シナリオ詳細
<神の王国>壊れたアイに幕引きを
オープニング
●
色とりどりのステンドグラスが窓の役目を果たす礼拝堂。
いくつもの長椅子。前方に物々しく置かれた教壇。それから、礼拝堂の隅にあるパイプオルガン。
一番前の長椅子に、遂行者リーベは座っていた。
座した姿のまま両手を組み、祈るフリをする。
リーベの脳裏にてリフレインするのは、彼女に深く関わったイレギュラーズの言葉。
――――リーベお姉さんもこの先の人生で新しい大切なものを見つけてほしいの。
小さな聖女。子供故の傲慢さに、苛立って怒りを見せた事もある。
今はほんの少し和解している。まだ自分に生きて欲しいと願っている少女に対してほんの少し、申し訳なく思うけれど。
――――……次の茶会は、あの村でしよう、か。
褐色肌をした少女のような彼女もまた、自分の生存を願う者だ。
こんな自分でも、またお茶会をしようと思ってくれるなんて、嬉しい限りだ。
――――……次に会う時は、互いに正々堂々、正義をぶつけあおう。
輝かんばかりの生命力に溢れた赤き瞳の娘。自分の生存を願った少女は、自分の覚悟を感じてくれたのか、そう言ってくれた。
感謝と同時に、少しの罪悪感が心にチクリと刺さる。
――――いつか貴女の正義が俺とぶつかる時には……戦おう。
音楽を愛する男との、戦う約束。
村の者や信者へと遺す言葉を請け負ってくれた事に、少しだけ申し訳なく思う。
――――リーベと出会った事そのものは、決して間違いではないと思うのです。
大柄で仮面を着けた女が言ってくれた言葉は、リーベに驚きをもたらした。
間違いではないと言ってくれたのに、戦わせる事になった事が、少しだけ心苦しい。
――――形 違エド 彼ラニ リーベ救ワレタ。リーベ 君達 救ッタ。 ソレデ イイト 思ウ。
巨人の言葉はリーベの心を少し軽くしてくれた。
否定ではなく肯定をしてくれた事が、どれだけ心に沁みたのか、かの巨人は知っているだろうか。
――――救いになるかはわからないですけど、以前行った村は気に掛けたいと思っています。世界が存続するのなら残っていた方が『救い』になるでしょう?
片目隠しの男が、あの村の事を気に掛けてくれると言った言葉を信じている。
ああ、本当に。友として隣に立てたなら良かったのに。
――――ローレットである限りどうやっても魔種を、お前や母さんを殺すことでしか救えないってんなら。辞めてやるよ、ローレット。
あれほど感情を揺さぶられた言葉を知らない。
傲慢な医者に、自分を最期まで見て欲しいと願ってしまった。それが残酷な事だと分かってはいるけれど。
「リーベ」
礼拝堂の入口から呼ぶ声がした。
振り向けば、一人の女が立っていた。少し痩せている体に、控えめな胸。身長はリーベよりは少し低い。
故郷の村では一番の親友で、リーベの作る忘却の薬を十年近く飲み続けて、そして、自ら命を絶った人。
この理想郷で、リーベが最初に願ったのは彼女だった。あの頃と変わらぬ笑顔で笑い合いたいと願って、その結果、ここに立っている親友。
けれど、あの時とは色々と変わってしまった。
分かっているのだ。彼女はかつての彼女と同位体ではないし、自分は人間ではなく魔種となっている。もうあの頃のように純粋に笑い合える二人ではない。
『仮に私が生まれたとして。この辛さも幸福も持たないなら、それは私ではないです』
仮面の女の言葉が思い出される。今になって、彼女の言葉を実感してしまうなんて。
「トラオア……」
「大丈夫? あたしに何か出来る事ある?」
瞳には純粋な心配が宿っている。
彼女の質問に、リーベは「大丈夫よ」と柔らかく微笑んだ。ちゃんと笑えている事を祈りながら。
トラオアが礼拝堂の中に入ってくる。リーベの前に立つと、彼女は迷う事なく抱きしめてきた。
「……あたし、あなたの支えになりたいの」
その言葉に、喉の奥が詰まりそうになった。
「……今でも、十分支えになってるわ」
震える腕で抱きしめ返して、そう絞り出すのが精一杯だった。
かつて、壊れそうだったのは故郷に居た時のトラオアだ。あの彼女を支えようとして、結果、どうなったのかは苦い記憶となってリーベに強く残っている。
(皮肉ね)
あの時彼女は自分を置いて逝き、今度は自分が彼女を置いて逝く。
「トラオアは村に戻って。いい? 絶対にこっちに戻ってきちゃダメよ」
「わかった」
頷いて去って行く背中を無口で見送る。
(ねえ、トラオア。私ね、思うのよ)
口には出来ない言葉を胸の内で思いとして呟く。
(私の最初の罪は、貴方に薬を与え続けた事なんじゃないかって)
壊れそうな心を繋ぎ止める為に開発した忘却の薬。それを十年近く続けた事が、リーベの最初の罪ではないかと、最近特に思うようになった。
「ごめんなさい」
彼女に届かぬ謝罪の言葉を口にして、深く息を吐く。
ローブの内側に隠し持っていた円柱の容器を取り出す。蓋付きの容器の側面には彼女の掌に刻まれた聖痕と同じ模様が描かれている。
この中に入っている物で、イレギュラーズとの最後の戦いに臨む事になるだろう。
『あの方』――――ルスト様に従って、自分はここまで来た。
彼等と戦う事を心苦しくないかと問われれば、否と答えよう。それほどに、イレギュラーズに対して情を抱いてしまった。秘する想いすら抱くほどに。
ローブの内側にしまっていた薬剤の中から、もう一つ、今度は小瓶を取り出す。小さな香水瓶のようなそれに刻まれた模様は、髑髏マークのみ。
「……最期に苦しむのは、嫌だものね」
彼等の傷を受けて死ねば、彼等の心に傷として残るだろう。
それならば、傷を受けても自分で死ねば、まだ彼等に傷を遺さないで済むだろうか。
ローブの内側にそれを隠して、立ち上がる。
きっと、死ぬ時は孤独に死ぬだろう。生きていてもそばに居てくれる人は居ない自分だ。死ぬ時にもきっと、一人だ。
少しだけ寂しい気持ちを抱えつつも、目には決意を抱いている。
そして、イレギュラーズを迎え討つ為に、彼女は礼拝堂の入口へと靴を慣らした。
●
イレギュラーズはトラオアに道案内をされていた。
リーベは礼拝堂に居ると教えられたものの、場所が分からないという彼らを案内していた。
ここから先は一本道であろうという道に出て、トラオアは振り返り、道の先を指差す。
「このまま真っ直ぐ行けば礼拝堂です。自分の言葉を信じてくれればですが」
「信じるよ」
真っ先に肯定するイズマ・トーティス(p3p009471)の言葉に、ホッとしたような顔を浮かべるトラオア。
キルシェ=キルシュ(p3p009805)は、少しだけ心配そうな顔で彼女を見上げた。
「トラオアお姉さんは、どうするの?」
「自分は、村に戻ります」
「リーベを見なくていいんですか?」
「村に戻るよう、言われたんです。決して礼拝堂に戻ってくるな、と」
割って入った水月・鏡禍(p3p008354)の質問に、トラオアはゆっくりと話す事でリーベの言葉を強調して返す。
「それは親友として正しいんですか」と言おうとしたのを飲み込んだのは、雨紅(p3p008287)が彼の肩を叩いたからだ。
首を横に振る彼女を見て、飲み込んだ言葉の代わりに嘆息を零した。
お礼を述べて道を進む。
進みながら、雨紅は答えを求めている訳ではない言葉を呟く。
「……リーベは、彼女を巻き込みたくないのでしょうね」
不器用な彼女なりの優しさが変わらない事に、少し、安堵した。
その胸の内を言えば、この場の何人が同意してくれるだろう。
トラオアに教えられた通りに進めば、なるほど礼拝堂らしき建物が見えてきた。
その手前、結婚式の会場にも出来そうな程の大きさの広場に、物々しい様子の騎士達が見えた。
リーベ教の騎士はもう居ない。だから、アレは違うと分かる。何故なら彼等は全て馬に乗っていたからだ。リーベ教の騎士は全てが歩兵であったので、よく覚えている。
先の戦いにも見かけた事のある白く輝く甲冑姿の騎士。先の戦いで倒した筈だが、別の個体か。レイピアを持つ物の多さよ。
もう一つ、別の色があった。青い色をした甲冑姿。ロングソードを腰に下げているのも居れば、それに加えて弓矢を番えた者も居る。
整列するように並ぶ彼等の奥に、女の姿を見つけた。白いローブを纏い、スリットのある服からは艶めかしい足を覗かせて、フードを外した顔を見せる。茶の双眸に狂気を若干滲ませて、女は――――遂行者リーベは薄く笑った。
「いらっしゃい。漸く来てくれたわね」
「ああ、来てやったぞ。お前の望み通りに、な」
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の青い瞳が真っ直ぐにリーベを捉える。目をそらす事もなく、受け止めるリーベ。
彼女の近くで、結月 沙耶(p3p009126)が問う。
「出来れば戦いたくはないが、リーベがそう望むなら、戦おう」
「フリックモ 同意。 リーベ 迷イハ 無イカ?」
「いいえ、全く」
フリークライ(p3p008595)の問いにも、彼女は揺らぐ事無く返す。そこに、意志の強さを見る。
杖を握りしめて、松元 聖霊(p3p008208)が名前を呼ぶ。
「……お前、生きたいんじゃねえのかよ。なんで生きる事を諦めるんだよ」
彼女は頑なに助けを望む言葉を言わない。心の中で助けを求めても、口には上らせない。
代わりに「死で救ってくれ」とほざくのだ。
「言えよ、『助けてくれ』って! そうすりゃ俺は!」
「駄目よ!!」
力強い制止の声に、彼の唇が止まる。
微笑み、揺れる茶色の瞳には諦念が宿っていて。
「分かるのよ。私はもう、ここで終わりだって。これ以上生き続ける事が出来ないって、分かるの。
だからね、もしも死ぬのなら、貴方の――――いえ、貴方達イレギュラーズの手なら、って思っているわ」
ローブの内側、それも左手側の方を握るような動きが見えた。その中に、何があるというのか。
右手側のローブの中からリーベは一つの容器を出した。リーベの掌に描かれた聖痕と同じ模様が、円柱の容器に描かれている。
透明の容器の中には水が入っており、更にその中に沈めている物が見えた。
「……何、あれ?」
少し青ざめた顔のキルシェの疑問は尤もだ。
何かを切ったような、ピンク色の物体。知らなければグロテスクに思えるだろう。少女には刺激が強すぎた。
キルシェの疑問に答えたのは、聖霊だ。彼には馴染みのある物だった。医者であれば知らぬはずもない、その物体は。
「心臓だ」
その言葉に、誰もが表情を険しくする。フリークライだけ表情が変わらないけれど。
イズマが問う。「それは誰の心臓だ」と。
嫌な予感はした。そうであってほしくないと願った。
だが、願いは裏切られた。
「私のよ。これは、半分に切った私の心臓」
蓋を開け、中からそれを取り出す。優しく手で包みながら、彼女は冷ややかな目でイレギュラーズを見つめる。
器用に蓋を閉めて、容器を足元に置く。空いた手から細長い黒の砲撃が撃ち込まれた。
「今まではこうして攻撃する事は出来なかった。けれど、今なら出来る。
今ここで、どちらの歴史を残すのか、決着をつけましょう。
私は遂行者リーベ! 『正しい歴史』を望む者!
さあ、戦いましょう、お人好しにして傲慢の者達よ!」
- <神の王国>壊れたアイに幕引きを完了
- 愛(リーベ)に終わりを
- GM名古里兎 握
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年12月21日 22時06分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●きっと、それは避けられなかった
白騎士と青騎士、そして奥に見える遂行者リーベ。
礼拝堂を背にして立つ彼女の手には半分に切られた心臓。
先程の黒き砲撃を目にして、優先順位の一位を彼女とする認識に至るイレギュラーズ。
「リーベに行く道を阻むだろう騎士達が邪魔だな。私は白騎士の抑えに回ろう」
「なら、僕が青騎士の抑えに行きます。周りを見渡せる事に長けていますから、何かあれば念話しますよ」
『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)と『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)の申し出はありがたい。
二人を支援する役目を、『薔薇冠のしるし』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が名乗り出る。
「では、マリアが、二人を支援しよう」
「助かる」
「回復 足リナイ時 フリック 任セル」
「頼もしいな」
『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)の申し出に短く答える。今は少しでも時間が惜しい。
リーベに向けて前進するイレギュラーズへ、馬に乗った白と青の騎士達が近付いていく。先頭に立つ彼等騎士達を、鏡禍の炎が焼かんとする。広範囲で燃え上がる炎は、範囲内に居る仲間達に及ぶ事は無い。
それでも挑まんとする白騎士の一人が、『聖女の傲慢』キルシェ=キルシュ(p3p009805)に向けてレイピアを振り抜かんとするのを、沙耶が防ぐ。
「お前達の相手はこの私、結月 沙耶だ! お前達を倒す者の名を覚えておけ!」
不敵に笑ってみせてから名乗った彼女へ注がれる、騎士達からの怒りの視線。
白騎士の数は八体。これらを一人で相手するのは骨が折れる事だろう。だが、永遠にという訳ではない。リーベを片付けたら援軍となって仲間達が来てくれる。
それを信じて、沙耶は己の持つ力を解放させた。
鏡禍もまた、同じ思いで、青騎士を睨みつけた。
そんな二人を護るべく、エクスマリアもまた、位置取りに注意しつつ支援の手を用意する。
三人が踏ん張る中で、『音楽家の覚悟』イズマ・トーティス(p3p009471)が「リーベさん!」と叫ぶ。
「改めて、名乗ろう。
俺は青き鋼の音楽家、イズマ・トーティス。貴女の心の安寧を望む者だ。
……やっと約束を果たす時が来たな」
「そうね。やっと、だわ」
片側の口角を吊り上げて、リーベは最初に示したものと同じ黒き一撃を放つ。左右に分かれたイレギュラーズがそのまま互いの距離を広げていくのを見て、彼女は次の準備に移る。
「はじめまして、遂行者リーベ」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が聖なる杖を掲げる。
「あなたの想いに応える為にも全力で戦わせて貰うね。正しい歴史を手繰り寄せる為にも!」
振りかざした杖より放たれた魔力の技はリーベに命中し、怒りの視線がスティアを射貫く。
心臓を持っていない左手を横に薙ぐ。彼女を中心とした円状の炎が燃え上がり、イレギュラーズを焼こうとする。
『いつか殴る』Lily Aileen Lane(p3p002187)は、走る足の先で触れた炎に思わず足を引っ込めるも、それ以上は何も発生せず、一歩前に進み出る。
リーベの眉間に皺が寄る。思っていた効果がLilyに与えられなかった事が気に入らなかったらしい。
(私は、リーベさんを救いたかった……)
しかし、それは無理であると、彼女の様子や表情から悟ってしまった。
であれば、自分がこれからすべき事はたった一つ。
(なら、せめてもの手向けに、私はリーベさん、貴方をちゃんと、安らかに眠らせたい)
金色夜叉の名を冠した獣面をつける。そして、薊の名がつけられたパイルバンカーを構えた。
攻撃よりも先に、仲間の傷が再生する為の力をと、前線を行こうとするイズマと『紅の想い』雨紅(p3p008287)へ最優先に与えていく。
遂行者の名前を声高に叫ぶ声がした。リーベが声のする方を見ると、『不屈の君』松元 聖霊(p3p008208)が杖を持って彼女を見据えていた。
「先にこの前の話をちゃんと話しておく。
俺がローレットを辞めてやるって言った時、お前は目を逸らしてるって言ったけどな、俺は本気だったぜ」
リーベの心臓を持つ手が一度だけ小刻みに震える。
「お前を生かすことはローレットへの裏切りになるし、ローレットは裏切るつもりは無いがお前は生かしたいなんて、お前にも不誠実だろ。
だから『ただの医者』としてお前を治したかったんだよ。
傲慢とか不可能だとか言われたとしても、関係なかったんだ」
今、ほんの少し、再会した父の事を理解してしまった気がする。
魔種になった母を原種に戻す為にと、人に危害を加える事を厭わない父にショックを受けた。自分はそんな危害を加える真似はしたくない。だが、どうしても治したい。
その気持ちだけは、今、僅かながらも理解してしまったのだ。
いくら言葉を並べようとも、「生きたい」と言った目の前の女を治したかった。それが、聖霊という医者だ。
「そう。……ごめんね」
寂しげに笑った顔を見て、やっぱりな、と思う。
(……ま、仮に俺が本当に医神で魔種を救う技術を持ち合わせていたとしても、患者本人が治療を拒絶し続けたら、こうなるよな)
胸が、痛い。力不足を痛感する。
「……寂しがりの馬鹿娘がよ」
小さく呟いた言葉は、決して彼女には届かない。
感傷に浸る暇など無いと言わんばかりに、リーベの手が動く。再び燃え上がった紫の炎を回避するが、僅かに触れる。それでも雨紅は一歩を踏み出した。
炎より受けたものが身を蝕む。毒であると理解して膝をついた直後、空から降り注いだ流星が、彼女の身を蝕むモノごと癒した。
もう一度、立ち上がる。倒れるわけにはいかないのだ。
彼女を殺す覚悟はしていた。それでも辛い事に変わりはない。
助けたいと思う気持ちもある。でも、今更なのだ。きっと、もう、全てが手遅れで、だからこそこれ以上彼女に命を背負わせたくない。
斃れてはいけない。その方がきっと彼女には辛いだろうから。
だから、立つ。忘れたくない、忘れられない、彼女の為にも。
「あの時の言葉通り、願いをかけて戦います」
戦神の『武』と『舞』を背負う槍を持って構える。
これは、互いの願いを賭けた戦いなのだから。
「戦神の舞、披露いたしましょう」
さあ、とくとご覧あれ。
今より魅せるは、戦を厭い、舞に焦がれ、約束の為に戦に戻った女の舞だ。
●貴方一人に背負わせはしないから
雨紅を含めた、リーベに対応する者達に力が注がれる。これで、回復だけでなく攻撃する力も強化されたはずだ。
リーベの黒き砲撃がイズマを狙う。隠しもしない殺意が彼を襲い、それを甘んじて受けた。
イズマが彼女の注意を引いている間に、少し離れた位置からスティアの攻撃が飛び、肉薄している雨紅の槍がリーベを狙う。
彼女の方も回避するなどして直撃を避けているものの、戦い慣れしていないのは足の運びから分かる。
だいぶ傷が増えてきた彼女が数歩後ずさる。彼女の後方には、いつの間にかキルシェが回り込んでいた。
「……ごめんなさい」
彼女に生きて欲しかった。けれど、その為に誰かの命を犠牲にした奇跡を起こす事など出来ない。死を受け止め続けて、もう彼女は限界である事をわかってしまったから。
「ルシェたちは、私たちは、リーベお姉さんの命を、未来を、選べません。
その代わり……リーベお姉さんの心だけは、守らせて下さい。
これが私の選んだ事。私の傲慢です!」
小さな聖女が認めた傲慢。
リーベの目が開く。それほどにキルシェの言葉は意外であったのか。
「回復を、させません!」
キルシェが施した封印の印。宣言通りのものを封じられ、リーベの顔に焦りが生じる。
紫の炎を繰り出してイレギュラーズから距離を取るリーベ。
そこへ、Lilyが懐に入ってきた。低空飛行で戦場を自由自在に駆ける彼女の拳を腹部で受けて、彼女の身体が空中で一回転する。
キルシェを狙う白騎士をイズマが武器を振るう事で押しやり、沙耶が自身と聖剣を輝かせながら騎士に一太刀を確実に浴びせていく。
聖剣を振りながら、沙耶はキルシェの傲慢たる言葉を己の中で反芻する。そして、自覚ある自身の傲慢を、言葉としてリーベにぶつける。
「ああそうだ私達は傲慢だ! ずっとリーベを助けてあげたいと願ってたからね!
魔種だろうとなんだろうと関係なく、生きたいと願っていたから!」
(けれど、君はもう『決死』の覚悟を決めたのだろう?)
目で分かる。それは確かに、死を覚悟しながらも立ち向かう者の目だった。
(ならば、それに私は応じよう。……それがリーベと向き合ってきた私の『責任』だ)
それを果たす為にも、白騎士を相手する。少しでも早く終わらせたかったから。
リーベの攻撃を受けつつも反撃をする仲間へとフリークライが回復を施す。
「倒レヌヨウ 気ヲツケテ!」
「「ありがとう、フリックさん」」
異口同音で述べられたイズマとスティアからの礼に、大きく頷く。巨人の身体に対抗できるとしたら青騎士ぐらいだろう。実際、一人がフリークライに斬りかかろうとし、それを鏡禍が守る為に横から入った。
彼の放つ炎が青騎士を包む。馬から落ちた騎士が地面を転がり、そこへ鏡禍は更に乱撃を加えた。薄紫の霧が、騎士の鎧を殴打の音を立てて凹ませる。
今この戦場を誰よりも一番把握しているのは彼だ。彼方此方へと視線をやり、戦場の動向を確認している。騎士達の動きだけではなく、リーベもそれに含まれていた。
キルシェによって回復する機能を封じられている彼女が立ち上がるのが見えた。ローブへと手を伸ばそうとする彼女の動きに気付き、鏡禍は迷わず念話で仲間に連絡する。
『リーベさんの手をローブに入れさせないでください!』
『わかった!』
イズマが即座に動き、細剣のポンメルでリーベの手を弾くようにして下から打つ。手から落ちたそれを雨紅が拾い上げると、離れた所へとぶん投げた。
香水瓶のような物だった。チラリと見えた、髑髏マーク。それが意味するものはたった一つ。
「自死しようとしましたね、リーベ?」
振り向き、問う。
沈黙は、答え。
自分可愛さに自死を選ぼうとしたわけではないだろう。大方、イレギュラーズの手で自分が死ねばその罪を背負わせてしまう。それをさせたくないという、彼女なりの優しさだ。
それを理解したイズマの胸の内で渦巻く、ある種の怒り。
「俺は一生忘れられない程に傷付く覚悟で来たんだ、それは要らない。最期くらい我儘にやろうよ」
これは互いの願いを賭けた戦いなのだ。なればこそ、そんな結末は許さない。
イズマに答えぬリーベの頭に、鏡禍の声が響く。
『馬鹿にしないでください。
僕は妖怪です、妖怪が分からずとも人の恐怖や悲鳴を糧に生きてきたんです。
そんな僕が死に向き合えないほど弱いとでも? 気に病むとでも? 貴女の見てきた僕はそんなに弱いですか?
貴女を一人で逝かせてしまったら信じてもらえなかったのかと、向き合わせてもらえなかったのかと、悲しく、よっぽど傷つくでしょうね』
念話といえど、怒りが滲み出ているのは向こうにも伝わっている筈だ。
リーベの唇が嚙むのが見えたから。
伝えたい言葉を紡ぐ。本心よ届けと、願う。
『向き合わせてください、隣に立てなかった友として。
最初で最後のお願いです』
小さく頷くのが見えた。
鏡禍には、それで十分だった。
離れた位置から彼等の様子を見ていたエクスマリアは回復の支援を行なっていた。
白騎士を相手する沙耶の怪我を癒しながら、彼女も言いたい言葉を口にする。
「マリアは、死が救いとも、歴史が間違っているとも、思いはしない、が。
それでも、お前が最後まで全力で生きた、と。そう言えるように、決着を着けよう」
「…………ええ」
少しの間の沈黙の後に答えたリーベの声は漸く聞き取れる程度であったが、それで十分伝わった。
決着を望む複数の声を聞きながら、聖霊もまた、己の考えをリーベへと伝えんとする。皆と違う彼の考えを。
「周りがどう言おうと、俺は生と死を選べる状況で死を選ぶこと、選ばせることを救いとは思えない、思うつもりもない」
彼女の信条を否定する。
『死は救いである』だなんて、そんな事、決して認めはしない。
「だから今から俺がすることは殺人だ、救いなんかじゃない」
二人で過ごした時間の中で、彼女が望んだ「生きたい」の言葉を聞いてしまったあの時。生きたいと思うなら生きて欲しいと願った。その為ならば尽力しようと。
けれど、彼女は拒否した。自分の運命を悟り、諦めて、「死で救って」などと語って。殺す覚悟、殺される覚悟、死ぬ覚悟も全て持っていると強がる女の言葉が、脳裏で繰り返す。
『医者なら、最期まで私を見つめてよ、松元 聖霊!!』
己は医者である。故にこそ、最期まで見届けよう。けれど、それが救いなどとは決して思いはしない。
(それを救いだって俺の中で正当化しちまったら、俺は本当に終わるんだ)
揺らぎたくない。医神を目指す医者の自分を。
だから、否定する。彼女の信条である『死は救いである』というものを。
目の前で、リーベの身体がスティアの攻撃を受けて地面に転がっていくのを、唇を嚙みながら見ていた。
イズマが弾いた彼女の手から、心臓が落ちた。
●別れの為に出来る事を全て
Lilyの持つ妖精の木馬にリーベを乗せようとしたのを制止したのは聖霊だ。
彼曰く、「移動の為に動かせば身体に負荷が掛かって余計に寿命を縮める。瀕死の体なら尚更だ。医者として容認できねえ」との事。
ならば医者である彼にリーベを見てもらうという事になった。
浅い呼吸を繰り返す女を無理ない範囲で、上体を起こさせ、抱きかかえる。
残るは白騎士と青騎士で、沙耶が白騎士を数体倒してくれたおかげで、他のメンバー達も動きやすくなっていた。
当の沙耶も傷だらけではあったが、大半の傷はエクスマリアが癒してくれたおかげで見た目もそこまでひどくは無い。
自分で自分を回復したLilyのパイルバンカーが白騎士が乗る馬に命中する。嘶いた馬が立ち上がった事でバランスを崩した騎士が落馬し、スティアの聖なる刃が鎧を貫く。鉄の臭いが鼻をついて、けれど気にはせずに彼女は次の標的へと切り替える。
「鏡禍さん、待たせてすまない!」
「お待ちしてました」
傷を癒してもらっているとはいえ、体力の消耗は避けられない。
青騎士の攻撃をあえて受け、強力な反撃を当てにいくイズマ。
無茶をするなあと思うが、癒し手が居るからこそ出来る無茶もあるというもので。
薄紫の霧が馬を襲う。嘶く馬をどうどうと鎮めようとする使い手に、イズマの泥が当たる。視界を漆黒で染め上げたそれに青騎士の身体が落馬し、そして兜の隙間から細剣が突き立てられた。
何度やっても慣れぬ肉の感触。
だが、悠長にはしていられない。リーベと話したい事があるのだ。早く戻らなければ。
その思いで、彼は他の騎士達に向けて足を踏み出した。
騎士に狙われやすくなっているのは、見た目が子供であり、まともな攻撃手段が無いと思われているからだろうか。
キルシェを狙う白騎士の剣を、雨紅が槍を使って跳ね上げ、軌道を逸らす。
一瞬だけバランスを崩したものの、すぐに体勢を立て直す辺り、簡単に倒せる相手ではなさそうだ。
「キルシェ様、お怪我はありませんか?」
「大丈夫よ。ありがとう、雨紅お姉さん」
「……少し、くすぐったいですね」
お姉さん、という響きが慣れないせいか、若干のむずがゆさを覚える。
「私も、戦います」
先程リーベと戦う意思を見せた少女は、騎士相手にも臆さない。
極小の炎は花吹雪のように舞い、白騎士と馬の身体に襲いかかる。その舞う動きに合わせるように、地面を強く蹴り、兜と鎧の隙間に一撃が入る。
あれ程厭うていた戦いの場を舞う自分が不思議なものだ。けれど、この、敵に刺す瞬間は、やはり、どうしても好きになれなかった。
返り血を浴びぬように下がり、キルシェを連れてその場を離れる。乗り手を喪った馬は、嘶くやいなや、いずこかへと走り去っていった。
フリークライが二人を呼ぶ。癒やしの技を受けて、二人は礼を言う。
「ン 無事デ 良カッタ。無茶ダケ シナイヨウニ」
「ええ、気をつけるわ」
にっこりと笑うキルシェは花のよう。
さて、と他のメンバー達を見る。早く援護をしなければ。
視界に入るエクスマリアの姿。彼女は石化を騎士に与え、重さに耐えきれなかった馬が鳴きながら倒れるのを見ていた。
沙耶の聖剣が鎧を貫き、命を奪う。
仲間達の連携は実に見事だった。それは、早くリーベの元に行きたいという思いが強かったからなのかもしれない。
きっと、これが、彼女の最期を見届ける機会であるはずだから。
●手繰り寄せたのは
白騎士も青騎士も全て倒した。その結果としてイレギュラーズの誰もがボロボロだったが、傷がそこまで目立たないのは回復手の者達が尽力した故だ。
「リーベ!」
エクスマリアをはじめとした者達が、礼拝堂の前で聖霊に抱き起こされる形で鎮座しているリーベの名を呼んで駆けつける。彼女もまたボロボロの姿で、そして、呼吸を浅く繰り返している。
ただ一人、鏡禍だけが離れた所に移動し、そして地面に転がっている物を拾い上げた。
手の中で鈍く光る、香水瓶のような容器。それは先程の戦闘で彼が仲間に指示を出し、雨紅が叩き落とした物だ。
それを一度握りしめる。これから己がする事を仲間達は非難するかもしれない。それを甘んじて受ける覚悟で、彼は足をリーベへと進めていった。
大半が屈んでリーベに声を掛けている仲間達をかき分けて、彼は容器をリーベに見せた。
「リーベさん、これは、毒薬ですね?」
その言葉に、雨紅がハッとした顔になる。
以前、村で騎士に聞いた話を思い出したからだ。
『苦しまず穏やかに、眠るようにして亡くなったよ』
それが、鏡禍が今手にしている物――――リーベが先程の戦闘で自死に使おうとしていた物なのだろう。
「……ええ。遅効性、だけど、っ……それ、でも……貴方、達と、話す時間、ぐら、いは……あると、思うわ、よ」
浅い呼吸を繰り返しながら、絶え絶えに言葉を紡ぐリーベを見下ろし、鏡禍は短く「そうですか」と呟いた。
そして彼はリーベの前で屈むと、彼女の口を無理矢理開かせて蓋の開けた容器の中身を流し込んだ。そして喉を通るのを確認する。
あっという間の出来事に、傍に居た聖霊すらも止められず。
「鏡禍! お前!」
「これで!」
聖霊の咎めるような声を止めるように、声を張り上げる。
「あなたは自死したわけじゃない。僕に殺された事になるんです」
真剣な顔の鏡禍に、聖霊はそれ以上の言葉を紡げず、唇を閉じる。
彼女の信念である「死は救いである」に従った訳ではない。その信念を否定するわけでもない。
生きたところで希望がもう見えないのなら、迷惑をかけるのなら、死んだ方がきっと心が穏やかであると、そう考えたからなのだ。そして、その役目を背負うなら妖怪である自分が適役だろうと思った。普通の生物である者達よりも普通では無い自分には、普通の生物とは違う価値観があるから。
胸に苦しみは無い。罪悪感も無い。あるのは寂しさのみだ。
「向き合わせてください、隣に立てなかった友として、最初で最後のお願いです」
先程念話で彼女に語りかけた言葉をもう一度、今度は皆の前で口にする。
リーベが微笑む。
「……ありがとう。それ、から……罪を、背負わ、せて……ごめんなさい」
静かに首を横に振る。彼の覚悟に、仲間の誰からも非難する声は上がらなかった。
先程から感じる彼女の不器用な優しさに触れて、スティアの唇が開く。
「貴女は遂行者となるには優しすぎたんだね……」
きっと、戦う前から答えは決まっていたのではなかろうか。
彼女の望む『正しい』歴史とは、自分達イレギュラーズが歩む『正しい』歴史を望んでいたのではないいかと。
本人が聞けば否定はされるだろう。だが、少なくてもスティアはそう感じたのだ。
スティアの言葉に同調するように、沙耶が頷く。
「私達を『お人好しにして傲慢の者達』と評するけれど、それは君もだろう、リーベ。あの村に住む人々の多くを助けた君もまた、『お人好しで傲慢』ではないのか?」
「ふふ……否定、出来ない、わね……っ」
身体に痛みが走るのだろう。時折呻くような声を出すリーベに、傷を癒す事すら出来ないのがもどかしい。
仲間達とリーベの様子を見て、聖霊が唇を強く結ぶ。
「リーベ」
視線が、彼を捉える。何かの覚悟を決めたような顔をしている彼を見て、彼女が息を呑む。
仲間達に緊張が走る。彼は何かをしようとしている。可能性としては、一つの事。
だが、もしも彼女を生かすつもりでいるのならば、一人では成し得ぬ筈だ。過去に、一人ではなく複数で行なったという事例があるだけに、彼が何を願うのかが分からない。
「俺は中途半端だ。お前を生かす、生きる希望を抱かせるって決めたのに出来なかった。
お前を助ける為に仲間を危険に晒す度胸も気概もねぇ」
もしも、仲間を危険に晒す事無く、自分一人の命で済むのなら、迷い無くそうした事だろう。だがそれで命を落とした場合、彼女が泣くのは容易に想像出来たし、何より彼女がそれで笑顔になる筈もないと分かっている。
それに、大事な患者である友人達の目にも涙が浮かぶのだろうな、と思った。
「だからこれはお前を『生かす為に願う訳じゃない』。
少しでも痛みや苦しみが無いように、和らぐように、俺の可能性(パンドラ)とやらをお前に分けてやる」
そう言って微笑む聖霊の顔を見て、リーベの目が瞠る。
瞬間、彼女を包む白い光。
それは、積み重なった縁が、医師としての矜持が、彼女の最期を見守る意思が、蜘蛛の糸ほどの細い奇跡を手繰り寄せた小さな奇跡。
光が収まった後、リーベは自分の身体を蝕む痛みが和らいでいるのが分かった。
癒された訳ではない。毒を飲んだ事実が覆された訳でもない。痛みや苦しみを緩和した、ただそれだけ。
ただそれだけの事なのに、この男は――――
「馬鹿じゃ、ないの……。私、なんかの為に、奇跡の力を使う、なんて……!」
震える声から伝わる感情は呆れたような、悲しいような、ごちゃ混ぜのもので。
泣きそうな顔をする彼女に、聖霊は微笑みで返す。
「これで少しはあいつらと話すの楽に出来そうか?」
こくり、と頷いたのが彼女の返答だった。
彼のした事を見守っていたイレギュラーズの中で、フリークライが安堵したような声を出す。
「聖霊 本当 突拍子モナイ事 スル。
ケド 死ニソウナ様子ナイ 良カッタ」
「はは……ま、なんとかな」
フリークライは、もしも誰かが命を代償に奇跡を起こそうものならば、その死に際を黙って見ているつもりはなかった。それはリーベの心を守れないと分かっていたから。
故に、もし誰かが死に瀕しそうな時は己の可能性を分け与えるつもりでいた。結局の所、それは無用になったし、杞憂で済んで良かったのだが。
(我 命カケルハ 主ノ為ノミ。サレド我 墓守。死者 心 護ル者。
リーベ 死後 心 救ワレナイ結末 拒否)
少しでも彼女と関わったからこそ、彼女の心を護りたかった。せめて心残りなく安らかな死である事を願うのだ。
その願いを叶えたのが、積み重ねてきた縁によるものならば、感謝せねばなるまい。
「リーベ。コレガ縁。
君ト フリック達 紡イデキタモノ。
君トノ縁二感謝ヲ。アリガトウ」
「こちらこそ、ありがとう。私の心を護ろうとしてくれたなんて、本当に、素敵な墓守ね。
フリックさんは、素敵な主のおかげで、こうして護れるようになったのね」
もしも彼に表情というものがあったのなら、目を瞠っていただろう。
「ソウ フリック 主 最高ノ主」
誇らしい想いが、心の中に満ちている。
聖霊のおかげで少しでも彼女が話しやすくなった事が分かり、彼女と話したい者達が順に声をかけ始める。
エクスマリアが彼女の名前を呼んだ。
「なあ、リーベ。もう一度、言おう。お前が間違った歴史と呼ぶ、その歩みがあったからこそ。
マリアはリーベと出会えたと、そう思う。
マリアはお前を友と思っている。……思っても、いいか?」
「ええ……。私も、思っているわ。
マリアさん、次に私が目覚めた時は、またお茶会に誘ってくれる?」
次なんて無い。誰もが分かっている。
それでも。
「ああ、次は、楽しいお茶会に、しよう」
真剣な顔で頷いて、それにリーベの顔が綻ぶ。
彼女の笑顔に胸の苦しさを覚える。
その苦しみは彼女だけではなく、雨紅にもあったが、どちらかというと、今彼女の感情の半分を占めているのは怒りであった。
「正直、冠位にあなたが鉄砲玉扱いされてるのも気に食わないのですよね!
あなたとの別れが終わったら、あちらぶん殴ってきます!」
彼女を友と呼んで良いのかは分からない。
だが、冠位魔種であるルスト・シファーが彼女を蔑ろにしている事実が、たまらなく嫌で、怒りを覚えて。
拳を握りしめて息巻く姿に、リーベの目が瞬き、それから柔らかく笑った。
「優しい人が怒ったら怖い、って話は本当ね」
「……こんなに自分自身の感情に突き動かされることなんて、滅多にないのですよ」
自分は秘宝種。それも戦闘用に作られた物。
自我なんて、召喚されてから漸く目覚めたようなもので、己はまだそれに振り回されてばかり。
「私はこの出会いで、辛いも楽しいも多く得た。
間違いじゃないって、そうであって欲しいって、今でも思います」
己が感情を作る経験は、確かにこの身に刻まれている。彼女との出会いもまた、自分というものを確立させる為に必要なものであると、思う。思いたい。
「雨紅さん」
名前を呼ばれて、茶色の双眸と視線がぶつかる。
「私、貴方の事好きよ。友と思っているし、何より……」
一度区切り、言葉を選ぶように逡巡してから、再び口を開く。
「私の知っている『自分が無い』遂行者よりも、しっかりと『自分がある』のだもの。そういう所が、好きなのよ」
おそらくはウインクをしようとしたのだろう。だがうまく出来ないというかあまりやった事がないのか、ギュッと両目を瞑るような形になってしまった彼女。
恥ずかしそうに笑う彼女につられて、雨紅の口角も少しだけ上がった。
ほんの少し緩んだ空気の中で、イズマがリーベの名前を呼んだ。
「黒が白に戻れないのは魔種と純種の事だけではないよな。
親友を死なせた罪と教祖としての行為が、どう足掻いても貴女の中から消せない。
貴女は責任感が強いから忘れる事もできず、故に黒いまま。
そういう意味もある、という事で合ってるか?」
「……ええ」
「やはりか……。……そんなの辛いに決まってる」
「あら、同情?」
「違う、かな。どちらかというと、慰め、だな」
「慰め?」
「ああ。これでやっとリーベさんが休めるなと、そう思ってさ」
彼は彼女を気遣っていた。
兼ねてから戦う事を約束し、彼女の思いや信念を理解していた。
だからこそ、彼女を一人で死なせないと、思っている。
「トラオアさんも信者も村人も、後の事は心配いらない。
遺す言葉は伝えるし皆の幸福も願うよ」
「ありがとう、イズマさん。……お願いね」
「ああ」
かつての約束。あの村に伝える遺言を担うメッセンジャーを自ら申し出た彼に、言葉を託したのはリーベだ。
きっと彼なら伝えてくれるだろうという信頼感が彼女から伝わってくる。
Lilyが進み出て、ある物を差し出した。
それはお菓子が入った小さな箱だった。『夢見る惑星』と名付けられたそのお菓子は惑星をかたどったボンボンショコラである。
「せめて、一個は食べて欲しいと思うけれど、食べられる?」
「そうね、一個だけなら」
ナッツ入の物を一つ取り出して、リーベの口元に持って行く。「あーん」という声に促されて開いた口へ、そうっと入れる。
「あーん」が気恥ずかしかったのか、頬を少し染めながら、ボンボンショコラを嚙むようにして食べるリーベ。
「……美味しいわ。ありがとう」
「残り、あげます。次に目覚めたら、残り全部、食べてくださいね」
そう言って渡された箱はリーベの身体の上に置かれる。半ば押しつけるような形で渡されて、リーベの顔が苦笑に変わった。それでも拒否をしないのは、その思いを無駄にしたくないからだろう。
「ありがとう」
小さな箱をそっと抱き寄せて、笑う。
まるで、落としたくないというように。
●鎮魂歌と「おやすみなさい」
目に涙を溜めて、キルシェがリーベの側へやってきた。正座をして、リーベの視線と高さが合う。
「あのね」
震えている声は、上手く言葉を紡げるだろうか。言いたい事を悔いなく言う為に、彼女は言の葉を紡いでいく。
「リーベお姉さんに貰った香り袋、枕元に置いてるの。良い香りがして毎日よく眠れるの。
素敵な贈り物有難う。これからもずっと使わせて貰うから」
「そう。よく眠れているなら、薬師冥利に、尽きるわね」
以前、村に訪れた際にリーベから貰った香り袋。大事な思い出の品。それが彼女の遺品になるなんて、思ってもみなかったけれど。
「それとね、夢物語だって笑ってくれて良いんだけど」
「?」
「聖霊お兄さんがお医者さんで、リーベお姉さんがそれを支える薬師さんで、沢山の人を笑顔にする。そんな日が来たら良いなって思ってたの」
「……そうね、私も、思っていたわ」
言外に、なりたかった未来のもしもを語ったリーベに、キルシェはほんの少し眉尻を下げた。
「あとね、あの村は時々様子を見に行って、必要そうならお手伝いするわ」
「ありがとう」
「それから、もっと、沢山お話したかった。
喧嘩して、仲直りして、一緒に過ごした時間は短いけど、今ルシェの心にあるのは全部大切な思い出。
だから、有難う。私の大切なお友達」
「ええ、私も、貴方の事、大切なお友達と思っているわ」
「リーベお姉さんのこと忘れない。
大好きよ!」
「……私も、大好きよ。
小さな聖女様、どうか、私のようには、ならないでね。貴方は私よりも、ちゃんと光を見れるから」
「うん……!」
ぽろ、と溜まった涙が雫となって頬を伝い落ちる。
しゃくりあげる彼女の背中を、スティアが摩る。スティアに促され、数歩だけ後ろに下がった。
キルシェの視界は滲んでいる。リーベの輪郭もぼやけたまま。
まだ何か言いたい事があるはずなのに、感情が邪魔して纏まらない。
死という別れを目前にして泣く彼女は、まだたった十二歳の少女だ。まだ子供と言ってもおかしくはない年齢で、だからこそ感情を露わに出来る。
入れ替わるように沙耶が側にやってきた。
「リーベ、今更生きろとは言わないし、言えない」
既に鏡禍が飲ませた彼女の毒によって、死は確定している。それを覆す事は出来ない。
けれど、知っている。死を目前にした者達が持つ感情の事を。
自分はそれを吐き出させたい。全て吐き出させて、死出の旅を心残り無く歩んでほしい。
「本当は今、苦しいんだろう? 怖いんだろう?
……最後くらい、思いっきり吐き出してもいいんだ」
「……そう、ね。苦しいのは、間違いないわ。
でも、ね、怖いのは、少しだけ、なの。
貴方達が見守ってくれる、から、ほとんど怖くは、ないの。
不思議、ね。好きな人達に見守られてるから、かしら」
ふふ、と笑う顔に力が無い。
死期が近いのだと、分かってしまう。
彼女の頭上で、聖霊が言葉をかけた。
「なあ、最期くらいお前自身の望みを言ってみろよ。
遂行者でも薬師でもないリーベの望みを。生きたいと俺に言ったあの日みたいに。
絶対に嗤ったりしねぇからよ」
彼の言葉を受けて、リーベが逡巡する。それから、ぽつりぽつりと言葉を紡いだ。
「色々あるけど、先に三つ、かしら。
私の正式な名前と、あの村の人達についてほしい嘘と、心臓の破壊」
「正式な名前?」
聞き返してきた沙耶に一度頷いてから、内容を話す。
「リーベ、は、旅してる内に名前だけ名乗ってた、ものなの。家名まで入れると、リーベ・アポテーカー、よ。
墓に刻む名前は、必要でしょう?」
墓碑の事を気にしてる場合か、という言葉を飲み込み、黙って頷く沙耶。
Lilyが問う。
「……村人達についてほしい嘘、というのは?」
「私の死因。以前も言ったけど、私、貴方達と村の人達の間に、禍根を残したく、ないの。
だから、そうね……。『私を利用しようとする人が居たから自死した。イレギュラーズが駆けつけた時には遺言を聞くぐらいしか出来なかった』と、でも、してほしいわ。
……有り得ない話ではない、もの。私は魔種だから、多分、欲しい人は、居るでしょうし」
彼女の言葉に殆どが首を傾げる。その意味を知る者は、この場に二人も居るだろうか。
問う声がそれ以上出ないように、彼女は続けて望みを言う。
「私の心臓、私が目を閉じる時に、壊して、ね」
それに頷いたのは、イレギュラーズの殆どだった。イズマが叩き落とし、こうして行なう別れの為に放置しておいた心臓の片割れを、鏡禍が拾う。先程彼女に告げた言葉の通りにする為に。
視界の端でそれを見届けて、リーベが笑う。そうして呟く。関わってきたそれぞれとのしたかった事を。
「雨紅さんと、舞を踊ってみたかった」
仮面の女が、唇を結ぶ。
「鏡禍さんと恋バナとか、してみたかった」
鏡の妖怪が「そんなの、いつでも……」と小声で呟く。
「ルシェさんと、子供達で、遊んでみたかった」
小さな聖女の涙がまた零れ始めた。
「イズマさんの音楽を、もっと聴いてみたかった」
青き音楽家が楽器を取り出す。
「フリックさんの主の話、もっと聞きたかったわ」
巨人の手が、拳を作る。
「マリアさんと、買い物とかしてみたかった」
褐色肌の娘が、空を仰ぐ。
「沙耶さんと、薬草を育ててみたかったわね」
意外な言葉に、少女の赤い目が見開く。
「Lilyさんのお菓子、もっと食べてみたかったわ」
白髪の少女が、「今度は、いっぱい持ってくる」と呟いた。
「初めて会う人とも、時間を掛ければ友達になれたかしら」
「そうかもしれないわね」と、小声で呟かれたハーモニアの娘の言葉は、届いただろうか。
リーベの顔が上がり、聖霊を見つめる。変わらず微笑む顔があった。医者が患者を慈しむ、そんな微笑み。
キュッと唇を結んでから、彼女は最後の望みを口にした。
「聖霊の診療所で、働いてみたかった」
「なんで俺だけ呼び捨てなんだ、お前」
「貴方だけ、『さん』づけが、しっくり来なかったのよ」
困惑したような顔をする彼の顔に、苦笑で返す。
これまでの人生を振り返るように、リーベは「あーあ」とわざとらしく呟いた。
「遂行者になってから、散々、ね。初恋は実らないし、こうして死ぬ運命を、迎えるし」
「……お前、好きな奴居たのか?」
意外だ、という顔をする聖霊の言葉に、「は?」という顔をするリーベ。数秒凝視した後、顔を動かして他のイレギュラーズに「どう思う、こいつ?」的なジェスチャーと表情を向けるが、返ってきたのは苦笑だとか肩をすくめるだとか、そういったものだった。
はぁ~~と大きな溜息をついて、呆れた顔を隠さず、言葉を続ける。
「いいわよ。貴方なんて、死ぬ間際に後悔すれば、いいんだわ」
「なんで怒ってんだ」
理由が分からず、今度は聖霊が溜息をつく番だった。
けれど、医者としてやるべき事を、彼は行動に移す。
手首に触れる指先から伝わる脈拍の弱さに気付いたから。
「リーベ」
手首から掌へと、自分の手を移動させる。握りしめた手に気付いて、リーベが驚いたように再び聖霊を見つめた。
聖霊も、リーベを見つめた。慈愛の微笑みを浮かべて。
「――よく頑張ったな、リーベ」
その言葉は、彼女の目を最大にまで見開かせた。
みるみるうちに目には涙が溜まり、顔はくしゃくしゃになって。
「う、あ、あぁぁぁぁ……!!」
彼の胸に縋るようにして、子供のようにみっともなく泣いた。
多分、彼女は欲しかったのだ。これまでの自分を肯定する何かを。
貰えると思っていなかった言葉に泣き崩れた背中は、イレギュラーズの目に小さく映った。
(ほら、やっぱり、ただの普通の女じゃねえか)
泣きじゃくる姿は魔種だと思えないぐらいに年相応の姿で。
彼女の背中をいつのまにか沙耶と入れ替わりで側に来ていたエクスマリアが摩るのを見ながら、聖霊はそんな事を思った。
しばらく彼女の泣くがままに任せ、少しずつ嗚咽が落ち着いていく。
「ごめん、なさい……貴方の服、汚したわ……」
「気にすんな」
顔を上げ、元の位置に身体を戻したリーベの謝罪に、聖霊はなんでもないように返す。
力なく笑うリーベに、誰もが「あぁ」と、もうじきの別れを悟る。
イズマが楽器を構えて、調べを奏で始めた。穏やかで、哀しくて、けれど、願いを込めた音が響く。これがレクイエムなのだと、誰にも分かった。
「泣いたら、疲れたのかしら、ね……。とても、眠いの……」
「もう休むといい。
なあ、傷付いても、悲しくても、苦しくても、この歴史は間違いじゃないと、必ず証明する。
だからどうか、安らかに。おやすみなさい、さようなら、マリアの友達」
エクスマリアの言葉に、彼女は微笑む。
目がトロンとしている。眠そうな、顔。
ああ、これがそうなのか。『苦しまず、眠るようにして亡くなった』とは。
「ええ、そうね。今までありがとう、イレギュラーズ。私の大切な、友達。
――――おやすみ、な、さい……」
すぅ、と目蓋が閉じる。もう再び開く事の無い、目蓋。同時に鏡禍の持つ心臓が最大の一撃でもって握り潰された。
聖霊が手首の脈を測る。そして、少し俯いたまま静かに首を横に振った。
キルシェの泣く声が響く。Lilyの嗚咽が漏れる。
スティアは祈る。イズマは目に浮かぶものを振り払うように、音に集中する。
沙耶はしゃがみ込んで唇を強く結んでいた。
「フリークライ様」と、雨紅が巨人の横でその名を呼ぶ。
「……秘宝種は、どうして泣けないのでしょうね」
声帯は震え、肩も震え、胸の内側すらも激情で震えているというのに。
どうしてこの仮面の下は、たった一雫すら零してはくれぬのか。
「ソレハ フリックモ 分カラナイ」
こういう時、主ならばどうしただろうか。泣く為の機関を作ろうとするのか、或いは別の方法をとるか。
フリークライの脳裏に浮かんだのは、主とはライバル関係に当たる男の事。彼ならば、今の雨紅や自分が感じているものを知って、どんな顔をするのだろう。
ちょうどイズマの奏でる音楽が止んだ。ベルの澄んだ音が、空中で残響した。
フリークライがリーベの身体を両の掌で抱きかかえて礼拝堂に入る。Lilyに言われるがまま、教壇の上へ彼女の肢体を乗せた。
誰もが無言で、それぞれの仕草で祈りを捧げる。
どうか、彼女の死出の旅が安らかなものでありますように、と。
Lilyがリーベの身体に防腐作業を施そうとした所で、地面が震え始めた。
沙耶が怪訝な顔をする。
「何だ?」
「……まさか、理想郷とやらが崩壊しようとしているのか?」
可能性に思い至ったイズマの言葉に、イレギュラーズの間で緊張が走る。
「ゆっくりしている暇はねえって事か」
噛みしめる時間すら貰えないとはな、とぼやく聖霊だが、脱出の為に動き出すのは早かった。
彼に続くように、仲間達も走り出す。
殿を務めるスティアが一度だけ教壇に眠るリーベを振り返る。
「私は貴女と邂逅するのは今回が初めてだったけど、これまで皆と接して色々なことが変わったんだろうね。
信じて託してくれた想いはちゃんと紡いでいくから……遠くから見守っていて欲しいな」
生きている時に彼女が聞いていれば、微笑んでいただろう。
「遂行者が二度と現れなくても良いそんな幸せな国にしたいと思う」
これから天義は暫く混乱を極めるだろう。それでも、少しでもよりよい未来の為に奔走したい。
改めて決意する彼女を呼ぶ声がする。焦り混じりの声に応じて、赤い絨毯を駆けていく。
揺れ続ける地面。ステンドグラスから差し込む光が照らす教壇。
横たわる女の亡骸は、安心したかのような微笑みを浮かべていた。
そして、崩壊した理想郷が、彼女を飲み込んだ。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。
リーベは無事に旅立ちました。心残り無く「おやすみなさい」を言えたのは、イレギュラーズのおかげでしょう。ありがとうございます。
リーベ本人との別れはこれでおしまいですが、エピローグを年内に予定しております。
ご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。
MVPは、リーベの本心を曝け出してくれた貴方へ。
GMコメント
泣いても笑ってもこれがリーベとの最後の戦いです。
悔いの無いプレイングをお待ちしております。
EXプレは開けてあります。足りない場合はお使いください。
●成功条件
・遂行者リーベの撃破(無力化でも可)
・白騎士と青騎士の討伐
●失敗条件
・遂行者リーベの生存
●敵情報
・遂行者リーベ
リーベ教教祖も担っていた女性。現時点でのリーベ教に対する思いは不明。
『半分に切られた心臓』を直に持つ事で自身を強化したようです。
耐久力は強くありませんが、その代わり神秘攻撃力が大幅にアップしています。
回復よりも攻撃に重きを置く事が増えています。とはいえ、回復を行なわないとも限らないのですが。
○黒砲(神・遠・貫)……細長い黒の砲撃。一番攻撃力の高い技となります。シンプルな攻撃です。
○紫炎(神・近・範)……自分の周りに紫の炎を円状に発生させます。触れれば【毒系列】のBSを食らうでしょう。
○大回復(神・中・域)……BSやHPを大幅に回復させます。自身も対象内です。
また、リーベのこの行動には時間制限があります。十五ターン以内に決着がつかない場合、彼女に多大な負荷がかかります。
ローブの内側にまだ何かを隠し持っているようですが、イレギュラーズの行動によって判明するでしょう。
・白騎士×八体
武器:レイピア
馬に乗った白い甲冑の騎士。終始無言。
物理攻撃力は高くありませんが、その分【乱れ系列】や【混乱系列】といったBSを与える攻撃に長けています。
また、青騎士を支援する動きも見られます。青騎士を強化すると厄介な存在です。
機動力が高く、足止めが必要になるでしょう。
・青騎士×五体
武器:長剣、弓矢
馬に乗った青い甲冑の騎士。終始無言。重量は重め。
物理攻撃力に長けていますが、その分重量がある為、機動力が落ちています。
長剣の攻撃には全て【出血系列】のBSがつきます。
弓矢には【毒系列】もしくは【痺れ系列】のBSがつきます。
白騎士から何かしらの強化をされる事は間違いないようです。
●戦闘舞台
礼拝堂前の大きな広場。障害物はなく、草花があるのみです。
結婚式の会場や何か大きな催し物に使われるような場所のようで、かなりの広さを誇ります。
半径三十メートル程の広さの為、馬に乗った騎士達にとって動きやすいフィールドである事は間違いないでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
※※CAUTION※※
リーベを救いたいという方も居るでしょう。
ですが、もし彼女を救いたいとするならば、それなりの覚悟が必要です。それも、一人ではなくかなりの数の。
覚悟の結果、命を喪う事も有り得ます。
仮に成功したとして、大切に想っていた者達の命を一人でも喪った場合、それを彼女が知れば、壊れかけていた彼女の心は今度こそ完全に壊れるでしょう。
その点を、どうか、ご留意下さい。
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