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シナリオ詳細

<グラオ・クローネ2018>ロイヤルロマンス

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●2月14日の一夜

「今年もあるのよね、あのイベントっ」
「うんうん、今年も星が見れるのよね。あー、ロマンチック」
 きゃあ、きゃあと年若い女性が楽しそうに話している。
 世間はグラオ・クローネに向けて、様々な準備に入っていた。
 ファンシーなショップにはチョコレートなどが並び、可愛らしい装飾のディスプレイに変わっていたりと様々だ。
 幻想の街も、イベントのために様々な飾り付けがされている。
 皆、この日を楽しみにしているのだ。
 大切な人に贈り物をするこの日、老若男女、種族問わず盛り上がるのだから。


 そして、2月14日のグラオ・クローネの日だけのイベントがここ幻想にはある。
 バー「ロイヤルロマンス」を貸し切り、チョコレートパーティが行われるのだ。
 ロイヤルロマンスは30人程度の収容の出来る広さのバーで、そこそこの老舗として知られている。客層は若い女性が多く、次いでカップルのお客が多い。
 女性が多い理由として、用意されている豊富なデザートと、バーテンダーのギフトで室内に展開される星空がロマンチックなのがある。
 また、オリジナルのカクテルを作ってくれるサービスもあった。
 オリジナルカクテルは、お客さんの話を紙に書いて貰い、そこから作成するという特殊な手法をとっている。
 その人のイメージで作る場合もあれば、恋人との二人で一つのカクテルを作ったり等、色々な作り方がある。
 創作する仕事に就いている人などは、自身の書いた物からカクテルを作って貰ったりする事もあるらしい。
 バーテンダーはまだ年若く、どんなに年に見積もっても30代中頃と言った所だが、年齢より落ち着いた好青年であるのも人気の理由だろう。
 室内は普段はモダンで静かな大人の隠れ家と言った所だが、グラオ・クローネのこの日だけは、星やハートや花をあしらった飾り付けがされるのだ。
 普段は大人がメインだが、この日ばかりは家族連れのお客もいる程、人気があった。

●ギルド・ローレット
「幻想ではグラオ・クローネの日に、イベントがあるのですが皆さん参加されませんか?」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が楽しそうに話し出す。
 話を掻い摘まむと、とあるバーで開催されるイベントへの参加をユリーカは奨めているらしい。
「僕も一度行った事があるのですが、とても楽しいイベントなのです! イベントと言っても、バーでチョコレートのお菓子を食べたり、お酒を飲んだり、あ、未成年はジュースなのですけれど。そういう感じのイベントなのです。出し物として、ギフトを使った室内で星を見ることができるのと、希望があればバーテンさんがオリジナルのカクテルを作ってくれるんです。ドレスコードとかはないですが、皆さん割とキレイな格好で毎年集まってるのです。あ、勿論、戦闘は禁止ですよ」
 話を聞く限り、一般的な酒の種類は用意されているらしい。
 カクテルと言う事だが、希望があれば和風の酒なども出してくれるらしい。
 自身でベースになる酒を決めた後、内容を紙に書けば、バーテンダーが作ってくれるという事だった。
 なお、未成年用にノンアルコールカクテルも用意されているらしい。
 紅茶や珈琲も勿論ある。
「バーは30名くらい入れる割と大きめな所です。結構人気があって週末は満員な事もあるのですが、今年は優先的にイレギュラーズの方を招待したいとの事だったのです! ……あ、あとご飯もお結構美味しいのです。特に肉料理は絶品です。グラオ・コローネ用に普段よりちょっと贅沢なメニューが出るって聞きましたけど、詳しくは当日のお楽しみなのです!お肉が駄目な人用に魚や野菜だけを使ったメニューもありますから、安心ですよ。僕の個人的な話ですけど、ハンバーグは絶品だったのです! あとあと、デザートの中にジャンボチョコレートパフェがあるのですが、チョコレートケーキが入っていて美味しかったのです!」
 キラキラとした目で、ユリーカが笑った。

 ――素敵な一夜なると良いですね!

 独りで行くも良し、大好きな人や気になる人を誘っても良い。
 プレゼントの交換も楽しいだろう。
 グラオ・クローネ、貴方はどんな一夜を過ごす?

GMコメント

●バー「ロイヤルロマンス」
幻想の一画にある地下のバー。
毎年2月14日だけのイベントを開催しており、30名程度の収容キャパシティの会場。
オリジナルカクテルの作成と、バーテンダーのギフトによる疑似の星空を天井に描いてのロマンチックな一夜の演出が人気。
室内はどちらかというと落ち着いていて、カップルや女性客に人気が高い。

●カクテルの種類
カクテルはOPにある通り、紙に希望を書いて貰い、それをベースに作成します。
一般的にお店においてある類いのリキュールは用意されていて、未成年用にはノンアルコールカクテルが用意されています。
カクテル以外に、和風のお酒やワインも置いてありますし、紅茶や珈琲などもあります。

プレイングに記載頂ければ、GMがオリジナルカクテルを作成させて頂きます。

●料理
洋風の肉料理がメインですが、お肉が食べられない人のために魚料理や野菜料理も食べる事ができます。
また、チョコレートが数種類用意されており、洋酒のチョコレート等、大抵の物はあります。
ロシアンチョコレートもありますが、かなりの激辛なので、頼む方は気をつけてください。

●注意
他の方と参加の方はIDとフルネームの記載をお願いします。
(団体の場合はチーム名前を【】内に記載願います)
未成年の飲酒はできません(未成年はノンアルコールカクテルやジュースなどです)
食べ物飲み物の持ち込みは禁止ですが、贈るプレゼントとしてチョコレート等のお菓子類を持ち込むのはOKです
戦闘行為や店で使用するのが好ましくないギフト(物を壊したり)は禁止です

皆さんのプレイングお待ちしています。

  • <グラオ・クローネ2018>ロイヤルロマンス完了
  • GM名ましゅまろさん
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年03月05日 22時30分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

ノイン ウォーカー(p3p000011)
時計塔の住人
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
栂瀬・なずな(p3p000494)
狐憑き
銀城 黒羽(p3p000505)
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌ(p3p000711)
永劫の愛
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
コルヌ・イーラ(p3p001330)
宿主
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ステファン・ダールバニ(p3p002162)
いつも心にゆとりを
リョウブ=イサ(p3p002495)
老兵は死せず
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
リジア(p3p002864)
祈り
シルヴィア・C・クルテル(p3p003562)
ノーブルブラッドトリニティ
アレーティア(p3p004118)
真理を求める者
白銀 雪(p3p004124)
銀血
ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)
特異運命座標
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
クロガネ(p3p004643)
流浪の騎士
ブローディア(p3p004657)
静寂望む蒼の牙
ルーニカ・サタナエル(p3p004713)
魔王勇者

リプレイ

●開店
 カランコロン。
 扉に取り付けられた可愛らしい音のする鈴が、店に鳴り渡る。
 宵闇の落ち着いた雰囲気の店内は、所々にハートや星の愛らしい控えめな飾りが飾られていた。
 好青年と言った銀髪のバーテンダーが、テノールの声でお客様をもてなす。
 30名ほどの収容スペースの中には、30と少しのお客が入っているらしい。その中の殆どがイレギュラーズだった。
 店内には機械仕掛けの巨大な音響が設置されており、店内は優しい音楽が流れていた。

「どのようなカクテルになさいますか?」
「おすすめのカクテルを順番に、でどうかな」
 ルーニカ・サタナエルが、カウンター席の隅に腰掛けながら言った。
「つまみがあれば欲しいのだけれど」
「かしこまりました」
 店内を見渡すと、どうやらカップル以外のお客も何人かいるらしい。
「美味しい!」
「ありがとうございます」
「気に入った様だなサラ」
 豪華な肉料理を食べながら、ブローディアの契約者であるサラが喜びの声をあげる。
 バーテンダーも褒められて嬉しいのだろう。口元には笑みが浮かんでいる。
「あ、今度はこれ、とこれを。あとカクテルはチョコレートフレーバーの甘いカクテルが良いな」
「頼み過ぎではないか?」
 サラがご機嫌で次から次へと料理やカクテルを頼むのを見て、ブローディアが心配そうな声をあげた。
加えてサラがロシアンチョコレートを注文する。
「そのチョコレートはお前のような子どもにはまだ早いのではないか?悪いことは言わない、今であれば取り消せるぞ 」
「大丈夫」
止められなかったブローディアだった。
 その隣で、絶望にうちひしがれているのはクロガネだ。
 クロガネが元いた世界では19歳という年齢は酒が飲めたが、この世界では19歳は未成年であり、当然酒は飲めない。
「な、何という事だ……。確かに19歳。この世界だと未成年扱いなのか、私は」
 ちらり、とバーテンダーを見るが、バーテンダーはゆるりと首を左右へと振った。その眼差しが言っている。駄目です、と。
「前の世界では普通に飲んでいたが、そうか。駄目なのか。……世の理には従うしかないか。残念だ。
ノンアルコールのおまかせ、おすすめの何かで頼むか……」
 しょんぼり、という形容詞が似合いそうなくらい悲哀が漂っている。
「肉料理……嗜みつつ、ゆっくりしますかねぇ……酔いに頼れないのか。そうか。これから先、苦労が多くなりそうだわ…… 」


 夜色のゴシックなドレスに身を包んだ、コルヌ・イーラ は一人、一番隅の静かな席に腰掛けていた。
「マスター、何かおすすめを頂きたいのだけどお願いできる?」
「はい、かしこまりました」
 バーテンダーが作ったのは、深紅の層に卵白で作られた白いカーテンのあるカクテルだった。
『しかし、他人に任せるとは珍しいな』
「そんな気分だったのよ、悪い?」
 バーテンダーが去った後、呪具であるコルヌがおかしそうに言った。人に任せることを良しとしない少女、イーラのその言動があまりに珍しかったのだろう。
『ふん、なかなか見栄えの良いものを作ってもらえたな?』
「風情を介して静かにしてもいいのよ、コルヌ?」
 鮮やかな赤の色は、炎を思わせる色合いをしていた。
 ゆるり、と店内を見渡しながら、ふーん、とイーラが言った。

 ――また、来ても良いわね。


「おお、なんとも華やかなものだね。故郷にいた頃はあまりこういった場所には縁がなかったからな……今日は存分に楽しむぞ」
 店内が珍しいのか弾む声で、アレクシア・アトリー・アバークロンビーが席へと座る。
「というわけでカクテルをいただきたい。いや、こう見えてもちゃんと成人しているんだぞ?……とはいえ酒はあまり詳しくはないんだ。ベースを選ぶんだったか……? じゃあこのジンというのをベースにして、何かさっぱりした感じのものをお願いできるだろうか。……こういう頼み方でいいのかな?ああ、紙に書くんだったか」
 アーリア・スピリッツが、そんなアレクシアの様子を微笑ましげに見ていた。
「見ていて飽きないねぇ」
 彼女も一人での来店だったが、美味しいお酒には大変満足していた。
 良い雰囲気の二人組を見ると、少し寂しさも感じなくはないのだが、それはそれだ。運が良ければ楽しい出会いもある、そう思っての来店は、目の前で繰り広げられる人間模様を見る事が出来たのだから、その甲斐はあったと言えるだろう。
 宗本の大きく空いたマーメイドスカートのドレスが良く似合っているアーリアが独り身なのは大変勿体ないことではあるのだが。
 彼女が飲んでいるのはローズマリーシャンパンと呼ばれるカクテルだ。
 美容に効果があるとされており、ハーブの香りがしつこくない程度に心地よい大人の女性にぴったりである。
 彼女の紫色の髪の毛が、ゆっくりとローズ色へと変化していく。指先で髪を弄りながら、天井に浮かび上がった夜空を見つめた。
 その隣に、白銀 雪が腰をかける。
 華奢な少女に「こんばんは」と、アーリアが声をかけると、雪が軽く会釈をする。
「何になさいますか?」
 バーテンダーが優しく声をかけると、雪が少し悩んだ末、指をゆっくりと指す。
「甘いのはあまり得意ではない。苦みのあるカクテルが良いから、これをベースに」
 カクテルの知識のない彼女にとってはオリジナルカクテルの構成を詳しくリクエストは出来なかったが、好みの味を伝えると、バーテンダーはにっこりと笑みを浮かべ彼女のカクテルを作る。
 完成したカクテルは赤っぽいオレンジ色をしたシンプルなデザインのカクテルだった。
 雪は出されたカクテルをゆっくりと口に含むと、程よい苦さが心地よい。
「このロシアンを食べてみたい」
「大分辛いですが大丈夫ですか?」
「私はその方がいい。むしろ辛いだけが良いのだが」
 そんな様子を見ていたアレーティアが、二人に声をかけた。
「おぬしは辛い物が好きなのか?」
 先んじて頼んでいたウィスキーをちびちびとストレートで飲んでいた彼女の頬は、ほんのりと桜色に染まっている。
「ええ」
 無表情で頷いた彼女だったが、決して話しかけられるのが嫌な訳ではない。
「ロシアンチョコねぇ。皆で頼んだら面白そうね」
 アーリアがふふ、と笑みを浮かべる。
「頼んでみるか?」
「悪くないわね」
 折角出会えた縁である。女同士なら話も更に弾む。
「しかし、星が見えるバーとはロマンチックじゃな。周りは流石にカップルが多いのぉ……。この歳になると羨む気もないが」
「あら、まだ貴方も若いのではなくて?」
 上からゆっくりとアレーティアを見つめたアーリアが、首を傾げる。
 見た目はまだ年若い女性にしか見えないのだが、その達観した仕草が、彼女が見た目通りの年齢ではない事を予想させる。
 出てきたつまみのチョコレートを指先で掴んで、口に運びながら、アレーティアがふふりと笑った。


 シルヴィア・C・クルテルは、隅の方で静かにカクテルを傾けていた。
 ゆっくりと味わうように口の中で楽しむそのカクテルは、「姫」「月」「吸血鬼」「透明さ」と彼女によって書かれた注文用紙に添って作成されたものだ。
 色合いは白に近い。ジンをメインにし、レモンジュースとバイオレットリキュールを使ったカクテルを参考にされている。例えるならオパールの様な不思議な輝きのあるカクテルだ。
 カクテルフルーツは蝶の形にカットされ、愛らしい外見をしている。これが姫要素という事だろう。
 ピンクを入れると言うのも考えたが、入れてしまうと月の表現が出来なくなってしまう事から、このレシピに落ち着いたらしい。
 シルヴィアの表情を見る限り、そこそこ気にいってはくれているらしい。バーテンダーは胸をなで下ろした。
 カクテルを手に、シルヴィアはそっと微笑んだ。
「グラオ・クローネとこの美しいカクテルに乾杯」

 リョウブ=イサは、どんなカクテルを注文して良いか悩んでいた。
 好みの味はあれども、中々どうして注文するのも難しいものだった。
 そんあリョウブに声をかけたのは、ゴリョウ・クートンだ。
 普段の姿よりもスマートで小綺麗になった姿は、さすがにいつもの格好でこういう店に乗り込む勇気がなかった事から考えに考えた装いだった。
「ゴリョウ・クートン、オークだ。」
「リョウブ=イサだよ。よろしく」
 一人参加の者は意外と多かったが、比較的店内は女性が多い様に見受けられたので、二人は少し安心した様子で笑った。
「カクテル悩んでるのかい?」
「まぁね。洋酒が好きだから、そういう感じにしようかとは思っているけどね。君は?」
「俺はエール系とは決めてるぜ」
 ゴリョウが先の頼んでいたのは、肉料理に魚料理にチョコレート。店にあるたくさんの料理がテーブルにどんどん並んでいく。
「食べるねぇ、君」
「くははっ、まーな。しかし、美味い酒とメシを、美しい星空の下で存分に食えるとはここは楽園か?」
 ギフトの性能上、しっかりと食べないとゴリョウに待って居るのはしおしおな未来なのだが、それをリョウブは知るよしもない。
「僕はチョコレートがメインかな。色々と食べてみたいからね。故郷でも毎年、この日は外から、色々と珍しいものが届いていたけれども……。実際にこうやってあれもこれもと味わうのは、そうそうできなかったからねえ。ふふ、年甲斐もなく、ちょっとはしゃいでるかもね」
「アンタ、ダンディな見た目の割にお茶目だなぁ」
 今日の出会いは悪くない。


 ノイン ウォーカー、栂瀬・なずなはバーの隅の席に並んで座っていた。
 メニューを見ながらノインがやんわりとした口調で注文する。
「俺には飲みやすい、フルーツのカクテルで。キツいのもいけるのですが、なんだか今日は甘いものが欲しい気分です。あ、なずなには……そういえば未成年、でしたっけ?」
「あ、はい。えっと私はノンアルコールカクテルにします。ノインさんが頼むようなお酒も、大人になったら飲んでみたい、ですけど」
「それは残念でした、酔わせて連れ帰っても楽しいと思ったのですが」
「……も、もう……冗談に聞こえませんでしたよ。ノインさんのお部屋とかも気になりますし、連れて帰ってもらう分にはいいんですけど……酔うのは大人になったら、でしょうか」
 ノインの言葉に少し照れながら、なずなが応える。
「ちゃんと無事にお家までお送りいたします」
 少しの沈黙の後、なずながおずおずと隣の席に置いていた箱を手に取る。
「えっと、その……。此処にお呼びしたのは、これを贈りたくて……よかったら、どうぞ」
 頬をほんのり桜色に染めながら、そっとノインに手渡すと、ノインが少し驚いた様子で目を瞬かせた。
「あ、ああ…俺に?そういえば、そのような催しでやっていたのですね」
 受け取りながら、思い出しました、とばかりにノインが微笑んだ。
「ありがとうございます、ノーチョコフィニッシュは免れました。すぐに開けたいくらいですがここで開けるのはアレですね。では、時計塔の奥深くにご招待します。あそこなら誰もいませんからグラオクローネらしく甘い夜でもいかがですか?……ご安心ください、取って食べたりしませんから」
「!はい、ご招待いただけるならぜひ。甘い夜……ふふ、楽しみです」
 ほんの少しの期待と、一緒に過ごせるというその事実に、二人はそっと寄り添った。


 十夜 縁、マナ・ニールは並んで疑似の夜空を見上げた。
 星空の溶ける夜の海をイメージした濃紺のカクテルを手にした緑は、隣のマナの肩をそっと抱いた。
「見事な星空だ。お前さんも見てみろ、マナ」
 自然なエスコートは、卑猥さを一切感じさせない。
「素敵な……星空ですね。見ているだけで、心が躍るようです」
 広がる夜空に、わぁ、とマナが小さく声を上げた。
 夜空に輝く一番星をイメージした、淡い雪の色に、暖かな赤が入った綺麗なノンアルコールカクテルを口へと含む。甘くて飲みやすい味わいに、マナはふにゃりと頬を緩める。
 運ばれてきた肉料理を取り分けながら、マナとの会話は弾む。それは最近あった何気ない出来事だったり、たわいのない事だったけれど、とても楽しい時間に感じられた。
「このお料理もとても美味しいですね。沢山食べられないのが勿体ないほどに」
「……ははっ、頬にソースがついてるぜ?」
 夢中で食べていたからか、ソースがマナの頬に付いていた。そっと、縁は指を伸ばすとそれを拭う。
「ほら、取れた」
「あっ……お、お恥ずかしい所を……」
 恥ずかしさに赤面しながら、マナが少しだけ俯く。緑は、そんなマナに優しく笑いかける。
「お前さんは旨そうに食うから見ていて気持ちがいいねぇ」
 緑にとって、マナの言動は好ましい物だった。はにかむ様子も可愛らしいとさえ映る。
 互いのデザートを交換し合う様子は、端から見ると微笑ましいカップルにも見えなくもないけれど、親子のようにも見える。
 ただ一つ言えるのは、二人が微笑ましいほど仲が良い、と言う事だ。
「折角のグラオ・クローネにこんなおっさんに付き合ってくれた礼だ、今日は俺が奢ってやる。気の利いた贈りモンはできねぇが、ちっとくらい大人にカッコつけさせてくれや 」
 優しくマナの頭を撫でながら、言う緑に、マナが少し恥ずかしそうに自身の鞄から箱を取り出した。
「そ、その……私からは、十夜様。本日はグラオ・クローネということですので……よ、良ければこちらを……あの一応手作りではあるんですけど……」
 可愛らしくラッピングのされた箱を受け取る緑。
「ありがとな」
「は、はい!」
 満面の笑みを浮かべたマナに、緑も満足そうに微笑んだ。


 Lumilia=Sherwoodは、店内に流れる音楽に耳を傾けながら、最近出来た友人であるリジアと楽しく話をしていた。
 上質な紅茶と軽食をテーブルに広げながら、互いの話に花を咲かせる。
「以前お会いしたときは、依頼の場であったのであまりゆっくりお話する機会もありませんでした。せっかくですし、これまでの経歴や、旅のお話、聞いてみたいですね」
「私も、少し、興味があった……」
雄弁なタイプではないリジアだが、こうして誘いに乗ったという事は、彼女に対して好意を抱いたからだ。
「ルミリアは大切にしている楽器があるか?」
「ええ、やっぱりこれ、ですかね」
 そっと手にしたフルートをルミリアがリジアに見せる。丁寧な手入れの施されたその楽器は、音色を聞くまでもなく大切にされているのが分かる。
(物を大切にするのはとても良い事)
 物質の誕生と崩壊を見届けるべき存在であるリジアから見て、ルミリアの言動は真摯であり、気持ちが良い物だった。
「音楽の魅力は?」
「魅力……なんでしょうね?旅の師が、楽しそうにこれ、を演奏する姿を見て、そのとき初めて、楽しいものなんだと思いました。今もその笑顔が好きで、私自身も音楽が好きです。……説明できなくてごめんなさい」
「謝らなくて良い。ルミリアのその子に対する愛情は分かったから」
 ぱくり、と軽食のふんわりパンケーキを口に運び、もぐもぐと租借する。
「美味しい」
「あ、はい。ここの料理とても美味しいですよね」
 口の中で蕩けるようなパンケーキは絶品だった。紅茶も程よい渋みが、パンケーキにちょうどあっている。
「……また、ルミリアと、来ても、いい」
「……はい!」
 時間はまだまだたっぷりとある。今日だけじゃない。美味しいお店や可愛い雑貨屋さんがあれば、また一緒に来れば良いのだ。
 二人は友達なのだから。


「えりちゃん、今日は一緒にバーに来てくれてありがと~! 私お酒は飲めないけど、良い雰囲気を味わってみたかったんだよね~。えりちゃんはお酒飲めるのかな?」
「そうですね、飲めないわけではないけど……血が一番ですから」
 ユーリエ・シュトラールの言葉に、エリザベート・ヴラド・ウングレアーヌが少し悩んだ末、そう応えた。
 吸血鬼であるエリザベートにとって、一番美味しいのは血液である。酒も飲めないわけではないが、好きかと言われれば、血には及ばないと言わざるを得ない。
 だが、オリジナルカクテルっていうのが気になるから、是非感想を聞かせてほしい、と言われてしまえば、飲まざるを得ない。
 どうでも良い相手からのすすめであれば、理由をつけて断るところだが、ユーリエのお願いであれば首を縦に振るのはやぶさかではないのだ。
「ノンアルコールもあるらしいですし、飲んでみては?」
「ん、飲んでみよっかな」
 シャンボールの抜かれたノンアルコールのカクテルをバーデンダーに作って貰い、ユーリエがそれを口に含む。
 チョコレートのお菓子を摘まみながら、楽しく過ごしたが、ふとエリザベートがユーリエの口元をじっと見た。
「うん、チョコレート美味しい!」
「……私も食べてみたいですね」
 エリザベートの指先がユーリエの口元に触れる。
 そっと身体を近づけると、エリザベートの言いたい事、やりたい事を感じ取り、ユーリエが頬を赤く染めて、僅かに視線を逸らした。
「他の人に見えない場所でなら……く、口移しもいいよ? 」
 勇気を出してユーリエが大胆に言うと、エリザベートの腰羽がばさりと広がり、二人の顔の辺りを隠すように包み込む。
「これなら、誰にもみえませんよ」
 ユーリエの返事は聞かず、エリザベートがユーリエの唇にキスをして。


 夜乃 幻は、星空を映した様なイブニングドレスに身を包み、恋人であるジェイク・太刀川とカウンター席で隣り合いながらも、互いに見つめ合っていた。
 ジェイクも、グレーのスーツ上下をシックに着こなしており、二人は似合いのカップルと言えるだろう。
 互いの席には、それぞれが頼んだカクテルが置かれている。
 幻の、情熱的な恋の詩から生み出された深紅のカクテルと、ジェイクの恋人の儚さと、彼女を守りたいという思いで生み出されたミルク色のカクテルがそっと寄り添っている。
「満天の星空も綺麗だけど、それ以上に幻が綺麗だ」
「そ、そんな……。太刀川様もとても素敵です」
 バーの雰囲気も相まって、お酒はそれほど進んでいないのにも関わらず、酔いが廻っているようで身体がふわふわとする。
 優しい力でジェイクが幻を引き寄せると、二人の距離が近づく。
 ちゅ、と。幻は、ジェイクの頬に思わず口付けていた。
「幻」
 名前を呼ばれた事に、身体をびくりと震わせ、恥ずかしさでどうにかなりそうになりながらも、離れる気など起こりもしなくて。
 ジェイクの身体にすべてを預ける。
 ジェイクもそんな幻を拒絶するつもりなどなかった。
 優しく幻を再び抱き寄せると、彼女がしてくれたように、彼女の頬へと口付けた。


 ステファン・ダールバニは、着慣れないスーツに身を包みながら、満面の星空を楽しそうに見上げていた。料理も楽しみではあったが、一番の目的はこの星空だ。
 持って来たスケッチブックを開くと、情景を描いていく。
「ギフトの奇跡は本当に凄いね」
 天気に邪魔されない人工の星空は、室内を暖かに照らしていた。
 そんな様子を見ていたバーテンダーが、彼の近くにそっとオレンジシュースを置いた。邪魔をしないよう、あえて声はかけず、僅かな会釈をすると、さすがにバーテンダーに気付いたステファンが、「ありがとうございます」と微笑んだ。
(あ、そうだ!)
 ステファンは思いついたとばかりに、バーテンダーに食い気味に声をかける。
「あの、もしよかったら飛んでみてもいい、ですか?その近くで見たくて。僕の創作活動に刺激があるかな、って」
 その言葉にバーテンダーが笑顔で頷く。
 嬉しそうにステファン笑い、その翼をゆっくりと広げる。
 クロジンデ・エーベルヴァインは、そんなステファンを見上げつつ、バーテンダーへ自身の紙を提出する。
 そこにはクロジンデのギフトで暴かれた、バーテンダーのギフトの詳細が記されていた。
 バーテンダーは少し悩みながらカクテルを作り始めた。
「ギフトを使ってのプラネタリウムに、ギフト狂のボクとしては前々から興味があったんだよね。ただ、去年はまだ未成年だったから、成人した今年初めて来てみたんだ」
 ノンアルコールカクテルだと、使える物に限りがあるので、思い切って見た、とクロジンデは語る。
 注文したハンバーグを食べながら、バーテンダーの手元をじっとクロジンデは見つめた。
 マルク・シリングは、二人の様子を微笑みながらこっそりと見つめていた。
 お酒の飲めない彼は、ノンアルコールのカクテルを頼んでいた。
(お酒飲めないし、普段はハードル高いけど、こういうイベントなら気兼ねなく入店できるからね)
 お酒をメインとするバーに、それ以外の目的では中々行く機会がない。こういうイベントだからこそ、普段入れないところにも気軽に来る事ができるのだ。
 ――せっかくだから、ノンアルコールのカクテルをお願いしたいな。お任せで……僕でも真似して作れるようなやつ。
 そう言ったマルクに、バーテンダーは快く彼のカクテルを作成した。
 オレンジジュース、パイナップルジュース、グレープフルーツジューズ、グレナデン・シロップを混ぜた優しい彼をイメージしたノンルコールのカクテルだ。
 素人の彼でも作りやすいよう、複雑な構成はしていないが、とても飲みやすいフレッシュな味わいが口に広がる。
「飲み物ってこんな風に創る事もできるんだ」
 ジュースのような味わいではあるが、甘すぎるシロップというわけではなく、深みのある味がする事に、マルクは少し驚いた。


 琴葉・結と、相棒である魔剣ズィーガーは今日も仲良く?一緒だった。
室内でも星が見えるなんて素敵、と意気込んだものの、実際はズィーガーとデート状態である。
 一人ではないけれど、相手がズィーガーではロマンチックな展開は見込めない。
(魔剣だし)
「はぁ。来年こそは、こ、恋人と一緒に……来れたらいいなぁ」
 照れながら独りごちる結に、ズィーガーが豪快に笑う。
『イヒヒヒ。無理だろ』
「む、無理じゃない……!」
 テーブル席でジャンボチョコレートパフェを突っついているその様子にはロマンチックさは残念ながら無いのだけれど、夢は見たい年頃である。
 ぷぅ、と頬を膨らませながら、結は黙々とパフェを食べる。
「美味しそうね」
 シェンシー・ディファイスが、結の食べているパフェに少し興味を持ったのか、声をかけた。
 ドレス系の服を着ているメンバーが多い中、シェンシーは非常にシンプルなスタイルをしていた。
(服無いしね)
 このためにあつらえるほどの情熱はないシェンシーだ。と言っても、彼女の格好はシンプルではあるもの、すっきりとしたものではあったため、そこまで浮いている訳でもない。
「口にチョコついてるよ」
 結の口元を指さしながら、じっとチョコレートパフェを見つめる。
 甘い物が好きなシェンシーにとって、パフェも中々に魅力的だった。
 慌てた様子で結が口元を拭うと、ズィーガーがまたも笑い飛ばした。
 『イヒヒヒ!!お前、やっぱり恋人は無理なんじゃ……』
 爆笑と表現するにふさわしい豪快な笑いである。結は不満げに、こつんと魔剣を叩いた。
「なんか漫才みたいだな、アンタら。ん、おれもそれ食べようかな。で、飲み物はせっかくだし、ノンアルコールカクテルにしようかな」
「ま、漫才じゃない……!」
「アンタら賑やかだな」
 銀城 黒羽が、後ろで賑やかに話している結たちに振り返りながら言う。
「あ、ごめんなさい」
「いや、別に怒っちゃいねーよ。楽しそうで良いんじゃねぇ?」
 雰囲気を楽しむつもりだった黒羽だが、楽しそうにしている人に細かい指摘をするほど野暮ではないし、別に謝られる程の事ではないと思っている。会話を楽しむのも、酒を静かに楽しむのも、客の自由なのだから。
「お待たせしました」
 バーテンダーが、黒羽のカクテルを持ってくる。
 ダークラムと焼酎から作成されたカクテルは、大人の落ち着いた色をしている。
「焼酎は芋にしてみました。少し重ためな味わいなのですが、飲み口はまろやかですよ」
「ふーん」
 雰囲気は悪くないな、とグラスを傾けながらバーの中を見渡した。
(ま。こういうのも悪くない、か)
 口の中に広がる味もまた、悪くなかった。


「こういった雰囲気のお店は初めてで緊張します」
 ティミ・リリナールは、どきどきと高鳴る胸を抑えながら、席に座っていた。
 同じテーブル席に腰掛けている、友人である九重 竜胆、ヴィエラ・オルスタンツの二人は慣れた様子でメニューを見ている。
(二人とも慣れてらっしゃる……!)
「素敵なお店ね。雰囲気もあるし、人気があるっていうのは納得しちゃうわ」
「確かに素敵なお店ね。教えてくれたユリーカに感謝しなきゃ」
「お肉に野菜、魚料理もあるのね……んー、私はどうしようかしら。あ、お肉を頼むから分けっこしない?」
「お肉…いいですね。頼みましょう」
「ん、肉ね。了解。絶品と言われる味、確かめてみたいしね。それと、ジャンボチョコレートパフェ!
今日はチョコレートパーティ何だから、食べなきゃ損よ」
「確かに!」
 女の子が3人集まると、中々賑やかである。
 3人ともタイプは違えど、いや違うからこそ仲が良いのかも知れない。
 カクテルの飲めないティミはオレンジジュース。
  竜胆はお店おすすめの淡いピンクのノンアルコールカクテル。
 ヴィエラは果物のノンアルコールカクテル。
「さて、と。とーころーでー、あのね、少し気になってる事あるんだけど二人に聞いても良い?」
 年相応の笑みを浮かべて楽しそうにヴィエラが尋ねると、二人が顔を見合わせ首を傾げた。
「……単刀直入に言うわ。二人には気になってる方っていらっしゃらないの?私は居ないからちょっと気になっちゃって」
 彼女の口から出てきた言葉に、竜胆が盛大に咳き込んだ。
「ゲホッ、ケホッ。え、何? 今日ってそういうお話だったの?まぁ、私は居ないわよ。そもそも私、見合い話とか嫌で実家から逃げ回ってた位だしね」
「竜胆はそうなのね。美人なのに勿体無いわ……とはいえ、女の幸せはそれだけじゃないか」
 続いてヴィエラが、ティミへと視線をやった。
「え、気になる人ですか?ええと、その……」
 恥ずかしそうにティミは視線を外しながら、ぼそぼそと呟く。
「わ、私はそういうのは、まだ、その」
 それはそうだろう。最近大人っぽくなったとはいえ、10歳の子供である。
 ティミの話に、竜胆もヴィエラも表情を和らげる。
「そうなの?何かあったら相談くらいには乗ってあげるわね」
「ふふ」
 なでなでと頭を撫でられて、ティミが頬を赤く染めながら、チョコレートパフェをぱくりと口に含む。
「お二人とも大人です」
 3人は今日も仲良しである。

 ロイヤルロマンスは、来年も皆様をお待ちしています。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

(`・ω・´)皆様お幸せに~


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