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シナリオ詳細

<神の門>剣尖の軌跡

完了

参加者 : 15 人

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オープニング


 豪奢な門に手を置いた。
 神の国と現世を繋ぐ大きな門だ。
 美しい装飾に彩られた縁を押せば、僅かに開いた隙間から現世が見える。
 色彩豊かな神の国とは違い、慣れ親しんだ天義の町並み。守るべき祖国の風景。
『親友』アラン・スミシーへ背を向けてリゴール・モルトン(p3p011316)は神の国を後にした。

 後悔がリゴールの胸の中を駆け巡る。
 自分を救うために、アランは聖印を付けられてしまった。遂行者にさせられた。
 それはイレギュラーズを敵に回してもリゴールを救い出す強き意思であった。
 山賊である『グドルフ・ボイデル』として悪逆を全うする事で『親友』を救う。
 顎を三回さすった山賊の仕草。それは、自分とアランとカティしか知らない秘密のサイン。

 ――後は、俺に任せとけ。

「馬鹿なことを……」
 戦う力の無いリゴールとアランとでは、どちらを生かすか何て明白だろうに。
 悔しさなんて生ぬるい言葉では言い表せない。
 己の無力を、何度嘆けばいいのだろうか。
 カティを救えなかったこと、アランを救えなかったこと、レプロブスさえも救えなかったこと。
 今度は、帰って来た『グドルフ・ボイデル』まで喪おうというのか。
「……私は、なんと無力なのだろうか」

 俯いたまま神の国の門を潜ったリゴールは吹き抜ける風に顔を上げた。
 視界いっぱいに広がるのは蒼穹の大空。浮島に白い神殿が佇む場所。
 見慣れた天義の町並みではない。
「どこだ、ここは……」
 また、遂行者共の手中に嵌められたのかとリゴールは怒りを露わにする。
 近づいてきた足音にリゴールは勢い良く振り返った。

「ここは、空中庭園でごぜーます」
 リゴールは驚愕に目を見開く。
 目の前に立っていたのは、空中庭園の神託の少女であった。
「ぁ……どうして、なのだ」
 リゴールはその場に崩れ落ちる。
 怒りと悲しみが折り重なって身体がぶるぶると震えた。
 あと数刻早ければ、アランは聖印を付けられず逃げおうせただろうに。
 自分のせいで。

「――――――――ぁぁぁぁッ!!」

 悲痛な慟哭が神殿の壁に反響した。


 ステンドグラス越しに優しげな陽光が落ちてくる。
 アーデルハイト神学校の第二聖堂を覆った帳の中でさえ、陽光は煌めいていた。
 この場所を選んだ遂行者がこの陽光だけは遮る事を許さなかったのだろう。

 聖堂の中にはグランヴィル小隊の面々が待機していた。
 祭壇へと視線を向ければ豪奢な門が鎮座している。
 その中から現れたのは黒づくめの男ジャレッド・エセルバートとグランヴィル小隊の新兵だ。
「……はぁ、はぁ」
「大丈夫か?」
 ジャレッドは新兵を背負い、門の中から出てくる。
「中の様子はどうだった?」
 新兵を受け取った小隊の一員ライアン・ロブルスの問いにジャレッドは首を振った。
「そいつ、私がやりますと意気込んでた割に、すぐ使えなくなったからな。俺は大丈夫だったんだが、どうやら悪影響があるみたいだな」
 ジャレッドの言葉を聞いてライアンは考え込む。
 先程、ライアンと同じ隊員のケルル・オリオールが入った時は何も無かった。
「ということは新兵を伴っての進軍は難しいか」

「そんな! リゴール先生やグドルフさんが門の向こうに行ってしまったままなのに……」
『青の尖晶』ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)は悲しげに眉を下げる。
 教鞭を執りに学校を訪れていたリゴールは、第二聖堂に帳が降り、警戒態勢を敷いていたグランヴィル小隊と合流していた。同時にローレットからも数名駆けつけてくれていた矢先に、突然現れた豪奢な門にリゴールが吸い込まれ、それを追いかけるようにグドルフも消えた。

「入れる者は遂行者に呼ばれた者と、特異運命座標だろう」
 聞き慣れた優しい声にティナリスは振り返る。
「リゴール先生!」
 門の中に吸い込まれたはずのリゴールが、聖堂の入口から現れたのだ。
「大丈夫なんですか!?」
 駆け寄ったティナリスと『星の弾丸』ロニ・スタークラフト(p3n000317)へ問題無いと答えるリゴール。
 グランヴィル小隊のニコラ・マイルズやロレッタ・ディ・バレスもリゴールの元へ集まる。
「おっと、今度こそくたばったかと思ったぜジジイ」
 ジャレッドの言葉にリゴールは「君は相変わらずだな」と笑みを零した。
「リゴール先生、ご無事で何よりです」
 恭しく腰を折ったのはフェネリー・エセルバートだ。
 ここに居るグランヴィル小隊やエセルバート家の面々はアーデルハイト神学校でリゴールに教えられていたのだ。リゴールの厳しくも優しい教え方、その誠実な人柄を皆好いていた。
「お怪我はありませんか?」
 ジュリア・フォン・クレヴァンスはリゴールを心配そうに見つめる。

「ああ、怪我は無いよ。しかし、あの男……山賊が向こうへ行ってしまった」
「向こうとは……まさか、遂行者に!?」
 ティナリスは「どうして」と口元を押さえた。
 ――グドルフ・ボイデルは遂行者となった。
 その真意はティナリスには分からない。何せ二度ほどしか会った事が無いのだから。
 ニル(p3p009185)は何だか胸の奥が痛くなったような気がして手を押し当てる。
 その隣にグリーフ・ロス(p3p008615)が優しく寄り添った。

「なるほどね。こっちも嫌な情報が入ってるよ。君達のお仲間がその門の中に囚われてるんだって」
 髪を掻き上げながらローレットの仲間の名を書いた紙を見せるグレイ。
 小金井・正純の名前の所だけ僅かに文字が揺れている。
「助けに行かなくてはなりませんね……」
 水天宮 妙見子(p3p010644)は見覚えのある名前ばかりが並んでいるメモを見つめた。
「そうだね。でも大勢では進軍する事が出来ない。呼ばれた者とイレギュラーズしか無理みたい」
 先程の新兵が疲弊したように門の中は原罪の呼び声が木霊し魂への侵食があるらしい。
「じゃあ、グレイさんは行けないのかな?」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は何度か顔を合わせた事があるグレイへ視線を上げた。
 彼が戦っている所は見たことが無い。事前に情報はくれるが戦場には居なかった。
「うん、僕はイレギュラーズじゃないからね。この第二聖堂で待機してるよ。代わりに、僕が持ってる情報を出来る限り伝えるね」


 銀色の髪を風が攫う。細められた青い瞳に掛かる睫毛が頬に影を落していた。
 白い衣装を身に纏い、パーセヴァル・ド・グランヴィルはテラスの椅子に座る。
 その手には良い香りの紅茶が揺らめいていた。
「お前達を連れてくるのは初めてだったか?」
 優しげな声がテーブルに付いた三人へ向けられる。
 用意された紅茶にも一切手を付けず、微動だにしない三人をパーセヴァルは不思議そうに見つめた。
 その内の一人モートン・エドワーズが椅子から転げ落ちる。モートンが転げた振動でレオナ・グレコもダニエル・ベイカーも椅子の傍にぐったりと倒れてしまった。
「どうしたんだ!?」
 慌てて立ち上がったパーセヴァルは三人の元へ駆け寄る。
「おや、術をかけ直さなければならないか」
「レプロブス先生? どうしてここに……」
 アーデルハイト神学校で薬学や座学を教えてくれていたレプロブスがなぜ、自分の家の中庭に居るのだろうか。そもそも、レオナたちを連れて来た理由は何だっただろうか。
 パーセヴァルはぐるりと地面が揺らいだ気がして頭を押さえる。

「私は戦っていたはずなのだ。冠位の軍勢と……」
 冠位強欲ベアトリーチェ・レ・ラーテの軍勢と戦っていたと、唐突に思い出したパーセヴァル。
 こんな風に中庭で紅茶を飲んでいる場合では無いのだと頭を振る。
「記憶が、途切れて……」
「パーセヴァル、君はまだ敵の幻影に惑わされているのだ」
 レプロブスの言葉にパーセヴァルはグランヴィル小隊の三人を見つめた。
 天義の騎士団黒衣を身に纏った三人と、自分の姿を見比べる。
「いや……何かがおかしい、どうして私は、『黒衣を纏っていない』のだ」
 グランヴィル小隊と同じ衣装ではなく、白いコートを身に纏っている。
「応えてくれレプロブス先生、私は……」
「そうだな、その答えを持つ者をお前の権限を使って此処に呼んでおいた。じきに来るだろう」
 パーセヴァルは胸の内側から抉られるような痛みに顔を顰めた。
 己の内側に、何者かが蠢いている。
 そんな気配がするのだ。

 ――――
 ――

 豪奢な門を潜り、磨かれた石床をイレギュラーズ達は歩く。
 静謐を讃える美しき回廊を抜けて、見えて来た庭園の前で立ち止まる一同。
「ここは……」
 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は先程までの絢爛豪華な建物よりも、幾分か落ち着いた庭園を見渡した。吹く風は優しく、小鳥たちの囀りが聞こえる。
「グランヴィル家の中庭?」
 ティナリスは生家であるグランヴィル家の中庭を模した場所に首を傾げる。
 何故このような場所に自分の家の中庭が出現したのだろうか。
「ティナちゃんのお家なの?」
 ジルーシャ・グレイ(p3p002246)の問いにティナリスはこくりと頷く。
「ということは、此処へティナリス殿を呼んだのは……」
 思い当たる節は彼しか居ないのだとアーマデル・アル・アマル(p3p008599)は庭園をぐるりと見渡した。
 その視線の先、ヴェルグリーズ(p3p008566)もテラスに佇む白き衣装の男を見つける。

「……お父様!!!!」

 ティナリスが駆け出すのをトール=アシェンプテル(p3p010816)と妙見子が追いかけた。
 青い瞳を輝かせ、会いたかった『父親』の元へと走り込む。
「……君は」
 妻によく似た青い瞳。美しい銀の髪。父と呼ぶその声。
 記憶の中の小さな『子供だった娘』ではない。
 強い眼差しを向ける少女へと育ったティナリスだ。
「ティナリス、なのか?」
 これも敵が掛けた幻術なのかとパーセヴァルは首を振る。
「お父様」
 けれど、目の前の少女が娘のティナリスであることは、何故か確信できた。
 心の奥底からえも言われぬ愛情が溢れ出てくるからだ。愛しき我が子が成長した姿で目の前にいる。
 再会の喜びが涙となって零れ落ちそうになった。
 されど、ティナリスは真っ直ぐに青い瞳を上げ、パーセヴァルに問いかける。

「どうしてそのような衣装を身に纏っているのですか」
 再会の喜びも束の間、娘からの強い言葉にパーセヴァルは目を見開いた。
「誇り高きグランヴィルの剣を悪に染めたということなのですか!」
 パーセヴァルが身に纏っているのは『遂行者』の白き衣装ではないか。
「悪に? そのようなことは断じてありえない。私は……」
 ――戦っていたはずだ。守らねばならないと、必死で戦っていた。
 冠位魔種の軍勢と命を賭けて戦っていたのだとパーセヴァルは応える。

「貴方は、冠位の大戦で死んだんです。パーセヴァル隊長」
 パーセヴァルは聞こえてきた声に顔を上げた。その顔をよく覚えている。
 血だらけでライアンに抱えられていたロニだ。
「俺のせいで……」
 悔しげに拳を握ったロニの隣にはライアンの姿が見える。
 更に視線を巡らせればグランヴィル小隊やエセルバート家の者の見知った者の姿が映った。
「ロニさんのせい? どういうことなのですか?」
 ティナリスはロニに振り返り、眉を寄せる。
 ここに来てから有り得ない事ばかりで、心の許容範囲を超えていた。

「……こんな風に、死んだのだろう?」

 パーセヴァルの言葉に重なるように不快なノイズが走る。
 その瞬間、パーセヴァルの胸から巨大な剣が突き出していた。
 目の前にある光景が理解出来なくて、ティナリスは目を見開く。
 父親の胸から剣が突き出してくるなんて、誰が想像できようか。
「いああああ、お父様!? お父様!!」
 血を迸らせながら苦痛に顔を歪ませるパーセヴァルに寄り添おうとするのをジルーシャに止められる。
「な、に……を」
 パーセヴァルの口から零れた血が地面に滴る。
 ずるりと胸から抜け落ちた巨大な剣は白く輝き、パーセヴァルの血を払った。
 ぐったりと地面に横たわるパーセヴァルは息も絶え絶えに、それでも何かに抗おうとしていた。

「――私は、遂行者。悪を制するもの」

 その剣は聖遺物であった。
 かの聖人が振るったとされる白く輝く光の剣。
「欲深き業は悪である。黒衣纏いし悪逆を滅することを希われた。故に此処へ至った」
 ぐるりと剣身をパーセヴァルへと向けた剣は尚も語る。
「この男の精神力は想像よりも強大で、取り込むのに四年もかかってしまった。けれど、まだ遅くは無い。この機を待っていたのだ」
 再びパーセヴァルを突き刺した聖遺物は、彼を侵食し融合を果たす。
「お父様!」
 身体を起こしティナリスの声に向き直ったパーセヴァルは、背中の剣を娘に向けた。
 喉元に突きつけられる剣尖に緊張が走る。

「んだぁ? うるせえと思って来てみれば」
 庭園の奥から『聞き慣れた声』がするのにスティアは顔を上げた。
 そこには白い衣装を身に纏い、剣を携えたグドルフ・ボイデルが佇んでいた。
「グドルフさん……」
 舌打ちをしたグドルフは集まったイレギュラーズの中にリゴールの姿を見つけ指差す。
「おい、そこのハゲ! 尻尾巻いて逃げたんじゃねーのかよ?」
 グドルフがリゴールを蔑んだ目で睨み付けた。
「戦う力もねえお荷物のくせに、のこのこやってくるたぁ……よっぽど殺されてえんだなァ!」
 テラスの椅子へと、どかりと座り込んだグドルフはふんぞり返ってレプロブスを見遣った。
「おい、そこのペストマスク野郎。お前だお前。このクソどもを追い払え。俺はここでお前らがきちんと仕事出来るか見物しててやるからよお」
「私に命令するとは、君は何様のつもりだ?」
 ガハハと笑ったグドルフはテーブルを蹴飛ばす。上に乗っていたティーカップが音を立てて割れた。
 悪辣な笑みが、山賊だった男の顔に張り付いている。

「はぁ? 俺は、本物の遂行者様だ」

GMコメント

 もみじです。より物語を楽しんで頂くために長編仕様になっております。
 プレイングは公開されませんので、思う存分楽しんでくださいね。

※戦闘よりは心情や物語寄りのお話になります。

●目的
・パーセヴァルの撃退
・レプロブスの撃退
・グドルフの撃退
・敵の撃退

●ロケーション
 神の門を潜り絢爛豪華な回廊を抜けた先にある、グランヴィル家の中庭を模した庭園です。
 手入れの行き届いた植木と美しく咲く花々。陽光が降り注ぎ小鳥が囀っています。
 戦闘が出来る広さがありますので安心してください。

●敵
○『蔦剣の騎士』パーセヴァル・ド・グランヴィル
 ティナリスの父親でグランヴィル小隊の元隊長です。
 四年前の大戦で命を落しました。
 現在は『剣の聖遺物』の依代にされています。
 生命としては四年前に死亡しています。
 残留思念となったあとも聖遺物との融合を拒み、強大な精神力で抗い続けていました。
 しかし、とうとう自我や記憶を保てなくなりました。
 現在は聖遺物が主導権を握っています。

 生前の情報を元に剣で戦い、神聖魔術を使うことが予測されています。
 かなりの強敵であるでしょう。

○レプロブス=レヴニール
 痩せぎすのペストマスクを被った男です。見た目は『遂行者』の恰好をしています。
 パーセヴァルの駒とするためグランヴィル小隊の墓を暴き遺体を盗みました。

 彼はかつて旅人を殺して回った大罪人です。
 一度投獄されていますが、処刑される日に行方を眩ませました。
 先日のハウエル、ロザミエラ襲撃についても関与しています。
 執拗に旅人を狙ってきますし、邪魔するものは排除しようとします。
 戦闘能力は毒を使った広範囲の攻撃と、ネクロマンシーの術を使います。

 アラン・スミシー(グドルフ・ボイデル)とリゴール・モルトンとは旧知の仲です。
 心優しかったレプロブスが狂ってしまったのは故郷を旅人に襲撃され、アランさえも死んでしまったからなのかもしれません。

○グランヴィル小隊
・モートン・エドワーズ
・レオナ・グレコ
・ダニエル・ベイカー
 レプロブスが使役するグランヴィル小隊の三人です。
 ハウエル襲撃で死亡しており、彼らはアンデットです。
 それなりの剣術と神聖魔術で攻撃してきます。

○グロウ・スケルトン×20
 僅かに仄暗い光を宿すスケルトンです。
 剣や盾を持ち武装しています。
 強さはそこそこです。

○『遂行者』グドルフ・ボイデル
 元ローレットのイレギュラーズです。
 山賊として悪事を尽くした後、ローレットから離反し、世界に剣を向けました。
 己の欲望のために生きる、唾棄すべき小悪党です。

 中庭の隅にあるテラスで座って居ます。
 仕掛けてくる様子はありませんが、剣を向ければ応戦はするでしょう。
 遂行者となったグドルフの戦闘能力は未知数です。

●NPC
○『青の尖晶』ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)
 天義貴族グランヴィル家の娘であり、神学校を主席入学し、主席のまま飛び級で卒業した才媛。
 当時の学園最強の剣士にして、学園最優の神聖魔術師であり、勉学のトップでした。
 自分の身は自分で守れる程度の実力があります。
 性格はとても真面目です。些か真面目すぎる所があります。

 イレギュラーズと共に戦います。
 剣技と神聖魔術を使う前衛よりのオールラウンダーです。
 パーセヴァルとの再会とその死因、依代となっている現状に酷く動揺しています。
 それでも、仲間であるグランヴィル小隊の人達を取り戻したいと奮闘します。
 以前なら折れていたような状況ですが、イレギュラーズの絆により自分を奮い立たせます。

○『星の弾丸』ロニ・スタークラフト(p3n000317)
 聖都の騎士団グランヴィル小隊に所属する聖騎士。
 元々はアストリアの部下の聖銃士でした。
 年下(未成年)に見られることが多いがこれでも25歳を過ぎている。童顔。
 ティナリスより年上で先輩だが立場上は部下である。

 イレギュラーズと共に戦います。
 仲間であるグランヴィル小隊の人達を取り戻したいと奮闘します。
 後衛からの射撃を得意とします。

 パーセヴァルの死因は自分にあると自責の念をずっと抱いていました。

○グランヴィル小隊の仲間
 ティナリスが所属する騎士団の仲間達です。
 パーセヴァルと面識があるメンバーが呼ばれているようです。
 連携を取り戦術的に動きます。
・ライアン・ロブルス
・ケルル・オリオール
・ニコラ・マイルズ
・ジュリア・フォン・クレヴァンス
(新人のロレッタ等、呼ばれていない他の隊員は外で待機しています)

○エセルバート家
 グランヴィル家当主代理であるティナリスの叔父セオドリックからの命令を受けて
 傍流エセルバート家から数名がティナリスの護衛につきます。
 パーセヴァルと面識があるため、彼らも呼ばれるかたちとなっています。
・フェネリー・エセルバート
・ジャレッド・エセルバート

 上記以外のイレギュラーズでは無い関係者は魂への侵食があるため戦場に来ることが出来ません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <神の門>剣尖の軌跡完了
  • GM名もみじ
  • 種別長編EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年10月27日 22時05分
  • 参加人数15/15人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 15 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(15人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス
リゴール・モルトン(p3p011316)
司祭

サポートNPC一覧(2人)

ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)
青の尖晶
ロニ・スタークラフト(p3n000317)
星の弾丸

リプレイ


 柔らかな風が吹く庭園の中では小鳥がさえずり、優しい木漏れ日が地面に揺れていた。
 かさりと草を踏む音が足下から聞こえてくる。若々しい芝生が靴裏を強く押し返していた。
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は天色の瞳を庭園の奥へと向ける。
 其処にはよく見知った顔の男が高みの見物とばかりにふんぞり返っていた。
「グドルフさんが何故その白いコートを……!?」
 思わず口から漏れた言葉はトールの偽りの無い疑問であった。
 理由なぞ、計り知れないけれどローレットの山賊ではなく、遂行者として自分達の前に立つならば倒す覚悟をしなければならないとトールは拳を握る。

 ――『遂行者』グドルフ・ボイデル。

『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は鋭い視線でグドルフを見遣る。
「その道を選んだか、グドルフ……オクトのヤツが聞いたら何て言うだろうな」
 庭園の奥、遂行者となったグドルフが鼻で笑った気がして汰磨羈は彼の言葉を脳裏に浮かべた。
 きっと彼ならば、『お前も選んじまったか!』などと言って大笑いするのだろう。
「ああ……こんな事になってしまうなんて」
 ピンク色の瞳を揺らすのは『星を掴むもの』シュテルン(p3p006791)だ。
 彼女の瞳には憂いの色が滲んでいる。
「グドルフ様……どうして……?」
 その隣には『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)の姿もあった。
 シトリンのコアを服の上から押さえたニルは、胸が締め付けられるような感覚に襲われる。
 彼が其処に居座る理由はニルには分からなかった。けれど、グドルフが『見物』をするだけならば、此方から攻撃することは躊躇われる。
 それにここはグランヴィル家の中庭を模したものなのだという。幻だったとしてもこの場が壊れる様を見せたくは無いとニルは結界を張り巡らせた。ニルの肩に乗っていた小鳥が空へと飛び立つ。
『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)もまた遂行者となってしまったグドルフへ視線を上げた。
 グドルフとは何度かローレットの依頼で動いたことがある。
 粗野な言葉とは裏腹に、その感情や行動は慈愛を帯びていたように思っていたのだ。
 そんな彼が自ら『あちら側』に渡ったその意図は何なのだろうとグリーフは唇を噛む。
 糞食らえと、『せんせー』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)は表情の覗えぬ顔で悪態を付いた。
 言いたい事なぞ山ほどあるが、その前に面倒な輩を排除しなけらばならないらしい。
 ロジャーズは『司祭』リゴール・モルトン(p3p011316)の隣に立ち、声を張り上げる。
「我こそは這い寄る混沌、ロジャーズ=L=ナイア!」
 後光と共に庭園へロジャーズの声が響き渡った。

『青の尖晶』ティナリス・ド・グランヴィル(p3n000302)の喉元に突きつけられた剣先へ血が滲む。
 薄皮を裂かれたティナリスは『遂行者の依代』たる父、『蔦剣の騎士』パーセヴァル・ド・グランヴィルを青き瞳で見上げた。
 そんな気丈な少女の手を引いたのは『優しき抱擁』水天宮 妙見子(p3p010644)である。
 庇うようにティナリスをその背に隠した妙見子は依代となったパーセヴァルを睨み付けた。
「まさか聖遺物の浸食を己の気力で防いでいたとは驚きました」
 どうして、と妙見子の瞳に憤りが滲む。なぜここまで人道を踏みにじれるのか。
「……遂行者の言う神とは人を駒としか思っていないのですか?」
「人道とは、『人』の道なのだろう。ならば、聖遺物である私の辿る道程と異なるのは道理。されど、私に悪を討ち滅ぼせと願ったのもまた人だ。黒衣纏いし者を駆逐する正義たれ、とな」
 聖遺物と人間との尺度は根本的に異なっている。目的は同じなれどその手段が人間には理解し難いものであるのだろう。
「私は否定します、貴方達を、人と共に歩む神として!」
 パーセヴァルを睨み付けながら後ろ手でティナリスの手を握った妙見子。
「ティナリス様、きっと大丈夫です」
 気丈に振る舞えど僅かに震える少女の手を妙見子は優しく受け止める。
 込められた願いは、ティナリスが折れないように、折れたとしても再び立ち上がれるように。
 彼女やグランヴィル小隊の皆が全員無事で帰って来られますように。
「……私は貴女を信じている」
 妙見子の言葉にティナリスは彼女の手をぎゅっと握り返した。妙見子の背はティナリスにとって頼もしく、追いつかなければと奮い立たせてくれるものだった。
 ティナリスたちの前で剣を向けるパーセヴァルを見遣り『雨を識る』チック・シュテル(p3p000932)は眉を下げる。
(あれが……ティナリスのお父さん。グランヴィル小隊の、隊長……だった人)
 青い瞳と銀色の髪、凜とした立ち姿が親子であることを物語っていた。
 グランヴィル親子から庭園へと視線を逸らせば、ハウエルで亡骸を保護した三人が居るではないか。
 何故、とチックは思わず零す。
 忘れる筈も無い。戦いで傷付いた彼らの身体を修復したのはチックなのだから。
「……止めなくちゃ。モートン達を、レプロブスを」
 チックの決意の言葉が紡がれる頃、妙見子はティナリスを後退させる。
 差し向けるパーセヴァルの剣を蒼き光纏う聖杖で牽制するのは『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)だ。
 スティアの杖から溢れる光にパーセヴァルは顔をしかめる。
 今まで聖遺物の侵食から抗っていたという本当のパーセヴァルはティナリスと戦う事を望んではいないだろう。親子同士で殺し合うなんて、そんな悲しいことをティナリスにさせたくないとスティアは強い眼差しで敵を睨み付ける。それにスティアとて聖職者である。
「ネクロマンサーの怪しい術なんて解呪してやる!!」
 スティアの声に『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)も頷く。
 ジルーシャが把握出来る限りでも、パーセヴァルは現状に混乱しているようだった。
 彼も聖遺物の依代として死してなお使役され続けている。
「……許せない。亡くなった人を弄ぶことも……」
 ティナリスたちの心を土足で踏みにじるようなことも。
 このままパーセヴァルを『敵』のままにしておけるものか。
 何時になく心を奮い立たせるジルーシャに、ティナリスは頼もしさを感じる。ジルーシャだけではないスティアや、背中を撫でてくれる『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)の存在も心強くあった。
「――ティナリスさん。補佐します、落ち着いて隊を率いてください」
「はい」
 否応なく焦る思いをリースリットが解きほぐしてくれる。
「遂行者たるあの剣の言葉の通りなら、貴女のお父様は遂行者とは違う」
 死んでしまったあとも強い思念が残り続けているのだ。
「剣の力を弱らせれば再び意識を取り戻させる事が出来るかもしれない。
 そして、小隊三人の遺体も取り戻す――出来る筈です」
 リースリットの紅い瞳が確りとティナリスを見つめる。少女の心を覆っていた不安の闇がリースリットの言葉によって澄み渡る空色を取り戻す。
「ライアンさん、ロニさん、ケルルさん。ニコラさん、ジュリアさん……エセルバートの方々も。
 ティナリスさん。やり遂げてみせましょう」
「……はいっ!」
 大きく返事をしたティナリスは深呼吸をしてからグランヴィル小隊へと向き直った。

『星の弾丸』ロニ・スタークラフト(p3n000317)は凜とした表情を見せるティナリスに複雑な心境であった。
 四年前の大戦の折、あの聖遺物を持たされていたのはロニだったからだ。
 アストリア枢機卿率いる聖銃士隊、それも末端の新人に不相応な聖遺物。
 黒衣纏う聖騎士団を一人でも多く道連れにするための『生きた爆弾』であったのだ。
「……だから、俺がパーセヴァル団長を殺したも同然なんだ」
 悔しげに唇を噛むロニの肩を優しく叩くのは『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)だ。
 振り向いたロニへアーマデルは首を振る。
「俺はその場に居た訳じゃないが……悪いのはアレ(聖遺物)なのでは?」
 ロニの話しを聞く限り、剣には聖遺物としてその当時から自我のようなものがあったのだろう。
 でなければ、能力の高いパーセヴァルを取り込もうなどと思わなかったはずだ。
 パーセヴァルを依代とし、更に『正義』を貫かんとした。それを最初に願った者は大戦の敗者であり、強い願いだけが怨念のようにこびり付いたまま『遂行者』へと成ってしまったのだろう。
「難しいことを考えるのは後だ、まずは成すべき事を成そう」
 アーマデルはグドルフを一瞥したあと、グランヴィル小隊へ視線を向ける。
「グランヴィル小隊は本来の指揮系統で纏まって動いて貰うのが良いと思う。下手に分断するよりその方が動き易かろう。リースリット殿が補佐をしてくれるということなら、俺も気を配る」
 だから、大丈夫だとアーマデルはロニとライアンへ頷いた。
 普段から彼らの傍に居られるわけではないから、せめてこの場では気に掛けてやりたい。

「メイ、人に混ざって暮らすようになって『ひとって難しいなぁ』って思うことが増えてきたですよ」
『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は歯がゆい思いに耳をぺたりと下げた。
 ひとの思いを知ろうとすればするほど、どれが『正しい』かは分からなくなってくる。
 誰かにとって悪だったものが、別の誰かには善となる。
 相容れない思いがぶつかり合うのだろう。簡単に答えなど出ようはずもなかった。
「グドルフさんがグドルフさんの思いのままに動いたなら、それはきっと善なのでしょう」
 メイはグドルフへと視線を上げた。庭園の端でふんぞり返る山賊が纏うのは白いコートだ。

「意識の乗っ取りにネクロマンシー……どちらも人の尊厳を冒涜する行為だね」
 視線を上げた『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は胸に澱む怒りに似た嫌な感情を自覚する。
 ティナリスとパーセヴァルは親子である。操られているのはハウエルで自分が戦場から運んだモートン・エドワーズ達である。そんな彼らは本来戦いとなる筈の無い人達だ。
「実に不快な気持ちだよ」
 ざらついた感情がヴェルグリーズの胸を過る。
 せめてより良い結果を掴めるようにとヴェルグリーズは拳を握った。

「ティナリス、ロニ、皆……もう、私は君達の背に隠れる事はしない」
 一同の後ろから隣へ並び立つのはリゴールだ。
 彼は運命に抗う術を持たなかった弱き司祭であった。
 特異運命座標の背を見守る事しか出来なかった悔しさを知る者だ。
 そんなリゴールがティナリス達の前に一歩進む。
「前に立ち、君達を導くと約束しましょう。それが聖職者として……否、大人としての役目です」
 その堂々たる言葉に、舌打ちをしたのは庭園の隅でふんぞり返るグドルフだった。


 美しき庭園に相応しくない死の気配を纏うアンデッドが群れを成して現れる。
 レプロブスが率いるグロウ・スケルトンだ。その中にはモートン・エドワーズ、レオナ・グレコ、ダニエル・ベイカーの三人の姿もあった。
 アーマデルはその三人の魂へと呼びかける。前回もグランヴィル小隊のアンデッドの声を微かに聞き取れることができたのだ。今回だって彼らの声を受け取れるはず。伝えたい言葉があるのなら教えてくれとモートン達へ言葉を投げかけるアーマデル。
 僅かに揺れるモートン達の声は、微弱であったがアーマデルの耳には確かに届いた。
『ごめんなさい』
 そんな風に三人は思っているようだった。
 仲間へと剣を向けてしまうこと、操られてしまっていることへの謝罪なのだろう。
 死してなお、許しを請うような呪縛の念に囚われてしまっていることが不憫でならなかった。
 アーマデルはその言葉をロニやライアン達に伝える。
「……そんな、お前達が謝る必要など何処にも無いだろう!」
 ライアンの言葉が庭園に響き渡った。アーマデルはその通りだと頷き、蛇腹剣を振う。
 向かってくるスケルトンは多勢に無勢。まずは数を減らすことを考えねば伝えたい言葉を紡ぐ事もできないだろう。アーマデルは金色の瞳でスケルトンの攻撃を見切り、反対に刃を叩きつけた。
 アーマデルの刃へ追従するように弾けるのはトールの剣だ。
 複数のスケルトンを切り裂き、骨が砕ける音が戦場へ響く。
 星海を揺蕩う優しき旋律がスケルトンを誘う。
 チックの奏でる音はまるで揺り籠のようにスケルトンを星の巡りへと返した。
 ロニ達が前へ進めるように、道を開くことが自分の役目であるとチックは考える。

 ニルはフェネリー達を見つめこてりと首を傾げた。
「ティナリス様の親戚のひと?」
「そうですね。グランヴィル家当主からティナリスを守るように命令を受けています」
 グランヴィル当主とはティナリスの叔父であるセオドリックのことだ。彼の命令でフェネリー達はこの場へ来たのだろう。
 一緒に戦える人が多いのは心強いとニルは戦場を見渡す。けれど同時に心配でもあるのだ。
「アンデッドにされた小隊のひとたちも、パーセヴァル様も……知り合いなのでしょう?
 そんなひとたちと戦うのはかなしいことだから、ティナリス様……大丈夫ですか?」
 ティナリスはニルの傍に立って「大丈夫です」と答える。
 悲しくない訳がない。けれど指揮官である自分がしっかりしなければとティナリスは気丈に振る舞っているのだろう。ニルにはそれが分かった。
「亡くなったひとを、その想いに関係なく戦わせるなんて、ニルは、ぜったいぜったいいやです」
 許せないのだとニルは大きな瞳をレプロブスへと上げる。
 まずはスケルトンの数を減らさなければとニルは杖を振った。杖から放たれる光はグランヴィル小隊が前へ進むための道標となるはずだから。

 汰磨羈は自身の刀に霊力を込める。深呼吸をして意識を集中させるのだ。
 研ぎ澄まされた彼女の霊力は目に見える形で周囲を漂う。
 自身の意識を剣へ一体化させることにより、更に切れ味の鋭い一閃を放てるのだ。
 向かう先はスケルトンの軍勢。
 汰磨羈は庭園の地面を蹴り、鋭い速度でスケルトンへと斬り込んだ。
 刃がスケルトンの骨を砕き地面へと散らす、スケルトンの攻撃に距離を取った汰磨羈は十分に自分へと引きつけてから視線を上げる。汰磨羈の背面へ浮かび上がった魔術式から膨大な閃光が解き放たれた。
 それは近づいてきていたスケルトンを粉砕し押し返す。
「そっちは任せたぞティナリス!」
「はい!」
 汰磨羈はスケルトンを押し返しながら、ティナリスへ振り返った。
 彼女らへある程度のスケルトンを『任せる』ことで自分達も動きやすくなる。
 それはティナリスたちの力量を測れる汰磨羈だからこその采配だろう。
 任せることで信頼を示すのだ。ティナリスにとって任せて貰えることは嬉しい。より一層引き締まる思いで戦場を見遣るティナリス。すぐに汰磨羈のようにはなれないかもしれないが、その戦術を学ぶことは今からでも出来るのだから。
 吹き飛ばす数と方向のバランス、広域俯瞰による戦況把握など汰磨羈のやり方をティナリスはしっかりと記憶する。許容量をオーバーしないように自らが動き回ることで調整しているのだと感心する。
「すごい……」
 思わず漏れた言葉に汰磨羈は「積み重ねればいずれ成れる」と目を細めた。
 それにティナリスの傍にはリースリットも付いている。
 リースリットもまた戦況を多角的に捉え、対応策を打ち出す事に長けた軍師の才を持つ者である。
「常に仲間の動きを頭の中に入れてください。彼らがどう『動かすか』を見極めるのが貴女の役目です」
「はい……」
 言葉にするのは簡単だろう。けれど、それが難しいことをリースリットとて分かっている。
「ここは私が前に出ます。後ろからの指示はお願いしますね」
「分かりました。『任せて』ください」
 ティナリスの言葉にリースリットは頷きスケルトンの前に立った。
 舞うような剣尖がスケルトンの頭蓋に食い込み、そのまま真上へと跳ね上がる。
 リースリットの剣筋はまるで炎が揺らめくように優雅であるとティナリスは目を瞠った。
 彼女の傍では妙見子が盾役として前線へ出てくれていた。
 仲間が味方を巻き込まない位置へスケルトンを誘導する。それが妙見子の役目だった。
 耐久力のある妙見子だからこそ取れる戦術であろう。
 ティナリスは彼女の戦力を踏まえつつ、グランヴィル小隊へ攻撃の指示を出す。

 ジルーシャは自身へ障壁を張り巡らせ、庭園の奥でふんぞり返るグドルフへと視線を向ける。
(グドルフのことは驚いたけれど……きっと、彼は自分の誇りに従っただけ。アタシたちは折れずに戦う姿を見せる。それが彼への礼儀)
 グドルフへ掛ける言葉を心の中へ押しとどめ、ジルーシャは前を向く。
 後衛にはグランヴィル小隊の指揮官であるティナリスがいるのだ。
 守ってやらねば友人のためにジルーシャは此処へやってきた。
「……絶対に、取り戻しましょ。皆も――ティナちゃんのお父さんも」
「ありがとうございます、ジルーシャさん」
 走り出したグランヴィル小隊へ回復の手を差し向けるのはシュテルンだ。
 スケルトンから受けた傷をシュテルンは瞬時に癒す。
 やはりイレギュラーズとは違ってグランヴィル小隊が傷を受ける頻度は高い。
 だからこそ、自分が此処で癒し手となる意味があるのだとシュテルンは頷いた。

「ジャレッド殿とフェネリー殿は俺に合わせてくれると嬉しい」
「ああ、了解した」
 ヴェルグリーズの言葉にジャレッドは大鎌を振り上げる。
 先導するヴェルグリーズに重ねる形で刃をスケルトンへと走らせた。
「ティナリスさん。アナタが思っていることがあるなら、お父様にぶつけてくるといいのです」
 メイはティナリスへ言葉を紡ぐ。メイの優しい声にティナリスはこくりと頷いた。
「既に自我や記憶が保てなくなっていたとしても、想いの欠片はきっと残っているのです」
「はい。ありがとうございます。メイさん」
 目を細めたメイは心の中で「ねーさま」と祈りを捧げる。
 どうかティナリスとパーセヴァルに奇跡が起きますように。
 その肉体が正しく土へ還る前に、想いが通じる奇跡が起きますように、一緒に祈ってほしいのだとメイは心の中で唱えていた。
 瞳を上げたメイは戦場を見渡しティナリスが指揮するグランヴィル小隊へ視線を向ける。
「エセルバート家のみなさま、小隊のみなさまは無茶はしないでくださいです! 深手を負ったら下がって治療を受けてほしいですよ!」
「ああ、分かったぜ。頼りにしてる」
 メイの声に応えたのはロニだ。
 この場で零してしまう命が一つでもないようにとメイは癒やしの鐘を響かせる。

 グドルフはリゴールを守るためとは別に、一度、レプロブスを孤独にしてしまった贖罪をしようとしているのかとグリーフは思い馳せた。
 特異運命座標と対峙するレプロブスは討たれるかもしれない。あるいは、このまま神の国で生きるということもあるだろう。その時、レプロブスの隣に、彼の友人が居ない、そんな未来を避ける為なのだろうか。
 レプロブスが友人と死別したという過去を変える為に、共に歩もうとしているのではいか。
 そして、共に逝こうと想っているのではないか。そんな風にグリーフは思考の海を揺蕩う。
「……わたしが為すことはかわりません。私は、私が出会ったものを、守ってきたものを、否定され、奪われることを許容するわけにはいきませんから」
 仲間やグランヴィル小隊の面々がスケルトンを押さえている間にグリーフはモートン達の元へ走り込む。
 彼らの前に立ちはだかり引きつけるのだ。一人で三人の相手をするには骨が折れるだろう。
 けれど、グリーフは自分が傷付く事を恐れない。「ごめんなさい」と悲しむモートン達の為にもグリーフは倒れる訳にはいかなかった。
 グリーフがモートン達を相手取るのとは反対の位置でレプロブスと対峙するのはロジャーズだ。
 己を防御壁で強化しレプロブスの前に立ちはだかる。
「――其処の賊と同じ釜の飯を食った。
 ――愉快だと思わないか? 賊はまったく、一番仮面を被っているが」
「何の話しだ」
 ロジャーズの言葉はレプロブスに響かない。
 レプロブスは『グドルフ・ボイデル』が『アラン・スミシー』だということを知らない。
 山賊が旧友であると認識は無いのだ。だから、ロジャーズの言葉はレプロブスには響かなかった。
 ならばとロジャーズは次の言葉を投げかける。
「――奴隷を買った。飼い慣らし、洗脳して私とし、マッチポンプの道具とした。
 ――練達でも私を作った。ひとつは今でも私の事を先生と親しんでくれている。ひとつは精神を病み、肉体もグチャグチャだ」
「化け物め」
 そのレプロブスの台詞はロジャーズにとって褒め言葉であろう。
 それにレプロブスにとって得たいの知れないロジャーズは憎悪の対象であった。
 ロジャーズが言葉を紡ぐ程に苛立ちを覚える。旅人への怨嗟が積み上がっていく。
「――私は今、貴様の前で司祭と戯れている。
 私を狙わなければ――貴様自身への否定と成ろう、冒涜的だ」
 ロジャーズはレプロブスの攻撃を受けながらも平然とその場に立ち続けていた。


 剣檄が美しい庭園に響き渡る。
 スティアはパーセヴァルを前に奮闘していた。
 純粋な力量を測るという意味でもスティアが対峙するのが一番適切であっただろう。
 パーセヴァルの剣尖がスティアの剣を跳ね上げる。辛うじて手放さなかった剣柄であるが、指先はじんじんと痺れていた。
「……っ」
 パーセヴァルは時折、躊躇うようにスティアへの攻撃を弱める。
 それは、彼の中で未だに聖遺物と本人の主導権が争われている証拠であろう。
 剣の聖遺物に完全に同化していたのなら、もっと戦闘能力は高いはずである。
 スティアは仲間がスケルトンと戦っている間にパーセヴァルから読み取れる情報を集めていた。
 決して倒れぬ聖花の剣と蔦剣の騎士の戦いは、絵画の如く美しき光景であった。
 飛び散る赤い血さえも、光の中に色彩を加える。
 リゴールによって瞬時に癒えた傷から、光の粒子がさらりと空中へ消えた。
「聖遺物よ。私は何をも望みません。その私を悪と謗りますか」
 戦いの合間にもリゴールはパーセヴァルへと声を掛け続ける。
「司祭よ、何も望まぬといえど、黒衣纏う者と志しを同じくしているだろう。私の正義と貴様の正義が違えている事実には変わりない。戦場に出て来たのならば討つ。簡単だろう?」
 リゴールは聖遺物に侵食されながらも未だ抗っているパーセヴァルへ意識を向けた。
「パーセヴァル……思い出しなさい。メレイアへの愛を!
 そして二人の宝物たる、ティナリスへの愛を!」
 その言葉はパーセヴァルの剣を止める。本人の強い意思が剣を振うのを拒んだのだ。
 スティアはその隙を見逃さず、パーセヴァルの剣を押し返した。
「ティナリス! パーセヴァルの高潔な魂は、まだ喪われてはいない! 呼び掛け続けなさい!」
「分かりました!」
 ティナリスは深呼吸をして声を張り上げる。
「お父様! 負けないでください! 私も遣り遂げてみせますから!」
 それは未来を見据える声だ。メレイアに託されたティナリスを守って見せるのだとリゴールは今一度決意を握り締める。
 リースリットはパーセヴァルが攻撃を緩めるのを見遣りその性質を考える。
 あれは剣の聖遺物。それ自体が遂行者なのだ。アークに取り込まれ自我を芽生えさせたものの、他の聖遺物と違い自ら器を形成できなかったのだろう。だからパーセヴァルという依代を欲した。
「欲深き業は悪である、確かに。その意見には同意です。冠位強欲、冠位傲慢。人の欲深き業の体現者たる冠位七罪はまさに悪だという事ですね……違いましたか?」
「神を悪と誹るか人の子よ」
 ピリリとした緊張感がリースリットの耳を走る。
 けれど、それはリースリットの言葉に聖遺物が反応を示したと同義であった。
 剣がパーセヴァルを支配しているのならば、彼を完全には取り込めていないのだろう。
 切欠があれば逆にパーセヴァルが主導権を握ることも可能では無いのか。
 リースリットは可能性を導き出す。

 ――――
 ――

「……大丈夫。その手が震えぬ様に、揺らがせない様支えるのが……おれ達の役目」
 ロニ達へ声を掛けるのはチックだ。
 スケルトンの大半を制圧したチックたちはグランヴィル小隊をモートン達の元へ送り出す。
「モートン達も、パーセヴァルも……絶対に止める、する」
「ああ、ありがとうチック」
 チックが奏でるは、白く揺れる燈火の旋律。
 レプロブスが亡骸を操る術を持つのならば、止めることでアンデッドと化したモートン達を解放出来る糸口に繋がる筈だとチックは考えを巡らせる。
「貴方達の眠りを妨げるその傀儡の糸を断ち切る! それが私達の役目です!」
 トールはグリーフが押さえ込んでいたモートン達へ剣を叩き込んだ。
 弾かれるように後退するモートンをトールは追撃し圧倒する。
 解放する手立てはレプロブスを倒す事で成されるだろう。
 けれど、彼らをグリーフ一人に任せきりには出来なかった。
「こっちは私が受け持ちます!」
「ありがとうございます。トールさん」
 頼もしい背中だとグリーフは目を細める。
「ニルは、忘れません。アンデッドにされたみなさまの、生きているときをニルは知らない、けれど。
 大切なものをまもるために頑張っていたはずの、小隊のみなさまのこと」
 悲しげに眉を寄せるニルは杖を握り締めモートン達を見つめる。
「ぜったいぜったい、忘れたくありません!」
 そんな風に言ってくれるニルへティナリスは「ありがとうございます」と頭を下げた。

(神様、神様……仲間……)
 シュテルンはレプロブスとリゴールの間にあるお互いを思う気持ちを感じ取っていた。
 敵であれ味方であれ、大切なものがあることが羨ましかったのだ。
 空っぽである自分には眩しすぎるもの。
 シュテルンにとって誰かの為に動く人や、自分の為に動ける人は皆羨ましいものだった。
 自分はどちらの為にも動く事は出来ないのだから。
 ずっと、言いつけを守って来た幼い子供なのだろう。何も出来ない、したい事も分からない子供。
 こんな中途半端な自分は『遂行者』にも『奇跡を起こす者』にもなれないのだとシュテルンは嘆く。
 何故、あの日神様は自分を空中神殿へと呼んだのだろう。
 逃げる事が出来たのは幸いだったけれど、その先はシュテルンにとって霧の中を歩くようなものだった。
 天義の悪意を根絶したいだなんて単なる言い訳で、本当は別の思いが胸を締め付ける。
「かみさま……」
 シュテルンは眉を寄せその名を呼ぶ。
 自分はもう楽になりたいのだ。怒りに身を任せ憎み、羨み、感情の波に押し流されるのが嫌なのだ。
「……最後に……ううん、もう遅いね?」
 庭園の芝生に巻かれた氷の床に自分の顔が映り込む。
 それは、酷い顔で此方を向いていた。
 天義という国に向けられる憎悪で醜く歪んだ顔だ。まるで自分の方が『悪』のようではないか。
 それなのに自分は『遂行者』になれるわけでもない。
 当たり前だ。遂行者になって何が成せるというのだ、力の無い自分に、『したい事』も分からない自分に、何があるというのだ。特異運命座標であるならば奇跡を起こせるはずなのにと、その事象にだけ縋る醜い自分が嫌だった。
 立ち向かうことを恐れ、逃げている自分に掴み取ることの出来る未来はあるのだろうか。
 胃が裏返ってしまうような吐き気がシュテルンを襲う。
(怒りや悲しみ、そんな負の感情でしか動けない私が……特異運命座標?
 ……嗚呼、こんな顔の勇者が居ていいはずがない)
 自縄自縛の苦しみの中、それでもシュテルンは回復の手を止めなかった。
 仲間の命を預かる身として、それだけは果たさなければならないものなのだから。

 汰磨羈は戦場を見渡しレプロブスと戦う仲間の元へ駆けつける。
 この位置からだと殲光砲魔神は仲間を巻き込む恐れがあると咄嗟に判断した汰磨羈は刀に焔を纏わせた。
 渦巻く焔は汰磨羈の刀を赤い刀身へ変える。
 真っ赤に輝く刀を汰磨羈は振り上げ、レプロブスへ向けて解き放つ。
 一瞬にして庭園へと広がった熱風はティナリスの頬を焦がすような強さを持っていた。
 これがイレギュラーズの戦い方なのかとティナリスは汰磨羈の背を見つめた。
 メイは戦場を見渡しグランヴィル小隊や仲間へ回復を行き渡らせる。
 汰磨羈やヴェルグリーズのような戦闘経験豊富なイレギュラーズは同じ攻撃を受けてもダメージの少ない躱し方をしていた。
 否、懐へ入り込むような大胆な戦術が総合的なダメージを少なくしているのかもしれない。
 一方でグランヴィル小隊は堅実な戦い方をするとメイは分析していた。
 特異運命座標では無い彼らは、一見命を捨てるような大胆な戦術は出来ない。
「それで良いですよ」
 命を大切にするグランヴィル小隊の動きはメイにとって好ましいものだった。
 これでイレギュラーズのように大胆な行動をすれば回復が追いつかない状況になってしまう。
 メイはティナリスを見つめ目を細めた。
 自分が前へ進むのと同じようにティナリスもまた指揮官として成長しているのだろう。
 だからこそ、メイは次の手を『攻撃』へと転じることが出来る。
 仲間の体力が安定しているからこそできる、信頼の証。
「ねーさまの鐘は、生から離れたものにより強く、響くのですよ」
 眩い光と共に庭園へと響き渡る鐘の音は、耳にしたものに安らぎを与えるものであった。

 メイが響かせた鐘の音は敵には恐ろしいものに聞こえただろう。
 けれど仲間にとっては心強い祈りの音色だった。
 トールはレプロブスへ接敵し剣を走らせる。
「くっ……!」
 受け止めようと手を翳したレプロブスはトールの力に押し負け弾かれるように二、三歩後退した。
「貴方が過去に受けた仕打ちには同情します!」
「何が……」
 分かるというのだ、とレプロブスはガスマスクの下で零す。
 故郷の住人が全て動かぬ亡骸となっていた絶望がレプロブスの脳裏に焼き付いて離れないのだろう。
 心優しい男だった故に、村人たちの怨嗟を全て背負ってしまったのかもしれない。
「ですがこれ以上、悪意という毒を振りまくというのなら!」
 トールは再び刃をレプロブスへと向ける。
「パーセヴァルさんもグランヴィル小隊の皆さんも貴方の都合の良い駒じゃないんです!」
 咄嗟に撒いた毒の障壁をトールは物ともせず突破してくる。
 レプロブスに焦りが見えた。
「死者も貴方の憎しみも、掘り起こすべきではなかったんですよ!」
「……!」
 突きつけられる剣と共に降ってくる言葉。
 レプロブスはトールの声に胸を掻きむしられるような感覚に陥る。
 トールはチックへと一瞬視線を向けた。言葉は無駄ではないとトールは伝えたかったのだ。
 チックはトールの視線へ頷き、レプロブスへ顔を上げる。
「……君と会う、するのは初めてで。おれは君の事を何も知らない」
 だからこそ知らなければならないとチックは問いかける。
「──どうして、そこまで旅人を憎むの?」
「旅人は、毒をまき散らす病巣だ。駆逐せねばならぬものなのだッ!」
 自分自身の言葉にレプロブスは苦しげに顔を歪めた。
「許せない気持ちから、沢山の旅人の命を奪って……一度止まって、それでも尚奪おうとする。まるで、自分の気持ちに雁字搦めになってるみたい……レプロブスが今している事に、『終わり』はあるの?」
 旅人全てを殺す事が出来れば終わりが訪れるだろう。
 けれどそれが『不可能』だということもレプロブスには分かっている。分かっているのだ。
 それでも、故郷の人たちの無念や悲嘆を誰が晴らせようか。
 自分が背負ってやらねば誰が彼らを覚えていてやれる。
 レプロブスの葛藤がチックにも伝わってきた。
 揺るがなかった彼の心が、自分達の言葉で波打ったのだろう。
 もしかしたら、今までは誰も彼の心へ寄りそってあげられなかったのかもしれない。
 故郷の人々の無念と怨嗟を一身に背負い、『壊れて』しまったのだ。
 チックは眉を寄せレプロブスへ向かい合う。
「その気持ちはレプロブス自身のもので、おれが決められるものじゃない。
 でも、自分の『正しい』を貫く為、モーリス達を利用した事を……見過ごす、出来ない。
 彼らは人々を守る為に戦って、その末に命を散らした。
 聖騎士として戦い抜いた……三人の想いを、これ以上傷つけないで!」
 チックの言葉と共に放たれた魔術をレプロブスは真正面から受けた。
 叩きつけられる力の奔流に身体が弾かれ庭園の地面を転がる。

 慣性のまま仰向けにパタリと手を下ろしたレプロブスへグリーフはハイテレパスで語りかけた。
 何か伝える言葉があれば、それを仲介したいと思ったのだ。
 けれど、レプロブスはそれを「必要無い」と返す。拒絶ではなく不要であるとグリーフへ返答したのだ。
 今までとは違うレプロブスの行動をグリーフは静かに見守る。
 口を挟む事は容易である。けれど、この時グリーフにはレプロブスが『自分の口で』何かを伝えたいと考えているのだと分かった。グリーフは動かぬレプロブスへ駆け寄るリゴールを見つめる。
「レプロブス! どうか、小隊の皆や、パーセヴァルを解放してほしい。
 彼らの善き想い出を、これ以上踏み躙らないでくれ!」
 倒れているレプロブスの手を両手で包み、リゴールは懇願するように叫んだ。
「君はまだ遂行者ではない。やり直す機会は必ずある。君の心の闇を……私は、祓いたい」
 世界には毒があることは事実であろう、時として愛も踏み躙られることもある。
「それでも君には皆から愛された事を思い出して欲しい。
 私も、アランも、教え子達も……皆、君を愛していた事を!」
 レプロブスはリゴールの言葉に、その手を握り返す。
「私は、どうすれば良かったのだ」
 この時初めて、レプロブスは目の前のリゴールの瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「村の人達の残した無念の涙は、旅人を一人二人殺した所で晴れる訳では無い。あの屈託の無い子供達の笑顔をどうして、簡単に消す事ができるのか。旅人が病巣だからと思うのはおかしいことなのか? そうでなければ村の人達は何の為に殺されねばならなかったのだ」
 辛い苦しみの中でレプロブスは『旅人が悪である』と考えに行き着いたのだろう。
 それは、ある意味での信仰であった。心優しい男が縋った悪への憎悪。
「……私には、まだ答えが出せない」
 レプロブスはパーセヴァルを利用していたが操っている訳ではなかった。だからパーセヴァルの制御は不可能であるが、アンデッドたちへ掛けた術式を解く。
 地に転がりながらも動こうとしていたグランヴィル小隊の三人が元の亡骸へと戻った。
 リゴールとグリーフは気絶したレプロブスを庭園の隅へと運び仲間の元へ翻る。


 ヴェルグリーズはティナリスやパーセヴァルと面識のあるジャレッド達の心の傷を慮る。
 きっと心を痛めて戦う事になるのだろう。
 ジャレッド達達はティナリスよりも割り切っているだろうけれど、それでも辛くない訳がない。
 叶う事ならパーセヴァルと会話の時間を持たせてやりたいとヴェルグリーズは想っていた。
 それにはまず、聖遺物に侵食されているパーセヴァル自身の意思を引っ張り上げねばならないだろう。
 融合直後の今ならばパーセヴァルの意思もまだ沈みきっていないだろう。
 スティアたちと対峙している時も時折、剣を振るう事を拒んでいたのだから。
「キミの娘や同僚達を守る為にもどうか聖遺物に負けないで欲しいと願うよ」
 ヴェルグリーズはパーセヴァルへ言葉を掛ける。
 そんな心優しいヴェルグリーズの声はジャレッドの耳にも届いていた。
 グランヴィル家を守る為汚れ仕事も淡々と熟してきたジャレッド達にとって、そんな風に他人に対して優しくあれるヴェルグリーズが眩しかったのだ。
 パーセヴァルが死んだ日にセオドリックと自分達の立場は変わってしまった。
 友人から主従の関係になったのだ。彼が大切にしている姪のティナリスも、自分達にとって守るべきものになった。役目ならばどんな事だってやってみせた。
 だから、そんな役目とは関係の無いヴェルグリーズが一層眩しく見えたのかもしれない。

「聖遺物を引き剥がすか破壊したら、パーセヴァル殿をアレから解放できないだろうか」
 アーマデルは剣を振いながら思いついたことを口にする。
「……むしろまだいるならば霊魂だけでも脱出できないか、パーセヴァル殿?」
「それは無駄な足掻きだ」
 アーマデルの問いに応えるのは『聖遺物』の方。
「この男は既に死んでいる。私を壊せば即座に土に還るだろうな。形を保っているのは私の力があるからだ。それを喪えば消えるだけだ」
 聖遺物の言葉に唇を噛みしめるのはロニだ。
 自分が聖遺物を持っていたから、パーセヴァルを失う事になった。
 アーマデルはロニの肩をぎゅっと握る。
「直接害した訳では無いのだろう、気に病み過ぎるのは良くない……と言っても気にしてしまうのだろう、俺もそうだ。ならばパーセヴァル殿をアレから解放し、『彼』として往くべき処へ逝けるよう、その方法と手段を考えよう。その為には彼を知る者の想いが必要だ」
 聖遺物を壊せば即座に崩れるのならば、押さえ込んだ状態なら会話は可能ということ。
 アーマデルはロニの背を押し、共にパーセヴァルへ向き合う。

「パーセヴァル様。何年も抗っていた、強いひと。
 そんなに前から……ニルが目覚める前から、遂行者のひとたちの行動は始まっていたのですか?」
 ニルはパーセヴァルの瞳をじっと見つめ問いかける。
「どう定義されるかの違いでしかない。目的があり行動していたのは事実だが、その当時は遂行者などと呼んではいなかった。ただ、『悪』である黒衣の者たちを殲滅する一点のみで動いているのだ」
「家族は、だいじです。パーセヴァル様はティナリス様を傷つけたくはないはずです」
 ニルは聖遺物の中のパーセヴァルへと呼びかける。
「パーセヴァル様、お願い、頑張ってください。こんな剣に、負けないで……!」
 疼くように制御不能になる身体に聖遺物は顔を顰めた。
 先程からイレギュラーズの声に沈んだ筈のパーセヴァルが抵抗を強めているのだ。
「貴方が守りたかったものは何?」
 スティアはパーセヴァルへと視線を上げる。
「自身の大切な人達? それとも天義に住まう人達?」
「……、は。私は」
 抗うように言葉を紡がんとするパーセヴァルが一瞬だけ浮上したように見えた。
「どうか思い出して! 高潔だった騎士の頃の自分を!」
 剣柄を握る手が震えていた。スティアはその変化を見逃さない。
「私は貴方の事はあまり知らないけど、誰かを守って死んだなら優しい人だったのは間違いない、そんな人に誰を傷つけて欲しくはないかな。それに可愛い娘さんもいるんでしょう? 立派な姿を見せてあげるのが親のやるべき事じゃないかな?」
 苦しげに頭を抱えたパーセヴァルが歯を食いしばり剣を地面に突き刺す。
 肩で息をするパーセヴァルの様子を見つめリースリットは紅い瞳を瞬かせた。
「……パーセヴァル卿、冠位強欲は撃ち滅ぼしました。私達はあの戦いに勝ったのです」
「っ、勝った?」
 リースリットの言葉にパーセヴァルは明確な答えを返した。
 四年物の間、聖遺物と戦い続けてきたのだ。記憶は混濁し次第に自我も保てなくなっていたのだろう。
「それでも戦いは終わっていません。冠位傲慢が今また天義を襲っています。
 貴方を支配しているその剣も、冠位傲慢の手先です。
 生き残った貴方の部下も、成長したティナリスさんも、今こうして戦いに赴いています。
 ――パーセヴァル卿!」
「これ以上は、やらせんぞ!」
 リースリットの声に明確な答えを返すほど浮上したパーセヴァルに危機感を覚えたのだろう。
 主導権を無理矢理奪った聖遺物が、剣を振り上げ『ティナリス』へと刃を向けた。
 最も効率的にパーセヴァルの心を挫く方法は、守りたいと願った大切な者を目の前で殺す事だ。

 目の前に迫る刃にティナリスは目を見開く。
 何処かで信じていたのだ。
 あの気高きパーセヴァル・ド・グランヴィルは娘である自分に剣を向けたりしないと。
 それは何者に操られていても、絶対に覆らないのだと信じていたのだ。
 だから怖かった。恐怖した。足が竦んで動けなかった。
「お父様……」
 小さく呟かれた言葉と共に――赤い血潮が地面に散った。

 ティナリスの瞳には赤い血と、背中を突抜けた剣尖が映る。
「は、っ……パーセヴァル! アンタまだそこにいるんでしょ!?」
 血を吐きながら自分を貫く刃を掴んだのはジルーシャだった。
 聖遺物だか何だか知らないけれど、たった四年一緒にいるだけの剣に親子の絆を断ち切らせるものかとジルーシャは雄叫びを上げる。
「しっかりしなさい! ティナちゃんに――自分の娘に、剣なんか向けんじゃねえよ!!」
 パーセヴァルの腹に蹴りを入れたジルーシャは自分の腹から剣が抜ける感覚に眉を寄せる。
「ジルーシャさん!」
 悲壮な顔をしたティナリスがジルーシャに駆け寄り、血塗れになるのも構わず止血を施した。
「大丈夫。アタシはまだ戦える。このまま親子で傷つけ合う姿なんて見たくない」
 ティナリスに支えられ立ち上がったジルーシャはニルに回復を貰い、改めてパーセヴァルを見遣る。
 パーセヴァルは剣柄を握り、抗っているように見えた。
「例え一時の、限られた瞬間でもいいから、ティナちゃんに、もう一度だけ家族の時間をあげて……アタシがどれだけ欲しくても、手に入れられないもの。少しでも可能性があるならティナちゃんにだけは!」
 ジルーシャの奏でる旋律にパーセヴァルの動きが止まる。
「――戻ってきて。パーセヴァル・ド・グランヴィル」
「ぐ、う……」
 うめき声を上げたパーセヴァルは抗っているのだろう。
 剣を振うことを諦めていないと判断した妙見子は深呼吸をしてから拳を握り込んだ。
「……一発殴らせてくださいね、パーセヴァル様ッ!」
 どうか、一時だけでもいい。ティナリスと言葉をもう一度交してほしい。
「ティナリス様の父親として私は言葉をかけ続けますよ」
 自我が浮上している今なら、その可能性は十分にありえると妙見子は考えた。
 ヴェルグリーズやアーマデル、ニルやスティア、リゴールやジルーシャが声を掛け続けたから、パーセヴァルはここまで抗っていられたのだ。
「私はもう一度貴方に戻ってきていただかなけばならないのです。せめて貴女の娘にはしっかりお別れしてあげてほしい」
 騎士の家系に生まれ、両親を早くに無くしたティナリスにとって父親が遂行者だったという衝撃はきっと計り知れないだろう。それが目の前に現れたのだ。動揺だってするはずだ。
 もし、ティナリスが『向こう側』へ行きたいと願うのならと、妙見子は眉を寄せる。
 そして直ぐさまその思考を振り払った。
「違う、決めたのです。私はアレを否定すると。絶対に離しません」
 彼女の仲間も友人も、安寧も。彼女が辿った道筋を。
「……絶対に護り通します。何があっても私はティナリス様の味方でいなければならないのです」
 妙見子はその思いを込めてパーセヴァルに拳を叩きつけた。
 その場に蹲ったパーセヴァルは歯を食いしばり、剣を地面へ滑らせる。
 手にした剣は聖遺物ではないが、家族を抱きしめるのには不要だったからだ。

 パーセヴァルはティナリスを抱きしめ笑みを浮かべる。
「大きくなったな……」
「お父様……!」
 涙を流しながらパーセヴァルへと抱きついたティナリスはぐずぐずとしゃくり上げた。
「聞け、ティナリス。私はもう死んだ身だ。この身体は敵のものとなるだろう。
 必ず討て。決して生かしてはならない。お前なら出来るな?」
「……!」
 ティナリスは父の言葉に目を見開く。
 自らを討てをいうのだ。それは騎士として『託す』娘への信頼でもあった。
「っ、はい。必ず、必ず討ち果たします」
「良い子だ……ママは元気か?」
 その言葉にティナリスはどう応えればいいか分からなかった。
 四年前の大戦で、母メレイアは殉教してしまったのだから。
 ティナリスの迷いに感づいたパーセヴァルは「そうか」と視線を落す。
「きっと、誰かを守って逝ったのだろう。メレイアは……、ああ、そういう人だった」
 僅かに憂いを帯びたパーセヴァルは、それでも誇らしげにティナリスへ笑みを向けた。
「ティナリスもママのように強く気高い人になりなさい。
 ……愛しているよ」
 強く強くティナリスを抱きしめたパーセヴァルは立ち上がり踵を返す。
「もう、ここも閉じる。お前はどうしたい?」
 パーセヴァルは庭園の隅でふんぞり返るグドルフへ問いかけた。

 戦場の隅で地に伏していたレプロブスへグドルフは近づき襟首を掴み上げる。
 息は辛うじてあるが、意識は無い状態のレプロブスをグリーフ目がけて投げつけた。
 頑丈なグリーフであれば、この程度のダメージ問題ないだろう。グドルフは彼女の性質を多少なりとも知っていた。
「何を……」
 顔を上げたグリーフにグドルフは大仰に溜息を吐いた。
「ソイツは遂行者でも何でもねえ。ただのニセモンだ。どうやって取り入ったか知らねえが、使い物にもならねえ奴を置いとく義理もねえだろ? 煮るなり焼くなり好きにしろや」
 言い放ったグドルフへ汰磨羈の刀が閃く。
 距離を取らされたグドルフの靴底が芝生を噛んだ。
 羽織っていた白いコートがバサリと地面へ落ちる。
「どうせ、理由を聞かれても語るつもりは無いのだろう?」
 汰磨羈の問いにグドルフは鼻で笑ってみせた。何を口にした所で、彼が遂行者である事実は変わらない。
「ならば、互いの刃を叩きつけ合うのみだ。……其の刃に問わせて貰うぞ、グドルフ!」
 汰磨羈の刀身を受け止めるのはいつもの無骨な斧ではない。美しい直剣であった。
 刃同士が重なり、金属の摩擦音が響く。
「グドルフ殿、こういった形での再会となったこと、実に残念だ」
 ヴェルグリーズは汰磨羈の攻撃の隙を突いてグドルフへと剣を走らせた。
「俺はこの先に向かう理由がある、だから戦うのであれば……容赦はしないよ」
「おいおい、先に剣を向けたのはお前らだろうが」
 ヴェルグリーズの剣を弾き、距離を取るグドルフ。
「お荷物を投げつけたからか? 別に怪我もしてねえだろうがよ」
 汰磨羈の追撃にグドルフは直剣を振り上げ叩き落とした。重みのある攻撃に汰磨羈の腕が痺れる。
 遂行者と相成ったグドルフが一筋縄ではいかないのは汰磨羈にも分かった。

 仲間とグドルフのやり取りを静かに見守るのはメイだ。
 もし、汰磨羈やヴェルグリーズに怪我が及ぶことがあれば直ぐさま回復出来る様に注視する。
 グドルフに対してメイが掛ける言葉は無い。
 きっと、ほかの仲間が言葉を尽くしてくれるだろうから。
 その思いを紡ぐ手伝いをすることが、メイにとってのグドルフへの言葉の代わりだった。
 其れ其れに思うことを伝えて欲しいとメイは願うのだ。

「グドルフさんはどうして遂行者になったの?」
 スティアの問いかけにグドルフは一瞬苦い顔をして、「俺は山賊だ」と答える。
 何か考えがあるに違いないのだとスティアはグドルフの顔をじっと見つめた。
 普段であればその背は頼りがいのあるものだった。
「でも、普段から天義という国の事を心配しているようにも思えるんだ。
 理由なしにこんな事はしないよね? もし何か手伝える事があるなら手伝うよ」
 スティアの真摯な瞳にグドルフは面倒くさそうな顔をする。
「山賊ってのは奪うもんだからな。こいつらと利害が一致した。それだけだ」
 酒、女、飯、それが手に入るならば居場所はローレットで無くていいのだとグドルフは下品に笑った。
 それがどうしても、本当のグドルフの気持ちで無い様な気がしてスティアは唇を噛む。
『私は別段、縁深い者ではなかった。だからこそ。言えることもあるのでは。言葉は不要なのかもしれませんが。人間、大人、男性は特に、言葉が足りないと聞きますから』
 グリーフはレプロブスを抱えたまま、グドルフへとハイテレパスで問いかける。
 その問いにグドルフは応えなかった。何れだけ言葉を乗せようとも彼が遂行者である事実は消せない。
 語るべく言葉は内面まで言い表せないのだから、不要であると判断したのだろう。
 グリーフに背負わせたくないと思ったのかも知れない。その真意は読み取れなかった。

 スティアの背後からロジャーズがぬるりと現れた。
 手には『燃える石』の弁当がのせられている。それをグドルフの悪人面目がけて叩きつけた。
「糞喰らえと謂った! 莫迦め! 貴様が莫迦な所以は神とやらに在るのだよ!
 何方の神とは謂わないが!」
 ロジャーズの行動に舌打ちをしたグドルフ。
「『遂行者』グドルフ・ボイデル! 度し難い男よ、救いようのない莫迦よ!
 貴様、貴様等も含めて『いったん退く』のは如何だ? メリットが無い? 掠奪もしていない?
 嗚呼、貴様等、掠奪ではなくちょうだいと宣え」
 ロジャーズの叫びが庭園へ響き渡る。
「此処に、素敵な、同一奇譚と称される、『魔導書』が一冊。解るな? 理解すべきだ莫迦どもめ!
 滅ぼすのに、白紙とするのに、ナイアルラトホテップに縋らないのだ。
 誘うべきは私だったのだ、愚か者ども! 貴様等を嘲笑う!」
「何を言ってるか分かんねえが、これ以上喚き散らされるのは耳が潰れるからな。俺は帰らせてもらうぜ」
 地面に落ちた白いコートを背に羽織りグドルフは踵を返す。
 汰磨羈はそれを視線で追うも、仲間の動向を見て刀を収めた。

 リゴールは庭園の奥へ消えていくグドルフの背を見つめ唇を噛む。
 ――アラン、おまえは嘘の中にたった一つの真実を混ぜた。
 その名を世界に刻むこと……それが『アラン』の名を捨てた理由なのだろう。
 そして、彼は諦めてなどいないのだ。
 敵を信用させ情報を探り、レプロブスの心をも救い──『自らも生き残る』、その最良の選択を!
 リゴールは杖を強く握り締める。
 自分がグドルフを信じず、他に誰が信ずるというのだ。
 その最良の選択を選ぶ機会が必ず訪れるのだとリゴールは強く願う。
 ――否、俺が作り出してみせる。アラン、おまえだけに背負わせておけるものか!
 リゴールがそう決意した瞬間、庭園の風景が崩れた。
 さえずる小鳥も、地面に落ちる木漏れ日も跡形も無く消え、残ったのは硬質な回廊であった。
 同時に、パーセヴァルの姿も忽然と消えてしまった。

 けれど、グランヴィル小隊のモートン達は取り返す事が出来たのは幸いであっただろう。
「レプロブス……」
 グリーフが抱えるレプロブスへリゴールはそっと手を置く。
 彼の罪は『これから』償わなけらばならないものだ。
 けれど、仲間や自分の声にレプロブスは迷いを見せた。元々優しい彼はきっと後悔をしているのだ。
 そして、グドルフが望んだのなら、『レプロブスの心』さえも救ってみせるとリゴールは瞳を伏せた。

成否

成功

MVP

ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら

状態異常

ジルーシャ・グレイ(p3p002246)[重傷]
ベルディグリの傍ら
水天宮 妙見子(p3p010644)[重傷]
ともに最期まで

あとがき

 お疲れ様でした。
 皆さんのおかげで一瞬だけでもパーセヴァルとティナリスが会話をすることが出来ました。
 MVPは熱いプレイングだった方へ。
 ご参加ありがとうございました。

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