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シナリオ詳細

《機竜探訪記》眠りし盾竜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「やあ、こんにちは、イレギュラーズ。僕の名前はキュカ。覚えてくれても覚えてもらえなくてもまあ構わないよ」
 ある日、ローレットで依頼を受けた君達が鉄帝国の都『スチールグラード』に訪れると、白衣に身を包んだ少女――キュカが出迎えてくれた。どうやら、今回の依頼人のようだ。傍らにはやや大きめなバッグが置いてある。
「さて、実は先だって君達イレギュラーズにある依頼をしてね。見事に応えてくれたから、今回もお願いしたいと思っていてね」
 そう言って何やら資料を広げ始める。
「父と僕は機竜っていう鉄帝の北東部にかつて生存していた生き物の生態について研究をしていてね。今回は機竜文明が存在していた頃と思われる遺跡の探索を手伝ってほしくてね」
 そう言って広げた地図の一定の地域に印をつけた。
「父が最後に探索していた遺跡の近くで新しい遺跡が見つかったんだ。恐らくは父が間違って起こしちゃった機竜が目覚めて暴れた際に偶然見つかったんだと思う」
 鉄帝国の北東部、切り立った山岳の乱立する地域。極寒の鉄帝国でも、恐らくは更に冷たい地域であろう。
「以前、父は助手の一人とたった二人で遺跡に赴いて帰ってこなかった。二の舞にならないために腕の立つ実力者――つまりは君達に護衛をお願いしたいんだ」
そこまで言ってこほんと咳を一つ。
「遺跡の中ではきっといろいろと見つかるだろう。調査の方も君達にお手伝いを願いたい。かつて勃興したであろう機竜文明。過去を知ることは今を知るに等しい――なんてどこかで聞いたこともあるしね」
 そこまで言うと、思い出したようにガサゴソとバッグを漁って、ごとりとテーブルの上に何かを置いていく。
「僕は君達に同行して、遺跡の中で見つかったあれやそれやをまとめるから、君達は探検に集中してほしい。もし戦闘になっても君達の実力であれば問題ないだろうけど、なるたけ物は壊さないでほしい。いや、洞窟の中は全てが文明の遺産と言えるだろう?」
 そう言ってキュカは荷物をまとめ始める。どうやら早速出発の準備をしているようだ。

GMコメント

さて、そういうわけで? 遺跡探検じゃい! です。
以下詳細をば。

●オーダー
遺跡内を探索し、五体満足で帰還する。

●探検場所
緩やかに地下へと下がっていく真っ暗な洞窟。構造的に誰かが人為的に制作した地下施設であろうことは入り口地点からも分かります。
光源に関しては皆様でお持ちいただくもよし、キュカに頼めば頭に巻き付ける系のライトっぽいやつを貸してもらえます。

●洞窟内部
基本的にいくつかの罠と緩やかな下り坂が続き、地下15mぐらいで大きな広間のような場所に行きつきます。その奥にもフロアがあるようです。

●出現敵
・ラプター級機竜×16体
全長1~2m、個体ではあまり強くありませんが、群れで行動するタイプの機竜です。
【基本的なスキル】
《咆哮対話》 物特レ レンジ2以内の味方 命中、反応
《噛みつき》物至単 威力小
《跳躍攻撃》物中単 威力小

・ホーンフリル級機竜×1体
薄く広がるような後頭部と目の上辺りから生える二本の角が特徴の、四足歩行型機竜。全長10m。
高いHP、防技、抵抗を持つ一方で、回避、反応、EXAなどは低いです。
〔基本スキル〕
《対物シールド》 物自単 威力無 受けるダメージを-50(固定値、ダメージ処理判定時に削減されます。)
神秘攻撃を4回受けて消失し、消失するまで常時発動します。消失後に再度張られることはありません。
《突進》 物中貫 威力中 【万能】【崩れ】【体勢不利】
《電磁双角》物至単 威力中 【ショック】【麻痺】


●その他
有用そうな非戦スキルにはボーナスが入ります。

【《機竜探訪記》南下するは鎧竜】とは関係してますが、あくまで単一依頼となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 《機竜探訪記》眠りし盾竜完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月04日 23時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エマ(p3p000257)
こそどろ
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
アト・サイン(p3p001394)
観光客
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
ユー・アレクシオ(p3p006118)
不倒の盾
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
<不正義>を知る者

リプレイ


「機竜文明ですか。鉄帝は国中にこういうところがありそうでワクワクしますね、えひひっ!」
 『一夜限りの怪盗団』エマ(p3p000257)は依頼人――キュカからの説明を受けながらひきつったように笑う。
 北に雄大な山々を抱えたその麓、ぽっかりと開いた土色の洞穴がある。どうやら、ここが目的地であるようだ。
(墓荒らしは冒険者の基本だけど、家探しは盗賊の基本よ。こちらはどっちなのかしら)
 んーと少し考える様子を見せる『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はぽっかり開く入り口を見上げている。
 フードを目深にかぶる『観光客』アト・サイン(p3p001394)は、参加者の数人が気のおける仲間が数人いることに頷いて、少しばかり背負ってきたカバンの位置を調整する。
 普段通りのように見えるアトも、実は久しぶりのダンジョン探索に少しだけ張り切っていたりした。
「難しい事は馬の骨さんにお任せしますよ」
 エマが言えば、イーリンはやれやれと肩をすくめる。
 気のおける知人同士という事もあって、3人は少し軽くさえ感じられる。

「ここがその施設ですか」
 兜をかぶっているため、くぐもった声になっている『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)は、兜の向こうからじっと見据えている。
「ささ、出発だよ!」
 キュカがパンパンと手を叩いて声を上げる。
 その横で『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)は少し考え事をしていた。
(どうにも嫌な予感がするんだよな、機竜に)
「ちっと個人的な調べ物させて貰うぜ」
「それはそれでいいんじゃないかな! うんうん」
 ミーナの考えていることは露しらず、キュカはそう言って頷いて見せる。
「機竜とは浪漫溢れるワードだな」
 そういう『ユーにーちゃん』ユー・アレクシオ(p3p006118)も、ワクワクとした探究心に胸を躍らせている。
(こういうの、初めてだから、ちょっとわくわく……する、ね)
 『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)もまた、そんな気持ちになる一方で、仕事はちゃんとしようと気合を入れる。
(機竜かぁ……誰か、連れて帰れないかな……背中に乗ったり、してみたいな)
 ぼんやりとアイリスは考えていた。
「さあ、暴きましょう。神がそれを望まれる」
 ラムレイの様子を確かめる。血のように紅い瞳が、馬甲冑の下からぎらりと覗く。
「割と楽しみでありますな」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006370)はそんなことを言いながら肩をぐりぐりと振り回す。


 洞窟の中は、しんと静まり返っていた。
 イレギュラーズの先頭、3メートルの棒で周囲を叩きつつ進むアトは角灯で周囲を注意深く照らしている。
 どれくらい降りてきただろうか。幾つかの罠は事前に見つけて解除している。
 解除に偶然失敗してしまったり、解除するどうこうの前に発動してしまったものから逃れながら、何だかんだ言いながらイレギュラーズは順調に洞窟の奥へと進んできている。
 アトは不意に、3メートルの棒が感じた衝撃に妙な軽さがあったのを感じ取る。
「うーん、どうやらここから先、床の材質が変わるみたいだ」
 入ってきた当初から、意図的に掘り進めた洞窟であることは明らかだった。いよいよ、その質が明らかになったというべきか。
「ねぇアト、ここ『作りとしてダンジョンになってる』と思う?」
 イーリンはインクで適当な場所にマーキングを示しつつ、問いかける。アトの返事はやや合っての否定。
「ダンジョンというには少し正直すぎる」
 意図的にダンジョンを作るのなら、どんなにそうならないように心掛けたってどこかしらに制作者の癖がある。それがどことなく薄い。癖を隠すのが上手いというわけではない。
「正直、ダンジョンとしては三流以下だね。エマ、周囲の構造はどう思う?」
「ひたすら真っすぐですよ。聞くのも見るのも」
 エマの言う通り、通路はほぼ一直線だ。これではあっという間に踏破される。多少の罠など、探検家には心を折るには足るまい。
 ――いや、それどころか。
「ここがどういう意図で作られた場所なのか、考え直さないといけないわね」
「運が悪いことに、霊魂の類はこの辺にはいないみたいだな」
「コケは、外から入ってきたモノが珍しいみたい……だね。蝙蝠は私達と一緒ぐらいに入ってきたから、分からないみたい……だよ」
 ミーナが肩をすくめ、アイリスは近くに生えていた対話の結果を伝えてくる。
「床の質が変わるってことはもうすぐ何かがあるのは事実だと思うんだけど……エマ、何か聞こえるかい?」
「ひひ、何も聞こえない……あっ、待ってください。なんだか、反響するような音が?」
 そう言ってエマは奥の方へと耳を澄ませる。
 頷きあったイレギュラーズは更に奥へと進んでいく。


「あ、あっ、ストップです」
 それから更に奥へと進んできたイレギュラーズだったが、不意にエマが制止する。
 ガチャガチャと、音が鳴る。どうやらこの先には、何かがいるようだ。
「複数の足音があるみたいです。どうにも二足歩行の小さい生き物がいるみたいですよ」
「先にこいつらを向かわせてみるか」
 ユーが自らの電子精霊【ルーメ】を先に送り込んだ。
 ややあって、様子を見てきたルーメがちょこちょこと歩いてきて、向こう側に大広間があることを伝えてくる。 
 更に、温度感覚で見た情報をエマが全員に共有して、イレギュラーズは大広間へと足を踏み込んだ。
『グルル?』
 一匹がイレギュラーズの姿を見ると小首をかしげた。
『ギャオオ!』
『ギャオギャオ』
 先にイレギュラーズに気付いた一匹が叫ぶ。それに他の複数体が応じる様子を見せる。
「美味しそうな奴らが来た……だって」
 アイリスがぽつりとつぶやいた。
「まあ、そんな感じの話だろうな!」
 ユーはそういうと大広間に保護結界を張り巡らしていく。
 アトは閃光弾の紐を解いて、こちらを意識し始めた敵陣に向けて放り投げた。カッーーと、まばゆい閃光が中空で破裂し、複数のラプター級の体勢を崩す。
「そういうものが稀に見つかると聞いたことはありますが。まさかこれほど状態の良い、しかも動くとは」
 構えを取るエッダが感嘆の息を漏らす。
(全く、つくづく常識とは己の枷であると認識させられるでありますな)
 やれやれと言った雰囲気を見せつつ駆け抜ける。
「エマ、こっちはいいから前をお願い! キュカ、あれがどういうものか分かるわね?」
「ラプター級とかいうやつらだね。君達なら敵にはならないと思うけれど」
 依頼人を背後に回しつつ、イーリンは後退する。
 そのまま、周囲の様子を見渡した。
「……一面壁画だらけね」
 光源で見渡しても分かる。ドーム状に見える大広間の壁面その全域を壁画が彩っている。
「ひひ、難しいことはお任せしますよ」
 そう言って、エマは前に向かうと、複数体のラプターを巻き込むようにして投げナイフをばら撒いた。
 カツカツカツ――とラプターにぶっ刺さると、端から小さな爆発が発生していく。
『ギャギャオオ』
 そんな悲鳴が、そこかしこから聞こえはじめる。
「ミーナ、攻撃任せた!」
「おおー、それじゃあ仕事しますかね!」
 アンデットのなりそこないを召喚したミーナは、前へ進んで行き、両手に握る短刃を掲げると、瞬く間に二つの暴風域が生み出され、ラプターを包み込んでいく。
 オリーブは敵陣へと突っ込むと、武骨な大剣を掲げ、グングンと振り回していく。やがてそれは暴風域を作り上げ、二匹のラプターを圧倒していく。
 ユーはエッダの後ろに行くと、掌サイズの球型マシンを大量に召喚し、ラプターたちへと殺到していく。
 熱を奪われたラプターが怒りに叫び、ユーへと向かって動き出す。
「それでは、後は宜しきように」
 エッダはユーの名乗り口上から外れたラプター級の前へと走り込む。警戒するように尾を上に、顔を低くして吠えるラプター級は、そのままエッダにのしかかるように飛び掛かる。
 螺旋に巻き込まれたラプターがぐるぐると回転しながら床へと叩きつけられた。
「――神よ罪深き彼女に贖罪の機会を与え給え」
 アイリスが小声で紡げば、十字架の顔の修道女――の姿をしたソレが動く。
 自律式戦闘人形がやや顔を上に動かした。
 反響するは異質な呪い歌。
 絶望の海が如き冷たく、淡々とした不気味な歌がラプター級を貫いた。 
 ラプター級を汚染している多くの異能が、痛みとなって彼らを穿っていく。

 更なる時間を経て、一匹一匹が大した質ではないラプター級を叩き潰したイレギュラーズは、一息を入れていた。
 イーリンは壁面に描かれた無数の壁画を照らしている。
「おお、ここに描かれているのはホーンフリル級機竜じゃないか! 珍しい。ふむむ」 
 そんなイーリンの後ろで依頼人がまぁ興味津々と言った感じにメモやらスケッチやらを取っている。
「ホーンフリル級というのはね、守りに特化した機竜であろうとされているんだが、壁画もあまり描かれてないんだ」
 目を輝かせて、自分の知識を言いたいオタクみたいになってた。
 イーリンはその話を半分に、情報を知識の砦に記入していく。
「アト、今回も頼める?」
「いいけどさ、君たち僕のことなんだと思ってんの、正直泣きたい」
 トホホと言った感じのアトの言葉には哀愁を感じさせる。
 なんだかんだ言いつつも、信頼できる相手であるから、同意するのだが。
 イーリンの瞳が、アトのソレを交錯する。
 深く、静かに、堕ちていく。死の程近くへと。
「――はっ!」
 吸われた者を再び活性化させられる妙な感覚。
 進んでやるべきではない。本来、敵対者にするべき技能である。割と痛いし危険でもある。
 今回は、ユーにも合意していたアトは少しの間、がっつり吸われることになった。

 死屍累々の中で、最初にそれに気付いたのはエッダである。
「何やらここに扉みたいなのがあるようであります」
 がっつり叩きつけられたラプター級の後ろ、長方形に切り込みを入れたような作りの不自然な線。
 保護結界のおかげで粉砕されてないのが幸いか。
「ひひっ、アトさん、罠とかありそうですか?」
「いや、特に何もなさそうだね」
「それじゃあ、開けてみるとしましょう」
 とはいうものの、鍵のようなスペースはない。
 あれやこれやと見渡してみた後、何となく、押してみる。すると、ガリガリと音を立て、土埃と共に奥に開いていった。


「お、おぉぉぉ!」
 そんな声と共に目を輝かせたのはキュカだ。
「こいつが盾竜……圧巻だな」
 続いて反応したのはユーだった。
 薄く広がるような後頭部をした、10m代の巨大な機械の塊が、前足を組むようにして呑気に寝ころんでいる。
 機竜の瞳が、ゆっくりと光を見せる。どうやら、目を覚ましたらしい。
 酷く鈍重な動きで、そいつがゆっくりと立ち上がり、大きく口を開ける。欠伸をするような動作だった。
『フォオゥ』
 頭を振って、前足をダン、ダン、と踏みしめれば、そのまま頭を低くして、イレギュラーズへと突進してきた。
 真っすぐに向かってくるホーンフリル級に対して、真っ向からユーも身体を低くして、相手の攻撃に備えた。
 機甲盾-竜花-による防御障壁の向こうからでもなお、岩盤にぶち当てられたかのような強烈な衝撃を受け、ユーは少し体勢を崩してしまう。
「さすがに一人じゃ捌けないか、エッダ、スイッチ頼む!」
「成程、如何にも前に進むしか能のない――それは実に脅威でありますな。
 であれば、自分の立つ瀬もあるというもの。
 技巧の精微を尽くして、見事受け切ってやるであります」
 体勢を崩すユーと入れ替わるようにして、エッダがホーンフリル級の前へとするりと入り込む。
 イレギュラーズ達は半円を描くようにしてホーンフリル級の身体を取り囲んでいく。
 動きを止められたホーンフリル級が、嫌がるように叫ぶ。
 イーリンはその様子を見ながら静かに魔術書を紐解いた。召喚されるは幻の戦旗。注ぎ込まれた魔力量に比例して、淡く輝くその旗を静かに振るう。その瞬間、簡易の封印術式がホーンフリル級を取り巻いていく。
 鈍く、バチバチと音を立て、その機械の身体を包む電磁シールドがほんの少しばかり雑味を帯びていく。
 それに続くように動いたエマは、側面から機竜へ素早く斬撃を繰り出した。
 機竜が纏うシールドに阻まれ、思ったよりも刃が通らない。
 しかし、それでも確かにエマは生命力を盗み取っていた。
 アトは素早く機竜に近づくと、機竜がエマの攻撃による疲労感からかたじろいだほんの一瞬に飾り気のない片手剣を突き立てた。
 そこへ更にアイリスの聖業人形が死者の怨念を束ねた一撃を見舞っていく。

 ホーンフリル級との戦いは、やや長引いていた。
 電磁シールドは自らの不調を立て直したユーの放った魂還光刃によってその機能を停止したものの、元々の高い耐久性能もあって簡単につぶれる相手ではなかった。
 それでも厄介なシールドが消滅していることは大きい。
 オリーブはホーンフリル級の右足辺りにめがけてクレイモアを振り下ろす。
 薄手の刀身は、慈悲深き一撃となって、その機械質の脚部を大きく切り裂いた。
 エマはペレグリンを構えなおすと、一度遠くへと跳んで、その後に思いっきり走り出す。
 その速力をそのままに、ホーンフリル級の目にめがけて突撃する。身体ごと押すようにして突き立てた一撃は、機竜をひるませるに十分だった。
 それに続いたのはアイリス――が使役する聖業人形。
 ぎりぎりまで引き絞った怨念が、ホーンフリル級の喉笛辺りに吸い込まれていく。度重なる頭部への集中攻撃に、ホーンフリル級はぶるぶると震え――直後に、バチバチと音をたてはじめた。
 頭部、目の上辺りから伸びた二本角から電流が迸り――目の前にいるエッダへと炸裂した。
 それを契機に、再びエッダとユーが交代する。
『フォォォォ!!!!』
 ジレンマにいら立つように、ホーンフリル級が雄叫びを上げる。
 そこへイーリンは駆け抜けた。
 規格限界まで注ぎ込まれた魔力を炸裂させ、その推進力で文字通り飛ぶ。
 そのまま天へと舞い上がれば、質量さえ増大された刃の一撃を振りぬいた。
 ざっくりと断ち割られた首筋に、紫の燐光が舞い散って幻想的な光景を作り上げる。
 しかし、そんな致命傷でさえ、機竜は耐えた。
 明らかに震える脚で立つ機竜に、オリーブが再び慈悲の一撃を加え――ソレは最後の遠吠えを残して、堕ちた。


「乗ってみたかったな……」
 ホーンフリル級を沈めたイレギュラーズが一息入れる中で、ぽつりとアイリスが零す。
「父上の研究資料では人を乗せて走る機竜もいたというよ。まぁ、私は見たことないが」
「なあ、あんた。余り深入りしない方がいいぜ。命を弄ぶ事は破滅を招く」
 ミーナは依頼人へとそう警告の言葉を告げた。
 死者の霊魂こそなかったし、残念ながら何をやらかしたのかもここでは分からなかった。
「たしかに。それはもちろんその通りだとも。けれどね、私は父の研究を継ぐと決めてしまった以上、半端に終わらせるわけにはいかない。機竜文明が滅んだ理由もさっぱりだし。それが分かれば、もしかしたら今の滅びとやらにも一躍買うかもしれないしね!」
 本音半分、建前半分に聞こえる言葉を聞きながら、ミーナはそうかい、とだけ言葉を残す。
「ええ――やっぱりここ、ダンジョンじゃないわ」
「どういうことでしょう?」
 イーリンの言葉に反応したオリーブが言う。
「ここまでの罠、明らかに“奥へ進むようにできていたの”」
「奥って……ここですか、だとすると、ここに来てほしかった?」
「ええそう。ここまでたどり着かせることが目的だったんでしょうきっと」
「ひひっ、じゃあ、さっきまでの機竜はなんだったんです?」
「待てよ、だとすると……もしかして、機竜も罠の一つなんじゃ」
 アトはこの空間を見渡した。何もない、ぽっかりと空いた、ドーム型の場所――そうまるで、監獄か何かのような。
「あ、あれ? 何か音しません?」
「帰るでありますよ!」
 エッダが叫ぶ。パラパラと、天井が土埃を上げていた。
 もう誰の目にも明らかだ。もう少しでここは倒壊する。
 依頼人を連れたイレギュラーズは、跳ぶように来た道を走り出すのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした、イレギュラーズ。

ダンジョンの当たり外れ、そもそも用途とは、楽しんでいただけると幸いです。

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