PandoraPartyProject

シナリオ詳細

あんぐらぴーぽーさまほりでー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ときには休息も
 ローレットの一角で『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に酌をさせながら『黒猫の』ショウ(p3n000005)と『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)がスルメ噛みつつ酒盛りしている。あたりには空き缶が散らばっていた。
「でさー。二軒目にいったやきとり屋がハズレでさー」
「わかるわあ~。シケモクブラックな気分になるわよね」
「入荷してないものをメニューに載せるなってんだよ。こっちはそれ食ってさっさと帰るつもりだったのに」
「ユーリカちゃんジムハイ切れてるわよお代わり!」
「うう、ボクはユリーカなのです。後輩イジメはやめるのです。あとジムハイはもうないのです」
「ないなら買ってきなさいよ気の利かない子ね、ちょっと広報担当だからって大きな顔して」
「そんなことしてないのです。いいがかりなのです、うううたすけておとうさん」
「最近はNPCも増えてギルドもずいぶんにぎやかになってきて、俺ら御三家は肩身狭いよね」
「私なんて口調がユニークすぎて最近ぜんぜん出番ないわ立ち絵が泣いてるわよ」
 おーい。
 がちゃがちゃばたんどたんっ! 三人は先生に見つかってエロ本隠すときの中学生のスピードであたりを片付けた。
「や、やあ、キミたち、ぐふっ、依頼に行ってたんじゃ?」
 終わったから報告にきたんだよ。あと子どもに酌させんな。客から見えるところで昼から飲むな。
「そ、そうか、えっぐ、むぶっ、じゃ、じゃあ、ほうこ、く、を、きこうっ、げぺっ」
 ショウ……おまえ口の中のもの無理やりビールで流し込んでたろ。落ち着いて水飲んで来い。
「じゃ、ちょっと、しつれい、うぶ、して……ごくごく、ぷはぁ……やあ、俺は『黒猫の』ショウ。報告を聞こうじゃないか」
 そのとき、商店街の方から悲鳴とともに人が溢れてきた。
「化け物だー! 助けてくれー!!」
「すーーーーーーーーーーーーるーーーーーーーーーーーーーーめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
 街角の食料品店を吹き飛ばし、もうもうたる土埃の中からそれはあらわれた。
 長い触腕。ぎょろりとした目。しおしおでぺたんこの体。殴られたら超痛そうなゲソ。
「やあ、あれはスルメだね」
 ショウがブッダスマイルで言った。
「スルメッ! スルメスルメスルメーーーー!!」
「ほら自己紹介してるし、あれはスルメだよ」
 加工前の名前はダイオウイカかな?
「スルメエーーーーーー! ああああああああアタシィィタウリン含んでるのおおおおおお! 噛む栄養ドリンクなのおおおおおおおおおおおおお! コレステロール減らしちゃうのおおおおおおおおおおお! 飲兵衛のおともなのよもっとやさしくしてよおおおお! ああああああああああああああああああスルメえええええええええええええええええええええ!」
 やかましい。しね。
 あまりの大音量にトサカに来たあなたは、得物を手に駆け出そうとした。
「待つんだイレギュラーズ!」
 ショウが呼び止める。
「ついでにビール買ってきて」

GMコメント


みどりです。ほぼ右脳だけで書きました。
戦闘場所は街角、広さは十分にありますが、避難民の誘導が必要です。

巨大スルメ ※食える
体長6m、触腕こみで10m
マーク・ブロック無効
・薙ぎ払い 物扇R2 【飛】
・超音波 神自域 【防無】【必殺】
・巻きつき 物特レ R4までのイレギュラーズ一人を捕獲します。捕獲されたイレギュラーズはあはんでうふんなことになるとおもったかあいにくとこいつはスルメだからようするに行動不能になります。

戦闘後の宴会パート……いる? い、いるんなら書くけど。アンノウンは自己申告してね。

  • あんぐらぴーぽーさまほりでー完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月22日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

リプレイ

●だって、だってね、スルメだし
「このものはさけぶするめとかはじめてみたのだけれど」
 びっくりしちゃってひらがなになっちゃった『月の旅人』ロゼット=テイ(p3p004150)はちらりと仲間の顔色を伺う。彼らの前では巨大スルメがびったんびったん暴れ狂いながら『スルメええええええ!』と絶叫している。
「スルメだねぇ……あれっていわゆるミイラだし、アンデットのくくりになるのかなァ。此処なら死霊術で喚べたりする?」
「どうだろうねー。スルメはスルメだからねー。そう、ユニコーンとノーコーンくらいの違いかなー」
「そんなマニアックな例え出されてもわからんっきゅ。でも干からびて血が無いのに動いていて、たぶんおそらくメイビー火に弱いっきゅ。スルメはあぶると旨味が増すっきゅからねー」
「ああ七輪の上で丸まっていくスルメの身……想像するだけで口の中がよだれでいっぱいになる……我慢ならん。酒も奢ってくれるみたいだし、レオン殿が帰ってくる前に仕留めるでござるよ」
 説明しよう、順番に 『闇之雲』武器商人(p3p001107)[重傷]、『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)、『こう見えて71歳っきゅ!』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)、『暗鬼夜行』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)である。もうみんな目の前の獲物が食い物に見えてしゃーない、しゃーない、乾物特有のいい匂いがあたりに漂っているのだ。腹の虫も鳴ろうというもの。武器商人なんか重症なのにこの場に駆けつけている、そんなにスルメ食いたいのか。それとも次の商売の質にするつもりか。まあとにかくこれは考えたら負けという類のものだなとロゼットは思案する。と、なれば強く当たってあとは流れで! うん、その判断は実に正しい!
 ふらりと『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がよろめきながら前に出る。わなわなと身を震わせ、悲劇の美姫さながらに叫んだ。
「仕事終わりの報告をしにいったらお酒飲んでるなんて……ずるいわよおプルーちゃんもショウちゃんも! 一仕事終えたあとの一杯を待ち望んでいたのにこの仕打ち! 今の私はお怒りよぉ……さっさとスルメを仕留めて宴会するんだからぁ!」
「そうです! するめ……さかな。肴でふぃっしゅ。つまりこの先にあるのは酒宴なのです、そう決めたのです異議あるものは手を上げるのです! 片っ端から放火してやります! ここから先は我が本領。いざ尋常に炙るのです!」
『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)がアーリアに応じる。もうお目々らんらん、頭らりらり、目に映るそれはノットモンスターバットメインディッシュ。食らう気満々、よだれだらだら。じゅるりと垂れるそれを飲み込み、『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は真剣な目をして言う。
「知っているか。猫に生のスルメを与えると危険だが、加熱してチアミナーゼを失活させれば、問題なく食べさせる事が出来る」
 ――即ち。
「今から、お前を焼いて食う」(まがお)

●スルメなのにみんなめっちゃマジメに戦法組んでてえらい
 さあ、始まった対スルメ戦。まずは一般市民の避難からだ。地味にポイント稼げるし打てる手は打っておきたいところだよね。突然の巨大スルメの強襲に右往左往する人の群れへアーリアのメカペンギン、メカバーテンダー・ルシアンくんが近づいていく。一枚の紙を「勝訴!」って感じにかかげて「危ないからここから離れて」と訴えている。いるのだが。
「やーん、なにこれかわいいー!」
「こっちのカピブタもかわいいー! え、なにこれルン……」
「ママー。これ飼っていい?」
 あまりの愛らしさにお子様からおねーさんまで婦女子が爆釣りだ。
「待って待って、その子うちの子だから!」
「ルン……じゃないよぉ。一応、たぶんね、ヒヒ」
 こりゃ埒があかんと判断したレーゲンが深く息を吸い込む。
「いいから逃げるっきゅ! イレギュラーズが来たっきゅ! 付近にいる人は焦らず冷静に、前の人を押しのけずにスルメから避難するっきゅー! 余裕がある大人は子供やご老人の避難を手伝ってほしいっきゅ!」
 スピーカーボムに統率を乗せた大声は人波へ浸透した。おお、イレギュラーズが来ているのか。そんならまかせるべぇと人々は速やかに戦場を離れていく。
「地上の避難はうまくいったみたいなのです。あっ」
「どうしたでござるか、クーア殿」
 道を走っていた咲耶が上空のクーアを見上げる。ほうきに横乗りしていたクーアが街角の半壊した建物の上で輪を書いた。
「要救助者発見なのです。階段が壊れちゃって降りるに降りれないっぽいのです」
「了解でござる」
 咲耶は瓦礫をぴょんぴょん登って屋上へ至った。そこには頭を抱えて震えている青年が居た。
「ひいい、スルメが、スルメがくる、スルメが……!」
「落ち着くでござるよ。拙者たちイレギュラーズが助けに来たでござる」
「おお、イレギュラーズ! 待っていたよ! 頼む、早くここから僕を連れ去ってくれ、でないと、でないと僕は……」
『スルメええええええええええええ!』
「うるせええええええええええええ!」
 青年はそのへんの植木鉢を抱えあげるなりスルメへぶんなげた。おいおい無茶するなあ・すんなです、と咲耶とクーアは思った。
「気持ちはわかるでござるが下手に刺激してはならんでござるよ」
 咲耶は青年を姫抱っこで抱えあげ、また瓦礫の階段を下って降りた。しゅたたっと走って安全地帯へ青年を送る。
「女の子に姫抱っこされるなんて初めてだ、僕ぁ、僕ぁもう……」
 なんか妙なフラグが立ちそうだったので咲耶は行きの二倍のスピードで立ち去った。
「スルメはどうなったでござるか!」
「大暴れだよ、おにーさん困っちゃうなあ」
 軽口を叩きつつヴォルペがスルメの攻撃をいなしている。長い触腕が空を裂き、手当たりしだいにぶっ叩いている。
「どれ、我(アタシ)が前へ出よう。この距離なら超音波もくらわないし」
「大丈夫かい、麗しの銀の君」
「なァに、我(アタシ)が不死に近いのはよく知っているだろう赤狐の君」
 武器商人が一歩踏み出すなり、触腕が伸びて武器商人を襲った。
 ばちーん!
「きゅう」
 ころりと地へ倒れる武器商人、すぐにむくっと起き上がる。
 べちーん!
「きゅう」
 ころり。むく。
 すぱーん!
「きゅう」
 ころり。むく。
「あああもう見てられないからおにーさんの後ろに隠れてなさい!」
「平気なのに」
 ぶつぶつ言いながらめんどくさそうに武器商人は後方へ下がった。スルメはどぅんどぅん跳ね回り何かに取り憑かれたように絶叫している。まあ実際なにか取り憑いてるのかもしれんけど、そこまでは知らん。
「やはりここはスルメを怒らせ注意を引きつけるのが得策とこの者は思慮する」
「うむ、その案乗ったぞロゼット。まずは御主が試みてみるか?」
「がんばる」
 ロゼットと汰磨羈はスルメの背後に回り込んだ。味方から注意をそらすためだ。ちゃんと陣形とか考えててえらい。
 ディフェンドオーダーとシャドウステップがロゼットの心を強くする。ロゼットは口に手を添えて怒りを誘引すべく声を出した。
「えーと……やーい乾物ー、おつまみー、傷みにくい旅の友ー、海産物のくせに陸で暴れてるはみ出しものー」
『あああああああスルメえええええええええええええええええ! 気にしてるのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
 かかった。
 いいんかい、いまので、ロゼットはそう思った。てゆっかどれが逆鱗に触れたんだろう。だが考えてる暇はなかった、スルメはロゼットと汰磨羈のほうを向くなり猛攻を仕掛けてきたからだ。ゲソと触腕がほんまに乾物なのか疑問に思うなめらかさで多段攻撃をしかける。
「わっ、と、にゃっ! はうっ! にゅっ!」
 ロゼットは背を反らし、軽くジャンプし、ギリギリのところでスルメの攻撃を回避する。視界は広く、常に集中。さすれば次の一手が読める。槍のように鋭い触腕の薙ぎ払いを、ロゼットは高く跳んでかわした。ついでにむなしく通り過ぎた触腕を引っ掻いてやる。硬い感触がしてほわんといい匂いがたつ。じゅわっと口の中によだれがあふれた。
「試食したらだめだろうか、だめだな、まだその時ではない。その時ではないけどこの者は早くこいつを食べたい」
「ふははは、同意するぞロゼット! スルメはすなわちイカ、ゆえに急所もイカと同じとみた!」
 汰磨羈がスルメと距離を詰め、気を練り上げる。全身の気功から螺旋を描いて利き手へ送られるエネルギー。汰磨羈の利き手が淡く光りだす。
「目の中間より少し上ぇ! 神経の集中するこの部分! 打つ!」
 イカをしめるのと同じ理屈だ。だがその激しさは比べものにならない。防御を無視して叩き込まれる煉気破戒掌。スルメの内部に送られた気が破裂して多大なダメージをスルメへ与えた。スルメはぐわんぐわんと胴を揺らし(頭じゃなくて胴なんだよ)たが、体勢を立て直すし、きしゃーと威嚇した。
「思ったより丈夫だな、さすがスルメ! だが体は新鮮なまま、魂には昇天してもらう!」
 新鮮なスルメとは(哲学)。
 ともあれスルメはロゼットと汰磨羈に夢中で他のイレギュラーズに背を向けている。
 アーリアが髪をかきあげ、スルメを見上げてほうとため息をつく。
「見れば見るほど立派なスルメね。やっぱり乾き物にはライスワインよねえ。そういえば干物を酒で戻して焼いて食べると冗談抜きで美味しいって聞くから、味に飽きたらそうしてみるのも一興よね。そのためにもまずは、どかんと! いってみよー!」
 まだ酔ってない、まだ酔ってないよ。戦いの興奮が彼女をハイテンションにさせているのだ。そういうことにしておこう。
 アーリアが指先で縦に線を引く。ぐわん。空間が縦に裂け、スルメが飲み込まれる。それは一瞬のことだったが、スルメに大量の負荷をかけるには十分だった。再び姿を表したスルメは悪酔いしたようによろめいている。毒、出血、窒息、エトセトラエトセトラ、大量の「スパイス」がスルメに盛られているのだ。
『スル、メ、スルメスルメ、がんばってえええあたしのタウリンんんんん二日酔いに効くのおおおお』
「二日酔いじゃないでござるよ、あがいても無駄でござる。スルメはスルメらしく、酒のツマミとしての自覚を叩き込んでくれるでござる」
 咲耶が地を蹴った。次の瞬間、彼女はスルメの真下に居た。
「……紅牙流暗殺術、対スルメ編。はああああ!」
 ゲソが裂けていく。それはまるで糸がほどけるように、スルメのゲソがばらばらに切り刻まれ、噛んでしゃぶるのにちょうどいい大きさに切り落とされていく。さながらスルメ切断機。
「しかしどこから湧いて来たのでござるか、この喋るスルメ。いや、考えたら負けでござるかな、混沌でござるし」
 うん、その判断は実に(略)
 クーアが地上へ降りて宙へ円を描いた。その円が侵食されるように複雑な紋様が浮かび上がる。魔法陣が完成した瞬間、中央からゴトクキャットが現れスルメへ向かって一直線に走り抜けた。スルメの全身へゴトクキャットがまとわりつき炎をすりつける。
「火事放火犯はメイドの基礎なのです! とにかく炙るのです! 燃えるように炙るのです! ……あ、でも本当に燃やし尽くしたらダメなのです。でも強火で炙って固くなったスルメも捨てたもんじゃないのです。ああ~悩む~~」
 炎に包まれたスルメは何故か恍惚としていた。
『お、おほお……ア、アタシぃ……おいしくなってるのぉ…あはぁ…すごいすごいのお……おほおおおおおお、んおほおおお!』
「あえぐなキモい!」
 思わずヴォルペが飛び蹴りを入れた。
「赤狐の君、ついでに攻撃しちゃえよ」
「言われなくてもそうするよ。こんなキモいもの麗しの銀の君には似つかわしくないからね!」
 武器商人へそう答えると、ヴォルペは姿勢を低くした。不屈の意志を双刀『煌輝』へ注ぎ込み、伸び上がるようにして一気に。
『ガンゲルガアアアアアアア!』
 レジストクラッシュで触腕の一本を切り落とされたスルメが意味不明の叫びをあげる。
「わあ、びちびち動いてるし、これほんとにスルメなのかなあ……」
 ヴォルペは切り落とした触腕を踏みつけ、もうひと刺し。触腕はやっとおとなしくなった。
「我(アタシ)はいつも受け身だからね。攻撃側に回るなんて心が踊るよ」
 両手を広げた武器商人がとろりと嗤い、ディープインサイトの眼力でスルメの全身をなめるように観察する。
「さあ遊んでおくれ、我(アタシ)の手の上で、苦しませはしないよ。楽しいばかりさ、狂うほどに!」
 ヴォン。耳ざわりな音がして、一枚の暗闇がスルメの上部に出現した。そして、えっと、あれあれ、胴の上のひれみたいなやつ、もろとも胴の先端を切り落とした。灰色の稲妻がスルメの全身に走り、スルメの動きを阻害し封印する。
「武器商人さんナイスっきゅ! この流れだとレーさんも攻撃にまわるしかないっきゅね!」
 グリュックがレーゲンを掲げるように抱き上げた。レーゲンが再び息を深く吸う。パシッ、パリ、パリパリ。レーゲンの全身を赤い火花が彩る。
「M・A・ビーーーーーーーーム!」
 聖獣森アザラシの口から破壊光線が吐き出される。それはまっすぐにスルメを襲い、津波のような勢いでその巨体を吹き飛ばした。赤い光の中で、スルメは意外に優しい声をこぼした。
『おいしく……食べてね……』
 地に伏したスルメにはもう、生気はなかった。


「それでは命に感謝をこめてー」
「「いただきまーす!」」
 ロゼットの掛け声に合わせてイレギュラーズ一同合掌する。彼らの前には巨大なスルメ、さあどこから食べようか。それだけでワクワクする。
 咲耶が切り落としたスルメをかき集めてきた。ザルいっぱいのスルメをどんと置き、一本取って味見する。
「クーア殿のおかげで、ほどよく火が回って食べごろでござるな」
「よかったのです。まあ燃やし尽くしてもそれはそれで、ふふ、ふふふふふ」
「それよりお酒よぉ。お酒。あースルメの匂いってなんでこんなにお酒が欲しくなるのかしら!」
 アーリアが頭を振ってもだえる。
「へい、イレギュラーズさんがた、お待ち! こいつは俺たちのおごりだ好きにやってくれ!」
 突然目の前にビールが箱で置かれ、アーリアは目を丸くした。避難していた人々が戻ってきたのだ。
「やったービールだー! おにーさんがんばったよね! それじゃ遠慮なくー!」
 汗をかいているビールをつかみ、ごきゅごきゅ飲み干すヴォルペ。アーリアも瓶の蓋をぽんとあけ、ジョッキに琥珀色の液体を注ぐ。たっぷりと泡のたったジョッキ。口を近づければふくいくたるアルコールの香りが立ち昇る。
「あー、これこれ、これよ。これ! お酒バンザーイ!」
 幸せそうな顔でジョッキを空にするアーリア、その髪がゆっくりと琥珀色に染まっていく。
 右見て左見てレーゲンは困った顔をした。
「甘いお酒はないっきゅか? レーさん甘いのしかダメなんっきゅ」
「はあい、そんなキミのために夏みかんサワー」
 武器商人が袖の中からグラスを取り出す。
「うれしいけど、その袖何が入ってるっきゅ?」
「いろいろあるよぉ、マヨに七味に柚子胡椒に、ワインに米酒にブランデー」
「七輪はあるか!?」
「あるよぉ」
 あるんだ。その場に居た誰もがそう思った。七輪を受け取った汰磨羈がホクホクしながら火を入れる。
「新鮮なスルメをつまみにして飲む酒は――美味い」
 これまた武器商人からもらった砂糖醤油にゲソを浸し、ぱくんと口の中へ。もっちゃもっちゃと味を楽しみ、米酒をきゅっと。
「――美味い!」
 眉間を押さえ、感涙にむせぶ。
「そんなに美味いでござるか? スルメに砂糖醤油は未知の領域ゆえ拙者も試したいでござる。……念の為言っておくでござるが拙者は二十歳超えてるでござるよ? 何でござるかその目は! 本当でござるよ?」
「さとーじょうゆー! 私の七味マヨと勝負よー! いざ尋常に尋常に!」
 アーリアがびちゃっと砂糖醤油にスルメを漬けてぱくついたので、咲耶もそれに倣う。
「おお! これは味覚の新大陸でござるな!」
「うーん。どっちもすてがたいわあー!」
「うまうまカリコリ。スルメは飲兵衛に食べられるために生まれてきた生き物なのです」
 ノリノリのアーリアの隣でクーアがスルメを味わっている。ねこだけどひとなので大丈夫なのだ。彼女の周りには既に空になった酒瓶がいくつも転がっている。
 同じく飲兵衛なのは武器商人だった。食べはしないが飲みはするようだ。そういうものと認識しているらしい。そんな武器商人の肩へヴォルペが頬を擦り付ける。
「ああ、美しい人。麗しの銀の君。その指先から与えられる幸福にどれだけ癒されることだろう。酒には酔わないが君にならいつだって酔えそうだ。堪らない。あ、次はスルメに七味たっぷり付けて食べさせてください。」
「はいはい。次は何味がいい?」
 武器商人は、あーんと口を開けるヴォルペへスルメを食べさせる。
 いつのまにか戻ってきた人たちまで巻き込んでの大宴会。
 にしても昼間から飲むのは健康的ではないなあとロゼットは思う。だけどやっぱり宴会の空気はいいもので。ロゼットも甘いお酒をぺろりと舐め、そのまま幸せそうに寝落ちした。

成否

成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

なし

あとがき

スルメ討伐おつかれさまでした。
みんな真面目に遊んでてえらい。
あー酒飲みてー!!!

MVPはスルメをおいしく料理したアーリアさんへ。
称号「対スルメファイア」をクーアさんへ。
お送りしております。ご査収ください。

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