シナリオ詳細
<英雄譚の始まり>隣町におつかいを
オープニング
●困っている魔法使い
「さて、困った」
プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)の職人……魔法使いである老人は、そう呟いた。
老人の目の前にあるゼロ・クール……A-52ナ号。大きなハンマーを持った青年のような姿をした、アンドロイドにも似たような形状をしている。
つい先程まで老人は、このA-52ナ号をお使いに行かせるはずだった。
隣町まで行って、ちょっとした荷物を受け取ってくるだけの簡単なおつかい。
しかしながら、その途中にモンスターの集団が出ているのだという。
勿論、A-52ナ号であれば突破できるかもしれない。しかし、出来ないかもしれない。
まだ稼働試験を終えていない以上、その辺りに老人は確信がもてなかった。
ならばどうするか? 当然ながら、諦めるという選択肢はない。
「……待てよ。そういえば、確か……」
老人が思い出したのはアトリエ・コンフィーの『お手伝いさん』たちだ。
確かちょっとした手伝いなどを受けてくれると聞いていたが……今がまさにその人たちに頼むべきときであるのかもしれない。
そうと決まれば動くのは早い方がいい。老人はアトリエ・コンフィーに連絡をとる準備を始めていた。
●隣町へのおつかい
「ようこそ、ギャルリ・ド・プリエへ」
ゼロ・クール『Guide05』はそう集まった面々に告げた。
依頼主である老人に委託され、今回はGuide05……通称をギーコと呼ばれるアトリエ・コンフィーの案内嬢が今回は説明を請け負うことになったようだ。
ギーコの隣に立っているのは、青年の姿をしたゼロ・クールであるようで、型番はA-52ナ号であるとのことだった。
「今回の依頼は、彼を連れて隣町へ行き、荷物を受け取って帰ってくる……といった内容になります」
そう、今回はA-52ナ号の稼働試験も兼ねているということになる。
なる、のだが。それが依頼となったのには相応の理由がある。
隣町へ向かう道中に、どうにもモンスターの群れが出たようなのだ。
あまり強力なモンスターではないかもしれないが、A-52ナ号の初稼働で壊れてしまうようなことにはしたくない。
そんな当然の心理が、今回の依頼につながったらしいとギーコは説明してくれる。
「確認されているモンスターですが、カエルのような姿をしているようです」
そう、真っ青な姿をしたカエルの集団。
それが今回の敵であるようだが……ここで1つ、問題がある。
こいつら、とにかく数が多い。平原の道を塞ぐように存在していて、近づくものに紫色のベロをのばして威嚇するようなのだ。
如何にも毒がありそうなそのベロに触りたくなどない……ゼロ・クールだって壊れてしまうかもしれない。
だからこそ、今回依頼となったのは正解だったとすら言えるだろう。
「おつかい先の町の名前はベイコ。そこの雑貨店の店主、キニアさんから小包を受け取ってきてほしい……と依頼主は言っていました」
それ自体はたいした用事ではない。大切なのは、A-52ナ号の稼働試験であるということだ。
A-52ナ号にはまだ名前もないので、つけてみるのもいいだろう……それも含めて試験であるのだから。
「この件。どうか、よろしくお願いします、来訪者様」
- <英雄譚の始まり>隣町におつかいを完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●隣町へ向かえ
「今回ははじめてのおつかい、という訳ですね、それがモンスターを伴うのはなかなかに斬新ではありますが……この世界、本当にまだまだ国ができていない時代なんですね……何はともあれ、さくさくと終わらせちゃいましょうか!」
「そうですね。気になることは多いですが、まずはこの地と方々との交流から始めましょう。困っている方々がいるならば、助けぬ理由もないですし」
『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)と『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)がそう言い合うように、今回はおつかいである。同行しているのはゼロ・クール……A-52ナ号だ。
大きなハンマーを持った青年のような姿をしたA-52ナ号は、無表情でシフォリィたちについてきている。
道中、稼働試験兼ねお話したい。そう考えていた雨紅は、まずは呼び方からと声をかける。
「ひとまずナ号様と呼ばせていただきますね」
「ふむ、雨紅に倣って呼ぶとしようか。宜しくな、ナ号」
「僕もナ号と呼ばせてもらおうかな。どうぞよろしくね」
「認識しました」
雨紅に『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)と『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)も同調し、ナ号は頷く。
「しかし、なるほど。索敵と戦闘を伴う長距離移動は、確かに稼働試験にはうってつけだろう。私達が護衛として付けば、協調と連携を学ぶことも出来るしな」
そんなことを言う汰磨羈は行き・帰り共に、前衛に立っての索敵を担当するつもりだった。
鳥のファミリアーを使役して飛ばし、超視力&広域俯瞰を活用して敵影を探しつつ街道を進んでいくのだ。
ダブルワークで移動と索敵を同時にこなす姿は中々に忙しいが、そんな姿を見せるのもまた学習の一助になるだろう。
「初めてのおつかいかぁ……子供の頃を思い出すね。彼のおつかいが上手くいくように全力でそっとお手伝いするよ。短い旅路だけどたくさん学べるといいね」
「はい、よろしくお願いします」
ウィリアムは今回のおつかいはナ号を主体にして、困っているようなら手助けする方向で動こうと考えていた。
ナ号が困っていればすぐ分かるように人助けセンサーも活用しながら見守っておくつもりだ。
(道中の警戒は十分だけど、精霊たちが近くいれば僕も天地統帥でカエルの事を聞いてみようかな)
そんなことを考え精霊たちに話を聞くウィリアムだが、どうにも見た目にも毒で大きくて邪魔くさいカエルのモンスターがウロついているということが分かった。
「そういえばハンマーを使う戦い方についてなんだけど」
「基本的な情報が入力されていますので、それを使用します」
なるほど、あとは経験で学習していく。つまりはそういうことなのだろうとウィリアムは思う。
雨紅も道中で見たものの話をしたり、気になるものがあるか聞いたりと積極的に話しかけていく。
「鳥、空、雲、草木。町ならば人が行う物事。とてもいっぱいあります。是非、色々と見て欲しいです」
自分にとっての舞のような、『楽しい』を知ってもらえたら嬉しいと、雨紅はそう思う。
「そうですね。見えるものの情報を学習します」
ナ号からもそんな返答が返ってくるが、実に素直だ。
「おつかいは良いのですけど、道の途中でカエルの群れが陣取っているというのもなかなか邪魔ですね。今後のためにもある程度退治したほうが街道を使う人にも喜ばれる、でしょうか」
「そうだね。それにこれはナ号さんの稼働試験。バッチリサポートして成功させてあげたいね!」
『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)に『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)もグッと拳を握って気合を入れる。
「そのためにもブルーフロッグをしっかり倒してナ号さんを守るよ!」
「感謝します」
そんなことをフォルトゥナリアに返しているナ号を見ながら『蒼き燕』夜式・十七号(p3p008363)は思う。
(稼働試験としての『おつかい』はたしかにぴったりだろうが…………なんというか、まぁ。『ゼロ・クール』の名付け親は、ずいぶんセンスがないらしい)
型番であるのは見て分かるが、なんとも十七号にとっては親近感のわく出来事であった。
(……私の、『育ての親』もそうだったな。あとからニックネームなんぞつけて……。いまでは笑い話だからいいが。でーー彼をどう呼ぶか、だな。ナ号、でもいいが。依頼の終わりくらいには、別の呼称を贈るのもいいだろう。他にも贈るやつはいるだろうが、それはそれこれはこれ。本人が気に入るかだな)
「ともあれおつかいが成功したらの話だけれどな! ひとまず見守るとしよう」
「はい、よろしくお願いします」
「わっ、声に出てたか!?」
「はい」
どうにも律義なナ号だが、そんなナ号に『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)も元気よく声をかける。
「はじめまして! アリカと申します!」
「はい。A-52ナ号です。よろしくお願いします」
「今日はおつかいですね! まかせてください!」
なんとも元気なアリカだが、それにナ号も頷いてみせる。
「小包を受け取って帰ってくるだけなんですから、きっと大丈夫です! ……と思ったらおっきいカエルさんがいますー!?」
そう、アリカの視線の先。そこには青くて大きなカエル……ブルーフロッグの群れが居たのだ。
「いくらなんでも大きすぎます! そして色が食欲減衰の色をしています! むむ、これは料理しても美味しいかどうか分かりません! というか絵的に食べたくないです! なので普通に倒してしまいましょう!」
「よし、行きは多めに倒していくとしようか」
汰磨羈もそう声をあげ、妖刀『愛染童子餓慈郎』を引き抜く。
「まだまだ不安がある、との事ですので最初は後ろで戦いを見てもらう、という形になるでしょうか。本来の目的でもある戦闘試験を兼ねているようなので、自衛はしてもらう、という形になるでしょうけれども」
「了解しました」
ナ号もハンマーを構えながらシフォリィに頷く。
見たところ、たいした強さは無い。油断しなければ問題はないはずだ……!
●隣町から帰ろう
隣町ベイコの雑貨店の店主、キニアから受け取ったものは小さな小包だった。
何の変哲もない小包の中身は本であるらしいが……まあ、多少乱暴に扱っても問題ないということだ。
いってみれば、そういう事態になっても問題のないようなおつかいだということだ。
シフォリィの提案でちょっとしたお土産……林檎を1個買ってみたが、それ含めて荷物というほどでもない。
それが分かってみれば、汰磨羈も気楽に構えられるというものだ。
ナ号が疑問に思った事には、確りと答えようとも思っていたが……このナ号、なんとも無感情だ。
「御主にとっては、見るもの全てが新鮮だろう? 好奇心旺盛なのはいい事だ。分からないモノがあったら、遠慮なく聞くといい」
「基本情報は入力されています。貴方たちの強さに関しては新しい情報ですが」
「まあ、そうだろうなあ」
ナ号にとってみれば一番自分たちが「分からないもの」だろうことは汰磨羈にも理解できる。
「……っと、また居たな!」
丁度道を塞いでいたブルーフロッグを汰磨羈の殲光砲魔神が薙ぎ払う。
「行きにも言ったが集団戦の肝は相互援護だ。絶対に孤立するなよ!」
シフォリィもアンジュ・デシュを放ちながらナ号の戦いを見守っていく。
ハンマーを振るいブルーフロッグを叩いていく姿には、一応何の問題もない。
「いい調子だね!」
「光栄です」
ウィリアムもケイオスタイドを展開しながら仲間の援護に回っていく。
このメンバーでブルーフロッグ相手であればウィリアムが治療に回る必要もなく、ナ号も合わせて余裕ある状況だ。
雨紅も前衛かつ回避を重視する戦い方をしていた。
更には味方の範囲攻撃の邪魔にならない、ブルーフロッグの攻撃を避けても味方に当たらない位置取りを意識しながらH・ブランディッシュを放っていく。
今後この道に近寄りにくくしたい狙いと共に、ナ号の視線を意識してもいた。
此方の戦いを見て学習している。雨紅は、そう感じたからだ。
だからこそ、雨紅はナ号が前に出ている際は、横につき敵に囲まれぬよう支援していく。
「此度は集団戦、お互いに支えあいましょう」
「理解しました」
「状況を見て適切な援護が出来るといいですね。あ、僕のことはお気遣いなく。攻撃に集中してくださいね」
鏡禍もH・ブランディッシュで邪魔になるブルーフロッグだけを倒していくが、ナ号のそばにできるだけいて、攻撃からかばうことを一番優先していた。ここまで来てナ号が倒されてしまうようなことになっては問題だから、実に的確な行動ではあるだろう。
そう、ナ号は確実にこちらを見て学習している。それが分かるからこそ十七号も前衛で名乗り口上を響かせながらブルーフロッグを一層する構えを見せていた。
行きに集団戦の手本を見せることはできたと思うが、今回はフォロー重視だ。
向かってきたブルーフロッグを真空で攻撃し、自分を狙わせるような戦術だ。
「他の人を狙ったり、攻撃の為の隙を見せたところを狙うんだ。」
「理解しました」
「ナ号さんも安心して戦って! しっかり回復するからね! 」
仲間の援護に回っているシフォリィの声も響き、アリカの「えいやー!」という魔砲の掛け声も響く。
「あたしの唯一無二の攻撃魔法『魔砲』です! 大きな体も貫通して群れの端から端まで届くんですからね! えへん! あっ、でもでも味方の皆さんを巻き込まないように注意しなくてはいけません! 唯一の欠点です!」
まあ、そこは経験も多く頼りになる仲間たちなので問題ない。そしてブルーフロッグの群れを抜ければ、もうすぐこのおつかいも終わりだ。
「どうだ、ナ号。いい勉強になったか?」
「はい、多くのデータを手に入れることが出来ました」
褒める汰磨羈にナ号は肯定的に頷く。そう、汰磨羈や十七号はナ号を「よく出来た」と褒めていたのだが……ナ号はなんとも困惑した様子だった。
「私も褒めこそしたが、お爺さんにも褒めて貰うんだぞ。あの人はお前の親なんだ、それくらいは言っておくといい。褒めてくれる人は他にもいると覚えておくんだ」
「早く帰って、おじいさんにたくさん褒めてもらいましょうね! ……えーっと、A-52ナ号さんなので、2とナで『ニナさん』というのはどうでしょう?」
アリカがそうナ号に聞いてみる。そう、いつまでもナ号ではどうだろうと、名前を考えていたのだ。
「うーん、語呂合わせで「52ナ」を「イヅナ」とか考えたけど、無理矢理かな」
ウィリアムもそう提案し、ナ号は「どちらも良いですね」と頷く。
「戦闘の技術で生計を立てるのが、『ゼロ・クール』の仕事ばかりじゃないだろう。なにか手に職を持つことを考えてみてもいいはずだ」
十七号もそう言いながら、考えていた名前を提案してみる。
「お前にはお前の名前があるが、別の呼び名があってもいい。52に絡めるなら、テルルとか年の別訳でヤールとか」
それもまた素晴らしい名前だ。雨紅も気になる何かがあれば聞き、それを含んだ名前を付けてみたいと考えていたが……ここにきて、ようやくある程度納得いく案が出てきたようだ。
「あとは、優や勇のような、良い意味を持つ字をつけるというのもありですね。たとえば私の雨紅という名。雨の少ない地域の方が、恵みの雨から付けたのだとか」
たとえば今回はナ号と仮に呼んでいたが、そういうのを活かしてもいいだろうと雨紅は思う。
今回のナ号呼び気に入っていたら、そのまま『ナゴ』『ナゴウ』などだ。
「護りの名前になるように『名護』だとか文字つけるのでも良いですね。自分自身にとって嬉しい名であることを最重要視するのが良いと思います」
「そうだね。意味を込めてという事なら雨紅の『名護』も素敵な名前だと思うよ」
「……理解しました」
ナ号は頷くと、それぞれの名前を1つずつ呟いていく。
ニナ、イヅナ、ヤール、名護。どれもいいものだ。ナ号はどれを名乗ってもいいし、名乗らなくてもいい。
どれを選んでもそん色はない。そんな素晴らしい命名の数々だ。だから、ナ号はそれを選ぶ。
「……では『ヤール・名護』と今後は名乗りましょう。とても素晴らしい名前を頂きました」
そう言って一礼するナ号……いや、ヤール・名護。
相変わらず無表情ではあるが……それはヤールの、新たな一歩の始まりであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
A-52ナ号の名前が「ヤール・名護」になりました!
GMコメント
A-52ナ号を連れて隣町「ベイコ」の雑貨店の店主、キニアさんから小包を受け取って帰ってきましょう。
距離としては、徒歩でおおよそ半日かからないくらいです。
平原の街道をテコテコと行きますが、その途中に青いカエルの群れが陣取っています。
どういう風に突破するかは皆様次第です。
●ブルーフロッグ×たくさん
全長1mくらいのでっかい青いカエル。
毒を持つベロをのばすことによる槍や鞭のような攻撃が得意です。
●A-52ナ号
生まれたばかりの青年型ゼロ・クール。
大きなハンマーでの打撃を得意とします。
まだ名前はありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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