PandoraPartyProject

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もう一つの戦い

「状況はどうなっている?」
「世界各国に開いたバグ・ホールより連なる魔種陣営の猛攻に状況は芳しいとは言えません」
 重く尋ねたシェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世の言葉に聖騎士団長レオパル・ド・ティゲールは厳めしい顔のままそう答えた。
『煉獄篇第一冠』ルスト・シファーの絶大な脅威を跳ね除けたのも束の間、聖教国ネメシスを取り巻く現在の状況は他の国と同じく厳しいものとなっていた。
 さりとて、あくまで『比較』を言うのならこの国は『幸い』と言うべきなのかも知れない。
「……ですが、聖騎士団は言うまでもなく国民の多くに到るまでこの状況に屈しているものはおりません。
 不幸中の幸いと言えば罪が勝りましょうが、やはりこの国はネメシスなのです。
 魔種を許さず、戦う国。そして先の戦い逝った偉大な英雄達がその足跡を刻んだばかりの国なのです」
 傷痕が癒えぬ内の戦いという事はその傷みを、誇りを忘れぬ内の戦いという事でもある。
 国是と相俟って強烈な士気を発揮したネメシスは自国の脅威に立ち向かう事は言うまでもなく、旧敵たる鉄帝や幻想にも支援を振り分け、Bad End 8を中心とした魔種陣営の最大にして最悪の侵攻に立ち向かう旗振り役として――大国の責務を果たしていた。
(……本当に変わってしまったわね、この国)
『拘束の聖女』アネモネ・バードケージが思う通りに。
 かつてのこの国ならばこんな行動に出る事が出来たとは思えない。
 最も厳格にして素晴らしい教皇たるシェアキムがイレギュラーズの或る少女を許した事もそれを証明する事実に他ならないだろう。
「フォン・ルーベルグの守りは厳重か。聖女殿」
「はい。万全に。全て問題なく済んでおります。教皇猊下」
 アネモネの全身には異名の通りの拘束が絡みついている。
 これは幼い頃より特別な才能を見出された彼女が実の父により、この国の仕組みによりその力をより増大させる為に用いられた方法の名残だ。
 大人になった彼女が今でもこれに『甘んじる』のは誰かさんへの小さな抗議であると共に、マシになり始めたネメシスへの期待に他ならない。
「我々に出来る事は、民草を少しでも救う事にありましょう。
 ……まあ、些か口惜しくはありますけれど。ワーム・ホールは英雄殿の方が向いているでしょうから」
 アネモネの言葉遊びは無論、イレギュラーズ全体を指し、誰か一人を指している。
「口惜しいな」
「うむ」と頷いたシェアキムの顔にも苦悩がある。
 国家の――世界の一大事を『彼等』に背負わせてしまっている自覚は、この自他に厳しい賢王にとっての痛恨に違いない。
 そしてそれは武人であるレオパルにとっては更にひとしおのものとなっていよう。
「ともあれ」
 だが、レオパルは鋼の心で私心を殺す。
「後方の問題解決、各国の連携支援は我々が。
 陛下は最悪に備えて『天の杖』の準備を。
 ……アネモネ殿にも苦労をかけるが、宜しく頼みたい」
「ええ、ええ。例のあの子――迷惑かけた分(?)意気込んでるみたいだし。
 ローレットの頑丈な子も手伝ってくれてますしね」
 今すぐにでも前線に駆け付けたい気持ちを抑え込み、己が為す最上最良から決して目を背けない。
 故に彼は誰よりも尊敬される聖騎士だった。これまでも、これからも。
「――終焉等絶対に認めん」
 レオパルの断言にシェアキムもアネモネも頷いた。
「私も引退の時が近いのだ。少しは余生を愉しませて貰いたい」
「奇遇ですわね、猊下」
 シェアキムの珍しい冗談にアネモネは華やかな笑みを見せた。
「私も、将来の夢は可愛いお嫁さんでしたのよ。そろそろ準備も整うのかも」

 ※世界各国に『影の領域』が出現しました……!


 ※ファルカウ西の森メーデイアにてアトロポスが出現したようです。


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(??編)

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