィスを襲う!
「あ! あ! ちょっと待っ……わぷぷ!」
「狙え狙えー、ですよ!」
「くっ、この! 絶対絶対、負けないんだから!」
 シャルレィスが苦し紛れに投げた枕はあさっての方向に飛んでいき……。
 からりとふすまを開けたフィーアの顔面に当たった。
 あ、ヤバイ。声に出さず視線で通じ合う三人。フィーアは滑り落ちた枕を受け止めると、表情を変えぬまま口を開いた。
「施設の備品を粗末に扱ってはなりません」
「「ぐう」」
 正論過ぎてぐうの音が出た。
「就寝時間をとうに過ぎています。各自布団に入ってください」
「「はーい」」
 おとなしく枕を元に戻して布団へ入る三人。
「よくできました」
 フィーアはその昔上官が一度だけしてくれたように、三人の胸の辺りをぽんぽんと優しく叩いた。そして自分は夜間警備を続ける。廊下の突き当たりの窓から、フィーアは空に輝く星々を見上げた。
「いいところですね、ここは……」

成否

成功

MVP

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳

状態異常

なし

あとがき

林間学校お疲れ様でした。皆さん楽しんでいただけましたでしょうか。自然の中で遊ぶのは楽しいですよね。

MVPは大人の林間学校を感じさせた義弘さんへ。よろしくご査収ください。

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