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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2018>君の救った世界の姿

完了

参加者 : 19 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●素晴らしきこの夜に
「御足労、本当に感謝いたします。――それから。怒涛の一年でしたが、こうして無事、シャイネン・ナハトの日を迎えることが出来たのは、紛れもなくイレギュラーズの皆様方のおかげです。その点に関しても、改めてお礼申し上げます」
 大司教――イレーヌ・アルエは、招きに応じてやってきた君達に向けて、深々と頭を下げた。
「さて、では本題に移りましょう。皆様は、今年の頭、流行病に襲われた、幻想のとある地区を覚えておられますか?」
「あ、話には伺ってますよ」
 と、答えたのは、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)だ。
 覚えている者も、実際にその地区――スラム街に赴いた者もいるかもしれない。
 今年の頭、2月ごろになる。とある流行病が幻想のスラム街にて蔓延し、危うく大量の患者と死者を出しかねない事態に陥ったのだが、そこに手を差し伸べたのが中央大教会――そして、少ない報酬ながら最大限の労働を買って出た、イレギュラーズ達だ。
「皆様のおかげで、住民は被害を出すこともなく、その後も平穏に過ごしております――とは言え、彼らの状況が劇的に改善されたというわけではなく、依然として貧しい立場に置かれてはいるのですが……これは、我々の力不足でもありますね」
 さておき、とイレーヌは咳ばらいを一つ、続けた。
「この度、地区の住民達がシャイネン・ナハトを祝うパーティを開くとの事。そして、皆様にお世話になったお礼として、皆様をご招待したい――との事なのです」
 イレーヌは微笑しつつ、続けた。
「以前の件でお力をお借りした皆様はもちろん、そうでない方も参加してほしい、との事です。皆さんは、様々な脅威から幻想を守った勇者であることに変わりはありませんし……こう言っては何ですが、有名人である皆さんがゲストとして参加してくださった方が、パーティも盛り上がるのでしょう」
 イレーヌの言う通りだろう。様々な戦いを経て、名をあげたイレギュラーズ達は、既にちょっとした有名人のような物だ。
 なお、パーティには、貧民街の教会の面々も協力しているそうだ。シャイネン・ナハトの日に行われる、他のパーティに比べればささやかなものだが、充分楽しめるだろう。
「なるほどなるほど。こう言った集まりも良いかもしれませんねぇ」
 ファーリナがふむふむと唸るのへ、イレーヌが微笑を浮かべる。
「もし都合が合うようでしたら、是非参加してあげてください。長くは参加できませんんが、私も少し、顔を出すつもりです」
 さて、この誘いに、君達は――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 貧民街の住民たちが、ささやかながら、パーティを開くようです。
 イレギュラーズの皆さんも、招待されています。
 ご都合よろしければ、是非ご参加ください。

●やれること
 主に、以下の三つとなります。

 1.パーティを楽しむ
  スラム地区の教会で、パーティをお楽しみいただけます。
  提供される料理やお酒は、少し家庭的というか、グレードの低いものですが、味は充分です。
  イレーヌも少し、顔を出すようです。世間話程度なら、付き合ってくれるでしょう。

 2.子供たちの相手
  今やイレギュラーズ達は、人々のヒーロー、アイドルです。となれば、子供たちも放ってはおかないでしょう。
  貧民街の子供たちの相手をしてあげてください。遊んであげたり、せがまれた冒険譚を語ってあげたり……きっと子供達も喜んでくれるはずです。

 3.大人たちの相手
  貧民街の、比較的大きな建物で行われる、二次会のような物です。主に貧民街の大人たちが、お酒を飲んで騒いでいるので、そこに混ざる……という選択肢です。
  もちろん、お酒を飲めない・あるいは未成年なので飲めない、という方でも歓迎されます。
  ヒーローであるイレギュラーズ達の話は、良いお酒のつまみになるはずです。

 以上3つの中から一つを選び、プレイングの冒頭に【数字】の形式で記載してください。
 数字が書かれていない場合、各種描写が非常に薄くなる、或いは登場できない可能性があります。

●作中で言及された『貧民街での流行病の事件』について
 以前公開いたしました、
 『世界を救うため、今できる簡単で難しいお仕事』
 (https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/85)
 というシナリオの話になります。
 簡単に説明いたしますと、中央大教会に依頼されたイレギュラーズ達が、流行病の蔓延した貧民街の住民の看病や対処を行った、と言う物です。
 前作に参加していない……という方も、どうぞお気軽に今作にご参加ください。
 街の住民たちにとって、イレギュラーズとはすなわちヒーローである事に違いはありません。

●諸注意
 お友達、或いはグループでの参加を希望の方は、プレイング2行目に「【相手の名前とID】」或いは「【グループ名】」の記載をお願い致します。【相手の名前とID】、【グループ名】が記載されていない場合、セット・グループでの描写が出来かねる場合がありますので、ご了承ください。
 基本的には、アドリブや、複数人セットでの描写が多めになりますので、アドリブNGと言う方や、完全に単独での描写を希望の方は、その旨をプレイングに記載してくださると助かります。
 過度な暴力行為、性的な行為、その他公序良俗に反する行為はお控え願いますようよろしくお願い致します。
 大司教イレーヌ・アルエは、【1】の会場にのみ登場します。
 『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、呼んでいただければどこにでも登場致します。
 可能な限りリプレイ内への登場、描写を行いますが、プレイングの不備(白紙など)やキャパシティの限界により、出来かねる場合がございます。予めご了承ください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Scheinen Nacht2018>君の救った世界の姿 完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年01月12日 22時40分
  • 参加人数 19/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 19 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(19人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
ふわふわな嫉妬心
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
海抜ゼロメートル地帯
竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白い烏
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
魔動機仕掛けの好奇心
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
ほのあかり
エマ(p3p000257)
こそどろ
ポテト チップ(p3p000294)
優心の恩寵
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
死を呼ぶドクター
サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
リゲル=アークライト(p3p000442)
死力の聖剣
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
古木・文(p3p001262)
文具屋
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
シラス(p3p004421)
閃翼
ハロルド(p3p004465)
聖剣使い
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
シュテルン(p3p006791)
星頌花

リプレイ

●ささやかなれど、暖かな
 スラム地区の教会、その比較的大きな部屋を使って、住民たちによるささやかな祝宴は行われた。
 出される料理は、ありふれた家庭料理ばかりではあったが、それでもスラム地区の住民たちにとっては、少しばかり『背伸びした』食材が用いられているのは事実だ。
(ですけど、この貧民街の人達がこの料理を出したって言う事は、ここの人達も余裕出てきてるのかもしれませんね……おや?)
 その人物を目にしたエマは、ふと声をあげた。大司教、イレーヌ・アルエ。
「えひひ、こんばんわ。その節は、どうも」
 笑いかけるエマへ、イレーヌはにっこりと笑って、
「こんばんわ。あの時はご助力、感謝いたします。おかげでシチューが冷めぬうちに、配り終えることが出来ました」
 優雅に一礼を返す。エマは苦笑しつつ、続けた。
「あれからもうすぐ一年、おかげさまで生き延びました。来年もよろしくですよ」
「ええ、こちらこそ――是非に」
 笑みとペースを崩さぬ大司教。エマは「相変わらず食えない人ですねぇ」などと思いつつ、しばしの雑談を続けるのであった。

「ぐびぐび! お酒美味しい! ご飯も! うーん、懐かしいお味!」
 と、ロクはパーティ料理に舌鼓を打つ。
「とても美味しそうな料理だね、君が作ったのかい? いただくよ。……うぅーん、美味しい! 後で作り方を教えてもらいたいな?」
 クリスティアンもまた、料理の数々を味わっていた。
「王子、王子が作るの? どんな料理?」
 ロクが尻尾をパタパタふりつつ、問いかける。
「うん? いや、この料理だよ。ロク君も食べてごらんよ? ほら、あーん」
 と、カットされたパイを差し出すのへ、ロクの尻尾はぴーんと立ち、次第に複雑な軌道を描いて揺れだした。
(……そ、それは……お口あーん行為! 嫌! だめだよ! わたしもういい大人なんだからそんな子供っぽいこと……!! で、でも、美味しそう、それに王子の手が……えーい、ままよ!)
 と、尻尾をばたばたさせながら、ロクは勢いよくパイへと食らいつく……が、勢いをつけすぎて、クリスティアンの手を思いっきり噛んでしまった。
「アイタァッ!?」
「あ、王子ごめんなさいもぐもぐ! でも美味しいもぐもぐ!」
 涙目になりつつも、クリスティアンは嬉し気なロクを見て、微笑を浮かべるのであった。

「あ、ファーリナさん。輝かんばかりの、この夜に!」
「や、これはこれは。輝かんばかりの、この夜に、ですよ!」
 テーブルにつきつつ、料理をつまんでいたティミは、近くをふらりふらりと飛ぶファーリナを見かけ、声をかけた。
「ふふ。よろしければ、ご一緒にどうですか?」
 そう言って、ティミは自身の膝にかけられた、ストールをさす。
「ではでは、お言葉に甘えて」
 ファーリナはちょこん、と膝へと腰を下ろす。
「ファーリナさんは、クッキーは食べられますか?」
「あ、私は何でもいけるタイプです! ……そう言えばここ、今年の頭位は大変だったらしいですね。私は別件で出ていたので存じ上げないのですが」
 ティミは頷いた。
「はい。あの時は、私は炊き出しの配膳を。目の回る様な……と言った様子でしたけれど、それで今日、皆がこうやって元気に過ごせているのなら、よかったです」
 心から、安心したように、嬉しそうに。ティミは微笑むのだった。

●ヒーローは此処にあって
 ささやかな宴の後は、いわゆる二次会という事になった。とは言え、実際に二次会で酒盛りを始めたのは大人連中であって、子供たちと言えば、現実に存在するヒーローたちと触れ合えると大騒ぎになっている。
「元気だったか? 栄養つけてるかー?」
 リゲルの言葉に、子供たちは元気よく、手をあげて返事をした。その様子に、自分達の頑張りがこうして実を結んでいることに、喜びと誇らしさを感じる。
「本日はパーティへのお招き有難う。皆元気そうで良かった。さ、これは差し入れだ。たくさんあるから、遠慮しないでくれ」
 ポテトがそう言って差し出したのは、バスケット一杯のサンドイッチだ。子供たちは目を輝かせて、サンドイッチに手を伸ばし、リゲルにぶら下がったりして声をあげる。リゲルは子供たちを抱きかかえてあげたりして、遊んであげるのだ。
「そうそう、サーカスが来た時のことはみんなも知っているだろう? あのサーカスを取りまとめていたボスに止めを刺したのはリゲルなんだぞ」
 ポテトのその言葉に、子供たちが色めき立つ。
「と言っても、俺だけの力じゃない。仲間と力を合わせて戦うことが出来たからこそなんだ。だから君達も、仲間や友達を沢山作るんだぞ」
 そう言って笑うリゲルへ、子供たちは元気よく、返事をするのだ。

「さぁ、こっちはクッキーですよ。皆さん、2列に並んでくださいね」
「えっと、どうぞ……数はあるから、順番に……ね?」
 クラリーチェとエンヴィは、手作りのクッキーを配る。あっという間に子供たちが群がるのに、エンヴィはすこし、ドギマギとした様子を見せた。手作りのクッキーを喜んでもらえるのか、ちゃんと渡せるのか。クラリーチェに励まされ、少し膨らんだ勇気は、実際に子供たちを目にすればまたしぼみそうになる。
「エンヴィさん。しゃがんで子供たちと目を合わせましょうか」
 クラリーチェが、再び優しく、アドバイスを告げる。
「えっと……こう?」
 わたわたと、エンヴィが腰をかがめた。子供たちと視線が合う。キラキラと輝く瞳が、エンヴィとクラリーチェを見つめている。エンヴィがクッキーを手渡すと、子供たちは笑顔で、お礼の言葉を返してくれた。エンヴィは少しびっくりした表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうな微笑みへと変わった。クラリーチェはその様子に、穏やかな笑顔を浮かべながら、子供たちへとクッキーを手渡していった。

「そうだな……ダンジョンに隠された宝石……宝探しだな。そんで、他には……ああ、海洋ってとこにも行った。そん時は、丁度夏祭だったな」
 ハロルドの語る冒険譚は、子供たちにとってはまたとない貴重な娯楽だ。とは言え、ハロルドはあまり血なまぐさくない話を選ぶのに、苦労をしていたし、ついでに自分の印象を少しでも和らげるため、丸い眼鏡をつけてみたりもしていた。
「他にも、皆も知ってると思うけど、サーカスの魔種だよね。後は、盗賊をやっつけたりもしたよ」
 ルチアーノもまた、ハロルドと共に、様々な冒険を語る。語りながら、一年を振り返る。たくさんの楽しい事があって、悲しい事もあった。悲しい事は胸に秘めて、楽しい事を語っていく。
「すごい!」
 と、子供たちと一緒にぱちぱちと手を叩くシュテルン。ハロルドは苦笑して、
「お前はこっち側だろうが」
 というが、シュテルンはしゅん、とした様子で、
「でも、シュテ、まだまだ。二人、みたいに、凄く、ない」
「そんな事はないよ。シュテルンさんは、とってもお歌が上手で、僕達の冒険には欠かせない。そうだ、一曲、歌ってほしいな」
 ルチアーノの言葉に、シュテルンは、
「シュテ、お歌、歌う?」
 そう言って、静かに目をつむる。それから、穏やかな旋律が、その唇を振るわせた。それは、騒いでいた子供たちが、思わず息をのむほどに、美しい歌だった。

「せんせー、せんせーは冒険の話しないの?」
 と、そう子供たちに声をかけられたのは、文だった。子供たちと遊びながら、簡単に体調を確認していた文は、流行病の時の仕事も相まって、すっかり『お医者さん先生』と扱われている。
「んっ? そうだね、僕はどちらかというとサポート役だから、皆が望むような話は出来るかな……?」
 苦笑しつつ、文はつづけた。
「そうだね……例えば、他の国でトレーニングした話なんてどうかな。皆で一緒に無人島で食料を探してサバイバルしたりなんて事もあったね」
 文は謙遜したが、子供たちからすれば、それも立派な冒険の物語だ。数々の過酷な訓練を思い出しながら、文は思い出を語る。

「村の人たちを守るために敵を引きつけて耐えて耐えて……」
 ぐっ、とチャロロは、そこで言葉を溜めた。ごくり、と子供たちが息をのむ。その様子を見やりながら、
「ここぞ! というところで強烈なカウンターが炸裂! ようやく敵を打ち倒すことができたんだ。仲間たちみんなの協力があって、なんとか勝てたんだよ」
 子供たちの歓声が、チャロロを迎えた。チャロロは誇らしさと共に、ある種何かの歯がゆさのような物を感じたが、それを表には出さずに、話を続けた。
「そうそう、オイラは元いた世界でもヒーローみたいなことやっててね。秘密組織で街を襲う魔獣を倒してたんだよ」
「ずっと皆を守ってたの?」
 子供たちの言葉に、チャロロは頷いた。
「うん。でも――」
 不意に口をついて出そうになったそれを、チャロロは慌てて飲み込んだ。
 それは、先ほどに抱いた歯がゆさの正体だった。戦って守るだけではない。ここにいる子供たちを、本当の意味で救うには、自分はまだまだ知らないことが多すぎる。
「いや、何でもないよ。じゃあ、オイラが居た世界の話をしようか」
 そう言って、小さな勇者は笑顔を見せた。

「幻想を脅かす不吉なサーカスや盗賊達! どんな敵が相手でも、俺達は諦めない!」
 そう言ってシラスが立ち上がるのに、シラスへともたれかかっていたシオンも続いた。
「誰かがこー言ってたしね……諦めたらここで終了だって……」
 二人は構えをとると、素早く拳を繰り出した。引き戻しつつ、続いて鋭い蹴りを放つ。間近で見るその演武に、子供たちは思わず感嘆の声をあげた。
 思い出を語れば、それは本当に、物語の冒険譚のようだった。それでも、全ては確かに、自分達が打ち破ってきた現実なのだ。
「おっと、あそこを見るんだ! 悪い奴らの手先がいるぞ!」
 笑いつつ、シラスが指をさす先には、子供たちにその毛をもみくちゃにされるエイヴァンの姿があった。
「おいおい、俺か?」
 苦笑を浮かべるエイヴァン。肩をすくめてみせるが、子供たちのキラキラとした視線が次々と突き刺さる。それには、さしものエイヴァンも耐えられない物だった。
「ったく、しょうがねぇな」
 頭に手をやりながら、立ち上がる。途端、子供たちからさらなる歓声が上がった。
「おっと、2対1じゃ卑怯じゃないか?」
 と、声が上がるや、くるりと宙返りしながら飛び込んでくる一つの影。
「助太刀するぜ。俺の技の冴え、見とけ。レディは惚れるなよ?」
 不器用にウインク一つ、そういって子供たちを盛り上げるのは、サンディだ。
「さてさて、よってらっしゃい見てらっしゃい……イレギュラーズ達の戦いが見られるよ……」
 子供たちを煽る様に、シオンが声をあげる。子供たちは大はしゃぎで、各々声をあげ始める。
「がんばれー!」
「くまさん、負けないで!」
 自分達に向けられる声援。それをどこかまぶしく思いながら、サンディは呟いた。
「……俺達、今は……コイツらの『ヒーロー』でいられてんのかな」
「ふっ……見ればわかるだろう?」
 エイヴァンが、言った。
「今この瞬間は、間違いなく、俺達は英雄だ」
 ――少し前まで、俺もこの子達と変わらなかったのに。そう、胸中で続けながら、シラスが答えた。
「そういうわけだから……今日くらいは、かっこよく行こうか。幻滅されないように、ね……」
 シオンが続ける。四人はうなづき合うと、一斉に動き出した。

 子供のはしゃぐ声。英雄たちの物語。
 それを見守る様に、レイチェルは静かに部屋の隅で、煙管をくゆらせていた。
「子供たちの元気な姿……か」
 呟き、笑った。流行病の時、スラム街の多くの患者たちの診察を行ったレイチェルにとって、彼らが今は元気な姿を見せていることは、喜ばしい光景に違いなかった。
「……先生」
 ふと、レイチェルは自身にかけられた声へ、視線をやった。一人の少女が、自分を見上げていた。先生と言うのは、医者の先生という意味だろう。流行病の時の事もあるし、今レイチェルは白衣にそでを通していた。
「……なんだ、ガキんちょ。俺に用でもあるのか?」
 穏やかな声で、レイチェルが尋ねる。
「あのね、病気を治してくれて、ありがとうございました。それとね」
 少女は丁寧に頭を下げた後、続けた。
「私も、先生みたいにお医者さんになるね。それで、先生が病気になったら、私が治すからね」
 レイチェルは一瞬、硬直すると、その顔に微笑みを浮かべ、わしゃわしゃと、少女の頭を撫でた。
「……良かったな。元気になって。本当に良かった」
 少女は嬉しそうに、きゃー、と、それを受け入れていた。

●幸せな時は、いつまでも
 一方、こちらは大人達の二次会会場だ。多くの住民達が、今年を無事に過ごせたことを喜び、また次なる一年の幸せを願い、酒と笑顔を酌み交わしている。
「変わった事って言うと……ああ、そういえばクラーケンってのを食ったな。あと、トロピカルジュース……わかるか?」
「いや、全然想像つかねぇわ……トロピカルって何なんだよ……」
「なんっ……っていうかな……? まぁ、海洋みたいな、海で飲む甘い飲みもんだよ」
「砂糖水……いや、果実のしぼり汁みたいなもんか?」
「いや、もうちょっとすっきりしててな……」
 そんな中で、やはり話題の中心となるのは、みつきの話す冒険譚だろう。時に勇ましく、時にお道化て。紡がれる様々な物語は、新鮮な驚きとなって酒をすすめる。
「ん……なんだ、少し寒いと思ったら、雪がふってるのか」
 ふと目に入った窓の外の光景に、みつきが言った。スラムの町並みは暗かったが、ちらちらと降り注ぐ白雪が、それを照らすように、月明りを受けて輝いていた。
「ん……まぁ、今年も、次の年も……幸せがありますように、ってな」
 少しだけ酒を飲んで、みつきはそう言った。
 人々の笑い声は尽きることなく、その日、遅くまで響いていたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 素晴らしき、この夜に。

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