PandoraPartyProject

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大例外

「……と、言う訳だ。何か質問は?」
「……」
「……………」
「……………………」
 その日、ローレットは有り得ざる光景を目にする事になっていた。
 ローレットの本拠でブリーフィングが行われる事は日常だ。
 そこに何の不思議も物珍しさも無い。
 通常の風景を異様な光景に変えている理由は一つ。
「……何か無いのか。実に剛毅ではないか。
 小生は暇では無いのだが? 貴様等もそう暇ではない筈ではないのかね?」
 何時もの皮肉を垂れる混沌の神――『スターテクノクラート』シュペル・M・ウィリー本人がローレットに居る事に他ならない!
 あろう事か自身で『黄金劇場』リアの現状、更には『煉獄』と『冥王公演』の説明までしてみせた彼は、当然と言うべきか憤懣やるかたない不機嫌顔でそこにある。
「……一応聞いとくが」
「うん?」
「どういう風の吹き回しだよ、オマエ」
 最も付き合いの長いレオンだからこそその言葉には実感が籠っていた。
 一昔以上前、塔を踏破したレオンは『ローレットへの助力』を願ったが、この傲慢な男はその時も随分と『ゴネた』経緯がある。
 取り分け、塔を出る事を嫌う彼が下界に存在している事例を元・世界一の冒険者でさえも見知っていない。
「は? 偶然だが? たまたま所用があったからここに寄ったに過ぎないが???」
「……」
「フォウ=ルッテと茨紋という竜を知っているかね?
 アレ等が塔を登ったから、願いを叶えただけだが? 別に小生は特別な事は何もしていないが???」
「オマエは子供か」
 苦笑をしたレオンにシュペルは不愉快そうに鼻を鳴らした。
「……煩く強請るから前にリングをくれてやった事があった。
 そうしたらめそめそめそめそと似合いもしない泣き声を届けて来る。
 ……嗚呼、小生が安眠妨害でこの素晴らしき脳細胞を損ねさせたらどうするというのだ?」
「オマエ寝ないだろうが」
「……」
「……………」
「……レオン・ドナーツ・バルトロメイ。貴様はギルド員の無事を願っていないと見えるな」
「悪かったって」
 素直に謝ったレオンは状況を整理する。
「ええと、つまり。オマエは塔を登ったフォウ=ルッテと茨紋の願いを叶える為の助力をしに来た。
 そんな事は大いに不本意だが、安眠を妨害するリアの鳴き声が邪魔臭くてかなわなかったから仕方ないな。
 うん、偶然たまたま所用で近くに来たついでだしな。普通だ普通」
「……言い方に釈然としないものはあるが、まあそういう事だ」
「直接来た理由は何だ? 実際問題、その黄金劇場とやらに俺達は手詰まりだ。
 助けようにも場所さえ特定出来ない。オマエの言い様じゃ外部からの干渉は難しいんだろ?」
 ここまでの手間を払っている位である。
 直接どうにかなるならばシュペルが既にどうにかしているだろう。
 逆を言えばシュペルが直接どうにかならないものをローレットがどうにかするのは不可能だ。
「小生がルートを作る事に専念すれば、乗り込ませてやる事位は可能だ」
「……それはそれは」
「時間を掛ければあの程度の式、完全解析して無効化してやるがね。
 時間がない以上、無理矢理で非効率な方法を取らざるを得ない。
 小生が神なのは確かだが、あれ等も邪神のようなものだからな。
 まあ、そこそこ歯ごたえのある相手である事は否定しない」
「つまり?」
「現状でどうにかするなら全力で無理矢理こじ開ける必要がある。
 それ以外の通信やら遠隔干渉やらこなしている余力が無い。
 だから、直接ここに来てやったという訳だ。合理的だろう?」
 面倒になったのか最早『救出の助力に来た』事を隠していないシュペルは深く溜息を吐いた。
 ローレットに直接乗り込む為の風穴を開けてそのルートを全力で保持する――彼にとっては然程難しい仕事ではないが、乗り込んだ先には『冠位色欲』がある可能性が高い。そこの『他人任せ』は彼にとっては不本意極まりないのだ。
 何せ彼は素直ではない神だから。自分の御業は全て完璧に済まなければならないと思っている。
「感謝するよ」
「しなくていいから、今後塔を荒らすのは辞めろと伝えておけ」
 嘯いたシュペルがコンソールを叩けば、ローレットの真ん中に異界に通ずる穴が開く。
「いいか。可能な限りの戦力――まぁ時間を重視して速やかに集まる者を放り込め。
 連中はどうも『最悪の事態』に備え、兵隊を用意しているようだし……
 冠位色欲もこの期に及べば嫌いな戦いをするかも知れん。
 あのお節介女が野垂れる前に――ううむ、まあ。兎に角何とかしたまえ!」


 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……
 ※プーレルジールでの戦況が届いています――!


 ※神の王国に対する攻撃が始まりました!!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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